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- スポーツ外傷
「物をつかんだら突然肘に圧迫するような痛みが走った」 「テニス肘であるかどうかを判断する方法はある?」 テニス肘は「ものをつかむ」などの何気ない動作で発症することがあります。発症するまでに特定の動作を繰り返し、肘に微細な損傷が蓄積されたことが原因です。 本記事では、テニス肘を突然引き起こす原因をはじめとして以下を解説します。 突然の痛みを誘発する動作 テニス肘であるかを判断するポイント 応急処置の方法 予防のためのストレッチ テニス肘と間違えやすい病気 テニス肘は適切な治療をしないと痛みが長引き、日常生活に支障をきたす場合もあります。本記事をテニス肘であるかどうかの判断材料にしてください。 なお、テニス肘の治療法には、再生医療という選択肢があります。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 テニス肘について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 テニス肘は突然発症する?主な症状と特徴 テニス肘は特別無理な動作をしたわけでもないのに、突然発症することがあります。例えば「物をつかもうとしたら突然肘の外側に激痛が走った」というようなケースです。 テニス肘を発症すると、肘関節の外側に圧迫するような痛みや前腕に痛みが現れます。軽症である場合は、安静にしていると痛みはありません。一方、重症になると安静にしていても、痛みが現れることがあります。 テニス肘は安静や痛み止めにより自然治癒することもあります。しかし、痛みが強い場合や症状が治まらない場合は、重症の恐れがあるため医療機関を受診してください。 テニス肘を突然発症する原因とは? テニス肘の原因は、仕事や家事、スポーツなどにおける特定の動作の繰り返しです。 以下のような一見すると大きな負担が無さそうな動作も、繰り返し行うことでリスクが高まります。 ネジやボルトを締める ハサミを使う キーボードを打つ マウスを操作する 塗装をする ドアノブをひねる これらの動作を繰り返すことで、目に見えないほどの微細な損傷が腱に起きて、肘が過敏な状態になってしまいます。この状態に特定動作による負担が加わることがきっかけで、テニス肘を発症します。 テニス肘による突然の痛みを誘発する動作 以下のような動作は、突然の肘の痛みを誘発する恐れがあります。 テニスのプレー中にバックハンドで打ち返す 肘を伸ばして物を持ち上げる 重い物を持ち上げる タオルを絞る これらの動作は発症後の痛みを誘発するだけではありません。肘の腱に損傷を与える恐れがあるためテニス肘を発症する原因にもなります。 突然の肘の痛みがテニス肘であるかを判断するポイント 以下はテニス肘であるかどうかを判断する方法です。 テニス肘の判断方法 確認手順 肘の外側の痛みの確認 1.患部側(痛みのある肘)の肘を軽く曲げる 2.肘の外側の骨の出っ張り部分を押し痛みの有無を確認する Thomsen(トムセン)テスト 1.患部側の腕を前に出し、手の甲を上にして肘と手首を伸ばした状態にする 2.手を握り手首を上方向に反らした状態にする 3.反対側の手で、患部側の手首を下方向に曲げる抵抗を加えて痛みの有無を確認する (文献1) これらの方法を行った際に痛みを感じる場合は、テニス肘の可能性があります。 上記のテストは急激な動きや力を加えると、症状を悪化させる恐れがあります。ゆっくりとした動きまたは軽い力を加えるようにしてください。 突然発症したテニス肘の応急処置の方法 テニス肘を疑う突然の肘の痛みが現れたら、以下のような応急処置を行ってください。 応急処置の方法 詳細 1.安静に過ごす ・安静にして痛みが発生する動作は避ける ・スポーツはもちろんパソコン作業や重い物の運搬など、肘に負担がかかることは避ける ・ひねる動作にはとくに注意する 2.受傷部位を冷やす 1.氷水を入れたビニール袋やタオルで巻いた保冷剤を用意する 2.1回15分冷やす作業を1日2回行う 3.痛みや熱感がある間は冷却を続ける(通常1週間程度) (文献2) 痛みが強い場合や痛みが長引く場合は医療機関を受診してください。 テニス肘を突然発症させないためのストレッチ 以下のようなストレッチは、肘の柔軟性を高めてテニス肘の予防につながります。 予防のためのストレッチ 手順 腕の外側のストレッチ 1.手の甲を上にした状態で腕を前に出して肘を伸ばす 2.もう片方の手で伸ばした腕の指先を持ち、手前(上方向)に引っ張る 3.そのまま腕を少しずつ下ろす 腕の内側のストレッチ 1.手の平を上にした状態で腕を前に出して肘を伸ばす 2.もう片方の手で伸ばした腕の指先を持ち、手前(下方向)に引っ張る 3.そのまま腕を少しずつ下ろす それぞれ左右交互に行ってください。強度は伸ばして心地良い程度で十分です。仕事や家事を行うなかで、1〜2時間に1回のペースでストレッチを行うと良いでしょう。(文献3) テニス肘と間違えやすい他の病気 以下のような病気は、肘に痛みが現れるためテニス肘と間違えやすいです。 テニス肘と間違えやすい病気 特徴 ゴルフ肘(内側上顆炎) 肘の内側から前腕にかけて痛みが現れる 橈骨神経管症候群 肘の外側に電撃痛(電気が走るような痛み)が現れる 変形性肘関節症 肘の痛みや肘の曲げ伸ばしの制限が現れる それぞれの詳細を解説します。 ゴルフ肘(内側上顆炎) ゴルフ肘はテニス肘とは違い、発症すると肘の内側から前腕にかけて痛みが現れます。ゴルフに必ずしも関係するわけではありません。腕を内側にひねったり、手首を曲げたりを繰り返すことで、腱に負担がかかり発症します。 テニス肘と同様に以下のような動作は、痛みの誘発または発症の原因になります。 肘を伸ばして物を持ち上げる タオルを絞る 肘の内側にある神経に損傷が及ぶと、薬指や小指にしびれが現れることもあります。 橈骨神経管症候群 橈骨神経管症候群(とうこつしんけいかんしょうこうぐん)とは、外傷や良性の脂肪腫、骨の腫瘍などにより肘の神経が圧迫されることで発症する病気です。発症すると、肘の外側に電撃痛(電気が走るような痛み)が現れます。 症状の特徴は以下の通りです。 前腕の上部、手の甲、肘の外側に痛みが現れる 刺すような、突くような痛みが現れる 手首や指をまっすぐに伸ばすと痛みが現れる 橈骨神経管症候群は、装具による保存療法やときには手術により神経への圧迫を除去する適切な治療が必要です。疑われる症状が現れている場合は、医療機関を受診してください。 変形性肘関節症 変形性肘関節症とは、肘の関節が変形してしまう病気です。老化や肘の使い過ぎなどが発症の原因です。 具体的な原因としては、以下が挙げられます。 野球の投球動作 テニスラケットを振る動作 重い物を運搬する作業 肘の痛みや肘の曲げ伸ばしの制限などの症状が現れます。装具を用いた保存療法やリハビリテーションによる治療が必要です。日常生活に支障をきたす場合は手術を検討します。疑われる症状が現れている場合は、医療機関を受診してください。 まとめ|テニス肘を疑う突然の肘の痛みが現れたらまずは応急処置を テニス肘は、とくに無理をしたわけでもないのに突然発症することがあります。スポーツだけでなく、何気ない日常生活の動作の繰り返しで、腱に損傷が蓄積されることが原因です。 テニス肘の主な症状は、肘の外側に現れる圧迫されるような痛みです。テニス肘を疑う症状が現れたら、タオルで巻いた保冷剤等で1回15分冷やす作業を1日2回行い安静に過ごしてください。 「安静にしていても痛みが現れる」「痛みが強い」「症状が治まらない」ときは医療機関を受診しましょう。治療法として再生医療という選択肢もあります。再生医療が気になっている方は、当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) テニス肘、ゴルフ肘|慶應義塾大学病院 (文献2) 肘関節の痛み(テニス肘を中心に)|山口県テニス協会 (文献3) 今回は肘の痛みに注目!!|日本大学
