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もやもや病|手術の種類と入院期間、成功率と予後予測について もやもや病は、内頚動脈という脳の太い血管が徐々に狭窄していき、血流を補うために毛細血管が増殖する難病であり、様々な症状を引き起こします。 もやもや病の症状は、脳梗塞などの脳の虚血によるものと脳出血に関連するものがあります。無症状では経過観察となることもありますが、一般的に症状がある方や小児、出血の既往がある方では手術治療が行われることが多い病気です。 しかし、手術後の痛みや失敗の可能性、手術自体のリスクなど、不安な点が多いと思います。この記事では「もやもや病」の手術に関する詳しい情報について解説していますので、参考にしてみてください。 もやもや病の手術も種類と入院期間 治療にあたっては、手術方法や入院期間などの具体的な情報を知っておく必要があります。 もやもや病には、血管が狭くなることによって脳血流が低下して起こる「虚血型」と、増殖した血管が破裂して出血してしまう「出血型」の2種類があります。 虚血型は、脳血流が不足した部位に応じて手足のしびれや麻痺、言語障害などの症状が一時的に出現します。また、血管の狭窄が進行し、脳の組織への血流が完全に途絶えてしまうと脳梗塞を発症します。 一方、出血型は血管が破れることにより頭痛と出血部位に応じた症状が出現します。 脳梗塞や脳出血では、それぞれに応じた治療法が選択されますので、脳血流が低下する虚血型に対するバイパス手術について解説します。 バイパス手術 バイパス手術とは外科的血行再建術とも言われ、浅側頭動脈と中大脳動脈という血管を直接吻合させて血行を再建する「直接再建術」と、側頭筋や骨膜を脳の表面に置いて、そこから脳表に向かって血管が新しくできることを期待する「間接血行再建術」に分けられます。 直接血行再建術は、速やかに吻合した領域の脳血流を改善できる利点があります。一方で間接血行再建術は、手術が比較的容易というメリットがあります。また、手術以外の治療として内服による治療があります。治療薬として抗血小板剤(血液をサラサラにする薬)を内服し、血液の流れをスムーズにすることで脳血流の改善を促します。もやもや病ではこのようにお薬での治療と、いくつかの手術方法を組み合わせる治療が行われています。 入院期間 入院期間についてですが、手術は全身麻酔で行い手術後にMRI検査や脳血流検査などで血流の改善を確認します。大きな合併症がなければ、おおむね10-14日程度で退院が可能です。その後は3ヶ月おき程度に定期的に外来通院をしていただき、年に1回程度はMRIなどの画像検査を受けることがお勧めされます。 もやもや病の手術後の予後について 小児の適切な時期にバイパス術を受けていただくと、その後に脳梗塞を起こすことはほとんどなく、多くの方は就学と仕事に関しては問題ないと報告されています。 ただし、手術を受けた小児58人の経過を観察したところ、平均18年間の観察で、脳梗塞が1例、脳出血が3例みられており、少ないながらも脳出血を起こしてしまう場合もあります。 また、診断・治療が遅れて脳梗塞を起こした後に手術を受けた場合では脳機能に障害が残っており、普通学級への進学が困難となるリスクがあると報告されています。 一時的な脳の虚血発作であれば、手術によってその後の予後を改善することが可能ですが、脳梗塞を発症してしまった後では、手術でも障害された脳機能は回復することができません。そのため、早期に診断、治療を受けられるようにすることが大切です。 もやもや病の手術ついてよくあるQ&A Q, 手術の方法はどのように決めるのですか。 A, 患者さんの年齢、症状、検査結果により手術の方法が決定されます。また一般的に、全員に手術が必要なわけではありません。症状がない方や、脳血流が安定している方では内科的な血圧管理や生活習慣病の管理、内服薬などで症状の進行を予防し、定期的な画像検査で経過を観察する場合もあります。 しかし、脳血流が低下している場合や脳虚血の症状がある時には手術が推奨されています。手術は直接血行再建術や間接血行再建術、もしくはその組み合わせなどが選択されますが、患者さんの状態や、医師の考えなどをもとに総合的に決定されます。そのため、しっかりと検査を受けることと、複数の医師から意見を聞いてみることが大切です。 Q, 手術の成功率はどの程度ですか。 A, 手術を受ける場合は、タイミングが重要とされます。脳の血流が保たれている段階でバイパス手術を受けると、予防には有効ですが、手術の効果があまり出ずに病気が進行して症状が再発する場合があります。 また、手術を受けても急に脳の血流が増えて一時的に不安定な状態となり術後に脳梗塞、脳出血を起こしてしまう方もいらっしゃいます。適切なタイミングで手術を受けた場合には、おおよそ8割程度の方は普通の日常生活を送れるようになる場合が多いとされています。 症状が消失した場合は完治と考えられるかもしれませんが、細くなった血管を元に戻すことはできず、進行、再発することがあるので手術を受けても経過観察が必要です。ご自身の病気の状態をしっかりと認識して生活していくことが必要になります。 まとめ・もやもや病|手術の種類と入院期間、成功率と予後予測について もやもや病は難病です。手術にも様々な方法があり、手術時期の見極めが大切です。症状でお困りの際には一度専門の病院に相談するようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.135 監修:医師 坂本貞範 ▼以下の「もやもや病」の記事も参考にされませんか もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント
最終更新日:2024.04.04 -
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もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説 もやもや病とは、脳の太い血管が細くなり、その代わりにもやもやとした異常な血管が増える病気です。最近は、無症状でも脳ドックなどで診断される人もいます。 今回は、もやもや病の原因や治療法、そしてもやもや病だと言われた時に注意するポイントについて解説していきます。 もやもや病とは何か? もやもや病は、1950年代に日本で発見されました。昔の検査では、網の目のようになった異常な血管が「もやもや」とみえたことから、「もやもや病」と名付けられたといわれています。 現在、「もやもや病」という名前は世界中で通用する正式名称で、英語でも「Moyamoya disease(モヤモヤ・ディジーズ)」と言います。 もやもや病の原因 もやもや病とは、脳に血液を送る血管の一つである内頸動脈(ないけいどうみゃく)が徐々に狭くなり、詰まっていく病気のことです。