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自己免疫疾患における「治った」とは?完治と寛解の違いなどを解説

自己免疫疾患 治った
公開日: 2025.04.26

自己免疫疾患は、原因がはっきりとわかっていないことも多く、完治が難しいといわれています。しかし、実際には適切な治療と生活習慣の見直しによって、症状が大幅に改善し、日常生活にほとんど支障がない状態を目指すことが可能です。

本記事では、「自己免疫疾患は治ったと言えるのか?」といった疑問に対し、医学的な視点からわかりやすく解説。前向きに症状と向き合うための具体的なポイントも紹介します。

自己免疫疾患とは

自己免疫疾患とは、本来外敵から体を守るはずの免疫システムが誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう病気です。

この誤った免疫反応によって、体内で炎症が起こり、さまざまな症状や臓器障害を引き起こします。多くの場合、完全な治癒は難しく、長期的な管理が必要です。

ここからは、自己免疫疾患の基本的な仕組みや特徴を説明します。

自己免疫疾患の基本的な仕組み

自己免疫疾患は、免疫システムが正常な自己の細胞や組織を異物と誤認識し攻撃する疾患です。通常、免疫系は「自己」と「非自己」を区別して、ウイルスや細菌などの異物だけを排除します。

しかし、この識別機能に障害が生じると、自分の組織に対して免疫反応が起こります。自己免疫疾患は、全身に炎症が広がる「全身性自己免疫疾患」と、特定の臓器を攻撃する「臓器特異的自己免疫疾患」に分類されます。

たとえば、関節リウマチやSLEは「全身性自己免疫疾患」、1型糖尿病や橋本病は「臓器特異的自己免疫疾患」です。

自己免疫疾患の特徴

自己免疫疾患の大きな特徴は、慢性的な炎症や組織の破壊が長期にわたって進行する状態です。多くの場合、症状は寛解と再燃を繰り返し、徐々に悪化します。

自己免疫疾患の原因は複雑で、遺伝的要因、環境要因(感染、ストレス、紫外線暴露など)、自己抗原に対して免疫反応を示すなど複雑です。女性に多く発症する傾向があり、ホルモンの影響も示されています。診断は難しく、複数の検査や専門医の診察が必要です。

自己免疫疾患の完治が難しい理由

自己免疫疾患は一度発症すると、現在の医学では完全な治癒が難しい病気です。多くの場合、薬物療法などで症状をコントロールしながら共存していくことが治療の中心となります。病気と上手に付き合いながら、生活の質を維持していきましょう。

原因が完全には解明されていないため

自己免疫疾患の完治が難しい最大の理由は、その発症メカニズムや病態が複雑で、原因が完全には解明されていないことにあります。免疫システムのどの部分がどのように破綻し、なぜ自己を攻撃するようになるのかについては、多くの研究が進められているものの、まだ解明されていない点が多いです。

遺伝因子と環境因子の複雑な相互作用、個人差の大きさなども、治療法の開発を困難にしています。現在の治療は原因を取り除くのではなく、症状の緩和に主眼が置かれています。

自己免疫反応を完全に止めることが難しい

自己免疫疾患の治療では、異常な免疫反応の抑制が中心となりますが、自己免疫反応だけを選択的に抑える方法は限られています。現在の免疫抑制療法は、ステロイドや免疫抑制剤などを用いて免疫機能全体を抑制するため、症状の改善とともに、感染症へのリスク増加などの副作用も伴います。

特定の自己抗原に対する免疫反応のみを抑制する治療法の開発は進んでいるものの、実用化には至っていないケースが多いです。さらに、一度発症した自己免疫記憶は長期間持続するため、治療を中断すると再発が多いといった課題もあります。

自己免疫疾患における「治った」とは

自己免疫疾患では「治った」といった表現が医療現場と患者の間で認識のずれを生むことがあります。

多くの自己免疫疾患では真の意味での完治は難しく、むしろ「コントロールされている状態」や「寛解」といった概念が重要になります。患者様が自分の状態を正しく理解することが、長期的な疾患管理には欠かせません。

