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「最近、手がしびれる…」そう感じたことはありませんか?手のしびれでよく思いつくのは、首のヘルニア、脳梗塞や脳出血などでしょう。 しかし、他にも、『これ知っておけばよかった』という病気もあります。 今回は、手のしびれを引き起こす5つの主な原因と、そのメカニズムを分かりやすく解説します。 最近は、スマホやパソコンを長時間使う環境が増えてきましたよね。あと重たいものをよく持つ方も、注意が必要です。 さらに、ご自身でもある程度、セルフチェックできるような項目も紹介します。 手のしびれの原因5選とメカニズム 「最近、手がしびれるなぁ…」と感じて、不安を抱えていませんか?手のしびれは、人生で一度は経験することがあるぐらい、よく見られる症状です。 軽いしびれだからと言って、放っておくと後々治療しにくくなることもあります。 神経の障害というものは一度傷ついてしまうと、一生後遺症として残ることもよく見られます。 今回は、手のしびれの原因で、私が診察でよく経験してきた、5つの病気について、詳しく説明したいと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。 頚椎症・椎間板ヘルニア まず、首の骨(頚椎)に原因がある場合があります。 頚椎症:頚椎症は例えるなら、長年使い続けた家の柱や梁が歪んだり、ひびが入ったりするようなものです。 加齢とともに、首の骨も変形したり、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげができたりします。 その結果、首の骨の近くを通る神経が圧迫され、手のしびれを引き起こします。特に、長時間のパソコン作業などで猫背姿勢になっている方は要注意です。 椎間板ヘルニア:椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション材(椎間板)が、まるでパンパンに膨らんだ風船のように飛び出し、神経を圧迫する病気です。 若い方でも、急に重いものを持ち上げた時などに発症することがあります。 ぎっくり腰のように、激しい痛みやしびれに突然襲われることもあります。 頸椎のヘルニアだと、手と足がしびれる可能性があり、腰椎ヘルニアだと、手のしびれは出ませんが足はしびれることはあります。 胸郭出口症候群 次に、胸郭出口症候群について説明します。 胸郭出口症候群は、首から腕、指先へと伸びる神経や血管の通り道である「胸郭出口」が狭くなり、神経や血管が圧迫されて手のしびれや痛み、だるさなどを引き起こします。 胸郭出口は、鎖骨と肋骨の間の狭い通路のような場所です。なで肩の方や、重い荷物を持つことが多い方は、この通路がさらに狭くなりやすい傾向があります。 神経や血管の通り道が、圧迫されて狭くなることで、しびれや冷感などの症状がでてきます。 整形外科の外来では、この胸郭出口症候群の症例は少ないので、医師からしても、なかなか診断に至るまで、時間がかかることがよくあります。 そして、診断されたら、私はまずリハビリと筋トレをしっかりやっていただいてます。経験上、リハビリと筋トレすることで、多くの方は治っています。 手根管症候群 手首にも、手のしびれを引き起こす原因が潜んでいます。 手根管症候群は、手首の手根管と呼ばれるトンネルの中で、正中神経という神経が圧迫されることで起こります。 この神経は、親指、人差し指、中指、そして薬指の半分に感覚を伝える役割を担っています。 手根管症候群になると、これらの指にしびれや痛み、時には腫れぼったい感じも現れます。特に、妊娠中や更年期を迎えた女性に多く見られます。 これは、ホルモンバランスの変化によって手根管が腫れやすくなるためと考えられています。また、手をよく使う仕事や趣味を持つ方にも発症しやすいです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 末梢神経障害 末梢神経は、脳や脊髄から体の各部につながる神経のネットワークです。 末梢神経障害は、このネットワークが障害されることで、手足のしびれや痛み、感覚の異常などが現れます。 糖尿病やビタミン不足などが原因となることが多く、両手両足にしびれが現れることが多いです。 私の経験では、糖尿病を持っている方は、頚椎や腰椎のヘルニアによるしびれがでやすい方が多かったです。 やはり、糖尿病では神経が障害を受ける分、しびれやすくなるのでしょう。 脳卒中 最後に、最も注意が必要な原因として脳卒中があります。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能が障害される病気です。 手のしびれだけでなく、片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、意識障害など、重篤な症状が現れます。 手のしびれが片側だけに現れる場合や、他の神経症状を伴う場合は、脳卒中の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診する必要があります。 脳出血を起こしても、小さかったり、初期の時は、ほとんど症状が現れない場合が多く、少し進行して、歩くときに膝折れがする、しびれが出てきたなどを感じて、病院に行く方もよくおられました。 その時点で、CTやMRIをとらなければ、見過ごされることも考えられますので、疑いがあれば、CTやMRIを、医師に相談して撮影してもらいましょう。 手のしびれは、様々な原因で起こります。原因によって治療法も異なりますので、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。 手のしびれの前兆とセルフチェック 「最近、手がしびれる…」と感じたら、放っておかずに、まずはセルフチェックしてみましょう。 手のしびれは、誰しも一度は経験する身近な症状ですが、実は重大な病気のサインである可能性も潜んでいます。 早期発見・早期治療のためにも、ご自身のしびれをよく観察し、セルフチェック項目を確認することで、適切な医療機関の受診につなげることができます。 しびれの場所・範囲・時間帯 しびれの場所 手のしびれを感じた時、まず確認すべきことは「どこがしびれているか」です。 親指、人差し指、中指にしびれがある場合は、手根管症候群の可能性が考えられます。これは、手首にある神経の通り道が狭くなることで、神経が圧迫されて起こる病気です。 Point! 薬指の内側と外側を、指でなぞってみてください。もし中指側だけが痺れているなら、高い確率で手根管症候群と思われます。 そして、両手の母指球筋を比べてみて、平らになって、筋肉が痩せていると注意です。これがみられたら、進行した手根管症候群となります。 経験上、痺れが弱くても、母指球筋が小さくなっていたら、手術をして、これ以上悪くならないようにした方がいいでしょう。 進行すると、服のボタンが付けにくくなったり、お箸が持ちにくくなります。そうなると、手術しても、後遺症として戻らなくなる確率が高くなるのです。 一方、小指や薬指にしびれがある場合は、肘部管症候群の可能性も考えられます。これは、肘の神経の通り道が狭くなることで起こるしびれです。 よく、椅子などに肘の内側をぶつけると、指まで痺れることがありますよね。それは、肘部管症候群の原因である尺骨神経によるものです。 また、手の甲側がしびれる場合は、橈骨神経麻痺の可能性も考えられます。橈骨神経麻痺は、腕の外側から手の甲にかけて走る神経が圧迫されることで起こります。 例えば、腕枕をして寝てしまった後に、手がしびれている経験はありませんか? これは、橈骨神経が圧迫されたことによる一時的な麻痺によるものと考えられます。ひどい場合は、手のひらがだらんと垂れて、動かなくなることもよくみられます。 『朝起きたら、いきなり手が動かない』と心配されますが、2〜3ヶ月ほどリハビリなどをして様子を見れば、ほとんどの方は治ります。 急に手が動かなくなると、脳の病気かな?とかなり驚きますよね。。。 しびれの範囲 しびれの範囲も重要なポイントです。 もし、しびれが手全体に広がっている場合は、頸椎症や胸郭出口症候群などの、首や肩の神経が圧迫される病気が原因かもしれません。 手根管症候群では、手首より先の方しかしびれは出ません。 さらに、片方の手だけがしびれる場合は、脳卒中の可能性も考えられます。 脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりする病気で、手足の麻痺や言語障害など、命に関わる危険な症状を引き起こす可能性があります。 