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減圧症(潜水病)は軽度なら自然治癒も!症状のチェックリストや治療法を紹介

減圧症(潜水病)は、水圧の急激な変化によって体内に気泡が発生することで発症します。
とくにダイビングや潜水後に起こる可能性がある障害で、軽度であれば自然に回復するケースもありますが、症状を見極めた適切な対処が大切です。
本記事では、軽度の減圧症に見られる症状や自然治癒のセルフケア、そして治療法や予防策までをわかりやすく解説します。
目次
減圧症(潜水病)とは?軽度なら自然治癒も可能
減圧症は、水中から水面浮上時に起こる急激な気圧環境の変化によって、体内に溶け込んだ窒素などのガスが急激に気泡化し、関節、筋肉、神経、皮膚、血管などに悪影響を及ぼすことで発症します。
減圧症の症状は、関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害など多岐にわたり、症状の重さによって大きく2つに分類されます。
- I型減圧症(軽度):
命に関わらない比較的軽い症状が中心で、場合によっては自然に回復するケースもあります。
例:関節痛や皮膚のかゆみ、疲労感、皮下浮腫(浮腫性減圧障害)など - II型減圧症(重度):
神経系や循環器系に影響が及び、重篤な症状を引き起こすため、早急な治療が必要です。
例:意識障害や麻痺、呼吸困難など
軽度の減圧症は自然治癒する場合もありますが、自己判断で放置すると思わぬ悪化を招くこともあります。
正しい知識を持ち、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。
軽度の減圧症のチェックリストとセルフケア
減圧症は、症状の程度によって対応が異なります。
本章では、軽度の減圧症によく見られる症状のチェックリストと、症状が出たときにできるセルフケアについて解説します。
軽度の減圧症に見られる主な症状|チェックリスト
減圧症は軽度の場合、自然治癒が期待できるケースもありますが、早期発見と適切な対応がなにより重要です。
以下は、軽度の減圧症に該当する可能性がある代表的な症状です。
ダイビングや潜水後に当てはまるものがないかセルフチェックしてみましょう。
【症状セルフチェックリスト】
- 関節や筋肉の痛み(鈍い痛みや違和感を含む)
- 皮膚の発疹やかゆみ(特に上半身)
- 強い疲労感やだるさ
- 吐き気、頭痛、軽いめまい
- 注意力の低下や集中できない感じ
上記の症状が1つでも現れた場合は、「軽度だから大丈夫」とは考えず、速やかに適切な対応を取りましょう。
軽症の減圧症で自然治癒に向けたセルフケア
軽度の症状が見られた場合でも、放置せず次の対応を取ることで自然回復が期待できます。
◆症状の確認と潜水の中断 ◆酸素吸入の応急処置 ◆医療機関の受診 |
軽度の減圧症は、初期対応が適切であれば自然に回復することもありますが、油断は禁物です。
「軽い症状でも酸素」「不安なら医師に相談」という基本を忘れず、安全を第一に行動しましょう。
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重度の減圧症に見られる主な症状
減圧症の中でもII型減圧症と呼ばれる重症タイプは、神経系や呼吸器、循環器などの重要な臓器に障害を及ぼす可能性があり、生命に関わるケースもあります。
本章では、重度の減圧症に見られる以下、4つの症状を紹介します。
- 脳型減圧症
- 脊髄型減圧症
- 呼吸器の減圧症(チョークス)
- 減圧性骨壊死
脳型減圧症
脳型減圧症は、体内で気泡が血流を妨げたり、直接的に脳組織を損傷することで発症します。
正確なメカニズムは完全には解明されていないものの、脳卒中に似た神経症状が現れるのが特徴です。
脳型減圧症の主な症状は、次の4つです。
- 強い頭痛
- 複視(二重に見える)
- 発話のしづらさ(言葉が出てこない)
- 錯乱や意識の混濁
上記の症状が出た場合は、ただちに医療機関を受診する必要があります。
脊髄型減圧症
脊髄型減圧症は、II型減圧症の中でもとくに多く見られるタイプで、脊髄に気泡ができることで神経伝達が阻害されます。
初期は軽いしびれや痛みであっても、対応が遅れると麻痺や排泄障害に進行する危険があります。
脊髄型減圧症の主な症状は、次の4つです。
- 筋力の低下(動きにくい、力が入らない)
- 手足のしびれや痛み
- 腹部や背中の痛み
- 排尿・排便のコントロールができない(膀胱直腸障害)
時間の経過とともに悪化するケースが多いため、違和感を覚えた段階で専門医の診察を受けることが重要です。
