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【医師監修】幻肢痛とは?原因・症状から治療法、セルフケアまで徹底解説
事故や病気で手足を失ったあと、存在しないはずの場所が痛む「幻肢痛」に悩んでいませんか。
「いつまで続くのか」「治療法はあるのか」「眠れないほどの痛みはなぜ起こるのか」と不安を感じている方もいるでしょう。
幻肢痛は神経の働きの変化によって生じる神経障害性疼痛です。
本記事では、幻肢痛の原因・症状・治療法・今後の選択肢までを整理します。
この記事を通して、幻肢痛への理解を深め、ご自身やご家族に適した治療の選択肢を見つける一助となれば幸いです。
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目次
幻肢痛とは存在しない部位に生じる神経障害性疼痛
幻肢痛は、四肢切断後に実際には存在しない部位に痛みを感じる状態です。まずは、幻肢痛の基本と仕組みを整理します。
幻肢感覚と幻肢痛の違い
幻肢痛と似た言葉に「幻肢感覚」があります。これは、失った手足がまだそこにあるように感じたり、動いているように感じたりする感覚のことです。
幻肢感覚には必ずしも痛みが伴うわけではありませんが、幻肢痛は失った部位に以下のようなはっきりとした痛みが伴います。
- 焼けるような痛み
- 刺すような痛み
- 締め付けられるような痛み
また、切断した手足の残っている部分に生じる持続した痛みとは区別されます。(文献1)
幻肢痛が起こるメカニズム
幻肢痛の詳しいメカニズムは未だ完全には解明されていません。しかし現時点では、切断部分に残った末梢神経と、痛みを処理する中枢神経(脳や脊髄)の両方が複合的に関与しているのが有力です。(文献2)
中枢神経の関与における具体的なメカニズムとして、脳の感覚領域の再編成が挙げられます。手足を喪失すると、脳への感覚入力が変化し、脳の中にある感覚が再構築されるため、本来は痛みではない信号を痛みとして誤認しやすくなるのです。
幻肢痛の主な症状
幻肢痛の症状は、痛みの種類や強さ、頻度が人によって大きく異なり、予測できない痛みが、生活の質を大きく低下させる要因となり得ます。
ここでは、幻肢痛の具体的な症状と、それが日常生活にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
具体的な痛みの種類
幻肢痛は、人によって感じ方は異なり、さまざまな言葉で表現されます。(文献1)
- 刺すような、ヒリヒリするような、電気が走るような痛み
- 締め付けられる、万力で締められるような痛み
- けいれんする、ねじれるような感覚
幻肢痛は単純な痛みだけでなく、不快な運動感覚を伴うこともあるのが特徴です。
日常生活への影響
幻肢痛の激しい痛みは、日常生活のさまざまな側面に深刻な影響を及ぼします。具体的には以下のようなケースが挙げられます。
|
幻肢痛による日常生活への影響 |
詳細 |
|---|---|
|
睡眠障害 |
夜中に突然の激痛で目が覚めてしまい、十分に眠れない |
|
集中力・活動量の低下 |
痛みが気になって仕事や勉強に集中できなかったり、外出する意欲がなくなったりする |
これらの問題が積み重なることで、不安や抑うつ状態などに陥りやすくなり、精神的な健康にも影響を与え、生活の質を著しく低下させてしまう可能性があります。(文献2)
幻肢痛に対する3つの治療法
幻肢痛の治療は、一つの方法で完治を目指すよりも、複数のアプローチを組み合わせて痛みをコントロールしていくのが一般的です。
ここでは、代表的な3つの治療法について解説します。
- 薬物療法
- 電気刺激療法
- リハビリテーション
本章を参考に、幻肢痛における治療法の選択肢を知っておきましょう。
薬物療法
薬物療法では、以下のような種類の薬を使用します。
- 鎮痛薬
- 抗けいれん薬
- 抗うつ薬
- 抗てんかん薬
- 抗不整脈薬
オピオイド系鎮痛薬(モルヒネやトラマドール)が使われるケースもありますが、依存や乱用のリスクが高く副作用も懸念されるため、使用は慎重におこなうべきだと考えられています。(文献5)(文献6)
また、局所療法として、カプサイシンクリームの塗布やリドカインスプレーの噴霧などがおこなわれる場合があります。
いずれにしても、薬物療法は作用と副作用のバランスを考え投与するのが望ましいため、主治医と十分コミュニケーションを取りましょう。
