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閉塞性動脈硬化症の初期症状を医師が解説|原因や何科を受診するべきかも紹介

arteriosclerosisobliterans
公開日: 2025.05.30

「ふくらはぎが重だるく感じることが増えた」

「歩いていると途中で立ち止まることが多い」

足のだるさは、年齢や疲れのせいと考えがちですが、実は閉塞性動脈硬化症と呼ばれる血管の病気が原因かもしれません。症状が進行すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、最悪の場合、足が壊死してしまう恐れがあります。

本記事では、閉塞性動脈硬化症の症状とともに以下について解説します。

  • 閉塞性動脈硬化症の初期症状
  • 閉塞性動脈硬化症の原因
  • 閉塞性動脈硬化症の診療科
  • 閉塞性動脈硬化症の治療法

閉塞性動脈硬化症は、早期発見と適切な治療により改善が期待できます。本記事では詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

閉塞性動脈硬化症とは

閉塞性動脈硬化症とは足の血管に動脈硬化が起こり、血液の流れが悪くなる病気です。足の動脈が徐々に細くなり、十分な血液が届かなくなることでさまざまな症状を引き起こします。

主な原因としては、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙などの生活習慣が引き金となり、血管が硬く、狭くなることで進行します。閉塞性動脈硬化症は進行すると血液の流れは悪化し、皮膚の色が変化したりただれたりするのが特徴です。重症化すると足の組織が壊死し、切断の可能性も危惧されます。

原因や症状 概要
足の血管の詰まり 足の動脈が狭くなったり詰まったりする
血流が悪くなる 足への血液の流れが悪くなる
動脈硬化が原因 血管に脂肪が溜まり、それが原因で血管が硬くなって発症
生活習慣が影響 高血圧、糖尿病、喫煙などが影響する
初期症状として歩くと違和感を感じる 運動時に足に違和感が走る(間欠性跛行)
症状が悪化する 違和感がひどくなり、安静時でも症状が出るようになる
傷が治りにくくなる 小さな傷も治りにくくなる
皮膚の色が変わる 足の皮膚が青紫色になる(チアノーゼ)
皮膚がただれる 潰瘍(かいよう)ができる
壊死が起こる 足の組織が腐ってしまう
切断のリスク 足を切断しなければならないこともある

文献1

足の血流障害は全身の動脈硬化のサインでもあり、少しでも足に違和感が出た場合は、手遅れになる前に医療機関を受診しましょう。

閉塞性動脈硬化症の初期症状

症状の種類 概要
歩くと足に違和感を覚える(間欠性跛行) 歩行中にふくらはぎが張る・疲れる・力が入らないが、休むと楽になる
足の冷え・しびれが続く 血流が悪くなることで、足が冷たく感じたり、しびれが続いたりする
足の傷が治りにくい・色が悪い(蒼白やチアノーゼ) 皮膚の血流が悪く、小さな傷が治らず、色が青白く変化するケースがある
足の脈拍の低下・消失 足先の血流が極端に悪くなり、脈が触れなくなることがある

閉塞性動脈硬化症の初期症状の多くは、年齢や疲れのせいと見過ごされてしまいがちです。しかし、歩いていると違和感や足の冷えやしびれが続く場合は閉塞性動脈硬化症の疑いがあります。

閉塞性動脈硬化症の初期症状が現れた場合は、早めの受診が必要です。

以下の記事では、自分でできる閉塞性動脈硬化症のセルフチェック方法について詳しく解説しています。

歩くと足に違和感を覚える(間欠性跛行)

状態 症状の内容 原因のしくみ
歩き始め ふくらはぎや太ももに違和感・しびれ・張り感 運動時に筋肉が酸素不足になり、違和感が出る
少し休むと改善 数分の休憩で症状が和らぐ・消える 筋肉の酸素需要が減り、一時的に血流が追いつく
再び歩くと再発 同じ場所・感覚でまた症状が現れる 血流が根本的に不足しているため繰り返される
進行すると悪化 歩ける距離が短くなり、日常生活に支障 血管の狭窄が進み、血流不足がさらに深刻になる

文献2

閉塞性動脈硬化症の初期には、歩くと足に違和感やしびれ、重だるさなどが現れます。ふくらはぎや太もも、お尻に症状が出やすく、休むと治まるため、放置されがちです。しかし、症状を放置すると徐々に進行し、足の血管が狭くなり、運動に必要な酸素や栄養が筋肉に届きにくくなります。

