- その他、整形外科疾患
肉離れにおけるストレッチ方法から注意点を紹介【リハビリ・予防】

肉離れになったらストレッチした方が良いのか
肉離れしない方法を知りたい
肉離れは、主にスポーツをした際に起きるケガの1つです。痛みや腫れなどが出現するため、ストレッチで和らげようとする場合もあるでしょう。しかし、肉離れした後にストレッチするのは注意が必要です。
本記事では、肉離れの原因や症状、整形外科の受診ポイントとあわせて、ストレッチの注意点や、予防法について詳しく解説していきます。
目次
肉離れとは
肉離れとは、筋肉の繊維が部分的または完全に断裂する状態です。筋肉は細い繊維の束で形成されており、強い衝撃や急激な負荷により繊維が傷つくと、痛みや内出血、腫れなどの症状が現れます。
主に瞬発的な動き(ダッシュやジャンプなど)で大きな力が筋肉にかかった際に発生しやすく、部活動やスポーツ中に起こることが多いケガです。症状は痛みの程度や炎症の度合いによって異なります。(文献1)(文献2)
軽度では軽い痛みがある程度ですが、中程度以上になると歩行困難なほどの強い痛みを伴います。重症の場合は筋繊維の大きな断裂を引き起こし、完全回復までに長期間を要する場合が多いです。早期の適切な対処と整形外科での診断が重要になります。
【前提知識】肉離れ発症直後のストレッチはNG!
肉離れを起こした直後、少し伸ばした方が良いのではと考えてストレッチをしてしまう方がいますが、これは避けるべきです。
肉離れは筋繊維が断裂した状態であるため、発症直後のケアとしては、まずアイシングが最優先です。冷却によって炎症を抑え、内出血の拡大を防ぎます。弾性包帯などを用いた適切な圧迫も重要で、腫れの進行を抑制できます。
肉離れを起こした後の数日間は、ストレッチや筋肉トレーニングは行わないでください。断裂した筋繊維に再び負荷をかけることで、症状が悪化し、回復期間が長引いてしまう恐れがあります。(文献3)
正しいケアをして、医師の指示に従って適切なタイミングでリハビリを始めることが、スムーズな回復へつながっていきます。
肉離れ後のストレッチ方法(リハビリテーション)
肉離れからの回復過程では、段階に応じた適切なストレッチが重要です。どの段階でも、痛みが出ない範囲内で行うことが大前提となります。
3~5日後
肉離れの痛みが落ち着く3〜5日後にリハビリ開始を判断しましょう。ハムストリングス(太ももの裏側)の場合、仰向けになって太ももの裏を抱え、膝が伸ばせるようであればストレッチを始める目安になります。
ハムストリングスの肉離れには、段階的に以下のエクササイズが効果的です。
- ヒップエクステンション
- レッグカール
- ハーフスクワット
- ブリッジエクササイズ
を痛みの出ない範囲で行い、徐々に強度を上げていくと筋肉の回復を促進できます。ただし、痛みが再発する場合は無理せず、専門家の指導を受けることをお勧めします。(文献3)
回復期
ストレッチを行っても痛みや違和感がなくなったら、スポーツ復帰に向けた運動を段階的に開始できます。このときの負荷の上げ方が再発防止のポイントです。
最初はジョギングなど比較的負担の少ない有酸素運動から始めましょう。身体の状態を確認しながら、徐々にジャンプやダッシュといった瞬発力を必要とする動きへと移行します。(文献3)
注意すべき点として、焦りは禁物です。急激に強い負荷をかけてしまうと、回復した筋肉が再び損傷してしまう可能性があります。もう大丈夫だろうと考えずに、計画的に運動強度を増加していきましょう。
肉離れを予防するストレッチ方法
ここからは、以下のような肉離れのよく起きる筋肉別のおすすめのストレッチ方法を紹介します。
- 大腿四頭筋
- ハムストリングス
- 下腿三頭筋
大腿四頭筋
このストレッチは大腿四頭筋(太ももの前側)の筋肉を効果的に伸ばすストレッチです。
まず横向きに寝た状態で、下側の脚の股関節と膝関節を軽く曲げて安定させます。この姿勢がストレッチの土台となります。
次に、上側の脚の膝を曲げて、同じ側の手で足首をしっかりとつかみます。そのまま股関節をゆっくりと後方に伸ばしていきます。(文献4)
このとき、太ももの前側に心地良い伸張感を感じる強さで行うことがポイントです。無理に引っ張りすぎず、痛みが出ない範囲で筋肉が伸びていると感じる程度に調整しましょう。
ハムストリングス
ハムストリングス(太ももの裏側)の筋肉を効果的に伸ばすストレッチです。
