ぎっくり腰は病院に行っても意味ない?受診の目安やおすすめの治療法を紹介
ぎっくり腰で病院へ行っても意味ないって本当?
ぎっくり腰は自宅で安静にしていればそのうち治るのかな。
この記事を読んでいるあなたは、ぎっくり腰は病院に行くべきなのかを迷っているのではないでしょうか。「安静にしていれば治るなら、受診せずに済ませたい」と思っているかもしれません。
結論、ぎっくり腰は病院に行かなくても治るケースが大半を占めます。
しかし、ぎっくり腰だと思った痛みが別の病気やケガだった場合、処置が遅れることで重症化してしまうリスクもあるでしょう。手術や入院が必要になってしまうケースもあるため、不安であれば一度受診するのがおすすめです。
本記事では、ぎっくり腰で受診する目安やおすすめの治療法を紹介します。
記事を最後まで読めば、ぎっくり腰の対処法がわかり、状況に応じた適切な対応ができるでしょう。
目次
ぎっくり腰は病院に行っても意味ない?
結論からお伝えすると、ぎっくり腰の場合は必ずしも病院に行く必要はありません。病院に行かず自宅療養をしても2週間程度で痛みが治まるケースが一般的だからです。
しかし、ぎっくり腰だと思っていた腰の痛みは、以下のような別の病気やケガによって起きている可能性もあります。
- 椎間板ヘルニア
- 化膿性脊椎炎
- 骨折
これらの病気やケガを放置すると、重症化して手術や入院が必要になることも考えられます。
ぎっくり腰であると自己判断した場合でも「痛みがなかなか引かない」「下肢がしびれる」「発熱がある」などの症状があるときは、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。
なお、おもな症状が腰の痛みの場合、受診するのは整形外科です。診察の結果、他の病気を疑う場合は内科を始めとする別の診療科へ紹介するため、まずは整形外科を受診してください。
ぎっくり腰の原因や症状については、以下の記事も参考にしてください。
ぎっくり腰で病院に行く3つの目安
ぎっくり腰で病院に行く目安は以下の3つです。
- 痛みが2週間以上続く、あるいはぎっくり腰を繰り返す
- 発熱している
- 高齢である
本章を参考に、ぎっくり腰になった際の正しい受診タイミングを理解しておきましょう。
痛みが2週間以上続く、あるいはぎっくり腰を繰り返す
痛みが2週間以上続く、ぎっくり腰を繰り返すなどの場合は、「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」などの疑いがあります。
- 椎間板ヘルニア:背骨の間でクッションの役割を果たす「椎間板」の中にある組織が外へ飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれが出る病気
- 脊柱管狭窄症:背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が何らかの要因で狭まることで圧迫され、腰や下半身の痛みやしびれが出る病気
原因となる病気に気づかず放置すると痛みが長引き、場合によっては手術が必要になるケースも考えられます。痛みの治りが悪い場合は、早めの受診が大切です。
発熱している
熱を伴う腰痛の場合、細菌やウイルスに感染している可能性が考えられます。
病名はいくつか考えられますが、整形外科的な疾患では、脊椎が細菌に感染する「化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)」がよく疑われます。
高齢、糖尿病、透析を受けている、免疫抑制剤を飲んでいるなどの人は免疫力が低いため、細菌感染から化膿性脊椎炎を発症しやすいのです。(文献1)
化膿性脊椎炎は抗生物質で治療を行いますが、薬で改善しないと手術が必要になるケースもあります。
高齢である
高齢になると骨がもろくなり折れやすくなる「骨粗しょう症」の人が増え、転倒時や中腰、重いものを持ったときなどに骨折するリスクが高まります。
ぎっくり腰だと思ったら、実際は背中の骨が折れる「圧迫骨折」だったというケースもあります。
骨折は2~3カ月の治療で良くなるケースが多いものの、ベッドでの生活が長くなると認知症や体力の低下によって、寝たきりになるリスクが高まり危険です。
高齢でぎっくり腰になった場合は、骨折の可能性も考えて念のため受診した方が良いでしょう。
病院で受けられるぎっくり腰の治療
ぎっくり腰で受診した場合、病院では以下のような治療を行います。
- コルセットの装着
- 湿布・内服薬の処方
- リハビリ
「病院に行っても意味がない」といわれることもありますが、受診することで症状に合わせた治療を受けられる可能性があります。
本章を参考に、受診した場合どのような治療が行われるか理解しておきましょう。
コルセットの装着
ぎっくり腰の急性期(発症直後)は、腰回りの筋肉をサポートして身体を支える「コルセット」を装着するケースがよく見られます。
