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【医師監修】尿毒症とは|症状・原因・治療法をわかりやすく解説

尿毒症とは
公開日: 2025.06.30 更新日: 2026.07.31

「健康診断で腎機能の異常を指摘された」

「このままでは尿毒症になる可能性があると診断された」

尿毒症は、腎臓の働きが大きく低下し、体内の老廃物や余分な水分を十分に排出できなくなった状態です。

進行すると、だるさや食欲不振、吐き気、むくみ、かゆみ、息切れなど全身にさまざまな症状が現れ、放置すれば命に関わることもあります。

ただし、すべての方がすぐに透析を必要とするわけではありません。病状に応じた治療や生活習慣の改善によって、進行を抑えられる場合もあります。

本記事では、現役医師が尿毒症について詳しく解説します。

  • 尿毒症を発症した場合の余命
  • 尿毒症の症状
  • 尿毒症の原因
  • 尿毒症の治療法
  • 尿毒症の予防法

記事の最後には、よくある質問についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

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尿毒症とは

尿毒症とは、腎機能が著しく低下し、老廃物や余分な水分を尿として排出できず体内に蓄積し、全身に影響が及ぶ状態です。

だるさや食欲不振、吐き気、むくみ、かゆみといった症状から始まり、進行すると呼吸困難や意識障害、心不全、不整脈を招き、命に関わることもあります。

高齢者は、こうした症状を加齢や持病による変化と捉えがちで発見が遅れやすい上、体力や認知機能の低下、複数の疾患を併せ持つケースも多いため注意が必要です。

尿毒症で苦しさを感じるかどうかは症状の程度によって異なり、息苦しさや吐き気、強いだるさとして現れる方もいます。気になる変化があれば放置せず、早めに医療機関へ相談してください。

敗血症との違い

尿毒症と敗血症は、どちらも重症化すると命に関わることがありますが、原因や症状の現れ方、治療法は異なります。

尿毒症は腎機能の低下によって老廃物や余分な水分が体内に蓄積した状態です。一方、敗血症は感染症に対する身体の防御反応が過剰に働き、全身の臓器に障害が及んだ状態です。

尿毒症と敗血症の主な違いは、以下のとおりです。

比較項目 尿毒症 敗血症
主な原因 腎機能低下による老廃物や余分な水分の蓄積 感染症への過剰反応による全身の臓器障害
きっかけとなる疾患 慢性腎臓病や急性腎障害 肺炎、尿路感染症、腹腔内感染症など
主な症状 だるさ、食欲不振、吐き気、むくみ、かゆみ、尿量減少 発熱、悪寒、呼吸数の増加、血圧低下、意識の変化
症状の経過 腎機能の低下に伴う緩やかな進行、または急性腎障害による急激な悪化 数時間から短期間での急速な悪化
主な治療 原因疾患の治療、食事療法、薬物療法、透析、腎移植 抗菌薬、点滴、酸素投与、感染源への処置
緊急性 呼吸困難や意識障害、著しい尿量減少がある場合の早急な対応 敗血症が疑われる時点での迅速な救急対応

文献1)(文献2

尿毒症は、腎臓の排泄機能が低下することで起こります。

一方、敗血症は感染症をきっかけとした全身性の炎症反応が中心です。ただし、重い感染症から急性腎障害を起こし、敗血症と尿毒症が同時に生じる場合もあります。

強い息苦しさ、意識の変化、尿量の著しい減少、血圧低下などがみられる場合は、自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関を受診してください。

腎不全との違い

尿毒症と腎不全は混同されやすい言葉ですが、意味や重症度が異なります。

腎不全は腎臓の働きが低下した状態を指し、尿毒症は腎不全が進行し、老廃物や余分な水分の蓄積によって全身に症状が現れた状態です。

尿毒症と腎不全の主な違いは、以下のとおりです。

比較項目 腎不全 尿毒症
状態 腎臓の働きが低下した状態 腎不全の進行によって全身症状が現れた状態
主な原因 慢性腎臓病、急性腎障害、糖尿病、高血圧など 高度な腎機能低下による老廃物や余分な水分の蓄積
主な症状 初期は無症状、進行後のむくみ、尿量変化、疲れやすさ だるさ、食欲不振、吐き気、かゆみ、呼吸困難、意識障害
重症度 軽度から重度まで幅のある状態 腎不全が高度に進行した重い状態
主な治療 原因疾患の治療、食事療法、薬物療法、生活管理 腎不全の治療に加え、必要に応じた透析や腎移植
緊急性 病状や症状に応じた継続的な治療 重い症状がある場合の早急な治療

