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関節リウマチの合併症|主な種類や原因を医師が詳しく解説

「関節リウマチで治療を受けているけれど、最近いつもと違う症状が出てきた」
「関節リウマチの合併症にはどのようなものがあるのだろう?」
関節リウマチの治療を受けている方の中には、合併症に関する不安を抱えている方も多いことでしょう。関節リウマチの合併症には、間質性肺炎や骨粗しょう症、シェーグレン症候群などがあります。
本記事では、関節リウマチの合併症および原因、予防のポイントなどを解説します。合併症に関する疑問や不安解消のきっかけになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
関節リウマチの主な合併症
関節リウマチの主な合併症として挙げられる7つの疾患を以下に示します。
- 間質性肺炎
- 骨粗しょう症
- シェーグレン症候群
- 貧血
- アミロイドーシス
- 肝機能障害
- 腎機能障害
間質性肺炎
間質性肺炎とは、肺の間質(肺胞壁および肺胞を支える組織)を中心に炎症をきたす疾患です。炎症が進むと、肺全体が固くなります。
主な症状は、息苦しさや乾いた咳(痰を伴わない咳)などです。
進行すると呼吸不全の状態になるケースもありますが、呼吸不全まで進まない種類の間質性肺炎もあります。
骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨量の減少や骨質の劣化などが原因で骨がもろくなり、骨折しやすくなる疾患です。骨粗しょう症の患者数は、全国で約1,280万人といわれています。(文献1)
骨粗しょう症には閉経後骨粗しょう症や続発性骨粗しょう症などの種類があり、関節リウマチ合併症由来のものは、続発性骨粗しょう症に分類されます。
骨粗しょう症自体は、自覚症状を感じにくい疾患です。症状がないまま徐々に骨が弱くなり、腰椎や大腿骨の骨折などを引き起こす可能性があります。
大腿骨の骨折は、歩行困難や寝たきりを引き起こす大きな原因の1つとされています。
骨粗しょう症については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は、関節リウマチと同様、自己免疫疾患の1つです。(文献2)
涙腺や唾液腺などの慢性的な炎症が起こり、ドライアイやドライマウス、鼻の乾燥などの症状が現れます。
関節リウマチの合併症は二次性シェーグレン症候群と呼ばれており、他の合併症が見られないものは、一次性シェーグレン症候群と呼ばれます。一次性シェーグレン症候群には、病変が全身に及ぶタイプも存在します。(文献2)
貧血
関節リウマチの方は、慢性的な炎症や抗リウマチ薬の副作用などにより、貧血を合併しやすい状況です。
貧血にはさまざまな種類があり、関節リウマチによるものは、鉄分が足りなくなることで起こる小球性低色素性貧血に分類されます。
関節リウマチと貧血の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
アミロイドーシス
アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が、脳や心臓、腎臓、消化管、神経などのさまざまな臓器に付着し、機能障害を起こす疾患です。
アミロイドーシスには、複数の臓器にアミロイドが付着する全身性と、特定の臓器にアミロイドが付着する限局性があります。
また、アミロイドーシスは遺伝性と非遺伝性にわかれており、多くの患者は非遺伝性です。関節リウマチ合併症によるものも、非遺伝性アミロイドーシスに分類されます。
肝機能障害
関節リウマチに合併する肝機能障害の多くは、薬剤性のものです。とくに、抗リウマチ薬であるメトトレキサートの副作用で肝機能障害が起こりやすいとされています。
リウマチの薬の影響でB型肝炎やC型肝炎のウイルスが活性化し、無症状の方が発症する場合もあります。
自己免疫疾患の一つである関節リウマチでは、他の自己免疫疾患を合併するケースも少なくありません。肝臓疾患としては、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎などがあります。
腎機能障害
関節リウマチ合併症としての腎機能障害は、ネフローゼ症候群や腎不全などアミロイドーシスに関係しているものが多い状況です。抗リウマチ薬や消炎鎮痛剤の副作用による腎機能障害もあります。
腎機能障害の症状としては、全身の倦怠感やむくみ、タンパク尿などが挙げられます。
関節リウマチと腎機能障害の関係については、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
関節リウマチの合併症が生じる原因
関節リウマチの合併症が生じる原因としては、疾患そのものに加えて薬の副作用が挙げられます。
間質性肺炎や骨粗しょう症、シェーグレン症候群などは関節リウマチ由来の合併症であり、肝機能障害は、薬の副作用であることが多い状況です。
腎機能障害には、アミロイドーシスに由来するものや薬の副作用によるものがあります。
関節リウマチの合併症予防と早期発見のポイント
関節リウマチの合併症予防および早期発見のポイントは、主に以下の2つです。
- 生活管理
- 定期的な受診
生活管理
