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トミージョン手術とは、損傷した腱や靭帯の再建をおこなう手術です。 トミージョン手術という言葉、何か聞き覚えがあったり、テレビや雑誌、新聞など情報を見たりした経験のある方も多いのではないでしょうか。 たとえば、2024年現在メジャーリーガーとして活躍する「大谷翔平選手」が、この手術を受けて復活を遂げています。当時、大谷翔平選手のトミージョン手術に関する弊社の記事がMBS毎日放送「ゴゴスマ」で紹介されました。 今回は、トミージョン手術の概要と本手術におけるメリット・デメリットを解説します。野球肘を治療する際によく用いられる手術なので、野球関連の怪我に関心がある方にとってとくに参考になる内容です。 腱や靭帯の損傷といった「スポーツ外傷」は再生医療での治療が可能です。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した医療技術で、身体への負担が少ない治療法として今注目されています。 トミージョン手術とは損傷した腱や靱帯を再建する術式 トミージョン手術とは、肘関節部の腱や靱帯の損傷あるいは、断裂といった症状に対して腱や靱帯を再建するための術式です。 以下3つの観点から、トミージョン手術についてさらに詳しく解説します。 手術の方法 術後のリハビリ 手術の費用 手術の方法 トミージョン手術では、損傷した腱や靱帯をいったん切除します。次に、前腕部、下腿、臀部、膝蓋腱などから健康な腱の一部を摘出します。この腱を上腕骨と尺骨に作成した穴に通し、両端に適度な張力をかけた状態で固定します。 その後移植した腱は患部周囲に定着し、靭帯の代わりとして機能するようになるのです。 移植した腱が定着するまでに、ある程度の時間がかかると言われています。トミージョン手術をおこなってすぐに戻るものではなく、長期的なリハビリによる加療を実践することが求められます。 術後のリハビリ リハビリは、大体2か月程度かけて肘関節の可動域を元の状態に復帰させていきます。 その上で日常生活レベルで支障なく肘を動かせるようになれば、今度は軽い負荷からのウェイトトレーニングを開始することになります。 野球選手の場合、競技復帰までに1年ほどのリハビリが必要です。 手術の費用 海外でトミージョン手術を受ける場合の費用は、100〜300万といわれています。手術費用は、保険適用の有無や医師の経験値によって大きく変動します。 日本でトミージョン手術を受ける場合の費用は、保険適用で約15万〜30万円です。入院にかかる費用やリハビリ代などを加算すれば総額はさらに高くなります。 トミージョン手術に至る原因として多いのは野球のピッチング動作 野球の中でも、とりわけピッチング(投げる)という動作では、速球や変化球を何度も繰り返すことになり、肘に大きな負担を掛けるリスクがあります。 一般的に、野球競技で投球を繰り返すことで体幹や胸郭などのバランスが悪くなると肩や肘の力でサポートしたり、カバーしようと身体が反応し、意図せず働いてしまいます。 その際、上腕骨と尺骨を連結している肘関節部分に位置する内側側副靱帯に過剰な負担がかかり損傷が生じることがあります。 肘の靱帯が正常な状態の投手が、実際の投球中に靱帯をいきなり切ることはまずありません。しかし、小学生のころからプレーを続け、何度も繰り返される動作は負荷となって最初は小さなほころびでも積み重なることで切れてしまったり、大きな損傷となってしまうのです。 一部の整形外科医や球界関係者からは、肘の損傷の原因が投球フォームにあるという指摘もあります。いずれにしろ野球選手にとって避けては通れないスポーツ外傷というほかありません。 スポーツ外傷は「再生医療」の治療対象です。体内組織の自然治癒力を活用する医療技術で、手術による傷跡や後遺症のリスクを軽減できます。 以下の記事では、野球肘の予防に有効なストレッチを紹介しています。野球をする機会が多い方は参考にして、日頃のケアに役立ててみてください。 トミージョン手術を受けた選手一覧 大谷翔平選手以外でトミージョン手術を受けた日本人の野球選手を紹介します。 メジャーリーグで活躍!日本人でトミージョン手術を受けた選手の例 ※所属球団は2024年現在 前田健太 デトロイト・タイガース ダルビッシュ有 サンディエゴ・パドレス 藤川球児 元阪神タイガース 松坂大輔 元西武ライオンズ トミージョン手術は、名高い野球選手から多くの信頼を得ている手術方法といえます。 トミージョン手術を受けるメリット・デメリット トミージョン手術を受けるメリット・デメリットを以下にまとめました。 