2022.07.12 -
- ゴルフ肘
- 上肢(腕の障害)
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日常生活の何気ない動作で肘に違和感を覚えたことがある方も多いのではないでしょうか。 重い荷物の持ち運びや繰り返しの手作業を行うことで、肘の内側に痛みを感じることがあります。 ゴルフをしない方でもゴルフ肘を発症します。 正式には上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)と呼ばれ、肘の使いすぎによって炎症が起こる疾患の一つです。 本記事ではゴルフ肘の原因や症状、治療法について詳しく解説します。 近年注目されている、手術に頼らない治療法の再生医療や、自分でできるストレッチ法についても紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。 【基礎知識】そもそもゴルフ肘とは ゴルフ肘と呼ばれる病気の正式名称は「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」です。 上腕骨とは、肩から肘の間にある骨で、内側上顆は、肘の内側にあります。 上腕骨の内側上顆にある筋肉や腱に炎症が起こった場合に発症するのが「上腕骨内側上顆炎」つまり「ゴルフ肘」です。 ゴルフでクラブをスイングをした際、肘に痛みを感じることがあるため、ゴルフ肘と呼ばれるようになりました。 しかし、この疾患はゴルフに限らず、テニスなど他のスポーツ、さらには日常的な肘の使いすぎによっても発症することがあります。 ゴルフをしてない人がゴルフ肘になる原因 ゴルフ肘は、ゴルフをしている人だけが発症するものではありません。 実際には、手のひらを内側に向けて動かす動きや、物を握るような動きなど、腕のあらゆる動作が原因となり、ゴルフをしていない人にも発症することがあります。 ゴルフ肘の主な原因は、腕の使い過ぎ・筋肉量が少ないこと・ゴルフの3つです。 これらの原因について深掘りしていきます。 腕の使い過ぎ ゴルフをしていないにもかかわらず、ゴルフ肘を発症する原因の1つとしてあげられるのは、日常生活や仕事での腕の使い過ぎです。 手首や肘を頻繁に使う動作を繰り返す作業が多い場合、気付かないうちに肘へ過度な負担をかけてしまっている可能性があります。 たとえば、以下のような作業が伴う人は注意してください。 パソコンのキーボードを長時間打つ 重い荷物を持ち上げる 繰り返しの手作業を行う これらの動作は、肘の内側にある筋肉や腱にストレスを与え、ゴルフ肘を引き起こす原因となります。 さらに、家事や趣味での活動、庭仕事、DIYなどでも、同様に腕を酷使するため、ゴルフ肘を誘発する可能性があります。 加齢や筋肉量の少なさ ゴルフをしていないのにゴルフ肘を発症する原因には、加齢や筋肉量の少なさもあります。 年齢を重ねると筋肉や腱の柔軟性が低下し、回復に時間がかかりやすくなります。結果として、小さな負荷でも負傷しやすくなるのです。 また筋肉量が少なくても、日常の動作でも肘にかかる負担が大きくなり、ゴルフ肘を引き起こすリスクが高まります。 とくに、定期的な運動をしていない人や、筋力トレーニングを行っていない人は注意が必要です。 日常生活においても腕の使い過ぎを避け、適度な休息と運動を心がけることが重要です。 ゴルフをしている人でも発症可能性がある ゴルフ肘という名前から、ゴルフをプレイする人だけが罹患するものと誤解されがちですが、実はゴルフをしてない人でもゴルフ肘にかかる可能性は十分にあります。 ゴルフのスイング動作は、肘にかかる負担が大きく、繰り返しの動作によって筋肉や腱にストレスが蓄積されるため、ゴルフ肘の原因となります。 また、クラブの握り方やスイングの方法が正しくないと、肘に余計な力がかかりやすくなるため、注意が必要です。 ゴルフを始めたばかりの初心者から中級者に起きやすい症状のため、スイングフォームの見直しから始めましょう。 以下の記事では、ゴルフ肘を含めて急に肘が痛み始めた人向けに具体的な対策を解説しています。 ゴルフ肘の症状と診断方法 ここからは、ゴルフ肘の症状と診断方法について解説していきます。 ゴルフをしていない人も、肘の痛みを感じる場合はぜひご覧ください。 症状 ゴルフ肘の症状は、主に肘の痛みです。 痛みの程度や発生するタイミングは人によって異なりますが、重い荷物を持ち上げる際や、包丁を使うなどの繰り返し動作をしているときに痛みを感じることが大半です。 特に、腕や手首を頻繁に使う作業を続けると、症状が悪化することがあります。 テニス肘との違い ゴルフ肘とテニス肘の違いは、肘の痛みが「内側なのか・外側なのか」の違いです。 多くのケースでゴルフ肘は内側で、テニス肘は外側で痛みを感じます。また、発症頻度の違いもあり、テニス肘を罹患されるケースが多い傾向にあります。 しかし、発症の原因となったスポーツで病名が決まっているわけではありません。ゴルフ肘もテニス肘も、正式名称は「上腕骨外側上顆炎」です。 あくまで原因となったスポーツの名称からの名残りとして呼ばれていると把握しておきましょう。 テニス肘については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 診断方法 ゴルフ肘は、いわゆる肘の使い過ぎによって起こる病気です。 そのため、医師の診察でも、肘の曲げ伸ばしを日常的に繰り返ししているが診断の材料になります。診察では「誘発試験」と呼ばれる身体検査をおこないます。 具体的な誘発試験流れは、以下の通りです。 手のひらを上に向けた状態でテーブルの上に置く 医師が手首を押さえ、手首を上に向けてあげようよう指示をする 肘の内側が痛くなるならゴルフ肘が疑われる 他にもレントゲン検査や、超音波検査、MRI検査などの画像検査で総合的な診断も可能です。 ゴルフ肘の治療法 ゴルフ肘の治療法は、痛みの重症度によって異なります。 保存療法 手術療法 再生医療 これらの治療法についてそれぞれ詳しく解説します。 保存療法 ゴルフ肘の保存療法で実施されている方法は、主に以下の通りです。 安静にする 患部を冷やす テーピングや肘用ベルトを使用して負担を軽減する 鎮痛剤・湿布で痛みや炎症を抑える 安静にしても痛みが改善されなかった場合は、薬物療法や注射療法、理学療法などを実施します。 ステロイド薬の使用や痛み止めの服用をしながら、患部に湿布を貼って治療する方法が、初期段階の治療法です。 手術療法 ゴルフ肘の痛みが収まらない場合や重症の場合は、手術療法が選択肢としてあげられます。手術によって損傷した組織の修復や除去を行うことで、痛みが改善される場合が多いです。 ただし、手術には感染症などの合併症が生じるリスクもあるため、慎重な判断が求められます。 再生医療 再生医療ではPRP療法(血小板豊富血漿療法)を用いることで、腱に悪影響を与えることなく、痛みを軽減できます。 