もちろん、頚椎症でも、片方だけのしびれもよくみられます。 しびれの時間帯 しびれが続く時間にも注目しましょう。 一日中しびれが続いているのか、特定の時間帯だけなのか、あるいは一時的なものなのか。こうした時間的な変化も、診断の重要な手がかりとなります。 例えば、夜間や早朝にしびれが強くなる場合は、手根管症候群の可能性が高くなります。 動作との関連性(特定の姿勢、動作で悪化など) 次に、手のしびれと、特定の姿勢や動作との関連性をチェックしてみましょう。 例えば、パソコン作業やスマートフォン操作など、手首を酷使する作業の後でしびれが悪化する場合は、手根管症候群の可能性があります。 また、首を後ろに反らすと手のしびれが悪化する場合は、頸椎症の可能性が高まります。 逆に、腕を頭の上に上げることでしびれが軽減する場合は、胸郭出口症候群の可能性も考えられます。 日常生活の中で、どのような姿勢や動作がしびれを悪化させるのか、または軽減させるのかを把握することは、原因を特定する上で非常に重要です。 随伴症状(痛み、感覚異常、脱力など) 手のしびれとともに、他の症状が現れることもあります。これらの随伴症状も、原因特定の重要な手がかりとなります。 例えば、しびれとともに、鋭い痛みを感じる場合は、神経腫瘍の可能性も考えられます。 神経腫瘍とは、神経に発生する腫瘍のことで、良性のものから悪性のものまで様々な種類があります。 稀なケースでは、指の神経に叢状(そうじょう)シュワン腫という良性腫瘍が発生し、鋭い痛みやしびれを伴うことがあります。 また、しびれとともに脱力感や、感覚が鈍くなるなどの症状が現れる場合は、神経の損傷がより深刻な状態である可能性があります。 その他、手のむくみや冷感なども、しびれの原因疾患によっては伴うことがあります。 過去の病歴 過去の病歴も、手のしびれの原因を特定する上で重要な情報です。 糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、末梢神経障害という合併症を引き起こし、手のしびれにつながる可能性があります。 また、過去に神経系の疾患を患ったことがある場合も、再発や新たな病気が隠れている可能性も考慮に入れる必要があります。 健康診断の結果や過去の治療歴なども含め、できるだけ詳細な情報を医師に伝えましょう。 ▼高血圧の症状はありませんか?併せてお読みください。 危険信号(麻痺の進行、意識障害など) 手のしびれとともに、麻痺の進行や意識障害、ろれつが回らない、激しい頭痛などの症状が現れた場合は、一刻を争う事態です。 これらは脳卒中のサインである可能性が非常に高く、緊急の医療処置が必要となります。 また、片側の手足だけがしびれる、顔の半分がしびれる、言葉が出てこない、呂が回らないといった場合も、脳卒中の前兆である可能性があります。 これらの症状が現れた場合は、直ちに救急車を呼ぶか、近くの医療機関に連絡してください。 手のしびれの治療法と予防ケア 「手のしびれ」と聞くと、つい軽く考えてしまいがちですが、実は様々な原因が潜んでおり、中には放置すると深刻な事態を招く病気も存在します。 早期発見・早期治療が何よりも重要です。適切な治療とケアによって、しびれを軽減し、快適な日常生活を取り戻せる可能性は十分にあります。 ここでは、手のしびれの主な治療法と、日常生活での予防ケアについてご説明します。 薬物療法 手のしびれの原因や症状に合わせて、様々な薬が用いられます。 例えば、神経の炎症や痛みを抑える薬、血行を改善する薬、神経の働きを助けるビタミン剤などがあります。 神経の炎症が強い場合は、ステロイド薬を使う場合もあります。これは、強力な消炎効果を持つ薬ですが、副作用にも注意が必要です。 また、糖尿病性の神経障害には、血糖コントロールを改善する薬も重要です。 しびれに効く薬は、最近色々と出てきてはいますが、しびれは薬でなかなか治りにくい部類となります。 どの薬を使うかは、医師があなたの症状や体質を考慮して慎重に判断しますので、自己判断で薬を飲んだり、やめたりすることは絶対に避けてください。 理学療法・作業療法 薬物療法だけでなく、理学療法や作業療法も重要な役割を担います。 理学療法:理学療法では、ストレッチやマッサージ、温熱療法などによって、硬くなった筋肉や関節を柔らかくし、血行を促進することで、しびれを和らげます。 胸郭出口症候群では、両腕の重みを支える筋肉をしっかり鍛えることが大切です。 作業療法:作業療法では、日常生活動作の練習や、自助具(日常生活を補助する道具)の使用指導などを通して、しびれがあっても支障なく生活できるようサポートします。 例えば、手根管症候群の患者さんには、手首のストレッチや、手首を安静に保つための装具の使用指導が行われます。 装具療法 手首や指を固定するサポーターや、頸椎を支えるコルセットなどの装具は、患部を安静に保ち、神経への負担を軽くしてくれます。 特に、手根管症候群や腱鞘炎など、手首の使い過ぎが原因で起こるしびれには効果的です。 装具の種類や使用方法も様々ですので、医師や理学療法士の指導のもと、自分に合った装具を選び、正しく使用することが大切です。 例えば、就寝時に手首を固定する装具を装着することで、夜間のしびれを軽減できる場合があります。 手術療法 多くの場合、薬物療法、理学療法、装具療法などの保存療法で症状が改善します。 しかし、神経の圧迫が非常に強い場合や、保存療法で効果が見られない場合には、手術が必要となることもあります。 例えば、手根管症候群では、母指球筋が痩せてきたり、服のボタンが付けにくくなる巧緻障害などが出た場合は、速やかに、神経を圧迫している靭帯を切開して神経を解放する手術が必要です。 頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアが原因の場合は、首の骨の手術が必要になることもあります。 我々の手術の基準として、筋力低下、尿が出にくいなどの膀胱直腸障害となります。しびれに関しては、我慢ができないぐらいなら、手術を選択することもあります。 手術療法は最終手段であり、患者さんの状態に合わせて慎重に判断されます。 日常生活での注意点と予防法 日常生活での心がけも、手のしびれの予防や改善に大きく貢献します。 長時間同じ姿勢を続けることや、手首や指に負担がかかる作業を繰り返すことは避けましょう。 パソコン作業やスマートフォンの操作をする際は、こまめに休憩を取り、ストレッチをすることを心がけてください。 また、デスクワークをする際は、正しい姿勢を保ち、椅子や机の高さを調整することも重要です。 正しい姿勢を保つことで、首や肩への負担を軽減し、胸郭出口症候群などの予防にもつながります。 栄養バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠も、健康な神経を維持するために不可欠です。 そして、もし手のしびれを感じたら、自己判断せずに、早めに医療機関を受診しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 MacGillis KJ, Mejia A, Siemionow MZ. "Hand compression neuropathy: An assessment guide." The Journal of family practice 65, no. 7 (2016): 462-71. Saeki Y, Hattori Y, Mane SA, Doi K. "Plexiform Schwannoma of Digital Nerve." The journal of hand surgery Asian-Pacific volume 28, no. 5 (2023): 609-613. Thapa L, Amatya R, Maharjan S, Gaurishankar N, Shrestha AM, Bhattarai S, Singh SN, Gongal DN, Devkota UP. "Cheiro-Oral Syndrome." Kathmandu University medical journal (KUMJ) 16, no. 62 (2018): 196-198. Slouma M, Zarrouk Z, Maatoug F, Dhahri R, Amorri W, Gharsallah I, Metoui L, Louzir B. "Fibrolipoma of the Median Nerve: An Overview." Current rheumatology reviews 18, no. 4 (2022): 298-304.
