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四十肩と五十肩の違いとは?肩こりや腱板断裂との見分け方を解説【医師監修】
「腕が上がらない」
「服を脱いだり、洗髪したりするのがつらい」
四十肩と五十肩は、発症した年齢による呼び分けです。医学的にはどちらも「肩関節周囲炎」という同じ病気で、症状や治療法に違いはありません。
とはいえ、肩の痛みや腕の上がりにくさがあると、「ただの肩こりなのか」「別の病気ではないか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、現役医師が四十肩と五十肩の違いに加え、肩こりとの違いやセルフチェック、治るまでの期間と時期ごとの過ごし方を解説します。腱板断裂など、似た病気との見分け方も紹介します。
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目次
四十肩と五十肩の違いは呼び名だけ
四十肩と五十肩の違いは、発症した年齢による呼び分けだけです。40代で発症すれば四十肩、50代で発症すれば五十肩と呼ばれます。
症状・原因・治療法に違いはありません。30代や60代で発症することもあり、60代では「六十肩」と呼ばれることもあります。
なお、肩の痛みがすべて四十肩・五十肩とは限りません。似た症状の病気との見分け方は、記事の後半で解説します。
ここでは、正式な病名と、発症が多い年代について解説します。
正式名称はどちらも「肩関節周囲炎」
四十肩・五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。肩関節まわりの骨や軟骨、靱帯、腱などが老化し、炎症が起こることが主な原因と考えられています。
炎症が進んで、関節包(関節を包む袋)や滑液包(肩の動きをなめらかにする袋)がくっつくと、肩の動きはさらに悪くなります。この状態は「凍結肩」とも呼ばれます。(文献1)
「五十肩」は江戸時代から使われている古い呼び名で、もともと正式な病名ではありません。現在、肩の専門学会では「五十肩」ではなく「凍結肩」という病名を使うことが推奨されています。(文献2)
発症が多いのは50代、次いで40代
四十肩・五十肩は、50代にもっとも多く、次いで40代に多い病気です。海外(インド)の医療機関で行われた調査では、年代別の割合は以下のとおりでした。(文献3)
| 年代 | 発症した人の割合 |
|---|---|
| 20代 | 2% |
| 30代 | 9% |
| 40代 | 29% |
| 50代 | 38% |
| 60代 | 17% |
| 70代以上 | 5% |
呼び名のとおり40〜50代が中心ですが、30代や60代で発症する方も一定数います。
また、四十肩・五十肩は人口の2〜5%がかかるとされ、40〜60歳の女性に多い傾向があります。(文献3)
四十肩・五十肩と肩こりの違い
肩こりと四十肩・五十肩は、どちらも肩のつらさとして感じられますが、原因も対処法も異なります。大きな違いは、腕を動かせる範囲が狭くなるかどうかです。
主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 肩こり | 四十肩・五十肩 |
|---|---|---|
| 痛む場所 | 首すじ・首のつけ根から、肩や背中にかけて | 肩関節のまわり(肩の外側や二の腕に及ぶこともある) |
| 腕の動き | 腕を上げる動き自体はできることが多い | 腕が上がらない、背中に手が回らないなど動きが制限される |
| 夜間痛 | 張りやこりが中心で、夜間に強く痛むことは多くない | 夜中にズキズキ痛み、眠れないこともある |
| 主な原因 | 長時間同じ姿勢、猫背、運動不足、ストレスなどによる筋肉の緊張 | 肩関節まわりの炎症や、関節包の癒着 |
| 主な対処 | ・肩を温める ・体操や適度な運動 ・姿勢の見直し |
・時期に合わせた安静 ・痛みを抑える薬や注射 ・リハビリ |
