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食道静脈瘤は肝硬変が原因のひとつ|症状・診断・治療方法を徹底解説

肝硬変 食道静脈瘤
公開日: 2025.12.13

食道静脈瘤は、肝硬変によって発症する重大な合併症のひとつであり、破裂すれば命に関わる危険性もある疾患です。

しかし、自覚症状に乏しく発見が遅れるケースも多いため、正しい知識と早期対応が求められます。

本記事では、食道静脈瘤の原因や症状、診断法、治療の選択肢、日常生活での注意点をわかりやすく解説します。

受診前に不安を抱える方や、ご家族のサポートを考えている方は参考にしてみてください。

なお、肝臓の疾患に対しては、「再生医療」という治療法があります。

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食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつ

食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつであり、破裂すると命に関わる大量出血を引き起こす危険があります。

肝硬変を抱える患者の約50%に合併するとされており、極めて高い頻度です。(文献1)

肝硬変を患うと、血液の流れが肝臓で滞って血圧が異常に上昇します。

その結果、血液は肝臓を迂回して別の経路を通ろうとしますが、食道の静脈に過剰な血液が流れ込んでこぶ状に拡張するのが「食道静脈瘤」です。

自覚症状が乏しいまま進行することも多いため、肝硬変と診断された時点で定期的に内視鏡検査を受けましょう。

肝硬変の原因や症状について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

肝硬変から食道静脈瘤になるメカニズム

食道静脈瘤の主な原因は、肝硬変による「門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)」です。

門脈圧亢進では、肝臓内の血流が障害され、門脈と呼ばれる血管にかかる圧力が異常に高くなります。

通常、腸や脾臓からの血液は門脈を通じて肝臓へ流れ込みますが、肝硬変によって肝臓の組織が線維化すると、血液がスムーズに流れなくなります。

その結果、血液は別の経路を通って食道や胃の静脈などに流れ込み、血管が膨らんで瘤(こぶ)状になるのです。

このように、肝硬変による血流障害は門脈系全体のうっ血を引き起こし、結果として食道静脈瘤が形成されます。

食道静脈瘤が破裂したらどうなる?主な症状

食道静脈瘤が破裂すると、命に関わる大量出血を引き起こす可能性があります。

以下が代表的な症状です。

  • 吐血:口から真っ赤な血液を吐く、もっとも目立つ初期症状
  • 下血:腸内を通って排泄される血液により、黒色のタール状の便が出る
  • 貧血:大量の失血により血圧が低下し、動悸・息切れ・めまいなどを伴う

上記の症状が現れると、短時間で急激に容体が悪化するケースがあり、緊急に治療しなければなりません。

とくに、肝硬変が進行すると血液が止まりにくくなる傾向があるため、破裂前の段階で発見して予防的な治療を行うことが重要です。

肝硬変による食道静脈瘤の診断

肝硬変と診断された患者に対しては、食道静脈瘤の有無を確認するために定期的な内視鏡検査を行います。

なかでも、上部消化管内視鏡(胃カメラ)は、食道内の静脈の拡張を直接観察可能です。食道静脈瘤の有無だけでなく、大きさや形状、表面の変化などをもとに破裂リスクを評価します。

