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トミージョン手術とは?大谷翔平選手も受けた野球選手に選ばれる手術の成功率や復帰率について解説

トミージョン手術という言葉をテレビや雑誌、新聞など情報を見たりした経験のある方も多いのではないでしょうか。
メジャーリーガーとして活躍する大谷翔平選手やダルビッシュ有選手が「トミージョン手術」を受けたことで一躍有名になった手術です。
本記事では「トミージョン手術とはどんな手術なのか」また、手術の成功率や競技への復帰率について詳しく解説します。
野球選手を始めとする肘の靱帯損傷にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
また、肘の靱帯損傷といった「スポーツ外傷」を手術せずに治療できる方法として再生医療が注目されています。
当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療によるスポーツ外傷の症例や治療法について情報を配信中です。
「手術せずに治療したい」「早く治して競技復帰したい」という方は、ぜひご参考ください。
目次
トミージョン手術とは?
トミージョン手術とは、肘の内側にある損傷・断裂した靱帯を正常な腱の一部を移植して再建する手術のことです。
患者さまの体から摘出した腱を上腕骨と尺骨に作成した穴に通し、両端に適度な張力をかけた状態で固定します。
その後移植した腱は患部周囲に定着し、損傷した靭帯の代わりとして機能するようになるのです。
移植した腱が定着するまでに、ある程度の時間がかかるといわれており、長期的なリハビリによる加療を実践することが求められます。
トミージョン手術の費用
海外でトミージョン手術を受ける場合の費用は、100〜300万といわれています。
日本でトミージョン手術を受ける場合の費用は、保険適用で約15万〜30万円です。
手術費用は、保険適用の有無や医師の経験値によって大きく変動します。
入院にかかる費用やリハビリ代などを加算すれば総額はさらに高くなります。
トミージョン手術の成功率と競技復帰率
トミージョン手術の成功率や、野球選手の競技復帰率について紹介します。
以下では、それぞれ詳しく解説していきます。
トミージョン手術の成功率と競技復帰率
トミージョン手術は、約80%~90%と比較的に成功率が高い手術です。
術式の由来でもあるトミージョン氏が手術を実施した1970年代は、手術自体の成功率は何と1%未満とされていました。
しかし、近年では医療技術の進歩により高い成功率を誇る手術として、多くの野球選手がトミージョン手術を受け、競技復帰を実現しています。
トミージョン手術を受けた野球選手の競技復帰率
トミージョン手術を受けた野球選手のポジション別の競技復帰率は、以下の通りです。
ポジション | 復帰率 |
投手 | 80〜97% |
捕手 | 59〜80% |
内野手 | 76% |
外野手 | 89% |
※出典:PubMed
メジャーリーグの投手を対象にした研究では、手術後12ヶ月で80〜97%が競技復帰したとされています。
投手と比べると肘への負担が少ない内野手や外野手は、投手よりも短い期間で競技復帰できているというデータがあります。
トミージョン手術を受けた野球選手一覧
大谷翔平選手やダルビッシュ有選手を始めとした日本のプロ野球選手がトミージョン手術を受けています。
2024年以降にトミージョン手術を受けた野球選手は、以下の通りです。
トミージョン手術は、名高い野球選手から多くの信頼を得ている手術方法といえます。
トミージョン手術が適応となる原因が野球選手に多い理由
野球の中でも、とりわけピッチング(投げる)という動作では、速球や変化球を何度も繰り返すことになり、肘に大きな負担を掛けるリスクがあります。
一般的に、野球競技で投球を繰り返すことで体幹や胸郭などのバランスが悪くなると肩や肘の力でサポートしたり、カバーしようと身体が反応し、意図せず働いてしまいます。
その際、上腕骨と尺骨を連結している肘関節部分に位置する内側側副靱帯に過剰な負担がかかり損傷が生じることがあります。
肘の靱帯が正常な状態の投手が、実際の投球中に靱帯をいきなり切ることはまずありません。しかし、小学生のころからプレーを続け、何度も繰り返される動作は負荷となって最初は小さなほころびでも積み重なることで切れてしまったり、大きな損傷となってしまうのです。
一部の整形外科医や球界関係者からは、肘の損傷の原因が投球フォームにあるという指摘もあります。いずれにしろ野球選手にとって避けては通れないスポーツ外傷というほかありません。
スポーツ外傷は「再生医療」の治療対象です。体内組織の自然治癒力を活用する医療技術で、手術による傷跡や後遺症のリスクを軽減できます。
以下の記事では、野球肘の予防に有効なストレッチを紹介しています。野球をする機会が多い方は参考にして、日頃のケアに役立ててみてください。