文献3)(文献4

腎不全になったすべての方が尿毒症を発症するわけではありません。早い段階では自覚症状が乏しく、血液検査や尿検査で初めて腎機能低下がわかる場合もあります。

一方、尿毒症は放置すると命に関わることがあるため、強い吐き気や息苦しさ、意識の変化、尿量の著しい減少がみられる場合は、医療機関を受診しましょう。

尿毒症を発症した場合の余命

尿毒症を発症した場合の余命は、原因が急性か慢性か、透析や腎移植を受けるか、年齢や合併症などによって異なるため、一律に示せません。

ただし、尿毒症は腎臓の働きが正常の10分の1程度まで低下した末期腎不全の状態であり、治療しなければ生命に関わる状態とされています。

また、厚生労働省の資料では、eGFRが10mL/分/1.73㎡未満の末期腎不全は、透析や腎移植が必要になると説明されています。(文献4

尿毒症や慢性透析患者の余命・生存率に関する主な参考値は、以下のとおりです。

対象・治療状況 寿命・生存に関する数字 数字をみる際の注意点
治療を受けていない尿毒症 一律に示せる余命なし 治療しなければ生命に関わる状態
透析を行わない保存的腎臓療法 生存期間中央値は、少なくとも6カ月。報告範囲は6.3〜23.4カ月 保存的腎臓療法を選択した末期腎不全患者の海外データ
2023年末の国内慢性透析患者 平均年齢は70.09歳。年間粗死亡率は11.0% 慢性透析患者全体の集団統計
透析導入後の生存率 1年で89.9%。5年で60.8%。10年で35.9% 異なる時期に透析を開始した患者群の過去データ
50歳の慢性維持透析患者の平均余命 男性は17.4年。女性は19.8年 2020年の生存・死亡状況に基づく平均余命
70歳の慢性維持透析患者の平均余命 男性は7.9年。女性は9.3年 2020年の生存・死亡状況に基づく平均余命

海外のシステマティックレビューによると、透析を行わず保存的に管理された末期腎不全患者の生存期間中央値は少なくとも6カ月、範囲は6.3〜23.4カ月と報告されています。ただし保存的腎臓療法を選択した患者群のデータであり、重い尿毒症症状があるすべての方に当てはまる数字ではありません。(文献5

日本透析医学会の2023年末データによると、国内の慢性透析患者の平均年齢は70.09歳、年間粗死亡率は11.0%と報告されています。これは尿毒症そのものの余命ではなく、年齢調整をしていない慢性透析患者全体の統計です。(文献6

同学会の過去データでは、透析導入後の生存率は1年89.9%、5年60.8%、10年35.9%と報告されています。年齢や原因疾患、合併症が異なる患者全体の集計であり、個人の余命を示すものではありません。(文献7

同学会の慢性維持透析患者データでは、2020年の生存・死亡状況に基づく平均余命として、50歳は男性17.4年・女性19.8年、70歳は男性7.9年・女性9.3年と示されています。これも尿毒症を発症した方の余命ではなく、慢性維持透析患者全体の参考値です。(文献8

表の数値は、多くの患者のデータから算出した平均的な目安であり、余命を示すものではありません。

実際の経過は、腎臓が悪くなった原因や年齢、心不全・感染症・糖尿病などの持病、治療への反応によって一人ひとり異なります。

透析を始めるタイミングも、検査数値だけでなく、尿毒症の症状や体内の水分・電解質のバランスなどをあわせて総合的に判断します。

強い息苦しさや意識がぼんやりする、吐き気が続く、尿の量が著しく減るといった症状がある場合は、速やかな受診が必要です。

尿毒症の診断基準

尿毒症の診断には、腎機能の指標となる血液検査の数値が重要です。とくに、以下の項目が基準として用いられます。

検査項目 検査でわかること 基準値・評価の目安
血清クレアチニン値(Cr) 筋肉の代謝によって生じる老廃物の血中濃度 男性:0.65~1.07mg/dL 女性:0.46~0.79mg/dL
血中尿素窒素(BUN) たんぱく質の分解によって生じる老廃物の血中濃度 8~20mg/dL
推定糸球体ろ過量(eGFR) 腎臓が血液をろ過する能力の目安 60mL/分/1.73㎡未満:慢性腎臓病が疑われる目安 15mL/分/1.73㎡未満:末期腎不全に相当する段階

