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帯状疱疹後神経痛に効く薬は?5つの薬の効果・副作用を解説

「帯状疱疹が治ったのに痛みが続くのはなぜ?」「帯状疱疹後神経痛にはどのような薬が効くの?」このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の後遺症として起こる難治性の痛みです。
皮膚の痛みやしびれ、灼熱感などが長期間続き、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
今回は、帯状疱疹後神経痛に効果が期待できるさまざまな薬について、選択肢や効果、副作用などを詳しく紹介します。
この記事が、痛みに悩むあなたの治療選択の助けになれば幸いです。
目次
帯状疱疹後神経痛に使用される5つの薬
帯状疱疹後に残る神経痛には、症状に応じてさまざまな薬が使われます。
ここでは、よく処方される代表的な5種類の薬について、それぞれの特徴や働き、注意点などをわかりやすく解説します。
抗ウイルス薬
抗ウイルス薬とは、ウイルスの増殖を抑える薬のことです。
帯状疱疹後神経痛の原因となる水痘帯状疱疹ウイルスの活動を抑えることで、神経の損傷を防ぎ、痛みの発症リスクを下げる効果が期待できます。
代表的な薬剤としては、アシクロビルやバラシクロビルなどがあります。
抗てんかん薬
抗てんかん薬とは、本来はてんかんの治療に用いられる薬ですが、神経の過剰な興奮を抑える働きがあるため、帯状疱疹後神経痛の治療にも使われます。
痛みの信号を伝える神経の活動を抑制することで、痛みを和らげる効果が期待できます。
代表的な薬剤としては、ガバペンチンやプレガバリン(リリカ)などがあります。
抗うつ薬
抗うつ薬とは、うつ病の治療に用いられる薬ですが、慢性の痛みに対しても効果があることが知られています。
セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを調整することで、痛みの信号を抑制し、痛みを和らげる効果が期待できます。
代表的な薬剤としては、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(デュロキセチンなど)があります。
鎮痛薬(オピオイド含む)
鎮痛薬とは、痛みを和らげる薬の総称です。
帯状疱疹後神経痛に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどの一般的な鎮痛薬が使われることがあります。
また、痛みが強い場合には、オピオイド鎮痛薬(トラマドールなど)が処方されることもあります。
これらの薬は、痛みの信号を遮断したり、痛みを感じにくくしたりすることで、鎮痛効果を発揮します。
トピカル治療薬
トピカル治療薬とは、患部に直接塗布したり貼付したりする薬のことです。
帯状疱疹後神経痛に対しては、リドカインパッチやカプサイシンクリームなどが用いられることがあります。
これらの薬は、痛みの信号を局所的に遮断したり、痛みを感じにくくしたりすることで、症状の緩和に役立ちます。
帯状疱疹後神経痛の薬について紹介してきましたが、そもそもの原因や詳しい症状について知りたい方は、あわせて以下の記事をご覧ください。
帯状疱疹後神経痛の薬の効果と副作用
帯状疱疹後神経痛の治療に用いられる薬物は、痛みの伝達を遮断したり、神経の感受性を調整したりすることで鎮痛効果を発揮します。
ただし、薬の効果と同時に、副作用のリスクについても理解しておく必要があります。
以下の表で、それぞれの薬の効果、副作用をまとめています。
薬剤 | 効果 | 副作用 |
---|---|---|
抗てんかん薬 |
神経細胞の興奮を抑制し、鎮痛効果を発揮 | 眠気、めまい、体重増加など |
三環系抗うつ薬・SNRI | 痛みの伝達を遮断 | 口渇、便秘、視力障害など |
外用薬 | 局所的な鎮痛効果 | 塗布部位の皮膚炎など |
オピオイド | 強力な鎮痛作用 | 嘔気、便秘、眠気、依存リスクなど |
これらの薬剤は、それぞれ異なる作用機序を持っていますが、いずれも帯状疱疹後神経痛の痛みを和らげることを目的として使用されます。
抗てんかん薬は、神経の過剰な興奮を抑制することで、痛みの信号伝達を抑えます。
