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肝硬変による腹水は治療で治るのか?予後と余命について 

肝硬変による腹水は治療で治るのか?予後と余命について 

肝臓の病気である肝硬変が進行すると様々な症状が出現します。そのうちの一つが腹水であり、吐き気や嘔吐、息切れに繋がります。しかし、治療を行えば腹水の改善は見込めます。

この記事では肝硬変による腹水に焦点を当て、以下について解説していきます。

  • ・腹水の原因
  • ・腹水の診断
  • ・腹水の治療方法
  • ・腹水の予後

さらに、腹水のメカニズムについても解説していきます。ぜひご参考にされてください。

肝硬変 腹水

肝硬変による腹水は治る?

肝硬変は、長年のアルコール摂取やB型・C型肝炎ウィルス、自己免疫疾患、薬剤などが原因となり、慢性的に肝細胞の破壊と再生が繰り返された結果、線維化によって硬くなり、肝臓の機能が低下する病気です。

肝硬変で黄疸や腹水をはじめとする症状が発現しているということは、「非代償期」に突入したということです。それはつまり、肝硬変の病状が進行し、肝機能を補えないほどの状態まで悪化しているという意味になります。だからといって手遅れというわけではなく、多くの場合は内科的な治療法で腹水の改善がみられます。

しかし、中には難治性腹水となり、内科的治療に反応せず、外科的治療を有する症例もあります。今自覚している症状が肝硬変による可能性があると思われた方は、すぐに消化器内科にかかりましょう。

そもそも腹水とは?

腹腔内にあるタンパク質の含まれた液体が過剰になることを、腹水(腹水貯留)といいます。

正常な状態でも腸などの臓器がスムーズに動けるよう、腹腔内には常に20〜50ml程度の液体があります。しかし、病気によって腹水の産生過剰や排出不良が起こると、腹腔内の液体量が増え、腹水となるのです。

腹水の原因

腹水の原因として最も一般的なのは肝硬変をはじめとする肝疾患ですが、それ以外にも以下のような原因があります。

【肝疾患以外に腹水を引き起こす病気】

  • ・腹膜炎
  • ・癌
  • ・膵炎
  • ・門脈圧亢進症
  • ・心不全
  • ・腎不全
  • ・卵巣腫瘍 など

肝硬変で腹水が溜まる機序

腹水が生じる機序は複雑なので、その全てを説明するのは難しいのですが、概要を説明していきます。

腹水が起こるメカニズム

ますは肝臓が腹水を生じる機序について述べます。

肝臓には門脈(もんみゃくという太い血管があり、他の腹部臓器から返ってきた血液はこの門脈を通って肝臓に入っていきます。しかし、肝硬変によって肝臓の線維化が進むと、肝臓全体が硬くなり、肝臓内の血流が阻害され、結果として門脈圧が上昇します。門脈圧が上昇すると、類洞と呼ばれる肝毛細血管の圧も上昇し、肝臓の表面や血管からタンパク含有量の多い水分が漏れ出て、腹水となります。

さらに、肝臓はアルブミンと呼ばれるタンパクを合成する機能を持ちますが、肝機能の低下とともにこのアルブミンの生成もできなくなり、低アルブミン血症を生じます。アルブミンは血管内に水分を留める役割を担うため、アルブミンが不足すると水分が血管外へ漏れ、腹水となります。

腹水の増悪

次に、肝臓の変化が全身にどのような影響をもたらし、そして腹水を増悪させるのかについて説明していきます。

門脈圧の亢進は、他の臓器の血流も滞らせます。そうすると腸管は浮腫を起こし、動きが鈍くなった腸管内では細菌増殖が起こります。その細菌はやがて腸管壁を超え、全身に炎症反応が起き、血管拡張などを生じます。

肝臓での変化や上記の血管拡張により、全身をめぐる血液量は減少します。これを補おうと、今度は腎臓が水やナトリウムの再吸収などを行い、身体に水分を溜め込もうとします。身体の水分を排出できないことにより、腹水は増悪していきます。

腹水で現れる症状

少量の腹水では特に症状はみられません。

腹水が多い状態では、お腹が大きく膨らみ、体重も増加します。腹水が胃などの内臓を圧迫すると、嘔気・嘔吐や食欲低下、息切れ、むくみ、倦怠感などを自覚するようになります。

腹水の自覚症状

  • ・嘔気
  • ・嘔吐
  • ・食欲低下
  • ・息切れ
  • ・むくみ
  • ・倦怠感

また、合併症として腹水の感染が起きることがあり、これを特発性細菌性腹膜炎と呼びます。

肝硬変で腹水を生じている人、特に多量飲酒をしている人に多くみられます。症状としては、お腹を押した時に痛みを感じるほか、発熱、体調不良、錯乱、意識障害、眠気などを生じます。

特発性細菌性腹膜炎の症状

  • ・お腹を押した時の痛み
  • ・発熱
  • ・体調不良
  • ・錯乱
  • ・意識障害
  • ・眠気

重症化すると生死に関わるため、上記の症状がある場合にはすぐに病院へ行き、早急に抗菌薬による治療を受けましょう。

腹水の診断方法

腹水の診断方法は以下の3つです。

医師の診察

腹水が大量であれば、医師の診察でもわかるでしょう。

指の腹でお腹をトントンと叩くと、腹水の溜まっているお腹は鈍い音がします。

画像診断

腹水の有無がはっきりしない場合や原因の検索が必要な場合は、超音波検査やCT検査などの画像診断が有用です。

腹水の成分分析

そのほか、腹水の成分を調べることによって原因を探る方法もあります。

お腹に針を刺して腹水を採取し、タンパク質の量や色、濁り、癌細胞・血液成分・細菌の有無などを調べ、それらの情報をもとに原因を検討します。

腹水の内科的治療

腹水に対する治療には、まず内科的治療から行います。

塩分の制限

はじめに行う治療法は、食事療法です。

肝硬変では栄養療法がとても重要なのですが、特に腹水の改善には塩分制限が有用です。1日の塩分摂取は5-7gとします。

上記の腹水が溜まる過程で、腎臓でのナトリウム再吸収について述べました。このように肝硬変では、ナトリウムが溜まりやすくなるため、ナトリウムを含んだ塩分の制限が必要となるのです。

