パーキンソン病の治療薬一覧|副作用や禁忌となる薬も解説

パーキンソン病 薬
公開日: 2025.12.13

「パーキンソン病の治療薬にはどのような種類がある?」
「効果や副作用の詳細を知りたい」
「パーキンソン病の方が飲んではいけない薬はある?」

パーキンソン病は、適切な薬物療法を行わないと症状が悪化する恐れがあります。そのため、本人やご家族も薬に対して一定の理解を深めることが大切です。

本記事では、パーキンソン病の治療薬の種類と効果をはじめとして以下を解説します。

パーキンソン病の薬に対する理解は、症状を安定させる可能性を高めることにつながります。本記事をパーキンソン病の薬の理解を深めるために役立ててください。

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パーキンソン病の治療薬の種類と効果【一覧】

パーキンソン病の治療薬の種類と効果を一覧にすると以下の通りです。

治療薬の種類 効果
L-ドパ含有製薬 脳内で不足するドパミンを補う
ドパミンアゴニスト ドパミンを受け取る部位を活性化させる
ドパミン代謝阻害薬 ドパミンの作用時間を伸ばす
ドパミン遊離促進薬 ドパミンの分泌を促す
ドパミン賦活薬 ドパミンの分泌を促す
アデノシンA2A受容体拮抗薬 興奮している神経を抑制する
抗コリン薬 アセチルコリンの働きを抑制する
ノルアドレナリン補充薬 ノルアドレナリンを補う

それぞれの詳細を解説します。

L-ドパ含有製薬|脳内で不足するドパミンを補う

L-ドパ含有製薬とは、脳内で不足しているドパミンを補うための薬です。(文献1パーキンソン病の治療において最も基本となる薬で、多くの患者様に処方されています。

薬剤名 ネオドパストン、メネシット、イーシードパール、マドパー
投与方法 内服薬
効果 手のふるえや筋肉のこわばりの改善
副作用 吐き気、嘔吐、食欲不振、不眠、不整脈、ジスキネジア(口周りなどが勝手に動くなど)、動悸(どうき)など

吐き気が現れている場合は、吐き気止めの薬を併用して使用します。

ドパミンアゴニスト|ドパミンを受け取る部位を活性化させる

ドパミンアゴニストとは、ドパミン受容体(ドパミンを受け取る部位)の働きを高めるための薬です。(文献1

薬剤名 ビ・シフロール、ミラペックス、レキップ、ニュープロパッチ
投与方法 内服薬、貼り薬、注射薬
効果 手のふるえ、筋肉のこわばり、動作の遅さ、姿勢の保持困難の改善
副作用

突発的な睡眠、眠気、病的な賭博、性欲の増加、買いあさり、過食、かぶれ(貼り薬のみ)など

突発的な睡眠や眠気が現れることがあるため、車の運転や高所作業、危険な機械操作などを避ける必要があります。

ドパミン代謝阻害薬|ドパミンの作用時間を伸ばす

ドパミン代謝阻害薬は、ドパミンを分解してしまう酵素の働きを抑える薬です。その結果、ドパミンの作用時間を伸ばすことができL-ドパの量を減らすことができます。

薬剤名 エフピー、アジレクト、スタレボ、コムタン
投与方法 内服薬
効果 ドパミンの作用時間の延長による症状の改善
副作用 L-ドパの効果増強によるジスキネジアや吐き気など

L-ドパの効き目が弱くなった際に併用する薬です。L-ドパの副作用が現れる恐れがあるため注意が必要です。

ドパミン遊離促進薬|ドパミンの分泌を促す

ドパミン遊離促進薬とは、ドパミンの分泌を促すための薬です。主にジスキネジアを抑えるために使用します。(文献1

薬剤名 シンメトレル
投与方法 内服薬
効果 ジスキネジアの改善
副作用 高熱、頻脈、めまい、立ちくらみ、頭痛、便秘、吐き気など

内服中止後に高熱が現れることがあるため注意が必要です。また、腎臓から排泄される薬であるため、透析を受けている方には使用できない薬です。

ドパミン賦活薬|ドパミンの分泌を促す

ドパミン賦活薬(ふかつやく)はドパミンの分泌を促す薬ですが、そのメカニズムは十分に解明できていません。

薬剤名 トレリーフ
投与方法 内服薬
効果 運動症状、ふるえ、ウェアリングオフ現象(L-ドパの効き目が悪くなり運動症状の悪化と改善を繰り返すこと)の改善
副作用 ジスキネジア、食欲不振、眠気、便秘など