*1 脳の太い血管が詰まってしまうので、その代わりに脳に血液を届けるために、異常な血管(側副血行路:そくふくけっこうろ)が網の目のように発達します。 なぜ血管が詰まってしまうのかについてはまだ分かっていませんが、ある特定の遺伝子と関係があるのではないかともいわれています。 また、日本に多くみられるという特徴があります。もやもや病は日本では国の指定難病になっており、申請を行うと医療費助成の対象となる場合があります。*5 *5 指定難病患者への医療費助成制度のご案内 – 難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460#taisho 引用)*1 もやもや病…ここまできた診断・治療 p2 http://jcvrf.jp/general/pdf_arekore/arekore_117.pdf もやもや病の症状 もやもや病は、大きく分けると、脳血流不足で発症と、脳出血で発症の2つの場合があります。 最近では、ほぼ無症状で発見されるタイプも増えていますが、たとえ無症状であっても、脳梗塞や脳出血のリスクは年2〜3%あると考えられています。 発症原因 (1)脳血流不足で発症 (2)脳出血で発症 (1)脳血流不足で発症する場合 大きな脳の血管が詰まることで、血流不足が起こります。 すると、急に「手足が動かしにくい」、「顔面や手足がしびれる」といった症状が生じます。 (2)脳出血で発症する場合 不足した脳の血流を補うために発達したもやもや血管は、長年負担がかかることで破れてしまうことがあります。 激しい頭痛とともに、意識障害、手足の麻痺、言語障害などが起こることがあります。出血が多い場合には生命に関わることもあります。 その他の症状 その他、小児の場合には、朝方に吐き気を伴う強い頭痛が続くという場合もあります。 また、頻度は高くありませんが、けいれん(ひきつけ)の症状が出ることもあります。この場合は、脳波の検査では特徴的な波形が出ることが知られています。 もやもや病といわれたらどうすればいい? では、ここからはもやもや病の治療方法や、もやもや病についてのよくある質問について説明します。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療は、もやもや病による脳梗塞や脳出血を予防する方法となります。 もしも脳梗塞や脳出血を発症してしまった場合には、その治療を行っていきます。 脳血流量を増やすためのバイパス手術 脳の血流量を増やすために、新しい血液の流れを作るためのバイパス経路を作る手術療法があります。 血流が不足するタイプのもやもや病の患者さんが脳梗塞を起こすのを防ぐ効果が認められています。 抗血小板薬の内服 脳血流不足で発症した場合には、血液の中の血小板(けっしょうばん)という成分の機能を抑え、血液を固まりづらくする抗血小板薬が使用されることもあります。 一定の効果があると考えられていますが、こうした治療薬のみでの治療には限界があるようです。 もやもや病についてよくある質問 それでは、もやもや病といわれた場合に、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。 もやもや病に関してよくある質問に答える形で、解説していきます。 Q1 脳の血管の詰まりなどは進行しますか? A 脳の血管の詰まりについては、最初に診断されたときと同じ状態が何年間も変わらない人もいれば、だんだんと進行していく人もいるといわれています。 そのため、定期的なMRIなどによる検査が必要と考えられます。 Q2 もやもや病でも普通の生活はできるの?注意点はありますか? A 手術によって脳血流がよくなった場合には、生活上の大きな制限はないと考えられます。 一方、打撃系の格闘技(ボクシングなど)やラグビーは、脳への強い振動などが懸念されるのでおすすめできません。サッカーのヘディングについても、大丈夫かはまだわかっていません。 また、成人の場合には、タバコは好ましくありません。タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる働きがあるので、もやもや病を抱えている場合にはタバコは禁物です。 また、お酒については、飲みすぎるとおしっこの回数が増え、脱水症状につながるおそれがあるので、たくさん飲むことは避けましょう。 Q3 もやもや病と診断されたら、必ず手術が必要ですか? A 基本的には、症状が頻繁にはないときには手術の必要はありません。 しかし、成人の場合で、症状がある、脳血流検査で脳の血流が著しく低下している、あるいは過去に脳出血を起こしたことがある場合には、一般的には手術が勧められます。 小児の場合には、将来症状がでることを予防するために、手術となることが多いです。 最終的には、検査結果や患者さんの年齢や状況を総合的にみて、手術適応が決まります。 まとめ・もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説 もやもや病は、脳の太い血管が詰まってしまうことで起こる病気です。根本的な治療法は、手術で脳の血流を改善することですが、それぞれの症状や年齢によって対応方法は決まっていきます。 今回の記事が参考になれば幸いです。 No.S133 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.04.04 -
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頭のこぶのようなものを押すと痛いとき、考えられる疾患とは? シャンプーのときや髪をかきあげた時など、ふとしたときに頭に「こぶ」のようなものに触れた経験はありませんか? 放置して何事もなかった場合にはよいですが、押したり触れたりすると痛みがある場合は不安ですよね。 今回は、頭にできる「こぶ」の原因と受診の目安について解説します。 頭のこぶはどのようなものがあるか 頭のこぶは大きく、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍に分けられます。 皮下血腫(たんこぶ) 皮下血腫はいわゆる「たんこぶ」のことです。頭をぶつけた際に、皮膚の近くの血管が切れてしまい、血溜まりを作ってしまった状態です。 皮下血腫自体は特に治療をせずに治ることが多いですが、頭を打撲して嘔吐したり、意識が悪くなったり、打撲した前後のことを覚えていなかったりする場合にはすぐに受診をするようにしましょう。 感染(ニキビ) ニキビは皮脂が毛穴を閉塞することで、アクネ菌が増殖することで炎症を起こします。ニキビといえば顔のイメージがありますが、頭皮にも起こることはあります。 また、毛包炎・毛嚢炎は毛穴に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が感染することで炎症を起こす疾患です。