実際に塩分制限により、腹水の早期減少や入院期間の短縮、利尿薬の減量が得られたと報告されています。

食事療法のみでは効果不十分と判断された場合、利尿薬が開始されます。

利尿薬

利尿薬の使用によって、尿からのナトリウム排泄を促進します。少量からはじめ、効果と合わせて徐々に増量します。

アルブミン療法

また、アルブミン低下に対するアルブミン補充療法も必要時行われます。

注意したい薬の種類

そのほか、腹水のある肝硬変では中止した方が良い種類の薬剤があります。

腎機能を悪くするような痛み止めや血圧を下げる薬は、腹水治療の妨げとなる可能性があります。これらの薬剤を利用している人は、継続の可否について医師に確認しましょう。

内科的治療が効かない難治性腹水

ほとんどの症例は上記の内科的治療によって改善がみられますが、約5-10%は内科的治療への反応が乏しく、難治性腹水と診断されます。

難治性腹水を事前に予測するのは難しく、治療への反応をもってして判断されます。

しかし、ある研究では難治性腹水の特徴として、腎機能の悪化や交感神経系の亢進、そして腎臓に作用して血圧を上昇させようとする内分泌系の調節機構(レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系)の亢進がみられ、さらに門脈圧亢進もその発生に関与しているだろうと報告されています。

腹水の外科的治療

難治性腹水となった症例に対しては、外科的な治療も含めて検討していきます。

穿刺排液

まず、腹水貯留による腹部膨満感や呼吸困難の改善のため、穿刺排液を行います。

基本的には超音波の機械を用いて安全に穿刺できる場所を選択しますが、解剖学的に安全と思われる箇所を狙って刺すこともあります。居所麻酔を行ったのち、針を使って穿刺し、管を留置して自然に排液させます。

穿刺の頻度は主に1-2週間ごと、量は1回につき最大でも8Lまでとされています。一度に大量の腹水を引いてしまうと循環動態の変化が生じてしまうため、その患者さんが耐えられるであろうと思われる量に抑え、5L以上引く場合にはアルブミン補充も加えて行われます。

アルブミン製剤(タンパク質の補充)

アルブミン製剤でタンパク質を補充するほかにも、腹水濾過濃縮再静注法といって、排液した腹水を濾過器や濃縮器にかけ、自己のタンパク質を取り出し、それを点滴で体内に戻すという方法があります。

自分のタンパク質を体内に戻すため、アルブミン製剤を用いた場合に生じうる副作用を回避することができる点で有益とされています。

ちなみにこの副作用というのは、発熱やアナフィラキシーショック、顔面紅潮、蕁麻疹などになります。

経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS)

一つ目は経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS)と言われる血管内治療です。

全身麻酔下で血管内に細い管を挿入し、門脈と肝静脈の間にシャントと呼ばれる短絡路を作成し、門脈圧を下げます。

腹腔−静脈シャント術

二つ目は腹腔−静脈シャント術であり、腹腔内と中心静脈とを皮下を経由して繋ぎ、腹水を血管内に還流させる治療法です。

基本的には局所麻酔のみで行うことが可能ですが、長時間仰向けの体勢を保てないなどの際には全身麻酔を施すこともあります。

肝移植

最後は肝移植であり、これが唯一の根本的治療です。

脳死肝移植だけでなく、生きている人から肝臓の一部をもらう生体肝移植もあります。生体・死体合わせて、2021年と2022年はどちらも約420件の肝移植が施行されました。

限られた医療機関でしか受けられないうえ、待機時間も長いのが問題点です。

腹水貯留のある肝硬変の予後や余命

腹水の原因が肝硬変によるものでなく、まだ代償期の肝硬変であれば、治療によって予後は良好になり得るでしょう。

しかし、非代償期の肝硬変となり、様々な症状の一つとして腹水も生じているのであれば、予後が良好とはいえません。

ある研究では、非代償期の肝硬変の平均余命は2年以内と報告されています。さらに、難治性腹水になった場合は末期肝硬変に至ることが多く、極めて予後が不良と言われています。

ただし、非代償期の肝硬変であったとしても、治療によって症状の改善は見込めますし、肝移植を行えば予後を改善させることもできます。

まとめ・肝硬変における腹水の予後は治療法の選択が重要

肝硬変による腹水への理解に役立ちましたでしょうか。

肝硬変による腹水に焦点を当て、腹水のメカニズムや以下について解説しました。

  • ・腹水の原因
  • ・腹水の診断
  • ・腹水の治療方法
  • ・腹水の予後

肝硬変による腹水が生じた場合、それは肝硬変が非代償期に入ったことを示唆します。通常であれば食事療法や内服で改善しますが、中には腹水穿刺や手術療法を必要とする症例もあります。

肝移植が唯一の根本的治療ですが、他の治療でも腹水症状の緩和を期待できます。非代償期の肝硬変は予後が良好とはいえませんが、症状の改善に向けて前向きに治療を進めていきましょう。

 

No.10
監修:医師 渡久地 政尚

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