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パーキンソン病とは?初期症状や進行に伴うサインを解説

「最近、手足がよく震える」
「何もない場所で転ぶことが増えた」
その症状はパーキンソン病のサインかもしれません。
パーキンソン病は、高齢になるほど発症のリスクが上がる病気のひとつです。
手足が震える、身体がうまく動かず動作がゆっくりになったり転ぶことが増えるといった身体に現れる症状が有名です。パーキンソン病は病状が悪化すると、認知症や寝たきりになってしまうリスクが高まってしまいます。
この記事では、パーキンソン病の症状や治療法について解説します。
疑わしい症状が出ていて病院にいくべきか悩んでいる人、もしくは家族がパーキンソン病ではないかと疑っている人はぜひ参考にしてください。
目次
パーキンソン病とは?震える症状が特徴的な疾患
パーキンソン病とは、脳の中でドパミンという物質を作る神経細胞が減少することで起こる疾患です。安静時に手足が震えてしまう「振戦(しんせん)」という症状が特徴的です。
50代以降の人の発症率が高く、高齢になるほど発症率は上がります。ごくまれに40代以下の人が発症する「若年性パーキンソン病」もあります。
進行性の疾患であるため、現状完治は厳しいといわれています。しかし、薬物療法や生活習慣の見直しを行うことで症状を改善することは可能です。
パーキンソン病の症状
パーキンソン病の症状は、身体の動作として現れる「運動症状」と、便秘、うつ状態など動作ではない「非運動症状」のふたつに分類されます。
パーキンソン病では、代表的な4つの運動症状が現れることが多く、これらは「4大症状」と呼ばれています。
一方で、運動症状よりも早い段階で非運動症状が現れることもあり、初期症状として見逃されやすいため注意が必要です。病気が進行すると、これらの症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたすようになります。
それぞれの症状について詳しく解説します。
パーキンソン病の4大症状
パーキンソン病の最も顕著な症状は以下の4つです。
これらの症状は病気の進行とともに徐々に現れ、日常生活に影響を与えるようになります。
振戦(ふるえ)
安静にしているときに手や足が震えてしまう症状です。椅子に座り膝に置いている手が震えるなど、力を入れていない状態のときに起こります。
動作を始めると震えが止まることが多いのが特徴です。
姿勢保持障害
バランスを崩しやすく、転倒しやすくなってしまいます。
立っているときや歩いているときに体が不安定になり、ちょっとした段差でもつまずきやすくなるため、日常生活では転倒しないよう注意が必要です。
筋強剛・筋固縮
筋肉、関節の動きが悪くなり、体がこわばってしまう症状です。
自覚症状はあまりありませんが、他の人に手足を動かされた際に抵抗を感じます。
動作緩慢
動き出しなどが遅くなり、細かい動きが困難だと感じるようになります。
歩き始めに時間がかかる、字を書くのに時間がかかる、ボタンをかけるのが難しくなるなど、日常的な動作全般に影響が現れます。
これらはパーキンソン病の4大症状とも呼ばれています。
見逃されやすい初期症状
パーキンソン病の初期症状として、精神症状などの「非運動症状」もあります。
非運動症状の中には運動症状が顕在化するより前に現れるものもあります。
非運動症状としては以下の症状が挙げられます。
- 便秘
- 嗅覚の低下
- 睡眠障害
- うつ症状、不安感などのメンタル面の不調
- 幻覚・妄想
- 疲れやすい
- 汗をかきやすくなる
自身、家族がパーキンソン病かもしれないと疑っている人は、上記の非運動症状にも着目してみてください。
日常生活に支障をきたす末期症状
末期になると、運動症状が悪化してしまい、日常生活が困難になる可能性が高まります。
例えば、咽頭周りの筋肉が固まり動きが悪くなることで、嚥下障害を起こすことがあります。
そのほか、姿勢保持障害の悪化により転倒が増える、車いすもしくは寝たきりの生活になってしまい介助が必要な生活になってしまうなど、身体への影響は大きいです。
また、認知機能が低下することによって認知症になってしまうリスクも高まってしまいます。
