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耳鳴りは脳梗塞の前兆?耳鳴りを伴う脳や耳の病気も解説

「耳鳴りは脳梗塞の前兆として現れる?」
「耳鳴り以外に注意すべき症状は?」
耳鳴りは脳梗塞の前兆として現れることがあります。耳鳴りがよく起きる方は、その他の注意すべき前兆や症状を知っておくことが大切です。
本記事では、耳鳴りが脳梗塞の前兆であるかどうかをはじめとして、以下を解説します。
- 症状を感じにくい隠れ脳梗塞とは?
- 耳鳴り以外で注意すべき前兆
- 後遺症として現れる耳鳴り
- 脳梗塞の検査方法
- 脳梗塞以外で耳鳴りが現れる脳や耳の病気
注意すべき脳梗塞の前兆や症状をチェックリストにして紹介しています。耳鳴り以外にも気になる症状が現れている方は参考にしてください。
目次
耳鳴りは脳梗塞の前兆?
耳鳴りは脳梗塞の前兆として現れることがあります。(文献1)耳鳴りが現れるのは小脳梗塞を起こしているときです。小脳梗塞を起こすと耳鳴りの他に以下のような症状が現れることがあります。
- めまいがする
- 難聴が起きる
- バランス感覚が低下する
- 規則的な運動ができない
- 呂律が回らない
小脳梗塞の特徴的な症状はめまいや四肢の運動が正常にできなくなるなどです。
症状を感じにくい隠れ脳梗塞とは?
脳梗塞には、症状を感じづらい隠れ脳梗塞があります。正式な病名は、無症候性脳梗塞(むしょうこうせいのうこうそく)です。
無症候性脳梗塞とは、脳の細かい血管が詰まることで起こる脳梗塞です。ほとんど症状を感じられず外から見ても病気と判断できない特徴があります。耳鳴りを訴えていた患者さまを検査したところ無症候性脳梗塞だった症例もあります。(文献3)
症状が感じられないからといって安心はできません。無症候性脳梗塞は、命の危険を伴う本格的な脳梗塞や脳出血に移行するリスクがあるためです。(文献2)無症候性脳梗塞を起こさないためには、高血圧や脂質異常症などにより起こる動脈硬化を予防しなければなりません。
また、加齢も無症候性脳梗塞を引き起こす原因です。定期的に脳ドックなどを受けて早期発見するのが大切です。
耳鳴り以外で注意すべき脳梗塞の前兆【チェックリスト】
以下のような前兆や症状が現れている場合は脳梗塞が起きている可能性があります。
前兆や症状 | |
---|---|
脳梗塞の疑いがある前兆 |
|
緊急性の高い症状 |
|
脳梗塞の疑いがある前兆は、短時間で消えてしまうためそのまま放置されることが多いです。しかし、前兆が起きたあとは大きな梗塞に移行する場合が多いため放置してはいけません。緊急性の高い症状が1つでも現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
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脳梗塞の後遺症として現れる耳鳴り
耳鳴りは脳梗塞の後遺症として発生する場合があります。(文献5)脳梗塞の後遺症としての耳鳴りの程度は人それぞれで、ほとんど気にならない人もいれば、生活や睡眠の妨げになると訴える人もいます。
耳鳴りのほかにも、めまいや頭痛、しびれなども後遺症として現れることが多いです。耳鳴りの治療には、脳の血管を拡張する脳循環改善薬のほか、ビタミン剤、抗不安薬などが用いられます。
脳梗塞の後遺症の改善や再発予防の選択肢として期待されているのが再生医療です。脳梗塞の再生医療に関して詳細を知りたい方は、こちらを参考にしてください。

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脳梗塞の検査方法
脳梗塞の主な検査方法は以下の通りです。
検査方法 | 詳細 |
---|---|
頭部CT検査 | X線を用いて脳梗塞が起きていないかを調べる検査。 |
頭部MRI検査 | 磁場を用いてCT検査よりも詳細に調べられる検査。発症直後の病巣を発見できることがある。 |
頭部MRA検査 | MRIは脳の組織や形を描写するのに対して、MRAは脳血管を画像化する検査。 |
血管超音波検査 | 超音波を用いて脳の血管が詰まっていないか、狭くなっていないかを迅速に調べられる検査。 |
脳梗塞以外で耳鳴りが現れる脳や耳の病気
耳鳴りが現れることがある主な脳や耳の病気は以下の通りです。
- 脳出血
- 片頭痛
- 突発性難聴
- メニエール病
- 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)
それぞれの詳細を解説します。
脳出血
脳出血でも耳鳴りが起きることがあります。脳出血とは、脳の血管が破れて脳内で出血が起きることです。脳出血も脳梗塞と同様に発症した際は以下のような症状が現れます。
- 突然の意識障害
- 顔や手足の麻痺
- 言語障害
脳出血は高血圧の患者さまが発症しやすいです。脳出血が疑われる際も、速やかに医療機関を受診して適切な治療を行う必要があります。
片頭痛
片頭痛と耳鳴りは併存する場合があります。片頭痛とは、頭痛により日常生活に支障をきたす病気です。耳鳴りのほかにも吐き気や嘔吐などの症状が現れます。
片頭痛は前兆がないものとあるものに大別されます。前兆がない片頭痛の診断基準は以下の通りです。
前兆がない片頭痛の診断基準 | |
---|---|
A | B~Dを満たす発作が5回以上ある |
B | 頭痛発作の持続時間が4~72時間である ※治療をしていないまた治療の効果が出ていない場合 |