【トミージョン手術のメリット】 トミージョン手術の成功率:80~90%が実践復帰 【トミージョン手術のデメリット】 デメリット:手術後のリハビリ期間が1年~程度必要 デメリット:手術とリハビリからくる期間的リスク デメリット:合併症の危険性がある トミージョン手術氏がこの手術を受けた1970年代は、手術自体の成功率が何と1%未満とされていました。しかし、1986年から2012年までに本手術を実施された野球投手を調査した結果、約80%~90%もの人々が実戦復帰を果たしており手術の成功率が格段に向上しています。 この手術における成功率が向上した要因としては、手術そのものの技術的な進歩のみならず術後のリハビリテーションの知識と経験の蓄積が顕著な治療成績の改善を生み出したと考えられています。 ただし、通常ではトミージョン手術による治療からリハビリを含めて実戦復帰するためには約12か月から18か月かかると考えられています。仮に実戦復帰できたとしても所属球団の方針によっては厳しく球数を制限されるかもしれません。 また、術中操作にともなう尺骨神経の障害は、トミージョン手術後の合併症において頻繁に起こる可能性があります。 まとめ|トミージョン手術とは損傷した腱や靱帯を再建するための手術 トミージョン手術は、損傷した腱や靭帯の再建をおこなう手術です。とくに、野球のピッチング動作の繰り返しで、肘関節の内部にある靭帯を損傷したときに用いられます。 スポーツ外傷には「再生医療」の治療法も効果的です。 本来なら手術をしなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。手術による傷跡や後遺症の心配もないので、安心して治療を受けられます。 トミージョン手術に関するよくある質問 最後にトミージョン手術に関するよくある質問と回答をまとめます。 トミージョン手術が失敗する可能性はありますか? 現在のトミージョン手術では、約80〜90%もの人が実践復帰を果たすまでに回復するといわれており、失敗する確率は低い傾向にあります。 トミージョン手術は一般人でも受けられますか? トミージョン手術は一般の人でも受けられます。しかし、プロの野球選手ほど受ける人が少ないといわれています。リハビリに1年ほどかかり日常生活や仕事への影響が大きいほか、海外ほどトミージョン手術の名医が多くないためです。 スポーツや仕事で肘の腱や靭帯を損傷した方は、弊社「リペアセルクリニックのドクター」にご相談ください。患者さまの状態にあった治療方法をご提案させていただきます。 トミージョン手術を受けたあと復帰までの期間はどれくらいですか? 野球や仕事に完全復帰するまでには、約1年ほどかかります。損傷の程度によっては、2年近くかかる場合もあります。焦って無理に肘を動かすと回復を遅らせる可能性があるほか、状態を悪化させるリスクも招きかねません。 担当医や理学療法士の指示・助言を守りながら、計画的にリハビリを進めましょう。 靭帯損傷で手術以外の治療法はありますか? 靭帯損傷の治療法の1つに「再生医療」があります。再生医療とは、人間の組織や血液に含まれる自然治癒力を活用して、傷ついた靭帯を修復させる医療技術です。 注射を打つだけなので、手術のように傷跡が残ったり、長期のリハビリが必要になったりしません。トミージョン手術を受けた大谷翔平選手も、再生医療で靭帯損傷の治療を受けています。詳しくは以下の記事で紹介しているので、大谷翔平も受けた再生医療についての理解を深めたい方はあわせてご覧ください。 監修:医師加藤 秀一
公開日:2024.11.06 -
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野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばす スポーツをする上で気を付けたいのが何といってもケガや故障です。 今回ご説明する「野球肘」は少年野球の選手のうち5人に1人が発症するとされるスポーツ障害の一種です。野球肘は、ボールを投げる動作を繰り返すことで起こります。 特に子供さんが野球チームに入り、ピッチャーの才能があることが分かっても手放しで喜んではいけません。ピッチング、投球のしずぎで肘の故障を起こして結果的に野球を断念…といこともあり得るからです。 せっかくの才能をつぶさないで伸ばしてあげるためにも野球肘には十分注意してあげなければなりません。子供さんからの肘が痛いというサインを見逃さないでください。 日本は、とかく根性論に走りがちです。根性は大切ですが万一、症状が悪化してしまっては本末転倒、選手生命を奪いかねません。