検査所見と臨床症状を総合的に評価して診断されます。血清クレアチニン値と血中尿素窒素の値が上昇し、推定糸球体ろ過量(eGFR)が大きく低下しているときには、腎機能が著しく低下している状態です。

さらに、症状の評価には神経症状や消化器症状、呼吸器症状などの有無も考慮され、総合的な診断が行われます。

とくに、推定糸球体ろ過量(eGFR)は腎機能の評価において重要な指標のひとつです。

病期の診断と食事・運動療法の決定に用いられており、推定糸球体ろ過量(eGFR)が30mL/分/1.73m²未満(正常値の約30%未満)の場合は活動制限が厳しくなります。(文献9

尿毒症の症状

症状 詳細
初期症状 全身の倦怠感や疲れやすさ、食欲の低下、吐き気や嘔吐、頭痛、集中力の低下、皮膚のかゆみなどの出現
末期症状 意識の低下やけいれんなどの神経症状、不整脈や心不全などの心臓の異常、息切れや呼吸困難などの呼吸器症状、食事摂取困難や強い倦怠感を伴う全身状態の悪化

尿毒症の症状は、腎機能の低下に伴って全身に現れます。初期は疲労や体調不良と区別しにくい症状が中心です。

しかし、進行すると意識や呼吸、心臓の働きにも影響を及ぼすため注意が必要です。

初期症状

症状 詳細
全身の倦怠感 体内に蓄積した老廃物や腎性貧血などによる、休息しても改善しにくいだるさや疲れやすさ
食欲の低下 老廃物の蓄積による胃腸機能への影響や、食べ物の味・においの感じ方の変化に伴う食事量の減少
吐き気や嘔吐 体内に蓄積した老廃物が消化器に影響することで生じる、持続的な吐き気や嘔吐、胃の不快感
頭痛や集中力の低下 老廃物の蓄積や貧血、血圧の変動などに伴う頭痛、思考力や注意力の低下
皮膚のかゆみ 老廃物やリンなどの蓄積、皮膚の乾燥によって生じる、発疹を伴わない場合もある全身のかゆみ

尿毒症の初期症状は、疲労や胃腸の不調など、ほかの病気や加齢でもみられる症状が中心です。

複数の症状が続く場合は、腎機能低下の可能性も考慮した受診が必要です。

全身の倦怠感

尿毒症では、老廃物(尿毒素)の蓄積に加え、腎性貧血や電解質異常、代謝性アシドーシス、栄養状態の低下などが重なり、全身の倦怠感が現れます。

初期は「疲れやすい」「身体が重い」と感じる程度でも、病状が進行すると日常生活に支障をきたすほど強いだるさになることがあります。

腎臓で作られるホルモン(エリスロポエチン)の分泌が低下すると腎性貧血が起こりやすくなり、全身へ酸素を十分に運べなくなることも倦怠感の一因です。さらに、食欲不振や吐き気によって生じる栄養不足が体力や筋力の低下を招き、倦怠感を強めることがあります。

食欲の低下

尿毒症になると、腎臓で処理しきれなくなった老廃物が体内に蓄積することで、胃や腸の働きにも影響を与えます。

この影響によって食欲が落ちるのが、代表的な症状のひとつです。初期段階では「食事の味を感じにくい」「以前より食べる量が減った」という程度の変化にとどまりますが、症状が進むにつれて吐き気や嘔吐が加わり、食事そのものが難しくなっていきます。

十分な栄養を摂れない状態が続くと、体重が落ちたり筋力が衰えたりして、だるさなど全身の不調へと広がっていきます。

食欲不振や吐き気は単なる体調不良ではなく、尿毒症がどの程度進んでいるかを示すサインです。

吐き気や嘔吐

腎機能の低下によって老廃物(尿毒素)が体内に蓄積し、消化器や脳の嘔吐中枢へ影響を及ぼすことで、吐き気や嘔吐が現れます。

初期は軽い吐き気から始まることが多いものの、病状が進行すると食事や水分を十分に摂取できなくなり、栄養不足や体重減少、筋力低下、倦怠感を招いて全身状態の悪化につながることがあります。

また、慢性腎臓病が進行した患者で吐き気や嘔吐が続く場合は、尿毒症が進行している可能性があり、透析などの腎代替療法を検討する重要な症状のひとつです。

以下の記事では、吐き気を伴う頭痛について詳しく解説しています。

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頭痛や集中力の低下

腎機能の低下によって老廃物(尿毒素)が身体にたまり、脳や神経の働きへ影響を及ぼすことで、頭痛や集中力の低下が現れることがあります。

初期は「考えがまとまらない」「仕事や家事に集中できない」といった軽い症状から始まることが多く、腎性貧血や電解質異常、酸塩基平衡の乱れが加わることで症状が強くなる場合があります。

