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脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程とは

脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程について

脳出血とは、脳内の血管が破れて脳内で出血する病気です。これにより神経組織がダメージを受け、命を左右し、さまざまな後遺症を起こす危険性があります。

脳出血は、日本における三大死亡原因のひとつである重篤な病気です。社会復帰できる方もいますが、中には意識不明、重症のまま意識が戻らず亡くなってしまう場合もあります。

脳出血を起こしてしまった方や、ご家族にとって、余命はどのくらいなのか、生存率・死亡率はどの程度で、退院後の生活はできるのか、長生きできるのかなど、多くの心配事に悩まされることでしょう。

この記事では、脳出血を起こした後の予後予測、生存率や回復過程について解説していきます。

脳出血の予後予測

脳出血後の予後予測

脳卒中は、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血の3つに分けられますが、2022年の脳卒中データバンクでは、「脳出血」の頻度は18.0%と報告されています。また、脳出血の死亡率は高く、発症した方の13.8%が入院中に亡くなっています。

脳出血の発症で死亡してしまう方が多いタイプとは

死亡してしまう方が多いタイプとして、血腫の量が多い、混合型の出血、脳幹の出血、急性閉塞性水頭症を合併している場合などがあります。血腫量が多い場合は血腫の除去、水頭症に対しては脳脊髄液を排出して圧力を下げるドレナージ手術の方法があり、同じく2022年のデータでは手術率は12.6%と報告されています。

このように、脳出血の大部分は保存的に治療されますが、約1割程度は手術を必要とする重症であると考えられます。

脳出血の予後は発症時の意識レベルが重要

脳出血の重症度、死亡率に影響するものとして、発症時の意識レベルがあります。一般的に発症時に意識状態が悪いほど、後遺症も重くなり、死亡率が高くなってしまいます。

また、時間経過とともに、症状が進行することも予後が悪い原因となります。実際に2022年のデータでは、脳出血において19.6%の方は発症時に昏睡状態(Japan Coma Scale 100以上)を呈しています。

脳出血後の5年生存率は報告によってばらつきがありますが、27〜57%程度と報告されており、発症した時の年齢が高齢で意識状態が悪い方ほど死亡率が高くなってしまいます。

参照:「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握(日本脳卒中データバンク)報告書 2022年」
参照:「PubMed®初めての脳卒中後の5年生存率」

脳卒中の治療

脳出血の回復過程の3段階

脳出血を起こした後の回復過程は、急性期、回復期、生活期の3段階に分かれていて、それぞれの段階に応じた治療、リハビリが必要です。

回復過程は3段階

  • 急性期(発症~3か月)
  • 急性期は発症直後から2週間程度の期間です。
  • 出血が広がらないように血圧を下げる治療や呼吸・循環を補助する治療が行われ、場合によって手術治療が行われます。急性期のリハビリは筋肉が衰えたり、関節が固くならないように無理のない範囲で行います。
  • 回復期(3~6か月)
  • 回復期は、急性期の終了後の3か月から6ヶ月までの期間です。
  • 麻痺や動作の障害に対しては理学療法や作業療法を行い、しゃべり辛さ、飲み込みの障害に対しては言語聴覚療法を行います。
  • 生活期(6か月以降)
  • その後の生活期のリハビリでは軽めの運動を取り入れながら、生活の範囲を広げ、動作に慣れるリハビリを行っていきます。

実際に、2022年の脳卒中データバンクでは脳出血後のリハビリは、理学療法を86.4%、作業療法を84.4%、言語聴覚療法を74.3%の方が受けており、55.4%の方がリハビリ目的に転院できています。

しかし、同じく2022年のデータでは、自宅に退院できた方は約26%で、リハビリ目的以外の病院への転院が12.4%、その他の施設(介護老人保険施設、老人ホーム等)への退院が5.4%となっており、急性期を過ぎた後に自宅へ退院できる方は少なく、約2割程度の方は生活機能が低下してしまっていて、療養型病院への転院や施設へ入所していることがわかります。

脳出血についてよくある質問

Q: 脳出血の予防方法はありますか。

A:脳出血の原因は、高血圧性脳出血が約8割と最多です。

高血圧は基本的には無症状ですが、動脈硬化による脳梗塞や脳出血の原因になってしまうため、異常値を指摘されている方は早めに医療機関を受診して治療することをお勧めします。

Q:意識障害はよくなりますか。

A:脳出血の症状と治療は、出血した場所、出血の量によって異なります。

意識障害を起こしている場合は、脳幹という神経が集まっている部位の出血や、出血の量が多く脳が浮腫を起こしている可能性があります。

高血圧に対する降圧、脳の浮腫を和らげる点滴、呼吸状態が悪い場合には、呼吸の補助をするための人工呼吸を行い、場合によっては血腫を取り除くために開頭手術などが必要となることもあります。これらの治療によって意識状態が回復する場合もありますが、損傷した神経自体を回復させる治療はまだないため、重度の意識障害では症状が残ってしまう可能性が高くなると言われています。

そのため、脳出血を発症しないように、血圧管理を含めて日常的な生活習慣に気をつけることが重要です。

Q:脳出血はどこまで回復しますか。

A:脳出血による後遺症、回復の程度は、発症時の症状とその後リハビリにより大きく異なります。

発症した時に意識障害がある場合や高度の麻痺がある場合には、一般的に後遺症が残ってしまいます。また、発症後6ヶ月までは回復する見込みがあり、その期間に集中してリハビリを行うことが勧められます。

ご自身の想定される回復の程度、リハビリが必要な期間について担当の医師とよく相談するようにしましょう。

まとめ・脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程とは

脳出血は、生命はもちらん、一命を取り留めてもその後の生活に関わる重症な病気であり、発症の予防、早期治療が最も大切です。

現代の医療でも損傷された神経を完全に回復させることはできませんが、適切に治療をすることによって残された機能を回復させることができます。少しでも発症前の生活に戻れるようにリハビリを頑張っていただくことが必要です。

この記事がご参考になれば幸いです。

 

No.123

監修:医師 坂本貞範

脳卒中の治療

 

▼脳出血の情報はいかにもございます。
脳出血の後遺症、寝たきりにならないためのリハビリについて

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