2025.02.15 -
- 手根管症候群
- 手部
本記事では、手根管症候群に対する自分でできるケアの方法を中心にご紹介します。家事に追われている主婦や、妊娠中の女性、手をよく使う建築業の方など、手の痛みや痺れに悩まされている人にはぜひ読んでいただきたいです。 手根管症候群を自分で治す方法を紹介 手根管症候群を治したい場合、自分で気できる方法として手指と手首のストレッチやマッサージがあります。この章では、ストレッチやマッサージの具体的なやり方についてご紹介します。 手関節のストレッチ 手根管症候群の原因である手関節にはさまざまな筋肉がたくさんついています。また、曲げる方向によって働く筋肉がそれぞれ違います。この章では手関節のストレッチの方法と、筋肉について詳しく説明していきます。 手関節屈曲筋のストレッチ 手関節屈曲筋は手首を手のひら側に曲げる筋肉の総称です。手首を反らす方向に曲げると、手関節屈曲筋を伸ばすことができます。対象となる筋肉と、ストレッチの具体的な方法については以下の通りです。 【対象となる筋肉】 ・橈側手根屈筋 ・尺側手根屈筋 ・浅指手根屈筋 ・深指手根屈筋 ①手のひらから手指にかけて把持し、その手で、手首を手の甲側に反らす ②その状態を保ったまま、ゆっくり肘を前方に伸ばす ③前腕につっ張り感を感じたところで、20〜30秒キープ 手関節伸展筋のストレッチ 【対象となる筋肉】 長橈側手根伸筋 短橈側手根伸筋 尺側手根伸筋 総指伸筋 示指伸筋 ①手の甲から指先までを軽く包み込むよう把持し、手首を手のひら側へ曲げ、ゆっくり肘を伸ばす ②前腕の外側部分に張りを感じたところで20〜30秒キープ 手指の腱のエクササイズ 手根管を通る腱の動きを滑らかにする運動 ①手指をまっすぐ伸ばした状態から始める ②指の第一、第二関節から曲げていく ③①の状態に戻すように指を伸ばしていく ④これを10〜20回繰り返し行う 手内在筋(手のひらの筋肉)のエクササイズ 虫様筋(手のひらにある筋肉)の運動 ①手指をまっすぐ伸ばした状態から始める ②指の第一、第二関節は伸ばしたまま、第三関節(指の付け根)から指全体がお辞儀をするように曲げる ③直角近くまできたら、①の状態に戻るよう起こしていく ④これを10〜20回繰り返し行う 横手根靭帯のマッサージ ①手首と手のひらの境目ぐらいを反対の手の親指、人差し指で押さえ、つまむようにそれぞれの指を近づけていく ③次にそれぞれの指を離すように広げていく ④これを繰り返し行う 手根管症候群はストレッチだけでなく、他にも自分でできる対処法があります。安静を意識することや手を使う頻度を見直すことは、症状の緩和につながる可能性があります。ストレッチ以外の具体的な方法は次の通りです。 なるべく安静にする作業量を見直す 手根管症候群は、日常生活や仕事などで手をよく使う人になりやすい傾向があります。手指の曲げ伸ばしを伴う作業や、手首の動きが多い作業を繰り返し長い時間行うと、手根管内にある正中神経が圧迫されやすくなります。手を使う頻度をできるだけ減らし、手指や手首に負担をかけないようにすることが大切です。 サポーターを使用する 仕事や家事などで手を休めたり作業量を減らしたりすることがどうしても難しい場合は、サポーターや装具を使用することも検討しましょう。サポーターや装具を使用することで、手にかかる負担を軽減できます。サポーターや装具を選ぶ際は、自分に合ったものを選ぶことが大切です。どのようなものを選べば良いか迷った場合、まずは病院に相談することがおすすめです。 手根管症候群を自分で治す際の注意点 手根管症候群を自分で治すための、簡単なセルフストレッチやエクササイズを紹介しました。 自分でストレッチをやる際、力加減には十分に気をつけなければなりません。強い力を出せば、効果が出やすいと思っている人も多いかもしれませんが、ストレッチやマッサージは、強い力や、痛みが出るほどの伸張感で行ってしまうと、かえって硬くなることがあります。これが防御性収縮と呼ばれるものです。 いずれのケアも、力の入れ過ぎには注意し、効いているのか効いていないのかわからないくらいの力加減で行うようにしましょう。 手根管症候群の痛みが治らない場合の治療法 手根管症候群の痛みについて自分で治す方法でも改善しない場合、薬物療法やステロイド注射など病院で受ける治療を検討する必要があります。具体的には次の通りです。 薬物療法 病院で手根管症候群の診断が下されたら、消炎鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症薬、ビタミンB12などの飲み薬、塗布薬といった薬物療法で保存的に治療を行います。薬物療法の主な目的は、痛みや腫れを軽減させ、炎症を抑えることです。また、ビタミンB12には末梢神経痛を改善させる効果があります。 軽症の場合は薬物療法や、サポーターや装具を使った保存療法で対応していきます。 ステロイド注射 副腎皮質ステロイドの注射を使用して、腱の炎症を抑える場合もあります。内服による薬物治療は、大量に摂取すると胃や肝臓、腎臓に負担をかけてしまうので、注射で直接手根管に薬剤を入れていきます。手根管はとても狭いため、注射を打つには正しい解剖の知識と技術が必要です。 万が一神経に針が刺さってしまうと、神経を痛めてしまうため、注射を行う際はエコーと呼ばれる超音波検査機器を使用します。エコーを使って神経の場所を確認し、神経をよけながらステロイドを注入していきます。軽症の場合、ステロイド注射により痺れの症状が改善しやすいです。 手術療法 痛みや痺れが治らず薬物療法やステロイド注射でも効果がみられない場合や、親指の付け根の筋肉である母子球が痩せてしまった萎んでしまった場合は手術療法を検討します。具体的な手術は大きく分けて手根管開放術と鏡視下手根管開放術の2種類です。手根管開放術では横手根靭帯を切開し、正中神経の圧迫を取り除きます。 また、鏡視下手根管開放術は皮膚に小さな穴をあけて内視鏡を挿入し、圧迫を取り除いていく手術です。どちらの手術も日帰りで行えます。鏡視下手根管開放術の方が、傷が小さく、術後の痛みが少ないことが特徴です。 まとめ|自分で治す以外の選択肢も知っておこう 手根管症候群を自分で治す方法として、ストレッチやマッサージをお伝えしました。ストレッチやマッサージは手軽にできるメリットがありますが、やり方を間違えると症状を悪化させるリスクも少なくありません。また、症状が重度の場合、ストレッチやマッサージだけでは症状の改善は見込めないでしょう。 