病状が進行すると判断力や注意力の低下、眠気、反応の遅れ、物忘れなどがみられ、重症化すると意識障害やけいれんを伴う尿毒症性脳症に進展することがあるため、頭痛や集中力の低下が続く場合は放置しないようにしましょう。

皮膚のかゆみ

老廃物(尿毒素)の蓄積に加え、皮膚の乾燥やカルシウム・リンなどのミネラルバランスの乱れ、神経や免疫機能の変化が重なり、皮膚のかゆみ(尿毒症性そう痒)が現れることがあります。

かゆみは全身に生じることが多く、とくに背中や腕、腹部で強く感じられやすいのが特徴です。皮膚に目立った発疹がなくても、強いかゆみを伴う場合があります。

症状が続くと、睡眠不足や掻き傷、感染症につながり、生活の質(QOL)の低下を招くことも少なくありません。かゆみが長期間続く場合や、日常生活や睡眠に支障をきたしている場合は、自己判断で我慢せず、早めに医師へ相談してください。

末期症状

末期症状 詳細
意識や神経の異常 強い眠気、反応の遅れ、意識の混濁、錯乱、けいれん、昏睡などの神経症状
心臓や呼吸器の異常 高カリウム血症などに伴う不整脈、体内の水分蓄積による心不全、肺水腫、息切れ、呼吸困難
全身症状の悪化 強い倦怠感、食欲不振、繰り返す吐き気や嘔吐、著しいむくみ、尿量減少、栄養状態や体力の低下

尿毒症が末期まで進行すると、老廃物や余分な水分、電解質の異常が全身へ影響を及ぼし、重い症状が現れることがあります。

初期症状とは異なり、意識障害やけいれんなどの神経症状、不整脈や心不全、呼吸困難などの心臓・呼吸器症状がみられ、全身状態も大きく悪化します。

これらは命に関わる可能性があるため、強い息苦しさや意識の変化、けいれんなどの症状が現れた場合は、自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関を受診しましょう。

意識や神経の異常

腎機能の著しい低下によって老廃物(尿毒素)が体内に蓄積し、脳や神経の働きに影響が及ぶことで、意識や神経の異常が現れます。

初期は集中力の低下や眠気など軽い症状が中心ですが、病状が進行すると錯乱やけいれん、昏睡など重い神経症状に進展することがあります。

意識や神経の異常が現れる主な理由は、以下のとおりです。

項目 詳細
尿毒素が脳へ影響を及ぼすため 尿毒素の蓄積による中枢神経機能の低下
電解質や酸塩基平衡が乱れるため ナトリウム・カリウム異常や代謝性アシドーシスによる神経機能の障害
初期は軽い症状から始まるため 集中力低下、物忘れ、眠気、反応の遅れから始まる症状の進行
進行すると命に関わることがあるため 錯乱、けいれん、昏睡、呼吸障害へ進展する可能性

文献10)(文献11

尿毒症による意識や神経の異常は「尿毒症性脳症」と呼ばれ、透析導入を検討する重要な所見のひとつです。

初期は疲労や加齢による変化と区別しにくいことがありますが、症状が進行すると日常生活に支障をきたし、命に関わる状態に移行することがあります。

心臓や呼吸器の異常

尿毒症による腎機能の著しい低下で余分な水分や塩分、老廃物を十分に排出できず、心臓や呼吸器に大きな負担がかかることがあります。

体内に水分がたまると肺水腫による息切れや呼吸困難、高血圧や体液過剰による心不全の発症・悪化、さらに重症例では尿毒症性心膜炎から心タンポナーデへの進行が起こることがあり、これらの症状は透析導入を検討する上で重要な判断材料です。

全身症状の悪化

尿毒症が重症化すると、腎臓が老廃物や余分な水分、電解質を十分に排出できなくなります。全身の臓器や代謝機能への影響から強い倦怠感や体重減少、食欲不振などが現れ、命に関わる状態に至ることがあります。

全身症状の悪化を示す主なサインは、以下のとおりです。

悪化のサイン 詳細
老廃物が全身に蓄積するため 強い倦怠感、食欲不振、吐き気など複数症状の出現
栄養状態が悪化しやすくなるため 体重減少、筋力低下、体力や免疫力の低下
出血しやすくなることがあるため 鼻血、歯ぐきからの出血、あざができやすい状態
放置すると多臓器へ影響が及ぶため 意識障害、心不全、呼吸困難など重篤な合併症の発症