そこで野球肘の原因や予防方法を知って是非、選手生命を伸ばす方向で取り組んで頂ければと思うのです。 野球肘とは 野球肘とは、ピッチングなど、ボールを投球する動作が原因で起こる「肘関節の損傷をまとめた呼び方」です。 野球肘|起こる原因 野球肘は、肘に反復して過度な負担がかかることが原因で発症します。野球のボールを投げる動作は、腕を大きく振りかぶった状態から肘の機能を使って力いっぱい投げおろすため、肘への負担が大きな動作となります。この動作を繰り返すことで肘の靱帯や軟骨に大きな負担がかかってしまうのです。 野球肘|種類 野球肘は肘関節のさまざまな部位で起こりますが、痛めた部分によって大きく3種類に分けられます。 野球肘が起こる部位 ・肘の内側の骨である橈骨側の靱帯や軟骨を損傷してしまうもの ・肘の外側の骨である尺骨側の軟骨を損傷してしまうもの ・尺骨自体を損傷してしまうもの 肘の内側には骨や靱帯が引き離される方向に力がかかりますが、この引っ張られる力は、関節を痛めやすいため、橈骨側の靭帯は野球肘の起こりやすい部位です。 一方、肘の外側と後ろ側には骨がぶつかり合う方向で力がかかります。そのため、骨自体に損傷を与えてしまうことで発症すると重症化しやすく、注意が必要になります。 野球肘|症状 野球肘は、ボールを投げるときの痛み、違和感が代表的な症状です。痛みについては、投げるときのみの場合と、投げた後しばらく痛む場合がありますが、軽症の場合なら、安静にすることで痛みは引きます。 これは良いことのようですが実は、この痛みが引いてしまうこと困りものと言えるのです。 なぜなら、少々痛くても休んたら大丈夫と勘違いしてしまうからです。その結果、治療せず放置し、痛みが継続的に出るようになり、こうなると重症化して治りにくくなります。 無理は禁物ということですが、この部分は本人だけでなく、周りの意識も非常に重要です。肘が痛いという言葉に敏感にならなければなりません。 野球肘|治療法 野球肘の発症後、その治療は、何よりも安静が第一です。短くても数週間、長いと数年、野球肘と付き合いが続く可能性があります。そのためにも、症状や違和感を感じたら、少しぐらいと我慢してはいけません。 軽症のうちから医療機関を受診し、指導を受けて重症化を防ぐことが必要です。 すでに野球肘の症状がある場合 野球肘の心配がある場合は、初期の段階から医療機関で診察を受けることをお勧めします。野球肘の症状がある場合は、何年も肘の安静を強いられることがないように、重症化を防ぐ必要があります。 まずは投球する回数を減らし、肘を休ませましょう。そして、長くプレーを続けるためには、肘に負担が掛かる投げ方をしていないか指導者を交えての指導が必要です。肘に負担が掛かるような投げ方を改善する必要があります。 治療については、スポーツ外来などがある医療機関を受診し、治療はもちろん、リハビリを含め、以後の取り組みについて指導を受けるようにしましょう。エコー検査やレントゲンなど検査を受け状態を確認し、早期に治療を開始することが大切です。 野球肘|予防にはストレッチが有効 肘の関節や靭帯を守るため、動かす前に準備が大切!野球肘を予防するには、プレー前に関節をしっかり伸ばすストレッチを行いましょうす。スポーツの前後にストレッチをしっかり行うことは、大切ですが肘周りのストレッチだけで安心していてはいけません。 野球肘の予防には、肘の関節だけでなく、全身の柔軟性を上げることが重要だからです。そこで以下に野球肘の予防に効果的なストレッチをご紹介します。 野球肘を予防するストレッチの種類 運動前に準備運動を行ったり、ストレッチを行うことは一般的に知られています。野球肘の予防にもストレッチは大切です。肘周り、肩回り、下半身と全身の柔軟性を上げてから練習に挑むことでケガや故障を防ぐことが可能になるからです。 野球肘は肘の酷使が原因ですから、まずは、肘の負担を減らすために肘周りの関節をほぐしていきましょう。痛みがあるときは無理して行わず、専門家に相談することをお勧めします。 手首・肘の内側を伸ばすストレッチ 片手をまっすぐ前に伸ばします。この時、手の甲は天井を向き、手首と腕が90度になるようにします。そして、伸ばしている手と反対の手で、指先を体の方に引き寄せましょう。 次の動作は、そのまま手のひらを反時計回りに180度回転させ、手の甲が地面を向くようにします。そのまま手のひらを机などの平らなところに着き、ゆっくりと体重をかけていきます。 肩・肩甲骨をほぐすストレッチ 投球動作では、肩にも大きな負担がかかります。肩甲骨周りの可動域を広げることは、きれいな投球フォームを作ることにもつながります。 