血流不足が深刻化する前に、医療機関の受診が大切です。

以下の記事では、間欠跛行の症状について詳しく解説しています。

足の冷え・しびれが続く

症状の特徴 概要
慢性的な冷え 温めても改善せず、常に足が冷たいと感じる
しびれの頻度が増加 ピリピリ・ジンジンとしたしびれが続くようになる
安静時にも感じる 座っている時や寝ている時にも症状を感じる
夜間に悪化しやすい 夜になると冷えやしびれが強くなることがある
左右差があることも 片足だけ、または左右で症状の程度が異なる場合がある
他の症状を伴う可能性 足の皮膚の色が悪くなったり、むくみが出ることがある

文献3)(文献4

気温とは関係なく、片方の足だけ冷たく感じたり、しびれが続く場合、血流障害を引き起こしている可能性があります。閉塞性動脈硬化症では、血流が悪くなって足先に酸素や栄養が届きにくくなり、その影響で神経に異常が起き、しびれや冷えが生じます。

足の冷え・しびれは年齢からくるものだと思われがちですが、足の左右で温度に差や頻度が多い場合は、閉塞性動脈硬化症を疑うべきサインです。重症化すると足が壊死する可能性があるため、早めの医療機関への受診が大切です。

足の傷が治りにくい・色が悪い(蒼白やチアノーゼ)

症状の特徴 説明
小さなキズの治癒遅延 切り傷や擦り傷が通常より治りにくい
感染しやすい 傷口から細菌が入りやすく感染しやすい
皮膚の色が悪い(蒼白) 足を高く上げた時などに皮膚が白っぽく見える
皮膚の色が悪い(チアノーゼ) 皮膚が紫色や暗赤色になることがある
皮膚が薄く、つやがある 皮膚が栄養不足で薄く光沢を帯びる
毛が抜けやすい 足の毛が抜けやすくなる
爪の変形・変色 爪が厚くなる、変形・変色する

文献3

閉塞性動脈硬化症が進行すると、血流が著しく低下し、足の皮膚や組織への酸素供給が不足します。酸素供給が不足するとちょっとした傷でも治りにくくなり、皮膚の色も悪く見えるようになります。足先が白くなったり、紫がかって見える状態はチアノーゼと呼ばれ、重度の血流不足状態です。

また、皮膚の乾燥や光沢、爪の変形も血流低下のサインであり、進行すると皮膚潰瘍や壊死に至る危険性もあります。チアノーゼは皮膚の色の変化として現れるため、足のしびれや歩行時の違和感よりも気づきやすいのが特徴です。皮膚が紫色や暗赤色に変色している場合は、早急に医療機関を受診してください。

足の脈拍の低下・消失

症状の特徴 説明
脈拍の触れにくさ 足の甲や足首で脈が弱くなったり、触れなくなったりする
左右差がある 片足だけ脈が弱い、または触れない場合がある
冷えやしびれを伴う 脈の変化と一緒に冷えやしびれを感じることが多い
皮膚の色や温度の変化 皮膚が青白くなり、足が冷たく感じることがある
運動後の変化 運動後に脈がさらに触れにくくなる場合がある
自己チェックの限界 自分で確認できても正確な判断は難しく、医師の検査が重要

文献3

足の甲や足首の脈が触れにくくなる、あるいはまったく触れなくなるのも、閉塞性動脈硬化症のサインです。足の動脈の詰まりが進行すると、足首や足の甲で触れる脈拍が弱くなったり、ほとんど感じられなくなったりするケースがあります。

足の脈拍の変化は自分ではわかりにくいため、医師の診察や超音波検査が必要です。とくに左右の脈に差がある場合や片足だけ脈が感じにくい場合は、動脈の詰まりが疑われます。早めに対応すれば血流を改善でき、重篤な合併症を防止できる可能性があります。

