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股関節の痛み。特に、片側だけに痛みを感じると、不安は増幅します。一体何が原因なのでしょうか? ここでは、原因5つをを、分かりやすく解説します。それぞれの原因による症状の違いや、的確な診断に繋がるポイントを具体例とともに詳しく見ていきましょう。 股関節痛の主な原因5つ 股関節の痛みがあると、日常生活が辛いですよね。股関節痛の原因は多岐にわたりますが、ここでは代表的な原因を、詳しく具体的な例を交えて解説します。 リウマチの影響とその症状 リウマチは、体の免疫システムが、誤って自分の関節を攻撃してしまう病気です。主に関節の変形、腫れや痛みを伴います。両方の股関節が同時に痛むことが多いですが、片側だけが痛む場合もあります。 朝起きた時に、股関節がこわばって動かしにくいと言われる方が多くみられます。痛みは、日中活動するうちに徐々に楽になりますが、夜にかけて炎症が増すことが多くみられます。リウマチでは、関節の進行性変化が特徴で、重症化すると、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 大腿骨頭壊死の特徴的な症状 大腿骨頭壊死は、太ももの骨の先端部分である大腿骨頭への血管が詰まり、壊死することで発症します。初めの頃は、何も症状が出ないことがよくありますが、重症化すると、歩くのが辛くなります。特に、足の付け根である鼠径部に痛みが出やすくなります。 原因として、ステロイドの内服を長く服用していたり、お酒をよく飲む方、外傷などが原因で発症することがあります。病態は徐々に進行していくので、注意が必要です。 MRI検査で壊死範囲を診断し、治療法を選択します。末期になると、人工関節置換術などの手術が必要になることもあります。 ▼特発性大腿骨頭壊死症の原因と症状について、併せてお読みください。 滑膜炎・滑液包炎の診断基準 滑膜炎は、関節を包む滑膜に炎症が起こる病気です。滑液包炎は、関節のクッションの役割を果たす滑液包に炎症が起こる病気です。これらは股関節に痛みや腫れ、熱感を引き起こし、子どもに多く見られます。 小児期には、一過性滑膜炎、化膿性股関節炎、ペルテス病などの股関節の病気がよく見られます。これらの病気は似たような症状を示すことが多く、特に小さいお子さんの場合、うまく症状を伝えられないため、診断が難しくなることがあります。 安静、消炎鎮痛剤、冷却などで治療します。重症の場合は、関節内にステロイド薬を注射することもあります。特に、細菌感染が原因となる化膿性股関節炎は、早期の診断が大切です。 脊椎や骨盤からの関連痛の可能性 股関節の痛みは、必ずしも股関節自体に問題があるとは限りません。たとえ、他の場所に病変があっても、その痛みが股関節に広がり、あたかも股関節が痛むように感じることがあります。これを関連痛といいます。 そして、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった腰の病気が原因で、股関節だけでなく、腰から足にかけても痛みやしびれを感じることがあります。 筋肉の問題が引き起こす痛み 股関節周囲の筋肉のトラブルも、股関節痛の原因となります。中殿筋、小殿筋、腸腰筋、大腿四頭筋といった足を動かすための筋肉に問題があると、股関節の痛みが出ます。動かす時に痛みが出て、該当する筋肉を外から押すと、痛みを感じます。 股関節痛の鑑別診断方法 股関節の強い痛みは、まさに日常生活の大きな壁となって立ちはだかります。原因を見つけるには、鑑別診断が欠かせません。股関節痛を引き起こす原因は実に様々で、その一つ一つを見極めることが、痛みからの解放への第一歩となります。 症状に基づく鑑別ポイント 股関節痛を鑑別するには、痛みの種類や症状の特徴を細かく分析することが重要です。単に「痛い」というだけでなく、安静時なのか、鈍いのか、キリキリ痛むなどといった情報を医師に伝えることで、原因を特定するための手がかりとなります。 変形性股関節症の初期症状は動作時に現れて、反対に、安静時痛があれば、変形が進行している可能性も考えられます。また股関節の動きが悪くなるという情報も大切です。 その他、発熱、腫れ、皮膚の発赤などの症状も、感染症や炎症性疾患の可能性を示唆するサインかもしれません。 左右の股関節痛の違い 左右どちらか一方の股関節だけが痛む場合、その原因を探る上で左右差は重要な手がかりとなります。 例えば、右側が痛い場合、右側に体重をかけることが多かったり、いつも同し脚側の足を組む、といった習慣が原因となっているかもしれません。 反対に、左側だけが痛む場合、内臓疾患が隠れている可能性も視野に入れる必要があります。 例えば、大腸憩室炎や尿管結石などは、左側の股関節痛を引き起こすことが知られています。股関節痛の原因が股関節自体にあるとは限らない、ということを覚えておきましょう。 レントゲンやMRIで病気を精査して鑑別します。 痛みの部位ごとの症状 股関節痛と言っても、痛い場所によって原因疾患が異なる場合があります。 足の付け根から太もも前面にかけて痛みがある時は、変形性股関節症や大腿骨頭臼蓋インピンジメント症候群といった病気が疑われます。変形性股関節症は、軟骨がすり減ることで発症し、後者の大腿骨頭臼蓋インピンジメント症候群は、骨頭に余分な骨が存在して、結果として股関節の動きが制限されることで発症します。 ▼変形性股関節症の症状とチェック方法について、併せてお読みください。 股関節の外側が痛む場合、大転子痛症候群や腸脛靭帯炎といった、筋肉の炎症の可能性が高くなります。大転子痛症候群は大腿骨の大転子と呼ばれる部分に付着する筋肉や腱が炎症を起こす病気で、腸脛靭帯炎は太ももの外側を走る腸脛靭帯と呼ばれる組織が炎症を起こす病気です。 股関節の後側が痛む場合は、坐骨神経痛やハムストリングの損傷などが考えられます。ハムストリングは太ももの裏側にある筋肉群のことで、スポーツなどで損傷することがあります。どの部分が痛むのかを把握することでが大切です。 股関節痛の新たな治療法 変形性股関節症や大腿骨頭壊死症など、股関節に対する治療法は、これまで手術しかありませんでした。手術はしたくないけど痛みをどうにかしたい、という股関節の痛みでお悩みの方はぜひ一度当院へご相談・お問い合わせください。股関節への新たな治療法「再生医療」でみなさんを笑顔にしたいと思っています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Pijnenburg L, Felten R, Javier RM. "[A review of avascular necrosis, of the hip and beyond]." La Revue de medecine interne 41, no. 1 (2020): 27-36. Hines JT, Jo WL, Cui Q, Mont MA, Koo KH, Cheng EY, Goodman SB, Ha YC, Hernigou P, Jones LC, Kim SY, Sakai T, Sugano N, Yamamoto T, Lee MS, Zhao D, Drescher W, Kim TY, Lee YK, Yoon BH, Baek SH, Ando W, Kim HS, Park JW. "Osteonecrosis of the Femoral Head: an Updated Review of ARCO on Pathogenesis, Staging and Treatment." Journal of Korean medical science 36, no. 24 (2021): e177. Lepiece C, Dunand X, Thirion T. "[Coxalgia]." Revue medicale de Liege 77, no. 11 (2022): 672-677. "Transient synovitis, septic hip, and Legg-Calvé-Perthes disease: an approach to the correct diagnosis." Pediatric clinics of North America 61, no. 6 (2014): 1109-18. "Hip Pain in Adults: Evaluation and Differential Diagnosis." American family physician 103, no. 2 (2021): 81-89. "Avascular Necrosis of Femoral Head-Overview and Current State of the Art." International journal of environmental research and public health 19, no. 12 (2022): .
2025.02.07 -
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シンスプリントは、ランニングやジャンプなどを頻回に行うスポーツでみられる症状で、すねに痛みを引き起こします。シンスプリントにはさまざまな原因がありますが、原因を理解して、しっかり対策することでリスクを低減できます。 シンスプリントの原因について以下のようなお悩みはありませんか? シンスプリントの原因と症状を知りたい 痛みを和らげるための方法をしりたい 予防するための注意点や具体的な方法を知りたい この記事ではシンスプリントの原因や予防策について詳しく解説します。これからもランニングやスポーツを継続するためにも、1つずつ理解していきましょう。 シンスプリントの原因 シンスプリントの原因は大きく分けて以下の3つがあります。 ①過剰なトレーニング ②不適切なランニングフォーム ③適切でないシューズの選択 それぞれ詳しく解説します。 ①過剰なトレーニング 長時間のランニングやジャンプを繰り返すことで、すねに付着している「ヒラメ筋」「後脛骨筋」「長趾屈筋」などの筋肉が疲労し炎症を起こし、シンスプリントにつながります。そのため、運動量は徐々に増やしていき、過剰なトレーニングにならないように注意しましょう。 ただし、元々運動していない場合は、低負荷な運動だけでも筋肉が疲労してしまう可能性があります。このため、負荷量は個人に合わせて設定することが大切です。 ②不適切なランニングフォーム シンスプリントの原因となるランニングフォームは以下のとおりです。 大股で走っている 頭の上下動が大きい 歩幅が大きい つま先と膝の向きが異なる 上記に該当すると、着地時に大きな衝撃がすねに伝わります。これが繰り返されることで、筋肉や骨に過度なストレスがかかり、シンスプリントの原因となります。また、扁平足になるとすねの骨が内側に倒れやすくなり、シンスプリントのリスクを高めてしまうため注意が必要です。 ③適切でないシューズの選択 以下の項目に該当する靴は、足に負担がかかりやすいためシンスプリントを発症しやすいと言われています。 靴底が薄い 靴のかかと部分が削れている 靴底が薄ければ、体重がかかった時に足のアーチが崩れやすくなります。足のアーチが崩れると扁平足になりやすくなり、すねの骨が内側に倒れやすくなりシンスプリントのリスクを高めてしまうのです。Nikeによると、ランニングシューズについて以下のように解説しています。 「最適なクッショニングとトラクションを維持するためには、一般的に、約400〜800キロ走ったらシューズを交換するのがベストだ。最終的に、ほとんどのシューズは衝撃吸収力を最大40%失い、全体的なサポート力も同じぐらい失ってしまう。」 引用:https://www.nike.com/jp/a/running-shoes-shin-splints また、靴底のかかとが削れていると、体重をかけた時に靴底の削れた方にすねの骨が倒れやすくなるため筋肉が異常に緊張してしまいシンスプリントの原因となります。そのため、靴底が削れている場合は、定期的に買い替えることをおすすめします。 シンスプリントの予防策 シンスプリントを予防するためには以下の4つが有効です。 ①トレーニング計画の見直し ②正しいランニングフォームの習得 ③筋力トレーニングとストレッチ ④適切なシューズの選択 それぞれ詳しく解説します。 ①トレーニング計画の見直し シンスプリントは、トレーニングを計画的に行うことで予防できます。なぜなら、急激な運動量の増加は、すねの筋肉や骨に過剰なストレスを与え、シンスプリントを引き起こす原因となるからです。また、現在行っているスポーツ以外に水泳やサイクリングなどの「クロストレーニング」と取り入れることで、シンスプリントの原因となる筋肉への負担を軽減できます。 また、トレーニングを行う際は休息日を設けることも大切です。休息を取らなければ筋肉や骨に疲労が蓄積され、シンスプリントのリスクが高まります。さらに、シンスプリント以外の怪我も併発する可能性があるため、日々のトレーニング効果を高めるためにも休息は必要です。 ②正しいランニングフォームの習得 不適切なランニングフォームでは、ふくらはぎの筋肉への負担が大きくなりシンスプリントにつながりやすくなるため、正しいランニングフォームの習得が大切です。 正しいランニングフォームにするには、以下6つのポイントが大切です。 膝とつま先が進行方向を向いていること 腕が後ろまで引けていること 頭を一定の高さに保つこと 重心の真下に足を接地すること 足裏全体で着地すること マラソンの場合はピッチ数を180〜190/分にすること 上記6つのポイントを守ることで、身体に負担の少ないランニングが行えます。しかし、1度に全ての項目を意識してランニングすることは難しいので、1つずつ意識しながら正しいランニングフォームを習得していきましょう。 ③筋力トレーニングとストレッチ シンスプリントに有効なストレッチと筋力強化について以下の3つを紹介します。 ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチ ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の筋トレ 足指でタオルを引き寄せる運動 ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチはシンスプリントの痛みを和らげるのに効果的です。ヒラメ筋のストレッチ方法はアキレス腱のストレッチに似ていて、足を前後に開いて後ろ足のヒラメ筋を伸ばしますが、この時後ろ足の膝は曲げて行うことが大切です。後ろ足の膝を伸ばして行うと、ヒラメ筋のストレッチにならなくなってしまいます。また、反動をつけると筋肉を痛めてしまう可能性があるため、ゆっくり30秒ほどかけてストレッチを行うと効果的です。 ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の低負荷の筋トレでは、足指の付け根にゴムチューブを巻き、手前に引きます。かかとは床につけた状態で、ゴムチューブを伸ばすようにつま先を下に伸ばします。負荷の設定方法は、低負荷から始め、徐々に負荷量を上げていくのが一般的です。いきなり高負荷でトレーニングすると筋肉が再び炎症する可能性があるので注意しましょう。 『足指でタオルを引き寄せる運動』は、床に敷いたタオルの上に足を置き、足指でタオルをつまんで離してを繰り返し、タオルを手前に引き寄せる運動です。この運動では「長母趾屈筋」と「長趾屈筋」が強化され、筋肉の滑走性が滑らかになります。 ④適切なシューズの選択 シンスプリントを予防するための靴選びは、以下2つのポイントを押さえましょう。 クッション性が優れている かかと部分に芯が入っている まず、優れたクッション性により足の土踏まず(アーチ)にかかる負担を軽減します。これによって、すねの骨が内側に倒れるのを防ぐ効果があります。さらに、かかと部分には特殊な芯材が入っているのが特徴です。この芯材によってかかとの骨がしっかりと固定され、安定します。その結果、すねの骨が内側に崩れる可能性も低くなります。このように、足全体をサポートする構造により、歩行時や運動時の快適さと安定性が向上します。 また、靴の他に土踏まずをサポートするインソール(中敷)の使用も有効です。靴に付属しているインソールは平坦な形状であることが多いので、スポーツショップで市販されている物を購入することで、シンスプリントをさらに予防できます。 ランニングシューズに限らず、靴を選ぶ際には実際に試着することが大切です。メーカーにより靴のサイズ感や幅が異なるため、店舗で靴を履いてみて、自分の足に合っているか確認しましょう。 シンスプリントを正しく理解して予防しよう シンスプリントは、原因を理解することで、予防策を講じられるようになります。 シンスプリントは、運動選手や部活を一生懸命行う高校生だけが発症するとは限りません。トレーニング方法によっては、趣味でランニングを行っている方でもシンスプリントになる可能性があります。 シンスプリントを発症してしまうと、痛みが軽減するまでは安静が必要となるため、折角のトレーニングが無駄になってしまいます。そのため、シンスプリントにならないためにも、日頃からストレッチや筋トレを行い予防していきましょう。 今回の記事がご参考になれば幸いです。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 目黒定,川口鉄二,陸上競技選手のシンスプリント治療に関する事例報告,仙台大学大学院スポーツ科学研修修士論文集Vol.8,2007.3,P141〜148 Shin Splints,OrthoInfo,American Academy of Orthopaedic Surgeons. Athletic Shoes,American Academy of Orthopaedic Surgeons,OrthoInfo
