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肩甲骨が動かない原因を医師が解説|放置によるリスクやストレッチ方法も紹介

デスクワークやスマートフォンの使用が増え、「肩甲骨が動かない」「硬い」と感じる人が増えています。肩甲骨は上下、内側・外側への回旋、前傾・後傾など多方向に滑らかに動くのが本来の姿です。しかし、肩甲挙筋、大菱形筋、小菱形筋、僧帽筋などが硬くなると「可動域制限」が生じます。
初期は痛みを感じにくく、肩こりや首こり、猫背、呼吸の浅さなどの不調を見過ごしがちです。本記事では、肩甲骨が動かない原因やセルフチェック、改善方法、受診の目安までをわかりやすく解説しますので、参考にしてください。
目次
肩甲骨が動かない原因
肩甲骨の動きが制限されると、肩こりや首の痛みだけでなく、姿勢全体の乱れにもつながります。ここからは、肩甲骨が動かなくなる主な原因を詳しく解説します。日常生活の中で気をつけるポイントを知り、予防や改善へつなげていきましょう。
姿勢が悪い
猫背や巻き肩といった悪い姿勢は、肩甲骨の動きを妨げる大きな要因です。長時間のデスクワークやスマートフォンの操作によって、頭や肩が前に出た姿勢が習慣化すると、胸の筋肉は短縮し、背中の筋肉は引き伸ばされて弱くなります。
その結果、肩甲骨が外側に開いたまま固定され、動かしづらくなります。姿勢のクセは肩や首の負担を増やし、肩こりや頭痛などの症状を引き起こしがちです。慢性的な痛みを防ぐには、正しい姿勢を心がけ、こまめに肩甲骨を動かすストレッチを取り入れることが大切です。
筋肉が硬い・バランスが悪い
肩甲骨の動きは周囲の多くの筋肉によって支えられています。僧帽筋、肩甲挙筋、大菱形筋、前鋸筋などが硬くなったり、筋力が低下したりすると、肩甲骨の動きが制限されます。過度の緊張状態やアンバランスな使い方が続くと、特定の筋肉だけに負担がかかり、柔軟性や協調性が失われます。
日常生活で肩甲骨を大きく動かす機会が減っていることも、筋肉の問題を悪化させる原因です。改善にはストレッチや適度な運動で筋肉の柔軟性を保ち、バランスよく使う習慣が重要です。
ストレス・呼吸が浅い
ストレスを感じると、無意識に肩に力が入り、呼吸が浅くなりがちです。浅い呼吸が続くと肩や胸まわりの筋肉が常に緊張した状態になり、肩甲骨の動きが制限されます。呼吸に関わる胸郭の動きが硬くなると、肩甲骨の滑らかな可動性にも悪影響を及ぼします。
深くゆったりとした呼吸を意識することは、心身のリラックスだけでなく、肩甲骨周囲の筋肉を柔らかく保つためにも大切です。リラックス法を取り入れ、呼吸を整える習慣を心がけましょう。
肩甲骨が動かない状態を放置するリスク
肩甲骨の動きが悪い状態を放置すると、首や肩の筋肉に過度な負担がかかり、「常にこっている」「だるい」「重い」といった慢性的な不快感を引き起こします。マッサージなど一時的な対処では改善しにくくなる場合もあります。猫背や巻き肩、スマホ首、ストレートネックなど姿勢の崩れを招き、見た目の印象が悪化するだけでなく、呼吸や内臓への負担も大きいです。
肋骨や胸郭の動きが制限されることで呼吸が浅くなり、酸素の取り込み不足による疲れやすさや睡眠の質の低下にもつながります。肩甲骨の痛みや動かしづらさを感じたら、当院へお気軽にご相談ください。
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肩甲骨が動かない場合の自宅でできるストレッチ
肩甲骨が硬いと感じるときは、肩甲骨周囲の筋肉をほぐし、動きを良くするストレッチを自宅でも行いましょう。無理のない範囲で続けると、可動域の改善や肩こりの予防が期待できます。
肩甲下筋のマッサージ