PRP療法では、患者様自身の血液から抽出した血小板を患部に注入することで、腱の修復を促進します。 再生医療は手術を必要とせず、回復期間の短縮を目指せる点がメリットです。 詳細については以下のリンクからご確認ください。 ゴルフ肘を自分で治すストレッチ法 日々忙しく医療機関での受診が難しい人に向け、おすすめのストレッチ法を紹介します。 【腕前面のストレッチ】 片方の腕を前方に伸ばし手のひらを上に向ける 反対の手で伸ばした手を添える 添えた手を手前に引く もう片方の腕も実施する 肘の筋肉を伸ばすストレッチになるので、休憩時間に実施してみてください。 今回紹介したストレッチ以外にも、以下の記事で網羅的にまとめているので、あわせてご覧ください。 まとめ・ゴルフ肘の症状がある人は早めに受診しよう ゴルフ肘は、ゴルフをしていない人でも起こりうる病気です。 早く治すためには、早期の発見と治療が大切です。 治療が遅れると悪化し、結果として手術を選択しなければならないケースもあるので「この程度なら」との自己判断は禁物です。 「自分はゴルフをしないから大丈夫だ」と考えず、肘に違和感を感じたら、すぐに医師の診察を受けましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、お気軽にご相談ください。
2022.06.16 -
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- 肘関節
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「テニスをしていないのにテニス肘は発症する?」 「テニス以外でテニス肘を発症する具体的な原因は?」 テニス肘はテニスをしていなくても発症します。テニス以外のスポーツやパソコン作業、重い物の運搬などにおいても肘に負担がかかるためです。 本記事では、テニスをしてないのにテニス肘を発症するのかどうかをはじめとして以下を解説します。 テニス以外のテニス肘の原因 テニス肘であるかを判断する方法 テニス肘を発症した際の応急処置 テニス肘を予防する方法 普段の何気ない動作を少し工夫するだけで肘への負担を軽減できます。予防法を含めてテニス肘について理解を深めるために役立ててください。 なお、テニス肘の治療法には再生医療という選択肢があります。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 テニス肘について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 テニスをしてないのにテニス肘は発症する? テニス肘はテニスをしていなくても発症します。 テニス肘は正式には「上腕骨外側上顆炎」といい、手や手首を繰り返し使うことによって肘の外側に痛みが生じる症状です。テニス選手に多く見られることから「テニス肘」と呼ばれていますが、実際にはテニスをしない人も発症します。 例えば、テニス以外の以下の動作を繰り返すことで、テニス肘を発症するリスクが高まります。 ネジやボルトを締める 塗料を塗る 肉の塊を切る ハサミを使う マウスの操作をする キーボードを打つ これらの動作を繰り返すと、肘の腱に微細な損傷が蓄積した状態になります。この状態に特定の負担が加わると、痛みが走りテニス肘を発症してしまいます。 テニスをしてない方がテニス肘を発症する原因 テニス以外でテニス肘を発症させる主な原因として、以下のようなものが挙げられます。 テニス以外のスポーツ パソコン作業 重い物の運搬 家事全般 それぞれの詳細を解説します。 テニス以外のスポーツ テニス肘を発症する割合は、テニスをしている方に多い傾向です。 しかし、以下のようにテニス以外のスポーツでもテニス肘は発症します。 スポーツ種目 発症割合(スポーツ愛好家536人を対象) テニス 32% ゴルフ 30% バレー 13% バドミントン 7% 野球・ソフトボール 6% 卓球 3% その他 9% (文献1) 以上のようにテニス肘は、肘に負担がかかるスポーツ全般において発症するリスクがあります。 パソコン作業 近年では、デスクワーク勤務者のテニス肘の発症割合が高いです。実際にテニス肘を発症した有職者792人のうち、32%がデスクワーク勤務者であるとの報告があります。(文献1) デスクワークのパソコン作業で、前腕の外側の筋肉に強い緊張がかかることが、テニス肘の発症の原因です。 とくに以下に該当する場合は、テニス肘を誘発する恐れがあります。 長時間パソコン作業をする方 キーボードを強く打つ方 マウスを強く握る方 「手首付近にクッションを置く」「ノートPCの場合は自分の手前に置く」などの工夫により、肘への負担を軽減できます。 重い物の運搬 重い物を運搬する職種や腕に負担がかかる職種は、テニス肘を発症する割合が高いです。 実際に以下のような報告があります。 職種 発症割合(有職者792人を対象) 重量物を運搬する業種 15% 酪農・林業・農業 9% 介護職 8% 包丁を使う業種(料理人や食肉業者など) 8% (文献1) その他にも、保育士や製造業、看護師、美容師、建築業なども発症割合が多いと報告があります。 家事全般 家事全般は肘に負担がかかる作業が多いため、テニス肘を発症するリスクがあります。 肘に負担がかかる作業の一例は以下の通りです。 タオルを絞る フライパンを持つ 掃除機をかける テニス肘の発症頻度における男女比は明らかにされていません。しかし、家事をする主婦に多いとの報告もあります。(文献2) テニスをしてない方がテニス肘かどうかを判断する方法 以下はテニス肘であるかどうかを判断する方法です。 テニス肘の判断方法 確認手順 肘の外側の痛みの確認 1.患部側(痛みのある肘)の肘を軽く曲げる 2.肘の外側の骨の出っ張り部分を押し痛みの有無を確認する Thomsen(トムセン)テスト 1.患部側の腕を前に出し、手の甲を上にして肘と手首を伸ばした状態にする 2.手を握り手首を上方向に反らした状態にする 3.反対側の手で、患部側の手首を下方向に曲げる抵抗を加えて痛みの有無を確認する 中指伸展テスト 1.患部側の腕を前に出し、手の甲を上にして肘と手首を伸ばした状態にする 2.手を開き指を伸ばした状態にする 3.反対側の手で、患部側の中指を下へ押さえ抵抗を加えた際の痛みの有無を確認する (文献3) いずれかの方法を実施して痛みを感じる場合は、テニス肘を発症している可能性があります。 上記のテストは急激な動きや力を加えると、症状を悪化させる恐れがあります。ゆっくりとした動きまたは軽い力を加えるようにしてください。 テニス肘を疑う症状が現れた際の応急処置 テニス肘を疑う痛みが現れたら、以下のような応急処置を実施してください。 応急処置の方法 詳細 1.安静に過ごす ・安静にして痛みが発生する動作は避ける ・スポーツはもちろんパソコン作業や重い物の運搬など、肘に負担がかかることは避ける 2.受傷部位を冷やす 1.氷水を入れたビニール袋やタオルで巻いた保冷剤を用意する 2.1回15分冷やす作業を1日2回行う 3.痛みや熱感がある間は冷却を続ける(通常1週間程度) テニス肘を発症したら安静を保つのが基本です。とくにひねる動作には注意してください。痛みや熱っぽさが続くうちは冷やす処置を続けます。痛みが強い場合や痛みが長引く場合は、医療機関を受診してください。 テニスをしてない方がテニス肘を予防する方法 テニス肘は再発を繰り返すことがあります。 以下のような方法で予防に努めましょう。 