2024.11.27 -
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妊娠出産で骨盤がゆるむと、陰毛の生え際あたりにある恥骨に負荷がかかりやすく、恥骨結合炎をおこします。痛みをなんとかしたくても、育児中だとなかなか病院にも行けませんし、妊娠中や授乳中だと薬を飲んでいいか悩みますよね。 この記事では以下をポイントに妊娠出産による恥骨結合炎について解説します。 妊娠出産でおこる恥骨結合炎の原因 妊娠・授乳中にできる検査や治療・再発予防 産後の恥骨結合炎で気を付けること うまく痛みとつきあえるよう全力でサポートしますので、ぜひ最後までお読みください。 恥骨結合炎の原因と症状 まずは恥骨結合炎の原因や症状を確認しましょう。 原因や症状を知ることで、なぜ痛いのか・どういうときに痛むのか・どんな動作で痛みが増すか分かります。 原因:①妊娠出産で体が変化するため 原因:②出産時に圧迫されるため 症状:①恥骨や股関節の痛み 症状:②思ったように歩けない 1つずつ解説します。 原因:①妊娠出産で体が変化する 妊娠中はエストロゲンとリラキシンというホルモンが、妊娠の維持や出産の準備のため分泌され骨盤がゆるみます。 恥骨は左右それぞれから身体の正中(もしくは中心)に向き合い、陰毛の生えぎわあたりで軟骨と結合しており、これを恥骨結合といいます。骨盤がひらくとこの恥骨結合に負荷がかかりやすくなり、痛めてしまうことは珍しくありません。 骨盤が不安定ななかで、子どもを抱っこしたり無理な姿勢で育児したり、痛みを我慢して家事をしていると恥骨結合や恥骨にくっついている筋肉に疲労がたまり、恥骨結合炎となります。 原因:②出産時に圧迫されるため 出産で赤ちゃんの頭や体が産道をとおるときに、恥骨周囲が直接圧迫され、恥骨結合や周囲の筋肉に炎症がおきると恥骨結合炎となります。 症状:①恥骨や股関節が痛む 症状は恥骨の前側の痛みや、股関節の痛み、恥骨に筋肉が付着している内ももの痛みです。 また、歩いたり前かがみになる動作、立ち上がり動作、太ももを閉じるような動作でとくに痛みが増すため、動作に注意しましょう。 症状:②思ったように歩けない 恥骨結合にはお腹や太ももの筋肉がくっつているため、恥骨結合炎で周囲の筋肉も炎症をおこすと、思ったように足が動かせなかったりいつものように歩けないといった症状がでます。 恥骨結合炎の検査や診断 妊娠中や出産後に恥骨結合炎を疑うときの検査についてまとめました。 検査の方法 妊娠中・授乳中に検査できるのか 以上の2点を解説します。 恥骨結合炎の検査 恥骨のあたりに痛みがある場合、骨の状態や炎症の具合をみる検査をおこないます。 レントゲン MRI レントゲンは、かたい骨がうつりやすいため恥骨の状態が分かりやすく、恥骨結合炎の診断によくつかわれます。 MRIはやわらかい組織をうつすのが得意で、骨以外の靭帯や筋肉などの炎症も分かりやすいのが特徴の1つ。時間のかかる検査のため、より精密に検査したい場合におこなわれます。 軽い痛みであればレントゲン撮影で済むでしょう。 妊娠中・授乳中にレントゲン・MRI検査はできる? レントゲン検査は放射線を照射するため、妊娠中や授乳中に検査してもいいのか不安ではないでしょうか。 レントゲン撮影は放射線被ばく量が少ないため、妊娠中も授乳中も可能です。 少量の放射線は空気中や大地、食物に含まれており、わたしたちは日頃から少量の被ばくをうけています。自然の被ばく量とレントゲンの被ばく量を比較してみましょう。 空気中から 大地から 宇宙から 食物から レントゲン(胸) 被ばく量 0.48mSv/年 0.33mSv/年 0.3mSv/年 0.99mSv/年 0.06mSv/1回 (参考:環境省) レントゲンの被ばく量の少なさが分かりますね。 帝王切開などの手術の事前検査でレントゲンを撮影したり、身長の低い方・胎児が大きい場合に産道を赤ちゃんが通れるか骨盤計測するためにレントゲンを撮ることもあります。また、放射線は母乳に影響しないため授乳中も検査ができます。 安心してレントゲン検査をうけてください。 また、MRI検査は磁気を利用した検査で、通常のMRI検査は胎児に影響しません。 ただし、造影剤をもちいるMRI検査は胎児に影響がでる報告があり妊娠中はおこなえません。造影MRIは血管の状態をみるときにおこなう検査で、恥骨結合炎疑いで検査することはまずないため安心してくださいね。 治療法と自宅でできるケア 妊娠中や育児中でもできる治療やケアをご紹介します。妊娠中や授乳中は飲める薬が限られますし、なるべく自力で治せたらいいですよね。病院での治療や自宅で出来るケアをまとめたので、ぜひ参考にしてください。 妊娠中・出産後の恥骨結合炎の治し方:①薬を飲む 恥骨結合炎の一般的な治療は、投薬や冷却、注射などです。妊娠中や授乳中は痛み止めが飲めないわけではありません。 しかし、種類が限られるため、なるべく受診して医師に処方してもらいましょう。妊娠中や授乳中に飲める痛み止め成分はアセトアミノフェンです。 アセトアミノフェンが主成分の市販薬もありますが、市販薬は他の成分も含まれているためかならず薬局の薬剤師やかかりつけの医師に相談しましょう。 妊娠中・出産後の恥骨結合炎の治し方:②冷やす 痛みが強い・炎症が強い場合は冷やすのも効果的です。保冷剤などをタオルで巻き、冷やしてみてください。 市販の冷湿布は妊娠中・授乳中につかえない成分が含まれているものがあります。湿布の成分は皮膚を通してからだに吸収されるため、おうちにある湿布を安易に貼らないようにしましょう。 湿布を使いたい場合は薬剤師に相談するか、病院を受診して処方してもらいます。 妊娠中・出産後の恥骨結合炎の治し方:③安静にする なるべく動かずに安静にすることも恥骨結合炎で大事な治療の1つ。 とはいっても、育児中だとなかなか安静にできないですよね。子どもが寝ているときになるべく一緒に寝たり、ネットスーパーを利用しできるだけ家で過ごすなど、痛みが強い場合は無理しないようにしましょう。 自宅でできる恥骨結合炎の治し方:④骨盤ベルト 骨盤ベルトを日頃から使い、骨盤を安定させると痛みの軽減につながります。 妊娠中は出産に向けてすこしずつ骨盤がひらき、胎児が大きくなることで恥骨への負担が増えます。出産後も骨盤はすぐ元にもどらないため、ベルトで骨盤を安定させましょう。 骨盤ベルトは産婦人科のある病院や助産院で購入できる場合があるので、恥骨の痛みを感じたらはやめに助産師や医師に相談してください。 市販の骨盤ベルトを選ぶ場合は、「妊娠中から産後までつかえる」と書いてあるなど、妊産婦向けの商品を選んでくださいね。 自宅でできる恥骨結合炎の治し方:⑤ストレッチや散歩 痛みが強い急性期は、痛み止めの内服や冷却をして安静にするのが基本ですが、痛みが慢性化している場合は軽い運動が効果的です。再発予防にもなるため、医師の診察で軽い運動の許可が出たら少しずつおこないましょう。 マタニティヨガや産後ヨガなど痛みの出ない範囲でおこなうといいでしょう。ベビーカーをつかい、お子さんとお散歩するのもおすすめです。 恥骨結合炎:産後の日常生活で気を付けるべき3つのこと 産後の恥骨結合炎は、赤ちゃんの抱っこやお世話・授乳時に無理な姿勢をとりやすく、恥骨結合炎が悪化することも。 出産後、育児中の恥骨結合炎との付き合い方についてまとめました。 気を付けること①赤ちゃんの抱っこ 出産後は赤ちゃんを抱っこすることが多いですよね。 抱っこするときは前かがみの姿勢になりやすいですが、前かがみは恥骨に体重がかかるため負荷がかかります。床など低い位置から赤ちゃんを抱っこするときは、なるべく背筋をのばし、片膝を立てて抱き上げるようにしましょう。 また、抱き上げたあとも、左右どちらかに体重がかからないよう注意し、片方の腰の骨に赤ちゃんを乗せる抱き方もひかえます。 抱っこして歩くときはなるべく骨盤ベルトを使用してくださいね。 気を付けること②授乳などお世話の姿勢 授乳時も前かがみになりやすいため、なるべく前かがみにならないよう床ではなく椅子に座り、授乳クッションをつかいましょう。 オムツ替えやお着換えなどのお世話も前かがみになりやすいですが、オムツ交換台を使用すると腰の負担が減りますよ。オムツ交換台は転落に十分注意しながら使ってみてくださいね。 気を付けること③恥骨結合離開 恥骨結合の痛みで気を付けなくてはいけないのは、恥骨結合離開です。 恥骨結合に炎症が起きるのとは違い、恥骨結合離開では、左右からつながっている恥骨の結合が離れてしまうことで、出産時に恥骨を強く圧迫されることで起こります。 とくに以下の状態であれば注意してください。 痛みが強い 歩行が困難 安静や冷却、骨盤ベルトをしても痛みが改善しない 6週間以上改善がない場合は手術適応と考える医師もいます。 「恥骨結合炎だ」と自分で判断して我慢しているとなかなか完治しないため、痛みが強い場合ははやめに受診しましょう。 恥骨結合炎とうまくつきあって再発を予防しよう! ここまで、妊娠・出産における恥骨結合炎の原因や検査、ケアや注意点をご紹介しました。 妊娠や出産で骨盤まわりは変化しますが、痛みがでやすいなかでの妊婦生活や育児は大変ですよね。どうしても姿勢がくずれてしまったり、慌ててしまって腰や恥骨に負荷がかかることはよくあります。しかし、お母さんが健康でいることも大切なことです。 痛みがあるときはなるべく安静にし、しっかりケアしてください。また、痛みがひいても姿勢に気を付けたりヨガなどのストレッチや散歩をおこない、再発を予防しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 医学書院医療情報サービス,恥骨炎(恥骨結合炎) 坂本 飛鳥,星 賢治,岸川 由紀,田中 真一,蒲田 和芳,妊娠・産後の骨盤痛が歩行に及ぼす影響:システマティックレビュー,Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy Vol,10,No.1:1-8,2020 産婦人科学会,「母乳中放射性物質濃度等に関する調査」についてのQ&A 環境省,自然・人工放射線からの被ばく線量,放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成26年度版)第1章.放射線の基礎知識と健康影響 高須 厚, 日浅 浩成, 椿 崇仁, 飯本 誠治, 大野 尚徳, 山岡 慎大朗,創外固定で治療した出産に伴う恥骨結合離開の1例,中部日本整形外科災害外科学会雑誌,2019 ,62 巻 2 号,p. 379-380
2024.11.13 -
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股関節の関節唇損傷により、今後の競技人生を不安に思っているアスリートはいるのではないでしょうか。関節唇損傷は、痛みや炎症が収まっても股関節の安定性は低下したままであるため、再発のリスクがあり、リハビリテーションが重要です。 そのため、この記事では競技復帰のための適切なリハビリテーションや再発しないための予防法を解説します。関節唇損傷から早く復帰したいと考えている方はぜひご覧ください。 股関節の関節唇損傷とは 関節唇損傷とは、関節の周りに付着している軟骨である「関節唇」が損傷することです。関節唇は、肩や股関節に存在し、関節の安定性やスムーズな動作・衝撃吸収のために不可欠です。股関節の関節唇は、骨盤側の股関節を取り囲むように付着しており、大腿骨を包み込む形状です。 股関節唇は以下の図のように付着しています。 引用:illustAC 股関節唇は、動作時の大腿骨頭の安定化や脚を着いた時の衝撃吸収などに働きます。関節唇には神経があるため、発症時には痛みを感じます。 股関節唇損傷の原因 股関節唇損傷の原因は、主に以下の3つがあります。 スポーツでの損傷 外傷による損傷 先天的な要因による損 スポーツでは、主にサッカー、ゴルフ、ランニングなどが原因で股関節唇損傷を発症することがあります。例えば、サッカーの蹴る動作でのフォロースルーやランニングの着地時など、股関節に大きな負荷がかかるときです。 外傷では、交通事故で股関節脱臼を発症し、関節唇損傷が併発する場合があります。股関節の形状は骨盤側のくぼみが大腿骨頭をほとんど包み込んでいるため、脱臼時には関節唇も一緒に損傷しやすいからです。 先天的な要因としては、臼蓋形成不全・大腿臼蓋インピンジメント症候群などがあります。これらは先天的な形態異常により関節唇に負荷がかかりやすくなってしまう為です。 股関節唇損傷の症状 股関節の関節唇損傷の症状は、代表的なもので3つあります。 股間節を深く曲げた時の痛み 長時間の立位や歩行での痛み 股関節のつまり感・ロッキング 股関節を深く曲げる時に、関節唇が挟み込まれるため痛みが出現します。また、関節唇損傷による股関節の安定性低下は、長時間の立位や歩行での衝撃吸収機能を減少させるため痛みの症状が現れやすいです。さらに、股関節のスムーズな動きが阻害されるため、股関節のつまり感・ロッキングの症状が出現し、動作時に股関節がぐらつく・抜けるような感じがして股関節が動かせなくなります。 股関節唇損傷の診断 股関節唇損傷は、X線、CT、MRIを用いて診断されます。以下に3つの検査方法とその特徴を紹介します。 検査方法 特徴 X線検査 寛骨臼や大腿骨の変形を評価できます。また、骨折がないかも確認可能です。 CT検査 3次元の骨画像を抽出でき、寛骨臼や大腿骨頭の変形などを詳細に調べられます。 MRI検査 股関節唇の損傷の有無を評価できます。しかし、通常のMRIでは詳細な評価は難しく、特殊なMRI検査が行われます。 関節唇損傷には、骨折が併発している可能性がある場合はX線・CT検査を実施し、MRI検査で関節唇損傷の有無を検査します。 股関節唇損傷の治療 股関節唇損傷の治療は、保存療法と手術療法の選択肢があります。どちらを適用するかは、症状の重症度によって異なりますが、一般的には保存療法が選択されることが多数です。保存療法では、安静・薬物療法・リハビリテーションが実施され、手術療法では、股関節鏡視下手術、大腿骨と下前腸骨棘の骨棘切除が行われます。それぞれ下記で詳しく解説します。 保存療法 保存療法では、安静や消炎鎮痛剤の投与、局所麻酔やステロイド注射により、痛みや炎症をコントロールします。その後、リハビリテーションで股関節や体幹の強化により、動作時の股関節の安定性向上や股関節唇への負担を減らします。もし、保存療法で疼痛の軽減が見られない場合は、症状が進行している可能性があるため手術療法を検討します 対象となる人は、疼痛が自制内で、引っかかりの症状がない方が多数です。一方、選手生命にかかわるスポーツ選手や痛みが強く日常生活に大きな支障がある方では手術療法も検討されます。 手術療法 手術療法は、痛みがかなり強い場合やスポーツ選手など選手生命に関わる場合に検討されます。