閉塞性動脈硬化症の原因

原因 なぜ関係するのか 防止策 具体的な説明
加齢 年齢とともに血管が硬くなり、動脈硬化が進行しやすくなる 血管をいたわる生活を心がける 食事の塩分や脂質を控え、適度な運動や定期的な健康診断を習慣にする
糖尿病 高血糖が血管の内側を傷つけ、血管が詰まりやすくなる 血糖値のコントロールが重要 食事療法・運動療法・内服治療などで血糖を安定させ、合併症の予防につなげる
脂質異常症 LDLコレステロールが血管にたまり、プラークとなって血流を妨げる 脂質管理と生活習慣の改善 動物性脂肪を控えた食事と、必要に応じたコレステロール低下薬の服用
喫煙 タバコに含まれる成分が血管を傷つけ、血流を悪くする 禁煙が最大の予防 禁煙外来の活用や代替品(ニコチンパッチなど)を利用して、段階的に習慣を断ち切る

閉塞性動脈硬化症は、動脈の内側にコレステロールなどの脂質がたまり、血管が狭くなる動脈硬化が原因で起こります。動脈硬化が引き起こされる原因は以下の4つです。

  • 加齢
  • 糖尿病
  • 脂質異常症(高コレステロール血症など)
  • 喫煙

以下では、閉塞性動脈硬化症の原因を詳しく解説します。

加齢

加齢に伴う変化 対策・予防方法
血管内皮細胞の機能低下 抗酸化作用のある食品をとる(野菜・果物)、定期的な検査を受ける
血管壁の弾力性の低下 ウォーキングなどの有酸素運動で血管の柔軟性を維持
酸化ストレスの増加 禁煙やバランスの良い食事で活性酸素を抑える
炎症反応の亢進 規則正しい生活・ストレス管理やEPAやDHAを含む食品
生活習慣病のリスク増加 高血圧・糖尿病・脂質異常症をきちんと治療・管理する

文献3)(文献5

年を重ねると血管の弾力性が失われ、動脈硬化が進みやすくなります。その結果、閉塞性動脈硬化症を発症し、軽い動作でも足に違和感が出ることがあります。

年齢とともに血管は弱くなりますが、運動や食生活を見直すことで健康を保てます。足の冷えやしびれが気になる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

糖尿病

影響の種類 概要
血管を傷つけやすい 高血糖が続くと血管の内壁が傷つきやすくなる
動脈硬化を促進 脂肪が血管壁にたまりやすく、動脈硬化が進行しやすい
末梢血管が障害されやすい 足先など細い血管が多い部分で血流障害が起こりやすい
神経障害を合併しやすい 足の感覚が鈍くなり、違和感に気づきにくくなる
小さな傷に気づきにくく、治りにくい 小さな傷に気づかず、治りにくくなることで悪化しやすい
感染症のリスクが高い 免疫力が低下し、傷口からの感染症リスクが高まる
血管の石灰化が起こりやすい 血管にカルシウムがたまり、血管が硬くなりやすい
他の危険因子を合併しやすい 高血圧や脂質異常症を併発しやすく、動脈硬化が進みやすい

文献6)(文献7

血糖値が高い状態が続くと、血管の内側が傷つき、脂質や血小板がたまりやすくなります。脂質や血小板がたまると血管が詰まりやすくなります。糖尿病では神経障害も起こりやすく、足のしびれや違和感に気づきにくいため、とくに注意が必要です。

血管と神経の障害が重なると、傷の治りが遅くなり、感染が悪化しやすくなります。その結果、閉塞性動脈硬化症のリスクが高まります。糖尿病の方は、足の違和感や傷に気を配り、異常があれば早急に医療機関を受診しましょう。

脂質異常症(高コレステロール血症など)

影響の種類 概要
血管壁への脂質沈着 悪玉コレステロールが血管の内壁にたまりやすくなる
プラーク形成の促進 たまった脂質がプラークを作り、血管を狭める
初期症状の発現を早める可能性 動脈硬化が早く進み、若いうちから症状が出ることがある
症状の悪化を加速 血流がさらに悪化し、違和感や歩行障害が進行する
他の危険因子との相乗効果 高血圧や糖尿病などと合併しやすく、リスクがさらに高まる
血管内皮機能の障害 血管の柔軟性が低下し、血栓ができやすくなる

