減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説
公開日: 2024.01.18更新日: 2024.10.07
減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説
減圧症は、ダイビングなどで深いところから突然浅いところに浮上した際、高圧の環境で血液や組織に溶け込んでいた窒素が、減圧に伴って気泡を作り、様々な症状をもたらす病気です。気泡によって脊髄が損傷を受け、神経症状を起こしてしまうこともあります。
今回は、この減圧症についてわかりやすく解説していきます。
減圧症とは
減圧症とは、周りの圧力の低下に伴って、身体の中に溶解していた不活性ガス(主に窒素)が気化し気泡となることが原因となり、さまざまな症状が現れる病気です。
高気圧環境での労働や、高い場所での減圧によるものが知られているのですが、近年はダイビングによる発症が増加し、減圧症全体の20%以上を占めると言われています。
中高年のダイバーが増えている一方で、減圧症に対する知識の教育不足や治療環境が十分に整っているとは言えません。
さて、この減圧症は潜水後に発症することが多いために、潜水病と呼ばれることもあります。症状としては、関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害といったものがあります。
減圧症の症状
減圧症では、身体の中にたまっていた窒素が気泡となり、膨張することで身体の組織を傷つけたり、血管を塞いだりすることでさまざまな症状が現れてきます。
脳の血管が気泡で詰まることで、脳卒中のような症状が現れてしまうこともあります。例えば、身体の片側の筋力低下、めまい、発語困難などです。また、窒素の気泡が生じると組織に炎症が起こり、筋肉や関節、腱の腫れや痛みも起こります。
さて、減圧症は大きく以下の2つのタイプに分けられます。
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減圧症によって脊髄損傷を受けると、後遺症が残る場合もあります。つまり、治療が遅れてしまうか、十分に行われない場合に永続的な神経障害となる恐れもあり、減圧症による症状が治らないということになってしまうのです。
このⅡ型減圧症では、脊髄損傷が最も多いとされています。
脊髄は硬い硬膜で覆われているのですが、脊髄内に発生した気泡によって組織内の圧力が上昇し、血流障害などによって脊髄損傷が起こるとされています。
下位胸髄から腰髄、そして上部から中部胸髄が好発部位とされており、窒素と結びつきやすい脂質が多く含まれている部位が障害されやすいです。
症状は軽い痺れなどの異常感覚から、排尿・排便が難しくなる膀胱直腸障害を含む完全な四肢麻痺まで、さまざまです。
報告によっても異なりますが、日本では33-62%の脊髄損傷の方で後遺症が残ってしまうともされてます。
減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死があります。骨壊死が進むと、日常の生活のレベルが著しく低下し、人工関節置換術などの手術も必要となることがあります。
さらに、減圧症では肺にも障害が現れることがあるのです。気泡が肺に及ぶと、咳や胸の痛み、呼吸困難が起こり、まれに死に至ることもあります。
減圧症の治療法
減圧症の治療法として最も大切なのは、高気圧酸素療法です。
重症であるⅡ型減圧症では、以下のような方法が用いられます。
高気圧酸素療法
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水深18m相当の加圧下で、20分の酸素吸入を5分のインターバルを挟んで3回繰り返します。そしてその後、水深9m相当の加圧下で、60分の酸素吸入を15分のインターバルで2回行い、減圧します。
この治療法は以下のような作用があります。
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脊髄損傷において、高気圧酸素治療を繰り返すことで回復するケースもみられます。
高気圧酸素治療を行なっても、運動機能や知覚障害が残る場合、ステロイドの点滴治療や、歩行訓練・バランス訓練といった理学療法を行っていきます。
減圧症の予防法
ダイビングをするダイバーは、ガイドラインで決められているような減圧停止を行いながら浮上することで、減圧症を予防することができます。
また、注意点として、ダイビングをしてから12〜24時間以内に飛行機に乗ると減圧症のリスクが高まると言われています。そのため、ダイビングを行ったあとは飛行機に乗ったり高地に行ったりする前に、海抜0メートル地点に12-24時間ほど滞在することが勧められています。
まとめ・減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説
今回の記事では、ダイビングを行う上では知っておくべき潜水病について解説しました。
脊髄損傷の後遺症が残ってしまった場合の最新の治療法として、再生医療があります。
当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。
今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられています。
▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。
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