主に、股関節鏡視下手術と骨棘の切除の2つの方法が用いられます。以下で詳しく解説します。 股関節鏡視下手術 股関節鏡視下手術では、臀部から大腿の側面に穴を空け、内視鏡で観察しながら手術します。関節包を切開し、内視鏡で関節唇、軟骨、大腿骨頭の状態を観察します。関節唇が十分残っている場合は、関節唇修復術を行います。一方、関節唇が欠損している場合や縫合不能な断裂では関節唇再建術を行います。以下に手術方法とその特徴を表で紹介します。 特徴 関節唇修復術 損傷している関節唇を寛骨臼から一旦はがし、正しい形にして固定します。 関節唇再建術 関節唇の除去後、大腿から腸脛靭帯を採取し、関節唇の代わりに固定します。 大腿骨と下前腸骨棘の骨棘切除 先天的な形態異常により、大腿骨頭の変形や下前腸骨棘の骨棘がみられる場合は骨を切除します。これらの変形は、股関節運動時に関節唇へストレスを与えやすく、変形性股関節症など他の股関節疾患にもつながりやすいです。変形は小さいことが多く、CT検査では見逃されることもあるため特殊な方法が用いられます。 手術療法と保存療法のメリット・デメリット 手術療法・保存療法の両者にメリットやデメリットが存在します 手術療法は、関節唇損傷の程度が大きい場合、保存療法で症状が改善されなかった場合に実施されます。一方、保存療法は損傷程度が小さい場合に適用されます。これらはどちらにもメリット・デメリットがあるため、下記の表で解説します。 メリット デメリット 手術療法 関節唇の修復・再建が可能 短期間での復帰が可能 約数十万円と高額な費用がかかる 身体への侵襲がある 保存療法 身体への侵襲がない 通院での治療が可能 復帰まで時間がかかる 関節唇自体が修復するわけではないため、再発の可能性がある 保存療法は、普通に生活するには問題ないことが多いです。一方で、スポーツ選手など、今後も激しく股関節を使う方では手術療法で修復するのが望ましいです。 治療後の日常生活での注意点 治療後の日常生活で注意する点は以下の4つがあります。 低い椅子に座らない あぐらをかかない 車の乗り降りに注意 イスからの立ち上がりで手すりを使う これらは「股関節を深く曲げてしまう」「股関節に過剰な負荷がかかる」ため避けたい動作です。深く曲げると関節唇が股関節に挟み込まれて損傷する危険性があります。また、立ち上がる際には股関節に負荷がかかるため手すりを用いて負担を軽減することが望ましいです。 日常生活に復帰するまでの期間 日常生活への復帰は、個人差がありますが保存療法では約3カ月、手術療法では約2〜3週間程度になります。保存療法では、痛みを引き起こさない動作や日常生活の仕方を覚えるのが大切です。日常生活に復帰してから痛みを再発したという声もあり、適切な動作の獲得が求められます。 一方、手術療法では、手術・入院は3日ほどで、その後のリハビリテーションが2〜3週間必要です。手術後に関節の癒着や可動域制限を引き起こさないように、術後早期からリハビリテーションを実施するのが大切です。 競技復帰までの期間 競技復帰までの期間は、競技レベル・怪我の重症度、実施した治療方法などで異なりますが、約3〜6ヶ月程かかります。特に、日常生活とは異なり、スポーツでは負荷のかかる動作・瞬発的な動作が必要になるため、より股関節の安定化・柔軟性に着目した運動療法や競技特異的なリハビリテーションが必要です。 股関節唇損傷のリハビリテーション 関節唇損傷では股関節の安定性や衝撃吸収能力が低下します。そのため、股関節の安定性を高める筋トレや股関節の柔軟性を高めるストレッチが大切です。以下で詳しく解説します。 股関節の安定性を高める筋トレ 引用:illustAC 股関節の安定性では、臀部にある複数の筋肉が協調的に働くことが大切です。例えば、股関節の安定性に関与する筋肉は、上記画像の外旋六筋、中殿筋、小殿筋などがあります。筋力だけ高めても動作のなかで応用できなければ、再び関節唇損傷を発症してしまいます。以下に、具体的な筋トレを紹介します。 外旋筋群の筋トレ 外旋筋群はお尻の深いところにある筋肉で、大腿骨頭を安定させる役割があり、股関節のスムーズな運動で重要です。外旋筋は複数の筋肉があり、協調的に働くことで動作時でも大腿骨頭を安定させます。具体的なトレーニングのやり方を以下に記載します。 <やり方> 横を向いて床に寝転ぶ 股関節を45°、膝関節を90°程度曲げる 両足の踵を付けたまま上側の膝を開く 膝を開くときに骨盤が背中側に倒れないように意識しましょう。 中殿筋・小殿筋の筋トレ 中殿筋はお尻の側面についている筋肉で、片足立ちなどで特に働く筋肉です。中殿筋を鍛えることでスポーツでの方向転換動作や片脚立位での動作の安定性を高められます。一方、小殿筋も股関節の安定性を高めるのに大切で、片脚立位で良く働きます。具体的なトレーニングのやり方を以下に記載します。 <やり方> 横になって寝転ぶ 下側の脚を少し曲げて身体を安定させる 上側の脚を上後方へ上げる 上側の膝は伸ばした状態で行い、上後方へ動かすことでより中殿筋・小殿筋を鍛えられます。 股関節の柔軟性を高めるストレッチ 股関節の柔軟性は、スポーツなどで衝撃を吸収するために大切です。柔軟性が低下していると、股関節や膝などに過剰な負荷がかかりやすくなります。特に、殿筋・ハムストリングスのストレッチが大切です。 殿部のストレッチ 殿筋には、大殿筋・中殿筋・外旋筋群などがありますが、それぞれジャンプの着地や方向転換動作で重要な筋肉です。ストレッチにより柔軟性を高めることで、股関節の動きがスムーズになり、傷害予防やパフォーマンスの向上に繋がります。具体的なストレッチのやり方を以下に記載します。 <やり方> 椅子に姿勢よく座る 片脚の足首を反対の太ももに乗せる そのまま身体を前に倒す ハムストリングスのストレッチ ハムストリングスは、半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋の3つの筋肉で構成されます。ダッシュや方向転換などスポーツの多くの場面で使う筋肉です。また、陸上やサッカーなどのスポーツで肉離れしやすい部位でもあるため、ハムストリングスのストレッチは怪我の予防に欠かせません。具体的なストレッチのやり方を以下に紹介します。 <やり方> 仰向けで寝転ぶ 片脚の股関節を90度に曲げる もも裏を両手で抱えて膝を伸ばす 膝を伸ばすときに股関節を90度に保ったまま行うとハムストリングスが伸張されやすく効果的です。 股関節唇損傷を予防するには 予防のためには「股関節の柔軟性向上」「股関節の安定性強化」が必要です。股関節への負担を減らすために日常動作を改善したり、股関節周囲筋を鍛えることで安定性を強化します。また、スポーツではあらゆる方向から様々な力が瞬間的に加わります。そのため、競技特異的なトレーニングにより股関節周囲筋を動作の中で活用する訓練を実施しましょう。 適切なリハビリテーションにより競技復帰を目指しましょう 股関節唇損傷により、股関節の安定性低下・衝撃吸収能力の低下などスポーツに支障が出ます。関節唇自体は自然治癒することはないため、手術により修復するか保存療法で痛みと炎症を抑える方法を実施します。そのため、臀部の筋肉を強化したりハムストリングスの柔軟性を高めるなど、筋肉で股関節の安定性を補う必要があります。 また、スポーツに復帰する際には競技特異的な動作練習が欠かせません。復帰を急ぐと再発の可能性もあるため、焦らずじっくりリハビリテーションを行いましょう。 参考文献一覧 北水会記念病院 股関節専門外来,股関節唇損傷とは 長野整形外科クリニック,手術・入院費用,手術費用| 室伏祐介,岡上裕介,中平真矢,前田貴之,永野靖典,池内昌彦,川上照彦,等張性収縮における小殿筋筋活動と中殿筋筋活動の比較,理学療法科学,31(4):597–600,2016 田城翼,浦辺幸夫,内山康明,山下大地,前田慶明,笹代純平,吉田遊子,大殿筋および股関節外旋筋群への静的ストレッチングはしゃがみこみ動作に影響を及ぼすか,理学療法科学,33(6): 935–940, 2018
2024.10.11 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
肩関節唇の損傷は、野球やテニスのような腕を上から振り下ろすオーバーヘッドスポーツで起こりやすい疾患です。 肩関節唇損傷から回復して競技が継続できるか、将来的に症状は改善するのか不安に思っている方はいるのではないでしょうか。適切な治療により症状は改善し、リハビリテーションにより肩関節の安定化を図ることで競技復帰も望めます。 この記事では、競技復帰するためのリハビリテーションや再発予防の方法について解説します。怪我から早く競技復帰したいと考えている方は、ぜひご覧ください。 肩関節唇損傷とは 肩関節唇損傷とは、肩関節を安定させる機能をもつ関節唇の損傷です。発症の原因は、オーバーヘッドスポーツ、肩の過剰な使用、脱臼に伴う損傷などがあります。特に、野球やテニスなど投球動作を伴うスポーツをしている人に多く見られます。これらのスポーツでは、特に上方や後方の関節唇を損傷しやすいです。主な症状は、肩の痛み、不安定感、可動域制限などがあります。安静により痛みは治まることが多いですが、肩の不安定を軽減するためにリハビリテーションが必要です。また、関節唇は再生することはないため、重症例では手術が必要です。 肩関節唇損傷の治療方法 肩関節唇損傷の治療は、保存療法や手術療法が実施されます。保存療法では、痛みを抑えるために鎮痛薬の投与や安静の確保、痛みが治まれば肩関節の安定性を高めるためのリハビリテーションが行われます。 一方、手術療法では関節唇の修復や再建が行われます。具体的な内容は以下で解説します。 保存療法 軽症例では保存療法を実施する場合が多いです。保存療法では、薬物療法やリハビリテーションを行います。具体的には以下で解説します。 薬物療法 発症直後で痛みが強い場合には、ロキソニンやボルタレンなどの消炎鎮痛薬の内服やヒアルロン酸の関節内注入を行い安静にします。それでも痛みが軽減しない場合はステロイドを注射します。そして、痛みや炎症が落ち着いてきたらリハビリテーションを開始する流れです。ただ、可動域訓練やリラクゼーションは拘縮予防のために多少痛みがあっても実施する場合があります。 リハビリテーション リハビリテーションでは、肩関節周囲のリラクゼーション・可動域の改善・筋力強化を行います。肩関節唇損傷では、肩後面の組織が硬い場合が多いため、後面の組織を中心にリラクゼーションを実施します。また、痛みにより筋肉が反射的に緊張しやすく、可動域制限になりやすいため可動域訓練が大切です。さらに、肩関節の安定性を高めるために腱板筋群の筋力強化を行います。テニスや野球の投球動作では、腱板筋群に大きな負荷がかかるため、負荷に耐えられるように筋力強化が必要です。 手術療法 手術療法は、重症例や脱臼を繰り返してしまう方に適用されます。手術と入院は、数日〜10日間程度であり、術後2〜3週間はリハビリ以外では装具で肩関節を固定します。手術方法はさまざまですが、代表的な手術方法を2つ紹介します。 鏡視下関節唇修復術 鏡視下関節唇修復術は、関節鏡で確認しながら関節唇を元の位置に縫い合わせる方法です。手術は全身麻酔で実施し、皮膚に小さな穴を3か所ほど開けて手術します。ただ、鏡視下関節唇修復術の中でもさまざまな術式があるため、実施方法は微妙に異なります。 保存療法と手術療法のメリット・デメリット 保存療法と手術療法のメリット・デメリットを表で解説します。 メリット デメリット 保存療法 身体への侵襲がない 通院での治療が可能 関節唇自体が治るわけではないため、再発や脱臼の可能性がある 症状が良くなるまでに期間がかかる 手術療法 術後の回復が早く、約1ヵ月後には日常生活に戻れるほど早期復帰が可能 脱臼のリスクが低い 身体への侵襲がある 手術や入院で約30万円と高額な治療費がかかる どちらにもメリット・デメリットがあるため、上記表や医師の意見を参考にして選択しましょう。 治療後の注意点 保存療法では、関節唇自体が治るわけではないため肩関節の緩さが少なからず残りやすいです。そのため、肩関節を過度に動かすと脱臼や再び症状を再発する可能性があり、肩のリハビリテーションをしっかり行うのが大切になります。 一方、手術療法では、範囲は狭いものの関節包など深部への侵襲があるため、組織が癒着して可動域が制限されないように術後早期からリハビリテーションが必要です。1ヵ月ほどリハビリを行うと通常の生活レベルに戻れますが、スポーツ復帰には3〜6ヵ月必要です。 競技復帰までのリハビリテーション 肩関節唇損傷のリハビリテーションは、競技復帰で重要です。競技復帰までの期間や具体的なリハビリテーション内容を以下に紹介します。 術後~1ヵ月(炎症管理) 術後初期では、痛みや炎症が残存しているため、まずは安静や消炎鎮痛薬により改善を図ります。夜間に肩を動かさないように、術後2週間ほどは装具を着用します。ただ、癒着予防のためにリハビリは手術翌日から開始する場合が多いです。この時期にたくさん筋トレしてしまうとより悪化してしまうため運動量や負荷には注意です。 術後1ヵ月~2ヵ月(可動域向上・筋力強化) この時期では、特にテニスや野球の投球動作で必要な肩関節外旋・外転可動域の向上を目指します。可動域が狭いと肩関節に負担がかかりやすいです。また、スポーツ復帰を目指す場合、全身の心肺機能を戻すのも大切なので、有酸素運動など持久力トレーニングも実施します。肩の筋力トレーニングは低負荷から実施し、段階的に難易度を上げていきましょう。 術後2ヵ月~3ヵ月(動作練習) 筋力トレーニングの負荷を上げつつ、スポーツに特化した動作練習を行っていきます。スポーツの中では、予測不能な外力が加わる場合や瞬発的な動作が多いため、素早い動作にも対応できる身体づくりが大切です。特に、受傷のきっかけとなった動作を入念にチェックし、再発を防止しましょう。 肩関節唇損傷の再発を予防する方法 肩関節唇損傷の再発を予防するには、腱板筋群のトレーニングや肩後面のストレッチが大切です。以下に具体的な内容を解説します。 腱板筋群のトレーニング 腱板筋群は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋で構成されており、肩関節の安定化に必須の筋群です。投球動作の繰り返しにより、腱板筋群は大きなストレスを受けるため、これらの筋群が弱化しやすくなります。そのため、練習時間の制限や投球動作の回数制限を設けて練習しましょう。具体的な腱板筋群のトレーニングを以下に記載します。 <やり方> イスに座り、わきをしめて肘を90度に曲げる わきをしめたまま腕を外に開く 負荷はチューブなどを用いて行い、低負荷・高回数で実施します。腱板筋は小さい筋肉であり、負荷が高いと間違った動作になってしまうため気をつけましょう。 肩後面のストレッチ テニスや野球などの投球動作を頻繁に行うスポーツでは、肩後面の棘下筋・大円筋・小円筋・三角筋が硬くなりやすいです。そうすると、上腕骨頭の動きがぎこちなくなり、腱板筋群が作用しづらくなります。結果、肩関節への負担が増加します。そのため、肩後面のストレッチにより肩の滑らかな動きを獲得するのが大切です。具体的なストレッチの方法を以下に記載します。 <やり方> 両手の甲を脇腹につけます 肘を前方に向けるように閉じていきます 肩の後面が伸びているのを意識します 肩をすくめたり体幹だけを回したりしないように、肩後面が伸張されているのを意識して実施しましょう。 競技を継続できるように肩関節のケアを行いましょう 肩関節唇損傷は、テニスや野球などオーバーヘッドスポーツで発症しやすい疾患です。関節唇は、肩の安定化に欠かせない組織であり、再生もしないためリハビリテーションによる訓練が大切になります。 また、投球フォームによっては肩後面の組織が硬くなりやすいことや腱板筋群が弱化しやすいため、入念にトレーニングやストレッチを行います。スポーツの実施前後で行うことで肩の柔軟性や筋力を保てるでしょう。 今回ご紹介したストレッチや筋力トレーニングにより、可動域向上・筋力向上を目指せるため、再発予防のためにも毎日ケアしましょう。 参考文献一覧 舟橋整形外科病院,肩関節の疾患と手術 Jpn J Rehabil Med 2018;55:495-501,投球障害のリハビリテーション治療 日本臨床スポーツ医学会誌,投球障害肩の現況,Vol. 26 No. 3, 2018.
