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オーバートレーニング症候群とは|チェックリストや症状・治し方まで医師が解説

「オーバートレーニング症候群のような症状が現れた」「以前と比べて疲れやすくなった」などと感じている方もいるでしょう。
オーバートレーニング症候群とは、過剰なトレーニングによって心身に不調が生じ、パフォーマンスが低下してしまう状態を意味します。症状は軽度の疲労感から精神的な不調まで多岐にわたり、対処が遅れると回復に長い期間を要するケースもあるため注意が必要です。
今回は、オーバートレーニング症候群の重症度別の症状やチェックリスト、治し方を医師の見解に基づいて解説します。オーバートレーニング症候群が疑われる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
オーバートレーニング症候群とは
オーバートレーニング症候群とは、適切な休息を取らずに過剰なトレーニングを継続することで、身体や精神に不調をきたす状態です。通常の疲労と異なり、十分な休養をとっても回復が見られず、慢性的なパフォーマンスの低下や精神的な不調が続く点が特徴です。
主な原因として、高負荷のトレーニングや栄養・睡眠不足、精神的ストレスなどが複雑に絡み合って発症すると考えられています。
なお、オーバートレーニング症候群は、競技者やハードなトレーニングをおこなう方に多く見られますが、一般のスポーツ愛好者でも発症する可能性があります。
オーバートレーニング症候群の症状【重症度別】
オーバートレーニング症候群の症状は、進行度に応じてさまざまです。以下で、軽症・中等症・重症の3段階に分けて詳しく見ていきましょう。
軽症|パフォーマンスの低下
軽症の場合、オーバートレーニング症候群によって運動時のパフォーマンスは下がるものの、日常生活に大きな支障はでません。軽症の段階では、身体の回復力が落ちたことにより、以前と同じトレーニング内容でも疲労が残りやすくなっている状態です。
たとえば、以前は問題がなかったランニングの距離で息が上がったり、運動時の集中力が続かなかったりするなどの変化が見られます。
軽症の場合、オーバートレーニング症候群には気づきにくいものです。しかし、「最近パフォーマンスが下がっている」と感じたら、トレーニング内容を見直すサインだといえます。
中等症|疲労症状
中等症のオーバートレーニング症候群になると、軽い運動でも強い疲労感が現れ、体が慢性的に疲れている状態になります。回復力がさらに落ちて自律神経のバランスが乱れやすくなり、慢性的な疲労や体調不良を引き起こすためです。
たとえば、軽いジョギングでも息切れしたり、立ちくらみや動悸が起こる回数が増えたりするといった状態が続きます。中等レベルの症状が現れている場合は、迷わず休養を確保しましょう。
重症|精神・心理症状
オーバートレーニング症候群が重症化すると、心理症状が強まり、日常生活全体に影響を及ぼすようになります。肉体的な疲労の蓄積によってストレス耐性が下がり、自律神経やホルモンバランスが崩れるためです。
具体的には、気分の落ち込みや不眠、食欲不振といったうつ症状に似た状態が見られるようになります。また、仕事や学業などに対する意欲や集中力がなくなり、人間関係に影響を及ぼすケースもあります。
オーバートレーニング症候群が重症化した場合、これらの症状を放置せず、医師や専門家による適切なアプローチによって回復に努めることが大切です。
オーバートレーニング症候群のチェックリスト
オーバートレーニング症候群が疑われるときは、以下の項目に該当するかセルフチェックしてみましょう。
- 最近トレーニングの強度を上げた
- 練習しているのに成績が上がらない
- 軽いジョギングでも疲れるようになった
- トレーニング後の筋肉痛が長く続くようになった
- 睡眠時間は足りているはずなのに眠気が取れない
- 起床直後の心拍数が普段より増加している
- トレーニングのやる気が出ない
- 食欲が低下した
- 気分が落ち込みやすくなった
- 毎日運動しないと不安を感じる
- 運動していないときでも疲労感がある
- 頭痛や立ちくらみが頻繁に起こる
貧血や感染症などが原因ではないにもかかわらず、複数の症状が該当する場合は、オーバートレーニング症候群が疑われます。
また、身体の不調を感じたときは、心拍数や血圧をチェックしてみるのもおすすめです。疲労症状が強くなると、起床時の心拍数は増えるとされています。
そのため、起床直後の心拍数をチェックすると疲労症状を把握しやすくなります。起床直後の心拍数が1分あたり10回以上増えている場合は、オーバートレーニング症候群を疑いましょう。
