- 内科疾患、その他
- 内科疾患
不整脈とストレスの関係性は?治し方を含め現役医師が解説

「最近ストレスがたまっている」
「脈が飛ぶ感覚が頻繁に起こる。これはストレスによる不整脈ではないか」
「病院では異常なしといわれたが、やはり不安である」
不整脈の症状がある方の中には、このような不安を抱えている方もいるでしょう。
不整脈は心疾患が原因で起こることもありますが、「とくに異常なし」「ストレスが原因」と診断されることもよくあります。
明確な原因が見つからないと「具体的にはどのように治せばいいのか」「良くなっているのかどうかわからない」といった悩みが発生し、さらに不整脈を悪化させてしまう可能性もあります。
本記事では、ストレス性不整脈の治し方を解説します。
ストレスが心臓に与える影響や、早急に受診すべきタイミングも紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。
目次
ストレスと不整脈の関係性
不整脈が起こる原因として、ストレスは強く関係しています。
この項目ではストレスがどうして心臓に影響を与えるのか、そのメカニズムを説明します。また、心疾患が原因となる不整脈とのちがいについても解説します。
ストレスが心臓に与える影響
強いストレスは自律神経の乱れにつながり、不整脈を引き起こす原因となります。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経系によって構成されています。
ストレスを受けると、活発時や緊張時に優位になる交感神経が働き、心拍数や脈拍が多くなってしまいます。
通常の状態であれば副交感神経優位に切り替わり、心拍数は正常値に戻っていきますが、強いストレス状態が続き交感神経が働き続けると、心臓に負担がかかってしまいます。
その結果、不整脈、心臓の違和感、胸の痛みといった症状を引き起こしてしまうのです。
不整脈は頻脈(脈が速くなる)や期外収縮(胸が痛い、不快感を感じる)といった比較的軽度なものがほとんどです。
しかし、放置すると心不全や脳梗塞といった重篤な疾患を発症する場合もあるため注意が必要です。
ストレス性不整脈と心疾患による不整脈の違い
ストレス性不整脈と心疾患による不整脈の違いを症状だけで見極めるのは非常に難しいです。
ストレスを解消しても不整脈が治らない場合、原因が違う場所にある可能性も考えられます。
いずれにせよ放置は危険なので、まずは専門の医師に相談を行いましょう。
ストレス性不整脈
ストレス性不整脈の場合、精神的・身体的なストレスが引き金となり、自律神経のバランスが崩れることで発症します。代表的なものは「期外収縮」で、正常な拍動の間に不規則な拍動が現れます。気づかない方も多い症状です。
ストレス性不整脈の場合、原因となっているストレスを解消したり、生活習慣を改善すれば症状が緩和されることがほとんどです。
心疾患による不整脈
心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、心不全といった心疾患が原因で引き起こされる不整脈もあります。
心疾患による不整脈は長期間続く傾向にあり、動悸や息切れ、めまい、失神といった合併症状を伴うこともあります。
治療は重症度によっても変わりますが、薬物療法やカテーテルアブレーション、ペースメーカーの植込みなど、専門的な医療介入が必要となる場合もあります。
ストレス性不整脈の治し方
ストレスが原因で起きている不整脈の場合、原因であるストレスを解消しない限り完全に治ることはありません。不整脈が治らないことへの焦りや不安がさらに症状を悪化させることもあります。
ストレス性不整脈を治すポイントは、「ストレスをためこまない」「生活習慣を見直す」「睡眠の質を向上する」ことです。
それぞれ詳しく解説していきます。
ストレスをためこまない工夫をする
日々のストレスをためこまないため、日常生活での工夫が大切です。深呼吸や瞑想、ヨガなど、意識的にリラックスできる時間を作ると、副交感神経が働きやすくなります。
仕事や家事が忙しく常に慌ただしい生活を送っている方は、日々のやらなくてはいけないことから少し離れる時間を作ってみてください。
例えば、読書や旅行など自分の好きなことに没頭したり、ウォーキングや散歩など体を動かしたりすることでストレスの軽減につながります。
また、日記をつけたり、そのとき感じた感情をメモに書き留めておくと、心の中が整理され不安や焦燥感が軽減されることもあります。
それでもストレスが減らない、人間関係がストレスの原因になっている場合は、家族や友人、必要に応じて心理カウンセラーや医師などの専門家に相談してみましょう。
人と対話をすると、自分でも思いがけない感情を言葉にできることがあります。そういった対話の中で見つけた感情こそ、ストレス緩和の糸口になるかもしれません。
生活習慣を見直す
ストレスと上手に付き合うためには、毎日の生活習慣をととのえることが大切です。
とくに重要視されるのは「食事」「運動」「睡眠」です。それぞれの気を付けるべきポイントをまとめました。
栄養バランスの良い食事
栄養バランスの良い食事は心臓疾患の予防になります。
無理な食事制限などは行う必要はありませんが、ジュースなど砂糖が多く含まれる食品、スナック菓子やカップ麺といった超加工食品は減らしましょう。
一方で野菜や魚、肉、大豆などの良質なたんぱく質を多く取り入れてください。
また、主食は精製されていないものを取り入れてみると効果が高まります。
普段食べている白米や白いパンは、「精製」という処理を経ています。精製を行うことで、原材料に本来含まれていた繊維質、ビタミンB、ミネラルといった心疾患の予防に有効な栄養素が失われてしまうのです。
