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ギラン・バレー症候群(GBS)とは?原因・症状・治療法を医師が解説

ギランバレー症候群
公開日: 2025.02.10 更新日: 2025.11.29

ある日突然、手足のしびれや筋力低下を感じたことはありませんか?もしかしたら、それはギラン・バレー症候群の初期症状かもしれません。

聞き慣れない病名かもしれませんが、年間10万人あたり1〜2人が発症する病気で、2021年のLancet誌では世界で最も一般的な急性弛緩性麻痺の原因と報告されています。

免疫システムが誤って自分の神経を攻撃してしまうこの病気、実は風邪や下痢といった感染症がきっかけで発症することも。

重症化すると呼吸困難に至るケースもありますが、迅速な診断と治療の開始により、後遺症のリスクを減らすことが可能です。

この記事では、ギラン・バレー症候群の症状、原因や治療法、その後の経過について、わかりやすく説明します。正しく理解し、もしもの時に備えましょう。

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ギラン・バレー症候群(GBS)とは?発症するメカニズムを解説

ギラン・バレー症候群のメカニズム

引用:日本神経学会「ギラン・バレー症候群

ギラン・バレー症候群とは、免疫システムが誤って自分自身の末梢神経を標的にしてしまう自己免疫疾患です。本来は細菌やウイルスと戦うはずの免疫が暴走し、神経のはたらきを損なうことが特徴とされています。

神経への攻撃が続くことで電気信号の伝達が乱れ、手足のしびれや筋力低下を引き起こします。さらに、炎症物質が長く神経周囲にとどまると髄鞘(神経線維を覆っている膜)の損傷が進み、信号伝達の効率が一層低下します。

免疫異常と神経損傷が並行して起こるメカニズムにより、症状が急速に拡大する点がこの疾患の特徴です。

ギラン・バレー症候群の原因

ギラン・バレー症候群の明確な原因は、現段階ではまだ解明されていません。現時点で、もっとも関係が深いとされているのが、感染症の後に起こる免疫反応の異常です。

風邪や胃腸炎などの感染をきっかけに、免疫機能が誤って自分の末梢神経を攻撃対象としてしまい、その結果しびれや筋力低下を引き起こすことが明らかになっています。

この免疫の誤認は、病原体と神経細胞の一部が似ているために起こると考えられており、研究によって関連性が徐々に明らかになりつつあります。しかし、どの感染症が強く影響するのか、誰が発症しやすいのかといった詳細は、まだ特定されていません。

ギラン・バレー症候群の種類

ギラン・バレー症候群には、主に3つのタイプがあります。

タイプ 詳細
脱髄が優勢である 神経線維を覆うミエリン鞘が障害され、神経伝達が阻害される。代表例は急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)で、最も一般的。
軸索が侵される 神経線維自体が損傷されることで情報伝達が低下。急性運動軸索神経障害(AMAN)が代表例
フィッシャー症候群 眼球運動障害や運動失調、腱反射の消失が特徴で、手足の筋力低下は目立たない。

ギラン・バレー症候群は神経のどの部分が障害されるかによって症状や経過が異なるため、診断や治療方針を決める際にはタイプの特定が重要です。

ギラン・バレー症候群の主な症状

ギラン・バレー症候群の初期には他の疾患と共通する症状が多く見られ、診断の判断が難しいケースもあります。

風邪のような軽い症状だと安易に考えて放置すると、後遺症が残る可能性もあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。ここからは、ギラン・バレー症候群の主な症状を解説します。

初期症状

ギラン・バレー症候群では、発症初期に体の異変を感じることが多く、以下の症状が現れます。

  • 手足のしびれ
  • 筋力の低下
  • 疲労感

これらの症状は数日以内に進行することがあり、手足の動きや日常生活に影響を及ぼす場合があります。症状が現れたら早めに医療機関での受診を検討しましょう。

手足のしびれ

ギラン・バレー症候群では、発症初期に両側の手足の指先や足首にしびれ、あるいはチクチクとした異常感覚が生じることがあります。左右対称に症状が出る点が特徴です。

患者様の中には「最初は足が少しジンジンするだけだったのに、数日で両足全体にしびれが広がり、歩行が困難になった」と訴える方もいます。

筋力の低下

初期段階で筋力が弱まり、しびれと併発して手足の細かい動作が困難になります。具体的には、以下のような症状が現れます。

  • ボタンをかける、箸を持つといった、指先を使う動作が困難になる
  • ペットボトルの蓋を開けられない
  • 文字を書くのが困難になる
  • 歩行がふらつく
  • 階段の上り下りが難しくなる