老廃物が身体にたまり、栄養状態も悪化していくと、腎臓だけでなく全身のさまざまな臓器に影響が及んでいきます。

こうした症状は腎機能がかなり低下していることを示すサインであり、透析をはじめとする腎代替療法に進むかどうかを判断する上で欠かせない材料です。

強いだるさや急激な体重の落ち込み、吐き気が繰り返し起こる、出血しやすくなるといった状態が続くときは、自分で判断して様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診してください。

尿毒症の原因

原因 詳細
慢性腎臓病の進行(糖尿病・高血圧など) 糖尿病や高血圧などによる慢性的な腎機能低下と老廃物の蓄積
急性腎障害 脱水、重症感染症、血流低下などによる急激な腎機能低下
薬剤などによる腎機能障害 一部の薬剤や造影剤などによる腎臓への障害と腎機能低下

腎臓の働きが著しく低下し、老廃物や余分な水分を十分に排出できなくなると、尿毒症が起こります。もっとも多い原因は、糖尿病や高血圧などを背景に慢性腎臓病がじわじわと進行するケースです。

ほかにも、脱水や重い感染症による急性腎障害、特定の薬剤や造影剤の影響で腎機能が落ちることが引き金になる場合もあります。

腎機能低下を指摘された場合は、早い段階で原因疾患を特定し、適切な治療につなげることが大切です。

慢性腎臓病の進行(糖尿病・高血圧など)

尿毒症の主な原因は、慢性腎臓病(CKD)の進行による腎機能の著しい低下です。糖尿病や高血圧、慢性糸球体腎炎などによる腎臓への負担が長く続くと、老廃物や余分な水分を排出する働きが徐々に失われ、尿毒症を発症する場合があります。

慢性腎臓病を進行させる主な原因と腎臓への影響は、以下のとおりです。

主な原因・状態 腎臓への影響
糖尿病 高血糖による糸球体の細い血管の損傷と、ろ過機能の低下
高血圧 腎臓の血管にかかる負担や動脈硬化による血流の悪化
慢性糸球体腎炎 血液をろ過する糸球体の炎症による腎機能の低下
自覚症状が乏しい初期段階 健診での蛋白尿やクレアチニン値、eGFRの異常による発見
末期まで進行した状態 老廃物や余分な水分の蓄積による尿毒症症状の出現

文献12

慢性腎臓病は、自覚症状がほとんどないまま進行することがあります。だるさや食欲不振、吐き気、むくみが現れた段階では、すでに腎機能が大きく低下していることもあります。

糖尿病や高血圧がある方は、血糖値や血圧の管理に加え、血液検査や尿検査の継続が欠かせません。腎機能が著しく低下した場合は、透析や腎移植などの腎代替療法が検討されます。

急性腎障害

急性腎障害(AKI)は、数時間から数日、長くても数週間ほどの間に腎機能が急激に低下する状態です。

腎臓への血流低下、腎臓そのものの障害、尿路の閉塞などによって起こり、重症化すると尿毒症や高カリウム血症、肺水腫を招く場合があります。

急性腎障害が起こる主な理由は、以下のとおりです。

理由 詳細
腎臓への血流低下 激しい下痢や嘔吐による脱水、大量出血、心不全などに伴う腎血流量の減少
腎臓そのものの障害 重い感染症、自己免疫疾患、薬剤や造影剤などによる腎組織の損傷
尿の通り道の閉塞 尿路結石、前立腺肥大症、腫瘍などによる尿の流れの停滞
重症化による合併症 尿毒症、高カリウム血症、肺水腫などを伴う全身状態の悪化