肩こりは、首の後ろから肩・背中に広がる僧帽筋(そうぼうきん)という筋肉の緊張が中心です。(文献4)一方、四十肩・五十肩は肩関節そのものの炎症が原因です。(文献1)
ただし、肩関節の病気の症状として、肩こりを感じる場合もあります。腕が上げにくい、背中に手が回らないなどの制限があれば、肩こりと決めつけずに整形外科を受診しましょう。
また、肩こりのつもりで強く揉むと、炎症が強い時期には痛みが悪化するおそれがあります。
四十肩・五十肩かどうか確かめるセルフチェック
四十肩・五十肩の状態は、日常の動作でおおよその目安を確認できます。以下の9項目のうち、当てはまるものを数えてみましょう。
- 夜間に肩が痛む
- 朝起きたときに肩が痛む
- 痛い側の手で、反対側の肩に触れない
- 脇をしめたまま、腕を外に開けない
- 背中に手が届かない
- おへそに手が届かない
- 着替えがつらい
- 髪を洗うのがつらい
- 肩より上での作業がつらい
当てはまり方によって、現在の時期の目安がわかります。(文献3)
| 時期の目安 | 当てはまり方 |
|---|---|
| 炎症期 | 1か2に当てはまり、3〜9で当てはまるのが3つ以下 |
| 拘縮期 | 1か2に当てはまり、3〜9で当てはまるのが4つ以上 |
| 回復期(寛解期) | 1と2には当てはまらず、3〜9で当てはまるのが1つ以上 |
それぞれの時期の症状は、次の見出しで詳しく解説します。
なお、四十肩・五十肩では、自分で動かしても、人に動かしてもらっても、肩の動く範囲が狭くなります。医師は診察でこの点を確かめ、ほかの病気と区別します。(文献5)
セルフチェックはあくまで目安で、診断ではありません。腱板断裂などの病気でも当てはまることがあるため、自己判断せず整形外科を受診しましょう。
四十肩・五十肩の症状は3つの時期で変わる
四十肩・五十肩は、炎症期、拘縮期、回復期(寛解期)の順に経過し、1〜3年ほどで回復するとされています。(文献3)
時期によって、症状も適した過ごし方も異なります。各時期の特徴は以下のとおりです。
| 項目 | 炎症期 | 拘縮期 | 回復期 |
|---|---|---|---|
| 主な症状 | ・痛みが徐々に強まる ・安静時や夜間もズキズキ痛む |
・痛みは和らいでくる ・肩が固まり動かしにくい |
・痛みはほとんどない ・肩の動きが少しずつ戻る |
| 期間の目安 | 6週間〜9カ月ほど | 4〜6カ月ほど | 6カ月〜2年ほど |
| 過ごし方 | 痛い動作を避けて安静にする | 温めてから、痛みのない範囲で動かす | 痛みに注意しながら、積極的に動かす |
(文献5)
期間の目安には個人差が大きく、糖尿病がある方などは長引くこともあります。気になる症状が続く場合は、早めに医師へ相談しましょう。
炎症期:安静時や夜間の痛みが強い時期
炎症期は、肩の痛みが徐々に強くなっていく時期です。動かしたときだけでなく、じっとしているときや夜間にもズキズキと痛みます。
痛みとともに、肩を動かせる範囲も少しずつ狭くなります。この時期は、6週間〜9カ月ほど続くことが多いとされています。(文献5)
炎症期は、三角巾などで肩を休め、痛みと炎症を抑える薬や注射で痛みを和らげる時期です。痛みをがまんして動かす必要はありません。(文献1)
ただし、夜間痛は腱板断裂や石灰沈着性腱板炎でも起こり得ます。急に痛みが強くなった場合やきっかけが明確な場合は、医療機関で評価を受けましょう。
以下の記事では、ズキズキと痛い肩の症状について詳しく解説しています。
拘縮期:痛みは和らぐが肩が固まる時期
拘縮期は、痛みが落ち着いてくる一方で、肩の硬さ(拘縮)が中心になる時期です。拘縮とは、関節が固まって動きにくくなった状態を指します。
この時期は4〜6カ月ほど続き、日常の動作が特に不自由になりやすいとされています。(文献5)
拘縮期に困りやすい動作は以下のとおりです。
- 髪を洗う、整える
- 服を着替える
- 背中に手を回す
- 高い棚の物を取る
- 車を運転する、重い物を持ち上げる
拘縮期は、入浴などで肩を温めて血行をよくしてから、痛みの出ない範囲で少しずつ動かし始める時期です。(文献3)
回復期:少しずつ肩の動きが戻る時期