L-ドパやドパミンアゴニストによる治療効果が低い場合に補助薬として使用を検討します。

アデノシンA2A受容体拮抗薬|興奮している神経を抑制する

アデノシンA2A受容体拮抗薬は、アデノシンA2A受容体(神経活動や血管の拡張などに関連する器官)の働きを阻害して、興奮している神経を静める薬です。その結果、運動症状を改善できます。(文献1

薬剤名 ノウリアスト
投与方法 内服薬
効果 運動症状、ウェアリングオフ現象の改善
副作用 ジスキネジア、尿タンパク、幻覚、幻視、傾眠、便秘、吐き気、胸の不快感など

突発的な睡眠や眠気が現れることがあるため、車の運転や高所作業、危険な機械操作などを避ける必要があります。

抗コリン薬|アセチルコリンの働きを抑制する

パーキンソン病になるとドパミンが減少して、アセチルコリン(運動に関連する神経物質)の働きが強くなります。抗コリン薬はアセチルコリンの働きを抑えることで症状を改善します。(文献1

薬剤名 パーキン、アーテン、アキネトン
投与方法 内服薬
効果 ふるえ、筋肉のこわばり、流涎(りゅうぜん:よだれのこと)などの改善
副作用 喉の渇き、目のかすみ、吐き気、食欲不振、便秘、排尿障害、認知機能の低下など

抗コリン薬は認知機能の低下などの報告があるため、高齢者や認知症を診断されている方は内服を控える必要があります。

ノルアドレナリン補充薬|ノルアドレナリンを補う

ノルアドレナリン補充薬は、パーキンソン病の進行に伴い不足するノルアドレナリン(血圧上昇などに関連するホルモン)を補う薬です。(文献1

薬剤名 ドロキシドパ、ドプス
投与方法 内服薬
効果 立ちくらみ、すくみ足の改善
副作用 吐き気、胃の不快感、食欲不振、血圧上昇、頭痛、幻視、めまい、動悸など

ノルアドレナリン補充薬は、Hoehn-Yahr(ホーン・ヤール)重症度分類のⅢ度と診断された方に使用が検討されます。

パーキンソン病の治療薬の主な副作用

パーキンソン病の治療薬は以下のように内服時期によって現れやすい副作用が異なります。

  • 治療薬を飲み始めた際に現れやすい副作用
  • 長期間治療薬を内服している際に現れやすい副作用

副作用が現れた際は医師に相談してください。それぞれの詳細を解説します。

治療薬を飲み始めた際に現れやすい副作用

治療薬を飲み始めた際に現れやすい副作用には、以下のようなものがあります。

副作用 詳細 対処法
胃腸の症状 吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘など 吐き止めや便秘薬で対応
睡眠障害 突発的な睡眠、眠気など 内服中は運転や機械操作など、危険を伴う作業は控える
立ちくらみ 立ち上がりのふらつき・めまいなど ゆっくりと立ち上がる
症状が強い場合は予防薬を使用

長期間治療薬を内服している際に現れやすい副作用

長期間治療薬を内服している際に現れやすい副作用には、以下のようなものがあります。

副作用 詳細
幻覚 あるはずのないものが見える症状。
むくみ 足に水分が溜まり腫れること。
行動障害 買いあさりやギャンブル依存、性欲の亢進などの症状。
ジスキネジア 手や足、肩、口、顎などが自分の意思とは関係なく動いてしまう症状。

これらの症状が現れた際は、薬の量や種類を調整して対応します。とくに行動障害は恥ずかしがらずに医師に相談してください。

パーキンソン病に禁忌となる薬一覧

以下のような薬は、パーキンソン病の症状を悪化させる恐れがあるため禁忌となる場合があります。(文献2)(文献3

  • ブロムペリドール
  • スルピリド
  • ブロナンセリン
  • ハロペリドール
  • セレネース
  • チミペロン
  • バルネチール
  • ハロマンス
  • フルデカシン