病院やクリニックなどの医療機関で早めにみてもらった方が、症状が早く治る可能性があります。痛みや痺れなどは、日常生活や仕事にも支障を及ぼすため、症状が続くのであれば医療機関を早めに相談しましょう。 手根管症候群についてよくあるQ&A 手根管症候群について、よくある質問を以下にまとめています。 Q.手根管症候群は自然に治りますか? 手根管症候群は継承の場合、自然に治ることがあります。原因がはっきりとわかっているもの以外は、まずは手首の安静やできる範囲でのストレッチ、抗炎症薬やビタミン12の投与といった保存的治療で経過をみていきます。安静だけで自然に治る人も少なくありません。妊娠がきっかけで手根管症候群になった場合、出産後には治っている場合がほとんどです。 ただし、症状が進行してしまった場合手術が必要となります。安静にしていても症状の改善がみられなければ、ただちに医療機関を受診することが必要でしょう。 Q.手根管症候群の際に湿布はどこに貼れば良いですか? 手根管症候群で湿布を貼る場合、手首から手のひらにかかるように貼りましょう。とくに痛みが強く感じる部分に直接貼ることがおすすめです。湿布には痛みを緩和させる鎮痛作用が期待できます。 さらに湿布の上からサポーターや弾性包帯で手首を固定することで、手首の使い過ぎを防ぐことができます。手根管症候群は手指や手首の使い過ぎが原因で起こり、動かすことによって症状が悪化する可能性があるため、湿布で痛みを取りながらできるだけ安静にしましょう。
2023.01.13 -
- 手根管症候群
- 手部
手根管症候群とは、手首から指先にかけて走る正中神経が、手根管(しゅこんかん)という手首にある小さな管で圧迫されることにより、手のひらや指(親指から中指にかけての部分)にしびれや痛みが生じる疾患です。 手根管症候群は、薬物療法(消炎鎮痛剤の服用や湿布の使用)や保存療法(手首の運動制限や炎症を抑えるためのステロイド注射)などを試みても改善が見られない場合に、手術が検討されます。 本記事では、手根管症候群の手術後の生活について解説します。手根管症候群の手術を控えていて、術後の見通しを立てたい方はぜひ参考にしてみてください。 手根管症候群の手術後で日常生活に戻れるタイミング 手根管症候群の代表的な手術は、「手根管開放術」と「母指対立再建術」の2種類があります。回復期間がそれぞれ異なるため、日常生活に戻れるタイミングを把握しておきましょう。 手根管開放術の場合 根管開放術は、手のひらを切開し神経圧迫のもとになっている靭帯を切って、圧迫を解放する手術です。 切開する範囲が比較的小さく、局部麻酔で実施できるため、日帰り手術が可能です。 術後は傷の保護と安静のため、約1週間ほど手術部位をギブスで固定します。ギブスが外れ、傷口の治癒や痛みの軽減が確認できれば日常生活に戻れます。 母指対立再建術の場合 母指対立再建術は、手首や指にある腱や筋肉を採取して、親指の付け根に移植する手術です。 手根管症候群の影響で親指を動かす筋肉が痩せてしまい、物を掴むのが難しい状態になったときに検討される手術です。 母指対立再建術の場合は、全身麻酔を必要とし、1〜2週間ほど入院します。手術後は、1カ月ほど手術部位を固定します。そのため、手を自由に動かして日常動作ができるようになるには最低でも1カ月程度かかると覚えておくと良いでしょう。 腱や筋肉の損傷に効果的な治療法の1つに「再生医療」があります。 人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 手根管症候群の手術後に生活で気をつけるべき3つのこと 手根管症候群の手術後に生活で気をつけるべきことを解説します。 抜糸するまでは安静にして過ごす 傷口に水がかからないようにする 症状が落ち着くまでは手を使う仕事や家事は控える これらの点に注意して生活を送り、着実に回復させていきましょう。 1.抜糸するまでは安静にして過ごす 手根管症候群の手術は、切開した部分を医療用の糸で最後に縫います。傷口を縫合して、切開した部分が元通りに閉じるのをサポートしているのです。そのため、抜糸までの期間は安静に過ごすことが求められます。 抜糸前は、傷口が完全にふさがっておらず、糸で傷口を保護している状態です。 この状態で、無理に手を動かしたり、重い物をもったりすると傷口が広がって再び縫合処置が必要になる場合もあります。 スムーズな回復のためにも、抜糸して完全に傷口がふさがるまでは安静に過ごしましょう。 2.傷口に水がかからないようにする 手術後の傷口は、皮膚が再生してふさがる過程にあります。この過程は水分の影響を受けやすいため、水がかかると傷口の修復が遅れる可能性があります。 傷口がふさがるまでは、食器洗いや洗濯といった水を使う家事は極力控えましょう。 3.症状が落ち着くまでは手を使う仕事や家事は控える 手術後、無理に手を動かすと、回復が遅れたり、傷口が開いたりする可能性があります。そのため、症状が落ち着くまでは、以下のような手を使う仕事や家事は控えるようにしましょう。 包丁を握る 重い物をもつ タオルを絞る パソコンを打つ 手根管開放術の場合は、手首の固定は約1週間、母指対立再建術の場合は、約1カ月なので、手首が固定されている最中はとくに安静が必要です。 ただし、固定期間や傷口の回復ペースには個人差があります。医師と相談しながら、日常生活を開始する適切な時期を決めていくのが望ましいでしょう。 以下の記事では、手根管症候群が疑われるときにやってはいけない動作や注意点を解説しています。詳細が気になる方は、参考にしてみてください。 まとめ|手根管症候群の手術後は安静に過ごして早く日常生活に戻ろう 手根管症候群の手術は、手首や親指の付け根などを切開するため、傷が残ります。そのため術後は傷の治癒のため、安静に過ごす必要があります。 回復期間は、傷口が開いたり、手首に負担をかけたりするような動作や家事は控えましょう。適切な安静期間の確保が、術後の回復を早め、日常生活の早期復帰を可能にします。 腱や筋肉の損傷が起きたときは「再生医療」の治療法が効果的です。本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 手根管症候群の手術後で生活に関するよくある質問 最後に手根管症候群の手術後の生活に関するよくある質問と回答をまとめます。 手根管症候群の手術後に仕事復帰できるのはいつですか? 仕事復帰の時期は、手術の種類と個人の回復状態によって異なります。