どちらも菌により炎症が起こるので、押すと痛い、赤く腫れることがあるのが特徴です。 皮膚炎 頭皮がシャンプーや整髪料、髪染めなどに反応してしまい、炎症を起こす接触性皮膚炎もこぶ・できものの原因になります。ただれ、水ぶくれが多く、大きなしこりはあまり起こりません。原因となるものを使用しないことが重要です。 腫瘍 腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。医療機関でのご相談をお勧めします。 良性の腫瘍(粉瘤、脂肪腫) 良性の腫瘍には「粉瘤(ふんりゅう)」があります。粉瘤は、毛穴の一部に皮脂などが溜まって、袋状となった良性の腫瘍です。柔らかいしこりとして触れ、痛みはあまりありません。 内部で細菌が増殖して炎症を起こしてしまうと、痛くなったり膿が出たりすることがあります。脂肪腫も良性の腫瘍です。同じく、柔らかいしこりとして触れます。 悪性の腫瘍 頭皮にできる悪性腫瘍には、「有棘細胞癌」や「悪性黒色腫」があります。触るとごつごつしたり、硬いという特徴があります。また、潰瘍となって液体が出てきたり、血がでたりすることもあります。 一般に良性のものでは大きさは変わらずに経過することが多いです。しかし、小さな「イボ」として感じていたものがどんどん大きくなっている、血が出ているなどは悪性を疑う情報となります。 「こぶ」と脳卒中との関係は? 頭は外面から、皮膚、骨膜、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳とたくさんの層構造になっています。 頭蓋骨という非常に硬いもので分け隔てられているので、皮膚のできものと脳卒中に直接的な関係はありません。イボやこぶとして触れる病気は、主に頭の皮膚に起こることが多いです。 逆に脳卒中になっても、頭皮にこぶができることもありません。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤も、皮膚の上から触れるものはありません。脳卒中が考えられる症状は、突然起こることが特徴です。 脳の発症部位によりその症状は様々ですが、代表的な脳卒中の症状は、以下のようなものです。 脳卒中の症状 ・言葉が出づらい ・左右どちらかの手足が動かしにくい ・意識の状態が悪い 頭の「こぶ」で受診したほうがよい場合 こぶや、しこりが赤く腫れて痛い場合、膿が出てくる場合は感染症の可能性があります。切開や抗菌薬を投与したほうが速やかに治る可能性があるため、数日待っても良くならない場合は受診をおすすめします。 こぶやしこりが、大きくなっていたり、数が増えたりする場合は悪性腫瘍を考えなければなりません。早めの受診をしましょう。 また、頭をぶつけた際にできたこぶが、どんどん大きくなっている、意識の状態が悪くなっている、話しづらさや手足の動きづらさが出てきたりするなどの場合は、早急に受診をするようにしましょう。 頭のこぶについてよくある質問 Q: 小さな時からある頭のこぶはどうしたらよいですか? A:幼少期から長期間ある場合は、重篤な病気である可能性はそこまで高くはないでしょう。見た目として気になる場合、赤みや痛みなど新しい症状がでた場合、大きくなる場合は受診するようにしましょう。 Q:頭のこぶは何科を受診したらよいですか? A:皮膚科や形成外科を受診するのが良いでしょう。 頭のこぶやしこりが気になるのなら、皮膚科もしくは形成外科を受診しましょう。頭をひどくぶつけて、皮下血腫(たんこぶ)ができた際には、脳外科を受診するのが良いでしょう。 受診する際は、いつ頃からできているか、できものに心当たりはあるか、痛みはどうか、他に症状がないかを言えるようにすると、正確な診断に繋がりやすいです。 Q:頭のこぶに痒みがある場合どうしたらよいですか? A:まずは頭を清潔にしましょう。シャンプーや整髪料を変えたなどがあれば、一時的に使わずに様子を見ましょう。かゆみがひどくて掻きむしってしまう場合は、皮膚科などを受診するとよいでしょう。 まとめ・頭のこぶに少しでも異常を感じたら早急に受診をしよう! 頭の「こぶ」は自分では見えない部分なのでより不安にも感じやすいと思います。 「こぶ」の原因は、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍などさまざまな原因が考えられます。一般的には良性のものが多いのですが、痛みや腫れがひどい場合や、悪性腫瘍が疑われる場合は、早めの受診をお考え下さい。 尚、頭皮の「こぶ」と脳卒中との関係はありませんし、頭のこぶが脳卒中の前兆というわけでもありません。脳卒中の症状は突然起こることが特徴的であり、言葉が出づらい、手足の動きが鈍くなるなどの症状があります。 頭に「こぶ」ができた際は、症状や変化に注意し、必要に応じて早めに医師の診断を受けることが重要です。 特に痛みや膿がある場合、大きくなっている場合、数が増えている場合は、感染症や悪性腫瘍の可能性があるので、お近くの皮膚科や形成外科、脳外科など、早急に受診をしたほうが良いでしょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S125 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭のことについて以下もご覧になりませんか 頭を打つと危ない場所!危険な打ち方と症状を医師が解説!
最終更新日:2024.04.25 -
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頭痛|吐き気を伴うと危険!考えられる病気やその対処法について 頭痛は、ありふれた疾患であり、日本人の約4割は、慢性的な頭痛持ちとも言われています。慢性的ではなくても、頭が痛いというような頭痛を感じたことがない人は、ほとんどいないのではないでしょうか。 一口に「頭痛」といっても様々なタイプがあります。国際頭痛分類ってご存知でしょうか?なんと数百種類の頭痛が示されていることに驚かれるはずです。 今回は、そんな頭痛の中でも危険な「吐き気を伴う頭痛」について、具体的にどのような病気が考えられるか、どのように対処したらよいのかなどを中心に解説します。 頭痛の種類について まず、頭痛の種類について詳しくみていきます。頭痛にはたくさんの種類がありますが、大きく分類すると一次性頭痛と二次性頭痛にわけられます。 一次性頭頭痛とは、頭痛の原因となる疾患が特定できないものをいい、二次性頭痛は原因の疾患が特定できる頭痛です。 具体例としては以下の通りです。 一次性頭痛(原因を特定できない) ・片頭痛 ・緊張型頭痛 ・群発頭痛 二次性頭痛(原因を特定できる) ・脳卒中 ・脳腫瘍 ・髄膜炎 ・慢性硬膜下血種 ・緑内障 ・副鼻腔炎 一次性頭痛は、直接命にはかかわらない頭痛です。しかし、「二次性頭痛」は、命に関わることもあり特に注意しなければなりません。 