C | 以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす 1.頭痛は片側である 2.「ズキズキ」と脈を打つような頭痛である 3.中等度から重度の頭痛である 4.歩行や階段昇降などの日常動作により頭痛が悪化する。もしくは頭痛が原因で日常動作を避けている |
D | 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす 1.吐き気や嘔吐がある 2.光や音に対して過敏である |
E | ほかに頭痛の診断を受けていない |
(文献6)
突発性難聴
突発性難聴とは、突然片耳が聞こえなくなる原因不明の難聴です。難聴を発症した際に耳鳴りやめまい、吐き気などを伴うことがあります。
前触れもなく突然に発症したり、朝に目が覚めた際に聞こえなくなっていたりします。突発性難聴は改善と悪化を繰り返す病気です。幅広い年代で発症しますが、50〜60歳代の方がとくに多い傾向です。
発症から1カ月ほどで難聴が固定されてしまう恐れがあります。発症して1〜2週間以内には治療を始めることが重要です。(文献7)
メニエール病
メニエール病は、内耳がむくんでしまうことで起きる病気です。片側の耳に、耳鳴りやめまい、難聴、耳閉感といった症状が現れます。病気が進行すると、両側の耳に症状が現れることがあります。
メニエール病は、30〜50歳代の女性に多い傾向です。睡眠不足やストレス、過労、悪天候などが引き金になり症状が現れることが多いです。耳鳴りを伴うことがある小脳梗塞と症状が似ているため、意識障害や麻痺などが現れている場合は、メニエール病ではなく脳梗塞を疑う必要があります。(文献8)
聴神経腫瘍
聴神経腫瘍とは、耳の奥にできる良性の腫瘍です。初期症状として多いのが耳鳴りや聴力低下です。突然音が聞こえなくなることがあるため、突発性難聴から発見されることもあります。
進行すると以下のような症状が現れます。
- 顔面の麻痺
- 顔面のしびれ
- めまい
- 歩行障害
- 飲み込みづらさ
腫瘍は基本的にゆっくりと大きくなりますが、中には増大が早いものもあります。腫瘍が大きくなると命に危険を及ぼすこともあるため早期治療が重要です。
まとめ|耳鳴りとその他の症状も現れている場合は受診しよう
耳鳴りは脳梗塞だけでなくなんらかの病気が隠れている恐れがあります。とくに手足や顔面の麻痺、言語障害、歩行障害、激しい頭痛などが現れている場合速やかに救急車を呼んでください。
耳鳴り以外にも、頭痛や手足のしびれ、ふらつきなどが現れている、または現れた経験がある場合は脳梗塞の前兆の恐れがあります。本格的な脳梗塞に移行する前に一度受診をしましょう。
また、脳梗塞の後遺症の改善や再発予防の選択肢として再生医療があります。脳梗塞の再生医療は当院「リペアセルクリニック」でも行っています。脳梗塞の再発や後遺症にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
(文献1)
自治医科大学附属さいたま医療センター「どんな人が検査を受けるのでしょうか?」
https://www.jichi.ac.jp/braindock/sub2.htm(最終アクセス:2025年6月21日)
(文献2)
山口 修平.「無症候性脳梗塞の予後と対策」『脳卒中』26(4)pp.661- 664, 2004年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/26/4/26_4_661/_pdf(最終アクセス:2025年6月21日)
(文献3)
西野裕仁ほか.「難聴・耳鳴・眩量患者の内耳道MRI所見の分析」『耳鼻臨床』92(11),pp.1191-1194, 1999年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/92/11/92_11_1191/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月21日)
(文献4)
国立循環器病研究センター「脳卒中」
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/(最終アクセス:2025年6月21日)
(文献5)
加我君孝ほか.「脳梗塞後遺症に伴うめまいに対する塩酸インデロキサ ジン(エレンR)の有効性」『耳鼻咽喉科展望』40(1),pp.132-136, 1997年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo1958/40/1/40_1_132/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月21日)
(文献6)
日本頭痛学会「一次性頭痛」
https://www.jhsnet.net/kokusai_2019/1-1.pdf(最終アクセス:2025年6月21日)
(文献7)
兵庫医科大学病院「突発性難聴」
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/105(最終アクセス:2025年6月21日)
(文献8)
順天堂医院「メニエール病」
https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/jibi/disease/target_ear/target_ear02.html(最終アクセス:2025年6月21日)