まず地面に座った状態から始めます。片方の膝を曲げて足裏を反対側の太ももの内側に添えるようにし、もう片方の脚はまっすぐ伸ばします。次に、伸ばしている脚の方向へ上半身をゆっくりと前傾させていきます。(文献4)
動作を行う際は、膝の裏からお尻にかけて心地良い伸張感を感じる程度の強さで行うことがポイントです。無理に前屈せず、自分の柔軟性に合わせて少しずつ深めていきましょう。
下腿三頭筋
このストレッチは、下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋肉を効果的に伸ばすシンプルなストレッチです。
まず床に座り、両脚をまっすぐ前に伸ばします。次に、タオルやストレッチ用のロープなどを足の裏に引っ掛けます。手でタオルやロープの両端をしっかりと握り、ゆっくりと手前に引きます。膝がしっかり伸びている状態になっているか確認してから行いましょう。(文献4)
動作を行う際のポイントは、ふくらはぎや膝の裏側の筋肉が伸びていると感じる強さで引くことです。痛みを感じるほど強く引くのはやめましょう。
肉離れからの回復期にはとくに慎重に行い、少しでも痛みを感じたらすぐに中止しましょう。
肉離れになったときの応急処置
肉離れが起きた直後は、RICE処置をしましょう。これはRest(安静)、Icing(アイシング)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取ったもので、ケガの急性期における基本的な応急処置です。この処置により、炎症を抑え痛みを緩和し、回復を早められます。
ここから詳しく解説していきます。
安静
肉離れの応急処置では、まず最優先すべきはRest(安静)です。傷ついた筋繊維をこれ以上損傷させないために、患部を動かさず休息を与えることが必要不可欠です。(文献1)(文献5)
少し動かした方が良くなるのではと考えてしまうのは危険です。無理に動かすことで断裂した筋繊維がさらに損傷し、回復期間が長引く可能性があります。適切な医療的判断があるまでは、患部への負荷を最小限に抑え、安静を保つことが回復へとつながります。
冷却
肉離れの応急処置における次のステップは、Icing(アイシング)です。患部を氷のうなどで冷やしましょう。
アイシングは血管を収縮させ内出血の拡大を防ぐとともに、炎症を抑制し痛みの緩和効果も期待できます。
受傷後直ちに20分程度のアイシングをして、その後も痛みが出現したら繰り返すことが理想的です。ただし、氷や氷のうを直接皮膚に当てないよう、タオルなどで包んで使用しましょう。(文献1)(文献5)
圧迫
肉離れの応急処置の3番目のステップは、Compression(圧迫)です。患部を弾性包帯やサポーターなどで適度に圧迫して、腫れの拡大を抑制しましょう。
圧迫によって断裂した筋繊維からの出血や浸出液の広がりを最小限に抑え、炎症の範囲を限定させる役割があります。患部を固定して不必要な動きを制限する効果もあります。
ただし、強すぎる圧迫は血流を過度に抑えてしまい、回復を遅らせる可能性があるため注意が必要です。指先や足先の色や感覚に異常が出る場合は、圧迫が強すぎるサインなので速やかに調整しましょう。(文献1)(文献5)
挙上
肉離れの応急処置の最後は、Elevation(挙上)です。患部を心臓よりも高い位置に保つことで、血流がコントロールできます。
この姿勢により患部への血液の流入が抑えられ、腫れや内出血の拡大を防ぎます。脚の肉離れの場合は横になった状態で足を台の上に置いたり、枕で高くすれば挙上が可能です。
安静時や就寝時など、できる限り長く挙上姿勢を保つことが理想的です。ただし、無理な体勢は別の部位に負担をかけることがあるため、考慮して行いましょう。(文献1)(文献5)
肉離れを疑う際はストレッチではなく医療機関を受診しよう
肉離れは軽症でも数日以上痛みが続く場合は早期受診が重要です。放置すると痛みの慢性化や不完全な修復の恐れがあります。
整形外科では症状確認と必要に応じたMRIやエコー検査を受け、理学療法士と連携した適切なリハビリ指導が受けられます。PRP療法などの再生医療も早期回復に効果的です。
専門医の診断により、肉離れの程度や回復目安が明確になり、無理のない復帰計画が立てられます。適切なタイミングでのストレッチ導入は回復促進と再発防止に有効です。
リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。
肉離れのストレッチに関するよくある質問
ここからは、肉離れのストレッチに関するよくある質問を紹介します。
肉離れをおこしたときにやってはいけないことは?