肩甲下筋(肩甲骨の前面に付着している大きな筋肉)が硬くなると肩甲骨の動きが制限され、肩こりや可動域の低下を招きます。自宅でできるセルフマッサージを試してみましょう。
- 片手を反対の脇の下に深く入れる
- 肩の前側(脇のすぐ奥)に指を押し当てる
- 痛気持ち良いポイントを探し、円を描くようにゆっくり押し回す
- 30秒ほど続ける
- 呼吸を止めず、リラックスした状態で行う
(文献1)
筋肉をほぐすことで肩甲骨周囲の緊張が和らぎ、徐々にスムーズな動きができるようになります。普段のケアに取り入れて、肩こりや動きの悪さを予防します。
広背筋のストレッチマッサージ
広背筋(胸郭下部後方の大部分を占める広くて平らな筋肉)が硬いと肩甲骨の動きが悪くなり、猫背や肩こりを助長します。以下の方法で自宅でも簡単にケアしましょう。
- 仰向けになり、テニスボールを肩甲骨の下あたりに置く
- ゆっくり体を前後に動かしながら広背筋をほぐす
- 1分ほど繰り返す
- 痛みが強い場合は無理をせず調整する
(文献1)
筋肉の緊張を和らげると、肩甲骨の可動域が改善され、姿勢も整いやすくなります。毎日のセルフケアにおすすめです。
大胸筋のストレッチ
大胸筋(胸部の大きな筋肉)の硬さは巻き肩や猫背の原因となり、肩甲骨の外側固定を招きます。以下のストレッチを取り入れましょう。
- 壁の横に立ち、肘を90度に曲げて手を壁につける
- 体を反対側にゆっくりひねる
- 大胸筋をしっかり伸ばす
- 20~30秒キープし、左右交互に行う
(文献1)
胸の筋肉をゆるめることで肩甲骨が内側へ戻りやすくなり、自然な姿勢を保ちやすくなります。呼吸を止めずリラックスしながら行いましょう。
肩甲骨が動かない場合の受診目安
肩甲骨の動かしづらさが続き、痛みやしびれ、日常生活に支障が出てきた場合は、自己流のケアだけでなく医療機関への相談を検討してください。以下のような症状が出現した場合は、受診が必要です。
- 痛みが強い場合
- しびれがある場合
- 四十肩や五十肩の疑いがある場合
痛みが強い
肩甲骨周囲の痛みが強く、以下のように日常生活に支障が出ている場合は受診を検討します。
- 肩の突然の強い痛み、とくに夜間に痛みが増す
- 腕を動かそうとすると鋭い痛みが走る
- 着替えや洗髪など日常動作が困難になる
こうした症状は、炎症や神経の圧迫など原因がさまざまです。放置すると痛みが慢性化しやすく、可動域の制限や筋力低下を招くこともあります。早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
しびれがある
肩甲骨付近のしびれは、以下のような神経の圧迫や血流障害などが原因の可能性があります。
- 頸椎や胸椎の歪みからくる神経圧迫
- 斜角筋、小胸筋など周囲筋肉の過度な緊張や締め付け
- 長時間の同じ姿勢や負荷による血流障害
しびれは肩甲骨周囲だけでなく、腕や手先にまで広がることもあります。軽いしびれでも放置せず、専門医の診察を受けて原因を特定し、適切な治療やリハビリで改善を目指しましょう。
四十肩や五十肩の疑いがある
痛みとともに肩の動きが制限されてきた場合、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の可能性があります。以下のような症状の場合は要注意です。
- 腕を上げたり後ろに回す動作がつらい
- 着替えや髪を結ぶなど日常生活動作が困難
- 痛みが徐々に増し、動かせる範囲が狭くなる
進行すると拘縮(固まり)や痛みが長期化しやすいため、早めの受診が重要です。医療機関では痛みを和らげる治療やリハビリを行い、可動域を取り戻します。肩の動きや痛みの変化に気づいたら、医療機関の受診をおすすめします。
肩甲骨が動かない場合の治療法
肩甲骨の動きが制限され、痛みや不調が続く場合は医療機関での専門的な治療が有効です。以下のような主な治療法をご紹介します。