肘に負担がかかる動作は避ける ストレッチを取り入れる 筋力トレーニングを取り入れる それぞれの詳細を解説します。 肘に負担がかかる動作は避ける テニス肘を予防する基本的なこととして、できるだけ肘に負担をかけないことが大切です。 例えば、家事においては以下のような工夫をすれば肘への負担を軽減できます。 フライパンや鍋は持ち上げずにコンロに置いて使う 掃除機をかけるときは腕を伸ばしすぎないで手前でかける 物をつかむときは、小指側でしっかり握り親指と人差し指は軽く握る 肩や腕に力を入れすぎない 近年では、スマートフォンやパソコンの普及により、肘に負担がかかりやすくなっています。パソコン作業やスマートフォンを使用する際は、長時間同じ姿勢にならないように工夫してください。 ストレッチを取り入れる 仕事や作業の間に、以下のようストレッチを取り入れることでテニス肘の予防につながります。 予防のためのストレッチ 手順 腕の外側のストレッチ 1.手の甲を上にした状態で腕を前に出して肘を伸ばす 2.もう片方の手で伸ばした腕の指先を持ち、手前(上方向)に引っ張る 3.そのまま腕を少しずつ下ろす 腕の内側のストレッチ 1.手の平を上にした状態で腕を前に出して肘を伸ばす 2.もう片方の手で伸ばした腕の指先を持ち、手前(下方向)に引っ張る 3.そのまま腕を少しずつ下ろす 1〜2時間に1回のペースで行うと効果的です。仕事や家事の間に息抜きとして取り入れましょう。 筋力トレーニングを取り入れる 腕全体の筋肉を鍛えることは、テニス肘の予防につながります。 例えば、以下のような前腕を鍛えるトレーニングがあります。 膝を床に付き、椅子に右手のひらが上を向くように手首から肘を置く 右手で水の入ったペットボトルを握り手首を下に反らせる 左手で右の前腕を押さえる 手首と前腕を使いゆっくりペットボトルを上げ下げする 左右両方15〜20回ほどを3〜5セット行う その他にも、腕立て伏せを取り入れても良いでしょう。テニス肘を発症しているときに筋力トレーニングを行うと悪化する恐れがあります。テニス肘が治癒してから実施してください。 まとめ|テニス肘はテニスをしていなくても発症する!原因を理解して予防しよう テニスをしてない方でもテニス肘は発症します。原因はテニス以外のスポーツやパソコン作業、重い物の運搬、家事全般などさまざまです。 原因を理解すれば予防につなげられます。例えば、主婦であれば「掃除機をかけるときは腕を伸ばしすぎないで手前でかける」など、肘に負担がかからないように工夫をしましょう。 テニス肘を疑う痛みが現れたら、安静に過ごすことが基本です。受傷部位をタオルで巻いた保冷剤などで1回15分冷やす作業を1日2回は実施しましょう。 痛みが強い場合や痛みが長引く場合は医療機関を受診してください。治療法として再生医療という選択肢もあります。再生医療が気になっている方は、当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 上腕骨外側上顆炎2800肘の疫学的研究およびその本態に関する考察|日本肘関節学会 (文献2) 第3章 上腕骨外側上顆炎の 原因、なりやすさなど|日本整形外科学会 (文献3) 7. テニス肘(上腕骨外側上顆炎)|日本手外科学会広報委員会
2022.06.08 -
- 肘関節
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関節ねずみ(関節遊離体)による痛みの改善にはクリーニング手術という選択肢があります。 クリーニング手術を受けることで悩まされていた痛みから解放されて、日常生活やスポーツを楽しめます。 とはいえ、いったいどのような手術なのか、どれくらいの日数や費用がかかるのか、不安に思う方も少なくないでしょう。クリーニング手術の内容や適応、経過について本記事にて詳しく説明していきます。 クリーニング手術とは? クリーニング手術とは、関節内に遊離した軟骨成分や骨成分のかけら(関節ねずみ)、また新たに形成された骨棘(骨にできるトゲのような突起)を関節鏡を使って取り除く手術方法です。 関節ねずみと呼ばれる遊離体はただ存在しているだけでは無症状ですが、関節内が挟まると曲げ伸ばしに障害が出たり、強い痛みが出現したりします。 症状が強い人やスポーツに支障が出ている方は、整形外科でのクリーニング手術が推奨されます。 関節ねずみ(関節内遊離体)の治療法 クリーニング手術は関節ねずみに対して行う手術ですが、関節ねずみが確認されたとしても経過観察になることがあります。 関節運動への影響が少ない場合は経過観察になることもあります。 動かしても痛みがない 骨軟骨片が完全に剥がれておらず安定している 上記のような状況では、荷重制限や運動制限などの保存療法が選択される場合があります。ただし、関節ねずみは移動するため、痛みが生じる部位や強さは場合によりさまざまです。 病状が進行し、スポーツや生活に支障がある場合は手術での治療も検討しましょう。 野球選手がなりやすい野球肘の治療にも有効 野球肘とは、投球動作を繰り返し行うことで発症する肘の障害です。離断性骨軟骨炎や軟骨損傷、靭帯損傷、将来的に合併する可能性が懸念される変形性肘関節症などを含めた複数の病態を示しています。 長年に渡る投球動作により少しずつ骨や軟骨部分に変形が起こったり、関節ねずみが形成されたりし、肘関節の屈伸運動の困難さや痛みが出現します。症状が進行し、安静時でも痛みが続く場合や、痛みが引いても再び痛みが出てしまう場合は、クリーニング手術を検討してみると良いでしょう。 部位別のクリーニング手術法 クリーニング手術は主に、肘関節や膝関節の遊離体に対して行われますが、肩関節や足首の関節に対しても適応となる場合があります。 ここでは、部位別のクリーニング手術の特徴をそれぞれ解説していきます。 肩関節に対するクリーニング手術 肩関節に対するクリーニング手術(鏡視下滑膜切除)は、肩の痛みの原因となっている組織を取り除くために行われます。MRIなどでは確認できなかった病変を直径2〜10mmの細長いビデオカメラを手術部位に挿入して、映像を確認しながら行う手術方法です。 野球による投球障害で関節唇(かんせつしん)に損傷がある場合 リウマチなどによる炎症が滑膜(かつまく)にある場合 痛みで夜も眠れない場合 上記のような状況がクリーニング手術の適応となり、術後は痛みが軽減する可能性があります。手術時間は1時間程度と短時間で完了するため、体への負担は少なく済むでしょう。 肘関節に対するクリーニング手術 肘関節に対するクリーニング手術は、関節ねずみの除去(鏡視下遊離体摘出術)やとげのように変形した軟骨の切除(鏡視下骨棘切除)などが実施されます。投球動作などで肘関節を酷使する野球選手に実施されることが多いです。 全身麻酔下で行われ、肘を小さく切って細い関節鏡と手術器具を挿入し、肘部の痛みや引っ掛かりの原因となっている病変部位を切除・摘出します。 通常、1~2時間にて完了し、術後2週間程度から日常生活動作への制限が緩和されます。 膝関節に対するクリーニング手術 膝関節に対するクリーニング手術は、加齢などによって起こる変形性膝関節症に対して適応です。擦り切れた半月板や遊離軟骨、骨棘、増殖した滑膜などを除去し、痛みや歩行能力が改善できます。 切る範囲が小さく済むため、傷が目立たない点や術後の入院期間が短くなるのが特徴です。 変形性膝関節症の中でも、クリーニング手術で改善するのは軽症レベルで、重度になるとクリーニング手術では対応が難しくなります。重症の場合は別の手術が必要となるため、症状に合った手術を選択しましょう。 