また、必要に応じて色素や特殊光を用いた詳細な観察が行われることもあります。

なお、CT検査や超音波内視鏡が補助的手段として用いられる場合がありますが、診断の中心は内視鏡です。

症状がない段階でも発見できるため、肝硬変と診断されたら定期的な検査を受け、破裂による重篤な出血を未然に防ぎましょう。

肝硬変による食道静脈瘤の治療法

食道静脈瘤の治療は、破裂による出血を防ぐことを最優先の目的としています。

肝硬変に伴って発生する食道静脈瘤は、症状がないまま発見されることも多いため、瘤の大きさや形状、破裂リスクに応じた適切な治療法の選択が重要です。

ここでは、食道静脈瘤の治療法について詳しく解説します。

内服治療

食道静脈瘤に対する内服治療では、主に門脈圧を下げる薬剤が使用されます。

代表的な薬剤が、プロプラノロールやカルベジロールといった「β遮断薬(ベータブロッカー)」です。

β遮断薬は心拍数を下げる薬で、門脈系への血流の減少によって静脈瘤の内圧を低下させ、破裂のリスクを軽減します。

ただし、低血圧や不整脈などの副作用が現れる場合もあるため、定期的な診察と血圧・心拍の管理が重要です。

また、継続的なフォローアップのもとで、他の治療法と併用されるケースもあります。

内視鏡治療

内視鏡治療は、食道静脈瘤の破裂を防ぐための代表的な治療法です。

主に薬剤を直接注入して血管を固める「静脈瘤硬化療法(EIS)」と、輪ゴムで瘤を縛り壊死させる「内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)」の2つの方法があります。

いずれも出血のリスクを大きく下げる効果があり、瘤の状態に応じて使い分けられます。

処置後は、再発予防のために定期的な内視鏡検査が必要です。

カテーテル治療

細い管状の器具を血管や体内に挿入する「カテーテル治療」は、門脈圧の低下を目的とする手術的治療法のひとつです。

代表的な方法に「経皮的門脈圧シャント術(TIPS)」があります。

肝静脈と門脈の間に人工のバイパスを作って門脈圧を下げ、静脈瘤への血流を減少させるのが特徴です。

主に、内視鏡治療が難しいケースや再発を繰り返す重症例に適用されます。

ただし、高度な技術を要するため、専門の施設で実施されるのが一般的です。

外科手術

外科手術は、内視鏡やカテーテル治療で効果が不十分な重症例に対して検討される治療法です。

門脈と体循環をつなぐ「門体シャント術」や、脾臓を摘出して血流量を減らす「脾摘術」などがあります。

手術は、門脈圧を根本的に下げることが目的です。

ただし、全身への負担が大きく、重度の肝機能障害がある患者には適さないケースがあります。

現在、外科手術は限られた救済的適応とされており、状態に応じて慎重に判断される点に留意しておきましょう。

バルーンタンポナーデ法

バルーンタンポナーデ法は、食道静脈瘤が破裂して大量出血を起こした際に行われる一時的な止血処置です。

専用のチューブを鼻や口から挿入し、食道内でバルーン(風船)を膨らませて静脈瘤を圧迫し、出血を物理的に止めます。

通常、24時間の留置が限度ですが、出血が再発した場合は必要に応じて食道バルーンをさらに24時間再拡張することも可能です。(文献2)

ただし、応急処置として有効ではあるものの、再出血のリスクが高いため根本的な治療につなげるまでのつなぎの処置であり、あくまで緊急時の対応策に位置づけられています。

再生医療という選択肢

近年、肝硬変に伴う合併症への対応として「再生医療」が検討されるようになってきました。

再生医療とは、患者様の体から採取した脂肪由来の幹細胞を培養し、点滴で体内に戻す治療法です。幹細胞が持つ、他の細胞に変化する「分化能」が肝組織に対して働きかけることが期待されています。

患者様自身の幹細胞を用いるため、拒否反応のリスクが低いのが特徴です。また、手術や入院を必要としません。

肝硬変や合併症でお悩みの方は、治療法の一つとして再生医療もご検討ください。当院「リペアセルクリニック」での肝硬変に対する症例も参考になります。

肝臓疾患に対する再生医療について詳しくは、以下のページで解説しているのでご覧ください。

手術しなくても治療できる時代です。

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肝硬変で食道静脈瘤になった場合の予後・生存率

肝硬変の合併症のひとつである食道静脈瘤は、破裂すると生命を脅かす重大な疾患です。

破裂による初回出血後の6週死亡率は15〜25%に達するとされ、早急な対応が求められます。(文献3)