2024.10.09 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
大転子滑液包炎(だいてんしかつえきほうえん)は、特にランニングやスポーツなどをおこなう方に多く、1,000人中の5〜6人が発症します。 また、男性よりも女性、40~60歳の方が発症しやすいと言われてます。 大転子滑液包炎について以下のようなお悩みがありませんか? 痛みの改善方法が分からない 症状を悪化させる原因を知りたい ストレッチや運動などの予防策を知りたい この記事では大転子滑液包炎を改善・予防するための正しい知識を身につけ、原因や生活習慣、予防策について解説しています。 将来、自分の足が大転子滑液包炎になるのを防ぐためにも、適切な対策を行えるようになりましょう。 大転子滑液包炎とは? 大転子滑液包炎とは、 股関節の外側に存在する大転子という骨の周囲の滑液包が炎症を起こす症状 です。滑液包とは、関節や筋肉がスムーズに動くために存在する滑液という潤滑液を含む袋のことで、滑液包が炎症を起こすと関節や筋肉の動きが制限され、多くの場合、痛みを伴います。 大転子滑液包炎の原因には「大腿筋膜張筋」と「腸脛靭帯」の2つが関係しています。この2つの組織は大転子の上部を通過しているため、ランニングやサイクリングなどの同じ動作が行われ大転子滑液包と摩擦が起きることで炎症すると言われています。 また、大転子滑液包炎のリスクとなる要因は下記4つです。 転倒やスポーツなどによる外傷 大転子に付着する組織(中殿筋・小殿筋など)の損傷に伴う二次的な滑液包炎 滑液包自体の摩擦・微細損傷による炎症 関節リウマチや痛風などの疾患 外傷や内部の炎症性疾患が大転子滑液包炎を引き起こす要因です。 現在、股関節の疾患に対する治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」 が注目されています。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の症状 発症初期のころの痛みは股関節の外側と局所的ですが、症状が悪化すると大腿の外側まで痛みの範囲が拡大します。また、大転子を圧迫すると痛みが出現するため、横を向いて寝ることが大変になります。 また、痛みの程度により、日常生活やランニングなどの趣味活動に制限される場合もあるのです。 下記の記事では、股関節の疾患についてまとめています。ほかの病気もチェックしたい方は、あわせてご覧ください。 大転子滑液包炎が発症する原因3つ 大転子滑液包炎の原因は大きく分けて以下の3つがあります。 大転子を動かす激しい運動 長時間の立ち仕事 肥満体型 それぞれ以下で詳しく解説します。 大転子を動かす激しい運動 ランニングやサイクリングなどを頻繁に行う方は、大転子滑液包に対する摩擦が増え、炎症を引き起こす可能性があります。 階段の上り下りや、登山といった関節の動きが活発な動作も、大転子滑液包に負担をかけるため、大転子滑液包炎になる要因のひとつです。 長時間の立ち仕事 一般的に長い時間立っている方は、大転子滑液包にストレスがかかりやすいため、大転子滑液包炎を発症しやすくなります。 また、散歩やランニングの際に体が左右どちらかに傾いていたり猫背などの不良姿勢であることも、大転子滑液包にストレスがかかる原因となります。 このため、立ち仕事が増えたことや、ランニングを始めてから大転子周囲に痛みが出現した方は、大転子滑液包にストレスがかかっているかもしれません。 肥満体型 生活習慣では肥満も大転子滑液包炎の発症に影響を与えます。なぜなら、体重が増えると大転子滑液包にかかる負担も増加するためです。 肥満傾向の方は、体重を少し落とすだけでも痛みや症状の進行を抑えられるでしょう。 また、大転子滑液包炎は「PRP療法(再生医療) 」でも治療できます。PRP療法(再生医療)とは、血液に含まれる血小板の力を利用して傷ついた組織を修復する医療技術です。身体に負担の少ない治療法として、今注目されています。 「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎はどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療専門の『 リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。実際の治療例をお見せしながら、再生医療の仕組みをわかりやすくお伝えいたします。 大転子滑液包炎の診断方法 大転子滑液包炎の診断は以下を用いて総合的に行われます。 問診 身体所見の確認 MRI 問診では、これまでの病歴や痛みが出現する前に行っていたこと、どのような時に痛いのかを確認します。身体所見の確認では、大転子を圧迫し痛みが出現するのかを確かめます。関節包に水が溜まっているかどうかや関節包の炎症の有無の判断は、MRIを使用しなければ分かりません。 大転子滑液包炎の効果的な治療方法 大転子滑液包炎の治療方法は大きく分けて以下の3つです。 保存的治療 手術療法 PRP療法(再生医療) それぞれ以下で詳しく解説します。 保存的治療 大転子滑液包炎の保存的治療の重要な目標は、痛みの軽減を図ることです。大転子滑液包炎に限らず、炎症があり痛みが強い場合にはアイシングが有効です。アイシングをすることで炎症を抑え痛みを抑制できます。 また、大転子滑液包の炎症を抑えるためには、ステロイドの注射や消炎鎮痛剤の内服も有効です。しかし、30%の方は痛みが改善しないと言われているため、保存的治療で痛みを改善できない場合には以下の方法の検討も必要となります。 手術療法 大転子滑液包炎が長期化し慢性化すると、大転子滑液包内に異常な血管が生じてしまいます。この場合、ステロイドや消炎鎮痛剤の使用により一時的に痛みは軽減しますが、再度痛みが出現します。 そのため、大転子滑液包炎が長期化している場合は、運動器カテーテル治療を行い、異常な微小血管を減らす治療が有効です。施術時間は20〜30分ほどで終了します。 運動器カテーテル治療後は、大転子滑液包炎による痛みが改善します。しかし、他にも原因がある場合は、痛みが残存する可能性があるため、医師への相談が必要です。 PRP療法(再生医療) 「PRP療法(再生医療)」とは、患者さまの血液に含まれる血小板の治癒力を利用して、傷ついた組織を修復する医療技術です。 注射を打つだけなので、日常生活や仕事への影響はありません。普段どおりの生活を送りながら、早期回復を期待できます。 弊社『リペアセルクリニック』は、再生医療専門のクリニックです。国内での症例数は10,000例以上に及び、多くの患者さんの治療に携わってきました。 大転子滑液包炎は再生医療の治療対象です。弊社では無料相談を受け付けていますので、詳しい治療法や効果を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の予防法 大転子滑液包炎の予防法を解説します。主な予防法は以下の3つです。 ストレッチ 適度な運動 規則正しい生活習慣 順番に見ていきましょう。 ストレッチ 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋肉、 特に「大腿筋膜張筋」の柔軟性を高めること が重要です。大腿筋膜張筋のストレッチは座った状態と寝た状態どちらでも行えます。 まずは座った状態でのストレッチから解説します。椅子に浅く腰掛け、片方の足を反対側の太ももの上に乗せます。上体をゆっくりと前に倒し、太ももの外側に軽い張りを感じるところで20~30秒ほど保持します。反対側も同様に行います。 次に、寝た状態でのストレッチを説明します。両膝を立てて膝を左右どちらかに倒し、20~30秒ほど保持します。膝を右側に倒した時は左足の大腿筋膜張筋、左側に倒した時は右足の大腿筋膜張筋が伸ばされます。 どちらのストレッチも、1日に数回行うことで筋肉の柔軟性を維持できます。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。膝を倒した時に痛みが強い場合は、痛みが出る直前まで倒すことで痛みなくストレッチできます。 無理なストレッチは症状を悪化させる可能性があるため、痛みのない範囲で行うことが大切です。 適度な運動 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋力アップが必要です。 ここでは、自宅で簡単に行える以下2つの運動をお伝えします。 スクワット 足を横に開く運動 スクワットの方法は以下のとおりです。 足を肩幅にひらく 膝がつま先より前に出ないように膝を90度ほど曲げる 膝を伸ばし1の状態に戻る 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、膝を曲げている時は膝が内側に寄らないようにしましょう。スクワットを行うことで「大腿四頭筋」や「大臀筋」などの筋肉を強化できます。 また、足を横に開く運動は以下のとおりです。 立った状態で椅子や手すりなどに軽くつかまる 体が横に傾かない範囲で片方の足を横に開いて戻す 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、足を横に開く時はつま先が外側へ向かないように注意しましょう。足を横に開く運動では「中臀筋」や「小臀筋」の筋肉を強化できます。 規則正しい生活習慣 大転子滑液包炎を生活習慣から予防するためには以下の2つが大切です。 定期的な運動習慣 バランスの良い食事 定期的な運動習慣がなければ足腰の筋力が低下してしまい、大腿筋膜張筋にストレスがかかりやすくなります。また乱れた食生活では肥満につながり、体重が増えることでも大腿筋膜張筋へのストレスが増加します。 これらの日常生活での予防策は、大転子滑液包炎の予防だけでなく、他の整形外科疾患の予防にもつながります。 大転子に関するよくある質問 最後に大転子に関するよくある質問と回答をまとめます。 大転子が痛いと感じたら何科を受診すればいい? 整形外科を受診しましょう。痛みを放置すると症状が慢性化するリスクがあるので、股関節周りに痛みや違和感を感じたら、なるべく早く病院を受診するのがおすすめです。 股関節が突然痛くなり歩けなくなりました。考えられる原因はなんでしょうか? 歩けないほど股関節に痛みが出る原因として考えられるのは、下記の外傷や疾患です。 骨折 大転子滑液包炎 変形性股関節症 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減り、骨の変形によって痛みがともなう疾患です。変形性股関節症も「再生医療 」の治療対象です。 まとめ|大転子が痛いと感じたら大転子滑液包炎の可能性あり 大転子滑液包炎は、ランニングやサイクリング、階段の上り下りなど、趣味のスポーツや日常の動作を繰り返す過程で発症します。 症状が悪化すると、歩いたり、横を向いて寝たりする際に強い痛みを感じます。症状の悪化を防ぐためにも、大転子に痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。 現在、大転子滑液包炎の治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 参考文献一覧 ・Effect of corticosteroid injection for trochanter pain syndrome: design of a randomised clinical trial in general practice. Brinks A, van Rijn RM, Bohnen AM, Slee GL, Verhaar JA, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM BMC Musculoskelet Disord. 2007 Sep 19; 8():95. ・Lustenberger DP, Ng VY, Best TM, Ellis TJ: Efficacy of treatment of trochanteric bursitis: A systematic review. Clin J Sport Med 2011;21(5):447-453. ・Fox JL: The role of arthroscopic bursectomy in the treatment of trochanteric bursitis. Arthroscopy 2002;18(7):E34. ・渡邉 博史.静的ストレッチングの効果的な持続時間について.第47回日本理学療法学術大会.