内服中の薬はすべて医師に伝えるようにしてください。

パーキンソン病の治療薬を内服する際の注意点

パーキンソン病の治療薬を内服する際には、以下のような注意点があります。

注意点 詳細
自己判断で薬を中断しない 症状が改善しても内服を中断すると症状の悪化や高熱など副作用の恐れがある
栄養素が減少する場合がある

L-ドパは亜鉛やビタミンB12を減少させる場合がある
口内炎や味覚の変化、しびれなどの症状が現れた際は医師に伝える

飲み合わせできない薬がある 薬やサプリメントの中にはパーキンソン病の薬と併用できないものがある
サプリメントを含め、内服中の薬等はすべて医師に伝える
貼り薬はしばらく押さえる

貼り薬を肌に密着させるため、しばらく手のひらで押さえる
貼り付ける場所は脂肪の少ない場所にする

酸化マグネシウムなどの便秘薬もパーキンソン病の薬の効果を低下させる場合があります。どのような薬でも内服中の薬は医師に伝えることが大切です。文献4

パーキンソン病における再生医療

近年パーキンソン病における再生医療の研究が多く行われています。再生医療とは、人が本来持っている「再生する力」を活用した治療方法です。

パーキンソン病における再生医療では、iPS細胞を用いてドパミン神経前駆細胞を作製し、これを脳内に移植する治療方法の研究が進んでいます。京都大学では実際に臨床試験が行われ、有望な結果が得られています。(文献5

再生医療は自身の細胞を用いるため、拒絶反応や副作用が少ない治療が可能です。当院の公式LINEでは、再生医療の情報提供や症例紹介、簡易オンライン診断を実施しております。パーキンソン病について気になる症状がある方は、ぜひチェックしてみてください。

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まとめ|パーキンソン病の薬の効果や副作用は適宜医師に相談しよう

パーキンソン病の治療薬は症状や経過により投与する種類が異なります。自己判断での中断などは症状の悪化や悪性症候群(高熱や筋肉のこわばり、意識障害など)を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。

主な副作用として、飲み始めは「胃腸の症状や睡眠障害、立ちくらみ」、長期間内服している際は「幻覚や精神症状、ジスキネジア」などが現れる傾向です。

内服してはいけない薬や飲み合わせてはならない薬もあるため、その他の内服中の薬はすべて医師に伝えてください。薬を飲んでも症状が改善しない場合や飲み忘れが多い方、副作用が現れている場合は、医師に相談して治療方針を決めましょう。

パーキンソン病の治療薬に関する疑問

薬を飲まないとどうなる?

パーキンソン病の薬を適切に内服しないと症状の悪化や悪性症候群を引き起こすことがあります。「お薬が飲みにくい」「飲み忘れてしまう」などがある場合は医師に相談してください。

飲み忘れたときの対応方法は?

飲み忘れたときの対応方法は、事前に医師に確認しておいてください。飲み忘れが多い場合は、1日1回飲めば24時間効果がある薬や、貼り薬に変更するなどの対応方法があります。

動きたいときに動けないときはどうすればいい?

動きたいときに動けない場合は、薬の量や種類の調整を検討する必要があるため医師に相談してください。日頃からパーキンソン病の症状日誌(症状を正確に把握するための日記)を記録することも大切です。

バナナと薬は一緒に飲んではいけない?

バナナはL-ドパの作用を弱める恐れがあります。(文献4バナナと薬を同時に摂取するのは控えてください。

参考文献

(文献1)
パーキンソン病のリハビリテーション|慶應義塾大学病院 パーキンソン病センター

(文献2)
向精神薬 禁忌薬剤・禁忌疾患一覧|やまと精神医療センター

(文献3)
「禁忌」、「慎重投与」における「パーキンソン病の患者」に係る使用上の注意改訂のお知らせ|沢井製薬株式会社

(文献4)
パーキンソン病センター|鳥取医療センター

(文献5)
「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」において安全性と有効性が示唆|京都大学医学部附属病院