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肉離れの応急処置を医師が解説|治療・予防方法もあわせて紹介

スポーツをしていたら急に足に激しい痛みが走ったけど肉離れなのかな
肉離れになったら、まずどんな応急処置をすれば良いの
上記のような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
肉離れは突然起こることが多く、痛みや腫れ、内出血などを引き起こします。適切に対処しないまま放置すると、回復が遅れるだけでなく再発のリスクも高まってしまう可能性があるため要注意です。
本記事では、肉離れを疑ったときの応急処置方法から、治療の流れ、予防のポイントまでを解説します。肉離れになったときの応急処置がわからないと考えている方は、ぜひご覧ください。
目次
肉離れの応急処置
肉離れの応急処置には、RICE処置が効果的です。これはRest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取った言葉です。(文献1)
ケガをした直後にRICE処置を適切にすれば、症状の悪化を防ぎ、回復を早められます。医療機関を受診する前に、まずはこの基本的な処置をしましょう。
ここからはRICEの4つの処置について、詳しく説明していきます。
安静
肉離れを起こした際、重要な処置の一つが安静です。安静とは、損傷した筋肉を無理に動かさずに十分に休ませることを意味します。
肉離れは筋繊維の部分的な断裂や損傷が起こっている状態です。さらに筋肉を使い続けると、断裂箇所が大きくなり、より深刻な損傷へと進行する恐れがあります。(文献1)つまり、軽度の肉離れが中度や重度へと悪化する可能性が高まるのです。
安静を保つことで、傷ついた筋繊維が自然治癒するための準備を整えられます。受傷直後の数日間は、痛みのある動作を避け、患部への負担を最小限に抑えることで回復へ近づきます。
医師の指示に従いながら、適切な安静期間を設けましょう。
冷却
肉離れが発生すると、筋繊維の断裂によって組織が炎症を起こし、腫れや内出血が生じます。このとき冷却をすると、症状を効果的に抑えられます。
冷却は、血管を収縮させる作用があり、出血量の軽減、腫れの抑制、痛みの緩和に効果的です。受傷後できるだけ早く冷却を始めましょう。
具体的な冷却方法としては、氷や保冷剤をビニール袋に入れ、薄いタオルで包んでから患部に当てます。直接皮膚に氷を当てると凍傷のリスクがあるため、必ず布などを間に挟みましょう。1回のアイシングは15~20分程度が目安で、その後は再び痛くなったら冷却を数回繰り返します。(文献2)
受傷後24〜48時間は冷却がとくに効果的ですが、その後も痛みや腫れが続く場合は継続してみましょう。(文献3)
圧迫
肉離れを起こした筋肉には、適切な圧迫処置が効果的です。テーピングや弾性包帯を使って患部に適度な圧力をかけると、内出血や腫れの進行を抑制できます。圧迫は毛細血管からの出血を最小限に抑え、過剰な浮腫(むくみ)を防ぐ働きがあります。
太ももの肉離れの場合、具体的な圧迫方法としては、まず弾性包帯とパットが必要です。包帯を巻く前に、患部が清潔で乾いていることを確認してください。パッドを患部に当て、弾性包帯でらせん状に巻いていきます。
圧迫は強すぎず弱すぎない適度な強さで行います。血行不良の兆候(しびれ、皮膚の色の変化、冷感など)が現れた場合は、すぐに緩めましょう。(文献3)
挙上
肉離れが発生した場合、患部を心臓より高い位置に保つ挙上をしましょう。挙上すると、心臓に向かって血液が流れるため、腫れや炎症を効果的に抑制できます。
具体的な挙上方法としては、太ももの肉離れの場合、仰向けに寝た状態で患部の下に枕やクッションを何個か重ねて配置し、脚全体が心臓より高くなるようにします。ソファや椅子に座る場合は、別の椅子やスツールを使って脚を高く上げるようにしましょう。(文献3)
挙上は腫れが続く限り、可能な限りの継続が望ましいです。就寝時も枕を使って患部を少し高くすると、夜間の腫れを軽減できます。
他のRICE処置(安静・冷却・圧迫)と組み合わせると、肉離れの回復には効果的です。ただし、痛みを伴う無理な姿勢での挙上は避けましょう。