日頃からのセルフチェックによって、オーバートレーニング症候群を早期に発見し、重症化を防げます。
オーバートレーニング症候群の治し方
オーバートレーニング症候群を治すためには、症状の原因を取り除き、回復を促すケアに努めることが大切です。以下の対処法を組み合わせて実践すると、オーバートレーニング症候群からの効果的な回復が見込めます。
休養の確保
オーバートレーニング症候群の初期対応は、しっかりと休養を取ることです。実際に、数カ月単位で一定期間競技活動から離れて休養を確保するだけで、回復が得られる場合もあります。(文献1)
ただし、症状の進行によっては、まったく身体を動かさないことが逆効果になるケースも考えられます。そのため、「どの程度の休養が必要か」「軽度のトレーニングであれば続けても問題がないか」など、医師やトレーナーと相談しながら治療にあたりましょう。
具体的な症状や体調に合わせてトレーニングと休養のバランスを調整しましょう。
ストレス管理
オーバートレーニング症候群を治すために、ストレス管理が必要になるケースもあります。背景に心理的要因や環境適応などの問題がある場合は、休養だけでは回復に至りにくいためです。(文献1)
精神的ストレスはオーバートレーニング症候群の原因の一つであり、症状を悪化させる要因にもなります。気分の落ち込みが続いたり、やる気がでない状態が長引いたりする場合は、精神科医やスポーツ心理士に相談してみてください。カウンセリングのほか、必要に応じて薬物療法を受けるのもおすすめです。
早期回復のためにも、心の状態を軽視せず、症状に合わせた専門的なサポートを受けましょう。
バランスの良い食事
オーバートレーニング症候群を治すためには、バランスの良い食事を心がけることも大切です。食事を通して必要な栄養素を補うと、疲労の回復や免疫力向上の助けになります。具体的には、以下の栄養素を意識的に摂取しましょう。
栄養素 |
効果 |
---|---|
ビタミンB群 |
|
ビタミンC |
|
バランスの良い食事は回復のスピードを左右する要素の一つです。疲労や不調を感じるときこそ、バランスの良い食生活を心がけて回復に努めましょう。
オーバートレーニング症候群の症状を見逃さず重症化を防ごう
オーバートレーニング症候群は、放置すると重症化する可能性があるので注意が必要です。「疲れの感じ方がいつもと違う」「運動していないときでも疲労感が続いている」と感じたときは、休養したりトレーニングを軽くしたりして対応しましょう。
オーバートレーニング症候群は、軽症であれば比較的早く回復できますが、重症化すると復帰に時間がかかります。早期発見のためには、セルフチェックリストを活用しながら、身体と心のサインを見逃さないことが大切です。
オーバートレーニング症候群は、競技者に限らず一般の方でも症状が現れる場合があります。症状に応じて、早めに医療機関を受診して重症化を防ぎましょう。
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オーバートレーニング症候群に関するよくある質問
オーバートレーニング症候群はどのように診断される?
オーバートレーニング症候群は、一般的には以下の指標を総合的に判断して診断されます。
- 安静時心拍数の増加
- 安静時血圧の上昇
- 運動後血圧の回復の遅れ
- 競技成績の低下
オーバートレーニング症候群は明確な検査法がありません。医師による問診や身体所見、血液検査などを用いて総合的に診断されます。
一般人でもオーバートレーニング症候群になる?
趣味として運動を楽しんでいる一般の方でも、オーバートレーニング症候群を発症する可能性があります。
オーバートレーニング症候群になるのは、スポーツ選手や部活動をしている学生だけではありません。過剰なトレーニングや精神的ストレスが重なると、誰でも発症するリスクが高まります。運動は健康の維持に欠かせない習慣ですが、過剰なトレーニングは逆効果になる可能性があるため気をつけましょう。
オーバートレーニング症候群はどのくらいで治る?
オーバートレーニング症候群は、軽症・中等症であれば1〜3カ月程度で回復が期待できます。しかし、重症化すると半年〜1年かかるケースもあり、長期にわたる休養と治療が必要になります。
重症化を防ぐためにも、自己判断で無理を重ねず、医師や専門家のアドバイスを受けることが大切です。
オーバートレーニング症候群は何科を受診すれば良い?
オーバートレーニング症候群が疑われる場合は、スポーツ内科の受診がおすすめです。ただし、地域によってはスポーツ内科の専門外来がないケースも考えられます。この場合、症状によって整形外科や一般内科、婦人科などを受診しましょう。
目安として2週間程度運動を控えても症状が改善されない場合は、早めに医療機関を受診してください。
参考文献