文献13

急性腎障害は、原因を早期に見極め、脱水の改善や感染症の治療、原因薬剤の中止、尿路閉塞の解除などを行うことで、腎機能が回復する場合もあります。

一方、尿量の著しい減少やむくみ、息苦しさ、意識の変化がみられる場合は重症化のサインであり、血液透析などの腎代替療法が必要になることもあります。

薬剤などによる腎機能障害

薬剤の中には、腎臓に流れる血液の量を減らしたり、腎臓の細胞そのものにダメージを与えたりして、腎機能を低下させるものがあります。

こうした状態が重症化すると、老廃物や余分な水分を体外へ排出できなくなり、尿毒症へと進んでいきます。

薬剤などによる腎機能障害の主な原因と注意点は、以下のとおりです。

項目 詳細
腎臓へ負担をかける薬剤 NSAIDsなどの鎮痛薬、一部の抗菌薬、造影剤、抗がん剤などによる腎血流の低下や腎組織の障害
発症しやすい方 高齢者、慢性腎臓病・糖尿病・心不全がある方、脱水状態の方、複数の薬剤を併用している方
早期対応による改善 原因薬剤の見直しや中止によって期待される腎機能の改善
重症化した場合 腎機能の回復遅延や、一時的または継続的な透析が必要となる可能性
市販薬を使用する際の注意 鎮痛薬などの長期使用や過量服用による腎臓への負担
必要な対応 自己判断による中止を避け、医師や薬剤師への相談と定期的な腎機能検査

文献14)(文献15

薬剤による腎機能障害は、早期に原因へ対応することで改善が見込めます。ただし、処方薬を自己判断で中止すると、治療中の疾患が悪化しかねません。

使用中の薬は、市販薬やサプリメントも含めて医師へ伝えておきましょう。尿量の減少やむくみや強いだるさ、吐き気などが現れたときは、早めに医療機関へ相談してください。

尿毒症の治療法

治療法 詳細
生活習慣の改善 減塩や適切なたんぱく質・水分管理、禁煙、適度な運動などによる腎臓への負担軽減
薬物療法 原因疾患や合併症の管理、電解質異常や貧血などの改善を目的とした薬物治療
血液透析・腹膜透析 老廃物や余分な水分を体外へ除去する腎代替療法
腎移植(状態によっては検討される選択肢) 提供された腎臓の移植による腎機能の代替
再生医療(症状や状態によって適応が検討される場合がある) 症状や病状に応じた適応の検討

尿毒症の治療は、腎機能の低下や全身症状の程度に応じて、生活習慣の改善や薬物療法、血液透析・腹膜透析、腎移植などを組み合わせて行います。

再生医療も選択肢として検討される場合がありますが、すべての患者に適応するわけではなく、医師による診察と診断が必要です。また、再生医療を取り扱う医療機関は限られているため、希望する場合は適応の有無を含めて医師へ相談しましょう。

生活習慣の改善

尿毒症の進行を抑えるには、日常生活の中で腎臓にかかる負担を減らす工夫が欠かせません。

具体的には、以下のような生活習慣の見直しが推奨されます。ただし、必要な制限は腎機能や合併症によって異なるため、医師や管理栄養士の指導に沿って取り組みましょう。

生活習慣の改善 詳細
適切な水分摂取 脱水の予防と腎血流の維持を目的とした水分管理。心不全やむくみがある場合は医師の指示に沿った摂取量の調整
有酸素運動の継続 ウォーキングなど無理のない運動による血圧・血糖管理と適正体重の維持
禁煙・節酒 喫煙や過度な飲酒による血管・腎臓への負担の軽減
体重管理 肥満による高血圧や糖尿病、腎臓への負担を抑えるための適正体重の維持
たんぱく質の管理 老廃物の増加を抑えるための、腎機能や栄養状態に応じた摂取量の調整
塩分の制限 血圧上昇やむくみを防ぐための、原則1日6g未満を目安とした減塩
カリウムの管理 高カリウム血症や不整脈を防ぐための、野菜・果物・納豆などの摂取量の調整
リンの管理 高リン血症や骨・血管への影響を抑えるための、乳製品・加工食品・納豆などの摂取量の調整

水分やたんぱく質、カリウム、リンを自己判断で過度に制限すると、脱水や栄養不足を招く恐れがあります。

検査値や尿量、むくみの有無を確認しながら、自分の状態に合った内容を医師や管理栄養士と相談しましょう。

以下の記事では、生活習慣改善について詳しく解説しています。

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薬物療法

尿毒症の治療において、薬物療法は症状の緩和や合併症の予防に役立ちます。

腎機能の低下にともなって多様な身体機能に障害が現れるため、それぞれの症状に対応した薬剤の使用が必要です。主に、以下のような薬が用いられます。

薬の種類 目的
カリウム排泄促進剤(ポリスチレンスルホン酸カルシウムなど) 高カリウム血症の改善
リン吸着薬(セベラマーなど) 高リン血症の改善
エリスロポエチン製剤 腎性貧血の改善
鉄剤 鉄欠乏を伴う貧血の改善
炭酸水素ナトリウム 代謝性アシドーシスの改善
利尿薬 浮腫の改善、余分な水分の排出
降圧薬 血圧の管理、腎臓への負担の軽減

