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減圧症による脳障害|症状と後遺症、治療法について

公開日: 2024.01.25
更新日: 2024.10.07

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減圧症による脳障害:その症状と後遺症に対する治療法を解説します

ダイバーや潜水を仕事にしている方にとって気をつけなければいけない減圧症。重症になると脳障害を起こすことはご存知でしょうか。

減圧症による脳障害は適切な治療で回復することが多いです。しかし、一部の患者さんでは治療を行っても後遺症が残ってしまいます。後遺症はダイビングや潜水作業のみならず日常生活にも支障をきたす可能性がああります。

本記事では減圧症による脳障害で起こる症状、およびその「後遺症と治療法について解説」していきます。ぜひ最後までお読みください。

減圧症による脳障害
brain disorder

減圧症とは

血液や組織に出現した気泡が血液の流れを阻害したり、直接的に組織・臓器にダメージを与えたりするのが減圧症のメカニズムです。

高い圧のかかる場所では窒素などの気体が血液や組織中に溶解してしまいます。低い圧の場所に移動すると、これらの気体が溶けきれなくなります。これが減圧症の原因となる気泡です。

体にかかる圧が急激に減少する場合に起こることが「減圧症」という名前の理由です。代表的なケースは潜水から急浮上するときであるため、「潜水病」とも呼ばれます。

減圧症の重症症状

減圧症は重症度別に軽症のⅠ型と重症のⅡ型の2つに分けられます。

Ⅰ型では肘や肩などを中心とした関節痛、皮膚の発赤や痒み、疲労感などの軽い症状が多くみられます。

一方、重症度の高いⅡ型では次のような重篤な症状を認め、時に命にも関わります。

  • 脳の損傷

  • ・頭痛
  • ・意識障害
  • ・痙攣
  • ・片麻痺
  • 脊髄の障害

  • ・肢麻痺
  • ・排尿障害
  • 内耳の障害

  • ・めまい
  • ・吐き気
  • 肺の障害

  • ・呼吸困難
  • ・咳

なお、同様に急激な減圧により起こる動脈ガス塞栓症という病気もあります。こちらは圧変化により肺の一部が破れ、その気泡が血液内に入り臓器血管を閉塞してしまうことで起こるものです。肺が破れる気胸などとともに心筋梗塞や脳梗塞をきたします。

動脈ガス塞栓症は減圧症との区別がつきにくく、同時に起こることもあるため注意が必要です。治療方針は一緒であるため、とくに重症例では動脈ガス塞栓症も合併している可能性を念頭に置きます。

減圧症による脳障害の症状

気泡が脳実質に障害を起こしたり、脳の小さな血管の血流障害を起こしたりすることで脳障害をきたします。

症状は障害を受けた脳の部位により多種多様です。

例えば、次のようなものが挙げられます。

  • 脳障害の症状例

  • ・記憶障害
  • ・ふらつき(失調)
  • ・まぶたや指の震え
  • ・片麻痺症状
  • ・いつもと異なる異常な言動
  • ・意識障害

通常の脳梗塞と異なり、早期に適切な治療を行えば症状を残さずに回復する可能性があります。しかしながら広範囲のダメージを受けてしまうと、後遺症が残り、最悪の場合は死に至ることすらあります。

減圧症が起こった場合の治療

減圧症発症時は、100%の酸素投与とともに、全身状態を落ち着けることが必要です。全身状態により、輸液・昇圧薬投与・人工呼吸など必要な処置を行います。

同時に、発症の早いうちに再圧療法が必要です。治療ができる医療施設は限られているため、専門施設へ紹介をされて搬送されることになります。

再圧療法とは、高い濃度の酸素と高い圧をかけることができる特殊な装置を用いる治療です。気泡を再び血液や組織中に溶け込ませるとともに、酸素を投与して血流障害が起こっている組織の回復を目指すものです。

基本的には初回の治療で完治を目指すことが原則です。ただし、神経症状が残ってしまった場合は追加治療を行います。

後遺症の可能性と治療について

前述のように、一般的な脳梗塞と違って適切な治療で症状が改善することが多いです。しかし、脳の広範囲にダメージが起こった場合や適切な治療時期を逃してしまった場合などは、障害を残すことがあります。

麻痺や失調・高次脳機能障害などが固定化してしまった場合は、リハビリテーションを行う必要があります。時間をかけて徐々に機能回復できる場合もありますが、不便さが残る可能性も高いです。

脳卒中は手術しなくても治療できる時代です。

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減圧症について気になるQ & A

減圧症(潜水病)に関してよくお聞きする質問を以下に記しました。

Q:減圧症を起こさないために注意すべきことは?

潜水当日の体調不良は減圧症のリスクを高めるといわれています。体調を万全に整えておきましょう。

急激な浮上を行ったり、1日に何回も潜ったりすると窒素が気泡化しやすくなるため、手順を守って過剰に潜ることは避けるべきです。

また、潜水直後に飛行機に乗ることは危険です。上空は圧が低いので、より減圧症が発症するリスクが高くなるからです。

Q: 減圧症と減圧障害の違いはなんですか?

減圧症は圧の急激な変化により窒素などの気泡が生じて組織障害をきたす疾患です。減圧障害とは、減圧症と動脈ガス塞栓症の2つの状態を合わせたものです。

とくに脳障害をはじめとした重症例ではこの2つの病態の鑑別が難しいことも多くあります。また、基本的な初期対応も同じです。そのため、近年では2つを合わせた「減圧障害」の呼び方がより一般化してきています。

まとめ・減圧症による脳障害|症状と後遺症、治療法について

減圧症の脳障害は重篤で、後遺症が残ってしまう可能性もあります。ひとたび後遺症が残ると、根気強いリハビリが必要です。

ダイビングや潜水に関わるお仕事をされている場合はしっかりと減圧手順を守るとともに、「おかしいな」と思ったらすぐに受診をしましょう。

なお、当院では最新治療の一つとして注目されている幹細胞治療を用いて、脳卒中など脳の障害による後遺症の治療を行っています。減圧症による脳障害の後遺症でお困りであれば、再生医療専門の当院にぜひ一度ご相談ください。

▼以下もご覧いただけます
減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説!

 

参考文献

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