手根管開放術の場合は1週間程度の固定期間のあと、母指対立再建術の場合は1カ月程度の固定期間を経てからの復帰となります。 ただし、仕事復帰の時期は、手術の種類と個人の回復状態によって異なります。また、仕事の内容によっても復帰時期は変わってくるので、担当医と相談しながら適切な時期を決めていくのが良いでしょう。 腱や筋肉の損傷に効果的な治療法の1つに「再生医療」があります。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 どんな怪我や病気が再生医療の対象なのかを知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 手根管症候群の手術後にリハビリはおこないますか? 手根管症候群の手術後にはリハビリをおこなうのが推奨されます。作業療法士の指導のもと適切なリハビリをおこなえば、症状の回復を効果的に促進できます。 手根管症候群の術後におこなわれる代表的なリハビリは、以下のとおりです。 リハビリの種類 目的 可動域訓練 手首と指の動きの改善 ストレッチ 手首や手指の柔軟性や血液循環の向上 マッサージ 手の筋や腱を伸ばして関節拘縮の予防 リハビリに積極的に取り組めば、機能回復が進んでより早く日常生活に戻れるでしょう。 以下の記事では、手根管症候群の方が自分でできるストレッチやマッサージを紹介しています。セルフケアの方法が知りたい方は、あわせてご覧ください。 手根管症候群の手術後は痛みがいつまで続きますか? 手根管症候群の手術後の痛みが消えるまでには、3〜6カ月ほどかかります。手術の種類や個人差によっても痛みの感じ方は異なるので、目安として覚えておきましょう。 痛みは、時間とともに軽減していきます。痛みが長くなる場合や強い痛みが続く場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。 手根管症候群の手術後の安静期間はどれくらいですか? 安静期間は手術の種類によって異なります。 手根管開放術の場合は約1週間、母指対立再建術の場合は約1カ月の固定期間が必要です。 この期間は傷の治癒のため、極力安静を保ちましょう。無理に手首や手を動かすと回復が遅れる可能性があります。
2022.12.28 -
- 手根管症候群
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「最近、手や手首にしびれを感じるけど、忙しくて病院に行く時間がない…」 このように思いながらも、手や手首に負担をかける動作を続けている方もいるでしょう。 手のしびれは「手根管症候群」の初期症状かもしれません。 手根管症候群の場合、症状を放置すると治りにくくなる可能性があります。また、手の動きが制限されると、日常生活のあらゆる場面で支障が出て不便です。 しかし、医師の指示のもと正しい対処法を行えば、症状の悪化を防げます。手根管症候群の正しい知識と対処法を知り、悪化しないよう予防・改善に取り組みましょう。 手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと 手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこととして、次の4点があげられます。 手に負担のかかる姿勢や動作を行う 違和感がある箇所をストレッチやマッサージで無理に伸ばす 自己判断で痛み止めの薬を使う 症状が続くのに放置する 手に負担のかかる姿勢や動作を繰り返し行うことで、手根間症候群の悪化を招くリスクがあります。また、明らかに症状が続いているのに放置すると、手の動きが制限されて元に戻らないこともあるので注意が必要です。 手に負担のかかる姿勢や動作を行う 手に負担のかかる姿勢や動作には、次のものがあります。 手を酷使する 手を握りしめる パソコンのキーボードを打つ 手をねじる 手を酷使したり握りしめたりすることで、手の負担が増え症状が悪化しやすいです。また、パソコンのキーボードを打つ動きは手首を繰り返し使うため、手首にある手根管内を圧迫して炎症を悪化させるリスクがあります。 これらの動きを繰り返すことで、手首にある手根管内を通る正中神経が圧迫を受けます。正中神経は手首や指を曲げる動きや、親指から薬指の感覚をつかさどる神経であるため、圧迫されると動きの制限やしびれを伴う危険性があるでしょう。 違和感のある箇所をストレッチやマッサージで無理に伸ばす 手首に違和感があるからといって、自己流でストレッチやマッサージを行うことはおすすめしません。 手首の内部にある手根管には正中神経をはじめ、指を動かす多数の筋肉が通っています。適切な知識がない状態でストレッチやマッサージを行い手を伸ばしすぎると、かえって手首の負担になり、症状を悪化させる可能性があるでしょう。 手根管症候群が疑われた際は、手首を無理に動かそうとせず、安静に過ごすことが大切です。 自己判断で痛み止めの薬を使う 痛みが治らない場合でも、自己判断で市販の鎮痛剤や抗炎症薬を使うことはおすすめできません。市販薬は自分の体質や症状に合わず、効果がみられない場合があります。また、副作用などの予期せぬ影響が出ることも考えられます。 薬で痛みを抑えられたとしても、手根管症候群が改善するわけではありません。医師の指示なしに痛み止めの服用は避けましょう。 症状が続くのに放置する 症状が続いているのに、「放っておけば治るだろう」と自己判断で放置するのは避けましょう。手根管症候群は軽度であれば自然に治ることはありますが、生活の中で手や手首に負担のかかる動作が多いと症状が改善されず治りにくくなります。 また、自分では自覚しにくい緩やかなスピードで症状が進行していく場合もあります。症状が進行すると手の運動機能や感覚機能に影響を及ぼし、治療が困難になる場合もあるため注意が必要です。 そもそも手根管症候群とは?発症する原因も紹介 手根管症候群とは、手首にある手根管で、その部分を通過する正中神経を圧迫してしまう病気です。正中神経を長く圧迫すると、神経の修復ができなくなったり、正中神経が支配している筋肉にも影響を及ぼし治療が難しくなったりしてしまいます。 手根管症候群を発症する原因にはほかの病気が隠れていることもありますが、手首のケガや手の使い過ぎ、女性ホルモンの乱れなどでも起きることがあります。 手根管症候群の症状|正中神経が傷つくとどうなる? 正中神経は手首を通って手に分布します。正中神経は手のひら側の親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側半分を担う感覚機能と、親指を動かす母指球筋の動きを担当する運動機能をもつ神経です。 