足首に対するクリーニング手術 足首に対するクリーニング手術は、変形性足関節症に対して実施されることがあります。 関節鏡を見ながら原因となっている骨棘や滑膜、遊離軟骨などを除去し、足首の関節可動域拡大や痛みの改善が目的です。 他の部位と同様に、足首の関節周囲を小さく切り、関節鏡と手術器具を挿入して手術を行います。 クリーニング手術後に復帰までの期間 クリーニング手術後、復帰までにかかる期間はそれぞれの状態や手術内容、手術部位によって異なります。 日常生活への完全復帰は手術後2~3か月程度、スポーツの再開は3~6か月程度が復帰の目安です。手術直後は安静にして痛みや腫れを改善に努め、約2週間後から関節運動を開始していきます。 2カ月ほど経過したら、症状を見ながら軽めのトレーニングを開始し、本格的な競技復帰に備えていきましょう。 復帰までの期間はあくまで目安であり、術後の経過やリハビリの効果などは個人差があります。クリーニング手術後の復帰時期は医師と相談しながら決めていきましょう。 クリーニング手術にかかる費用 クリーニング手術にかかる費用の目安は20~30万円程度です。手術を行う部位や医療機関、入院期間、細かな手術内容によって費用は異なるので注意しましょう。 手術前後の入院期間は4日間程度ですが、入院期間が延びれば部屋代や施設利用費なども増えていきます。手術前後の診察代やリハビリの料金も発生するため、正確な費用は各医療機関に問い合わせて確認してください。 まとめ|クリーニング手術は関節ねずみに対して有効な治療法 クリーニング手術は、関節ねずみによる痛みや可動域制限に対して効果のある治療方法です。手術にかかる費用は20~30万円、入院期間は約4日間と短く、日常生活や仕事への影響が少なく受けられます。 日常生活への完全復帰は2~3カ月、スポーツへの復帰は3~6カ月が目安の期間です。早く回復したい方や治癒力を高めたい方は再生医療の利用も検討してみましょう。 リペアセルクリニックでは、再生医療について無料電話相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。 クリーニング手術についてのQ&A クリーニング手術を検討されている方に向けて、よくある質問への回答をご紹介します。 最近、話題となっている再生医療や野球選手がよく受けているトミー・ジョン手術との違いについて説明していきますので、ご確認ください。 再生医療との関連性は? 最近注目されている再生医療とは、自然治癒力を最大限に引き出す医療技術です。 スポーツや仕事に早く復帰したいと希望される方は、クリーニング手術とPRP療法の併用を検討してみてください。 PRP療法は自分の血液から抽出した高濃度の血しょう成分を患部に注射する治療法です。プロアスリートの治療にも採用されている治療法で、治癒・再生速度を2~3倍以上速める効果が期待できます。 まれにない出血がみられることがありますが、数日間で自然消失します。症状が気になる場合は診察にお越しください。 トミー・ジョン手術との違いは? トミー・ジョン手術とは、損傷した肘の内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)を切除し、健康な腱の一部を肘の靭帯につなげる手術方法です。前腕部(肘から下の部分)や下腿(膝より下の部位)、お尻、膝から腱を摘出することが多く、大谷翔平選手も受けたことで有名になりました。 野球選手の場合は、競技復帰まで1年程度のリハビリが必要です。損傷部位である肘だけでなく、摘出してくる別の部位も切開する必要があるため、クリーニング手術よりも体への負担は大きくなります。
2022.04.25 -
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トミージョン手術という言葉をテレビや雑誌、新聞など情報を見たりした経験のある方も多いのではないでしょうか。 メジャーリーガーとして活躍する大谷翔平選手やダルビッシュ有選手が「トミージョン手術」を受けたことで一躍有名になった手術です。 本記事では「トミージョン手術とはどんな手術なのか」また、手術の成功率や競技への復帰率について詳しく解説します。 野球選手を始めとする肘の靱帯損傷にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。 また、肘の靱帯損傷といった「スポーツ外傷」を手術せずに治療できる方法として再生医療が注目されています。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療によるスポーツ外傷の症例や治療法について情報を配信中です。 「手術せずに治療したい」「早く治して競技復帰したい」という方は、ぜひご参考ください。 トミージョン手術とは? トミージョン手術とは、肘の内側にある損傷・断裂した靱帯を正常な腱の一部を移植して再建する手術のことです。 患者さまの体から摘出した腱を上腕骨と尺骨に作成した穴に通し、両端に適度な張力をかけた状態で固定します。 その後移植した腱は患部周囲に定着し、損傷した靭帯の代わりとして機能するようになるのです。 移植した腱が定着するまでに、ある程度の時間がかかるといわれており、長期的なリハビリによる加療を実践することが求められます。 トミージョン手術の費用 海外でトミージョン手術を受ける場合の費用は、100〜300万といわれています。 日本でトミージョン手術を受ける場合の費用は、保険適用で約15万〜30万円です。 手術費用は、保険適用の有無や医師の経験値によって大きく変動します。 入院にかかる費用やリハビリ代などを加算すれば総額はさらに高くなります。 トミージョン手術の成功率と競技復帰率 トミージョン手術の成功率や、野球選手の競技復帰率について紹介します。 トミージョン手術の成功率 トミージョン手術を受けた選手の競技復帰率 以下では、それぞれ詳しく解説していきます。 トミージョン手術の成功率と競技復帰率 トミージョン手術は、約80%~90%と比較的に成功率が高い手術です。 術式の由来でもあるトミージョン氏が手術を実施した1970年代は、手術自体の成功率は何と1%未満とされていました。 しかし、近年では医療技術の進歩により高い成功率を誇る手術として、多くの野球選手がトミージョン手術を受け、競技復帰を実現しています。 トミージョン手術を受けた野球選手の競技復帰率 トミージョン手術を受けた野球選手のポジション別の競技復帰率は、以下の通りです。 ポジション 復帰率 投手 80〜97% 捕手 59〜80% 内野手 76% 外野手 89% ※出典:PubMed メジャーリーグの投手を対象にした研究では、手術後12ヶ月で80〜97%が競技復帰したとされています。 投手と比べると肘への負担が少ない内野手や外野手は、投手よりも短い期間で競技復帰できているというデータがあります。 トミージョン手術を受けた野球選手一覧 大谷翔平選手やダルビッシュ有選手を始めとした日本のプロ野球選手がトミージョン手術を受けています。 2024年以降にトミージョン手術を受けた野球選手は、以下の通りです。 トミージョン手術は、名高い野球選手から多くの信頼を得ている手術方法といえます。 トミージョン手術が適応となる原因が野球選手に多い理由 野球の中でも、とりわけピッチング(投げる)という動作では、速球や変化球を何度も繰り返すことになり、肘に大きな負担を掛けるリスクがあります。 