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不整脈になりやすい人の特徴を現役医師が解説

不整脈になりやすい人は
公開日: 2025.06.29

「健康診断で心電図に異常があると指摘された」

「ときどき動悸がする」

「親も不整脈で治療していたため、自分も不整脈になったのではないか」

このような不安をお持ちの方も多いことでしょう。

心臓は電気的興奮により動き、全身に血液を送るポンプの役割を果たします。不整脈とは、電気的興奮のリズムや心拍数が一定しない状態を指します。

不整脈の原因は複数あるため、「不整脈になりやすい人の特徴」と一言であらわすことは難しいものです。不整脈の種類も複数あり、問題なく普通の生活を送れるものから、命に関わるものまでさまざまです。

本記事では、不整脈になりやすい方の特徴について、体質や生活習慣などの観点から説明します。

主な予防方法も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

不整脈になりやすい人の特徴は主に5つ

不整脈になりやすい人の特徴は、主に以下の5つです。

  • 加齢
  • 肥満
  • 生活習慣
  • 疾患および薬の影響
  • 遺伝

加齢

年齢を重ねると、不整脈が生じやすくなります。原因は、刺激伝導系および周辺組織の老化です。

心筋と呼ばれる心臓の筋肉は、適切なタイミングで一定に動くための電気信号システムが備わっています。これが刺激伝導系です。

しかし、年齢を重ねると、刺激伝導系および周辺組織が衰えたり硬くなったりします。そのため、心臓内で電気信号がうまく伝わらないことが増えてしまい、不整脈が生じやすくなるのです。(文献1)

一般的には、60歳以上になると不整脈が増えるといわれています。(文献2)

しかし、不整脈のうち期外収縮と呼ばれるものは、30代を過ぎる頃からほとんどの方に認められます。(文献3)

期外収縮とは、不整脈の中でもよく見られるタイプで、一定のタイミングから若干外れた心臓の収縮により発生するものです。

肥満

肥満は高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす原因の1つです。生活習慣病により不整脈が生じやすくなるだけではなく、肥満そのものが、不整脈の大きな要因であると示されています。

イギリスの文献においても、「体重を減らすことが不整脈の予防や改善につながる」と記されています。(文献4)

生活習慣

不整脈の原因としてあげられる主な生活習慣は以下のとおりです。

  • 睡眠不足
  • 疲労
  • ストレスの蓄積
  • カフェインの過剰摂取
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

これらの生活習慣により活性化されるのが、自律神経の1つである交感神経です。

交感神経が活性化されると、日中に不整脈が起こりやすくなります。もう1つの自律神経である副交感神経が活性化されると、就寝中に不整脈が発生しやすくなります。(文献5)

睡眠不足や疲労、ストレスの蓄積などは、自律神経の乱れや不整脈そのものを引き起こしやすい生活習慣です。

不整脈とストレスの関係は以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

過度の飲酒習慣は、発作性の心房細動と関連があるとされています。

心房細動とは、心臓上部の心房が1分間に400~600回も不規則に動く不整脈です。発作性心房細動は、短時間だけ発生して元に戻るものを指します。(文献6)

心房細動は、心臓が不規則に動くために血流が悪くなり、血栓が生じやすい不整脈です。心房にできた血栓が全身を流れると、脳の血管を詰まらせる原因になります。その結果生じる疾患が脳梗塞であり、心疾患が由来であるため「心原性脳梗塞」と呼ばれます。

心原性脳梗塞に関しては、以下の記事をご参照ください。

疾患および薬の影響

不整脈の原因の中でも比較的多いものは、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、心不全、先天性心疾患といった心臓疾患です。

心臓疾患以外に加えて、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症も、不整脈を引き起こす原因の1つです。

甲状腺機能低下症は徐脈性不整脈、甲状腺機能亢進症は頻脈性不整脈(心拍数の増加)と関連があるといわれています。

徐脈性不整脈は心拍数が減少するもので、以下のような種類があります。

  • 洞不全症候群
  • 房室ブロック
  • 徐脈性心房細動

頻脈性不整脈とは心拍数が増加するもので、主なものは以下のとおりです。

  • 発作性上室性頻拍
  • 心房細動
  • 心房粗動
  • 心室頻拍
  • 心室細動

風邪薬や抗うつ薬、心疾患の薬によって不整脈が生じる場合もあります。不整脈と診断された方で、該当する薬を内服されている方は、必ず担当医師に伝えましょう。

遺伝

心臓の電気的な活動をつかさどる遺伝子の変異により起こる不整脈の総称が、遺伝性不整脈です。

主な遺伝性不整脈としては、以下のようなものがあげられます。

  • 先天性QT延長症候群
  • ブルガダ症候群
  • カテコラミン誘発多形性心室頻拍
  • QT短縮症候群
  • 早期再分極症候群

遺伝性不整脈は、無症状のこともありますが、心室頻拍や心室細動といった命に関わる可能性もあります。

突然死の原因になるケースもあるため、適切な診断・治療が求められる不整脈です。

命に関わる不整脈

不整脈の中には、命に関わるものも存在します。

代表的なものは以下の3つです。

  • 心室細動
  • 心室頻拍
  • 完全房室ブロック

心室細動

心室細動とは、心臓の下部である心室が非常に早く不規則に興奮して、小刻みに震えてしまう状態です。この状況では、心臓が拍動しなくなるため、全身に血液を送れなくなります。