そのため、正中神経が障害されると、担っている感覚の範囲でしびれや痛み、進行すれば触っている感覚が鈍くなる知覚麻痺が現れます。また、運動機能の障害で母指球筋が痩せて、親指の付け根の盛り上がりがなくなり、親指を動かすのに障害が出ます。 とくに、小さなものをつまむような動き(親指と人差し指で物を拾い上げる、服のボタンをかける、など)が、やりにくくなり、日常生活に影響が出るでしょう。 正中神経は手首よりも上(肩寄り)では、前腕の回内や手首を曲げるといった役割も担っていますが、手根管症候群では手首の部分で傷つくため、手首より上の動作の障害は現れません(手首より上の症状がある場合は別の病気が考えられます)。 手根管症候群でやってはいけないことを避けるための対処法 手に負担のかかる姿勢や動作を行うことが多い場合 ストレッチやマッサージをするか迷った場合 痛み止めの薬を使うか迷った場合 症状が続くのに放置している場合 それぞれの場合で症状を悪化させないための方法を紹介します。 手に負担のかかる姿勢や動作を行うことが多い場合 手に負担のかかる姿勢や動作が多い場合の対処法は次の通りです。 手を酷使することが多い方 手を握りしめることが多い方 パソコンのキーボードを打つことが多い方 手をねじることが多い方 手を酷使することが多い方 手根管症候群の治療の1つには「安静」があります。手根管症候群の原因はいくつかありますが、手の使いすぎの可能性もあります。できる限り症状のある手は休めましょう。 仕事などで、どうしても手を使わなければならない人や、朝起きたときに症状が強い人は寝ている間に手根管症候群を悪化させる格好になっている可能性があるので、その場合は装具(サポーターやスプリントとも呼びます)を装着するのも良いでしょう。 装具の一部は自分で購入できますが、合わないものを使ったり、使い方が違ったりするとかえって病状を悪化させる可能性があるので、整形外科を受診して手に入れることをおすすめします。 💡 場合によっては、装具の費用の一部が療養費としてあとから返還される制度を利用することもできます。 参考 厚生労働省「療養費の支給対象となる既製品の治療用装具について」の一部改正について 手を握りしめることが多い方 握りこぶしを作るのはもちろん、柄の細い道具は手首の負担になるので、包丁やフライパンなどは柄の太いものにし、フライパンを持ち上げるときなどはできれば両手で行いましょう。 また、手指や指などの小さな関節よりも、肘や肩などの大きな関節を使った方が手首への負担が減ります。たとえば買い物をするときは買い物カゴを手で持たず、肘にかけることで手首を守れるでしょう。重い荷物の場合は、無理せずカートを利用することもおすすめです。買い物袋は手で持たず、両肩にかけるリュックサックなどを使うことでも、手への負担を減らせます。 パソコンのキーボードを打つことが多い方 手首をまっすぐにするために、専用のパームレストを使ったり、手首の下にたたんだタオルを敷いて手首の位置を整えます。 また、長い時間キーボードを打ったりマウスを操作したりしても、手首の負担は増えます。さらに長時間のパソコンの使用は、首や腰、目の疲れにも影響を及ぼすでしょう。仕事などでパソコンを使うことが多い場合は、継続的な作業はなるべく避け、定期的に休憩をはさむように心がけてください。 手をねじることが多い方 雑巾を絞る動作などは手首に負担がかかります。どうしても絞る動作が必要なときは、タオルを半分の長さにして輪になった部分を丈夫な水道などにひっかけ、両手もしくは症状がない方の手で絞りましょう。 手をねじる動作は日常生活の中でも予想以上に多いです。手をねじる動作にはペットボトルの蓋を開けたり、蛇口をひねったり、ドアノブをまわしたりするなどの場面もあげられます。 ペットボトルオープナーや、丸型ドアノブをレバー式に変える補助具などを使用して手首を守る工夫を施すのも一つの手です。 ストレッチやマッサージをするか迷った場合 手根管症候群でストレッチやマッサージを行うか迷った場合は、医師に相談しましょう。 医師の診断を受けず、自己判断でストレッチやマッサージを行うと、症状を悪化させる可能性もあります。 リハビリ専門職がいる病院やクリニックなら、医師からの許可を得て理学療法士や作業療法士などのリハビリスタッフに適切な運動方法を指導してもらうのがおすすめです。 医師や専門の医療スタッフから正しい方法を教わり、自身での施術に役立ててください。 痛み止めの薬を使うか迷った場合 手根管症候群は痛みが出やすい病気です。痛み止めの薬を使用するか迷った場合、速やかに医師の診察を受けましょう。 自己判断で市販の痛み止めを使用し痛みが治ったとしても、根本的な治療が行われていなければ一時的な痛みの軽減にしかなりません。症状の悪化を防ぐためにも、医師から適切な薬を処方してもらいましょう。 症状が続くのに放置している場合 手根管症候群は続くと正中神経や母指球筋が元に戻らなくなる可能性があります。自分でできる限りのことを行っても症状が続く場合は、整形外科で早めに診てもらいましょう。 手根管症候群が疑われるときに受診する科と検査内容 手根管症候群の可能性がある場合、受診するのは整形外科です。 基本的には正中神経を圧迫するような状態を再現して症状が現れるか、親指の付け根の筋肉が痩せていないか等を確認することで、ほとんど診断は可能です。 ただし、手首にコブができた可能性がある場合はエコーやMRI検査を追加したり、診断に迷うときには正中神経に電気を流して障害の具合を調べる筋電図検査などを追加する場合があります。また、手根管症候群の原因としてほかの病気が隠れている可能性がある場合は、血液検査などを追加することもあります。 【重症度別】手根管症候群と診断された場合の治療の流れ 手根管症候群は痛みやしびれ、筋肉の状態など症状の程度によって治療法が異なります。軽度の手根管症候群の場合には以下のような治療で経過をみます。 内服薬:ビタミンB12や消炎鎮痛剤 外用薬:痛み止めの成分の入ったシップや塗り薬 装具:手首を固定するサポーターやスプリント 手根管の炎症が強い場合には手首に炎症を抑えるステロイドなどの注射を行うこともあるでしょう。 これらの治療で改善しない場合や手根管周辺に腫瘤がある場合、また母指球筋がやせている場合には手術療法が必要になることもあります。カメラを用いた鏡視下手根管開放術では、できるだけ傷が小さく、早く日常生活に戻れる治療が行われます。 まとめ|手根管症候群が疑われるなら一度ご相談ください 指のしびれや痛み、物をよく落とすようになったら、手根管症候群の可能性があります。早い段階では手術なしで治療できるので、手根管症候群の可能性があれば、すぐに整形外科で診てもらいましょう。 仕事などで手を酷使する人は、とくに我慢して使い続けると親指の力がなくなり手術が必要になったり、親指の力が戻らない場合もあります。手首に負担のかかる動作はできるだけ避け、どうしてもそのような動作が避けられない場合は病院で装具などについて相談しましょう。 以上、「手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと」について紹介しました。参考になれば幸いです。
