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くも膜下出血とは?その症状と後遺症を医師が徹底解説!

くも膜下出血とは?その症状と後遺症を医師が徹底解説!
公開日: 2022.11.10 更新日: 2025.02.12

くも膜下出血は脳疾患のなかでも症状が重いことで知られています。

発症時の一年死亡率は65%以上とも言われています。

後遺症や再発のリスクもあり、十分な警戒が必要な疾患と言えるでしょう。

本記事ではくも膜下出血の症状や合併症、治療法や再発予防法などを解説します。

くも膜下出血の概要・症状・治療法

くも膜と出血説明

くも膜下出血とは、脳と周囲の膜との間の空間(くも膜下腔)で出血が起こる疾患です。

くも膜下で出血があると、脳に対して十分な血液が供給されません。虚血状態になり、心身にさまざまな症状が現れます。

ほとんどの出血は、生活習慣の乱れによって形成される「脳動脈瘤」の破裂に原因があると言われます。

直接の原因である脳動脈瘤が発生する理由は正確にはわかっていません。

ただ、次の特定の危険因子が関与していると見られます。

発症の危険

  • 喫煙
  • 過度のアルコール摂取
  • 頭部外傷

喫煙やアルコール摂取は動脈硬化のリスクを高め、脳動脈瘤の発生や破裂を引き起こします。

また事故などによる外傷によっても、くも膜下出血は起こりえます。

くも膜下出血を発症した場合の予後は良くありません。一度発症した場合の一年死亡率は約65%と高く、生存した場合でも後遺症や再発リスクが生じます。

くも膜下出血の前兆には突如の強い頭痛や吐き気などがあり、これで発症に気づくケースが大半です。

発症は、激しい咳や運動、性行為など身体的負担が大きい生理反応や活動があった際に起こるケースが多いです。

くも膜下出血の初期症状

くも膜化下出血の症状

くも膜下出血では、以下の初期症状が突発的に起こります。

くも膜下出血の症状例

  • これまで経験したことない強さの、突発的な頭痛
  • 極度の疲労感や気分不良
  • 吐き気、嘔吐
  • 光に対する過敏(羞明)
  • かすみ目、複視、眼瞼下垂
  • 脳梗塞のような症状(ろれつが回らない、体の片側の麻痺など)
  • 意識消失
  • 全身の痙攣

最初に強い頭痛を感じるケースが多いでしょう。

痛みの程度は「雷に打たれたかのよう」と表現されるほど激しいものです。

しかし頭痛は時間経過により緩和する傾向にあり、「治ったので問題がない」と判断して、前兆を見逃すケースが少なくありません。

また、くも膜下出血があったあとの数か月間は、極度の疲労を感じるケースがあります。

たとえば、普段の通勤通学や買い物に対して従来よりも明らかに強い疲労感が生じます。

不眠症や睡眠不足、手足の痺れや感覚の喪失を訴えるケースも少なくありません。

しかし、これらの初期症状は数か月かけて徐々に改善するため、頭痛が発生した際と同様、「治ったので問題がない」と誤解されることがあります。

基本的な治療法

くも膜下出血が疑われる場合、病院でCT検査をおこない、脳の周囲に出血の兆候がないか確認します。

発症が認められた際には「動脈瘤クリッピング術」と「脳動脈瘤コイル塞栓」などの治療法が用いられます。

動脈瘤クリッピング術は、頭部を切開し、頭蓋骨に穴を開けて、脳動脈瘤を取り除くもの。

脳動脈瘤コイル塞栓は、すでにある脳動脈瘤の破裂を塞ぐ目的でおこなわれます。

脳動脈瘤コイル塞栓では頭部を切開しません。鼠蹊部(足の付け根)から特殊なカテーテルを挿入し、脳動脈瘤内にコイル(プラチナ製の小さな機器)を送り込みます。

コイルにより、脳動脈瘤への血液の流入を遮断し、破裂が予防されるしくみ。

その他対症療法として、降圧薬や鎮痛薬などの投与もなされます。

また近年では、再生医療による治療法も注目されています。再生医療とは、自己脂肪由来幹細胞やPRP療法などを用いた新しい医術。

くも膜下出血に対しては、失われた脳機能の回復や、脳内血管の再生などによる再発予防などの効果が期待されます。

くも膜下出血の合併症

くも膜下出血は、治療を行う際に以下のような短期的および長期的な合併症を引き起こす可能性があります。

くも膜下出血の合併症

  • 水頭症
  • 出血

深刻な合併症には、動脈瘤の再出血や、脳への血液供給の減少によって引き起こされる脳の損傷によるさまざまな機能低下があるため、合併症を起こさない治療が大切です。

治療後のリハビリ計画

くも膜下出血、リハビリ概念図

くも膜下出血から回復するのにかかる時間は、その重症度によって異なります。

とくに出血の部位は、手足の感覚の喪失や言語理解の問題(失語症)などの後遺症にも関連します。

そこで、治療後は急性期〜回復期にかけて理学療法士の下で実施されるリハビリ計画は、影響を受けた手足の感覚と動きを回復するのに役立ちます。

くも膜下出血の後遺症にはどのようなものがある?