回復期は、痛みがほとんどなくなり、肩の動きが少しずつ戻っていく時期です。
元の状態か、それに近い状態に戻るまでには、6カ月〜2年ほどかかるとされています。(文献5)
この時期は、痛みに注意しながら積極的に肩を動かしましょう。放置すると、関節が癒着して動かなくなることもあります。(文献1)
症状が落ち着いてきても、医師の指示に沿ってリハビリを続けることが大切です。
四十肩・五十肩の原因
| 原因 | 詳細 |
|---|---|
| 加齢による肩関節の変化 | 腱や靱帯など軟部組織の変性、関節周囲組織の柔軟性低下 |
| 肩の使い過ぎや固定が引き金になる | 同じ動作の繰り返し、痛みで動かさないことによる硬さ |
| 糖尿病などの基礎疾患や外傷後に発症 | 糖尿病に伴う発症リスク増加、転倒や骨折後の二次的な拘縮 |
四十肩・五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節の周囲に炎症が起こり、痛みや動きの制限が生じる状態です。
肩関節周囲炎は、肩関節を包む関節包と呼ばれる組織が炎症を起こし、厚く縮んでしまうことが原因で起こります。
風船がしぼんで硬くなるように、関節包が硬く縮むことで肩関節の動きが制限されます。
炎症がさらに進むと、関節包や周囲の組織が癒着を起こし、食品ラップ同士がくっつくような状態になるため、注意が必要です。
加齢による肩関節の変化
四十肩・五十肩は40代以降に多く、加齢による骨・軟骨・靱帯・腱の変性で肩周囲の柔軟性が低下し、日常動作でも小さな損傷が起こりやすくなることが発症に関与します。
その結果、肩関節周囲に炎症が生じて痛みや動かしにくさが現れ、炎症が関節包に及ぶと厚く硬くなることで可動域制限が強まります。癒着が進めば拘縮(凍結肩)となって回復が長引くことがあります。
加齢変化は誰にでも起こるため、明確なきっかけがないまま発症するケースも少なくありません。
以下の記事では、更年期の肩こりについて詳しく解説しています。
肩の使い過ぎや固定が引き金になる
肩関節は可動域が大きく、仕事や家事など日常動作で頻繁に使われるため、同じ動作の繰り返しで肩関節周囲に負担が蓄積し、炎症が起こりやすくなります。四十肩・五十肩は加齢変化が背景にあるため、こうした使い過ぎがきっかけとなり症状が表面化することがあります。
炎症が起きると腕を上げる動作などで痛みが出やすくなり、かばうことで肩を動かさない時間が増えやすい点にも注意が必要です。さらに、骨折や手術後などで肩を固定し動かさない期間が続くと、発症リスクが高まります。
海外の整形外科情報でも、骨折や手術などで肩を一定期間動かさない状態が続くと凍結肩を発症することがあると示されています。(文献5)
糖尿病などの基礎疾患や外傷後に発症
| 起こりやすい背景 | 四十肩・五十肩に関係するポイント |
|---|---|
| 糖尿病 | 発症リスク上昇、炎症と硬さの長期化 |
| 甲状腺機能の異常 | 発症との関連性 |
| 外傷(けが・骨折) | 動かせない期間による関節包の硬化 |
| 手術後 | 固定と安静による拘縮進行 |
| 固定期間が長い状態 | 関節包の癒着と線維化、可動域低下 |
四十肩・五十肩は誰にでも起こり得ますが、基礎疾患や外傷後では発症しやすいことがあります。
糖尿病は凍結肩の代表的なリスク因子とされ、肩関節周囲の炎症や硬さが長引きやすい背景となり得るほか、甲状腺機能の異常も四十肩・五十肩との関連が示されています。(文献6)
さらに、肩のけがや骨折、手術後は痛みや固定により肩を動かせない期間が生じやすく、この状態が長いほど関節包が硬くなり、拘縮が進みます。これが発症の引き金となり得ます。
基礎疾患がある方ほど症状が長引くこともあるため、自己判断で放置せず整形外科で評価を受けましょう。
以下の記事では、糖尿病について詳しく解説しています。
四十肩・五十肩と似た疾患
| 四十肩・五十肩と似た疾患 | 詳細 |
|---|---|
| 腱板の病気(腱板断裂・石灰沈着性腱板炎) | 腕を上げる動作痛、夜間痛、筋力低下 |