一般的に、野球競技で投球を繰り返すことで体幹や胸郭などのバランスが悪くなると肩や肘の力でサポートしたり、カバーしようと身体が反応し、意図せず働いてしまいます。 その際、上腕骨と尺骨を連結している肘関節部分に位置する内側側副靱帯に過剰な負担がかかり損傷が生じることがあります。 肘の靱帯が正常な状態の投手が、実際の投球中に靱帯をいきなり切ることはまずありません。しかし、小学生のころからプレーを続け、何度も繰り返される動作は負荷となって最初は小さなほころびでも積み重なることで切れてしまったり、大きな損傷となってしまうのです。 一部の整形外科医や球界関係者からは、肘の損傷の原因が投球フォームにあるという指摘もあります。いずれにしろ野球選手にとって避けては通れないスポーツ外傷というほかありません。 スポーツ外傷は「再生医療」の治療対象です。体内組織の自然治癒力を活用する医療技術で、手術による傷跡や後遺症のリスクを軽減できます。 以下の記事では、野球肘の予防に有効なストレッチを紹介しています。野球をする機会が多い方は参考にして、日頃のケアに役立ててみてください。 トミージョン手術後のリハビリについて リハビリは、大体2か月程度かけて肘関節の可動域を元の状態に復帰させていきます。 その上で日常生活レベルで支障なく肘を動かせるようになれば、今度は軽い負荷からのウェイトトレーニングを開始することになります。 野球選手の場合、競技復帰までに1年ほどのリハビリが必要です。 トミージョン手術を受けるメリット・デメリット トミージョン手術を受けるメリット・デメリットを以下にまとめました。 トミージョン手術を受けるメリット トミージョン手術を受けるメリットは、以下の通りです。 【トミージョン手術のメリット】 トミージョン手術の成功率:80~90%が実践復帰 トミージョン氏がこの手術を実施した1970年代は、手術自体の成功率が何と1%未満とされていました。 しかし、1986年から2012年までに本手術を実施された野球投手を調査した結果、約80%~90%もの人々が実戦復帰を果たしており手術の成功率が格段に向上しています。 この手術における成功率が向上した要因としては、手術そのものの技術的な進歩のみならず術後のリハビリテーションの知識と経験の蓄積が顕著な治療成績の改善を生み出したと考えられています。 トミージョン手術を受けるデメリット トミージョン手術を受けるデメリットは、以下の通りです。 【トミージョン手術のデメリット】 デメリット:手術後のリハビリ期間が1年~程度必要 デメリット:手術とリハビリからくる期間的リスク デメリット:合併症の危険性がある 通常ではトミージョン手術による治療からリハビリを含めて実戦復帰するためには約12か月から18か月かかると考えられています。 仮に実戦復帰できたとしても所属球団の方針によっては厳しく球数を制限されるかもしれません。 また、術中操作にともなう尺骨神経の障害は、トミージョン手術後の合併症において頻繁に起こる可能性があります。 肘の靱帯損傷には再生医療も選択肢の一つ https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=FHBxUKKQUmtK4hUY 肘の靱帯損傷やスポーツ外傷には、先端医療である再生医療も選択肢の一つです。 再生医療とは、さまざまな組織に変化する幹細胞を用いて、損傷した靱帯の再生・修復を図る医療技術のことです。 肘の靱帯損傷に対して高い成功率を誇るトミージョン手術ですが、手術の副作用のリスクや長期間のリハビリが必要となり、競技復帰まで時間がかかります。 再生医療では、入院が必要なほどの大きな手術をせずに肘の靭帯損傷の根本的な治療が期待できます。 また、患者さまの細胞のみを使用するため、拒絶反応やアレルギーなどの副作用が少ないのも特徴です。 「手術を避けて治療したい」「早く競技復帰したい」という方は、ぜひ再生医療による治療をご検討ください。 トミージョン手術に関するよくある質問 最後にトミージョン手術に関するよくある質問と回答をまとめます。 トミージョン手術が失敗する可能性はありますか? トミージョン手術は一般人でも受けられますか? トミージョン手術を受けたあと復帰までの期間はどれくらいですか? 靭帯損傷で手術以外の治療法はありますか? トミージョン手術が失敗する可能性はありますか? トミージョン手術の失敗確率は10〜20%程度といわれています。 約80〜90%もの人が実践復帰を果たすまでに回復するといわれており、失敗する確率は低い傾向にあります。 トミージョン手術は一般人でも受けられますか? トミージョン手術は一般の人でも受けられます。 しかし、プロの野球選手ほど受ける人が少ないといわれています。 リハビリに1年ほどかかり日常生活や仕事への影響が大きいほか、海外ほどトミージョン手術の名医が多くないためです。 スポーツや仕事で肘の腱や靭帯を損傷した方は、当院「リペアセルクリニックのドクター」にご相談ください。 患者さまの状態にあった治療方法をご提案させていただきます。 トミージョン手術を受けたあと復帰までの期間はどれくらいですか? 野球や仕事に完全復帰するまでには、約1年ほどかかります。 損傷の程度によっては、2年近くかかる場合もあります。焦って無理に肘を動かすと回復を遅らせる可能性があるほか、状態を悪化させるリスクも招きかねません。 担当医や理学療法士の指示・助言を守りながら、計画的にリハビリを進めましょう。 靭帯損傷で手術以外の治療法はありますか? 靭帯損傷の治療法の1つに「再生医療」があります。 再生医療とは、人間の組織や血液に含まれる自然治癒力を活用して、傷ついた靭帯を修復させる医療技術です。 注射を打つだけなので、手術のように傷跡が残ったり、長期のリハビリが必要になったりしません。 トミージョン手術を受けた大谷翔平選手も、再生医療で靭帯損傷の治療を受けています。 詳しくは以下の記事で紹介しているので、大谷翔平も受けた再生医療についての理解を深めたい方はあわせてご覧ください。 まとめ|トミージョン手術とは肘の靱帯損傷を再建するための手術 トミージョン手術は、損傷した腱や靭帯の再建をおこなう手術です。とくに、野球のピッチング動作の繰り返しで、肘関節の内部にある靭帯を損傷したときに用いられます。 スポーツ外傷には「再生医療」の治療法も効果的です。 本来なら手術をしなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。手術による傷跡や後遺症の心配もないので、安心して治療を受けられます。
2022.04.21 -
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- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- スポーツ外傷