肉離れをおこした際は、避けなければならない行為があります。
無理なストレッチやマッサージは危険で、損傷を悪化させる恐れがあります。入浴や飲酒、温湿布の使用も炎症を促進し、出血を増加させる可能性があるため控えましょう。痛みを無視して無理に動くことは、治癒を遅らせるだけでなく、より深刻な損傷を引き起こす危険があります。
このような行為はすべて炎症を悪化させ、回復を遅らせる要因となります。
肉離れは自然に治りますか?
軽度の肉離れは、適切なRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を行うことで自然に近い形で回復する可能性があります。しかし、誤ったケアや不十分な休息により回復が遅れたり、再発を繰り返したりするケースも少なくありません。
とくに重症例では筋肉の大きな断裂を伴うため、放置すると治癒に長期間を要したり、痛みが慢性化したりする恐れがあります。症状の程度に関わらず、早めに整形外科を受診し、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。(文献6)
肉離れは何科を受診するべきですか?
肉離れは基本的に整形外科を受診するのがおすすめです。整形外科では、肉離れの程度を適切に診断し、必要に応じてレントゲンやMRI、エコーなどの画像検査を受け、筋肉の損傷状態を詳細に評価できます。
ケガの重症度に合わせた治療方針の提案やリハビリテーションの指導も受けられます。肉離れの症状を感じたら早めに整形外科を受診し、適切な治療とケアを受ければ、スムーズな回復が期待できるでしょう。(文献6)
参考文献
大正大学「保健室だより」2016年
https://www.tais.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/10/4f11fee531b8256a8ed52f95158831e7.pdf(最終アクセス:2025年3月14日)
木村護郎ほか「大腿四頭筋ならびに内・外側ハムストリングの筋力比と大腿部肉離れの発生との関係」『医学療法科学』19(4),pp.323-329,2004年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/19/4/19_4_323/_pdf
社会医療法人 松田整形外科記念病院「理学療法科(リハビリテーション)」松田整形外科記念病院ホームページ
https://matsuda-oh.com/rehabili/lowerlimbs_4124(最終アクセス:2025年3月14日)
佐久平整形外科クリニック「肉離れ予防のストレッチ」佐久平整形外科クリニックホームページ
https://ar-ex.jp/sakudaira/831490160727/%E8%82%89%E9%9B%A2%E3%82%8C%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%81(最終アクセス:2025年3月14日)
茨城県水戸市「プロスポーツナビ」広報みと,2022年9月15日
https://www.city.mito.lg.jp/uploaded/attachment/24341.pdf(最終アクセス:2025年3月14日)
医療法人社団 信愛会 瀬戸整形外科クリニック「肉離れの応急処置、および、治療&予防方法」瀬戸整形外科クリニック トピックス
https://setoseikei.com/2024/10/21/first-aid-for-separation-of-the-flesh/(最終アクセス:2025年3月14日)
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。