薬剤は症状の進行を抑えるほか、透析導入までの期間を延ばす目的でも使用されます。

ただし、腎機能に応じた適正な用量調整が必要であり、医師の管理のもとでの投与が不可欠です。

血液透析・腹膜透析

血液透析・腹膜透析は、腎機能が著しく低下し、老廃物や余分な水分、電解質を十分に排出できなくなった際に、腎臓の働きを補うために行う腎代替療法です。

透析では、体内にたまった尿毒素や余分な水分を取り除きます。倦怠感や食欲不振、吐き気などの尿毒症症状の改善が期待できるほか、余分な水分やカリウムを調整し、むくみや高血圧、肺水腫、不整脈など重い合併症の予防にもつながります。

また、尿毒症性脳症や尿毒症性心膜炎など命に関わる合併症がみられる場合は、速やかに透析を開始することが重要です。

血液透析と腹膜透析はそれぞれ特徴が異なるため、病状や生活スタイル、全身状態を踏まえ、医師と相談しながら治療法を選択します。

腎移植(状態によっては検討される選択肢)

腎移植は、機能が低下した腎臓の代わりに健康な腎臓を移植し、腎機能の回復を目指す腎代替療法のひとつです。

移植した腎臓が正常に機能すれば、老廃物や余分な水分を十分に排出できるようになり、尿毒症の症状や腎性貧血の改善が期待できるほか、透析が不要になることで食事や水分の制限も緩和され、日常生活の自由度が高まります。

ただし、腎移植はすべての患者が受けられる治療ではなく、年齢や全身状態、合併症、ドナーの有無などを総合的に評価した上で適応が判断されます。移植後も、拒絶反応を防ぐための免疫抑制薬の服用や継続的な通院・検査が必要です。

再生医療(症状や状態によって適応が検討される場合がある)

再生医療は尿毒症に対する標準治療ではありません。しかし、慢性腎臓病(CKD)による腎機能低下に対し、自己脂肪由来幹細胞を用いる治療が一部の医療機関で検討されています。

ただし、効果が確立された治療ではなく、透析や腎移植に代わるものでもありません。再生医療の位置づけと主な注意点は、以下のとおりです。

確認項目 詳細
対象となる可能性 慢性腎臓病などによる腎機能低下に対し、病状や全身状態を踏まえた適応の検討
主な治療内容 患者本人の脂肪から採取・培養した幹細胞を用いる治療
尿毒症治療での位置づけ 透析や腎移植に代わる治療として確立されていない補助的な選択肢
適応の判断 問診、診察、血液検査、合併症などに基づく医師の総合的な診断
対象とならない場合 病状や合併症、全身状態などにより治療を受けられない可能性
医療機関の選択 再生医療等提供計画を届け出た一部の医療機関での取り扱い
治療前の確認 期待できる内容や限界、起こり得る不利益について説明を受けた上での検討

文献11)(文献16

慢性腎臓病に対する幹細胞治療は、研究や臨床応用が進められている段階です。すべての患者に適応するわけではなく、医師の診察と診断が欠かせません。また、取り扱う医療機関も限られています。

再生医療を希望する場合でも、現在の治療を自己判断で中断せず、医師に相談しながら慎重に検討する必要があります。

以下の記事では、リペアセルクリニックの再生医療について詳しく解説しています。

尿毒症の予防法

予防法 詳細
尿やむくみの変化を確認する 尿量や尿の性状、足や顔のむくみ、急激な体重増加などの変化の確認
全身の体調変化を見逃さない 倦怠感、食欲不振、吐き気、かゆみ、息切れ、貧血症状など全身状態の変化の確認
定期的に腎機能を確認する 血液検査や尿検査によるクレアチニン、eGFR、たんぱく尿などの継続的な評価

尿毒症を予防するには、腎機能の低下を早期に発見し、適切な治療の継続が欠かせません。

尿量やむくみの変化、だるさや食欲不振、吐き気などの体調変化は、腎機能が悪化しているサインです。

また、自覚症状がないまま病状が進行することも少なくないため、血液検査や尿検査でクレアチニンやeGFR、たんぱく尿などを定期的に確認することが大切です。

尿やむくみの変化を確認する

尿毒症は初期には自覚症状が少ない一方で、尿やむくみの変化が早期発見の手がかりとなることがあります。

腎機能が低下すると、尿量や排尿回数の変化、尿の泡立ち、足や足首、まぶたのむくみなどが現れることがあります。

また、短期間で体重が増加した場合は体内に余分な水分がたまっている可能性があるため、毎日ほぼ同じ条件で体重を測定し、尿の状態やむくみを確認する習慣が欠かせません。

これらの症状は慢性腎臓病や急性腎障害でもみられるため、変化が続く場合や悪化する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