| 腱や滑液包の炎症(インピンジメント症候群・上腕二頭筋腱炎・肩峰下滑液包炎) | 特定の角度で増悪する痛み、動作時痛、圧痛 |
| 首の疾患(頸椎症性神経根症) | 首の動きで増悪、腕への放散痛、しびれ |
| 関節の障害(脱臼・変形性肩関節症) | 外傷後の強い痛み、関節変形、ゴリゴリ音 |
四十肩・五十肩は肩の痛みと動かしにくさが代表的ですが、似た症状を示す別の疾患もあります。腱板断裂や石灰沈着性腱板炎では夜間痛や筋力低下が目立ち、インピンジメント症候群や上腕二頭筋腱炎では、特定の角度で痛みが強くなります。
頸椎症性神経根症では首の動きで痛みが増し、腕のしびれを伴うことがあります。外傷後の脱臼や変形性肩関節症など関節の障害も原因となるため、自己判断せず医療機関で鑑別することが大切です。
以下の記事では、四十肩・五十肩と似た疾患である腱板断裂と石灰沈着性腱板炎について詳しく解説しています。
【関連記事】
石灰沈着性腱板炎の原因はストレスや食べ物?肩の痛みへの対処や治療法を解説
腱板断裂・石灰沈着性腱板炎との見分け方
腱板断裂と石灰沈着性腱板炎は、四十肩・五十肩と症状が似ていますが、発症しやすい人や腕の動き方に違いがあります。腱板とは、肩の関節を支える筋肉と腱の集まりです。
主な見分け方は以下のとおりです。
| 項目 | 四十肩・五十肩 | 腱板断裂 | 石灰沈着性腱板炎 |
|---|---|---|---|
| 発症しやすい人 | 50代に多く、40〜60歳の女性に多い | 40歳以上の男性に多く、ピークは60代 | 40〜50代の女性に多い |
| 始まり方 | 痛みが徐々に強まる | けががきっかけのことも、はっきりした原因がないこともある | 夜間に突然、激しい痛みで始まることが多い |
| 腕の動き | 自分で動かしても、人に動かしてもらっても上がりにくい | 関節が固まることは少なく、多くは腕を上げられる | 強い痛みで肩を動かせなくなる |
| 特徴的なサイン | ・夜間痛 ・背中に手が回らない |
・腕を上げるときに力が入らない ・肩の前上部でジョリジョリと音がする |
・X線(レントゲン)で石灰が確認できる |
腱板断裂は、四十肩・五十肩と違って関節が固まることが少なく、多くの方は腕を上げられます。(文献7)自分の力では上がらなくても、人に支えてもらうと上がる場合は、腱板断裂の可能性があります。
石灰沈着性腱板炎は、夜間に突然の激しい痛みで始まることが多い病気です。X線検査で、腱板に石灰がたまっているのを確認して診断します。(文献8)
どちらも自己判断での区別は難しいため、気になる症状があれば整形外科を受診しましょう。
以下の記事では、腱板断裂と石灰沈着性腱板炎について詳しく解説しています。
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腱や滑液包の炎症(インピンジメント症候群・上腕二頭筋腱炎・肩峰下滑液包炎)
上腕二頭筋腱炎や肩峰下滑液包炎、インピンジメント症候群は、四十肩・五十肩と同様に肩周囲の炎症が関与するため、症状が紛らわしい疾患です。
インピンジメント症候群では、腕を上げる際に腱板や滑液包がこすれたり挟まったりして炎症が起こり、洗髪や服の着脱などで痛みが出やすくなります。
腕を持ち上げたり手を伸ばしたりする動作で症状が出ることや、肩前面から腕外側へ広がる症状がみられることが示されています。(文献9)
これらは四十肩・五十肩でもよくある訴えのため自己判断での区別は困難です。上腕二頭筋腱炎は肩の前側の症状、肩峰下滑液包炎は挙上動作での増悪が特徴である一方、四十肩・五十肩では受動可動域まで制限されることがあるため、診察と画像検査による鑑別が必要です。
首の疾患(頸椎症性神経根症)
頸椎症性神経根症は、首の骨や椎間板の加齢変化により神経根が圧迫され、首だけでなく肩から腕にかけて症状が広がる疾患です。
そのため「肩のズキズキ」や違和感として自覚されやすく、四十肩・五十肩と紛らわしくなります。肩から腕の痛みに加えて、腕や手指のしびれを伴いやすい点が特徴です。