また、一度出血した患者の多くは6か月以内に再出血を起こすリスクが高く、再出血時の死亡率が高い傾向がある点も見逃せません。

予後は、出血の有無だけでなく、肝機能の重症度にも大きく左右されます。

食道静脈瘤の早期発見と適切な予防的治療、肝機能の維持が長期的な生存率向上の鍵です。

肝硬変で食道静脈瘤になった場合の注意点

肝硬変によって食道静脈瘤を発症した場合、命に関わる出血リスクを常に抱えることになります。

適切な治療はもちろん、再発予防を意識した日常生活も大切です。

ここでは、肝硬変の合併症で食道静脈瘤になった場合の注意点を解説します。

疾患と治療のバランスが重要

食道静脈瘤の治療は破裂リスクを抑えるのが最優先ですが、同時に肝機能そのものの管理も欠かせません。

過剰な処置や薬剤の使用は、かえって肝臓に負担をかける場合もあります。

疾患の進行度と体調のバランスを見極めながら、治療方針を選択することが重要です。

経過観察が必要

食道静脈瘤は治療後も再発する可能性が高いため、内視鏡検査による定期的な経過観察が不可欠です。

とくに、静脈瘤の再形成や出血リスクの高まりを早期に察知することで、迅速な対応が可能になります。

治療後も決して油断せず、継続的な受診を欠かさないようにしましょう。

食事の注意点

肝硬変が原因の食道静脈瘤では、食事にも細心の注意が必要です。

硬い食べ物や刺激の強いものは食道粘膜を傷つけ、静脈瘤の破裂を誘発する恐れがあります。

たとえば、以下のような食事は避けたほうが良いでしょう。

  • 乾燥したパンの耳
  • 揚げ物
  • 香辛料の強い料理

柔らかく調理した食事をよく噛んで、ゆっくり食べる習慣が大切です。

ただし、食道静脈瘤以外にも疾患があれば、塩分の摂取制限や栄養バランスに配慮しなければならない場合もあるため、自己判断せず医師に相談しましょう。

肝硬変で注意すべき食事については、以下の記事でも紹介しています。

まとめ|定期的な経過観察で早期発見・治療

食道静脈瘤は、肝硬変によって引き起こされる重大な合併症のひとつであり、破裂すると生命に関わる危険があります。

多くの場合、自覚症状がないまま進行するため、早期発見が極めて重要です。

肝硬変と診断されたら定期的な内視鏡検査を受け、瘤の有無や状態を確認する必要があります。

また、治療を受けた後も再発のリスクは残るため、継続的な経過観察が欠かせません。

医師と連携しながら、食生活や服薬、生活習慣の改善にも取り組みましょう。

なお、肝臓の疾患には「再生医療」が治療の選択肢のひとつとして注目されています。

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肝硬変と食道静脈瘤に関連するよくある質問

食道静脈瘤に予兆はありますか?

食道静脈瘤は、破裂するまでほとんど自覚症状がないことが多い疾患です。

ただし、破裂が近づくと胸部の違和感や黒色便、軽度の吐血といった前兆が現れる場合があります。

とはいえ、こうした予兆は非常にあいまいであり、明確なサインとして現れるとは限りません。

したがって、肝硬変と診断された時点で、症状の有無にかかわらず、定期的な内視鏡検査による監視が極めて重要です。

食道静脈瘤は極めて重篤な疾患であり、早期発見が予防的治療と命を守る第一歩となる点を肝に銘じておきましょう。

食道静脈瘤破裂で亡くなった芸能人は?

俳優の石原裕次郎さんは、肝臓がんの出血で亡くなったとされています。

ただし、食道静脈瘤破裂が直接の原因で亡くなったとの、確かな情報は確認できませんでした。

参考文献

(文献1)
New index to predict esophageal variceal bleeding in cirrhotic patients|PMC(PubMed Central)

(文献2)
Medscape|Sengstaken-Blakemore Tube Placement Technique

(文献3)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37351074/|PubMed