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PLDDの有効性と術後の痛みや経過について

公開日: 2024.03.05
更新日: 2024.10.07

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PLDDの有効性と術後の痛みや経過について

首や腰の痛みを引き起こすとともに、手や足へ分布する神経を圧迫して厄介な痺れを引き起こす椎間板ヘルニア。進行すると、筋力低下をきたしたり、排尿障害を起こしたりもします。

つらいヘルニアの治療法の一つであるPLDDは、 手術療法の中でも体への負担が非常に低いとされています。傷は小さく日帰り手術もできる、一見魅力的な方法と思えますが、有効性や安全性はどうなのでしょうか。

この記事ではPLDDについての紹介や、有効性・術後の経過などについて解説します。

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椎間板ヘルニアの治療とPLDD

椎間板ヘルニアの治療の基本は、 痛み止めやリハビリなどの「保存療法」です。しかし、保存療法の効果がない場合には手術が検討されます。

現在、椎間板ヘルニアの手術は多くの種類があります。特に「体への負担が少ない」とされている治療の一つがPLDDです。

PLDDはPercutaneous Laser Disc Decompressionの略称で、日本語では経皮的レーザー椎間板減圧術と呼ばれている術式です。現在、いくつかの病院で腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアに対する治療として行われています。

PLDDでは特殊な針を使って背中から椎間板の中央へとレーザーファイバーを通します。椎間板の中央部には「髄核」というゲル状の柔らかい物質があり、髄核が飛び出してくるのがヘルニアの原因です。

PLDDではこの髄核をレーザーで焼いて気化させてしまうのです。これにより、椎間板の内圧を下げることができます。焼いた部分は空洞化し、椎間板は穴を埋めようと縮むため、ヘルニアが改善するのです。

 PLDDで用いる針は細く柔軟性が高いものです。局所麻酔のみで手術が可能で、侵襲(手術の傷) が少ないため、病院によっては日帰り手術も可能となっています。傷も非常に小さくて済みます。

PLDDの費用は?

PLDDは公的健康保険の適応として認められていません。そのため、治療に関連する医療費全てが自費になります。

つまり、手術手技に関連した費用のみでなく、適否を見極めるための診察や検査の費用・関連した処方などもすべて患者さんの自己負担となるのです。病院によって費用は異なりますが、数十万の医療費がかかります。

かつてPLDDは厚生労働省の指定する「先進医療」であり、特定の医療機関では保険診療との併用が認められていました。この場合は手術に関連した費用のみ自費で、その他の診察や検査・処方にかかわる費用は公的保険を用いることが可能でした。

しかし、平成24年に「有効性や効率性が十分に示されていない」ということで先進医療の指定から削除されたのです。

PLDDって効果がないの?

先進医療から取り消されたということは、 効果がないということでしょうか。

PLDDの有効率は文献によってばらつきますが、おおむね70%程度と報告されています。もしかしたら、「そんなに悪くないのでは」と感じた人もいるかもしれません。

腰椎椎間板ヘルニアにおいては、診療ガイドライン上手術療法で推奨されるのは「椎間板切除術」です。椎間板切除術後、ヘルニアが再発して再手術が必要になるのは、術後5年で1.5〜8.5%と報告されています。

単純比較はできませんがPLDDはこれらよりも治療成績に劣るとされています。

もう一つ、頭に入れておかなければいけないことは、PLDDが効かないヘルニアがあるということです。先ほどの「70%の人に有効」というのは、PLDDの効果が期待できる人を選んで行った成績です。

PLDDが適しているのは、保存療法が効かない患者さんのうち、ヘルニアが「後縦靭帯」を突破していない患者さんです。

後縦靭帯を突破していない図

図1,2 後縦靭帯を突破していない図 

引用)腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p44

 

PLDDは,椎間板の内圧を下げることでヘルニアによる圧迫を改善させる効果があります。しかし、後縦靭帯を破って外に出てしまったヘルニアの場合はすでに椎間板内圧が下がってしまっていて、髄核を焼き飛ばしてもヘルニアは縮みません。

残念ながら適切でない方に行われるケースもあり、そうなると「効果がない」のです。

PLDDの手術中や手術後の痛みはどのくらい?

PLDDは小さな針を刺すだけなので、他の手術のように手術に伴う痛みが少ないことがメリットの一つです。

最初に皮膚に局所麻酔を行うことで、針を刺すときの痛みもカバーされます。そして、切開をする必要がないため、手術後に「傷の痛みがつらい」ということがありません。

したがって、手術に関連した痛みは最小限で済む術式と言えるでしょう。

PLDDの術後の経過は?

PLDDは他の手術よりも即効性には乏しいです。

ヘルニアが退縮することで、神経の圧迫が軽くなっていきますが、それには時間がかかるのです。個人差はありますが、術後1週間程度から徐々に症状が改善され、2〜3ヶ月ほどで良くなったことが実感されてきます。

そのため、すぐにでも良くしたい、という人は他の方法を選んだ方が良いでしょう。

PLDDにも合併症はあるの?

傷が小さく一見安全な手術のように思えるPLDDにも、合併症が起こるリスクがあります。

合併症の例として、感染やレーザーの影響による骨壊死などが挙げられます。

中でも、術後後遺症として長期に日常生活に深刻な影響を与えるのが神経障害です。レーザーの誤照射や針による損傷、血腫を作ることで圧迫されることで神経が傷つき、もともとあった痺れが悪化したり新規に痺れたりすることがあります。

脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。

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まとめ・PLDDの有効性と術後の痛みや経過について

椎間板ヘルニアの治療法の一つであるPLDDは、低侵襲であることから、早く日常生活に復帰したい人にとっては良い選択肢かもしれません。

しかし、高額な費用負担、有効性の問題、また適応が広くないことなど手術を受ける上での問題も少なくありません。

また、いくら体への負担が少ないといっても、神経障害をはじめとした合併症リスクもあるため、慎重な選択が必要です。

なお、当院ではPLDDを含めたヘルニアの術後後遺症に対して再生医療の一つである「幹細胞治療」を提供しています。これは万能細胞である幹細胞を障害部位へ届けることで組織の再生を促すものです。

従来、神経損傷に対する幹細胞治療では点滴で幹細胞を投与してきました。当院では、点滴に加えて脊髄腔内に直接幹細胞を注入する手法も行っています。

脊髄腔内ダイレクト注射療法により、さらに多くの幹細胞を損傷した神経に届けることができるようになりました。

さらに国内でも有数の細胞加工室の高い技術により、幹細胞を凍結することなく保存しています。フレッシュな幹細胞の投与により、良好な治療成績をおさめています。

▶PLDDの術後後遺症でお悩みであれば、ぜひ当院の最新治療をご検討ください。

参考文献

小坂理也. 整形外科看護 10(4): 329-333, 2005.
加藤昌代, 西山敬浩, 加藤篤史, 笹生豊, 大橋健二郎. 東日本整形災害外科学会雑誌 15(1): 111-114, 2003.
井上和彦, 橋本俊彦, 関根千晶, 千葉純司. 日本レーザー医学会誌 22(1): 5-14, 2001.
慢性疼痛診療ガイドライン 
宮本雅史, 中嶋隆夫. 日内会誌 105:2210-2214, 2016. 
佐藤正人, 石原美弥, 荒井恒憲, 菊地眞, 持田譲治. 日本レーザー医学会誌 31(2): 146-151, 2010. 
腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版.
厚生労働省 HP
腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p44

 

▼以下のご覧いただけます
PLDD治療、そのメリット・デメリットやリスクとは?

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