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【医師監修】糖尿病網膜症による失明率はどのくらい?進行度と失明リスクの関係もあわせて解説
「糖尿病網膜症で治療を受けているけれど、最近目のかすみや見えづらさを感じるようになった」
「網膜症が悪化しているかもしれない」
「糖尿病網膜症の場合、失明率はどのくらいなのだろう」
糖尿病網膜症と診断されている方の中には、失明を心配されている方も多いことでしょう。
糖尿病網膜症の方が失明する確率は、網膜症の進行度合いによって異なります。早期の段階で治療を進めた場合は失明リスクが低く、治療が遅れた場合はリスクが高くなると知っておきましょう。
本記事では、糖尿病網膜症の失明率や失明を予防するために必要な治療と行動について解説します。失明の不安解消のためにも、ぜひ最後までご覧ください。
糖尿病網膜症の原因である糖尿病に関しては、再生医療による治療も選択肢の1つです。
糖尿病治療や再生医療に関して詳しく知りたい方は、ぜひ電話相談をご利用ください。
目次
糖尿病網膜症による失明率
この章では、日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率および、糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由を解説します。
日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率
日本における糖尿病網膜症の有病率は、糖尿病患者の15%~23%とされています。これは、日本で行われている「舟形町研究」と「久山町研究」のデータから出された数字です。(文献1)
一方で、糖尿病網膜症で失明する方は網膜症患者の一部です。進行した糖尿病網膜症で失明する方や、失明の危険がある方は全糖尿病患者の20%程度と推定されています。(文献2)
糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由
糖尿病網膜症は、中途失明の主要原因の1つです。2019年度は、視覚障害の原因疾患で第3位でした。1位は緑内障で、2位は網膜色素変性症です。(文献3)
1989年には糖尿病網膜症が失明原因の第1位になっています。(文献2)
糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由は、「自覚症状が出てきた時点ですでに進行している」点です。
糖尿病網膜症の初期は自覚症状が乏しく、異変に気づいたときにはすでに進行しているケースが多いとされています。症状が現れた段階ですぐに治療を始めた場合は、視力を保てる可能性があります。しかし、症状を放置して治療を遅らせてしまうと、重症化しやすく、中途失明にもつながるのです。
糖尿病網膜症進行度と失明リスクの関係
糖尿病網膜症の進行度合いは大きく分けると以下の3段階です。
- 単純網膜症
- 前増殖性糖尿病網膜症
- 増殖糖尿病網膜症
進行するスピードには個人差があり、血糖コントロールが良好な方は進みが遅いといわれています。また、40代から50代といった比較的若い方は進行が速いとされています。(文献2)
単純網膜症の場合
糖尿病網膜症の初期です。網膜にある毛細血管に小さな出血や血管瘤(けっかんりゅう)、硬性白斑(こうせいはくはん)と呼ばれる症状が見られます。
多くの場合は自覚症状がなく、視力低下もほとんど見られません。この段階では、失明リスクは低いとされています。しかし放置すると進行してしまい、失明リスクが高くなります。
前増殖性糖尿病網膜症の場合
単純網膜症より進行している段階であり、網膜血管の閉塞や酸素不足が目立ち始める時期です。眼の中では、酸素不足を補うための新生血管を作る準備が始まっています。
軟性白斑(なんせいはくはん)と呼ばれるシミが生じたり、静脈が膨れ上がったりするなどの症状が出現する時期です。
この段階では、まだ視力が保たれている場合が多いとされています。しかし、ものを見る中心部である黄斑(おうはん)にむくみが生じると、眼に関する自覚症状が出ることもあります。
増殖糖尿病網膜症の場合
糖尿病網膜症がさらに進行した重症の段階であり、失明リスクが最も高い時期です。