2024.07.18 -
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「人工関節置換術を受けたのに痛みが続いてしんどい」 「痛みの原因がわからず不安」 人工関節置換術を受けた方で、痛みが続いて本当に回復するのか不安に感じている方も多いでしょう。痛みが続くと日常生活に支障をきたしたり、回復しない焦りで不安になったりしますよね。 そうした術後の痛みに対しては、適切なリハビリテーションと痛みのコントロールが重要です。 そこで今回は、人工関節置換術後の痛みの原因から自宅でできるリハビリテーションの方法、人工関節を長期的に保つためのケア方法まで紹介していきます。 人工関節置換術後の痛みが生じる原因 まず人工関節置換術後に痛みが生じるのは「遺残疼痛(いざんとうつう)」と呼ばれる状態です。 人工関節置換術後、痛みは多くの場合数週間から3カ月程度で回復します。 しかし、痛みが気になる方や長引いている方は、主に以下の原因から生じている可能性があります。 手術による損傷 リハビリ不足 感染(合併症) 人工関節の耐久性の問題 それぞれ詳しく解説していきます。 原因1:手術による損傷 人工関節置換術後に生じる痛みの原因は、手術による損傷が代表的な理由です。 人工関節置換術は、患部の股関節の骨を削る工程があるため、体への負担がかかる治療法です。骨を削るだけでなく、人工関節の埋め込みに伴い、筋肉や血管などを傷つけてしまいます。 手術をしている最中に神経が引っ張られて損傷し、足の感覚が鈍くなる症例も認められています。 多くの場合、手術による損傷は一時的で回復する傾向にはありますが、長引いている方は早めに担当医師に相談しましょう。 以下の記事では、人工関節における年代別のリスクも取り上げているので、あわせてご覧ください。 原因2:リハビリ不足 人工関節置換術後に痛みが生じる原因には、リハビリ不足もあげられます。人工関節置換術後のリハビリは、関節の動きを改善するだけでなく、筋力強化が主な目的です。 リハビリが不足していると、筋肉や靭帯への負荷がかかります。無理に歩くと人工関節周辺にかかった負担が炎症につながってしまうのです。逆に早く痛みを改善しようと、無理なリハビリをおこなってしまうのも注意が必要です。 適切なリハビリ方法は、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。 原因3:感染(合併症) 人工関節置換術後の痛みは、合併症を引き起こした場合でも現れる可能性があります。 痛みを感じる合併症の代表的なものとして感染があり、痛みが長期的に続いたり、強くなったりする方は注意が必要です。 感染が起こると、痛みのほかに関節の腫れ、発赤、熱感、発熱、倦怠感を伴う場合もあります。 なお、以下の危険因子(特定の病気や状態を引き起こす可能性がある要因)がある方は感染症にかかるリスクが高いため、注意してください 肥満 糖尿病 関節リウマチ 心血管障害など 人工関節置換術後に痛みだけでなく、感染を疑わせる症状を伴う場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 高齢者の方は、危険因子以外に注意しておきたい手術のリスクがあるため、以下の記事もあわせてご覧ください。 原因4:人工関節の耐久性の問題 人工関節の耐久性も術後に痛みを感じる原因の1つです。 人工関節をできるだけ長持ちさせるには、定期的な診察が重要です。しかし、日常生活において過度に負担をかけていると、耐久性に問題が生じてしまいます。 術後は3カ月、6カ月、1年後、その後は年1回のペースでレントゲン検査や医師の診察を受けましょう。 人工関節への負担を抑えるために、杖のような生活支援用具を使用した生活がおすすめです。 さらに、運動をする場合には、ウォーキングや水中エクササイズ、ルームバイクなどの実施をおすすめします。 ジョギングや器械体操、シングルテニスなどを含め、走ったりジャンプしたりと急な動きは避けましょう。 万が一、違和感や痛みを感じた場合は、我慢せずに医師にご相談ください。早期発見や対処が、人工関節の長期的な機能維持につながります。 人工関節置換術後の痛みに対処する方法 人工関節置換術後の痛みが気になる方には、以下の方法で対処しています。 薬物療法 リハビリ 再手術 それぞれ詳しく解説していきます。 薬物療法 人工関節置換術後の痛みに対処するため、まずおこなわれるのが薬物療法です。 主に、炎症を抑えるためにロキソニンのような痛み止めを処方します。ただし、薬物療法の場合は根本的な解決を目的にしているわけではないため注意してください。 また、薬によっては胃腸障害や眠気などの副作用が伴うケースがあります。長期間使用すると、効果が薄れてしまうため、あくまで一時的な対処と覚えておきましょう。 リハビリ 人工関節置換術後の痛みには、適切なリハビリも重要です。 効果的なリハビリは、関節の動きを改善する運動や筋力をつける運動、日常動作の練習など複数あります。 具体例をあげると、以下のようなリハビリを実施しています。 種類 内容例 関節可動域訓練 足首の曲げ伸ばし 膝の曲げ伸ばし ストレッチポールなどを使った下肢のストレッチ 筋力増強運動 踏み台昇降運動 椅子からの立ち上がり運動 歩行練習 平行棒内歩行 杖歩行 ひとり歩き バランス運動 足踏み運動 日常生活動作の訓練 階段の昇り降り 着替え 入浴 トイレ動作 複数の運動を組み合わせ、患者様の状態に合わせて難易度を上げていくと、関節の機能回復と日常生活への復帰がしやすいでしょう。 再手術 人工関節置換術後の痛みを感じる場合、以下の原因が考えられます。 インプラントの緩み 感染 関節の不安定性 周囲組織の炎症や損傷 診断により原因を特定し、必要に応じて再手術を検討します。 再手術では、緩んだインプラントの交換や、感染組織の除去、位置の修正などを行うことで、多くの場合症状の改善が期待できます。一方で、回復そのものに時間がかかってしまう点には注意が必要です。 人工関節置換術後の痛みには再生医療が1つの選択肢になる 人工関節置換術後の痛みについて、再手術以外の新たな選択肢として再生医療があります。 再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。手術と比べて体への負担が少なく、軟骨の再生や炎症の軽減により、痛みの改善が期待できます。 従来の人工関節置換術後の痛みに対する治療は、薬物療法やリハビリといった保存的治療、または再手術が一般的でした。しかし、再手術には入院期間や回復期間が必要で、手術に伴うリスクも考慮する必要があります。 再生医療は、そのような手術のリスクを避けながら、痛みの軽減と関節機能の改善を目指す新しい治療選択肢です。 再生医療について、より詳しい情報は以下のページでご紹介しています。痛みでお悩みの方は、ぜひご覧ください。 人工関節置換術後の痛みについて、再手術以外の新たな選択肢として再生医療があります。再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。 手術を必要としないため体への負担が少なく、治療により炎症の軽減や症状の改善が期待できます。 再生医療について詳しくは、以下のページで紹介しています。痛みでお悩みの方は、ぜひご覧ください。 まとめ・人工関節置換術後の痛みが気になったら早めの受診を! 今回は人工関節置換術後の痛みを感じる原因や対処法について解説しました。 人工関節置換術後の痛みの原因として、手術による損傷やリハビリ不足などがあげられます。 痛みを早く解決するために無理なリハビリをするのはおすすめできません。症状の改善には、専門医による適切な指導のもとでリハビリを進めることが大切です。 また、人工関節の不安定性や炎症が痛みの原因の場合は、再手術が検討されます。「手術を避けたい」とお考えの方には、手術に頼らない再生医療という選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」では幹細胞を用いた再生医療を行っています。 当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、痛みにお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 人工関節置換術後の痛みの原因が知りたい方からのよくある質問 そもそも人工関節置換術後の痛みはいつまで続くの? 人工関節置換術後の痛みは、手術した日とその翌日をピークに、1週間程度続きます。痛みは次第に回復し、手術後に処方された痛み止めを徐々に減らしていきます。 術後のつっぱり感も多くの場合、半年程度で回復しますが、長期的な健康維持が大切です。 なお、仕事の完全復帰や旅行、スポーツなどを考えている方は6カ月〜1年程度と考えてください。 無理をしてしまうと、痛みが続く期間が伸びる可能性があるため、定期的な受診をおすすめします。 以下の記事では人工関節置換術について、知っておきたいポイントを網羅的に解説しています。 人工関節置換術後にやってはいけないことは? 人工関節置換術後、やってはいけない姿勢や動きがあります。 たとえば、横座りやあぐら、足組みなどがあげられます。和式トイレの使用や前傾姿勢も、脱臼の可能性があるので、控えてください。 また、人工関節置換術後は適度な運動が推奨されていますが、野球やテニスのような関節の動きが多いスポーツは避けましょう。 日常生活でも階段の利用は控え、立ちっぱなしの時間が長くならないよう、座ってできる作業をおすすめします。 転倒にも注意が必要なため、術後はとくに杖やストックを使って歩くのがおすすめです。 自宅でできる予防法はある? 自宅で簡単に行える予防法は、以下のようなエクササイズです。 エクササイズ 内容 目的 足関節ポンプ運動 仰向けに寝て足を台の上に乗せ、足首を上下に動かし、血流を促進する 浮腫の軽減 ストレートレッグレイズ 手術した脚を真っすぐに保ったまま持ち上げ、保持する 太もも前面の筋力強化 膝の屈曲・伸展運動 椅子に座り、手術した膝を曲げたり伸ばしたりする 関節可動域の維持 上記のエクササイズを毎日行うと、筋力と関節の動きが改善され、日常の動作がスムーズに行える場合もあります。 しかし、人工関節の種類によっては関節の動きに制限があるため、必ず医師や理学療法士の指示に従い、痛みに注意しながら行ってください。 なお、エクササイズだけでなく、日頃の感染予防も大切です。手術した部位を清潔に保てるよう、定期的な受診や抗菌薬の服用が主な予防法です。 発熱や腫れ、痛みが生じた場合は速やかに担当医に相談してください。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/
2024.07.17 -
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シンスプリントは、主にランナーやアスリートの間でみられる症状で、すねに痛みを引き起こす状態です。オーバートレーニングや不適切な運動が原因となり、すねの骨に過度のストレスがかかる結果、炎症や筋肉の微細な損傷を引き起こします。初期症状の場合は運動中に痛みが出現しますが、重症化すると立っている時や安静時にも痛みを感じることもあります。 では、シンスプリントの治療法について以下のようなお悩みはありませんか? 正しい治療方法を知りたい どのようにリハビリを行うと良いか分からない 日常で気をつけることやスポーツ復帰の目処を知りたい この記事ではシンスプリントの治療法、具体的なリハビリテーション方法、そしてスポーツへの復帰について詳しく解説します。健康的な身体を維持し、最高のパフォーマンスを発揮するために、これらの知識を身につけることは非常に重要です。 シンスプリントの治療法 シンスプリントの原因はオーバートレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などであるため、適切に治療することが重要です。 また、シンスプリントの痛みの程度に応じて以下3つの治療を行います。 安静とアイシング 薬物療法による疼痛緩和 リハビリテーション それぞれ詳しく解説します。 安静とアイシング シンスプリントにより痛みや腫れが出現している場合は、安静にする必要があり、疲労した筋肉や骨を休めましょう。痛みを我慢して運動を続けていると、症状が悪化したり、最悪の場合は疲労骨折する可能性があるので注意が必要です。安静期間やスポーツへの復帰については下記の項目で詳しく解説します。 また、安静に併せてアイシング、要するに痛い部分を氷などで冷やすことも重要です。アイシングを行うと、腫れを抑えられ、痛みの増悪も軽減できます。 ただし、アイシングを行う際は以下に注意しましょう。 袋に入れた氷をあてる際はタオルを挟める 1回に冷やす時間は15~20分程度 アイシングの際、短時間で急激に冷やそうとタオルを挟めず長時間あて続けると、凍傷になる可能性があるため上記の項目を守りましょう。1度アイシングを行い、その後1時間ほど間を空けてから再度冷やすことで、アイシングの効果をさらに高められます。 薬物療法による疼痛緩和 シンスプリントの治療法の1つとして薬物療法があり、主に疼痛緩和を目的に行われます。痛みが強く日常生活に支障をきたす場合には、整形外科を受診し、医師に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの使用を相談してみましょう。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に限らず、薬物療法には副作用のリスクもあるため、医師の指導のもと用法用量を守って使用することが重要です。 しかし、薬物療法は痛みを一時的に和らげるためのもので、根本的な腫れや炎症などの問題が解決するわけではありません。 なぜなら、シンスプリントの原因には、過度なトレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などが関与しているからです。このため、薬物療法に併せて原因に対しての治療も重要です。 リハビリテーション 薬物療法と並行して、痛みの予防や再発防止に向けたリハビリテーションを行うことも大切です。 リハビリテーションの目的は以下の3つです。 筋肉や関節の柔軟性の向上 筋力強化 シンスプリントの痛みを軽減・再発 リハビリテーションは自宅で行えるメニューから、歩行姿勢やランニングフォームの改善で行います。歩行姿勢やランニングフォームの改善の際、専門家(理学療法士)の指導のもと、正しい運動方法を習得することが必要になる場合があります。 以下では、自宅で行える具体的なリハビリテーション方法について解説しているので、詳しく見ていきましょう。 ただし、正しい方法で行わなければ痛みが増悪する可能性があるので、注意しながら行いましょう。 シンスプリントの具体的なリハビリテーション シンスプリントに対しては以下3つのリハビリテーションが有効です。 ストレッチと筋肉強化 テーピングやサポーターの活用 日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミング それぞれ詳しく解説します。 ストレッチと筋肉強化 シンスプリントに有効なストレッチと筋力強化について以下の3つを紹介します。 ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチ ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の低負荷の筋トレ 足指でタオルを引き寄せる運動 ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチはシンスプリントの痛みを和らげるのに効果的です。ヒラメ筋のストレッチ方法はアキレス腱のストレッチに似ていて、足を前後に開いて後ろ足のヒラメ筋を伸ばしますが、この時後ろ足の膝は曲げて行うことが大切です。後ろ足の膝を伸ばして行うと、ヒラメ筋のストレッチにならなくなってしまいます。また、反動をつけると筋肉を痛めてしまう可能性があるため、ゆっくり30秒ほどかけてストレッチを行うと効果的です。 ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の低負荷の筋トレでは、足指の付け根にゴムチューブを巻き、手前に引きます。かかとは床につけた状態で、ゴムチューブを伸ばすようにつま先を下に伸ばします。負荷の設定方法は、低負荷から始め、徐々に負荷量を上げていくのが一般的です。いきなり高負荷でトレーニングすると筋肉が再び炎症する可能性があるので注意しましょう。 『足指でタオルを引き寄せる運動』は、床に敷いたタオルの上に足を置き、足指でタオルをつまんで離してを繰り返し、タオルを手前に引き寄せる運動です。この運動では「長母趾屈筋」と「長趾屈筋」が強化され、筋肉の滑走性が滑らかになります。 テーピングやインソールの活用 上記のリハビリテーションの他に、テーピングやインソールを使用することでも痛みを軽減できます。 テーピングは、筋肉や靭帯に適度な圧力を加えて安定化させ、痛みの軽減や再発防止に効果があります。特に、ランニングや他のスポーツをする際の足への負担を軽減するのに役立つため、スポーツ選手には欠かせない存在です。 シンスプリントに対するテーピング(伸縮性)の巻き方は以下の通りです。 1本目:外くるぶしから足裏を通って引っ張り上げながら膝下まで張る 2本目:1本目同様に、数cmずらして貼る 3本目:痛い部分の上をテーピングで1周巻く(大体すね下1/3付近) 4本目:数cmずらして1同様に1周巻く また、自分の足に合ったインソール(中敷)に変更することでも、シンスプリントの痛みの予防につながります。なぜなら、足のアーチが崩れると、バランスをとる際に筋肉に負担がかかってしまうからです。足のアーチを支えるインソールは数千円と高額ですが、痛みの予防につながり、一生使う自分の足を守れると考えると決して高い買い物ではありません。 ただし、テーピングやインソールの活用だけでシンスプリントが完治するわけではないので注意しましょう。 日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミング シンスプリントにおける日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミングは、以下のWalshによる疼痛stage分類を参考に行います。 分類 内容 Stage 1 運動後にのみ疼痛あり Stage 2 運動中に疼痛あるが,スポーツ活動に支障なし Stage 3 運動中に疼痛あり,スポーツ活動支障あり Stage 4 安静時にも慢性的な持続する疼痛あり Stage1〜3の場合、痛みによる日常生活への影響は少ないことが多いです。しかし、Stage4の場合は痛みの増悪を防ぐためにも、安静にしなければいけません。 また、スポーツ活動のタイミングは以下の通りです。 症状が軽度の場合:約2週間 症状が重度の場合:2〜3ヵ月 ただし、いきなり激しい運動を行うと、再度シンスプリントを発症する可能性もあるため、初めはウォーキングなどから低負荷な運動から始めましょう。 シンスプリントをしっかり治療してスポーツに復帰しよう シンスプリントは適切に治療することで、再びスポーツに復帰できます。 治療の選択は、シンスプリントによる腫れや痛みが強い場合は、アイシングと安静が必要です。併せて薬物療法を行うことで痛みがさらに軽減できます。リハビリテーションは腫れや痛みが治ってきてから徐々に始めましょう。 シンスプリントは一度治っても、再発する症状であるため、日頃からシンスプリントにならないようにストレッチや筋トレを行い予防していきましょう。 参考文献 三笠製薬株式会社.15.シンスプリント. jason E. Bennet.Running and Osteoarthritis: Does Recreational or Competitive Running Increase the Risk?. 持田尚.床反力からみた中学陸上競技者のシンスプリント発症に関する前方視的研究.