文献8)(文献9

血液中のコレステロールや中性脂肪が多いと、動脈の内壁に脂質が沈着し、プラークと呼ばれる塊ができやすくなります。プラークは血管を狭め、血流を妨げる原因です。

とくにLDL(悪玉)コレステロールが高い状態が続くと、動脈硬化が進行しやすくなり、閉塞性動脈硬化症を引き起こしやすくなります。脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、健康診断で指摘された場合は放置せず、食生活の見直しや適切な治療を行うことが大切です。

喫煙

喫煙が与える影響 概要
血管の内側が傷つく タバコの有害物質が血管内皮細胞を傷つけ、血管機能が低下
動脈硬化が進みやすくなる コレステロールなどが沈着しやすくなり、血管が狭くなる
血管が収縮して血流が悪くなる ニコチンの作用で血管が細くなり、足の血流が悪化する
血液がドロドロになる 喫煙により血液の粘り気が増し、流れにくくなる
血栓ができやすくなる 血のかたまり(血栓)ができやすくなり、血管を詰まらせる
症状が早く現れる可能性が高くなる 非喫煙者より若い年齢で冷えやしびれなどの症状が出やすい
症状が急速に悪化しやすくなる 歩ける距離が短くなる、安静時にも違和感が出てくるなど悪化が早い
治療の効果が出にくくなる 薬や治療の効果が弱まり、改善しにくくなる

文献10

タバコに含まれる有害物質は血管の内側を傷つけ、炎症や動脈硬化を進行させます。とくにニコチンは血管を収縮させ、足の血流を悪化させる原因です。

そのため、喫煙者は非喫煙者より閉塞性動脈硬化症の発症リスクが2〜4倍高く、若年で発症する傾向もあります。動脈硬化の予防や治療には禁煙が不可欠です。(文献11

閉塞性動脈硬化症は何科を受診するべき?

診療科名 役割・特徴 受診の目安
循環器内科 血流や動脈硬化の評価・管理が可能。動脈の状態を総合的に診断 足の冷え・しびれ・歩行時の違和感などがある場合に最優先で受診
血管外科 動脈の狭窄・閉塞に対する検査・手術(カテーテル治療など)に対応 検査や手術が必要な場合、循環器内科から紹介されることも多い
内科(かかりつけ医) 必要に応じて専門科へ紹介してもらえる 専門科がない場合にまず相談。早期の受診・紹介が重要
整形外科(注意) 神経や筋肉の疾患が専門。血流の問題を見落とす可能性あり しびれや違和感で来院しても、血流障害が見逃されることがある
皮膚科(注意) 皮膚の異常は診られるが、血流の異常に気づかれにくいことがある 足の傷で受診しても、原因が血流障害と判断されにくい

閉塞性動脈硬化症が疑われる場合は、まず循環器内科または血管外科の受診が推奨されます。循環器内科または血管外科では、血管の状態を詳しく調べる検査や適切な治療方針の判断ができます。

とくに足が冷たい、足の色が悪いといった症状がある場合は、末梢動脈疾患の可能性があるため、早期受診が大切です。

どこを受診すべきか迷う場合は、内科やかかりつけ医に相談しましょう。初期診察で必要性があれば、専門科への紹介を受けられます。症状を放置すると潰瘍や壊死など重症化する恐れがあるため、異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。

「どの診療科に行けば良いのかわからない」とお悩みの方は、お気軽にリペアセルクリニックへご相談ください。当院では、どんな小さなお悩みにも丁寧に耳を傾け、患者様一人ひとりに寄り添った治療のご提案をいたします。「メール相談」や「オンラインカウンセリング」もご利用いただけますので、ご不安なことがあればいつでもご相談ください。

閉塞性動脈硬化症の治療法

治療法 内容 適しているケース 注意点・ポイント
保存療法 ウォーキングや生活習慣の見直し 初期の症状がある方 運動を継続が大切。禁煙や減塩も効果的
薬物療法 抗血小板薬や高血圧・糖尿病の治療薬 軽度から中等度の症状がある方 医師の指示に従って服薬を継続が重要
手術療法 カテーテル治療やバイパス手術 血管の詰まりが進行し、日常生活に支障がある方 術式は症状によって異なるため、専門医とよく相談する
再生医療 幹細胞などを用いて血管の再生を促す治療 他の治療が難しく、重症の状態にある方 保険が適用されない場合があり、限られた施設で実施されている