これらは筋力の低下による初期症状の特徴で、日常生活に影響を及ぼす場合があります。

疲労感

疲れやすさや体のだるさも、ギラン・バレー症候群の初期症状としてよく見られます。患者様の中には「少し歩いただけで体が重く感じる」「朝起きても疲れがとれない」と訴える方もいます。

これらの疲労感は風邪や過労と誤認されやすいものの、実際には症状が急速に進行する場合があるため注意が必要です。

とくに手足のしびれや筋力低下を伴う場合は、症状が進む前に医療機関での診断を受けることが回復の鍵となります。

進行期の症状

ギラン・バレー症候群が進行すると、症状はより顕著になります。とくに以下の症状が現れます。

  • 手足の麻痺
  • 歩行困難
  • 呼吸困難

各症状は急速に悪化することがあるため、進行のスピードが速い場合はギラン・バレー症候群の可能性を疑い、早めに医療機関を受診することが大切です。

手足の麻痺

発症から数日~数週間が経過すると、筋力低下が一層強まり、手足に麻痺が生じます。

患者様の中には、指先や足先の細かい動きが困難になり、日常動作が制限されるケースも少なくありません。

衣服の着脱や食事、洗面、トイレなど、一人では行いにくくなる場合もあります。症状は左右対称に出ることが多く、進行の速さが特徴です。

歩行困難

足の筋力低下が進むと歩行が困難になります。初めは軽いしびれ程度でも、数日で杖や補助具が必要になる場合もあります。

症状が進行すると歩行だけでなく、日常生活の動作全般に支障が出ることがあり、移動や立位の安定性が著しく低下するでしょう。

呼吸困難

呼吸困難は、呼吸に必要な筋肉や嚥下に関わる筋肉の麻痺により起こります。

症状が進むと自力での呼吸や食事が困難になり、人工呼吸器や経管栄養が必要となるケースもあります。呼吸困難は全身症状の中でもとくに重篤で、生命の危険に直結する症状です。

ギラン・バレー症候群の診断方法

ギラン・バレー症候群の診断方法は主に、以下の2つです。

  • 神経伝導検査
  • 髄液検査

神経伝導検査

神経伝導検査は、ギラン・バレー症候群を診断する上で有用な検査です。神経に微弱な電気刺激を与え、その伝わる速度や反応を詳細に測定します。

神経線維を覆うミエリン鞘が損傷していたり、神経線維自体に障害があったりする場合、伝導速度の低下や反応の減弱が確認できます。

神経伝導検査は、症状の原因や病型を客観的に判断でき、治療方針の検討にも役立つ検査です。

髄液検査

髄液検査では、腰椎穿刺によって採取した髄液を分析し、ギラン・バレー症候群に特徴的な所見である「蛋白細胞解離」を確認します。

これは、髄液中のタンパク質が増加している一方で細胞数は正常という状態を指し、神経の炎症が進行していることを示唆します。

初期段階の診断補助として非常に有用で、症状の程度や病型の判断にも役立つ検査です。

ギラン・バレー症候群と類似する疾患との鑑別に注意!

ギラン・バレー症候群は、他の神経疾患と症状が似ていて、鑑別が難しいケースがあります。とくに四肢の筋力低下やしびれ、感覚異常が共通して現れる疾患では、診断に慎重さが求められます。

症状の持続時間や左右対称性、感覚異常の有無、自律神経症状の有無などの総合的な判断が重要です。

鑑別が難しい主な疾患は以下です。

疾患名 特徴
重症筋無力症 日内変動する筋力低下、眼瞼下垂や複視などの眼症状が特徴
ボツリヌス症 眼球運動障害、嚥下障害、構音障害が目立ち、四肢の筋力低下は対称性に起こりにくい
ポリオ 急性期に四肢麻痺が現れることがある
ダニ麻痺症 末梢神経麻痺を引き起こす場合がある
ウエストナイルウイルス感染症 神経系への影響で筋力低下やしびれが見られる場合がある