電気刺激療法
電気刺激療法には、3つの種類があります。
- 脊髄刺激
- 視床刺激
- 大脳皮質刺激
脊髄刺激を与えると、痛みが脳に伝わりにくくなります。刺激を与えると、痛みの伝達を抑制する物質が増加するため、神経の興奮を抑制して痛みの緩和につながるのです。
また、大脳皮質にある一次運動野や視床へ電気刺激を与えても、幻肢痛を和らげるケースが報告されています。刺激を与える部位は、切断部位や神経の残っている部分によって治療方法が異なります。(文献6)
リハビリテーション
幻肢痛に対するリハビリテーションは、主に以下2つの方法で脳の感覚再編成を促し、痛みの緩和を図ることが目的です。
- 鏡療法(ミラーセラピー)
- 義肢・装具の装着
鏡療法(ミラーセラピー)は、痛みが強く直接的な治療が難しい場合に有効なリハビリテーションです。
体の中心に鏡を配置し、鏡に映った健側を動かすことで脳に「失った手足が問題なく動いている」と認識させます。これを繰り返すと知覚と運動の情報伝達が脳内で再構築され、幻肢痛を和らげる仕組みです。(文献7)
また、義肢や装具にも、失った機能や役割を補うだけでなく、幻肢痛を和らげる効果があります。
義肢や装具の装着は、鏡療法と同様に脳に失った四肢を認識させるため、義肢の装着が日常的になると幻肢痛も消失していく場合が多いです。
ただし、幻肢痛がひどく、義肢や装具の装着ができない場合もあります。リハビリは、医師をはじめ、理学療法士や義肢装具士など、医療者と相談しながら進めていきましょう。(文献8)(文献9)(文献10)
幻肢痛のセルフケア方法2つ
幻肢痛のセルフケアをする方法として、以下2つが挙げられます。
- ストレスをコントロールする
- 家族・支援者によるサポートを受ける
本章で幻肢痛のセルフケア方法を知り、医療機関での治療以外にできることがないか検討してみましょう。
ストレスをコントロールする
適切なストレス管理で痛みを和らげることもできます。
幻肢痛患者は、痛みによって、不安や怒り、恐れなど、さまざまな感情が入り混じっている心理状態です。慢性的なストレスは、痛みを過敏に感じさせるため、幻肢痛が悪化する原因にもつながります。
自分でできるストレスのコントロール方法は、以下の通りです。
- 趣味に没頭する
- 散歩をする
- 映画やドラマを見る
- 好きな物を食べる
- お風呂にゆっくりつかる
- 規則的な睡眠をとる
- 香りを楽しむ
- 声を出して笑う
- 日光を浴びる
過度な運動などの幻肢痛が悪化するようなものは避け、まずは自分ができそうなものから始めてみましょう。暴飲暴食、過度な飲酒・喫煙などはかえって体調不良や睡眠不足の原因となり、痛みの悪化を招くため注意が必要です。
家族・支援者によるサポートを受ける
幻肢痛のつらさは、ご本人にしか分からない部分も多く、孤独を感じやすいものです。そのため、ご家族や身近な人からのサポートを受けることも大切です。(文献10)
幻肢痛は、常に一定の強さで続くわけではなく、寝ていても飛び起きてしまうような激痛が突然襲ってくることもあります。痛みの感じ方や頻度は人それぞれで、数年で痛みがなくなる方もいれば、長年にわたって苦しめられる方もいます。
そのため、ご自身だけで不安や苦しみを抱えるのではなく、家族や周囲の人にサポートを依頼し、治療へのモチベーションを維持しながら根気強く治療を継続しましょう。
幻肢痛治療の新たな選択肢
四肢の一部を失った方が、幻肢痛を乗り越え、生活の再構築をしていくのは、とても困難な道のりでしょう。
幻肢痛には、従来先述したような3つの治療法が用いられていますが、IT技術の進化に伴い、以下2つのような新しい治療法も登場しています。
- VR技術による「遠隔セラピー」
- BCI(ブレインコンピューターインターフェイス)による「脳のトレーニング」
体験を行う交流会もあるため、積極的に参加することで新たな発見があるかもしれません。お住まいの地域での開催がないか調べてみましょう。
VR技術による「遠隔セラピー」
VR空間のなかで、失った四肢を補間し、脳を錯覚させるセラピーも開発されています。幻肢痛を感じる患者とセラピストが一緒にVR空間の中に入り、手足を動かすイメージを共有する手法です。(文献11)
3Dを利用したリアルな空間なので、実際にリハビリをしているような雰囲気が味わえます。
さらに、VR空間でセラピーを行うため、セラピストが近くにいなくても、いつでもどこでも実施が可能です。