肩回りを伸ばすストレッチ 身体の前で肘を体に対して直角に上げ、手の平から肘までをピッタリつけて肩甲骨を開きます。(肘の角度は90度でキープ!)次にゆっくりと胸を張るように、腕を後ろに引きましょう。この時、肩甲同士を骨を内側に寄せるイメージで行ってください。 体幹と下半身のストレッチ 投球は足を大きく踏み込み、体の回転をボールに伝えることでより肘への負担を軽減できます。そのためには体幹のストレッチも忘れず行いましょう! 体幹と股関節のストレッチ 足を開いて座り、片方の足は体側に引き寄せます。腕を頭上にまっすぐ伸ばし、曲げた足側の手を反対の手で引っ張りながら伸ばしている足の方へ体を倒しましょう。反対側も同様に行います。 ストレッチにはコツがあります。そのコツを抑えるだけで野球肘の予防効果をアップさせることができます。せっかくストレッチを行うのですから次に紹介するポイントを守って、より効果的なストレッチを行いましょう。 ストレッチをする時に気を付けるポイント 第一に、ストレッチの動作はゆっくり行いましょう。急に関節を伸ばすと、痛めてしまうこともあります。具体的には、1つの部位を伸ばすのに20秒程度かけるのが理想的です。 加えて、ストレッチをしてすぐに激しい動きをするのはNGです。緊張がゆるんだ関節を急に動かすと思わぬケガにつながりますから、軽い運動を行ってから練習を始めてくださいね。 野球肘治療後のストレッチは専門家に相談する ストレッチは関節の可動域を広げるために重要です。ただし、野球肘の治療後にストレッチを始める場合は、医師の指示に従って行うようにしましょう。 また、リハビリにストレッチのメニューが加えられた場合、専門家の指導のもとで行うことも大切です。安易な自己判断で野球肘を悪化させることがないように気を付けてください。 まとめ・野球肘をスチレッチで予防して選手生命を伸ばす 野球の投球は全身で行うことが理想で、手だけの力で投げ続けると、野球肘発症の引き金となってしまいます。練習前に時間をかけてストレッチを行うことで、野球肘の予防だけでなく、練習後の疲労も軽減できるでしょう。 野球肘の原因は肘の使い過ぎです。最初から強く投げたり、いきなり投球するのではなく準備が必要です。プレーや練習前、練習後には入念なストレッチを行うことが必要です。 練習計画に前後のストレッチを取り入れて野球肘を予防しましょう。 それでも肘の違和感がある、痛みがあるというような場合は重症化を防ぐためにも肘を安静にし、早めに医療機関を受診しましょう。せっかくの才能ですから伸ばすためには身体の手入れが一番の練習だとご理解ください。 以上、野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばすと題して説明させていただきました。参考になれば幸いです。 ▼ スポーツ外傷、野球肘をはじめとした再生医療という手段について 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
公開日:2024.10.07 -
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野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 子供にスポーツを習わせているとき、親として最も心配なのが、怪我ではないでしょうか。 スポーツには怪我がつきものですが、練習を頑張れば頑張るほど、気づかずに手術が必要になってしっまたり、痛みがずっと残ってしまったりして結果的にスポーツを諦めないければならない事例が実際にあります。 しかし、正しい知識を持っていることで子供の痛みにも適切な対応ができ、体に負担が少ない治療ができる可能性があります。 今回は、野球の投球動作や、体操などの選手に起こりやすい「肘離断性骨軟骨炎」について解説していきます。肘離断性骨軟骨炎は、やや珍しい病気ですが、早期発見により手術が回避できる可能性のある病気です。 ぜひ正しい知識を身につけて、子供の身体を守ってください。 肘離断性骨軟骨炎:スポーツ(野球や体操、サッカーでも)をしている子供に多く見られる症状です 肘離断性骨軟骨炎とは何か 肘離断性骨軟骨炎とは、肘の外側の部分(上腕骨小頭)の軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなってしまう病気です。「野球のようなピッチング、投球といった動作を伴うスポーツ」をやっている子供に多く、年齢としては9-12歳に多く見られます。 競技人口の多さから日本では野球を習っている子供に多く見られていますが、体操競技やサッカーをしている子供でも報告されており、この病気が発症する原因は正確にはわかっていません。 