野球肘は、5人に一人が発症する、ありふれたスポーツ障害のひとつです。主に投球練習や登板回数の過多が原因で発症します。 症状が重い場合は選手生命が縮んでしまうことも。理解を深め、予防や症状改善を図るのが重要です。 本記事では野球肘の症状改善や予防のためのストレッチ方法などを解説します。 野球肘の症状改善・予防におすすめなストレッチ5選 肘の関節や靭帯を守るため、動かす前に準備が大切です。 野球肘を予防するには、プレー前に関節をしっかり伸ばすストレッチをおこないましょう。 スポーツの前後にストレッチをしっかりおこなうことは大切ですが、肘周りのストレッチだけで安心していてはいけません。 野球肘の予防には、肘の関節だけでなく、全身の柔軟性を上げることが重要だからです。 そこで以下に野球肘の予防に効果的なストレッチをご紹介します。 手首・肘の内側を伸ばすストレッチ 片手をまっすぐ前に伸ばします。 この時、手の甲は天井を向き、手首と腕が90度になるようにします。 そして、伸ばしている手と反対の手で、指先を体の方に引き寄せましょう。 次の動作は、そのまま手のひらを反時計回りに180度回転させ、手の甲が地面を向くようにします。 そのまま手のひらを机などの平らなところに着け、ゆっくりと体重をかけていきます。 肩・肩甲骨をほぐすストレッチ まず、指先を肩に添えましょう。(右肩には右手、左肩には左手を添える) 肘で円を描くように大きく回す動作を繰り返します。 前に10回、後ろに10回程度回しながら肩と肩甲骨を意識してストレッチしていきましょう。 投球動作では、肩にも大きな負担がかかります。 肩甲骨周りの可動域を広げることは、きれいな投球フォームを作ることにもつながります。 肩回りを伸ばすストレッチ 胸の前で、自身の腕(肘から手の平まで)をくっつけます この時点で窮屈に感じる方は、肩甲骨回りや、肩の筋肉が固い状態です。 肘を胸の高さまで引き上げることが可能な場合は、肘が90度、脇下も90度の状態になります。(難しい場合は角度が狭くなっても構いません。) その姿勢から、腕を後ろへ引き、胸を張る状態を作ります。 胸を張ったらそのまま10秒キープしましょう。 その後、再び胸の前で手のひらから肘をくっつけていきます。 この動きを5セット繰り返しましょう。 胸の前で腕をくっつける際は肩甲骨が離れる感覚を、腕を後ろに引く際は、肩甲骨が背骨を挟むような感覚を掴みながらおこなってください。 体幹と下半身のストレッチ 体幹と下半身の柔軟性を高めると、肘への負担が大幅に減ります。以下のストレッチに取り組みましょう。 1. 両足を肩幅の1.5倍程度開く 2. 膝を120度ほど曲げる 3. 膝の内側に両手を置く 4. 左肩を、右方向にひねる 5. 10秒キープする 6. 右肩を、左方向にひねる 7. 10秒キープする 8. 5に戻る 4から8回を1セットとして、2セットほどおこないましょう。 肩をひねるとき、膝が動かないようにすると、ストレッチ感を得やすくなります。 また、腰は不自然に落としすぎないようにしましょう。 体幹と股関節のストレッチ 両足を股関節から開いた状態で床に座ります。 まず、左膝を折り曲げ、左足の裏側が右足の内ももに着く姿勢を取りましょう。(右足は伸ばしたままの状態です。) 右足のつま先をしっかり天井に向け、体側を伸ばしながら左手を右足のつま先へ向かって伸ばします。 左側の体側と、右足の裏側からふくらはぎにストレッチを感じていれば正しく伸ばせています。 この状態を10秒キープし、反対も同じように行いましょう。 左右それぞれ2セットずつおこなってください。 ストレッチをする時に気を付けるポイント 第一に、ストレッチの動作はゆっくりおこないましょう。 急に関節を伸ばすと、痛めてしまうこともあります。 具体的には、1つの部位を伸ばすのに10秒〜20秒程度かけるのが理想的です。 加えて、ストレッチをしてすぐに激しい動きをするのはNGです。 緊張がゆるんだ関節を急に動かすと思わぬケガにつながりますので、軽い運動をおこなってから練習を始めてください。 野球肘治療後のストレッチは専門家に相談する ストレッチは関節の可動域を広げるために重要です。 ただし、野球肘の治療後にストレッチを始める場合は、医師の指示に従っておこなうようにしましょう。 また、リハビリにストレッチのメニューが加えられた場合、専門家の指導のもとでおこなうのも大切です。 安易な自己判断で野球肘を悪化させることがないように気を付けてください。 野球肘とは? 野球肘とは、ピッチングなど、ボールを投球する動作が原因で起こる「肘関節の損傷をまとめた呼び方」です。 投球時の痛みや違和感が代表的な症状で、軽傷であれば、安静にすれば痛みは落ち着きます。 ただし、痛みが引いたことで「肘を傷めてはいない」と勘違いし、治療が遅れ、重症化することも。 本人が気をつけるのももちろんですが、周囲が野球肘に関して警戒するのも大切です。 「肘が痛い」と感じた、もしくは選手に言われたら、野球肘を疑い、適切に対応する必要があります。 野球肘が起こる原因 野球肘は、肘に反復して過度な負担がかかることが原因で発症します。 野球のボールを投げる動作は、腕を大きく振りかぶった状態から肘の機能を使って力いっぱい投げおろすため、肘への負担が大きな動作です。 この動作を繰り返すことで肘の靱帯や軟骨に大きな負担がかかってしまいます。 野球肘の種類 野球肘には、3つの種類があります。 肘の外側の橈骨側の靱帯や軟骨を損傷するもの 肘の内側の尺骨の軟骨が損傷するもの 橈骨を損傷するもの 肘の内側には、骨や人体が引き離される方向に負荷がかかります。この力は関節を傷めやすく、尺骨側での野球肘を誘発します。 肘の外側と後ろ側では、骨がぶつかる方向で負荷がかかります。そのため、骨自体に損傷が起こりやすい傾向です。 野球肘の治療法 野球肘の発症後、その治療は、何よりも安静が第一です。 短くても数週間、長いと数年、野球肘と付き合いが続く可能性があります。 そのためにも、症状や違和感を感じたら、我慢せずに医師に相談しましょう。 軽症のうちから医療機関を受診し、指導を受けて重症化を防ぐことが必要です。 すでに野球肘の症状がある場合 野球肘の症状がある場合は、治療の長期化を防ぐため、早急な対応が必要です。 まずは肘を休ませて、早めに医療機関を受診しましょう。 そして、長く野球を続けるためには、肘に負担が掛かる投げ方をしていないか、指導者を交えての指導が必要です。 肘に負担が掛かるような投げ方、フォームを改善する必要があります。 治療については、スポーツ外来などがある医療機関を受診し、治療はもちろん、リハビリを含め、以後の取り組みについて指導を受けるようにしましょう。 エコー検査やレントゲンなど検査を受け状態を確認し、早期に治療を開始することが大切です。 合わせて取り組みたい野球肘の予防方法 ストレッチ以外の方法でも、以下の方法で野球肘を予防できます。 投球回数を減らす ウォームアップを入念におこなう フォームを改善する チーム方針や投球スタイルとの兼ね合いもありますが、野球肘の予防を図るうえでは効果的です。 また、これらの方法は野球以外の競技に取り組む選手にも有用です。 それぞれ解説するので参考にしてください。 投球回数を減らす 投球回数を減らすことで、野球肘の発症リスクが下がります。 過度な投球練習や登板をなるべく避けましょう。 ただし、チーム方針の関係上、長いイニングを投げる必要に迫られるケースも。 その場合、十分なアイシングの実施と休養が重要です。 テニスや水泳など、やり投げなどのスポーツでも、練習頻度や負荷を減らすことで予防につながります。 ウォームアップを入念におこなう 投球前のウォームアップをより入念におこなうのも重要です。 例えば、普段のメニューに加えて、「腕を上げた状態でのキャッチボール」を追加するとよいでしょう。 腕を伸ばして投球すると、腕から肩の筋肉が刺激されます。 刺激が入ると、より高い柔軟性が発揮されます。 野球肘の予防では、体を柔らかくした上で投球するのが大切。 ストレッチとウォームアップで、十分な柔軟性を保ちましょう。 フォームを改善する 投球スタイルや球速、コントロールとの兼ね合いもありますが、フォーム改善で野球肘を予防できます。 