「コルセットは筋力が下がる」という説もありますが、痛みが強い1〜2週間ほどの使用なら問題はありません。
ただし、痛みが治まった後に予防として使い続けると筋力が低下するリスクがあるため、医師の指示する期間を守って着用しましょう。
湿布・内服薬の処方
ぎっくり腰の発症直後は、消炎鎮痛薬(非ステロイド系抗炎症薬)の「湿布」や「飲み薬」で痛みを落ち着かせます。
また、背中の神経に麻酔薬を注射する「神経ブロック療法」によって、脳に痛みを伝える信号を遮断してつらい症状をやわらげる治療が有効な場合もあります。(文献2)
リハビリ
痛みが落ち着いた後は、医師の判断でリハビリを行うケースもあります。具体的には、腰や背中、太もものストレッチや腹筋、背筋などの筋肉トレーニングなどです。(文献3)
ただし、リハビリを始めるタイミングや行う内容は、個人の症状によって異なります。自己判断でのリハビリは避け、医師の判断に従いましょう。
ぎっくり腰で病院に行く前にできる応急処置
ぎっくり腰になったときに自宅でできる応急処置は、以下の通りです。
- 発症直後は安静にする
- 痛みが落ち着くまで冷やす
- 人の助けを借りず自分で動く
ぎっくり腰は再発するケースもあります。本章を参考に、今後再発した際に適切な対応ができるよう、応急処置の方法を理解しておきましょう。
発症直後は安静にする
ぎっくり腰になると激痛が急に襲ってくるため、驚いてパニックになりがちです。
大切なのは、まず「落ち着くこと」です。無理しないようにゆっくりと正座の体勢になり、深く息を吸って長く吐き出すような「深呼吸」を行いましょう。数分すると、腰周りの筋肉の緊張がやわらぎ、少しずつ楽になります。
痛みがやわらいだら、少しずつゆっくりと動きましょう。動くときは机や椅子などの倒れにくいものをつかむのもおすすめです。
痛みが落ち着くまで冷やす
ぎっくり腰の発症時は、腰が炎症を起こしている状態です。痛みがあるときは、氷枕や保冷剤などをタオルでくるみ、腰に当ててください。基本的には5〜10分くらいで痛みが軽減します。
ただし、冷やしすぎると逆効果になるケースがあるため、痛みが落ち着いたら冷やすのはやめましょう。
人の助けを借りず自分で動く
ぎっくり腰の痛みが落ち着いて動くときは、人の助けを借りずに自分で動くことをおすすめします。
なぜなら、人の手を借りると予期せぬ場所に力が入り、痛みが悪化する可能性があるからです。
身体を起こす手伝いを人から申し出られた場合は、「自分で少しずつ動いた方が安心なので」と伝え、自分のペースで身体を動かしてみてください。
まとめ|ぎっくり腰の症状がつらいなら病院を受診しよう
本記事では、ぎっくり腰で受診する目安や受診して受けられる治療法、自分でできる応急処置などを詳しく解説しました。
ぎっくり腰は病院に行かなくても数日で痛みが治まるケースが一般的です。しかし、ぎっくり腰と思われる症状が「椎間板ヘルニア」「化膿性脊椎炎」「骨折」などの場合もあります。
病院では、痛み止めの湿布や飲み薬、注射などの治療を行います。必要に応じてコルセットの処方やリハビリなども受けられるため、痛みがつらい、長く続いていて心配などの場合は受診すると良いでしょう。
当院「リペアセルクリニック」では、脊髄損傷に対して幹細胞による治療を行っています。
脊髄の損傷部へ直接幹細胞を投与するため、神経再生の効果をより高めることが期待できます。
この記事がぎっくり腰の正しい対処法を知るのに役立ち、より早期に快適な生活に戻れるきっかけになれば幸いです。
ぎっくり腰で病院に行くべきか悩んでいるときによくある質問
ぎっくり腰の治療にストレッチやマッサージをやってもいいですか。
ぎっくり腰を発症してすぐにストレッチをしても、ぎっくり腰を悪化させることはありません。ただし、ストレッチに不安があるなら、安心できるまで待ちましょう。
また、ぎっくり腰でマッサージをやって良いかどうかは、症状によって異なります。マッサージについては自己判断せず、医師に相談しましょう。
ぎっくり腰の予防法はありますか。
ぎっくり腰の予防法は、以下の通りです。
- 朝起きるときは、腰を丸めて体をほぐしてからゆっくり起きる
- 洗顔は膝を曲げて重心を下げるようにして行い、腰への負担をやわらげる
- ものを拾うときは、膝も曲げて腰を落とすようにして拾う
- 背筋や腹筋の筋力トレーニングをする
- ストレッチで股関節を柔らかくする
- 太り気味なら腰の負担を軽くするため、ダイエットを心がける
- 太らないように体重管理をする
- 背筋を伸ばし、良い姿勢を心がける
また、ぎっくり腰の再発予防には、適切な治療を受けてぎっくり腰を完治させることも大切です。
ぎっくり腰の予防法や再発防止策については、以下の記事もご覧ください。
参考文献一覧
文献2
菅尚義,宮崎昌利,吉田省二,三原茂.急性期腰痛に対する硬膜外ブロックについて.日本腰痛会誌.2006;10:77-84
文献3
千田益生,堅山佳美ら.腰痛のリハビリテーション-運動療法を中心に-.リハビリテーション医学 2006;43:661-667