医師はこれらの特徴を確認し、各疾患の特有の症状や経過を把握した上で、正しい診断と適切な治療方針を決定します。(文献1

ギラン・バレー症候群の治療法

ギラン・バレー症候群の治療では、症状の改善と回復を目指し、以下の薬物療法や交換療法、運動療法などが組み合わされます。

  • 免疫グロブリン療法
  • 血漿交換
  • リハビリテーション
  • 最新の治療法と研究

免疫グロブリン療法

免疫グロブリン療法は、ギラン・バレー症候群の症状改善に有効な治療法です。健康な人の血液から抽出した免疫グロブリンを点滴投与することで、誤って神経を攻撃する免疫反応を鎮めます。

治療は入院して行われることが多く、まれに頭痛や発熱、吐き気、血管痛などの副作用が現れる場合があります。

副作用は多くの場合短期間で治まりますが、体調に変化があれば早めに医師の診察を受けることが重要です。

血漿交換

血漿交換は、血液中の液体成分である血漿を専用の機器で取り出し、神経を攻撃する抗体を含む成分を除去してから、新しい血漿やアルブミン製剤で補充する治療法です。

この手法により、免疫の異常反応を抑え、神経へのダメージを軽減します。治療は入院で行われることが多く、副作用として血圧低下、アレルギー反応、出血や血栓、低カルシウム血症などがまれに起こる場合があります。

リハビリテーション

ギラン・バレー症候群の回復には、リハビリテーションが欠かせません。症状の重い初期段階では、関節の拘縮を防ぎ、寝たきりを避けるために関節可動域訓練や体位変換を中心に行います。

症状が軽くなると、筋力強化や歩行訓練、日常生活動作訓練などが追加され、段階的に身体機能の回復を目指します

専門職のスタッフと連携し、個々の体力や合併症に合わせた無理のないリハビリテーションが重要です。

最新の治療法と研究

ギラン・バレー症候群の治療は、現在も研究開発が進められています。

新しい治療薬の開発や既存療法の改良が行われており、補体阻害剤などの新薬の臨床試験も進行中です。これらの薬剤は神経へのダメージをより効果的に抑えることが期待されています。

加えて、国際共同研究も活発で、病態の解明や新たな治療法の確立に向けた取り組みが続けられています。

ギラン・バレー症候群の予後|後遺症や再発の可能性

ギラン・バレー症候群の回復は多くの場合順調で、発症から数カ月から1年程度で改善が期待できます。

しかし、患者様によっては筋力低下やしびれ、倦怠感などが後遺症として出るケースがあります。とくに重症例や高齢者では、後遺症が出る可能性が高まる傾向です。

また、再発はまれですが2~5%程度報告されており、再発時も初回と同様の治療が行われます。(文献2

予後は、治療への反応や基礎疾患の有無など、個々の状況によって左右される点にも注意が必要です。

ギラン・バレー症候群の日常生活上の注意点

ギラン・バレー症候群を発症した場合、日常生活での安全対策が重要です。症状が落ち着くまでは無理をせず安静を心がけましょう。

日常生活では以下のような工夫が必要になります。

  • 転倒防止のため、手すりや杖を活用する
  • 入浴時には滑り止めマットやシャワーチェアを使用する
  • トイレや衣服は安全性や着脱のしやすさを考慮する
  • 食事は介助が必要な場合、家族の協力を得る

また、精神的なサポートも重要です。不安や恐怖、焦りを感じやすいため、家族や医療従事者と積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。

ギラン・バレー症候群は早期発見・早期治療が大切

ギラン・バレー症候群は、手足のしびれや筋力低下などの症状から始まり、進行すると歩行困難や呼吸麻痺など日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性がある疾患です。

治療には免疫グロブリン療法や血漿交換などがあり、適切な治療の早期開始により回復の可能性が高まります。

後遺症の軽減や再発防止の観点からも、症状を感じたら速やかに医療機関での診断を受けることが重要です。

さらに、治療後に残る筋力低下やしびれなどの後遺症については、当院「リペアセルクリニック」で再生医療を用いたサポートが可能な場合があります。

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参考文献
(文献1)
ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2024|日本神経学会
(文献2)
Guillain-Barré 症候群および Fisher 症候群の 再発に関する臨床分析 |日本神経学会