くも膜下出血は、適切な治療を早期に受けても後遺症が出る場合があります。

一般的に多くみられる後遺症

くも膜下出血は治療後の回復も、時間がかかるものであり、次のような後遺症が発生するのが一般的です。

くも膜下出血の後遺症

1.運動麻痺

右か左の手足が動かしづらくなる

2.感覚障害

痺れや脱力感

3.嚥下障害

物が飲み込みづらい

4.視野障害

半分の空間がうまく認識できない

5.高次脳機能障害

言葉がうまく話せない、理解がうまくできないなどの失語症、注意・集中ができない

6.認知や行動の障害

物事をうまく実行できない、最近の出来事を直ぐ忘れてしまう

その他にみられる後遺症

そのほかにも次のような後遺症が現れることもあります。

くも膜下出血、後遺症

  • 歩行不安定、尿便失禁
  • てんかん繰り返す発作
  • 記憶などの認知機能障害
  • うつ病などの気分の変化

特に、認知機能障害はくも膜下出血の一般的な後遺症であり、ほとんどの人がある程度影響を受けます。

記憶の問題に関しては、発症前の記憶は通常影響を受けませんが、新しい情報や事実を思い出すのが難しくなります。

気分や思考にみられる後遺症

また、以下のような気分や思考の問題も現れます。

1.うつ病

気分が落ち込み、希望がなく、人生を楽しむことができない

2.不安障害

何か恐ろしいことが起こるのではないかという絶え間ない不安と恐怖感

3. 心的外傷後ストレス障害 (PTSD)

人は悪夢やフラッシュバックを通じて以前の外傷的出来事を追体験することが多く、孤立感、過敏性、罪悪感を経験することがある。

このような後遺症は、長期化するケースも稀ではなく、治療後のリハビリなどが重要になります。

くも膜下出血の再発リスクを減らす予防法

くも膜下出血を発症したあとも、再発の可能性が残ります。

再発した場合にも高い死亡リスクが残るため、予防は重要です。

予防法として以下が考えられるでしょう。

  • 喫煙や飲酒を控える
  • 定期的な運動に取り組む
  • 健康的な食事を心がける

喫煙や飲酒を制限する

まず、喫煙や飲酒を制限するのが重要です。

喫煙はくも膜下出血の主な原因になる脳動脈瘤を発生させる要因です。

したがって再発を防止する上では禁煙するのが基本となるでしょう。

飲酒は高血圧の原因になります。血圧が上昇すると膜下出血の主な要因である脳動脈瘤の破裂が起こりやすくなるため、飲酒は大きなリスクとなるでしょう。

上記の理由から喫煙や飲酒は控える、可能なら禁煙禁酒するのが望ましいです。

定期的な運動に取り組む

定期的な運動は、以下の効果をもたらすことから必要です。

  • 血行不良の促進
  • 高血圧の予防
  • ストレスの原因

血行不良や高血圧、ストレスは、すべてくも膜下出血の再発の原因です。

一方で定期的な運動の実施により、これらの影響をある程度解消できるでしょう。

とくにランニングやウォーキングなどの有酸素運動などが効果的です。

再発防止には、これらの運動を日常に取り入れるのが重要です。

健康的な食事を心がける

以下の健康的な食事は、くも膜下出血の再発防止に有効です。

  • 緑黄色野菜や果物
  • 青魚(イワシ、サバなど)
  • ナッツ類
  • 大豆製品
  • オリーブオイル、菜種油(トランス脂肪酸が含まれていないため)
  • 塩分が少ない食事

栄養バランスが偏ると、くも膜下出血の原因になる高血圧や血行不良につながります。

一方で上記の食物や食事には、血圧を下げ、血行を促進する効果があると言われています。

再発防止には、不健康なものを遠ざけ、健康的な食事を摂るのが重要になるでしょう。

くも膜下出血によくあるQ&A

最後にくも膜下出血に関するよくある質問をまとめました。

後遺症がどのくらいで治るのか、仕事復帰の目安などを解説します。

Q.くも膜下出血に特徴的な前兆はありますか?

A.くも膜下出血に特徴的な前兆としては、血圧の乱高下があります。

激しく上昇、下降する場合は可能性が高いです。

また脳梗塞などと同じように頭痛や吐き気などの前兆が現れることもあります。

Q.後遺症を残さずに仕事復帰はできますか?

A.くも膜下出血で後遺症なく仕事復帰できるのは、3~4割程度といわれています。

完全に後遺症を残さないためにはリハビリが大切になります。

Q.くも膜下出血の後遺症で性格が変わりますか?

A.くも膜下出血が原因で高次脳機能障害を患った場合、性格が変わるかもしれません。

高次脳機能障害は、脳に対するダメージが原因で、脳機能に影響が出る障害です。

とくに「意欲や情動のコントロールが困難になる」症状があり、これが現れると行動や言動に変化が生じます。

結果として「性格が変わった」と表される状態になるかもしれません。

まとめ:くも膜下出血を予防するには早期受診が重要!

いかがでしたでしょうか?

くも膜下出血は、突然起こると思われがちですが、血圧の変動や頭痛など特徴的な前兆があるため、少しでも不調があれば病院を受診するのが大切です。

くも膜下出血は、突然におこる激しい頭痛が特徴的です。後遺症が出ることもあります。

そのため、適切な治療や、リハビリのプランが重要です。

喫煙や、高血圧といった危険因子を管理し、健康的な生活習慣を心がけることが再発を予防するポイントです。

また、後遺症の程度によっては、仕事復帰に時間がかかる場合もありますが、治療後のリハビリは再発リスクを低減させて、回復を早めるためにも大切ですので医療機関の指導の下、前向きお取組みされることをお勧めします。

いずれにしましても、くも膜下出血で後遺症を残さないためには早期治療、そしてリハビリが大切です。

今回の記事を参考にして症状や、後遺症などに関して少しでも参考になれば幸いです。

監修者

圓尾 知之(医療法人美喜有会 脳神経外科 部長)

圓尾 知之 医師 (医療法人美喜有会 脳神経外科 部長)

Tomoyuki Maruo

日本脳神経外科学会 所属

脳神経外科の最先端治療と研究成果を活かし、脳卒中から1日でも早い回復と後遺症の軽減を目指し、患者様の日常生活の質を高められるよう全力を尽くしてまいります。

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