呼吸器の減圧症
呼吸器の減圧症(通称:チョークス(chokes))はまれですが、重篤な症状を引き起こす可能性があります。
肺に気泡が生じることで肺水腫を起こし、酸素と二酸化炭素のガス交換が正常に行えなくなるため、酸素不足に陥る危険性があります。
呼吸器の減圧症の主な症状は、次の3つです。
- 胸の痛み
- 息切れや呼吸困難
- 咳(とくに泡状の痰が出る場合)
肺の細い血管が詰まり、全身への血流が阻害されると、最悪の場合致命的になる可能性もあるため、ただちに高気圧酸素治療を要します。
減圧性骨壊死
重度の減圧症の中には、長期間を経て発症する遅発性の合併症もあります。
代表的な合併症に減圧性骨壊死があり、これは、繰り返し潜水したり、短期間に高圧環境に頻繁に出入りすることで、骨の血流が障害され壊死が起こる状態です。
主に影響を受ける部位は次の2つで、進行すると関節の動きが制限されたり、痛みで日常生活に支障が出ることがあり、場合によっては手術が必要になることもあります。
- 肩関節
- 股関節(大腿骨頭)
とくに職業的に潜水を行う人は、定期的な健康チェックが推奨されます。
減圧症の治療
減圧症の治療で、まず行うべき処置は、100%酸素の吸入です。
体内に気泡化した窒素を早く排出するため、フェイスマスクなどで高濃度の酸素を吸うことが推奨されます。
あわせて、脱水対策として水分補給も行います。
口からの摂取が難しいときは、点滴による水分・電解質の補充が必要です。
症状が持続する、または重度の減圧症が疑われる場合は、専門医療機関での「高圧酸素療法(再圧治療)」が行われます。
高圧酸素療法は、高気圧環境で100%酸素を吸入することで、体内の気泡を縮小・除去し、損傷組織への酸素供給を促す治療です。
とくに、神経症状や呼吸器症状が出ている場合は早急な実施が求められます。
また、意識障害や心肺停止が見られる場合には、心臓マッサージや人工呼吸などの救急対応が必要になります。
軽度の症状でも自然治癒に任せず、医療機関での診断と治療を受けることが大切です。
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減圧症の予防策
減圧症は、正しい知識と対策を講じることで、発症リスクを大きく減らすことができます。
とくにダイバーや潜水作業者は、事前の準備と潜水後の対応を徹底することが重要です。
以下表は、減圧症を予防するために押さえておきたい基本的な行動です。
予防策 | 内容 |
潜水前後の体調管理 | 疲労・脱水・風邪などがあると減圧症のリスクが高まるため、体調が万全でない日は潜らない |
減圧停止の遵守 | 浮上時に段階的に停止し、体内の窒素を安全に排出する |
無理のない潜水計画 | 潜水深度・時間を事前に計画し、無理のないスケジュールで行動する |
潜水後すぐの飛行を避ける | ダイビング後は最低でも12〜24時間、飛行機搭乗を控えることが推奨されている |
ダイブコンピューターの使用 | 減圧停止や浮上スピードを正確に管理し、安全性を高める |
減圧症の予防は、潜水時の注意だけでなく、日常生活の中でも取り組める習慣がいくつかあります。
- 頻繁に潜る場合は間隔を十分に空ける
- 水分補給をこまめに行い、脱水を防ぐ
- 飲酒や喫煙は潜水前後には控える
- 定期的に減圧症の知識を学び直す(講習会・安全講座など)
- 肥満、循環器疾患、糖尿病などの持病がある人は医師と相談する
安全に水中活動を楽しむためにも、常にリスクを意識し、正しい手順と知識に基づいた行動を心がけましょう。
まとめ|軽症でも油断禁物!適切な対応を知ることが再発や後遺症を防ぐ鍵
本記事では、初期に現れる軽症状から、神経系や呼吸器系に深刻な影響を及ぼす重症例まで幅広く解説しました。
減圧症は、軽度であっても油断は禁物です。
軽度の減圧症であれば、チェックリストを活用した早期の気づきと、酸素吸入や潜水の中止など適切な初期対応によって、自然治癒が期待できるケースもあります。
しかし、症状を見逃したり、対応が遅れたりした場合には、脊髄損傷などの後遺症が残る可能性があり、完治が難しいケースもあるのが現実です。
とくに脊髄型減圧症による麻痺などは、これまで有効な治療法が限られていました。
そうした中で、脂肪由来幹細胞を用いた再生医療が、新たな治療法の選択肢として考えられています。
この治療では、自身の脂肪から培養した幹細胞を脊髄に直接注入します。
万が一、減圧症による後遺症に悩んでいる方や再生医療に興味のある方は、ぜひ一度当院「リペアセルクリニック」までご相談ください。