肉離れにおける応急処置後の治療方法
肉離れの治療の基本となるのが安静です。痛みを感じる動作を控え、患部の負担を軽減します。湿布薬の使用も効果的で、消炎鎮痛作用のある成分が含まれた湿布を患部に貼ると、痛みや炎症を和らげられます。
消炎鎮痛作用のある塗り薬を患部に塗布したり、医師の処方による内服薬の服用も症状改善につながります。
肉離れは適切な治療とリハビリを行わないと再発しやすい特徴をもちます。完全に回復するまでには一般的に4週間程度かかり、その間は適切なケアが重要になります。(文献4)
近年、注目されている治療法の一つが再生医療のPRP療法です。PRP療法は患者自身の血液から血小板を高濃度に濃縮した血漿を抽出し、損傷部位に直接注入する方法です。血小板に含まれる成長因子が組織修復を促進し、自然治癒力を高める効果が期待できます。
リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。
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肉離れの予防方法
肉離れはスポーツの場面で起こることが多いですが、予防が可能です。ここからは、肉離れの予防方法について解説します。
身体を温める
肉離れを予防するには、筋肉の冷えを防ぐことが重要です。体温が低下すると筋肉も冷えてしまい、柔軟性や弾力性が失われて伸縮性が低下します。このような状態で急に強い力をかけたり、無理な動きをしたりすると、筋繊維が断裂して肉離れを起こしやすくなります。
冬場や冷房の効いた室内、運動前の体が十分に温まっていない状態では注意が必要です。予防のためには、運動前の十分なウォームアップが欠かせません。具体的には、軽いジョギングやその日使う筋肉を意識した動的ストレッチが効果的です。また、日常的に適切な服装で体を冷やさないよう心がけ、入浴での全身の血行促進も効果的です。
運動時には保温性のある適切なウェアを着用し、屋外での活動時には天候や気温に合わせた服装を心がけましょう。体を温めると筋肉の柔軟性が保て、肉離れのリスクを軽減できます。
十分にストレッチをする
肉離れの主な原因の一つに、運動前の準備不足が挙げられます。日頃から運動習慣がない方は筋肉が硬くなっており、急に激しい動きをすると筋繊維が断裂しやすくなります。運動不足の状態から突然激しい運動をすると、肉離れのリスクを大幅に高めることになるでしょう。
肉離れのリスクを軽減するには、運動前に適切なストレッチをして、筋肉を十分にほぐすことが重要です。ストレッチにより筋肉の柔軟性が向上し、急な動きや負荷にも対応できるようになります。普段使わない筋肉を使う運動をする場合は、その部位を重点的にストレッチすると、肉離れの予防効果が期待できます。
肉離れの起きやすいふくらはぎやハムストリングス、太ももを中心にストレッチしましょう。
無理な動作をしない
スポーツ活動中に肉離れを起こす主な原因の一つは、無理な動きや急激な負荷です。競技中の勝負へのこだわりや、自分の限界を超えた無理な動きは筋肉に過度の負担をかけ、肉離れのリスクを高めます。
自分の体力や筋力の限界を理解し、段階的に運動強度を上げていきましょう。また、疲労が蓄積している状態では、筋肉が適切に機能せず、負荷に耐えられなくなるため注意が必要です。
指導者がいる環境では、正しい技術や体の使い方を学ぶと肉離れ予防に効果的です。専門知識を持った指導者からフォームの指導を受けると、筋肉への不必要な負担を軽減できます。初心者や若年層のアスリートは、基本的な動作をていねいに学ぶと、将来的な肉離れのリスクを減らせます。
無理をせず、適切に体を動かし、安全にスポーツを楽しみましょう。
しっかりと休息を取る
十分な休息は肉離れ予防において非常に重要です。過度なトレーニングや連続した運動により休息時間が不足すると、筋肉が常に緊張状態となり硬くなってしまいます。緊張状態では筋肉の弾力性が低下し、わずかな負荷でも肉離れを起こすリスクが高まります。
また、精神的なストレスも筋肉の緊張を引き起こす要因です。ストレスを感じると身体は自然に緊張し、筋肉も硬くなりやすい状態になります。メンタル面のケアも肉離れ予防には欠かせません。