- 内服・注射
- リハビリテーション
- 温熱療法・冷却療法
- 再生医療
内服・注射
痛みや可動域制限を軽減するため、まずは内服薬での治療を行います。鎮痛剤や漢方薬などを用いて痛みや炎症をコントロールし、肩甲骨周囲の筋肉が動きやすい状態をつくります。薬による治療は、リハビリやストレッチを進めるための基本です。
症状に応じて以下のような注射療法を組み合わせて行い、即効性のある痛みの緩和を図ります。
- 筋肉を動きやすくするハイドロリリース
- 拘縮部位へのマニュピュレーション
- エコーガイド下でのブロック注射
患者様一人ひとりの状態やご希望を踏まえ、医師が治療プランを提案します。
リハビリテーション
リハビリは肩甲骨の動きを取り戻すために欠かせない重要な治療法です。理学療法士が一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた以下のようなプログラムを提案し、無理なく続けられるようサポートします。
- 肩甲骨周辺の筋肉を柔らかく保つストレッチ
- 筋力を強化するためのトレーニング
- 肩甲骨の位置や動きを正しく導く運動療法
セルフケアの方法も丁寧に指導し、再発予防までを見据えた包括的なケアを行います。定期的な通院での経過確認や目標設定も大切にし、患者様と二人三脚で改善を目指します。
温熱療法・冷却療法
肩甲骨周囲の痛みや緊張を和らげるため、温熱や冷却を使った物理療法を行います。
温熱療法の効果は以下のとおりです。
- 患部を温め血行を促進
- 筋肉の緊張を和らげて動きを改善
- 慢性的なこりや硬さをほぐし、リハビリ効果を高める
冷却療法の効果は以下のとおりです。
- 患部を冷やして炎症を抑制
- 急性期の痛みを軽減
- 腫れや負担を抑え回復を促す
症状や痛みの程度、時期に応じて医師や理学療法士が適切に選択し、温熱と冷却を組み合わせて治療します。定期的な評価をしながら、再発予防を含めた治療を行います。
再生医療
進行した肩の障害や腱板損傷など、従来の治療で十分な効果が得られない場合に、再生医療といった新しい選択肢もあります。再生医療には以下のような特徴があります。
- 自身の脂肪組織から採取し培養した幹細胞を投与
- 幹細胞が腱板などの組織を再生し、痛みや可動域制限を改善
- 手術を回避できる可能性がある身体への負担が少ない治療法
患者様ごとに適応や効果は異なるため、診察時にしっかりと評価を行い、治療方針を提案します。当院では、治療のリスクや期待できる効果についてもわかりやすくご説明します。再生医療に興味がある方、不安をお持ちの方もぜひ一度ご相談ください。患者様のより良い生活を取り戻すためのお手伝いをいたします。
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肩の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。
肩甲骨が動かない原因を解明させ適切に対処しよう
肩甲骨が動かないのは、多くの人が抱える身近な悩みです。可動域の制限は肩こりや首こり、猫背などの姿勢悪化、呼吸の浅さ、頭痛などさまざまな不調を引き起こします。早めのセルフケアやストレッチを習慣づけると、予防や改善につながります。
ただし、痛みが強い、動きが著しく制限される、しびれを感じるといった場合は自己判断で放置せず、医療機関へ相談してください。原因を正しく解明し、自分に合った治療やリハビリを受ければ、根本的な改善と再発予防の大きなポイントになります。
当院にも、肩甲骨の動きの悩みを抱えた患者様が多く通っています。専門家と一緒に取り組むことで、より快適な生活を取り戻しましょう。
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参考文献