閉塞性動脈硬化症の治療は、症状の進行度や原因となる病気の有無によって異なります。

  • 保存療法
  • 薬物療法
  • 手術療法
  • 再生医療

閉塞性動脈硬化症の治療法は医師の診断と指導のもと行われます。治療法について解説します。

保存療法

取り組み内容 概要
禁煙 最も重要な改善点。喫煙は血管を傷つけ動脈硬化を進行させるため、禁煙が必須
食事の見直し 塩分や脂質を控えた食事で動脈硬化の進行を抑える
適度な運動 ウォーキングなどの軽めの有酸素運動が血流改善に効果的
体重・血圧・血糖・脂質の管理 生活習慣病の管理を通じて、血管への負担を減らし、病気の進行を防ぐ

文献12

保存療法とは、薬や手術を用いず、生活習慣の改善などで進行を抑える治療法です。代表的なのが運動療法であり、ウォーキングなどの有酸素運動を定期的に行い、血流の改善を促します。また、運動だけでなく、生活習慣の見直しも大切です。

禁煙や高カロリーな食事を控えるなど、動脈硬化の進行を抑える上で基本となります。保存療法は、医師の指導のもとで行うことが大切です。運動や食事制限は無理のない範囲で続け、少しでも違和感があれば、すぐに医師に相談しましょう。

以下の記事では、下肢閉塞性動脈硬化症でやってはいけないマッサージ方法について詳しく解説しています。

薬物療法

治癒カテゴリー 薬剤例 効果の概要
抗血小板薬 アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール 血小板の凝集を抑え血栓を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞の予防にも有効
血管拡張薬 シロスタゾール、プロスタグランジン製剤 血管を広げて血流を改善し、歩行距離の延長や冷え・しびれに有効
プロスタグランジン製剤 プロスタグランジンE1製剤(注射・点滴) 末梢血流を改善し、潰瘍や壊死などの重症症状を緩和・治癒促進
脂質異常症治療薬 スタチン(ロスバスタチン、アトルバスタチンなど) LDLコレステロールを下げて動脈硬化を予防。心血管リスクの低減にもつながる
高血圧治療薬 ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、β遮断薬 血圧を下げて血管の負担を軽減し、動脈硬化の進行を抑える
糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬 血糖管理に加え血管保護作用もあり、心血管リスクの抑制に貢献

文献13)(文献14

閉塞性動脈硬化症の薬物療法は、病気の進行を抑え、症状を和らげるために行います。抗血小板薬は血栓を防ぎ、血流を保つのに役立ちます。

高血圧や糖尿病、脂質異常症がある場合は、それぞれの治療薬も併用します。薬は根本的な治療ではなく、進行を止めることが目的です。薬剤は医師の指示のもと、継続しての服用が大切です。

手術療法

治療法 手術方法 効果・特徴 適応病変
バイパス手術(外科的血行再建術) 閉塞部位の上下をつなぎ、静脈や人工血管で血流のバイパスを作る 長い範囲の血管閉塞に効果があり、歩行距離の改善や潰瘍の治癒、さらには足の切断を回避できる可能性がある 長い範囲の閉塞や血管内治療が難しい場合に向いている
血管内治療(カテーテル治療) カテーテルで血管を内側から広げ、必要に応じてステントを入れる 早期に血流改善が期待でき、違和感や冷えの症状が軽減しやすい 比較的短い範囲の狭窄・閉塞に対して有効

閉塞性動脈硬化症が進行し、薬や運動では十分な改善が見込めない場合、手術療法が検討されます。とくに足の血管が高度に狭くなったり詰まったりしている場合、血液の流れを回復させるには物理的な処置が必要です。

代表的なのがカテーテル治療で、狭くなった血管内に細い管を入れ、バルーンで広げ、金属製のステントを留置する方法です。より重度の場合には、詰まった血管を迂回するバイパス手術を行います。

手術療法は誰にでも適応できるわけではなく、血管や全身の状態を見て慎重に判断する必要があります。また、カテーテル治療後の再狭窄やバイパス手術後の感染などのリスクもあるため、医師とよく相談し、メリットとリスクを理解した上で治療を選ぶことが大切です。