パーキンソン病が直接的な原因となって亡くなったという例は現状あまり見られませんが、パーキンソン病をきっかけに発症した合併症によって亡くなった事例はあるため注意が必要です。
パーキンソン病にかかりやすい人の特徴
パーキンソン病の発症に関わる要因として、以下のようなことが知られています。
- 65歳以上の高齢者 ・家族にパーキンソン病の人がいる
- 若年性パーキンソン病の家族歴がある
- 几帳面で融通が利かない性格
- 飲酒・喫煙をしている
※性格や生活習慣との関連については研究段階であり、あくまで参考情報です。
基本的には高年齢になるにつれて発症リスクが上がります。
パーキンソン病の罹患者は65歳以上はおよそ100人に1人、40歳以下は10万人に1人以下といわれています。(文献1)
わずかながら遺伝子要因による発症の報告もあります。若年性パーキンソン病の場合、家族の遺伝の可能性も考えられています。
几帳面や融通が利かない性格の人はパーキンソン病になりやすいという話もありますが、科学的な証明はされていません。
初期症状としてうつ症状や不安障害などが出ることもあることから、そのように考えられている可能性はあります。しかし、病気との関連性が証明されているわけではないため、あまり深刻に考えすぎないほうが良いでしょう。
飲酒、喫煙が発症の原因になっている可能性も指摘されていますが、まだ十分な研究結果は出ていません。外部要因はパーキンソン病との関連性が不明確であるため、まだ解明されていない部分が多いです。
パーキンソン病の治療法
パーキンソン病の治療は、症状の進行を遅らせ、患者様の生活の質を向上させることを目的として行われます。
現在の主な治療は薬物療法ですが、十分な効果が得られない場合や長期間の治療で薬の効果が弱くなった場合には、手術療法も検討されます。
また、症状を緩和するには、運動や食事などの生活習慣の改善も重要です。さらに近年では、再生医療の研究も進んでいます。
それぞれの治療法について詳しく解説します。
薬物療法
薬物療法は、足りなくなったドパミン細胞を補うことが目的です。
ドパミンを補うレボドパや、ドパミンと似た働きをする作用があるドパミンアゴニストを使用します。
パーキンソン病は進行性の病気であるため、罹患期間が長ければ長いほど薬の効果が短くなってしまいます。
薬物療法を5年以上続けると、薬が効いて身体が動きやすい時間と薬の効果が切れて身体が動かなくなってしまう時間を繰り返す「ウェアリング・オフ現象」という症状や、手足が勝手に動いてしまう「ジスキネジア」という症状も見られるようになります。
薬による効果が十分でないと医師が判断した場合、ほかの治療として挙げられるのが手術療法です。
手術療法
薬物療法で十分な効果が得られなかった場合や、薬物療法を長期間行った結果、薬の効果が弱まってしまった場合は、手術療法も検討されます。
手術では「脳深部刺激療法」という手法を用います。脳に植え込んだ電極で電気刺激を与えることで、パーキンソン病の症状を抑えることが目的です。
脳の深部にある視床下核や、淡蒼球内節という部位に刺激を与えます。
薬物療法同様、あくまで症状の緩和が目的となるため、手術による完治は現状想定されていません。
また、脳深部刺激療法は誰でも受けられる手術ではありません。
脳深部刺激療法はリスクの一つとして認知機能の低下が指摘されています。患者様によっては急に認知症を引き起こしてしまったり、精神症状を悪化させてしまう可能性があるため注意が必要です。
以下の条件に当てはまる人は手術を受けられない可能性があります。
- 認知症をすでに患っている人
- 薬物療法の副作用などではない精神症状を患っている人
- 脳萎縮を起こしている人
手術療法を検討する場合はリスクも十分に理解し、医師と相談して決めましょう。
生活習慣の改善
パーキンソン病の症状の改善に運動は効果があるとされています。
運動は姿勢の改善、ドパミン不足の解消、うつや不安などのメンタル面の不調を軽減するといったメリットがあります。
激しい運動は控え、1日8000歩程度の散歩を体調に合わせて行うことが推奨されています。また、良い姿勢を保つために鏡を見て姿勢のチェックも行うとよいでしょう。
また、パーキンソン病の患者は便秘を伴うことが多いため、食事はよく噛み、ゆっくり食べるようにしましょう。
再生医療