鏡療法は切断部位によって有効でない場合もありますが、VR技術による遠隔セラピーならばより多くのケースに対応できます。
BCI(ブレインコンピューターインターフェイス)による「脳のトレーニング」
BCIによる「脳のトレーニング」では、脳活動を計測し、得られた計測信号から脳情報を読み解き、それに基づいて架空の手足の映像をオンラインで動かします。(文献12)
架空の手足を動かすことで、脳の変化を促し、新しい感覚を得られたり、治療につながっていくことを目的としたものです。
この訓練を3日間行うことで、訓練後5日間の痛みが30%以上減弱した調査結果もあります。
幻肢痛は自分に適した治療法を検討しよう
幻肢痛とは、本来存在しない部位に生じる神経障害性疼痛を指します。
幻肢痛の治療法には、薬物療法、リハビリテーション、セルフケア、そして最新のテクノロジーを用いた治療など、さまざまな選択肢があります。
幻肢痛の改善には、痛みの原因・メカニズムを理解し、自分に合った治療法を選択することが大切です。
日々情報収集をおこないながら、自分に合った治療法を見つけましょう。
当院「リペアセルクリニック」は、幹細胞の働きを活かし、本来の機能ができなくなった臓器や骨などを修復する「再生医療」を扱うクリニックです。再生医療には、神経障害による痛みを改善させる治療もあります。
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幻肢痛に関するよくある質問
幻肢痛はいつまで続きますか?
幻肢痛は、慢性的な痛みに分類され、必ずしも自然に消えるとは限りません。一般的には、四肢の切断後数日以内に始まり、長期間にわたって痛みが続くことが多いとされています。
ただし、個人差は非常に大きく、時間の経過とともに痛みの強さや頻度が自然に和らいでいくケースも報告されています。適切な治療を受けることで、痛みをコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることは十分に可能です。
幻肢痛に痛み止めは効きますか?
市販されているような一般的な痛み止め(NSAIDsやアセトアミノフェンなど)は、神経の痛みが原因である幻肢痛に対して、強い効果を発揮するという明確な証拠は乏しいのが現状です。
海外の研究では、モルヒネやガバペンチン、ケタミンといった特定の薬剤が短期的な痛みの緩和に効果を示したという報告もあります。(文献3)
しかし、これらの薬は副作用のリスクも伴うため、医師が効果と副作用のバランスを慎重に見極めながら処方する必要があります。自己判断での服用は避けてください。
幻肢痛で眠れない時の対処法は?
幻肢痛による睡眠障害は非常につらい問題です。
まずは、痛みのコントロールについて主治医に相談することが第一です。適切な薬物療法やリハビリテーションによって、夜間の痛みが軽減される可能性があります。
それに加えて、一般的に用いられる工夫として、次のような方法を試すのも一案です。(文献4)
- 就寝前に気持ちを落ち着ける時間を作る
- 寝具や姿勢を見直す
- 日中の活動量と生活リズムを整える
痛みが強い場合は無理せず、専門家のアドバイスを求めましょう。
参考文献
(文献1)
残存肢の痛み|MSDマニュアル家庭版
(文献2)
幻肢痛の機序と対応|Jpn J Rehabil Med
(文献3)
Pharmacologic interventions for treating phantom limb pain|Cochrane Database Syst Rev
(文献5)
日本ペインクリニック学会 「神経障害制疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」
(文献6)
緒方徹、住谷昌彦「幻肢痛の機序と対応」Jpn J Rehabil Med 2018;55:384-387
(文献7)
ミラーセラピーについて | 脳梗塞集中リハビリセンター │ 社会医療法人 生長会
(文献9)
片山容一、笠井正彦 「幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚」2017年
(文献10)
落合芙美子 日本義肢装具学会誌「義肢装具に対するチームアプローチ」日本義肢装具学会誌Vol.13 No.2 1997
(文献11)
幻肢痛VR遠隔多人数セラピーシステム|JDP




