適切な休息日を設けると、筋肉は本来の柔軟性を取り戻しリラックスした状態になります。次の運動時に筋肉が適切に伸縮できるようになり、肉離れのリスクを軽減できます。
日常から身体を動かしておく
運動不足が続くと筋肉が徐々に硬くなり、柔軟性が失われていきます。このような状態では、特別な運動をしなくても、日常生活の何気ない動作で突然肉離れを起こすリスクが高まります。
肉離れを予防するためには、定期的な軽い運動が効果的です。ウォーキングや軽いジョギングは、筋肉に過度な負担をかけることなく血流を促進し、筋肉の柔軟性を維持するのに適しています。(文献5)
軽い有酸素運動を日常に取り入れれば、筋肉が硬くなるのを防ぎ、健康的な身体機能を維持できます。
肉離れは応急処置の有無が早期回復のカギ
肉離れを起こした直後の適切な応急処置は、回復期間を大きく左右します。発症直後のRICE処置が重要です。
初期対応を怠ると、症状が悪化して回復が遅れる可能性があります。逆に適切な応急処置をすれば、治癒過程がスムーズに進み、早期回復につながります。
肉離れでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。
肉離れの応急処置に関するよくある質問
ここからは、肉離れの応急処置に関するよくある質問を紹介します。
肉離れの応急処置にテーピングは効果的ですか?
肉離れの応急処置として、テーピングは効果的な方法です。適切にテーピングすると患部が圧迫されるため、内出血の広がりを防ぎ、炎症の拡大を抑制する働きもあります。組織のダメージを最小限に抑え、結果として回復期間の短縮につながります。
テーピングは簡単でありながら、肉離れの初期対応として非常に重要な役割と言えるでしょう。
肉離れの応急処置に湿布は効果的ですか?
肉離れの応急処置として冷湿布は効果的です。冷湿布は患部を適度に冷却し、炎症や痛みを和らげる働きがあります。
就寝時にも患部を冷やした方が良いですが、保冷剤の使用は危険性を伴う場合があります。睡眠中に皮膚と長時間接触したままになると、気づかないうちに凍傷を引き起こす可能性があるためです。
凍傷を避けるためにも、就寝時には安全性の高い冷湿布の使用がおすすめです。
肉離れの応急処置はどのくらい冷やしたら良いですか?
肉離れを起こした直後はアイシングが効果的ですが、冷やしすぎないようにしましょう。過剰なアイシングは筋肉を必要以上に硬くさせ、回復に必要な血行を阻害してしまうリスクがあります。一度のアイシングは15~20分程度を目安とし、それ以上長時間続けないようにしましょう。
適切な時間でのアイシングは、炎症を抑えつつも回復に必要な血流を維持できるため、回復へとつながります。
参考文献
社会福祉法人 恩賜財団 済生会「筋挫傷(きんざしょう)」済生会ホームページ,2016年9月28日
一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会「スポーツ外傷の応急処置(RICE処置)」日本スポーツ整形外科学会ホームページ
https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s03.pdf(最終アクセス:2025年3月15日)
ニチバン株式会社「RICE(ライス)処置」battlewinホームページ
https://www.battlewin.com/beginners_taping/rice.html(最終アクセス:2025年3月15日)
大正大学「保健室だより」2016年
https://www.tais.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/10/4f11fee531b8256a8ed52f95158831e7.pdf(最終アクセス:2025年3月15日)
医療法人社団 信愛会 瀬戸整形外科クリニック「肉離れの応急処置、および、治療&予防方法」瀬戸整形外科クリニックホームページ
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。