全身の体調変化を見逃さない

尿毒症は、初期には加齢や疲労と区別しにくい全身症状から始まることがあります。だるさや皮膚のかゆみ、貧血による息切れなどの変化を見逃さず早めに受診することが、病状の進行予防につながります。

全身の体調変化で確認したいポイントは、以下のとおりです。

ポイント 詳細
だるさや疲れやすさ 尿毒素の蓄積や腎性貧血などによる、改善しにくい倦怠感
皮膚のかゆみ 尿毒素の蓄積や皮膚の乾燥などによる持続するかゆみ
貧血の症状 顔色不良、息切れ、動悸、立ちくらみなど腎性貧血を疑う症状
症状が続く場合 血液検査や尿検査による腎機能の確認と早期受診

文献17)(文献18

だるさやかゆみ、息切れなどは日常的によくみられる症状ですが、慢性腎臓病や尿毒症の初期サインです。

複数の症状が続く場合や以前より悪化している場合は、自己判断で加齢や疲労と決めつけず、医療機関を受診しましょう。

定期的に腎機能を確認する

尿毒症は、腎機能が大きく低下するまで自覚症状が現れにくいため、定期的な血液検査や尿検査が早期発見と予防に欠かせません。

血液検査では血清クレアチニン値やeGFRを、尿検査では蛋白尿やアルブミン尿を確認し、腎機能の低下や腎障害を早い段階で把握します。また、慢性腎臓病では腎機能や蛋白尿の程度に応じて検査間隔が異なるため、医師の指示に従って継続的に受診することが重要です。

とくに糖尿病や高血圧がある方は尿毒症のリスクが高いため、自覚症状がなくても定期的に腎機能を確認し、必要に応じて治療や生活習慣を見直しましょう。

改善しない尿毒症は当院へお気軽にご相談ください

尿毒症は、腎機能が著しく低下して全身に深刻な影響を及ぼす疾患です。

原因となる慢性腎臓病や糖尿病、高血圧の適切な管理、そして日常生活における食事や運動、水分摂取の見直しが尿毒症の予防に役立つ可能性があります。

倦怠感・むくみ・排尿の変化など、初期のサインを見逃さず、早期に医療機関を受診しましょう。

尿毒症の症状にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。慢性腎臓病による腎機能低下に対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。自己脂肪由来幹細胞には、ほかの細胞へ変化する「分化能」があります。ただし、尿毒症の標準治療ではなく、透析や腎移植に代わる治療として確立されたものでもありません。

適応は病状や合併症、全身状態を踏まえて医師が判断します。再生医療について詳しく知りたい方は、現在の治療を中断せず、当院へお気軽にお問い合わせください。

ご質問やご相談は、「LINE」や「メール」、「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。

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尿毒症に関するよくある質問

尿毒症と糖尿病に関連性はありますか?

糖尿病は、尿毒症を引き起こす一般的な原因のひとつです。

長期間にわたって血糖コントロールが不十分な状態が続くと、腎臓の血管が損傷を受けて「糖尿病性腎症」を発症します。

疾患が進行すると腎機能が著しく低下し、最終的に尿毒症に至るケースがあるため注意が必要です。

犬や猫が尿毒症になる原因は何ですか?

一般的な獣医学的知見に基づくと、犬や猫も人間と同様に腎機能が低下すると尿毒症を発症する場合があります。

犬の場合は、慢性腎不全や中毒性物質の摂取が原因となるケースがあり、症状としては食欲不振や元気消失、嘔吐、口臭などが見られます。

一方、猫の尿毒症は慢性腎臓病の進行によって起こることが多く、脱水や体重減少、貧血、けいれんなどが現れるため、食事療法や輸液、薬物療法を行いながら、症状や検査値の変化を早期に捉えて重症化を防ぐことが重要です。

参考文献

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招請講演4.慢性腎不全の病態と治療富野康日己|第107回日本内科学会講演会

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わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在)701

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~薬剤性腎障害~(drugーinduced renal injury)|臨床と検査 – 病態へのアプローチー(VOL.61)

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慢性腎臓病|MSD マニュアル プロフェッショナル版

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The relationship between fatigue, pruritus, and thirst distress with quality of life among patients receiving hemodialysis: a mediator model to test concept of treatment adherence|NIH National Library of Medicine National Center for Biotechnology Information