パーキンソン病に対する再生医療は、iPS細胞や幹細胞と呼ばれる細胞を用いて治療を行う新しい医療技術です。
近年、パーキンソン病の治療として再生医療は多くの研究がされています。
パーキンソン病はドパミン神経細胞が減少することが原因で起こる病気です。再生医療では、これらの失われた神経細胞を補うことを目指しています。
実際、京都大学の研究グループが行ったiPS細胞を用いた治験では、動きづらくなった関節や筋肉のこわばりが解消されたという症例も出ています。(文献2)
再生医療では自身の細胞を使用するため、免疫拒絶反応のリスクが少なく、副作用の少ない治療が可能です。
パーキンソン病の症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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パーキンソン病の予防・リハビリ方法
パーキンソン病の予防・リハビリには、筋力の強化が重要です。とくに下半身の筋力は非常に重要です。
下半身には身体を支える主要筋肉が多く、強化することで転倒を防ぐことができます。
予防・リハビリに最適な運動を紹介します。
かかと上げ運動
かかとを上げ、指先で地面をつかむ動作です。
- 足を肩幅程度に開いて立つ
- ゆっくりとかかとを持ち上げてつま先立ちになる
- 足指で床をしっかりと掴むように意識する
- 2-3秒間その姿勢を保持してからゆっくりとかかとを下ろす
ふくらはぎの筋力強化やバランス感覚の向上、足裏の感覚改善に効果的です。
重心移動運動
立った状態で重心を前後左右に移動させます。
- 足を肩幅に開いて立つ
- 転倒しないよう壁や手すりのそばで行う
- 前方は体重を足の指先側にかけ、後方はかかと側にかける
- 左右は片足ずつに体重をかけて各方向3-5秒間保持
体幹バランスの改善や転倒予防、姿勢制御機能の向上に効果があります。
ステップ動作
その場でかかとを交互に持ち上げます。
- 足を軽く開いて立つ
- 右足のかかとを上げて膝を軽く曲げる
- 右足を下ろしながら左足のかかとを上げる
- リズミカルに交互に繰り返す
- 膝から足を持ち上げる足踏み運動や手を交互に振る動作を入れるとさらに良い
下肢筋力強化や歩行能力の維持改善、協調性の向上、心肺機能の改善に効果があります。
膝から足を持ち上げる足踏み運動や、手を交互に振る動作を入れるとさらに良いです。
まとめ|パーキンソン病は早期発見が重要!違和感を感じたらまず医師に相談を
パーキンソン病は、脳のドパミン神経細胞が減少することで起こる進行性の神経変性疾患です。
代表される症状は振戦(震え)、姿勢保持障害、筋固縮、動作緩慢などがあります。そのほか便秘やうつといった非運動症状と呼ばれる症状もあり、発症初期に見られることが多いです。
高齢になるほどパーキンソン病の発症リスクは上がります。
進行すると日常生活に支障をきたし、身体が動かせずに要介護の生活となる危険性があります。また、認知機能が低下し、認知症を患ってしまう可能性もあります。
治療は主に薬物療法ですが、長い治療期間の中で薬の効果が薄れてしまった場合手術療法も検討されます。運動や生活習慣の改善も症状の緩和に役立ちます。
また、手術を必要としない治療法として再生医療もあります。
自身の細胞を使用するため、免疫拒絶反応のリスクや副作用の少ない治療が可能です。
治験段階ではありながらもiPS細胞を用いた治療の症例も出ており、今後が期待されている治療法です。
参考文献
(文献1)
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」2018年
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_07.pdf(最終アクセス:2025年6月26日)
(文献2)
Sawamoto, N., et al. (2025).Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson’s disease. Nature,641,pp.971–977
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08700-0(最終アクセス:2025年6月26日)