2022.10.14 -
- 手根管症候群
- 手部
「手首が痩せてきた」「手がしびれる、痛みがある」と自覚症状があり、病気にかかっていないか心配な方もいるでしょう。 これら症状が出ているとき、可能性が高いのは「手根管症候群」です。 手根管症候群は、手を酷使する方や妊娠中の女性、更年期の女性に多い傾向があります。また、原因不明のケースもあります。初期なら適切な対処で改善しやすいですが、進行すると手術が必要なこともある病気です。 この記事では、手根管症候群の症状の特徴や治療方法を紹介します。自宅でできるセルフケアの方法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。 手根管症候群とは 手根管症候群は、手のしびれを訴えて病院を受診する方の中で非常に多い病気です。 手のひらの付け根にある「手根管」が狭くなり、中を通る神経が圧迫されることで、手指のしびれや痛みが現れます。しびれるのは親指から薬指の半分までで、薬指の小指側の半分と小指はしびれないのが特徴的です。 軽症ならば自然に治るケースもありますが、放置すると親指の付け根の筋肉が痩せ、小さいものをつまむ動作ができなくなります。 手根管とは 手根管は手のひら側の手首の部分にあります。具体的には手の骨(手根骨)の手のひら側に横手根靱帯という靱帯が横向きにあり、この手根骨と横手根靭帯の間のすき間を正中神経という神経と、指を動かすための9本の腱が通り抜けています。 手根管とはこの正中神経と9本の腱が通り抜けるトンネルのような部分です。 手根管症候群では横手根靭帯が浮腫んだり厚みが増すことで、トンネル部分が狭くなり、正中神経を圧迫することによって症状が現れます。またまれですが手根管にコブができて正中神経を圧迫することもあります。 正中神経とは 正中神経は腕にある主要な3本の神経(正中神経・橈骨神経・尺骨神経)のうちの1つです。物に触れた感覚や痛みを伝える感覚神経としての役割と、筋肉を動かす運動神経としての役割をあわせ持ちます。 手における正中神経の担当範囲は以下の通りです。 感覚 親指、人差し指、中指、薬指の親指側半分 (これらの指の手のひら側) 運動 親指を動かす (親指の付け根の筋肉「母指球筋」を担当) 正中神経が障害されると、担当範囲の指の感覚が鈍くなったり、親指を動かしにくくなったりします。 なお正中神経は、前腕をひねって手のひらを下に向ける動きや、手首を曲げる動きなども担当しています。しかし、手根管症候群で動きに影響が出るのは、親指だけです。 参考:正中神経麻痺|日本整形外科学会 手根管症候群の症状|罹患者に多いサインも紹介 手根管症候群の症状は、以下のように進行していきます。 初期:人差し指と中指のしびれ・痛みが出る。 中期:親指から薬指の親指側半分までしびれが広がる。同じ範囲の感覚が鈍くなることもある。 末期:親指の付け根の筋肉がやせる、親指を動かしにくくなる。 しびれや痛みは明け方に強く感じることが多く、手を振ったり、指を曲げ伸ばしたりすると症状が軽くなります。人によっては「手がこわばる」と表現する方もいます。 手根管症候群の初期症状が現れているにもかかわらず、症状を放置すると親指の付け根にある筋肉(母指球筋)がしぼんで、親指の動きに制限が出てきます。このとき現れる具体的な症状は、以下のようなものです。 ボタンがつまみにくい 小銭を拾いにくい 物をよく落とす 親指と人差し指でOKサインがつくれない 親指の付け根部分の筋肉のふくらみが減ってきた このような症状や手のしびれ・痛みを自覚したら、医療機関にて相談してみることをおすすめします。 参考:手根管症候群|日本整形外科学会 手首が痩せるなど手根管症候群の疑いがあるときやってはいけないこと 手根管症候群を疑う症状がある場合は、以下のことを避けましょう。 初期:人差し指と中指のしびれ・痛みが出る。 中期:親指から薬指の親指側半分までしびれが広がる。同じ範囲の感覚が鈍くなることもある。 末期:親指の付け根の筋肉がやせる、親指を動かしにくくなる。 手に負担のかかる姿勢や動作をしていると、手根管が圧迫され、症状が悪化しやすくなります。無理なストレッチやマッサージも、悪化の要因となる場合があるため避けましょう。 自己判断で痛み止めを使うのもおすすめできません。薬で痛みを抑えても、手根管症候群自体が改善するわけではないからです。放置せず整形外科で診察を受け、根本的な原因を治療するのが大切です。 以下の記事では、手の負担を減らす具体的な工夫も解説しているので、ぜひ参考にしてください。 手根管症候群の検査方法 整形外科を受診すると、手首や手を動かして正中神経障害の症状が現れるかどうかを調べます。簡単な検査で確定できない場合は、追加で検査を実施することが多いです。 ここでは手根管症候群を診断するための以下の検査について説明します。 ティネルサイン ファレンテスト 筋電図検査 超音波検査/MRI ティネルサイン ティネルサインとは、神経が損傷している部分を指や打腱器などで叩いたときに、神経の支配領域に異常感覚が生じる現象です。傷ついた神経が再生する過程で一時的に敏感になり、叩打に反応すると考えられています。 手根管症候群を疑う場合は、手首の手根管のある部分を叩いて反応を見ます。叩いたときに正中神経の範囲の指にしびれや痛みを感じれば、手根管の部分で神経が損傷している可能性が高いです。 参考:Tinel徴候 脊椎脊髄ジャーナル 28巻4号 (2015年4月発行) ファレンテスト ファレンテストは、手根管症候群の症状を誘発させるテストです。方法は、まずオバケのまねをするように、両手を手首からだらんと垂らします。そして左右の手の甲を合わせ、手首が90°曲がるようにしっかり保持します。 