三環系抗うつ薬やSNRI(抗うつ薬の一種)は、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを調整し、痛みの伝達を遮断します。
外用薬は、患部に直接作用することで局所的な鎮痛効果を発揮します。
オピオイドは、強力な鎮痛作用を持っていますが、副作用や依存のリスクが比較的高いため、他の治療法で十分な効果が得られない場合に限って使用されます。
これらの薬剤の使用に際しては、患者様の状態や痛みの程度、他の合併症の有無などを考慮し、医師が適切な薬剤を選択します。
また、定期的なモニタリングを行いながら、効果と副作用のバランスを見極め、必要に応じて薬剤の種類や用量を調整していきます。
副作用については、患者様によって現れ方や程度が異なるため、医師や薬剤師からの説明を十分に理解し、異変を感じたら速やかに報告することが大切です。
【選定基準】薬の適した選び方
帯状疱疹後神経痛に適した薬を選ぶ際のポイントは、以下の表のとおりです。
年齢や、服用中の薬との相性、身体の状態などを加味して選択されます。
考慮すべき要因 | 具体的な内容 |
---|---|
年齢 | 高齢者では、薬物の代謝・排泄が遅れる傾向があるため、慎重な投与が必要 |
全身状態 | 患者様の全身的な健康状態を評価し、薬の選択に反映させる |
合併症 | 腎機能障害や肝機能障害など、合併症の有無や程度を考慮する |
他の服用中の薬剤 | 併用薬との相互作用を確認し、必要に応じて投与量の調整や薬剤の変更を行う |
痛みの性質・部位 | 痛みの性質(灼熱感、チクチク感など)や部位に応じて、適切な薬剤を選択する |
治療歴 | これまでの治療経過や効果、副作用の情報を参考にする |
医師は、これらの要因を総合的に判断し、患者様に最適な薬を選択します。
また、定期的なモニタリングを行いながら、効果と副作用のバランスを見極め、必要に応じて投与量の調整や薬剤の変更を行います。
患者様も、自身の症状や体調の変化を医師に伝え、治療方針について積極的に相談することが大切です。
医師と患者様が協力して、最適な薬の選択と調整を行っていくことが、帯状疱疹後神経痛の効果的な管理につながります。
早期治療の大切さをクリニックの研究をもとに解説
帯状疱疹後神経痛の薬物治療は、患者様の年齢や症状、合併症の有無、治療歴などを考慮して、医師が適切な薬剤を選択します。
治療効果や副作用の現れ方には個人差がありますが、早期の治療が大切ということが日本ペインクリニック学会のいくつかの研究によってわかっています。
帯状疱疹後神経痛の薬物治療は、患者さまの年齢や症状、合併症の有無、治療歴などを考慮して、医師が適切な薬剤を選択します。
神経ブロックに関する研究結果
日本ペインクリニック学会の研究によると、帯状疱疹後神経痛の予防における神経ブロックの効果は、全患者データでは統計的に有意な差は認められませんでした。
しかし、受診時期によって層別解析を行ったところ、帯状疱疹発症から病院受診までの期間が短いほど、神経ブロックが帯状疱疹後神経痛の予防に効果を示す可能性が高くなることがわかりました。(文献1)
帯状疱疹関連痛の改善に関する研究結果
東京女子医科大学の研究チームによる研究では、帯状疱疹関連痛の改善には受診時期と初期治療内容が重要であることが明らかになりました。
この研究では、次のように示されています。
- 帯状疱疹発症から30日以内にペインクリニックなどの痛みの専門機関を受診した患者は、痛みの改善率が高いことがわかりました。
- 発症から30日以内に専門機関を受診できない場合は、かかりつけ医で神経障害性疼痛治療薬の処方や神経ブロック治療を受けることが、その後の痛みの改善に重要な影響を与えます。
- 発症から31日以上経過してから痛みの専門機関を受診した患者のうち、それまでに適切な神経障害性疼痛治療を受けていなかった患者は、痛みの改善率が有意に低くなることが示されました。
この研究結果は、帯状疱疹発症時には早期の専門的治療が望ましく、それが難しい場合でも初期段階での適切な疼痛管理が長期的な痛みの改善に重要であることを示しています。
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まとめ|神経痛が気になったら早めに医師に相談を!