関節リウマチ悪化予防のために一番望ましい行動は、禁煙です。(文献3)寝る前や食後の歯磨きや、歯科検診などの歯周病予防も欠かせません。歯周病は関節リウマチ発症や悪化に関係するためです。
貧血や骨粗しょう症といった合併症予防のためには、カルシウムや鉄分の多い、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
関節リウマチは抗リウマチ薬やステロイド剤の影響で、感染症を引き起こしやすいとされています。(文献4)手洗いやうがいといった日頃からの感染予防に加えて、必要に応じて各種予防接種を受けましょう。
定期的な受診
合併症の予防や早期発見のためには、定期的に医療機関を受診し、必要な診察および検査を受けることが大切です。いつもと違う症状があるときは、ためらわずに受診し、主治医へ状況を伝えましょう。
症状がないときに受診や内服を中断すると、関節リウマチそのものが悪化してしまい、合併症のリスクも高まります。自己判断での服薬中断は避けてください。
関節リウマチの薬については、以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
関節リウマチで合併症を引き起こさないためにも継続的な治療が大切
関節リウマチの合併症は、疾患そのものによるものから薬の副作用まで多くの種類が存在します。
合併症予防および早期発見・治療のためにも、日頃から薬の内服を続け、いつもと違う症状があれば、速やかに医療機関を受診しましょう。いつもと違う症状を放置しないことが大切です。
当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。関節リウマチおよび合併症についても、お気軽にご相談ください。
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関節リウマチの合併症に関するよくある質問
関節リウマチの合併症で亡くなることはありますか?
関節リウマチ合併症の中でも、狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などの心血管イベントを発症すると、重症の場合亡くなることもあります。(文献5)
関節リウマチは、関節だけではなく血管にも炎症を起こすことがあるため、血管の狭窄や血栓が発生しやすい状況です。そのため心血管イベントにつながる可能性が高いとされています。
合併症の1つである間質性肺炎も、重症化したり急激に悪化したりすると命に関わる場合も少なくありません。(文献6)
シェーグレン症候群を治療しないとどうなりますか?
シェーグレン症候群を治療しないと、別の病気を発症していることに気づけないリスクがあります。
シェーグレン症候群は現段階では完治が難しいものの、予後は良好とされる疾患です。しかし、経過観察中に間質性肺炎や腎不全、リンパ腫を発症する場合もあります。(文献2)そのため発症後は、定期的な治療や経過観察が必要です。
関節リウマチの合併症で多いのは何ですか?
関節リウマチの合併症はさまざまであるため、どれが一番多いとの断定は難しい状況です。
合併症の1つである間質性肺炎は、関節リウマチ患者の約10~30%に見られています。(文献6)
それ以外の合併症としては、肝機能障害や腎機能障害、骨粗しょう症、貧血、シェーグレン症候群、各種感染症などがあります。
(参考文献)
(文献1)
公益財団法人 骨粗鬆財団「病気について」
https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/faq/faqabout.html(最終アクセス:2025年5月22日)
(文献2)
順天堂大学医学部附属順天堂医院「シェーグレン症候群」膠原病・リウマチ内科
https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/collagen/disease/disease03.html(最終アクセス:2025年5月22日)
(文献3)
一般社団法人日本リウマチ学会「リウマチ・膠原病を心配したら」一般社団法人日本リウマチ学会ホームページ
https://www.ryumachi-jp.com/general/collagen-diseases/(最終アクセス:2025年5月22日)
(文献4)
ファイザー株式会社「日常生活の注意点 関節リウマチと感染予防」リウマチeネット
https://www.riumachi.jp/life/caution/infectionprevention(最終アクセス:2025年5月22日)
(文献5)
公益財団法人日本リウマチ財団「心血管イベント」リウマチ情報センター
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/complications/shinkekkan_event/(最終アクセス:2025年5月22日)
(文献6)
東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター「肺炎,間質性肺炎」,2015年6月1日
https://twmu-rheum-ior.jp/diagnosis/ra/ra-complications/ip.html(最終アクセス:2025年5月22日)