腸脛靭帯炎(ランナー膝)治療のストレッチ、テーピングと靴選びについて
目次
腸脛靭帯炎(ランナー膝)治療のストレッチ、テーピングと靴選びについて
腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)って聞きなれない言葉ですよね。そもそも読み方が分からない人もいるのではないでしょうか。
しかし、意外と腸脛靭帯炎で悩んでいる方が多いのが実情です。特に有酸素運動の代表格であるランニングや、ジョギングなどをやり始めた人に多くみられます。
動けないほど酷くはないけど…なってしまうと悩まされる…そんな腸脛靭帯炎についてお話します。
「腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)」とは?
この病気がどのようなものか説明するには腸脛靭帯について知る必要があり、簡単にお伝えします。
腸脛靭帯とは、骨盤の外側に出っ張っている腸骨(ちょうこつ)から、膝下にある脛骨(けいこつ)に繋がっていて太ももの外側部分に長く伸びるように位置しています。。
また、腸脛靭帯は大臀筋と大腿筋膜腸筋(だいたいきんまくちょうきん)という、これまた長くて難しい名前の筋肉とつながることで身体をぐらつかせることなく、更に身体を安定して保つという大切な役目を担っています。
膝上の太もも部分の外側を押すと、硬いスジ状のものに触れることができますが、これが腸脛靭帯になります。
特に大きな動きに対して大臀筋と呼ばれる大きな筋肉と大腿筋膜張筋とにつながることで、それらの力を脚に伝える役割があります。
腸脛靭帯の働きのおかげで骨盤や膝が安定し、歩くことは勿論、スムーズなランニングを助けてくれるという訳です。
そんな腸脛靭帯が炎症を起こした状態が『腸脛靭帯炎』というものになります。
「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん:ランナー膝)」とは
腸脛靭帯炎は、別名「ランナー膝」と呼ばれるくらい、「ランニングの愛好家にとって多いケガ」の一つです。ここでは腸脛靭帯炎の症状、原因、診断について簡単に説明します。
ご自身に当てはまる点はないか、チェックしてみましょう。
腸脛靭帯炎の症状
腸脛靭帯炎の初期症状は、運動後に膝の外側に痛みが出ることです。痛みが出る場所は、外側上顆(がいそくじょうか)と言われる膝外側の出っ張り部分です。痛みは安静にすることで治まってまいります。
しかし、炎症がひどい場合や、痛みを我慢して無理を続けた場合、歩いたり、膝を曲げ伸ばしをしただけでも痛みが出ることがあります。久しぶりにランニングやジョギング、ウォーキングを頑張った人によくみられる症状です。
「さぁ、健康のために頑張って走ろう!!」という矢先につまずいてしまうと、やる気も削がれかねません。
腸脛靭帯炎の原因
なぜ腸脛靭帯炎は、ランナーに多いのでしょうか?それは、腸脛靭帯炎になってしまうメカニズムでご説明いたします。
腸脛靭帯炎の発生メカニズム
腸脛靭帯炎は、繰り返される『摩擦』によって生じます。摩擦が起こる場所は、大腿骨の外側上顆という場所です。そこは骨が隆起しており、膝を曲げ伸ばしすることで腸脛靭帯が外側上顆を乗り越えてしまいます。
特に膝を軽く曲げた状態(屈曲30°くらい)でちょうど乗り越えるため、ランニングのように、0〜30°くらいの曲げ伸ばしを繰り返すことで摩擦がかかりやすくなってしまうのです。
骨盤や下肢のアライメント(骨の位置関係)によってより負荷がかかる
ただ、もちろんですがランナー全員が腸脛靭帯炎になるわけではありません。なってしまう理由は他にもあります。下記のような股関節の機能や骨の位置関係を乱すアライメント異常が腸脛靭帯炎を誘発してしまうとも言われています。
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腸脛靭帯炎の診断
腸脛靭帯炎は、問診や触診である程度は鑑別することができます。ただ、炎症の状態や他の疾患と見分けるためにレントゲンやMRI、エコー検査が必要なことがあります。
また、腸脛靭帯炎には、特有のテストがあります。それが「Grasping Test(グラスピングテスト)」というものです。やり方は、難しくありませんので、もしかしたら腸脛靭帯炎かもしれない、と思われた方は、お試してださい。
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腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療3つのポイント
腸脛靭帯は、足首や他の膝の靭帯と違い、断裂など重症化するケースはほとんどありません。そのため、基本的には普段と同じような生活を送っていただいて結構です。
