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生あくびは脳梗塞の前兆?病的な生あくびであるかの見分け方も解説

「生あくびは脳梗塞の前兆?」
「生あくび以外に注意すべき症状はある?」
「病的なあくびであるかどうかの判断方法は?」
睡眠不足や疲労から生じるあくびは生理現象なので問題はありません。しかし、眠気や疲労がないにもかかわらず頻繁に現れる生あくびは、なんらかの病気が隠れている恐れがあるため注意が必要です。
本記事は、生あくびが脳梗塞の前兆であるかどうかをはじめとして以下を解説します。
- 生あくびとあくびの違い
- 病的なあくびの見分け方
- 脳梗塞の前兆の判断方法
- 脳梗塞以外であくびが現れる病気
「最近とくに眠くない疲れていないのにあくびがよく出る」という方は参考にしてください。
目次
生あくびは脳梗塞の前兆?
脳梗塞の前兆として生あくびが現れることがあるため、注意が必要です。(文献1)生あくびは、脳梗塞によって脳への血流が減少して現れると考えられています。この血流減少が軽度で一時的な場合、一過性脳虚血発作という短時間のみ神経症状が現れる病態となります。
その後、本格的な脳梗塞を発症する恐れがあるため、生あくびなどの特定の症状が消えたからといって安心はできません。あくびと一緒に頭痛やめまい、立ちくらみ、手足のしびれなどの症状が現れている場合は注意が必要です。
生あくびとあくびの違い
生あくびとあくびの違いは以下の通りです。
生あくびとあくびの違い | |
---|---|
生あくび | 脳の病気によって起こる病的なあくび。脳梗塞や脳出血などなんらかの病気が隠れている場合がある。 |
あくび | 生理現象のあくび。睡眠不足や疲労により脳に酸素が足りていないときに起こる場合が多い。退屈を感じているときに現れることもある。 |
(文献1)
病的な生あくびと病的ではないあくびの見分け方
病的な生あくびと病的ではないあくびの見分け方は以下の通りです。
- 生あくびの回数を確認する
- その他に脳梗塞の前兆が現れていないかを確認する
それぞれの詳細を解説します。
生あくびの回数を確認する
あくびの回数を確認すれば、病的であるかどうかの判断に役立ちます。実際に15分以内に3回以上のあくびは病的なあくびと定義した研究では、急性脳卒中で入院した161人のうち、69人(42.9%)の患者さまに病的なあくびが見られたと報告があります。(文献1)
とはいえ、あくびだけでは生理現象の範囲内であるか、病的であるかの判断は難しいです。生あくびとその他の症状から、病的であるかを判断する必要があります。
その他に脳梗塞の前兆が現れていないかを確認する
脳梗塞の前兆と考えられる症状は多岐にわたります。生あくびと一緒に以下のような症状が現れている、または現れたことがある場合は要注意です。
- 体調を崩しているわけでもないのに頭痛や頭の重さがある
- 手足や口のまわりにしびれやふるえがある
- 目の前が真っ暗になったことがある
- 意識を失ったことがある
- めまいや立ちくらみがある
- フラフラと歩いてしまう
- ものがゆがんで見える、または二重に見える
- 文字を書くとゆがんでしまう
- 舌がもつれて話しにくい
- 以前よりも物忘れが多くなった
(文献2)
以上のような脳梗塞の前兆は、たとえ短時間で消失したとしても、その後に本格的な脳梗塞に移行する恐れがあります。該当する症状が現れた場合は、医療機関を受診しましょう。
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脳梗塞の前兆の判断に迷ったときのFAST(ファスト)
脳梗塞の前兆の判断に迷った際は、FAST(Face Arm Speech Time)によるチェック方法があります。以下のような3つの症状で簡潔に脳梗塞であるかを判断する方法です。
FAST | 症状 |
---|---|
Face(顔の麻痺) | 顔の片側が下がる、歪みがある、笑顔を作れない |
Arm(腕の麻痺) | 片腕に力が入らない、両腕を上げたまま維持できない |
Speech(言語の麻痺) | 言葉が出てこない、呂律が回らない |
(文献3)
脳梗塞は治療が遅れてしまうと命に関わります。該当する場合は速やかに救急車を呼びましょう。
脳梗塞以外であくびが現れる病気
脳梗塞以外であくびが現れる病気には以下のようなものがあります。
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 心筋梗塞
- 睡眠時無呼吸症候群
- 片頭痛
それぞれの詳細を解説します。
脳出血
脳出血とは、脳の血管が破れて脳内で出血が起きる病気です。脳出血を発症すると生あくびが現れることがあります。(文献4)軽度の脳出血の場合は以下のような症状が現れます。
- 頭痛
- 嘔吐
- めまい
- しびれ
- 軽度の脱力
放置すると重症化する恐れがあるため、医療機関を受診してください。重度になると、脳梗塞と同様に「顔の片側が下がる」「手足が麻痺する」「呂律が回らない」などの症状が現れます。自分や周囲の人にこのような症状が現れている場合は、速やかに救急車を呼びましょう。
脳腫瘍
脳腫瘍とは、脳の細胞や神経、脳を包む膜などから発生する腫瘍です。脳腫瘍でも生あくびが現れることがあります。(文献4)脳腫瘍が発生すると、脳内の圧力が上がっていき以下のような症状が現れます。