頭痛の種類と特徴とは ではどうやって、一次性頭痛と二次性頭痛を見分ければよいのでしょうか。頭痛診療ガイドラインでは、以下のような症状の場合は、注意が必要といわれています。 頭痛でこれらのような症状を伴う場合は、原因となる疾患が隠れている可能性があります。我慢せずに、病院を受診し、検査を受けることをおすすめします。 注意が必要な頭痛 ・発熱や意識の低下を伴う場合 ・がんや免疫不全疾患などを患っている ・急激に発症する今まで経験したことのない痛み ・50歳以上で初めて経験する症状 ・最近発症した新しい頭痛 ・ろれつが回らない、目が見えにくいなどの症状を合併している 吐き気を伴う頭痛の種類と対処法 頭痛が強いと、吐き気も伴うという方も多いかもしれません。ここからは、吐き気を伴う頭痛について、詳しく見ていきます。吐き気を伴う頭痛は、主に3つあります。脳卒中、髄膜炎、片頭痛です。 ・脳卒中 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで起こる疾患の総称です。具体的には「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つを指すことが多いです。脳卒中による頭痛は吐き気を伴うことが多く、注意が必要です。 くも膜下出血の場合は、「突然発症し、今までに経験したことがない強い頭痛」が特徴といわれています。 脳出血や脳梗塞の場合は、頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えないなどの脳神経が障害されている症状を合併します。また、頭がふらふらする感じやめまいを伴うこともあります。 このような症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。 注意すべき命に係わる頭痛 ・ くも膜下出血:突然、経験したことがない強い頭痛 ・脳出血や脳梗塞:頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えない、めまい ・髄膜炎 髄膜炎は、脳や神経を包む「髄膜」という膜に炎症が起きたものです。細菌やウイルスが原因のこともありますが、がんや薬剤が原因で起こることもあります。 頭痛や嘔吐を伴うものが多く、髄膜刺激症状と呼ばれる首を前に曲げると痛みがあるといった特徴的な症状を起こすことが多いです。発熱や下痢を伴うことも多く、風邪と間違われることもあります。 子供でも起こることがあり、子供が頭痛を訴えて嘔吐している場合はすぐに病院を受診して検査を受けるようにして下さい。 ・片頭痛 吐き気を伴う一次性頭痛として割合が多いのが、片頭痛です。 片頭痛は20〜40代の女性に多く発症し、こめかみから側頭部にかけてズキンズキンと脈打つような頭痛が生じます。また、頭痛が起きる前には、閃輝暗点(せんきあんてん)といって、視野にギザギザした光がちらつく前兆がある場合もあります。 片頭痛を発症した際には、光や音、においなどに過敏になることもあるので、暗く静かな場所で安静にするのが良いといわれています。 また、血管が開いて血行がよくなると症状が増悪するため、リラックスするために長風呂をしたり、マッサージを受けたり、お酒を飲んだりすることは逆効果なので避けましょう。 あまりにもひどい片頭痛の場合は、薬で症状を軽くすることもできるため、悩んでいる方は病院を受診するようにしてください。 頭痛でよくある質問 Q:片頭痛持ちですが、食事で気を付けることはありますか? A:赤ワイン、チョコレート、チーズ、ピーナッツ、豚肉などは片頭痛を誘発する可能性があるアミン類を含んでおり、控えるべきといわれています。 また、緑茶やコーヒーなどに含まれているカフェインは、摂取しすぎると悪化の原因となるため控えましょう。 Q:デスクワークだと頭痛が起こりやすいですか? A:ストレスや長時間のデスクワークが原因となって発症する、「緊張型頭痛」と呼ばれるものがあります。頭や首の筋肉の緊張によって引き起こされるといわれており、頭を締め付けられるような痛みがおこります。同じ姿勢を長時間続けることで悪化するため、30分に1回程度は休憩をとるようにしましょう。 また、筋肉の緊張をほぐすために、肩や首などをこまめに動かすストレッチを行いましょう。 まとめ ・頭痛|吐き気を伴うと危険!考えられる病気やその対処法 今回は頭痛について解説しました。 頭痛は、誰もが経験したことがある一般的な症状であり、日本人の多くがその経験をしています。しかし、頭痛にはさまざまなタイプがあり、一次性と二次性の区別が重要です。 一次性頭痛は、直接命に関わることは少ないですが、二次性頭痛には命にかかわる可能性もあります。特に吐き気を伴う頭痛は、脳卒中や髄膜炎など深刻な疾患のサインであることがあります。 このような症状がある場合は、すぐに医師の診察を受けることが重要です。また、片頭痛のような一次性頭痛でも、適切な対処が必要な場合があります。 安静にし、リラックスすることで症状を軽減できる場合もありますが、症状がひどい場合は医師の指示に従うことが大切です。 頭痛はよくある症状ですが、たかが頭痛と甘く見ず、いつもと違う、何か違和感を感じられたら早めに病院を受診するようにしてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.124 監修:医師 坂本貞範 ▼頭痛に関し以下も参考にされませんか 頭が痛い、重いとき…頭痛の種類と、それらの原因と治し方!医師が解説
最終更新日:2024.04.25 -
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頭を打つと危ない場所!危険な打ち方と症状を医師が解説! 日常生活のなかで、頭を打つことは少なくありません。立ち上がろうとして頭を打った、転倒した、階段から落ちた、交通事故で頭をぶつけた、殴られた・・・など、さまざまなエピソードがあります。 頭を打つとより危ない場所・安全な場所というのはありませんが、ぶつけた部位と強さにより様々な危険な症状が出ることがあります。では、どのような場合が危険なのでしょうか。 今回の記事では、頭を打った場合に見られる危険な症状や、考えられる疾患について詳しく解説していきます。 危険な頭の打ち方 頭を打った際、「強い力がかかって頭をぶつけた場合」には注意が必要です。 例えば、以下のような場面などが考えられます。 危険な頭の打ち方 ・1m以上の高さから転落した ・階段で5段以上の高さから落ちた ・受け身をとらずに転倒した ・交通事故で頭を打った ・車の外に放り出された ただし、高齢な方や薬(特に血液を固まりにくくする薬剤)の影響もあるため、同じ打ち方だから大丈夫ということはなく、その人ごとに判断する必要があります。 また、どのような原因で頭をぶつけたかも重要です。 例えば、「気を失って転倒して頭をぶつけた場合」には、心疾患や不整脈などの別の失神の原因も探さなければなりません。