酸素不足を補うための新生血管が作られ、網膜や硝子体に伸びていきます。しかし、新生血管はもろくて破れやすいため、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)を起こす場合もあります。その結果、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が現れます。飛蚊症を発症すると、視野に黒い影やゴミのようなものが見えてきます。
さらに増殖組織と呼ばれる繊維状の膜が形成され、網膜を引っ張ることで網膜剥離を生じることも多い状況です。
糖尿病網膜症による失明率が治療により変化する可能性
糖尿病網膜症による失明率は、治療により変化する可能性があります。
この章では、視力回復が期待できるケースと回復が難しいケースに分けて紹介します。
視力回復が期待できるケース
網膜の損傷が軽度な段階では、視力回復も期待できるケースも少なくありません。軽度な段階とは、以下に示したような状況です。
- 網膜内の出血が少ない
- 網膜剥離が見られない
- 黄斑浮腫がない、もしくは軽い
視力の維持や回復のためにも、早期発見および早期治療が大切です。
回復が難しいケース
すでに網膜が大きく損傷している場合は回復が難しいといえます。例をあげると、多量の硝子体出血が見られる、牽引性の網膜剥離が発生しているなどです。
糖尿病網膜症が進行した場合、視細胞や視神経も変性されているケースも少なくありません。そのため手術を行っても、日常生活に必要な視力への回復は難しいといえます。
糖尿病網膜症が失明につながる理由
糖尿病網膜症が失明につながる理由は、主に以下のような症状です。
- 新生血管
- 黄斑浮腫
- 硝子体出血
- 牽引性網膜剥離
詳細を表に示しました。
| 症状 | 詳細 |
|---|---|
| 新生血管 |
網膜の血管閉塞による網膜内の酸素不足を補うための血管 網膜や硝子体と呼ばれる部分に発生する 非常にもろくて壊れやすい |
| 硝子体出血 |
新生血管が破れた結果生じる出血 硝子体とは、眼球の大部分を占める透明な組織である |
| 牽引性網膜剥離 |
新生血管のまわりにできた増殖組織と呼ばれるものが網膜を引っ張ることで生じる網膜剥離 糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすい |
| 黄斑浮腫 |
網膜内の黄斑と呼ばれる部分がむくむ現象 黄斑はものを見る上で重要な部分であるため、黄斑浮腫は視力低下の原因とされている |
新生血管や硝子体出血、牽引性網膜剥離は、糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすいものです。これに対して黄斑浮腫は、どの段階でも発生する可能性があります。
糖尿病網膜症を治療せず放置したときに起こること
糖尿病網膜症は症状が出る前から進行する疾患です。症状が出ていないことを理由に放置すると、重症化していることに気づけません。
糖尿病網膜症が進行すると、眼内では新生血管の増殖や硝子体出血、牽引性網膜剥離などの症状が出ます。
眼科受診が遅れたり途中で受診を止めたりすると、このような症状に気づきにくいため、視力回復が難しくなります。
以下の記事で、糖尿病を放置した場合のリスクを解説していますので、あわせてご覧ください。
糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療
糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療は、主に以下のとおりです。
- レーザー光凝固術
- 抗VEGF薬治療
- 硝子体手術
以下の記事でも、糖尿病網膜症の治療について解説しています。あわせてご覧ください。
レーザー光凝固術
網膜の酸素不足を改善し、新生血管の発生や増殖を抑えることを目的とした治療法です。
網膜の一部をレーザーで焼いて新生血管による出血を予防します。この治療により、硝子体出血や網膜剥離のリスクを下げていきます。
ただし、この治療は視力を改善するものではありません。あくまでも網膜症の進行抑制や視力維持が目的です。
レーザー光凝固術を早い時期に受けると80%に有効であり、治療時期が遅れると有効率は50~60%に低下するといわれています。眼科で勧められた場合は、早めに治療を受けましょう。(文献2)
抗VEGF薬治療
VEGF(血管内皮増殖因子)のはたらきを抑え、新生血管の増殖や糖尿病黄斑浮腫を改善するための治療法です。
麻酔薬を点眼し、目の周囲および表面を消毒してから、抗VEGF薬剤を硝子体に注射します。黄斑浮腫が軽減されると視力改善が期待できます。
一度の注射で完結するケースは少なく、追加の注射や経過観察を必要とする場合が多い治療です。