主食を玄米や全粒粉を使ったパンなどに切り替えてみるのも良いかもしれません。
適度な運動
日常生活の中で無理のない範囲で体を動かすことが推奨されています。
運動習慣がない方や不整脈による症状がつらい方は、医師と相談のうえで軽いランニングやサイクリング、ウォーキングや散歩などから始めてみてください。
身体を動かすことに慣れ、医師の許可も出た場合は筋力トレーニングもおすすめです。いきなり高負荷の運動は避け、腕立て伏せやスクワットなど手軽に始められる自重トレーニングからはじめましょう。
ウォーミングアップとクールダウンの時間、水分補給は欠かさず行ってください。
筋力トレーニングは心理的ストレスの改善にも有効です。筋力トレーニングを行うことによって分泌される神経伝達物質が気分を安定させることがさまざまな研究で証明されています。
アルコールやカフェインの摂取を控える
アルコールやカフェインの過度な摂取は、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
適量を守り、規則正しい生活を送りましょう。
成人の1日当たりの適正飲酒量は純アルコールで約20g程度です。
ビールだと500ml、缶チューハイで350ml、ワインで200ml程度に換算されます。
また、喫煙はストレスに関係なく心臓や血管への負担を増やします。
喫煙をしている方は自分が一日あたり何本吸っているのかを理解し、できる限り禁煙を目指しましょう。
睡眠の質を高める
睡眠の質を高めることは、食事や運動と同様に心身の健康を保つ上で非常に重要です。
スマートフォンやパソコンは体内時計に影響を及ぼすブルーライトが発せられているため、就寝前の使用は控えることが望ましいです。
また、寝室環境の整備も睡眠の質を向上するために必要です。寝室や寝床の中は静かで暗い環境を保ちましょう。季節にもよりますが、室温は13~29度、湿度は40~60%程度が適切だといわれています。
また、就寝前の時間の使い方も重要です。就寝90分ほど前に、ぬるめのお風呂につかると身体が温まり眠りやすくなります。そのほか、好きな音楽を聴く、軽い読書をするといった自分がリラックスできることを取り入れることも望ましいです。
寝酒はかえって眠りを悪化させる可能性があります。適量以上の飲酒はできる限り避けましょう。
医療機関を受診すべき不整脈のサイン
不整脈の症状を感じた場合、早急に専門の医師を受診しましょう。
不整脈は突然死のリスクもあります。放置してしまうと血栓の発生や脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まります。
- 不整脈の症状が続いている、もしくは頻度が増えている
- 胸痛や息切れ、めまいなどの症状が伴う
- もともと心疾患がある
これらに該当する場合は早急に医療機関にかかり、適切な治療を受ける必要があります。
上記に該当しないものの、健康診断で「精密検査が必要」と言われた方も、早急に受診しましょう。
【緊急性のない場合】ストレス性を含む不整脈の対処法
期外収縮など緊急性の低い不整脈の場合でも、はやく治療したい方もいるでしょう。ストレス性の不整脈だと診断された場合、病院では日常生活指導を受けられます。
もし、それだけでは不安な場合、医師と相談の上、抗不整脈薬の内服や、カテーテルアブレーション治療を受ける選択肢もあります。
カテーテルアブレーションとは、足の付け根の静脈から細いカテーテル(管)を心臓まで送り込み、不整脈の発生源となる部位にカテーテルの先端を当てて、高周波電流で焼灼する手術です。
カテーテルが不整脈発生部位に届くようであれば、この治療を受けることができます。
ストレス性不整脈はセルフケアと適切な医療でコントロールしよう
不整脈は心疾患が原因で起こる場合、ストレスが原因で起こる場合で大きく2つに分かれます。
ストレスが原因であったり、一過性の場合は、生活習慣を見直すことで症状が改善される可能性があります。食生活の見直しや日常的な運動、睡眠をしっかり取り、健康な体づくりを心がけましょう。
ストレスが多い生活をしている自覚がある方は、ストレスをためないよう生活を工夫したり、人に相談するなどして抱えているストレスを減らす必要があります。
それでも不安が残る場合には、医療機関を受診して適切な治療を受ける方法もあります。専門の医師に相談し、ストレス性不整脈の軽減に努めましょう。
\無料オンライン診断実施中!/
ストレス性不整脈に関するよくある質問
不整脈の症状で脈が飛ぶ場合すぐに病院で治療すべきですか?
一拍だけ脈が飛ぶ、一瞬胸がドキッとするといった症状の主な原因は「期外収縮」であることが多いです。
心臓に電気を送る部分である洞結節と呼ばれる部位とは別の場所から、やや早いタイミングで心臓に電気が流れることにより起こります。
期外収縮は年齢や体質、ストレスの影響などで起こることが多い症状だといわれています。
持病で心疾患を患っている、脈が飛ぶ以外の症状がある場合は急ぎ病院にかかる必要がありますが、心当たりがない場合は急いで治療する必要はありません。
一方、症状が長期間で起こっている場合や不安が強い場合は、一度精密検査を受けるべきでしょう。
動悸を抑える薬はありますか?
市販薬では存在しません。
動悸を抑える「抗不整脈薬」はありますが、医師が処方する必要があります。
不整脈や息切れに効果があるとされる市販薬はありますが、あくまで一時的に症状を緩和するのみで、不整脈に直接作用するものではありません。
一時的に症状が治まったために病院受診が遅れると、知らず知らずのうちに悪化する可能性もあります。薬を内服したい場合は、医療機関を受診しましょう。