LINEポップアップ
  • HOME
  • トピックス
  • 高次脳機能障害と認知症の違いとは?併発の可能性と症状を解説
  • 頭部
  • 頭部、その他疾患

高次脳機能障害と認知症の違いとは?併発の可能性と症状を解説

高次脳機能障害 認知症違い
公開日: 2025.05.30

「高次脳機能障害と認知症はどう違うのか」

「高次脳機能障害と認知症は併発するのか」

高次脳機能障害と認知症は、どちらも記憶や判断力に影響を及ぼすため混同されやすいものの、実際には原因や進行、症状に明確な違いがあります。本記事では、両者の違いや併発の可能性、それぞれの症状や治療法についてわかりやすく解説します。

また、記事の最後には、高次脳機能障害と認知症に関する質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

高次脳機能障害と認知症の違い

項目 高次脳機能障害 認知症
原因 脳外傷、脳卒中、脳腫瘍など突然の脳損傷 アルツハイマー病など進行性の脳疾患
発症の経過 急性(原因となる出来事の直後) 徐々に発症し進行する
症状 記憶障害、注意障害、感情コントロールの低下、遂行機能障害など 記憶障害、見当識障害、判断力低下、徘徊・妄想など
症状の進行 基本的には進行しない(リハビリで回復可能性あり) 徐々に進行する(根本的な治療は困難)
意識レベル 通常はっきりしている 初期ははっきりしているが、進行で低下する場合も
支援の方向性 機能の回復と代償を目指すリハビリ中心 進行を遅らせ、生活支援を重視
その他の特徴 症状は損傷部位により多様 記憶障害が中核症状となることが多い

高次脳機能障害と認知症は、記憶力や判断力に影響を及ぼす点では共通しているものの、発症の経緯や進行、支援の方法には大きな違いがあります。

高次脳機能障害は、脳卒中や事故など外的な要因によって突然起こるのに対し、認知症は加齢や神経変性によって徐々に進行するのが特徴です。症状の内容や治療法も異なるため、正しく区別して対応することが重要です。

高次脳機能障害の症状

症状カテゴリ 内容
記憶障害 新しいことが覚えられない、過去の出来事を思い出せない、体で覚えた動作の記憶の障害
注意障害 集中力の低下、注意の持続・切り替え・分配の困難
遂行機能障害 計画立案・実行・自己評価の困難、柔軟な対応の低下
社会的行動障害 感情コントロールの難しさ、意欲低下、対人トラブル、依存傾向
失語症 話す・聞く・読む・書く・名前をいうことの困難
失行症 動作の指示や模倣ができない、物の使い方の混乱、衣服の着脱の困難
失認症 見る・聞く・触る情報の認識障害、自分の病気への無自覚、片側への注意欠如

文献1

高次脳機能障害の症状は、損傷を受けた脳の部位や程度によって多岐にわたります。記憶障害、注意力の低下、遂行機能障害、失語、失認、行為障害、感情や行動の変化などが症状として現れます。

高次脳機能障害の症状の現れ方には大きな個人差があり、単一の症状だけでなく複数が同時に見られることもあります。

以下の記事では、高次脳機能障害の症状について詳しく解説しております。

認知症の症状

症状カテゴリ 内容
記憶障害 新しい情報の保持の困難、物の置き場所の忘却、同じ質問の繰り返し
見当識障害 日付や場所の混乱、家族や知人の認識困難
実行機能障害 手順や計画の立案の困難、複数作業の同時実行の困難
言語障害(失語) 適切な言葉が出てこない状態、会話や内容理解の困難
行動・心理症状(BPSD) 妄想や幻覚、徘徊・暴言・暴力、抑うつや不安の出現

文献2

認知症の主な症状は、記憶障害、見当識障害、理解力や判断力の低下、実行機能障害などが挙げられます。

発症初期には物忘れが目立つことが多く、進行するにつれて日常生活を送る上でのさまざまな能力が低下していきます。また、抑うつや不安、妄想などの精神症状や行動の変化が伴うのも特徴です。

以下の記事では、認知症について詳しく解説しております。

高次脳機能障害と認知症は併発する可能性がある

観点 内容
高次脳機能障害がある場合 脳の損傷により将来的に認知症の発症リスクが高まる可能性あり(再発・加齢・刺激不足が影響)
認知症が高次脳機能障害を起こすか 認知症が直接の原因となって高次脳機能障害を起こすことは基本的にない
症状の似ている点 記憶障害・判断力の低下・感情の不安定さなどが共通し、初期は区別が難しいこともある
両者の本質的な違い 高次脳機能障害は非進行性(改善が見込める)認知症は進行性(徐々に悪化)
正確な診断のために必要なこと 医師による問診、画像検査、神経心理検査などでの専門的な鑑別

文献3

高次脳機能障害と認知症は異なる病気です。しかし、症状が似ているため混同されやすく、併発するケースもあります。とくに高次脳機能障害のある方は、脳の脆弱性により将来的に認知症を発症しやすくなる可能性があります。