①腸脛靭帯炎の初期対応
原因がランニングなどスポーツによるものであれば、その症状が落ち着くまでお休みされるようオススメします。
腸脛靭帯そのものや、その周囲の滑液包(摩擦を減らす袋のようなもの)に炎症が起こるため、炎症をおさえるお薬や、局所に注射をする場合もあります。
場合によっては、患部にアイシングや湿布を貼付することで症状の緩和が得られます。特に急性期では患部の安静と炎症を抑えることを最優先させましょう。
②腸脛靭帯炎に有効なストレッチ
腸脛靭帯炎による痛みが落ち着いたら、徐々にストレッチを開始します。
腸脛靭帯炎を発症する人の特徴として、身体のケア不足により筋肉の伸び縮みの動きが悪くなっていることがあります。ここでは、腸脛靭帯と連結している大腿筋膜張筋と股関節および大腿部前面の筋肉の3つのストレッチ方法をお伝えします。
1.大腿筋膜張筋のストレッチ各ストレッチは、無理をせず、痛くなりすぎない範囲で行いましょう。 2.股関節前面の筋肉のストレッチ3.大腿部前面の筋肉のストレッチ |
③腸脛靭帯炎にならないためのトレーニング
前に下肢のアライメント(ゆがみ)の異常により腸脛靭帯炎になりやすいことは前述しました。
股関節の筋力の低下や足元のぐらつきにより、ランニング時に膝が内外にぐらつくと腸脛靭帯への摩擦が増加してしまいます。安静期間により症状が落ち着いても、同じような状態だとまた腸脛靭帯炎を繰り返してしまうでしょう。
そのため、ランニングなどのスポーツに復帰するにあたり、腸脛靭帯への負荷を減らすためのトレーニングを推奨しています。ここでは以下の3つの方法を紹介します。
各トレーニングは、やみくもに動かすのではなく、いずれも体を安定させ、姿勢を意識して行うことがポイントです。
1,股関節の外側の筋肉:大臀筋、中臀筋上になっているほうの足を持ち上げる→下ろす を繰り返す 2,股関節の内側の筋肉:内転筋下になっている方の足を持ち上げる→下ろす を繰り返す 3,ふくらはぎの筋肉:下腿三頭筋(ヒラメ筋、腓腹筋)つま先立ち→かかとを降ろす を繰り返す |
腸脛靭帯炎(ランナー膝)とスポーツとの関係
腸脛靭帯炎のテーピングで大事なことは、腸脛靭帯の負担を減らしてあげることです。そのため、腸脛靭帯自体をサポートするテーピングと、膝の動きをサポートするテーピングの2種類を用いて行います。
腸脛靭帯炎のテーピング
あくまでテーピングは補助的な役割にしか過ぎません。また、その人によってテーピングの効果が十分に発揮できない場合もあります。
可能な限り、専門の医療機関にご相談のうえ、「テーピング」を施行するようにしましょう。このようなテーピング以外も「サポーター等の装具」を用いて腸脛靭帯を支え、安定を図る方法もあります。
腸脛靭帯炎と靴(シューズ)選び
腸脛靱帯炎の対策の中では靴選びも大切です。
足が左右にぐらつくと腸脛靱帯につながる大腿筋膜張筋が頑張ってぐらつきを止めようとします。
そうすると、筋肉が過剰に働き、ピンと張った状態になります。その状態で走り続けると、腸脛靭帯への摩擦が助長されて腸脛靭帯炎を引き起こしかねません。
シューズ選びの際は以下の3つのポイントを意識してみましょう。
靴は使用に伴い消耗します。定期的、或いは、いま一度ご自身の靴をチェックして自分に合った最適な靴を選びましょう。
1.シューズの後ろ、カップの部分がしっかりしているか2.指の付け根で曲がるのか3.シューズが過度に捻じれやすくなっていないか |
まとめ・腸脛靭帯炎(ランナー膝)治療のストレッチ、テーピングと靴選びについて
今回は、腸脛靭帯炎について、病態や、ストレッチ、テーピング、靴選びという角度から、その対策をお話しました。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)は、ランニングやスポーツをする人に多い症状ですが、正しい対処法を知っていれば予防や治療が可能です。まずは症状や原因を理解し、痛みが出た場合には早めの対処が重要です。
初期の対応としては、炎症を抑えるための安静やストレッチ、適切なテーピングが有効です。また、腸脛靭帯炎を予防するためには、股関節やふくらはぎの筋力を鍛えるトレーニングや、適切な靴選びも重要になります。
日常生活での意識や対策を行い、ランニングやスポーツを安全に楽しむために、ストレッチをはじめ、適切なケアを心がけましょう。
腸脛靭帯炎は誰にでも起こりうるケガです。これから運動を始める人も、ランニング愛好家の皆さんも運動前の準備運動、そして運動後のカラダのケアをしっかり行いながら、自分に合ったペースで頑張りましょう。
当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
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