手首をしっかり曲げることで、手根管の内圧が上昇し、症状が出やすい状態となります。この状態で1分以内にしびれや痛みが現れれば、ファレンテスト陽性であり、手根管症候群の可能性が高いといえます。 筋電図検査 筋電図検査は、上記の検査で確定診断できない場合に行うことがあります。神経および筋肉の電気的活動を調べる検査で、2種類の検査方法があります。 ひとつめの神経伝導検査は、神経を電気が伝わる速度を調べる検査です。皮膚の上から正中神経に微弱な電流を流し、支配下の筋肉や感覚神経の反応を記録します。 もうひとつの針筋電図検査は、筋肉の異常を調べる検査です。筋肉に細い電極を刺し、力を抜いたときと力を入れたときに発生する電気的活動を記録します。 参考:筋電図検査 超音波検査/MRI 超音波検査/MRIは、手根管にコブ(腫瘤)ができている可能性がある場合に追加する画像検査です。超音波検査では、手根管の部分に超音波を出すプローブを当てて、内部を観察します。 MRI検査では専用の装置に横たわり、コイルと呼ばれる機器に手を入れて撮影します。体内に金属が入っている方は検査できない場合があったり、撮影中に手を動かしてはいけなかったりと注意点もありますが、超音波検査よりも詳細な画像が得られます。 参考:骨軟部 手根管症候群になったときのセルフケア方法 ここでは手根管症候群と診断されたときのセルフケアについて紹介します。初期の手根管症候群である場合や、筋肉の張りによって症状が出ている場合などは、セルフケアの効果が出やすいです。痛みやしびれに悩んでいる方は、以下のようなセルフケアを試してみると良いでしょう。 セルフケア 効果・ポイント 注意点 患部を温める 血流を改善(神経と同時に血管も圧迫されていることが多いため) 患部が熱を持っていれば冷やす方が良い場合も 湿布 痛み止め成分により痛みを軽減 効果は一時的 サポーター 手首の安静を保てる。湿布と併用可能 手首を固定できるタイプを選ぶ ストレッチ 筋肉や腱の動きを改善して症状を軽減 力を入れすぎると逆効果。痛みが出ないようやさしく行う マッサージ 手根管の靭帯をほぐす 力を入れすぎると逆効果。痛みが出ないようやさしく行う これらのセルフケアは、以下の記事で詳しく解説しています。ストレッチやマッサージの方法は写真で見やすく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。 なお、手根管症候群が重症化している場合は、セルフケアの十分な効果は得られません。しびれや痛みが強くなってきたり、手に力が入らなくなったりしていれば、手術療法も検討が必要となります。 手根管症候群になる可能性のある病気 手根管症候群になる可能性のある病気としては、以下が挙げられます。 手首の骨折 手根管内の腫瘍 リウマチによる滑膜炎 アミロイドーシス 甲状腺機能低下症 痛風 透析患者 しかし、手根管症候群になった場合、上記のような病気によって誘発される可能性よりも、むしろ原因不明で突発的に起こることが多いです。 手根管症候群は、妊娠や出産時期、更年期の女性にも多いです。これは女性ホルモンの乱れによって手根管部が浮腫み、正中神経を圧迫するためと考えられています。 その他にも、以下のような仕事で手を酷使する方に多い説もあります。 パソコンをよく使う人 工具のドライバーをよく使用する人 振動する機械をよく使う人 上記のような動作の業務が多い方は、手根管症候群を発症する可能性があるため注意が必要です。 手根管症候群の治療 手根管症候群と診断されたら、消炎鎮痛剤やビタミンB12、シップや塗り薬などの薬物療法、その他に手首を固定する装具の着用や運動制限などの処置が一般的です。 炎症が強い場合には手根管内に炎症を抑えるステロイドなどの注射を行うこともあります。 これらの治療で改善しない場合や腫瘤がある場合、母指球筋が痩せている場合には手術療法が必要なこともあります。最近はできるだけ傷が小さくて済むような、カメラを用いた鏡視下手根管開放術や直視下手根管開放術などが主流です。 母指球筋の萎縮が強い場合は別の場所から腱を移動する母指対立再建術を行なうこともあります。 手根管症候群の手術後にすぐ日常生活へ戻れる? 手術後の安静期間は、手術の種類によって異なります。すぐに日常生活へ戻れる場合もあれば、1〜2週間ほどの入院と約1カ月の安静が必要なケースもあります。 手根管症候群の代表的な手術は、手根管開放術と母指対立再建術です。入院の必要性と、安静期間の目安は以下の通りです。 手術名 入院必要性 安静期間の目安 手根管開放術 (局所麻酔で可能) 日帰り可能 1週間程度 母指対立再建術 (全身麻酔で行う) 1〜2週間入院 最低1カ月程度 手根管開放術の場合、手のひらの手術部位を、術後1週間ほどギプスで固定します。ギブスが外れ、傷口の治癒や痛みの軽減が確認できれば日常生活に復帰可能です。 母指対立再建術の場合は、手首や指にある腱や筋肉を親指の付け根に移植するため、傷口も複数カ所にわたります。手術部位の固定は1カ月ほどです。 どちらの手術でも、術後は以下の3点に注意が必要です。 抜糸するまでは安静にして過ごす 傷口に水がかからないようにする 症状が落ち着くまでは手を使う仕事や家事は控える また、手術後の痛みが消えるまでには3〜6カ月ほどかかります。手術の種類や個人差によっても異なりますが「痛みを気にせず日常生活を送れるまでには数カ月かかるかもしれない」と頭に入れておきましょう。 以下の記事では、手術の内容や術後の注意について詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。 手首が痩せてしびれる症状に心当たりがあれば当院へご相談ください 今回は、手首が痩せる病気について紹介しました。 手首の痩せや手のしびれを感じた場合に、多くみられる病気が手根管症候群です。初期であれば飲み薬や、手首の安静などで症状が改善することが多くありますが、症状が進むと手術が必要になることもあるので重々注意しなければなりません。手のしびれや指先が思うように動かせないなど、上述の症状以外でも何か疑われることが1つでもあれば、医療機関、整形外科等にて早めに診断してもらいましょう。 当院でも手首の痩せや手のしびれの相談を承っています。一般的に手術が必要とされる症状でも、身体にメスを入れない再生医療で治療可能なケースもありますので、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/
2022.09.26