遺伝などの要素に加えて、投球などによって肘に繰り返し負荷がかかることで発症するのではないかと言われています。 肘離断性骨軟骨炎 発症部位 肘の外側の部分(上腕骨小頭) 状況 軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなる 原因 ピッチングのような投球動作、体操競技、サッカー競技、その他 発症年齢 9~12歳といった子供に多くみられる 肘離断性骨軟骨炎の症状 肘離断性骨軟骨炎の最も多い症状としては肘の痛みと言われますが、特に投球時に肘の外側が痛くなるのが特徴です。また、痛みが出る前に肘の動かしにくさ(可動域制限)を訴えることもあります。 軽傷であれば手術などをしなくても改善することが多く、早期発見・早期治療が重要な病気ですが、痛みが出てきたときには病気が進行していることも多いため注意が必要です。 無症状の9歳から12歳までの野球選手に対し検査を行ったところ、1-3%程度の割合で肘離断性骨軟骨炎が見つかったという報告もあり、「軽い痛みであっても肘の痛みを感じるようであれば整形外科の受診」をお勧めします。 肘離断性骨軟骨炎の治療方針 肘離断性骨軟骨炎の治療は、病状の進行度によって異なります。正しい治療方針を決定するためには、病気の進行度をしっかりと判断する必要があります。そのため、肘離断性骨軟骨炎を疑った場合には単純レントゲン写真やCT、MRI、超音波検査など様々な検査を駆使して評価を行います。 これらの検査により、軟骨が傷ついただけなのか、傷ついた軟骨が剥がれ落ちてしまっているのかを評価して、以下の3段階に分類します。 1:初期(透亮期) 肘離断性骨軟骨炎の初期と診断されるのは、ほとんどが小学生です。 この時期に診断された場合には、手術はせずに様子を見る「保存的加療」を行っていきます。病巣の改善までは1年以上と時間はかかるものの、肘の酷使を避けるなどの指導により90%以上で改善したという報告もあり、早期発見によるメリットは非常に大きいです。 2:進行期(離断期) 進行期であっても、基本的には手術をしない「保存的加療」が選択されます。 ただし初期のうちに診断されたものと異なり、半分ほどの患者さんでは思うように治らず、手術が必要になる患者さんも多いです。症状や病気の状態にもよりますが、3か月から半年ほどで評価を行い、手術が必要かどうかを判断していきます。 3:終末期(遊離期) 終末期であっても全く症状がない場合には手術はせずに様子を見ていくこともあります。ただしこの時期には、傷ついた軟骨が剥がれ落ち、遊離骨と呼ばれる骨のかけらが痛みを引き起こすことも多く、手術が必要になることも多いです。これは、肘関節遊離体といわれるもので「関節ねずみ」とも呼ばれます。 野球肘と言われる肘離断性骨軟骨炎の手術と術後 肘離断性骨軟骨炎の手術では、剥がれた骨の破片の位置や損傷している軟骨の程度などによって、患者さん一人一人に合わせた手術が行われます。 例えば、関節鏡と呼ばれるカメラを使って傷や体の負担をできるだけ小さくする手術であったり、膝関節から骨軟骨柱という組織を採り肘に移植する骨軟骨移植術と呼ばれる大掛かりな手術が行われたり、様々な手術があります5。 早期に発見して骨や軟骨の損傷をできるだけ抑えることで、同じ「手術」であっても負担の軽い手術が選択できる可能性があります。 手術後は肘の可動域訓練や、体幹部・下半身などのトレーニングなどを行いつつ、少しずつ競技復帰を目指してリハビリを行っていきます。 手術によっても違いますが、早ければ1か月程度から半年程度での投球練習が可能になることが多いです。主治医の先生の指示に従って、リハビリを行っていきましょう。 まとめ・野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 今回は肘離断性骨軟骨炎の症状と治療についてまとめてみました。 ・野球肘は、9歳から12歳までの投球動作を伴うスポーツをやっている児童に多い疾患である ・症状としては、肘の外側の痛みや肘の動かしにくさを訴えることが多い ・早期に見つかった場合は手術をしなくても改善することが多い ・手術が必要になった場合には、競技復帰までには手術後、半年程度かかることがある 早期発見によって手術が防げる可能性がある病気ですので、子供が「肘が痛い」と言ってきたときに、様子を見ることなく、症状が悪化する前、早めに整形外科に受診させるようにしてください。 大切 お子様の「肘が痛い!」→ 聴き逃さない → 野球肘・肘離断性骨軟骨炎の可能性!→「すぐ整形外科へ」
公開日:2024.11.06