あなたの股関節を守る!股関節唇損傷の全知識と効果的なケア方法
公開日: 2024.07.03更新日: 2024.10.07
目次
〜自宅でもケアして回復をサポートしましょう〜
「股関節唇損傷ってなに?」
「サッカーをしているときに股関節を痛めたけどどうすればいいの?」
このように悩でいる方も多いのではないでしょうか。
股関節を痛めるとスポーツができなくなるだけではなく、歩いたり走ったりできなくなります。さらには、股関節唇損傷により大腿骨頭が安定しないため、腰や膝を痛めやすくなり日常生活に支障をきたす恐れがあります。
今回は股関節唇損傷の診断や治療、自宅でできるケアなどを詳しく紹介します。この記事が、股関節唇損傷と診断され症状に悩んだり、早く回復できないかと感じたりするあなたの悩みを解決できると幸いです。
股関節唇損傷って何?
股関節唇損傷は 「股関節を構成する寛骨臼(股関節のくぼみの部位)の軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすることで起こる病気のこと」です。
スポーツで脚を広げ過ぎたり、繰り返し関節を曲げたりすることがきっかけで発症します。ほかにも、もともと股関節が傷つきやすい形であることが原因で起こります。
股関節唇損傷になった始めの頃は、歩くときに違和感を覚えるくらいの症状です。ただし、病気が進むと階段を登るときや椅子に座るとき、しゃがむときなどの衝撃に痛みを生じることもあるでしょう。そのため、股関節唇損傷による症状が悪くなる前に対処することが大切です。
股関節唇損傷の診断と治療
ここでは、股関節唇損傷と診断される基準や治療方法、治療後のリハビリテーションについて詳しく解説します。それぞれをみていきましょう。
専門家による診断プロセス
股関節唇損傷と診断されるまでには以下4つの流れがあります。以下の表を参考にしてください。
診断の流れ | 特徴や注意点 |
---|---|
1.問診 | ・医師が以下のポイントで患者さんに詳しく確認 痛みの部位(股関節前/後ろ/内側/外側のどのあたりか) 痛みの程度(鈍痛/刺痛/ずきずき痛むか) 痛みの発症時期(いつ頃から痛み始めたか) 安静にしているときと動いたときで違いがあるか 日常生活で困っていることはないか スポーツ外傷のときは受傷したときの状況を詳しく確認 視診:腫れ、変形、歩行の異常がないか観察 |
2.身体診察 | ・視診:腫れ、変形、歩行の異常がないか観察 ・股関節の屈曲、伸展、内転、外転を確認 ・内旋外旋運動をして可動域と痛みの有無を確認 ・徒手筋力検査で股関節周囲の筋力を確認 ・なかには理学療法の検査を実施する場合もある |
3.画像検査 | ・X線検査(レントゲン):骨折や関節症に変化がないか確認 ・MRI検査: 関節軟骨の状態(損傷の有無)、靱帯断裂の有無、関節唇の損傷(部位、程度)を詳細に評価 |
4.診断 | 1~3を実施して、最終的に医師が診断 |
問診や身体診察のみで股関節唇損傷と診断する場合もあります。
ただし、ほかの病気や外傷がないかを確認するためにX線検査やMRI検査が行なわれるのが一般的です。
医師の指示によっては、追加の検査が行なわれることもあります。
治療オプション
股関節唇損傷の治療は主に以下の4つです。
- ・物理療法
- ・薬物療法
- ・手術
- ・リハビリテーション
股関節唇損傷は、自然と治癒することはほとんどありません。そのため、適切な治療を受けることが重要です。ここでは、それぞれの治療方法を詳しく解説します。
股関節唇損傷と診断されると、手術する前に保存療法(手術以外の方法)を行います。具体的には、電気や光線、超音波などのエネルギーを利用した治療です。整形外科や整骨院で行われている電気マッサージをイメージするとわかりやすいでしょう。
これらの治療は、痛みを減らす効果が期待できます。ほかにも、日常生活のなかで困っていることに対して動き方や関節の使い方などを指導して、可能な限り自力で行えるように支援します。
また、痛みが強いときには痛み止めの薬を飲んだり、ヒアルロン酸注射やステロイド注射などの薬物療法を実施する場合があります。痛みが軽くなると、リハビリテーションを進めやすく日常生活も送りやすくなるでしょう。
ただし、物理療法と薬物療法、いずれの治療法も股関節唇損傷を治すものではありません。あくまでも股関節唇損傷によってあらわれる症状に対して治療を行うものであり、根本的な治療ではないことを知っておいてください。
物理療法や薬物療法を行っても痛みが続いたり、日常生活を送るのが難しくなったりするときは手術になる恐れがあります。股関節唇損傷の手術には、股関節鏡視下術で股関節の裂けた部分を修復したり除去したりします。ほかにも、再建術があります。かかりつけ医と相談のうえで、納得できる治療方法を選びましょう。