「急に手足の力が抜けて転倒した場合」には、脳卒中などの可能性もあります。 受診をした際には「どのようにぶつけたか」を伝えられるとよく、さらに目撃者がいれば伝わりやすいでしょう。 頭を打った際に危険な症状 誰が見ても重症な場合(明らかに意識の状態が悪い、手足の一部が動かない、血が止まらないなど)は救急で受診をしましょう。 一見重症に見えなくとも、以下の症状がある場合にはできるだけ早く医師の診察を受けるようにしましょう。 医師に相談すべき状態 ・何回も嘔吐する ・頭をぶつけた理由や受傷前の記憶がない ・けいれんがある ・耳や鼻から液体(血も含む)が出てくる ・目の周りや耳の後ろが黒くなる また、自分で症状を言うことができる人もいますが、小さな子供や高齢者では症状を言えないことがあります。何かがおかしいと思った際には、周りに助けを求め、子供でも大人でも悩まず受診するほうがよいでしょう。 頭を打ったことで起こること 大きく急性期(頭をぶつけてすぐ)と慢性期(頭をぶつけてしばらくたってから目立つようになる)に分けられます。代表的なものを以下に記載します。 急性硬膜下血腫・急性硬膜外血腫 脳と骨の間には膜が3層(外側から硬膜、くも膜、軟膜)あります。 頭をぶつけた数時間以内に、硬膜と脳の間で出血するものを「急性硬膜下血腫」、骨と硬膜の間で出血するものを「急性硬膜外血腫」といいます。 急性硬膜下血腫は受傷すぐから意識が悪くなることが多いのに対し、急性硬膜外血腫は受傷しても数時間ほど症状が出ない「意識清明期」があるのが特徴です。 他の症状には、手足の麻痺、悪心・嘔吐、けいれん、瞳孔の左右差などがあります。いずれもCTで診断でき、重症な場合には緊急で手術を行います。 外傷性くも膜下出血 頭をぶつけたことにより、くも膜と脳の間で出血が広がった状態です。 くも膜下出血はほとんどが脳動脈瘤(血管の一部が「こぶ」のようにふくらみ、破れやすくなった状態)によるものであり、頭をぶつけた場合は区別して外傷性くも膜下出血と呼ばれます。 基本は入院での経過観察で、脳圧が高くなる場合は投薬や手術などを行います。 脳挫傷 頭部打撲により、脳そのものが損傷してしまうことです。 頭をぶつけた場合は、ぶつけた部分とその反対の部分を損傷する場合があります。損傷された部位により、片麻痺(左右どちらかの手足が動かしにくい)や失語症(言葉が理解できない、言葉を表に出しにくい)、高次脳機能障害(後述)などがあります。重症な場合は、意識が悪くなったり呼吸がうまくできなくなったりします。 呼吸・循環(血圧や脳血流量)・脳圧・体温をコントロールを第一に行い、それでも進行する場合は手術も検討されます。 高次脳機能障害 頭部外傷では後遺症として、高次脳機能障害を起こすことがあります。 高次脳機能障害には以下のようなものがあります。 記憶障害 ・新しくものを覚えられない、思い出せない 注意障害 ・作業や生活の中で集中できなくなる ・気が散りやすくなったりする 社会的行動障害 ・自分から何もしようとしない ・「無関心」や社会常識から外れた行為が目立つ ・怒りやすい、性的に逸脱する行為、ギャンブルに熱中しすぎる 遂行機能障害 考えて、判断して、課題を解決するという一連の流れができない 頭を打った際のよくある質問 Q.頭を強くぶつけたが、どのようなときに受診したらよいですか? A.意識が不明瞭、手足の麻痺、嘔吐、転倒の記憶がない、けいれんなどがある場合には受診しましょう。 また、高齢者や基礎疾患のある方(特に血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合)も受診したほうがよいです。 Q.何科を受診すればよいですか?その際に注意することは? A.受診するのは脳神経外科や脳神経内科を検討しましょう。 また、顔面のぶつけ方により、眼科や耳鼻咽喉科、歯科などの受診をするのが良いです。受診する際は、どのようにして頭をぶつけたかを伝え、目撃者がいる場合は様子を聞くのが良いです。 普段飲んでいる薬があれば、忘れずに伝えてください。 まとめ・頭を打った際の危険な症状を見逃さないように!迷わず受診しよう 今回の記事では強く頭をぶつけた場合に、どのような症状が出ると危険かを解説しました。 頭を打つことは日常生活でよくあることですが、危険な症状が発生する可能性もあることを知っておきたいものです。特に、強い力がかかって頭をぶつけた場合や、頭部を損傷するような事故に遭った場合には注意が必要です。 頭を打った際には、以下のような危険な症状に注意する必要があります。 ・ 嘔吐が続く ・ 頭をぶつけた理由や受傷前の記憶がない ・けいれんがある ・耳や鼻から液体(血も含む)が出てくる ・目の周りや耳の後ろが黒くなる また、急性期と慢性期の両方にわたって、頭を打ったことによって生じる様々な症状があります。急性期では、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷などが起こる可能性があります。 慢性期では、高次脳機能障害が後遺症として現れることがあります。 頭をぶつけないことが第一ですが、もしぶつけてしまった際には、症状や事故の状況をしっかりと把握し、「何かがおかしい」と感じた際には、病院の受診を躊躇わないようにしましょう。 また安全な選択をするために、周囲の人々のサポートも活用しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S122 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭痛に関する記事も参考にされませんか 頭痛で吐き気を伴うと危険!考えられる病気やその対処法
最終更新日:2024.04.25 -
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くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 水頭症とは、文字通り、頭に水がたまってしまう病気のことを言います。小児でも発症することがありますが、大人ではくも膜下出血の後遺症として起こることが多い病気です。代表的な症状に「歩行障害」「認知症」「尿失禁」などがあります。 しかし、頭に水がたまるというのが具体的にはどのような状態なのかよくわからない、という方も多いかと思います。 今回は、くも膜下出血の後遺症に多い「水頭症」とはどんなものなのか、どのような症状があるのか、後遺症や予後についてもわかりやすく解説します。 水頭症とは 人間の脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液という水に浮いています。脳の内部にも、脳室という空間があり、こちらにも脳脊髄液が流れています。この脳脊髄液には、脳を外部から守ったり、栄養やホルモンを運搬したり、脳の老廃物を除去したりと様々な役割を担っています。