- 頭痛
- 吐き気
- 麻痺
- しびれ
- ふらつき
- 歩行障害
脳腫瘍も早期発見が重要です。該当する症状が現れている場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞とは、心臓の血管が詰まってしまう病気です。心筋梗塞でも生あくびが現れた症例があります。(文献5)心筋梗塞を発症した際は以下のような症状が現れます。
- 突然、胸を締め付けられるような強い痛み
- 胸の圧迫感
- 肩や腕、首などの痛み
男性は冷汗を伴うことが多く、女性は息苦しさや吐き気が現れることがあります。心筋梗塞は治療が遅れると危険な状態になります。該当する症状が現れた際は、速やかに救急車を呼びましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に一定間隔で呼吸が止まる病気です。睡眠が浅くなってしまうため、日中にあくびが出るようになります。以下に該当する方は、睡眠時無呼吸症候群の恐れがあります。
- 夜間のいびきがうるさいと指摘された
- 夜間に大きないびきが止まったと思ったら、大きな呼吸とともに再びいびきが始まると指摘された
- 夜間何度も目が覚める
- 朝起きると頭痛や頭の重さがある
- 寝起きが悪い
- 日中の眠気が強い、または居眠りをしてしまう
睡眠時無呼吸症候群の原因で多いのは肥満です。
中には脳梗塞が原因で睡眠時無呼吸症候群を発症する場合もあります。(文献6)気になる症状がある方は医療機関を受診しましょう。
片頭痛
片頭痛とは日常生活に支障のある頭痛を繰り返す病気です。片頭痛の発作が起きる2日ほど前に、予兆としてあくびが現れることがあります。(文献7)この期間を予兆期と言います。
そのほかに予兆期に現れることがある症状は以下の通りです。
- 気分の変化
- 無気力感
- 注意力の欠落
- 落ち着きのなさ
- 寒気
- 光に対する過敏
このような頭痛とは一見関係ないような症状が、片頭痛の予兆として現れます。片頭痛は悪化すると日常生活に支障をきたします。医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
まとめ|脳梗塞の早期発見のために生あくびが現れたら受診しよう
生あくびが現れている場合、脳になんらかの病気が隠れている恐れがあります。15分以内に3回以上のあくびがあり、その他にも、めまいや手足のしびれ、ふらつきなどの症状が現れている場合は、医療機関を受診してください。
「顔の片側にゆがみがある」「片腕や足に力が入らない」「呂律が回らない」などの症状が現れている場合は、本格的な脳梗塞が起きている恐れがあります。自分または周囲の人に該当する症状が見られる場合は、速やかに救急車を呼びましょう。
参考文献
(文献1)
Aslı Aksoy Gündoğdu, et al. (2020)「Pathological Yawning in Patients with Acute Middle Cerebral Artery
Infarction: Prognostic Significance and Association with the Infarct
Location」『Balkan Med J』37(1), pp.24-28.
https://balkanmedicaljournal.org/text.php?lang=en&id=2145(最終アクセス:2025年6月22日)
(文献2)
自治医科大学附属さいたま医療センター「どんな人が検査を受けるのでしょうか?」
https://www.jichi.ac.jp/braindock/sub2.htm(最終アクセス:2025年6月22日)
(文献3)
国立循環器病研究センター「脳卒中」
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/(最終アクセス:2025年6月22日)
(文献4)
北一郎,有田秀穂.「脳内低酸素とあくび反応」『比較生理生化学』18(2), pp.96-101, 2001年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika1990/18/2/18_2_96/_pdf(最終アクセス:2025年6月22日)
(文献5)
住吉正孝.「ゴルフ中に心筋梗塞を起こさないために」『順天堂医学』49(3), pp.321-326, 2003年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjmj/49/3/49_321/_pdf(最終アクセス:2025年6月22日)
(文献6)
兵庫県医科大学病院「睡眠時無呼吸症候群」
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/93(最終アクセス:2025年6月22日)
(文献7)
永田栄一郎.「片頭痛の予兆期・前兆期,発作末期にみられる随伴症状とその病態」『日本頭痛学会誌』51(1), pp.131-134, 2024年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjho/51/1/51_131/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月22日)