以下のポイントを意識しましょう。 ストライドを縮める リリースポイントを一定にする 投球時に肘が開かないようにする ポイントをおさえると、肘に負担がかかりにくいです。 一方で、フォームを変えると球速やコントロールに影響が出るかもしれません。 その場合は指導者と、どのようなフォームを定めるか相談しましょう。 まとめ・野球肘をストレッチで予防して選手生命を伸ばす 野球の投球は全身で行うことが理想で、手だけの力で投げ続けると、野球肘発症の引き金となってしまいます。 練習前に時間をかけてストレッチを行うことで、野球肘の予防だけでなく、練習後の疲労も軽減できるでしょう。 野球肘の原因は肘の使い過ぎです。 最初から強く投げたり、いきなり投球するのではなく準備が必要です。 プレーや練習前、練習後には入念なストレッチを行うことが必要です。 練習計画に前後のストレッチを取り入れて野球肘を予防しましょう。 それでも肘の違和感がある、痛みがあるというような場合は重症化を防ぐためにも肘を安静にし、早めに医療機関を受診しましょう。 せっかくの才能ですから伸ばすためには身体の手入れが一番の練習だとご理解ください。
2022.03.01 -
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- 動作時の痛み
- スポーツ外傷
野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 子供にスポーツを習わせているとき、親として最も心配なのが、怪我ではないでしょうか。 スポーツには怪我がつきものですが、練習を頑張れば頑張るほど、気づかずに手術が必要になってしっまたり、痛みがずっと残ってしまったりして結果的にスポーツを諦めないければならない事例が実際にあります。 しかし、正しい知識を持っていることで子供の痛みにも適切な対応ができ、体に負担が少ない治療ができる可能性があります。 今回は、野球の投球動作や、体操などの選手に起こりやすい「肘離断性骨軟骨炎」について解説していきます。肘離断性骨軟骨炎は、やや珍しい病気ですが、早期発見により手術が回避できる可能性のある病気です。 ぜひ正しい知識を身につけて、子供の身体を守ってください。 肘離断性骨軟骨炎:スポーツ(野球や体操、サッカーでも)をしている子供に多く見られる症状です 肘離断性骨軟骨炎とは何か 肘離断性骨軟骨炎とは、肘の外側の部分(上腕骨小頭)の軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなってしまう病気です。「野球のようなピッチング、投球といった動作を伴うスポーツ」をやっている子供に多く、年齢としては9-12歳に多く見られます。 競技人口の多さから日本では野球を習っている子供に多く見られていますが、体操競技やサッカーをしている子供でも報告されており、この病気が発症する原因は正確にはわかっていません。 遺伝などの要素に加えて、投球などによって肘に繰り返し負荷がかかることで発症するのではないかと言われています。 肘離断性骨軟骨炎 発症部位 肘の外側の部分(上腕骨小頭) 状況 軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなる 原因 ピッチングのような投球動作、体操競技、サッカー競技、その他 発症年齢 9~12歳といった子供に多くみられる 肘離断性骨軟骨炎の症状 肘離断性骨軟骨炎の最も多い症状としては肘の痛みと言われますが、特に投球時に肘の外側が痛くなるのが特徴です。また、痛みが出る前に肘の動かしにくさ(可動域制限)を訴えることもあります。 軽傷であれば手術などをしなくても改善することが多く、早期発見・早期治療が重要な病気ですが、痛みが出てきたときには病気が進行していることも多いため注意が必要です。 無症状の9歳から12歳までの野球選手に対し検査を行ったところ、1-3%程度の割合で肘離断性骨軟骨炎が見つかったという報告もあり、「軽い痛みであっても肘の痛みを感じるようであれば整形外科の受診」をお勧めします。 肘離断性骨軟骨炎の治療方針 肘離断性骨軟骨炎の治療は、病状の進行度によって異なります。正しい治療方針を決定するためには、病気の進行度をしっかりと判断する必要があります。そのため、肘離断性骨軟骨炎を疑った場合には単純レントゲン写真やCT、MRI、超音波検査など様々な検査を駆使して評価を行います。 これらの検査により、軟骨が傷ついただけなのか、傷ついた軟骨が剥がれ落ちてしまっているのかを評価して、以下の3段階に分類します。 1:初期(透亮期) 肘離断性骨軟骨炎の初期と診断されるのは、ほとんどが小学生です。 この時期に診断された場合には、手術はせずに様子を見る「保存的加療」を行っていきます。病巣の改善までは1年以上と時間はかかるものの、肘の酷使を避けるなどの指導により90%以上で改善したという報告もあり、早期発見によるメリットは非常に大きいです。 2:進行期(離断期) 進行期であっても、基本的には手術をしない「保存的加療」が選択されます。 ただし初期のうちに診断されたものと異なり、半分ほどの患者さんでは思うように治らず、手術が必要になる患者さんも多いです。症状や病気の状態にもよりますが、3か月から半年ほどで評価を行い、手術が必要かどうかを判断していきます。 3:終末期(遊離期) 終末期であっても全く症状がない場合には手術はせずに様子を見ていくこともあります。ただしこの時期には、傷ついた軟骨が剥がれ落ち、遊離骨と呼ばれる骨のかけらが痛みを引き起こすことも多く、手術が必要になることも多いです。これは、肘関節遊離体といわれるもので「関節ねずみ」とも呼ばれます。 野球肘と言われる肘離断性骨軟骨炎の手術と術後 肘離断性骨軟骨炎の手術では、剥がれた骨の破片の位置や損傷している軟骨の程度などによって、患者さん一人一人に合わせた手術が行われます。 例えば、関節鏡と呼ばれるカメラを使って傷や体の負担をできるだけ小さくする手術であったり、膝関節から骨軟骨柱という組織を採り肘に移植する骨軟骨移植術と呼ばれる大掛かりな手術が行われたり、様々な手術があります5。 早期に発見して骨や軟骨の損傷をできるだけ抑えることで、同じ「手術」であっても負担の軽い手術が選択できる可能性があります。 手術後は肘の可動域訓練や、体幹部・下半身などのトレーニングなどを行いつつ、少しずつ競技復帰を目指してリハビリを行っていきます。 手術によっても違いますが、早ければ1か月程度から半年程度での投球練習が可能になることが多いです。主治医の先生の指示に従って、リハビリを行っていきましょう。 まとめ・野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 今回は肘離断性骨軟骨炎の症状と治療についてまとめてみました。 野球肘は、9歳から12歳までの投球動作を伴うスポーツをやっている児童に多い疾患である 症状としては、肘の外側の痛みや肘の動かしにくさを訴えることが多い 早期に見つかった場合は手術をしなくても改善することが多い 手術が必要になった場合には、競技復帰までには手術後、半年程度かかることがある 早期発見によって手術が防げる可能性がある病気ですので、子供が「肘が痛い」と言ってきたときに、様子を見ることなく、症状が悪化する前、早めに整形外科に受診させるようにしてください。 大切 お子様の「肘が痛い!」→ 聴き逃さない → 野球肘・肘離断性骨軟骨炎の可能性!→「すぐ整形外科へ」
2021.12.28