トミージョン手術後のリハビリについて
リハビリは、大体2か月程度かけて肘関節の可動域を元の状態に復帰させていきます。
その上で日常生活レベルで支障なく肘を動かせるようになれば、今度は軽い負荷からのウェイトトレーニングを開始することになります。
野球選手の場合、競技復帰までに1年ほどのリハビリが必要です。
トミージョン手術を受けるメリット・デメリット
トミージョン手術を受けるメリット・デメリットを以下にまとめました。
トミージョン手術を受けるメリット
トミージョン手術を受けるメリットは、以下の通りです。
【トミージョン手術のメリット】 トミージョン手術の成功率:80~90%が実践復帰 |
トミージョン氏がこの手術を実施した1970年代は、手術自体の成功率が何と1%未満とされていました。
しかし、1986年から2012年までに本手術を実施された野球投手を調査した結果、約80%~90%もの人々が実戦復帰を果たしており手術の成功率が格段に向上しています。
この手術における成功率が向上した要因としては、手術そのものの技術的な進歩のみならず術後のリハビリテーションの知識と経験の蓄積が顕著な治療成績の改善を生み出したと考えられています。
トミージョン手術を受けるデメリット
トミージョン手術を受けるデメリットは、以下の通りです。
【トミージョン手術のデメリット】
|
通常ではトミージョン手術による治療からリハビリを含めて実戦復帰するためには約12か月から18か月かかると考えられています。
仮に実戦復帰できたとしても所属球団の方針によっては厳しく球数を制限されるかもしれません。
また、術中操作にともなう尺骨神経の障害は、トミージョン手術後の合併症において頻繁に起こる可能性があります。
肘の靱帯損傷には再生医療も選択肢の一つ
肘の靱帯損傷やスポーツ外傷には、先端医療である再生医療も選択肢の一つです。
再生医療とは、さまざまな組織に変化する幹細胞を用いて、損傷した靱帯の再生・修復を図る医療技術のことです。
肘の靱帯損傷に対して高い成功率を誇るトミージョン手術ですが、手術の副作用のリスクや長期間のリハビリが必要となり、競技復帰まで時間がかかります。
再生医療では、入院が必要なほどの大きな手術をせずに肘の靭帯損傷の根本的な治療が期待できます。
また、患者さまの細胞のみを使用するため、拒絶反応やアレルギーなどの副作用が少ないのも特徴です。
「手術を避けて治療したい」「早く競技復帰したい」という方は、ぜひ再生医療による治療をご検討ください。
トミージョン手術に関するよくある質問
最後にトミージョン手術に関するよくある質問と回答をまとめます。
トミージョン手術が失敗する可能性はありますか?
トミージョン手術の失敗確率は10〜20%程度といわれています。
約80〜90%もの人が実践復帰を果たすまでに回復するといわれており、失敗する確率は低い傾向にあります。
トミージョン手術は一般人でも受けられますか?
トミージョン手術は一般の人でも受けられます。
しかし、プロの野球選手ほど受ける人が少ないといわれています。
リハビリに1年ほどかかり日常生活や仕事への影響が大きいほか、海外ほどトミージョン手術の名医が多くないためです。
スポーツや仕事で肘の腱や靭帯を損傷した方は、当院「リペアセルクリニックのドクター」にご相談ください。
患者さまの状態にあった治療方法をご提案させていただきます。
トミージョン手術を受けたあと復帰までの期間はどれくらいですか?
野球や仕事に完全復帰するまでには、約1年ほどかかります。
損傷の程度によっては、2年近くかかる場合もあります。焦って無理に肘を動かすと回復を遅らせる可能性があるほか、状態を悪化させるリスクも招きかねません。
担当医や理学療法士の指示・助言を守りながら、計画的にリハビリを進めましょう。
靭帯損傷で手術以外の治療法はありますか?
靭帯損傷の治療法の1つに「再生医療」があります。
再生医療とは、人間の組織や血液に含まれる自然治癒力を活用して、傷ついた靭帯を修復させる医療技術です。
注射を打つだけなので、手術のように傷跡が残ったり、長期のリハビリが必要になったりしません。
トミージョン手術を受けた大谷翔平選手も、再生医療で靭帯損傷の治療を受けています。
詳しくは以下の記事で紹介しているので、大谷翔平も受けた再生医療についての理解を深めたい方はあわせてご覧ください。
まとめ|トミージョン手術とは肘の靱帯損傷を再建するための手術
トミージョン手術は、損傷した腱や靭帯の再建をおこなう手術です。とくに、野球のピッチング動作の繰り返しで、肘関節の内部にある靭帯を損傷したときに用いられます。
スポーツ外傷には「再生医療」の治療法も効果的です。
本来なら手術をしなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。手術による傷跡や後遺症の心配もないので、安心して治療を受けられます。