脳脊髄液は常に入れ替わっており、毎日500 ml分が新しく作られ、同じ分だけ吸収されています。 正常な状態では、脳脊髄液は、脳の周りや脳室を循環しており、その循環量は150 mlと言われています。何らかの原因でこの流れが悪くなり、脳脊髄液が多量にたまってしまうことによって、脳を圧迫する状態を「水頭症」といいます。 水頭症の種類について 水頭症のタイプとして「非交通性」と「交通性」があります。 非交通性水頭症は子供に起こりやすく、脳脊髄液の流れの中で、どこかが通行止めになっているイメージです。一部でせき止められてしまうことによって、たまった脳脊髄液が脳を圧迫します。数は少ないですが、成人でも脳腫瘍などで起こる場合もあります。 成人、特に高齢者に多いのは、交通性水頭症です。これは、流れ経路には問題がないのにもかかわらず、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳脊髄液の循環量が多くなってしまう状態です。 何らかの原因で、脳脊髄液の吸収機構がダメージを受けることによって起こる続発性が多いですが、突然発症する特発性もあります。 交通性水頭症の場合、徐々に進行するため、脳圧とよばれる頭蓋骨の中の圧は正常に保たれていることが多く、別名「正常圧水頭症」ともいいます。 続発性と特発性の違いは以下の通りです。 正常圧水頭症 原因 発症時期 続発性 くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎など 左記疾患の数週〜数カ月後 特発性 不明 60~70代の高齢者 特にくも膜下出血では、発症の1~2カ月後に、30%程度の割合で正常圧水頭症を発症するといわれています。看護する人たちは、急性期が落ち着いたあとも、患者さんの様子を注意してみていく必要があります。 水頭症(正常圧)の症状とは ここからは高齢者に多い、「正常圧水頭症」について詳しく見ていきます。 正常圧水頭症の代表的な3つの症状は、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の3つです。 これらは、数カ月から数年単位でゆっくりと進行します。そのため老化の症状と間違えられやすく、長期間放置されている場合もあります。 ご自身やご家族で、以下のような症状はありませんか? ・歩幅が小さくなる ・すり足歩行になる ・両足を開いて歩く ・歩行が不安定になる ・物忘れが多く自発性が低下している ・無気力・無関心な状態になっている 初期には歩行障害が出現し、「歩幅が小さくなる」「すり足歩行になる」「両足を開いて歩く」「歩行が不安定になる」などの特徴がみられます。その後、物忘れや自発性の低下が出現し、徐々に活動性が下がって無気力・無関心な状態になります。 症状が進むと寝たきりになってしまう場合もあるため、早期に変化に気付いて検査を行うことが大切です。 水頭症と診断されたら 水頭症は薬で治せるものではありません。基本的には手術療法が必要となります。 具体的には、頭にたまった余分な脳脊髄液をおなかへ流すチューブをいれる「シャント術」が行われます。 一般的には、頭と腹腔をつなぐチューブを体の中に挿入します(V-Pシャント)。また、脳脊髄液は、背骨の神経の周りにも流れており、そこから腹腔へチューブをつなぐ方法もあります(L-Pシャント)。これらの手術は、脳脊髄液の出口を作ることで、症状を改善させることを期待して行います。 水頭症の後遺症や予後は 正常圧水頭症は、手術を行ってもすぐに完治するものではありません。手術後も、シャントから排出される脳脊髄液の量が適切になるように、調整する必要があります。また、退院後に症状の改善が見られなくなり、元の状態に戻ってしまうこともあります。その場合は、シャントの閉塞がないかどうか、チェックする必要があります。 また、3大症状の中では、歩行障害の改善率が最も良好とされています。反対に認知症や尿失禁の改善率は、歩行障害に比べるとやや劣るとも言われています。そのため、治療開始が遅くなった場合は、認知機能の低下や尿失禁などの症状が後遺症として残ってしまう可能性もあります。 予後は、多くの要因に左右されます。たとえばくも膜下出血などでは、そもそも社会復帰できるのは、罹患した患者さんの3分の1とも言われていますので、もともとの病気や脳機能も大きく予後に影響します。 ただし、シャントがうまく機能していれば、脳機能が回復し、症状も改善する症例が多いのも事実です。そのため「治る認知症」とも言われることがあります。 早期に適切な処置を行うことによって、健康寿命を延ばすことができるため、早期発見がポイントになります。 水頭症についてよくある質問 Q:水頭症を疑った場合どんな検査をしますか。 A:まずは、CTなどの画像検査を行い、脳脊髄液が溜まったことによって脳室が拡大しているかどうかを確認します。そのうえで、水頭症が疑わしい場合にはタップテストを行います。 タップテストとは、実際に頭にたまった脳脊髄液を、一時的に抜くことで症状が改善するかを確認するテストです。このテストは、短期間の入院で行います。麻酔の注射をし、背中に針を刺して脳脊髄液を抜き取ります。 タップテストで症状が改善した場合は、シャント手術に進むことになります。 Q:手術は急いで受けた方が良いでしょうか。 A: 正常圧水頭症はゆっくりと進行するため、手術を受けるかどうか、しっかりと検討する時間はあります。また、診断後すぐに手術を受けた患者と3ヶ月後に手術を受けた患者では、1年後の症状改善に大きな差がなかったという研究もあります。 ただし、歩行障害による筋力低下が進むと、手術後の回復が思わしくない場合もありますので、その点は注意が必要です。 Q:シャント手術をした後は、CTやMRIなどを撮っても大丈夫でしょうか。 A:基本的には問題ありません。経過が問題なくても、手術後の脳脊髄液の状態を見るために、定期的に外来で画像を確認する必要もあります。 まとめ・くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 今回は水頭症の原因と症状、くも膜下出血の後遺症の関係について解説しました。 水頭症のなかでも、とくに正常圧水頭症は早期に発見・治療ができれば、症状の改善を期待できる病気です。少しでもおかしいと思った際には、早めに病院を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.119 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.12.26 -