「完治」と「寛解」の違い

自己免疫疾患において、「完治」と「寛解」は医学的に異なる概念です。

項目 完治 寛解
定義 治療を終了しても症状が再発せず、病気が完全に消失した状態 症状が一時的に消失または軽減しているが、治療継続や経過観察が必要な状態
治療 投薬や治療が不要 治療の継続が必要
状態 疾患前の健康状態に戻る 体内では免疫学的な異常が継続していることが多い
リスク 再発のリスクが極めて低い 治療を中断すると再燃するリスクがある

多くの自己免疫疾患では、完全な「完治」よりも「寛解」を目指した治療が現実的なアプローチとなります。寛解状態に達すれば、症状がない、または最小限の状態で日常生活を送ることが可能です。

重要なのは、たとえ症状がなくなっても定期的な検査や治療を継続することで、再燃を防ぎ長期的な健康を維持することです。

医療機関で使われる「寛解」の基準

医療現場では、自己免疫疾患の寛解を評価するため、いくつかの客観的な基準が用いられています。

臨床的寛解は、痛みや腫れなどの自覚症状や血液検査での炎症マーカーが消失した状態を指し、関節リウマチではDAS28(疾患活動性スコア)などの指標で評価されます。構造的寛解は、X線やMRIなどの画像検査で関節破壊や臓器障害の進行が停止している状態です。機能的寛解は、患者の日常生活動作に支障がない状態で、HAQ(健康評価質問票)などで評価されます。

これらの寛解基準を満たし、治療目標として設定されるケースが増えています。

自己免疫疾患の寛解を目指すためにできること

自己免疫疾患と診断されても、適切な治療と生活管理によって症状をコントロールし、寛解状態を目指せます。医師との協力関係を築き、治療を継続しながら、日常生活での自己管理にも取り組めば、病気と上手に付き合っていけます。

医師の指導に基づく適切な治療

自己免疫疾患と診断された場合の医師の指導に基づく適切な治療として、以下の2点を解説していきます。

  • 薬物療法
  • 定期的な検査と経過観察

薬物療法

ステロイド薬は多くの自己免疫疾患で治療の中心となり、強力な抗炎症作用によって症状をコントロールするために使用されます。急性期には高用量で開始し、症状の改善に伴って徐々に減量していくのが一般的です。

必要に応じて免疫抑制薬(アザチオプリン、メトトレキサートなど)を併用し、病状に応じて複数の薬剤を組み合わせることもあります。近年では、より標的を絞った生物学的製剤も選択肢として増えています。

ステロイド薬の減量後も、再燃予防のために免疫抑制療法を継続するケースが多く見られます。長期使用による副作用(眼圧上昇や緑内障、骨粗鬆症など)を防ぐため、定期的な検査が必要です。

定期的な検査と経過観察

自己抗体検査や血液検査で炎症や疾患活動性をモニタリングし、病態の進行や治療効果の確認は寛解の維持に欠かせません。炎症マーカーや自己免疫関連検査の数値変化は、目に見える症状が現れる前に体内の病気を反映する場合があります。

病状が安定していても、再燃のリスクがあるため定期的なフォローアップが推奨されます。検査結果は時期や体調によって変動するため、一時的な変化に一喜一憂せず、時間の経過を追うのが重要です。発熱や倦怠感などの症状悪化時には迅速に医療機関を受診し、治療方針の見直しを行う必要があります。

生活習慣の見直し

自己免疫疾患の管理には、薬物療法だけでなく日常生活の改善も重要な役割を果たします。

食事・運動・ストレス管理の3つの視点から生活習慣を見直しましょう。

バランスの取れた食事

自己免疫疾患には抗炎症作用のある食品が効果的です。

積極的に摂取したいもの

  • 高たんぱく、高繊維食
  • 新鮮な野菜や果物
  • 青魚(オメガ3脂肪酸が豊富)
  • 発酵食品(腸内環境を整える)
  • セレン、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル

これらの食品は免疫システムのバランスを整え、炎症を抑制する働きがあります。特に個人の体質や症状に合わせた食事選択が重要です。

控えめにしたいもの

  • 加工食品
  • 高脂肪食品
  • 精製糖質

これらの食品は体内の炎症を悪化させる可能性があるため、可能な限り自然食品を中心とした食生活を心がけましょう。

適度な運動と休息

適切な運動は炎症を抑制し、気分向上にも効果があります。

おすすめの運動

  • 軽いウォーキング
  • ヨガ
  • 水中運動など低強度の運動

休息のポイント

  • 十分な睡眠を確保する
  • 疲労感を感じたらすぐに休む
  • 体調に合わせて運動の強度や時間を調整する

無理のない範囲で定期的に運動することで、血流が改善され、免疫系の正常化を促進します。一日15~30分から始めてみましょう。

ストレス管理

ストレスは自己免疫疾患の発症や悪化の重要な要因です。

効果的な方法

  • 深呼吸、瞑想、マインドフルネス
  • 趣味や創作活動
  • 自然の中で過ごす時間
  • 患者会への参加や同じ疾患を持つ人との交流
  • 必要に応じてカウンセリングや心理療法

ストレス管理は薬物療法と同じくらい重要な治療の一環です。自分に合ったリラクゼーション方法を見つけ、日常生活に取り入れていきましょう。

自己免疫疾患と向き合うために大切な考え方

自己免疫疾患は長期にわたって付き合っていく必要のある病気です。寛解と再燃を繰り返すことも多く、時に心理的な負担も大きくなります。しかし、適切な治療と心構えによって、病気があっても充実した人生を送ることは十分に可能です。病気と上手に付き合うための考え方を身につけましょう。

正しい情報を取り入れ自分に合った治療を続ける

自己免疫疾患と向き合うためには、まず医療機関や専門医からの正確な情報を基に、自分の病状やライフスタイルに合った治療法を選択しましょう。インターネット上には多くの情報がありますが、科学的根拠のない治療法や民間療法に惑わされないよう注意が必要です。

処方された薬を自己判断で中止したり、用量を変更したりせず、医師の指示に従うのが寛解への近道となります。治療には薬物療法だけでなく、食事や運動、ストレス管理などの生活習慣の見直しも含まれます。自分の体調の変化を記録し、医師との診察時に共有するのも効果的です。

自分を責めない・周囲に頼る

自己免疫疾患は本人の意思や生活習慣だけが原因ではなく、遺伝的要因や環境要因が複雑に絡み合って発症します。病気による制限や不安から自分を責めるのではなく、「今できること」に焦点を当てる姿勢が大切です。完璧を求めず、調子の良い日も悪い日も自分の体を尊重する心構えを持ちましょう。

一人で抱え込まず、家族や友人、患者会など周囲のサポートを積極的に活用し、孤立を防ぐことも重要です。必要に応じて心理カウンセラーなどの専門家に相談も、心理的な負担軽減になるでしょう。病気があっても自分らしい生活を送るためには必要です。

自己免疫疾患は「寛解」を目指して前向きに治療しよう

完治が難しい自己免疫疾患では、症状をコントロールし安定した状態(寛解)を目指すことが現実的な治療目標となります。現代の医療では、早期発見と適切な治療により、多くの患者様が症状を抑えながら日常生活を送っています。

医療機関や専門医から正確な情報を得て、自分の病状やライフスタイルに合った治療法の選択が大切です。薬物療法を基本としながら、バランスの取れた食生活や適度な運動、十分な休息、ストレス管理などの生活習慣の改善も治療の助けとなります。

病気による制限や不安から自分を責めず、できることとできないことを見極める柔軟性を持ちましょう。家族や友人、患者会などのサポートを積極的に活用して孤立感を防ぎ、必要に応じて専門家の心理的サポートを受けることも有効です。自己免疫疾患があっても、工夫と周囲の理解があれば、充実した人生を送ることは十分に可能です。

なお、当院「リペアセルクリニック」では免疫細胞療法を提供しております。

主にがん予防に関する内容ではございますが、免疫力に関してお悩みを抱えている方は、以下のページもあわせてご覧ください。

手術しなくても治療できる時代です。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。

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