治療後のリハビリテーション
股関節唇損傷の治療を行った後のリハビリテーションは主に次の2つです。
- ・筋力トレーニング
- ・股関節の可動域のトレーニング
治療後は痛みが生じる恐れがあるため、主治医の指示のもとで痛みが出ない範囲でリハビリテーションに取り組みます。治療したばかりの頃は、回復を図りながら負担がかからないように股関節を動かしてください。身体の状態が安定してくると、少しずつ負荷をかけて歩行の距離を伸ばします。治療後の段階や痛みの程度など患者さんそれぞれによってリハビリテーションの内容は異なるため、主治医やリハビリのスタッフと相談しながら進めましょう。
自宅でのケアと回復サポート
股関節唇損傷は、自宅でもケアすることが大切です。自宅での適切なケアが回復を進めるといえるでしょう。
日常生活での注意点
日常生活では、次のポイントに注意することが重要です。
- ・激しい動作や無理な体勢は避ける
- ・長時間の座位や立位は避ける
- ・適度な休息を取り、過度の負荷は避ける
- ・つま先立ちや深い屈曲は避ける
上記のような行動を避けることで、股関節への負担を軽減できます。痛みの程度や治療後の主治医からの指示によっては、移動する際に補助器具を使用したり、手すりを使ったりなどの工夫が必要です。
自宅で行うことができるストレッチと運動
ここでは、自宅で行うストレッチや運動を紹介します。
ストレッチ | 運動 |
---|---|
・腸腰筋ストレッチ | ・膝立て運動 |
床に仰向けになり、片膝を立てて太ももを引き寄せる。反対側の足裏をベッドにつけたままゆっくり膝を伸ばす | 仰向けになり片足を床につけ、もう片方の膝を立てる |
・大腿四頭筋ストレッチ | ・伏せ運動 |
壁に立ち足を後ろに引いて膝裏をストレッチ | うつ伏せになり、片足ずつ後方に引き上げる |
・内転筋ストレッチ | – |
片足を閉じて、もう片足を広げるイメージでストレッチ | – |
回復をサポートする栄養と生活習慣
股関節唇損傷の回復をサポートする栄養には、次のものがあげられます。
栄養素 | 目的 | 食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 筋肉や靭帯の修復 |
・赤身肉 |
オメガ3脂肪酸 | 炎症を抑える | ・大豆 ・青魚や青魚から取れる魚油 ・くるみなど |
ビタミンC | 組織の修復を助ける | ・オレンジ ・いちご ・ブロッコリーなど |
上記の食品を摂取できると、股関節唇損傷の回復に役立つ可能性があります。
一方で、喫煙すると血液の流れが悪くなるため禁煙してください。ほかにも、ストレスがかかると身体が回復しにくくなったりするため、リラックスして身体を休めましょう。
予防と長期的な管理方法
股関節唇損傷を発症すると、自然に治ることはほとんどないといわれています。そのため、股関節唇損傷の予防と長期的な管理が大切であり、時間がかかります。それぞれについて詳しくみていきましょう。
股関節唇損傷の予防方法
先述したように、股関節唇損傷の予防方法はできるだけ股関節に負担がかからないように身体の動かす方法を実践することです。股関節が深く曲がったり、股関節が開いたりする動作はしないでください。
例えば、以下の動作は避けましょう。
- ・深いソファや床に座る
- ・しゃがみ込む
- ・椅子から立つときは積極的に手すりを使う
また、体重が重すぎると股関節への負担となるため、適正な体重の維持が大切です。
適正な体重はBMI(体重kg÷身長mの2乗)で18.5〜25未満とされているため、このBMIを目安としましょう。
長期的な健康維持のための運動療法
股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで発症する病気です。そのため、体幹の機能訓練や骨盤の可動域を改善する訓練、臀部の筋力強化などを行わなければなりません。とはいえ、運動療法を行うことにより、かえって股関節に負担がかかる恐れがあります。そのため、理学療法士やトレーナーに相談したうえで実施してみてください。
おわりに
股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすることで起こります。一般的には、まずは物理療法や薬物療法などの保存療法を行い、効果がなければ手術を検討します。
ただし、治療だけではなく自宅でできるストレッチや軽い運動をすることで、回復をサポートできる可能性があります。整形外科医や理学療法士などに相談しながら、社会生活への早期復帰を目指しましょう。
参考文献 |