再生医療

再生医療は、薬や手術で改善が難しい場合に検討されます。再生医療は患者自身の細胞を使用し、新たな血管の形成を促す治療です。

再生医療は比較的新しい治療アプローチであり、一部では保険適用外となりますが、重症例における有効性が報告されており現在も研究が進められています。名古屋大学大学院の報告によると、血管内治療やバイパス手術が難しい末期の患者でも、再生医療によって血流が改善し、足の切断を回避できたケースが確認されています。文献13

また、京都府立医科大学附属病院の資料によると、バージャー病に対する再生医療では、足の切断を1年後・3年後ともに95.5%の確率で回避できたことが示されています。(文献15

再生医療は限られた医療機関での実施となるため、事前に取り扱いのある医療機関への受診が必要です。

以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。

閉塞性動脈硬化症の初期症状が現れたらすぐに医療機関を受診しよう

閉塞性動脈硬化症の初期症状は見過ごされやすいですが、放置すると壊死を起こし、最悪の場合は足の切断に至ることもあります。

違和感を覚えた場合は、速やかに医療機関を受診してください。また、動脈硬化は全身に起こるため、足の症状だけでなく心臓病や脳卒中といった重篤な病気につながる可能性もあります。

当院リペアセルクリニックでは、症状や受診科の悩みに丁寧に対応し、必要に応じて幹細胞を使った再生医療で治療をサポートしています。

閉塞性動脈硬化症が改善せずお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。

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参考資料

(文献1)

玉木 正人ほか.「下肢閉塞性動脈硬化症に対する治療法の評価とQOL」, pp.1-8, 1995年

https://www.jsvs.org/jsvs/pdf/19950401/jsvs_1995_0401_0083.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献2)

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「末梢閉塞性動脈疾患」MSD マニュアル 家庭版,2023年7月

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E9%96%89%E5%A1%9E%E6%80%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献3)

宮田 哲郎,「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2015 年改訂版)」『2014年度合同研究班報告』, pp.1-95, 2015年

https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/wordpress/wp-content/uploads/2020/06/JCS2015_miyata_h.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献4)

「臨床研究の概要をできる限り平易な用語を用いて記載した要旨」pp.1-3

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/dl/s0723-17c_0022.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献5)

「動脈硬化は怖い病気のはじまり」『一般社団法人 日本動脈硬化学会』, pp.1-4

https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/general/pdf/doumyaku_p2023.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献6)

一般社団法人日本糖尿病学会「糖尿病合併症について」一般社団法人日本糖尿病学会,2021年9月2日

https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献7)

厚生労働省「糖尿病」

https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献8)

寺本 民生.「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス」, pp.1-12, 2014年

https://www.med.or.jp/dl-med/jma/region/dyslipi/ess_dyslipi2014.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献9)

「脂質異常症」国立循環器病研究センター

https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/dyslipidemia/(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献10)

一般社団法人日本動脈硬化学会「禁煙は動脈硬化予防の第一歩」一般社団法人日本動脈硬化学会

https://www.j-athero.org/jp/general/kinen/#:~:text=%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E5%96%AB%E7%85%99%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82&text=%E5%96%AB%E7%85%99%E8%80%85%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E9%9D%9E%E5%96%AB%E7%85%99,%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献11)

ゲオルギオス・ケコス,リチャード・シュナイダー.「たばこのからだ」World Healthorganization, pp.1-1, 2019年

https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/324846/WHO-NMH-PND-19.1-jpn.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献12)

林 富貴雄,伊東 春樹.「下肢閉塞性動脈硬化症のリハビリテーション」『『血管病と運動』シリーズ ASO編』, pp.1-8, 2018年

https://www.npo-jhc.org/image/pdf/aso.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献13)

「皮下脂肪由来幹細胞で血管病を治療 -皮下脂肪由来幹細胞を利用した再生医療が下肢切断を救う!-」『皮下脂肪由来間葉系幹細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法〜他施設共同研究〜』, pp.1-5,

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Ang_220714.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献14)

横井 宏佳.「閉塞性動脈硬化症(PAD)の薬物療法 〜循環器内科医の立場から〜」日本フットケア学会雑誌, pp.1-4, 2017年

https://www.jstage.jst.go.jp/article/footcare/15/3/15_16/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月10日)

(文献15)

真田ほか.「先進医療B 総括報告書に関する評価表(告示旧24)」『第154回先進医療技術審査部会』, pp.1-15, 2023年

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001163753.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)

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