2024.07.11 -
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〜自宅でもケアして回復をサポートしましょう〜 「股関節唇損傷ってなに?」 「サッカーをしているときに股関節を痛めたけどどうすればいいの?」 このように悩でいる方も多いのではないでしょうか。 股関節を痛めるとスポーツができなくなるだけではなく、歩いたり走ったりできなくなります。さらには、股関節唇損傷により大腿骨頭が安定しないため、腰や膝を痛めやすくなり日常生活に支障をきたす恐れがあります。 今回は股関節唇損傷の診断や治療、自宅でできるケアなどを詳しく紹介します。この記事が、股関節唇損傷と診断され症状に悩んだり、早く回復できないかと感じたりするあなたの悩みを解決できると幸いです。 股関節唇損傷って何? 股関節唇損傷は 「股関節を構成する寛骨臼(股関節のくぼみの部位)の軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすることで起こる病気のこと」です。 スポーツで脚を広げ過ぎたり、繰り返し関節を曲げたりすることがきっかけで発症します。ほかにも、もともと股関節が傷つきやすい形であることが原因で起こります。 股関節唇損傷になった始めの頃は、歩くときに違和感を覚えるくらいの症状です。ただし、病気が進むと階段を登るときや椅子に座るとき、しゃがむときなどの衝撃に痛みを生じることもあるでしょう。そのため、股関節唇損傷による症状が悪くなる前に対処することが大切です。 股関節唇損傷の診断と治療 ここでは、股関節唇損傷と診断される基準や治療方法、治療後のリハビリテーションについて詳しく解説します。それぞれをみていきましょう。 専門家による診断プロセス 股関節唇損傷と診断されるまでには以下4つの流れがあります。以下の表を参考にしてください。 診断の流れ 特徴や注意点 1.問診 医師が以下のポイントで患者さんに詳しく確認 痛みの部位(股関節前/後ろ/内側/外側のどのあたりか) 痛みの程度(鈍痛/刺痛/ずきずき痛むか) 痛みの発症時期(いつ頃から痛み始めたか) 安静にしているときと動いたときで違いがあるか 日常生活で困っていることはないか スポーツ外傷のときは受傷したときの状況を詳しく確認 視診:腫れ、変形、歩行の異常がないか観察 2.身体診察 視診:腫れ、変形、歩行の異常がないか観察 股関節の屈曲、伸展、内転、外転を確認 内旋外旋運動をして可動域と痛みの有無を確認 徒手筋力検査で股関節周囲の筋力を確認 なかには理学療法の検査を実施する場合もある 3.画像検査 X線検査(レントゲン):骨折や関節症に変化がないか確認 MRI検査: 関節軟骨の状態(損傷の有無)、靱帯断裂の有無、関節唇の損傷(部位、程度)を詳細に評価 4.診断 1~3を実施して、最終的に医師が診断 問診や身体診察のみで股関節唇損傷と診断する場合もあります。 ただし、ほかの病気や外傷がないかを確認するためにX線検査やMRI検査が行なわれるのが一般的です。 医師の指示によっては、追加の検査が行なわれることもあります。 治療オプション 股関節唇損傷の治療は主に以下の4つです。 物理療法 薬物療法 手術 リハビリテーション 股関節唇損傷は、自然と治癒することはほとんどありません。そのため、適切な治療を受けることが重要です。ここでは、それぞれの治療方法を詳しく解説します。 股関節唇損傷と診断されると、手術する前に保存療法(手術以外の方法)を行います。具体的には、電気や光線、超音波などのエネルギーを利用した治療です。整形外科や整骨院で行われている電気マッサージをイメージするとわかりやすいでしょう。 これらの治療は、痛みを減らす効果が期待できます。ほかにも、日常生活のなかで困っていることに対して動き方や関節の使い方などを指導して、可能な限り自力で行えるように支援します。 また、痛みが強いときには痛み止めの薬を飲んだり、ヒアルロン酸注射やステロイド注射などの薬物療法を実施する場合があります。痛みが軽くなると、リハビリテーションを進めやすく日常生活も送りやすくなるでしょう。 ただし、物理療法と薬物療法、いずれの治療法も股関節唇損傷を治すものではありません。あくまでも股関節唇損傷によってあらわれる症状に対して治療を行うものであり、根本的な治療ではないことを知っておいてください。 物理療法や薬物療法を行っても痛みが続いたり、日常生活を送るのが難しくなったりするときは手術になる恐れがあります。股関節唇損傷の手術には、股関節鏡視下術で股関節の裂けた部分を修復したり除去したりします。ほかにも、再建術があります。かかりつけ医と相談のうえで、納得できる治療方法を選びましょう。 治療後のリハビリテーション 股関節唇損傷の治療を行った後のリハビリテーションは主に次の2つです。 筋力トレーニング 股関節の可動域のトレーニング 治療後は痛みが生じる恐れがあるため、主治医の指示のもとで痛みが出ない範囲でリハビリテーションに取り組みます。治療したばかりの頃は、回復を図りながら負担がかからないように股関節を動かしてください。身体の状態が安定してくると、少しずつ負荷をかけて歩行の距離を伸ばします。治療後の段階や痛みの程度など患者さんそれぞれによってリハビリテーションの内容は異なるため、主治医やリハビリのスタッフと相談しながら進めましょう。 自宅でのケアと回復サポート 股関節唇損傷は、自宅でもケアすることが大切です。自宅での適切なケアが回復を進めるといえるでしょう。 日常生活での注意点 日常生活では、次のポイントに注意することが重要です。 激しい動作や無理な体勢は避ける 長時間の座位や立位は避ける 適度な休息を取り、過度の負荷は避ける つま先立ちや深い屈曲は避ける 上記のような行動を避けることで、股関節への負担を軽減できます。痛みの程度や治療後の主治医からの指示によっては、移動する際に補助器具を使用したり、手すりを使ったりなどの工夫が必要です。 自宅で行うことができるストレッチと運動 ここでは、自宅で行うストレッチや運動を紹介します。 ストレッチ 運動 腸腰筋ストレッチ 膝立て運動 床に仰向けになり、片膝を立てて太ももを引き寄せる。反対側の足裏をベッドにつけたままゆっくり膝を伸ばす 仰向けになり片足を床につけ、もう片方の膝を立てる 大腿四頭筋ストレッチ 伏せ運動 壁に立ち足を後ろに引いて膝裏をストレッチ うつ伏せになり、片足ずつ後方に引き上げる 内転筋ストレッチ - 片足を閉じて、もう片足を広げるイメージでストレッチ - 回復をサポートする栄養と生活習慣 股関節唇損傷の回復をサポートする栄養には、次のものがあげられます。 栄養素 目的 食品 タンパク質 筋肉や靭帯の修復 赤身肉 卵 大豆食品など オメガ3脂肪酸 炎症を抑える 大豆 青魚や青魚から取れる魚油 くるみなど ビタミンC 組織の修復を助ける オレンジ いちご ブロッコリーなど 上記の食品を摂取できると、股関節唇損傷の回復に役立つ可能性があります。 一方で、喫煙すると血液の流れが悪くなるため禁煙してください。ほかにも、ストレスがかかると身体が回復しにくくなったりするため、リラックスして身体を休めましょう。 予防と長期的な管理方法 股関節唇損傷を発症すると、自然に治ることはほとんどないといわれています。そのため、股関節唇損傷の予防と長期的な管理が大切であり、時間がかかります。それぞれについて詳しくみていきましょう。 股関節唇損傷の予防方法 先述したように、股関節唇損傷の予防方法はできるだけ股関節に負担がかからないように身体の動かす方法を実践することです。股関節が深く曲がったり、股関節が開いたりする動作はしないでください。 例えば、以下の動作は避けましょう。 深いソファや床に座る しゃがみ込む 椅子から立つときは積極的に手すりを使う また、体重が重すぎると股関節への負担となるため、適正な体重の維持が大切です。 適正な体重はBMI(体重kg÷身長mの2乗)で18.5〜25未満とされているため、このBMIを目安としましょう。 長期的な健康維持のための運動療法 股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで発症する病気です。そのため、体幹の機能訓練や骨盤の可動域を改善する訓練、臀部の筋力強化などを行わなければなりません。とはいえ、運動療法を行うことにより、かえって股関節に負担がかかる恐れがあります。そのため、理学療法士やトレーナーに相談したうえで実施してみてください。 おわりに 股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすることで起こります。一般的には、まずは物理療法や薬物療法などの保存療法を行い、効果がなければ手術を検討します。 ただし、治療だけではなく自宅でできるストレッチや軽い運動をすることで、回復をサポートできる可能性があります。整形外科医や理学療法士などに相談しながら、社会生活への早期復帰を目指しましょう。 参考文献 股関節唇損傷とは|北長会記念病院 股関節唇損傷の手術後のリハビリテーション|AR-Ex尾山台整形外科 東京整形外科クリニック|股関節唇損傷 股関節内病変の診断と治療 e-ヘルスケアネット|厚生労働省 オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと|厚生労働省 e-ヘルスケアネット|厚生労働省
2024.07.03 -
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恥骨結合炎とはどんな病気? 恥骨結合炎になったら、何科を受診すればいいの? おへそのあたりが痛む病気として「恥骨結合炎(ちこつけつごうえん)」という病名を目にすることもあるかもしれません。 聞きなれない病名で不安になる方や、何科を受診すべきか悩む方もいるでしょう。 恥骨結合炎は歩いた後や運動後におへそあたりに感じる痛みが特徴の病気です。 恥骨に起きる炎症であるため、整形外科で治療を行うのが一般的です。 本記事では、恥骨結合炎の原因や症状、予防方法まで詳しく解説します。運動後におへそあたりに痛みを感じやすい人はぜひ最後までチェックしてみてください。 恥骨結合炎はおへその下あたりに起きる炎症!更年期やがんとの関係はない 恥骨結合炎(ちこつけつごうえん)は骨盤の一部である恥骨に起きる炎症です。 おへそから下に向かって触っていったときに陰毛付近で触れられる骨で、その周囲に痛みを感じます。 女性に多く妊娠や出産を期に発症することがありますが、婦人科系のがんや更年期障害と関係ありません。 そのほか、サッカーなど内ももの筋肉に負担がかかるスポーツや、尿道カテーテルや帝王切開などの術後感染によって発症する可能性もあります。 恥骨結合炎の3つの症状 恥骨結合炎には以下の症状があります。 恥骨部・鼠径部(そけいぶ)・下腹部の痛みや違和感がある いつものように歩けない・走れない 発熱がある ひとつずつ見ていきましょう。 恥骨部・鼠径部(そけいぶ)・下腹部の痛みや違和感がある 代表的な症状は恥骨部や鼠径部(足の付け根)・下腹部の痛みです。 ランニングなどの運動後や股関節周りの筋肉が強く働いたあとに痛みます。 最初は違和感や鈍い痛みですが、悪化していくと刺すような鋭い痛みで激痛となることも珍しくありません。 症状が重くなると、かがんだり立ち上がるといった日常的な動作でも痛むようになり、安静にしていても痛みが続きます。 いつものように歩けない・走れない うまく力が入らずいつものように歩けない・走れないといった症状も特徴です。 恥骨結合からお腹や内ももとつながる筋肉もいっしょに炎症を起こすため、痛みにより歩く・走ることが難しくなるケースもあります。 発熱がある 感染を起こしている場合は、身体が病原菌と戦うため発熱します。 感染を起こしていない場合は発熱はありませんが、恥骨部が痛くて熱も出てきた場合はかならず病院を受診しましょう。 恥骨結合炎(恥骨炎)の3つの原因 恥骨結合炎の原因は大きくわけて以下の3つです。 スポーツ 妊娠・出産 感染症 恥骨は陰毛のあたりで左右から向かい合い、中央で軟骨をはさんで合流する骨です。 この合流した部分を恥骨結合といい、スポーツや妊娠出産・感染症で炎症をおこすと恥骨結合炎になります。 原因を1つずつみていきましょう。 サッカーやランニングなどのスポーツ 恥骨結合炎を起こしやすいスポーツは以下のとおりです。 ランニング サッカー(ボールを蹴る動作) ジャンプ ランニングやサッカー、ジャンプは恥骨のあたりに体重がかかりやすく、反復する運動なので恥骨結合に負荷がかかります。 たとえば、1回や2回同じ場所を軽くぶつけても平気ですが、一定のリズムで何度もぶつけると赤くなり、痛みを感じるでしょう。 この状態が恥骨のあたりで起こり続けると、恥骨結合や恥骨結合にくっついている周りの筋肉に炎症を起こします。 妊娠・出産 女性は妊娠・出産時に恥骨結合炎を起こしやすいです。 骨盤がゆるむ妊娠後期 骨盤を赤ちゃんの頭が通る出産時 骨盤が不安定な出産後 妊娠後期では、産む準備のために出るホルモンで骨盤がゆるみ、赤ちゃんの頭が骨盤内におさまるため恥骨が圧迫されます。 赤ちゃんの頭が産道を通る出産時も、恥骨が強く圧迫されるので痛みがでやすいでしょう。 出産後、ゆるんだ骨盤は自然にもどりますが、すでに妊娠や出産で疲労がたまっている恥骨部は、赤ちゃんの抱っこなどの育児で炎症が起きやすい状態です。 妊娠後期から出産後まで恥骨のあたりが痛む場合は、はやめに助産師や医師に相談してください。 感染症 まれですが、感染症により化膿性の恥骨結合炎を起こします。 術後に感染する(術後感染) 尿道カテーテルを通して感染する(尿路感染) 日常生活での感染 泌尿器科や婦人科(帝王切開など)の術後感染や、尿道カテーテルなどで尿路感染を起こすと、骨盤内で炎症が起き恥骨結合炎になるケースがあります。 また、手術をしていなくても、健康な人が保菌している黄色ブドウ球菌や水まわりに常在する緑膿菌に感染することで化膿性恥骨結合炎を起こす可能性があることを頭に入れておきましょう。 恥骨結合炎の診断方法 恥骨結合炎の診断は以下の3つでおこないます。 触診 MRI検査 レントゲン検査・CT検査 それぞれ解説します。 触診 医師が実際に痛いところとその周辺を触り、痛みの正確な位置や痛みの程度を確認します。 痛いところを触られるのはつらいと思いますが、正しい診察のために触診は必要な検査なので、少しの間がんばりましょう。 MRI検査 MRI検査は、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)のことで、磁石と電磁波をつかって体内の組織を画像化します。 健康な組織と炎症(病変化)している部分とではコントラストが大きく違って写されるので、痛みの原因や場所をつきとめるために必要な検査です。 大きな筒状の機械に20分~1時間ほど入るため、閉所恐怖症の方は医師につたえましょう。 また、MRIは強い磁力があり、体内に金属が入っている場合は検査ができないため、事前に医師に相談してください。 レントゲンやCT検査 MRIは時間のかかる検査のため、素早く撮影できるレントゲンやCT検査をおこないます。 レントゲンやCTはX線をつかった検査で、骨の異常や炎症している部分の撮影が可能です。 また、レントゲンやCTは、MRIと違って金属が入っていても検査できます。 恥骨結合炎における2つの治療法 恥骨結合炎の主な治療法は以下の2つです。 安静・服薬などの内科的治療 内視鏡・カテーテルによる外科的治療 それぞれ解説します。 安静・服薬などの内科的治療 恥骨結合炎の治療では、手術をしない保存的な治療がメインです。 