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水頭症による高齢者の認知症症状は“手術で治る”って本当? 認知症の発症率は、高齢化が進むにつれて増えてきています。認知症には複数の原因となる疾患がありますが、その中でも治療可能とされているのが水頭症が原因による「特発性正常圧水頭症」です。 特発性正常圧水頭症による認知症は、認知症全体の5%~10%を占めるといわれており、他にはアルツハイマー型・レビー小体型認知症・血管性認知症などがあります。 【認知症の主な原因疾患】 ・特発性正常圧水頭症 ・アルツハイマー型 ・レビー小体型認知症 ・血管性認知症 本記事では、“水頭症による高齢者の認知症症状が手術で治る”とはどういうことなのか、さらに特発性正常圧水頭症の症状や検査、治療について詳しく解説していきます。 特発性正常圧水頭症とは 認知症の中でも「特発性正常圧水頭症」とは、頭蓋内に脳脊髄液が溜まり、脳が圧迫されて様々な症状が出る水頭症の一種です。 脳脊髄液は、脳室で毎日一定量がつくられ、脳と脊髄の周囲を循環し、静脈などに吸収されていきます。何らかの原因で、この循環に異常が生じると水頭症が発生します。 正常圧水頭症には3つのタイプがあり、最も多いのが特発性正常圧水頭症です。原因は不明ではありますが、主に高齢者に多く発症するとされています。 その他にも、くも膜下出血や髄膜炎などを発症した後に生じる二次性正常圧水頭症や、遺伝的要因により発症しやすいと考えられる家族性正常圧水頭症がありますが、極めて稀な疾患です。 ◇水頭症の症状 特発性正常圧水頭症では、脳の前頭葉の広範囲が障害されることにより、歩行障害、排尿障害、そして認知障害が現れます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 歩行障害 特発性正常圧水頭症による歩行障害には、下記のような特徴があります。 ・開脚歩行(足が開き気味で歩く) ・小刻み歩行(小股でよちよち歩く) ・すり足歩行(膝を上げずに歩く) ・不安定な歩行(方向転換の時にふらつきやすい) ・歩き出しづらい ・突進現象(歩き出すとうまく止まることができない) 排尿障害 頻尿になったり、尿意を感じにくくなったりします。症状が進行すると、尿意を感じてから我慢できる時間が短くなり、失禁しやすくなります。 認知障害 物忘れや理解力の低下が生じ、ぼーっとするような時間が多くなります。 特発性正常圧水頭症は、歩行障害が初期症状として現れることが多いとされています。 上記の症状のセルフチェックを行い、歩行障害に加えて、排尿障害や認知障害が生じた場合は特発性正常圧水頭症を疑い、病院を受診するようにしましょう。 ◇水頭症の検査 特発性正常圧水頭症では、上記症状をチェックする身体診察が行われ、その程度が確認されます。そのあと、MRIやCTによる脳の画像検査が行われ、特発性正常圧水頭症の疑いが濃厚になった時点で、「タップテスト※」が行われます。 ※タップテストとは、腰椎から脊髄液を30ml程度排除することにより、症状改善がみられるかどうかを確認するテストです。 脊髄液の排出後、歩行などの動きが良くなった場合は「水頭症」と診断され、手術(シャント術)が勧められます。 ◇水頭症の治療 特発性正常圧水頭症の治療では、脳脊髄液の流れを良くする「髄液シャント術」と呼ばれる手術を行います。これは、カテーテル(管)を体内に埋め込むことで、過剰に溜まってしまった脳脊髄液を排出することで脳への圧迫を解放し、髄液循環や脳神経機能を改善させる治療法です。 髄液シャント術の方法には、「VPシャント(脳室-腹腔シャント)」、「VAシャント(脳室-心房シャント)」、「LPシャント(腰椎-腹腔シャント)」があります。 最近では、LPシャントが主流になりつつありますが、腰椎の変形などが強い場合には他のシャントを行います。いずれの手術も脳神経外科の手術としては比較的短時間で行われる手術です。手術時間の目安はおよそ1時間程度です。 ◇水頭症の手術費用 一般的な手術費用は、診療報酬点数が24,310点となっているので、1点=10円とすると約7万円(3割負担)となります。 高額療養費制度を利用すると、自己負担限度額を超えた部分が払い戻されるので、最終的には更に軽減される可能性があります。 ◇水頭症の術後 手術により植え込まれたカテーテルは、定期的に詰まったり壊れたりしていないかチェックし、髄液を抜く量が適切に設定できているか確かめる必要があります。 シャント圧調整方法としては、管の途中に脳脊髄液圧を調節するバルブがついているため、体外から設定圧を調節できるようになっています。シャント圧を下げ過ぎてしまうと、頭蓋内圧が低下し低髄圧症候群を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。 カテーテルにより抜ける髄液量は、生活の仕方や体格の変化によって変動するため、定期的にCTやMRIを撮影して頭の中に異常がないかを確認し、適切な髄液量を決めていく必要がありますので定期的に通院するようにしましょう。 まとめ・水頭症は手術で治る可能性のある認知症! 現在のところ、薬物療法はなく手術が唯一の治療法になります。手術しなければ症状が進行し、寝たきりになってしまうなど、手遅れになるリスクもありますが、生命に関わる病気というわけではありません。手術は症状の改善を主な目的としているため、生活の質を上げたい方にはおすすめです。 現在では、歩行障害は8~9割、排尿障害や認知障害は5~7割に有効とされています。このようなことから、“水頭症による高齢者の認知症症状は手術で治る”と言われています。 しかし、特発性正常圧水頭症は治る可能性のある認知症ですが、正確に診断され治療に至るケースはまだまだ少ないのが現状です。早期発見、治療により生活の質が格段に改善する可能性があるので、疑わしい症状がある場合は早期受診をおすすめします。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S119 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.26 -