一方で、認知症が直接的に高次脳機能障害を引き起こすことは稀です。両者には明確な因果関係はありません。症状が重なる場合もあるため、診断後も経過観察が必要です。

併発が疑われる際は、それぞれに適した治療や支援を組み合わせ、医師による診断と対応が必要になります。

高次脳機能障害になったときの対処法

対処法 内容
リハビリテーション 作業療法・理学療法・言語療法・心理療法などを組み合わせ、機能の回復・改善を目指す訓練
薬物療法(症状のコントロール) 抑うつ、不眠、易怒性などの症状に対し、必要に応じて薬を用いてコントロールする治療法
再生医療(損傷神経の修復) 損傷した脳神経の修復や機能回復を目指す新たな治療法

高次脳機能障害と診断された場合は、早期の対応が大切です。治療の中心はリハビリテーションで、必要に応じて薬物療法も併用されます。

さらに近年では、損傷した神経の修復を目指す再生医療も注目されており、新たな治療の選択肢として期待されています。

リハビリテーション

訓練対象 内容 目的・背景
記憶障害 カードや絵の記憶、聴覚的記憶、日付や時間の確認、メモやアラームの活用 残された脳機能を活用し、記憶力の再学習と代償手段の習得を図る
注意障害 間違い探しや時間内課題、ラジオを聞きながら作業、集中できる環境調整 注意力を高める訓練と、日常生活での適応力の回復を促す
遂行機能障害 料理や買い物の段取り、問題解決、時間管理の練習 計画立案や柔軟な思考を再習得し、日常生活の自立を支援
言語障害 発語・理解・読み書きの練習、ジェスチャーや絵カードの活用 言語能力の再構築と、代替的なコミュニケーション手段の習得
視空間認知障害 図形模写、地図や迷路の把握、着替え・食事などの動作訓練 空間認識力の再学習と、日常動作の確保
心理的サポート カウンセリング、家族への支援と相談 抑うつや意欲低下など二次的問題の予防と精神面の安定
総合的な目標 各機能訓練を個別に組み合わせて実施 脳の可塑性を活かし、生活の質の向上と自立を目指す

リハビリテーションは、高次脳機能障害からの回復において重要な役割を果たします。

作業療法士や言語聴覚士の指導のもと、記憶力や注意力、行動面の改善を目指した訓練を行い、日常生活に即した動作を段階的に練習しながら、低下した機能の補完や再習得を図ります。

少しずつリハビリを積み重ね、生活の自立や社会復帰を前向きに目指していくことが大切です。

以下の記事では、高次脳機能障害のリハビリについて詳しく解説しています。

【関連記事】

高次脳機能障害への対応の仕方は?介護疲れを軽減するコツを解説

高次脳機能障害のリハビリ効果とは?方法や内容をあわせて紹介

薬物療法(症状のコントロール)

項目 内容
目的 症状のコントロールと生活の質(QOL)の向上
脳機能の調整 神経伝達物質のバランス調整による注意力・記憶力・感情コントロールの改善
精神症状への対応 抑うつ・不安・興奮・攻撃性の緩和による情緒の安定と行動の安定化
主な使用薬剤 認知機能に作用するドネペジル、不安や抑うつに用いる抗うつ薬(SSRIなど)
治療上の注意点 副作用への配慮と、症状に応じた個別の薬剤調整
治療の進め方 リハビリテーションや心理的支援との併用による相乗的な治療効果

文献4

高次脳機能障害に対して、根本的な治療薬はありませんが、抑うつや不安、興奮といった精神的な症状には薬物療法が行われます。このような症状を和らげることで、情緒が安定し、生活しやすくなることがあります。

薬剤は症状や体調に応じて医師が判断し、リハビリや心理的支援と併用して生活の質の向上を目指すとともに、副作用への配慮や継続的な調整も大切です。

再生医療(損傷神経の修復)

高次脳機能障害に対する再生医療は、損傷した神経細胞の修復や再生を促す治療法で、記憶力・注意力・言語能力の改善が期待されています。

幹細胞には、炎症を抑制し神経ネットワークの再構築を促進する効果が期待されています。現在は一部の医療機関でのみ実施されており、適用には医師との事前相談が必要です。

以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。

認知症になったときの対処法

対処法 内容
薬物療法(進行抑制と症状緩和) 症状の進行を遅らせる、記憶障害や精神症状を一時的に改善する薬を使用
生活環境を整える 物の配置を工夫し、過ごしやすい環境をつくる
再生医療(脳の神経細胞を修復・保護) 神経細胞の修復や保護を目指す治療で、認知機能の維持・改善に期待

認知症と診断された場合も、進行を遅らせたり症状を和らげたりする方法があります。

薬物療法では記憶障害や精神症状の改善を目指し、再生医療も将来の治療法として注目されている治療法です。

薬物療法(進行抑制と症状緩和)