安静にする 痛み止めや炎症止めの薬を飲む マッサージやストレッチをする リハビリをする 炎症がおさまるまでは薬を飲んだり、冷やして安静にしましょう。 傷ついた筋肉や痛みをかばうためにほかの筋肉も疲労しているので、痛みがひいてきたら医師の指示のもとマッサージやストレッチをおこないます。 3週間ほどは運動を制限しながらのリハビリで筋肉を強化し、すこしずつ運動量を増やして数か月でスポーツができるまでに回復可能です。 ただし、恥骨結合炎は再発しやすい病気なので、無理をせず医師の判断のもと治療しましょう。 内視鏡・カテーテルによる外科的治療 恥骨結合炎は保存的治療がメインですが、外科的治療という選択肢もあります。 具体的に、2つの治療方法をご紹介しましょう。 内視鏡的恥骨結合掻把(ないしきょうてきちこくけつごうそうは) 運動器カテーテル治療 恥骨結合炎の重症例ではお腹をひらく開腹手術が一般的ですが、最近では内視鏡をつかってお腹をきらずに手術をおこなう内視鏡的恥骨結合掻爬がおこなわれます。 そのほか、手術適応ではないけれど再発を繰り返すケースに対して、運動器カテーテル治療も要注目です。 運動器カテーテル治療とは、足の付け根や手首などの結果から0.6mmほどのカテーテルを入れ、病変部位の細かい血管を減らす治療のことです。 炎症が起こると、その周囲に細かい異常な血管がたくさんできますが、カテーテルで異常な血管をなくすことで痛みや炎症をおさえます。 まだ新しい治療方法のため保険適用ではありませんが、いま注目されている治療法です。 また、恥骨結合炎をはじめ、歩行時や運動後の下腹部の痛みが気になる方は、当院「リペアセルクリニック」の「メール相談」や「オンラインカウンセリング」もご活用いただければ幸いです。 恥骨結合炎で受診すべき3つの目安!受診すべき診療科もご紹介 恥骨結合炎を疑ったときに受診すべき基準は以下に挙げる3つです。 歩行やスポーツで下腹部の痛みがある 下腹部の痛みと発熱がある 排尿時・月経時の痛みが強い なお、スポーツや下腹部の痛みでは整形外科へ、排尿時には泌尿器科・月経時には婦人科へ受診してください。 それぞれの理由をみてみましょう。 歩行やスポーツで下腹部の痛みがある 歩行やスポーツをした後に感じる痛みは、恥骨結合炎の特徴的な症状です。 これは運動により、恥骨や周囲の筋肉に繰り返し負担がかかるためです。この場合は骨・筋肉の痛みであるため、整形外科を受診しましょう。 歩行やスポーツ時の下腹部の痛みが気になる場合は、当院「リペアセルクリニック」でもご相談が可能です。 恥骨結合炎なのか判断がつかず悩んでいる方は、ぜひ「メール相談」や「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 下腹部の痛みと発熱がある 帝王切開や尿道カテーテルの術後、あるいは風邪を引いた後に下腹部の痛みと発熱を伴う場合などは、感染による恥骨結合炎の可能性があります。 薬による治療が必要なため、可能な限り早い受診がおすすめです。 発熱が伴う場合でも、恥骨結合炎が疑われる場合は整形外科を受診してください。 排尿時・月経時の痛みが強い 恥骨結合炎は恥骨に負担がかかったときに生じる痛みが特徴の病気であるため、排尿時や月経時に痛みが出ることはあまりありません。 そのため、排尿時や月経時に痛みが強くなる場合は恥骨結合炎以外の病気の可能性があります。 排尿時の痛みがあれば泌尿器科へ、月経時の痛みが強いときには婦人科を受診してみてください。 恥骨結合炎と似ている病気 恥骨結合炎に似ている病気もあるため、症状や痛みの具合だけで自己判断しないようにしましょう。 恥骨結合炎とよく間違えられる病気は以下のとおりです。 グロインペイン症候群 恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい) 子宮筋腫・子宮内膜症 膀胱炎・尿道炎 本章を参考にしつつ、該当する症状がある場合は早めに受診することをおすすめします。 グロインペイン症候群 グロインペイン症候群は鼠径部痛症候群ともいわれ、恥骨結合炎と症状が似ており間違えられやすい病気です。 鼠径部(そけいぶ)は足の付け根あたりを指しますが、グロインペイン症候群では足の付け根、下腹部、睾丸のうしろ、内ももが痛みます。 痛みの場所もですが、サッカー選手に多く見られることも恥骨結合炎と似ている特徴です。 恥骨結合炎と違うのは恥骨部分の炎症がないことで、グロインペイン症候群の治療では股関節だけを動かさないような運動の仕方や筋力強化のためのリハビリが主な治療となります。 炎症が起きている場合は運動制限が必要なので、似た症状でも治療内容が異なることを頭にいれておきましょう。 恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい) 恥骨結合炎と間違えられやすい病気に恥骨結合離開があります。 症状は恥骨結合炎と同じく恥骨部の痛みですが、時折、痛みが非常に強くなるために、正常に歩行することが困難になるケースもある病気です。 通常は運動しただけで離開することはありませんが、事故などの外圧や出産などで左右からのびた恥骨を結合させている軟骨が離れてしまいます。 腰を強く強打したあとに痛み出した・出産後に強い痛みがある場合は医師に相談しましょう。 子宮筋腫・子宮内膜症 子宮筋腫・子宮内膜症は下腹部の痛みを伴うため、恥骨結合炎と間違えやすい病気です。 これらの病気は本来子宮内に存在する組織が子宮外で異常発育するために生じる病気で、恥骨へ痛みが波及します。 とくに月経時、子宮内膜が剥がれるときの強い痛みが特徴であり、恥骨結合炎のように運動後の痛みはあまりありません。 痛みを感じる部位は似ていますが、痛みを抑えるお薬の内容が大きく異なるため注意してください。 月経時に下腹部や恥骨の痛みを強く感じる場合は、婦人科に相談しましょう。 膀胱炎・尿道炎 膀胱と尿道は恥骨の後ろにある臓器であるため、膀胱炎・尿道炎も恥骨付近へ痛みを生じさせます。 しかし膀胱炎や尿道炎は排尿時の痛みが主であるため、運動時に痛みを感じる恥骨結合炎とは見分けやすいでしょう。 これらの病気はなんらかの原因で細菌が膀胱・尿道に入り込むために生じます。 排尿時の痛みや血尿・尿の色が本来と大きく異なるといった症状が特徴であり、内服治療が必要です。このような症状がみられたときには泌尿器科への受診をおすすめします。 恥骨結合炎の予防に効果的なストレッチ5選 恥骨結合炎は再発しやすく、一度症状が出ると治るのに時間がかかるため、日頃から予防したいですよね。 恥骨にくっついている筋肉は、大内転筋・小内転筋・長内転筋・薄筋・恥骨筋・腹直筋などで、内ももや股関節まわり・下腹部にあります。 これらの筋肉をほぐすストレッチで予防しましょう。 また、以下の記事でも恥骨結合炎のストレッチについて解説したいるため、気になる方はぜひご覧ください。 ただし、炎症が強い場合や痛みがあるときは自己判断でストレッチせず、かならず医師の診察を受けてください。 内もも・股関節のストレッチ(1) 1. 床にすわり、足の裏どうしを合わせて股関節をひろげます。 2. 手は両足のつま先をそっとつつみ、上半身を前へたおします。 3. ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 背中が曲がらないように気をつけましょう。 内もも・股関節のストレッチ(2) 1. 大内転筋ストレッチの姿勢から、両足をすこし前に出します。(ダイヤの形) 2. 手は両足のつま先をつつみ、上半身を前へたおします。 3. ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 両足の位置は少し調整し、気持ちの良いところでおこなってくださいね。 内もも・股関節のストレッチ(3) 1. 長内転筋ストレッチの姿勢から両足を伸ばしひらきます。(開脚している状態) 2. 手は前につきゆっくり上半身を前にたおします。 3. ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 上半身を前にたおすときに、つま先が上になるように気をつけましょう。 お腹のストレッチ(1) 1. うつ伏せになり、足を肩幅ほどにひらきます。 2. 両手を肩の横につき、気持ちの良いところまで肘を伸ばします。 3. ゆっくり5回ほど呼吸します。(60秒前後) 目線はななめ上または正面に向け、無理せずおこないましょう。 お腹のストレッチ(2) 1. 手のひらと両膝を肩幅程度にひらき床につけ、よつんばいの姿勢になります。 2. 息を吐きながら背中を丸めおへそを見ます。 3. 息を吸いながら背中を反らし天井を見ます。 4. ゆっくり5回ほど呼吸しながら繰り返します。(60秒前後) 天井を見るときに顎が上がると首を痛めやすいので顎をひいておこないましょう。 恥骨結合炎には負荷の少ないトレーニングもおすすめ 負荷の小さいトレーニングであっても、恥骨結合炎の予防に効果的です。 恥骨結合炎は恥骨付近の筋肉が炎症を起こして発症する可能性があるため、内股や下腹部の筋力強化がおすすめです。 また、肥満でも体重の重みが恥骨に負担を与えるため、肥満改善も有効といえるでしょう。 もし恥骨結合炎を繰り返している方や予防したい方は、負担の小さいトレーニングをおすすめします。詳しい内容は以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。 恥骨結合炎で注意すべき生活習慣2選 恥骨結合炎は数週間~数か月と完治まで時間がかかり、再発もしやすい病気のため、日常生活に気をつけなくてはいけません。 骨盤に負担がかかる姿勢や動作 体重のコントロール 恥骨結合炎の治療・予防に重要な2つの注意点をまとめました。 骨盤に負担がかかる姿勢や動作 恥骨に負担がかかりやすいのは、体重が前にかかる・体重が左右に偏るときです。 前傾姿勢にならないように注意するのと、片方の足に体重をかけて立たないようにしましょう。 落ちたものを拾いたいときなどは、なるべく膝を曲げ体重が前にかからないようにします。 ベッドから起き上がる動作は下腹部・恥骨に力がかかるため、まず横向きになり、手で床を押しながら起き上がりましょう。 敷布団は起床時にに立ち上がる動作がどうしても負担になります。可能であればベッドを使用をおすすめします。 また、ビーズクッションなどの柔らかいソファは立ち上がる動作が負担になるので使用は控えましょう。 体重のコントロール 体重がかかると恥骨への負担が大きくなるため、肥満の場合は体重を落とすことも考えます。 とはいえ恥骨結合炎の治療中は運動は制限されるため、食事内容や量を見直しましょう。 肥満ではなくてもスポーツをしていて恥骨結合炎になった方は、運動を制限する治療期間中の消費カロリーが大幅に減ります。同じように食べていると体重が増えてしまうため、注意しましょう。 まとめ|恥骨結合炎はおへそ下に痛みを出す病気!悩んだら整形外科を受診しよう 恥骨結合炎は恥骨や周囲の筋肉の炎症によって痛みを生じる病気で、運動や出産が原因と考えられています。股関節周囲のストレッチやトレーニングが効果的で、適切な治療をすれば治る病気です。 しかし完治まで長い時間がかかり再発しやすい病気のため、日頃からストレッチをしたり、恥骨に負担をかけないよう動作に気をつけて過ごしましょう。 また、恥骨の痛みがなかなか治らない場合は似ているほかの病気も考えられるため、自己判断せず病院への受診をおすすめします。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでは恥骨結合炎にも適応可能な再生医療へ取り組んでいます。従来の治療とは異なり、体への負担も少なく再発予防にも効果的です。 もし気になる方がいれば、お気軽に当院の「メール相談」や「オンラインカウンセリング」をご利用ください。 この記事が少しでも皆様の参考になれば幸いです。 恥骨結合炎についてよくある質問 恥骨結合炎はどんな症状がある病気ですか? 恥骨結合炎は歩行や運動によって恥骨や周囲の筋肉に炎症が生じ、下腹部に感じる痛みが特徴の病気です。 サッカーなど股関節を大きく動かすスポーツや妊娠・出産が原因で生じやすいと考えられています。 恥骨結合炎は何科を受診すれば良いですか? 恥骨結合炎は恥骨や周囲の筋肉に生じる炎症であるため、整形外科を受診してください。 しかし恥骨結合炎と似た病気で整形外科の病気ではない可能性もあります。 もし排尿時の痛みが強い時は泌尿器科へ、月経時の痛みが強いときには婦人科への受診がおすすめです。
2024.07.01 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
「恥骨結合炎に効果的なストレッチはある?」「ストレッチで恥骨結合炎の痛みを和らげたいけれど、どこを伸ばせばいいかわ分からない……。」と悩んでいませんか。 恥骨結合炎は、腹筋と内ももの筋肉を伸ばすようにストレッチを行うと症状が楽になる場合があります。また、お尻のトレーニングや水中歩行などの簡単な運動も効果的です。 本記事では、恥骨結合炎の症状を緩和してくれるストレッチを部位別にご紹介します。家でできるものも多いので、恥骨結合炎で悩んでいる方はぜひ最後までチェックして、ご自宅で実践してみてください。 恥骨結合炎では腹筋と内ももの筋肉をストレッチしよう! 恥骨はちょうど下着で隠れるところにあり、陰毛の生え際あたりに触れる骨です。左右に1つずつある恥骨は、真ん中で軟骨をはさむように結合しており、これを恥骨結合といいます。そしてその恥骨結合に起きる炎症が恥骨結合炎です。 腹筋や内転筋はこの恥骨結合についている筋肉なため、筋肉の固さが恥骨結合に悪影響となります。そのため、恥骨結合炎には腹筋や内転筋のストレッチが有効です。 恥骨結合炎の多くは、ランニングなどのスポーツによる腹筋や太ももの内側にある筋肉(内転筋)のオーバーユース(使いすぎ)が原因です。 腹筋や内転筋が恥骨結合に大きな負荷がかかることで発症するため、これらの筋肉を伸ばすように意識してストレッチを行いましょう。 ちなみに、恥骨結合炎の詳細は以下の記事で詳しく解説しています。ストレッチだけでなく恥骨結合炎についてもっと知りたいという方は要チェックです。 恥骨結合炎に効く腹筋のストレッチ2選 腹筋(腹直筋)は恥骨結合についている筋肉であり、骨盤や背骨の動きをコントロールする筋肉です。スポーツをはじめ、あらゆる日常生活動作で力が入る部位であり、腹筋に固さがあると少しの動作でも恥骨に負担がかかります。 この章ではうつ伏せと四つ這いでできる腹筋のストレッチをご紹介します。2つとも自宅で簡単にできるので、ぜひ実践してみてください。 うつ伏せでする腹筋(腹直筋)のストレッチ 1.手のひらをついた状態でうつ伏せになる 2.手で床を押しゆっくり体を起こす 3.体を起こしきったところで30秒ほど深呼吸する このストレッチのポイントはみぞおちをできるだけ床につけながら体を起こしていくことです。みぞおちを意識せずに思い切り体を起こすと腰を反りすぎてしまい、腰の痛みにつながります。 みぞおちをつけながらゆっくり体を起こしていき、腹部の伸びを感じてください。 四つ這いでする腹筋(腹直筋)のストレッチ 1.四つ這いの姿勢になる 2.両手を肩のまっすぐ下につき、膝を腰幅に開く 3.息を吸いながらお腹をのぞきこむように背中をまるめる 4.息を吐きながらななめ上を見るように背中を反らす 5.呼吸しながら5回ほど繰り返す このストレッチのポイントは腹筋と背筋に力を入れて動かすことです。肩や脚に力が入ると肩・骨盤の位置が前後に動きやすく、十分に腹直筋が伸びません。 腹筋と背筋にしっかりと力を入れて背骨を大きく動かすことで腹直筋にストレッチがかかりやすくなります。 