全身に血液を送り出せなくなるため脳の血流も低下し、めまいや失神を起こし、意識を失います。迅速な救命処置や治療を行わないと命に関わる、最も危険な不整脈です。

心室頻拍

心室頻拍とは、心室が速く脈を打ち過ぎて血圧がほとんど出なくなる不整脈です。症状としては、強い動悸や胸痛、めまい、失神などがあげられます。

心室頻拍の大部分は重度の心疾患を抱えている方に発生し、心室細動を引き起こす場合もあります。

完全房室ブロック

房室ブロックと呼ばれる不整脈の中で最も重症なものです。

房室ブロックとは、心房からの電気信号を心室に伝える房室結節での連絡が途絶えてしまい、心室の脈がなくなるものです。房室ブロックはⅠ度からⅢ度に分類されており、完全房室ブロックと呼ばれるⅢ度は、房室結節での連絡が完全に途絶えています。(文献7)

このまま放置すると心停止に至る可能性があるうえ、脈を速くする有効な内服薬がないためペースメーカー埋め込み手術が必要です。

不整脈にならないために気をつけること

不整脈にならないために気をつけると良い3つのポイントを以下に示しました。

  • 食生活の見直し
  • 適度な運動
  • 持病の管理

食生活の見直し

食生活の見直しは、不整脈予防にとっても大切なものです。

バランスの良い食事を心がけましょう。具体的には、以下の3点がまんべんなくそろっている食事です。

  • 主食(ご飯やパン、麺類など炭水化物の供給源)
  • 主菜(肉や魚、卵などタンパク質の供給源)
  • 副菜(野菜や果物、きのこ類などビタミンやミネラル、食物繊維の供給源)

不整脈に良い食べ物としては、バナナやほうれん草などのカリウムが多いもの、海藻類や豆類などマグネシウムが多いものがあげられます。

不整脈に悪い食べものとしては、塩分や動物性脂肪が多い食品などがあげられます。カフェイン飲料の過剰摂取も好ましくありません。

不整脈と食生活の関係は、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

適度な運動

ウォーキングや水泳など、中程度の運動30分を週2.5時間以上行うことで、心血管疾患の予防や不整脈抑制の効果があるとされています。ただし、運動習慣がない方が急に運動したり、既に心疾患がある方が運動したりすると、不整脈が引き起こされる可能性があります。

運動習慣がない方、既に心疾患がある方は、運動を始める前に医師に相談しましょう。

アメリカの論文では、体重を10%減少させた方や体重減を維持させた方は、減らなかった方より、不整脈が起きない確率が6倍も高くなったとのデータが示されています。論文上では、体重減少により重症の心房細動が軽症になったケースも示されていました。(文献8)

同じ論文では、飲酒の習慣がある心房細動患者が禁酒したことで、不整脈の再発が大幅に減ったとの研究結果が示されています。加えて、禁煙が心房細動の予防戦略として強く推奨されています。(文献8)

持病の管理

心疾患をはじめ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある方は、医師から指示を受けた薬の内服を続けて、治療を継続しましょう。

血圧の管理は、不整脈予防に効果的といわれています。

不整脈が繰り返し発生している方や、動悸・息切れといった症状がある方は、必ず医師に相談してください。

不整脈になりやすい人の特徴を理解して予防に努めよう

不整脈になりやすい方の特徴としては、「高齢である」「家族歴がある」「心疾患や高血圧、糖尿病などがある」といったことがあげられます。また、肥満や喫煙、飲酒といった生活習慣も関係するといわれています。

これらの特徴に少しでも当てはまる方は、生活習慣の改善や疾患の管理などできる範囲で不整脈の予防に努めましょう。

中には命にかかわる不整脈もあるため、強い胸痛や動悸、呼吸困難などの症状が出た場合は、早急に病院を受診してください。症状がない場合でも、心電図検査で異常を指摘された方は、ホルター心電図や運動負荷心電図、心臓エコーなどの詳しい検査を受けることが望ましいでしょう。

現在不整脈でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。メール相談オンラインカウンセリングも実施しております。

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参考文献

(文献1) 森拓也.「老人性不整脈」『日本農村医学会雑誌』65(2), pp.136-143, 2016

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/65/2/65_136/_pdf

(最終アクセス:2025年6月22日)

(文献2) 独立行政法人国立病院機構岩国医療センター「不整脈とは?」独立行政法人国立病院機構岩国医療センターホームページ

https://iwakuni.hosp.go.jp/junkanki-ab-huseimyaku.html

(最終アクセス:2025年6月22日)

(文献3) 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「不整脈」国立研究開発法人国立循環器病研究センターホームページ, 2023年09月22日

https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/arrhythmia/

(最終アクセス:2025年6月22日)

(文献4) Kiran Haresh Kumar Patel, et al.(2022).Obesity as a risk factor for cardiac arrhythmias.BMJ Medicine, 1, pp.1-13.

https://bmjmedicine.bmj.com/content/bmjmed/1/1/e000308.full.pdf

(最終アクセス:2025年6月22日)

(文献5) 渡部智紀.「自律神経と不整脈」『自律神経』56(4), pp.221-223, 2019

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/56/4/56_221/_pdf

(最終アクセス:2025年6月22日)

(文献6) 日本不整脈外科研究会「不整脈とは 心房細動」日本不整脈外科研究会ホームページ

https://plaza.umin.ac.jp/~arrhythm/arrhythmia/atrium/index.html

(最終アクセス:2025年6月22日)

(文献7) 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター「房室ブロック」独立行政法人国立病院機構大阪医療センターホームページ

https://osaka.hosp.go.jp/department/cvm/kakushikkan/fuseimyaku/ba/boushitsu/index.html

(最終アクセス:2025年6月22日)

(文献8) Mina K. Chung, et al. (2020).Lifestyle and Risk Factor Modification for Reduction of Atrial Fibrillation: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation, 141(16)

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000000748

(最終アクセス:2025年6月22日)

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