項目 内容
目的 認知機能の低下を遅らせ、行動・心理症状(BPSD)を緩和し、生活の質を保つ
主な薬の種類 アセチルコリンの働きを保つ薬や、神経の過剰な興奮を抑える薬が使われる
代表的な薬剤 ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン
作用のしくみ 記憶や学習に関わる神経伝達を助けたり、神経細胞の損傷を防いだりする
副作用の例 吐き気、下痢、食欲不振、めまい、頭痛、便秘など
治療の工夫 複数の薬を組み合わせることで、より高い効果が期待できることもある

文献5

薬物療法で認知症の進行を根本から止めることは困難ですが、一部の薬剤は記憶障害や行動症状を軽減する効果があります。代表的な薬としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬があり、認知症の進行を遅らせ、自立した生活の維持に役立つとされています。

薬物療法では、自己判断で量を変えたり中断したりせず、医師の指示に従って継続的な服用が大切です。

生活環境を整える

項目 内容
目的 不安や混乱の軽減、自立支援、介護負担の軽減
認識のサポート 時計・カレンダーの設置、季節感や思い出の品の活用
残された力の活用 物の定位置化、ラベル表示、自分でできる環境の工夫
行動・心理症状の緩和 混乱や不安の軽減により、徘徊や興奮を予防
地域・社会との関わり 外出支援、地域活動への参加、近隣住民との協力体制
円滑なコミュニケーション ゆっくり話す、笑顔、ジェスチャーや絵の活用、否定しない姿勢

認知症のある方にとって、環境の変化は混乱や不安の原因になりやすいため、過ごしやすい生活環境を整えることが大切です。

たとえば、物にラベルを貼る、大きな時計を設置するなど、ちょっとした工夫が日常生活を支える助けになります。

このような環境づくりは、本人の残された力を引き出すだけでなく、徘徊や興奮などの症状を和らげ、介護する家族の負担も軽減します。家族が協力して環境を整えることは、生活を支え、症状の緩和にもつながる大切な取り組みです。

再生医療(脳の神経細胞を修復・保護)

再生医療は、認知症で失われた神経細胞を補ったり、傷んだ細胞を修復したりすることを目指す治療法です。たとえば、幹細胞を脳に移植し、それが神経細胞に成長することで、脳の機能回復が期待されています。

再生医療は受けられる医療機関が限られており、適用できるかどうかは事前に医師へ相談しましょう。

手術しなくても治療できる時代です。

脳卒中のお悩みに対する新しい治療法があります。

高次脳機能障害と認知症の違いを理解し適切な治療を受けよう

高次脳機能障害と認知症は、原因や進行の経過は異なるものの、似たような症状が見られることがあります。正しく見分けて適切な診断と治療を受けることは、生活の質を向上させる上で大切です。

​当院リペアセルクリニックでは、症状に応じた治療をご提案しており、再生医療も選択肢のひとつとしてご利用になれます。

高次脳機能障害もしくは、認知症の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。

\無料相談受付中/

通話料無料/受付時間 09:00~18:00

高次脳機能障害と認知症に関するよくある質問

高次脳機能障害と認知症どちらかわかりませんが病院を受診するときは何科に行けばいいですか?

高次脳機能障害や認知症が疑われる場合は、神経内科や脳神経外科の受診が基本です。

精神症状があれば精神科や心療内科、高齢者の場合は老年内科も適しています。診断後はリハビリ科の支援も有効です。迷ったときは、まずかかりつけ医に相談しましょう。

高次脳機能障害や認知症は遺伝しますか?

高次脳機能障害は脳の損傷によるもので、遺伝はしません。一方で、家族性アルツハイマー病など一部の認知症では遺伝的要因が強く関与するものもあります。心配な場合は医師に相談しましょう。

高次脳機能障害と認知症は支援制度や保険は適用できますか?

高次脳機能障害や認知症のある方は、症状や年齢、生活状況に応じてさまざまな支援制度や保険の適用を受けられます。高次脳機能障害では障害者手帳、自立支援医療、障害年金、福祉サービスなどが利用できます。

認知症では介護保険制度や高額療養費制度、精神障害者保健福祉手帳の取得などが対象です。制度の利用には、市区町村の福祉窓口での相談や申請が必要です。

 

参考資料

(文献1)

慶應義塾大学病院「病気を知る 高次脳機能障害のリハビリテーション」KOMPAS, 2018年12月5日

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000269/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月19日)

(文献2)

内閣府大臣官房政府広報室「知っておきたい認知症の基本」あしたの暮らしをわかりやすく 政府広報オンライン, 2025年1月16日

https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html(最終アクセス:2025年5月19日)

(文献3)

宮永和夫.「高次脳機能障害者と認知症-鑑別診断と社会支援-」, pp.1-26

https://www.minamiuonumahp.jp/wp/wp-content/uploads/2018/10/2018.9.22.pdf(最終アクセス:2025年5月19日)

(文献4)

溝神文博.「切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド」, pp.1-76, 2025年

https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/news/documents/20250331guide.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月19日)

(文献5)

一宮洋介.「アルツハイマー型認知症の新たな治療戦略」『順天堂東京江東高齢者医療センターメンタルクリニック』, pp.1-52

https://medical-society-production-tkypa.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/uploads/theme/pdf/479/20130309_003.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月19日)

イメージ画像トップ