恥骨結合炎に効く内転筋のストレッチ3選 内転筋は太ももの内側につき、脚を閉じたり立っているときに脚と骨盤を支える働きをする筋肉です。 脚を動かした時に骨盤と脚の支えをコントロールする筋肉であり、とくにランニングやサッカーで強く働きます。 オーバーユースにより内転筋が固くなると恥骨に負担がかかるため、恥骨結合炎の痛みに悩んでいる方は意識的にストレッチを行いましょう。 この章では3つの姿勢で内転筋をストレッチする方法をご紹介します。 内転筋が柔らかくなるとスポーツのパフォーマンスも向上しやすいので、スポーツをする方は必見です。 あぐらでする内転筋のストレッチ 1.あぐらの姿勢から両方の足裏をぴったりとあわせて座る 2.あぐらのままおへそをぐっと引き上げるようにして骨盤を立てる 3.背筋をのばし、ゆっくり前へ倒れる 4.呼吸しながら内転筋を伸ばし、30秒持続する ポイントは骨盤を立ててしっかりと背筋を伸ばすことです。 内転筋は骨盤が後ろに倒れると縮みやすいため、姿勢を正してストレッチを行いましょう。 また、前に倒れる時に背中が丸くなりやすいため、前に倒す時も骨盤を立てて背筋を伸ばすよう意識して行ってみてください。 開脚でする内転筋のストレッチ 1.床に座って膝を伸ばしたまま開脚する 2.骨盤を立てて背筋を伸ばす 3.背筋を伸ばしたまま骨盤から前に倒れる 4.呼吸をしながら内転筋を伸ばし、30秒持続する ポイントはストレッチしているときに膝・背筋を伸ばしたままにすることです。膝や背筋が曲がると内転筋のストレッチの効果が弱くなってしまうため、注意しましょう。 また、体を前に倒した時に膝のお皿やつま先が内側を向いていても内転筋の伸びが悪くなります。そのため、膝とつま先を上に向けるよう意識してください。 立ってする内転筋のストレッチ 1.立って脚を大きく開く 2.膝を曲げて四股の姿勢になり、膝の上に両手を乗せる 3.肘を伸ばしたまま伸ばしたい側の肩を内側に入れていく 4.片側を30秒ほど伸ばしたら、反対側も同様に伸ばしていく 肩を内側に入れるときに、膝が内側に向かないようしっかりと手で抑えることが大切です。 肩が内側に入るときに膝も内側に捻られると、内転筋のストレッチが弱くなってしまうため、膝をしっかり手で押さえましょう。 恥骨結合炎には簡単な運動もおすすめ!効果的なトレーニング4選 恥骨結合炎には腹直筋と内転筋のストレッチだけでなく簡単な運動も有効です。とくにおすすめなのは、腹直筋と内転筋をほぐす効果がある以下4つの運動です。 横のお尻のトレーニング 後ろのお尻のトレーニング 水中歩行 ジョギング 負担がかからない程度の運動によって恥骨結合炎の症状が軽減できるでしょう。 どれも簡単で実践しやすいため、ぜひ毎日の運動として取り入れてみてください。 横のお尻のトレーニング 横のお尻には中臀筋(ちゅうでんきん)という筋肉があります。中臀筋は内転筋とともに、外側と内側から骨盤と脚を支える筋肉です。中臀筋を鍛えることで内転筋の働きを助け、結果的に恥骨結合にかかる負担が軽減されるでしょう。 中臀筋を鍛えるトレーニングは以下のとおりです。 1.肩から脚がまっすぐなるよう横向きに寝る 2.4秒かけて上の脚を斜め後ろに引きながら持ち上げる 3.8秒かけてゆっくり戻す 4.10回繰り返し、反対側の脚も同様におこなう ポイントは、脚を持ち上げるときにつま先が上を向かないように脚を持ち上げることです。 つま先が上を向くと脚全体が捻られてしまい、中臀筋よりも太ももの前側に力が入ってしまいます。中臀筋にしっかりと力を入れるためにも、つま先が上を向かない意識を持ってください。 後ろのお尻のトレーニング 後ろのお尻には大臀筋(だいでんきん)という筋肉があります。大臀筋は恥骨結合に直接付着してはいませんが、骨盤と脚の支えに関わる重要な筋肉です。 大臀筋を鍛えることで骨盤と脚が安定し、恥骨結合炎の症状軽減につながります。 大臀筋を鍛えるトレーニングは以下のとおりです。 1.仰向けに寝て膝を90度に曲げる 2.肩・お尻・膝が一直線になるまでお尻を持ち上げる 3.10回ほど繰り返す。 ポイントはお尻を持ち上げたときに肩から膝までが一直線になるように持ち上げることです。 お尻が持ち上がらなかったり、腰を反ったりしてしまうと、大臀筋に力が入らず他の筋肉に頼った動作になるので注意しましょう。 水中歩行 水の中は浮力があり、自分の重さが軽減されるため負荷をかけずに運動できます。 ただし、バタ足は細かいキックを繰り返し恥骨に負担がかかるため、泳ぐのではなく水中歩行をしましょう。 歩くと水圧で全身にほどよく負荷がかかり、さまざまな筋肉をバランスよく鍛えられますし、10分ほどの運動で効果が得られます。慣れたら20分を週2回ほどおこないましょう。距離は10分あたり300m~500mほどが目安ですが、身長や水深によって負荷が変わるため、距離よりも時間を重視して歩いてください。 前歩きや横歩き、後ろ歩きなどさまざまな歩き方ができますが、とくに横歩きは内ももにある内転筋など股関節まわりの筋肉を鍛えられます。 3つの歩き方を組み合わせて、無理なく実践してください。 ジョギング ジョギングは運動強度が競歩と同レベルで、歩行よりも負荷のある運動かつ、ランニングほどの負担がなく運動療法として最適です。 ランニングよりも小幅で、息切れせず隣の人と話せるくらいのスピードで走ります。はじめは歩行とジョギングをくみあわせて10分程度から、すこしずつ歩行を減らしジョギングのみにしていき、時間も増やしていきましょう。 恥骨結合炎でストレッチ・トレーニングが効かなければ整形外科を受診しよう ここまでご紹介した恥骨結合炎に効果的なストレッチやトレーニングを実施しても痛みが続く場合、早めに整形外科を受診しましょう。 恥骨結合炎の炎症が強い場合は医師の指示にしたがって抗炎症薬などを使い、炎症が落ち着いてからストレッチ・トレーニングを再開してください。 また、婦人科や泌尿器科系の疾患など、恥骨結合炎以外の病気が隠れているケースもあります。適切な治療を受けるためにも、早めに医療機関を受診するようにしましょう。恥骨結合炎を含めた恥骨の痛みについて以下の記事で詳しく解説しています。興味がある方はぜひ一度ご覧ください。 なお当院リペアセルクリニックでは、恥骨結合炎にも適応可能なPRP療法などの再生療法に取り組んでいます。 恥骨結合炎で傷ついた軟骨組織の再生が可能であり、炎症や痛みの軽減につながる可能性があります。興味がある方は当院のメール相談もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 まとめ|恥骨結合炎には腹筋と内もものストレッチが有効!強い痛みがあれば受診も検討しよう 恥骨結合炎には腹直筋と内転筋のストレッチが有効です。これらの筋肉がオーバーユース(使い過ぎ)で固くなると恥骨結合炎の症状を強めるため、ぜひ習慣的にストレッチでほぐすようにしましょう。 ただしストレッチでも恥骨結合炎の痛みが緩和されないときは、無理せず整形外科で医師の判断を仰いでください。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでは、恥骨結合炎の治療にも適用できる再生医療に取り組んでいます。傷ついた軟骨組織の修復も期待できるため、気になる人はぜひメール相談、もしくはオンラインカウンセリングでお問い合わせください。 この記事が少しでもお役に立てれば光栄です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 恥骨結合炎のストレッチに関するよくある質問 恥骨結合炎でもランニングは可能ですか? 炎症が強かったり、痛みがある場合はランニングはできません。 再発しやすい病気のため、治ったと思っても息が弾むようなランニングをすぐはじめるのはやめましょう。ただし、隣にいる人と会話できる程度のジョギングは、リハビリとしても推奨されており、痛みのない範囲で可能です。 しばらくはジョギングを続け、すこしずつペースをあげていくとランニングができるまでに回復します。 痛みが強かったり、大会など控えている場合はスポーツ専門医に相談しながらリハビリ計画を立てましょう。 恥骨結合炎は何科を受診しますか? 恥骨結合炎かなと思ったら、整形外科を受診しましょう。 整形外科医は骨や軟骨・靭帯・神経など、からだを動かすのに必要な器官を診る専門家です。診察の結果、恥骨結合炎と診断されるとはかぎりませんが、運動器官のスペシャリストなので痛みの原因をしっかり調べてくれます。 なお、妊娠中や出産後の恥骨痛はまず産婦人科や助産師に相談しましょう。 恥骨結合炎になったらどのくらい安静にすべきですか? 痛みが強い場合は2週間の安静が必要です。 安静中はスポーツや、走ったり重いものを持つといった負担のかかる日常生活の動作もやめ、患部を冷やしてください。そのあとは痛みの具合をみながらストレッチを開始しましょう。 恥骨結合炎はどのくらいで完治しますか? 2か月前後が目安ですが、再発を繰り返す場合はもっとかかる可能性があります。 恥骨結合炎は再発しやすいため、はやく完治させるには再発予防が重要です。痛みがひいても安静期間は十分にとってください。また、すぐにスポーツを開始せずストレッチをしながら少しずつ負荷をかけていきましょう。
2024.06.28 -
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減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 減圧症は、急激な高気圧から低気圧への移動時に生じる症状の総称です。減圧症は、潜水や高地登山など、急激な気圧の変化が起こる状況で発症することがあります。 この記事では、減圧症対策として、その原因や予防するためのポイントを6つに分け、わかりやすく解説します。 減圧症の原因 減圧症のメカニズムとしては、身体の周囲の気圧が急激に低下することで、体内の血液や組織に溶け込んでいる窒素ガスが血液や皮膚・筋肉・臓器などの組織の中で気泡を作り、血流障害や組織の破壊を引き起こすというものになります。 潜水における減圧症 潜水中に吸い込んだ空気中の窒素は血液や組織に取り込まれますが、水圧が高いところではその量が増えていきます。すると、窒素は急速にそして過剰に血液や組織に溶け込みます。その状態で急速に水面に浮上すると、周囲の水圧が低下するために血管内や組織内で窒素の気泡が形成されます。 この気泡が、血管を詰まらせて血流を阻害したり、組織を破壊したり、炎症反応を引き起こすことで、さまざまな障害や症状を引き起こすのです。 減圧症は潜水後に起こることが多いので、潜水病とも呼ばれます。 減圧症の影響 減圧症では、水面に浮上した後に倦怠感や疲労感、食欲不振、頭痛などの初期症状が現れることがあります。そして、徐々に他のさまざまな症状も現れてきます。 減圧症には、以下の2つのタイプがあります。 症状(Ⅱ型は、Ⅰ 型よりも重症です) Ⅰ型:皮膚や筋肉の症状(ベンズ)のみ Ⅱ型:呼吸・循環器症状(チョークス)や中枢神経症状を伴うもの 減圧症では、脊髄損傷も起こりやすいとされています。 その他には、脳障害、呼吸器系の障害(肺塞栓など)、循環器系(心不全や心原性ショックなど)もあります。 また、減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死という骨の障害もあります。この骨障害は、肩関節や股関節によく起こります。特に、大腿骨頭壊死が起こると、歩行障害などの影響がでたり、重症な場合には手術が必要となることもあります。 減圧症の治療の応急処置としては、100%酸素吸入を行っていきます。そして、専門医療機関では、高気圧酸素療法が行われます。 減圧症の予防ポイント6つ! ダイビング時だけでなく、登山時にも引き起こされることがあります。減圧症を予防するためのポイントを6つに分けて解説します。 ①潜水前の注意 減圧症は、以下に述べるような要因があるとそのリスクが増大します。 以下のようなリスクがないかどうか、潜水前にチェックしておくことが大切です。 ここにあげたようなリスクがある方については、医師に事前に潜水をしてよいか、確認をしておく方がよいでしょう。また、潜水前には、適切な訓練と手順を確実にチェックし、それを守ることが必要です。 リスクを避けるためのチェック項目 卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)や心房中隔欠損などの心臓の病気 疲労 肥満 高齢 ②潜水時の注意 急激な深さへの潜水や長時間の潜水は避け、適切な休憩を取りましょう。 また、浮上の速度は15〜30cm/秒を超えないようにします。さらに、水深3~4mの地点で3~5分間の安全停止をすることも、圧力の平衡を保つために推奨されています これに関しては、米国海軍潜水マニュアル(United States Navy Diving Manual)といった正式なガイドラインなどを参考にして、浮上したりすることで減圧症の予防につとめましょう。 ③潜水後の注意 ダイビング後12〜24時間以内は飛行機に乗らないようにしましょう。 潜水活動を行った後に飛行機に乗るような場合には、12〜24時間は海抜0の場所にとどまり、一定期間の休息後が望ましいとされています。 ダイビング後12〜24時間以内に飛行機に乗ると、減圧症のリスクが高まることが知られているのです。 ④高地登山の適切な計画 登山中に急激な標高の変化があると、大気中の酸素濃度が減少し、それによって減圧症が引き起こされることがあります。 登山前には、適切な標高への適応期間を確保し、急激な標高の変化を避けるよう計画しましょう。適切な装備の使用や体調管理も欠かせません。 ⑤十分な水分摂取 どの状況においても、十分な水分摂取が重要です。 水分不足は体調不良を引き起こしやすくなりますので、こまめな水分補給を心掛けましょう。 ⑥専門家のアドバイスを仰ぐ 潜水や高地登山など、特定の状況における活動前には、専門の医師や指導者に相談し、適切なアドバイスを得ることが賢明です。 以上のポイントを守ることで、減圧症のリスクを最小限に抑え、安全にダイビングをしたり登山をしたりすることが可能となるでしょう。 まとめ・減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 今回の記事では、減圧症の原因やメカニズム、予防法について詳細に解説しました。 しかしながら、適切な予防法をとっていても、減圧症による脊髄障害や脳障害によって麻痺などの症状が残ってしまう場合もあります。 こうした減圧症による脊髄損傷に対しては、リハビリテーションを行ったり、場合によってはステロイドなどの薬物治療が行われることが一般的です。しかしながら、こうした方法は根本的な治療法ではありませんでした。 そこで当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられており、今後に期待が持てる治療の一つと言えます。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE ▼減圧症のセルフチェックは以下です 減圧症(潜水病)は軽度なら自然治癒も!症状のセルフチェックリストをご紹介 参考文献 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDプロフェッショナル版 素潜り漁中に発症した脳型減圧症の1例.臨床神経学. 2012;1052(10):757-761 潜水時の予防措置および潜水障害の予防 - 22. 外傷と中毒 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版
2024.01.17