また糖尿病網膜症が重症の場合は、改善に限界があるとされています。
硝子体手術
硝子体内の出血や混濁、増殖組織などを取り除いたり、剥離された網膜を元に戻したりするための治療法です。視力の回復よりも失明を防ぐための治療といえます。
比較的症状が軽い場合は、成功率が90%近いとされていますが、進行してからの手術では成功率が60%まで下がるといわれています。(文献2)
手術後も定期的な経過観察が必要です。
糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動
糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動は、以下の3点です。
- 血糖コントロール(HbA1c管理)
- 血圧や脂質の管理
- 眼科受診の継続
血糖コントロール(HbA1c管理)
高血糖の持続が糖尿病網膜症の原因であるため、血糖コントロールは大切です。
血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、網膜症の発症や進展を予防できるとされています。その一方で、重症の低血糖は糖尿病網膜症発生率を4倍に増加させるといった報告事例もあります。(文献4)
重症の低血糖とは、血糖値が下がりすぎたために意識障害やけいれんなどの症状が生じて、他者の介助を要するような状況です。
血圧や脂質の管理
高血圧は血管を傷めやすいため、糖尿病網膜症の重要なリスク因子の1つです。とくに、収縮期血圧(最高血圧)が上昇するとリスクが高まるとされています。脂質異常も、硬性白斑や黄斑浮腫といった症状のリスク上昇と関係しています。(文献4)
眼科の定期受診と並行して内科も受診し、主治医に相談しつつ血圧や脂質を管理していきましょう。糖尿病網膜症による失明予防のために大切です。
眼科受診の継続
糖尿病網膜症は無症状のまま進行するケースが多いため、症状の有無に関わらず定期的な眼科受診が必要です。
単純網膜症では半年に1回程度、前増殖網膜症では2〜3か月に1回程度の受診が目安です。増殖網膜症では病状が変化しやすいため、1か月に1回の受診が推奨されています。(文献4)
受診間隔が空くと病状の進行を見逃す可能性が高くなるため、指示された受診間隔を守ることが失明予防の鍵です。
糖尿病網膜症の失明率は行動次第で低下可能
糖尿病網膜症の失明率は20%程度とのデータもありますが、実際は一人ひとりの病状によって異なります。失明率も大切なデータですが、同じくらい大切なことは、早期に治療を受けて網膜症の進行を遅らせることです。
治療が遅れた場合は、その分失明リスクが高くなるため、糖尿病もしくは糖尿病網膜症と診断されたときは、早いうちに眼科を受診しましょう。また、血糖コントロールや血圧および脂質の管理など、失明予防の行動も必要です。
糖尿病網膜症の失明率は、ご自身の行動によって変わってくることを知っておきましょう。
糖尿病網膜症の治療と同じように大切なものが、糖尿病そのものの治療です。
リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。電話相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
糖尿病に関する再生医療については、以下の記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。
糖尿病網膜症の失明率に関するよくある質問
糖尿病による失明に前兆はありますか?
糖尿病による失明の前兆症状としては、目のかすみやぼやけ、見えにくさ、視野欠損、急激な視力低下などがあげられます。これらの症状は、糖尿病網膜症が進行した際に出てくるものです。
自覚症状が出てきた場合は、そのままにせず一刻も早く眼科を受診しましょう。
糖尿病による失明の前兆については、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
糖尿病で失明するまで何年かかりますか?
糖尿病で失明するまでの年数は患者によって異なるものです。糖尿病患者の中には、適切な治療により失明せずに過ごせる方もいます。
糖尿病網膜症を発症するのは、糖尿病と診断されて数年から10年くらい経過してからといわれています。(文献5)
ただし、糖尿病網膜症は自覚症状がないまま進行するケースが多いため、糖尿病の方は定期的に眼科を受診して検査や治療を受けましょう。
参考文献