帯状疱疹後神経痛の薬物治療では、痛みの程度や生活への影響を医師にしっかりと伝えることが大切です。
治療の選択肢や期待される効果、起こり得る副作用について、医師から十分な説明を受けましょう。
また、薬の効果や副作用の現れ方を注意深く観察し、定期的な診察で医師に報告していくことも欠かせません。
帯状疱疹後神経痛は、なるべく早期から適切な治療を継続することで、多くの場合徐々に改善が見込めます。
痛みと向き合う辛さはありますが、諦めずに医師と協力しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。
帯状疱疹後神経痛に関するQ&A
本章では、帯状疱疹後神経痛について、予防法や診断、自宅ケアのコツ、市販薬やリリカの副作用など、よくある質問に5つお答えします。
帯状疱疹後神経痛を予防することは可能?
帯状疱疹後神経痛の予防には、帯状疱疹そのものを早期に治療することが大切です。
特に発疹が出てから3日以内に抗ウイルス薬を服用することで、神経へのダメージを抑え、後遺症のリスクを下げられるとされています。
また、50歳以上の方は帯状疱疹ワクチンの接種も有効です。
ワクチンは免疫力の低下によるウイルスの再活性化を防ぎ、帯状疱疹の発症を抑えることができます。
普段からストレスや疲労を溜め込まず、体調を整えることが大切です。
帯状疱疹後神経痛の診断方法は?
帯状疱疹後神経痛の診断は、主に問診と視診によって行われます。
医師は帯状疱疹の既往歴や皮膚に残る痕、痛みの場所や性質を確認し、継続する神経痛かどうかを判断します。
血液検査やレントゲンは通常必要ありませんが、他の疾患との鑑別が難しい場合には追加されることもあります。
痛みが長引いている場合や、日常生活に支障が出るほど痛む場合には、早めに受診することをおすすめします。
自宅でできる帯状疱疹後神経痛のケアの方法は?
神経痛が続くときは、肌への刺激をなるべく避けることが大切です。
柔らかく通気性のよい衣類を選び、痛みがある部分には直接圧がかからないよう工夫しましょう。
冷却パックをタオル越しに軽く当てると、一時的に痛みを和らげる効果が期待できます。
また、体を温めすぎたり、強いマッサージを加えるのは逆効果になることがあるため注意が必要です。
プレガバリン(リリカ)の副作用は?
リリカは帯状疱疹後神経痛の治療によく使われる薬ですが、副作用も確認されています。
代表的なものとしては、ふらつきや眠気、めまいがあります。
人によっては体重の増加や手足のむくみ、集中力の低下を感じることもあります。
特に高齢の方や、他の薬を併用している方は副作用が出やすいため、服用を始める際は医師とよく相談することが大切です。
急に自己判断で中止すると症状が悪化する可能性があるため、必ず医師の指示に従って調整しましょう。
帯状疱疹後神経痛におすすめの市販薬はある?
市販薬の中には、帯状疱疹後神経痛に対してある程度の効果が期待できるものがあります。
例えば、消炎鎮痛成分を含む外用薬や、しびれや神経痛向けのビタミンB群を含む内服薬が選択肢となります。
外用薬
- インドメタシンやフェルビナクを含む消炎鎮痛パッチ・テープ剤
(例:フェイタス®、モーラステープ®など) - メントールやカンフルを含む清涼感のある塗り薬
(例:メンソレータム®、アンメルツ®など) - リドカイン配合の局所麻酔成分を含む貼付剤
(例:ユートクバン®など)
内服薬
- ビタミンB群(B1、B6、B12)を含む神経痛向けの薬
(例:アリナミンEX®、ノイロビタン®など) - アセトアミノフェンを含む鎮痛剤
(例:タイレノール®、カロナール®など)
しかし、これらはあくまで補助的な立ち位置であり、強い痛みや長引く症状には十分な効果が得られない場合が多いです。
市販薬で痛みが和らがない場合や、症状が悪化するようなら、早めに医療機関を受診した方がよいでしょう。
参考文献
(文献1)
日本ペインクリニック学会「帯状疱疹後神経痛予防のための神経ブロックの有効性」
https://www.jspc.gr.jp/mass/mass_clin-res01.html(最終アクセス:2025年4月27日)
(文献2)
長谷川晴子ほか.「当院における帯状疱疹関連痛の疼痛改善に影響を与える要因の後ろ向き研究」『日本サポーティブケア学会誌』30(4), pp.71-78, 2023年
https://doi.org/10.11321/jjspc.22-0031(最終アクセス:2024年4月27日)