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頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 「頭痛」は多くの人が悩んでいる症状の一つです。 日本の製薬会社の調査では、約4人に1人が週に1回以上の頭痛を感じ、約3人に1人は自分を頭痛持ちだと思っているそうです。 頭痛の症状は人により様々です。 「頭がクラクラする」 「頭の後ろが痛い」 「頭に血が上る感じがする」 「頭の右側が痛い」 「ぼーっとする」など多彩な言葉で表現されます。 この頭痛、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」とに分けられることをご存知でしょうか。二次性頭痛は他の病気の存在により引き起こされる頭痛であり、それ以外を一次性頭痛に分類されます。 この記事ではそれぞれの頭痛について、その説明と対処法を解説します。 一次性頭痛とは 一次性頭痛は、頭痛を有する患者のうち、約80%に及ぶと言われています。多いものから「偏頭痛」「緊張型頭痛」「三叉神経・自律神経頭痛」といわれるものが代表的な頭痛となります。 頭痛の原因となる疾患がなくても時には仕事や学校、家事などの日常生活に支障が出て、*QOLが下がることもあります。 それでは以下に頭痛の種類別の解説と治療法を記してまいります。 *QOLとは 「Quality of Life」の略です。日本語では「生活の質」や「生活の満足度」と訳し、具体的には、健康、経済的状況、心理的な幸福感、社会的関係など、日常生活を送る上で感じる「満足度」や「充実感」の程度を表すものです。 1)偏頭痛とは 日本では年間に8.4%の人が片頭痛になると言われています。 この頭痛は、頭痛を起こす前に特徴的な前兆(きらきらした歯車のようなものが見える、チクチク感を感じ、それが体や舌などに波及するなど)が出現することがあります。 偏頭痛の症状としては「ズキンズキンと脈を打つように痛み、頭痛により寝込んだり、吐き気がしたりする」ことがあります。 また、偏頭痛が起きている間は光や音に過敏な状態となるため、「頭が痛い間は布団を被ってじっとしている」という方もおられます。 症状 ・ズキンズキンとした脈を打つように痛み ・吐き気がする ・寝込むことがあある ・光や音に過敏になる 偏頭痛の治療法 偏頭痛で痛かったり、辛かったりするときの治療には、解熱鎮痛剤(ロキソプロフェンや、アセトアミノフェンなど)、トリプタンという頭痛治療薬が有効です。 トリプタンを服用する有効なタイミングは、痛みが始まってすぐや、軽度なときが良いため、服用が難しいかもしれません。 予防には抗てんかん薬や、抗うつ薬がよく使われてきました。最近発売となった「抗CGRP抗体」という注射薬は、より高い予防効果があります。 必ずしも関連があるとは言えませんが、高血圧症、心疾患、うつ病などと共存することが多く、治療薬の選択に影響があるため注意が必要です。 2)緊張型頭痛とは 緊張型頭痛は、左右の両方が痛むことが多く、症状は「圧迫されるような」「締め付けられるような」と表現されます。日本の研究では、年間に20%の人が症状を感じると言われています。 頭や首の筋肉を押すと痛みがみられることが特徴的です。 症状 ・圧迫されるような ・締め付けられるような 偏頭痛の治療法 痛みが出ているときは解熱鎮痛剤が有効です。予防には抗うつ薬やリラクゼーション、鍼灸などが有効です。 3)三叉神経・自律神経頭痛とは 三叉神経・自律神経頭痛の中にも細かな分類がありますが、群発頭痛が最も一般的です。 かなり強い痛みが、目の周囲もしくはこめかみに発生し、15~180分持続することが特徴です。10万人あたり56~400人程度の方が罹患し、男性に多いと言われています。 三叉神経・自律神経頭痛の治療法 治療には、酸素投与と、片頭痛でも使用される薬でトリプタンの効果が高いです。 症状 ・目の周囲に強い痛み ・こめかみに強い痛み 二次性頭痛とは 頭痛の約20%が二次性頭痛、つまり他の病気により引き起こされている頭痛と推定されています。症状を抑えるために解熱鎮痛薬などを用いることはありますが、治療の基本は原因の病気の治療となります。 ここでは一部の疾患を説明します。 脳血管障害 脳出血やくも膜下出血では、頭痛が起こることがあります。血管が裂ける、詰まることで起こる病気なので、症状も突然生じます。意識の低下や手足の動かしにくさ、話しにくさ、嘔吐を伴います。 生命の危機や重い後遺症も起こりうる、緊急度の高い頭痛です。 感染症 菌やウイルスが脳や全身で炎症を引き起こすことで、生じる頭痛があります。感冒(風邪)はウイルス性の上気道炎であり、頭痛を感じたことがある人は多いでしょう。 重篤なものでは、髄膜炎や脳炎があります。発熱、吐き気、意識の低下を伴うことが多いです。 頭痛というと軽く見がちですが何か違和感を感じるようであれば医療機関でご相談させれることをお勧めします。 目、鼻などの病気 急性副鼻腔炎の症状は「頭が重い」と表現されることが多いですが、それを痛みとして感じる場合もあります。 緑内障発作は目のかすみ、目の充血を特徴とする痛みであり、放置しておくと失明の危険もあります。 う歯(虫歯)の痛みを頭痛として自覚される方もいます。 頭痛についてよくあるQ&A Q , どのような頭痛の時に受診したらよいですか? A , 突然に(何時何分何秒がはっきり言えるような)最大の痛みとなった頭痛、話にくさや手足の動かしにくさを伴う頭痛、これまでに経験したことのないような頭痛、意識が低下している頭痛は、二次性頭痛の可能性があります。必ず受診を検討しましょう。 Q , 頭痛が出たら鎮痛剤は飲んでもよいですか? A , 手持ちの鎮痛薬がある場合は内服して構いません。鎮痛剤内服で診断が遅れることはほとんどありません。 ただし、頻繁に内服をしていると薬物乱用頭痛という新たな頭痛の原因となります。鎮痛剤を飲みたくなる頭痛が続く場合は受診を検討しましょう。 まとめ・頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 今回の記事では、頭が痛い時や、重いときについて、頭痛の種類と、症状、治療法などを解説しました。 頭痛は多くの人にとって日常生活で直面する問題です。 頭痛には、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があり、それぞれ適切な対処法を選択することが大切です。 まず、一次性頭痛には。「偏頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経頭痛」があり、それぞれの症状と治療法を知ることで対処方法を理解することで日常生活の質(QOL)を向上させることができます。 偏頭痛には、解熱鎮痛剤が効果的ですが予防には、抗てんかん薬や抗うつ薬が用いられます。緊張型頭痛の場合、解熱鎮痛剤や抗うつ薬、リラクゼーション、鍼灸も有効です。 三叉神経・自律神経頭痛は、酸素投与やトリプタンと言われる薬が効果的です。二次性頭痛は他の病気により発生するものですので原因となる疾患の治療を最優先にしましょう。 尚、脳血管障害や感染症、目や鼻の疾患などが頭痛の原因となることもあります。頭痛というと、ありふれた症状ではありますが、時に生命に関わる病気が隠れていることがあるため注意が必要です。 また、そのような疾患がなくとも、一次性頭痛はQOLに大きく関わるので、困ったことがあれば医療機関に相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S117 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭に関するご心配は、以下も参考されませんか 頭のこぶのようなものを押すと痛いとき、考えられる疾患とは?
最終更新日:2024.04.25