日本整形外科学会でも、肩から腕の症状と手指のしびれが多いこと、さらに筋力低下や感覚障害が出ることがあると説明されています。(文献10)
関節の障害(脱臼・変形性肩関節症)
脱臼や変形性肩関節症など関節そのものの障害でも、腕が動かしにくい、日常動作が困難といった症状が出るため、四十肩・五十肩と紛らわしいことがあります。
肩関節脱臼は転倒やスポーツなど外傷を契機に突然発症しやすく四十肩・五十肩とは発症背景が異なる一方、脱臼後に痛みで肩を動かさない期間が続くと拘縮が進み四十肩様の状態になることもあります。
変形性肩関節症は、関節軟骨の変性や摩耗が背景にあり、肩に生じると可動域の制限や痛みが目立つのが特徴です。
日本整形外科学会は関節症について、機械的刺激などにより軟骨が変性、摩耗し、滑膜炎が併発して変性が加速することがあると説明しています。(文献11)
症状だけでの判断は難しいため、診察とX線などの画像検査で鑑別し、適切な治療につなげることが大切です。
以下の記事では、肩関節亜脱臼について詳しく解説しています。
受診の目安と診断・検査方法
四十肩・五十肩には、症状が似た病気が多くあります。正しく見分けるには、医師の診察と画像検査が必要です。
ここでは、受診を考えたい症状と、医療機関で行う診断・検査について解説します。
整形外科を受診したほうがよい症状
次のような症状がある場合は、自己判断せず整形外科を受診しましょう。
- 夜間痛で眠れない
- 肩の痛みが長引いている
- 腕を上げるときに力が入らない
- 肩を動かすとゴリゴリ、ジョリジョリと音がする
- 急に激しい痛みが出た
- 首から腕にかけてしびれがある
眠れないほどの夜間痛や、腕を上げるときに力が入らないこと、肩の音は、腱板断裂でもみられる症状です。(文献7)
自己判断で揉んだり無理に動かしたりすると、症状が悪化するおそれがあります。早めに原因を確かめることが、適切な治療への近道です。
問診・診察と画像検査
四十肩・五十肩の診断は、主に問診と診察で行います。痛みの程度や可動域を確認し、腕を前・横に上げる、後ろに回すなどの動作で制限の有無を評価します。
主な画像検査は以下のとおりです。
| 検査 | 説明 |
|---|---|
| X線(レントゲン) | 骨折や変形性関節症、石灰の有無など、ほかの病気の除外目的 |
| MRI検査 | 腱板断裂など、骨以外の組織(軟部組織)の確認 |
| 超音波検査 | 腱板や滑液包などの観察、画像を見ながら行う注射での活用 |
レントゲンには、炎症や癒着そのものは写りません。骨折や変形性関節症、石灰の有無など、ほかの病気を除外する目的で行います。
MRIや超音波検査は、腱板断裂など骨以外の組織を確認したいときに使います。四十肩・五十肩の診断に必須の検査ではなく、多くは診察で診断できます。(文献5)
四十肩・五十肩の治療法
| 治療法 | 詳細 |
|---|---|
| 薬物療法 | 痛みと炎症の軽減、夜間痛の緩和 |
| 理学療法 | 可動域の改善、拘縮予防、肩機能の回復 |
| 手術療法 | 保存療法で改善しない例での選択肢、関節の動きの改善 |
| 再生医療 | 症状や原因に応じた組織修復の補助、治療選択肢のひとつ |
四十肩・五十肩の治療は、痛みと炎症を抑える薬物療法を中心に、肩の動きを取り戻す理学療法を組み合わせて進めます。薬物療法や理学療法で改善が乏しい場合は、関節の動きの改善を目的に手術療法を検討します。
また、症状や原因によっては再生医療が選択肢となる場合もありますが、再生医療を取り扱う医療機関は限られており、すべての症状に適用できるわけではありません。
そのため、再生医療を検討する際は、事前に医師と相談しながら適応を判断する必要があります。
薬物療法
四十肩・五十肩の初期(急性期)は肩関節周囲の炎症が主体となるため、薬物療法が効果を発揮しやすい時期です。
日本整形外科学会でも、症状が強い急性期には消炎鎮痛薬の内服や注射が有効と説明されています。(文献1)
とくにNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は炎症と腫れを抑えて痛みを和らげ、日常生活の負担軽減に役立ちます。国内でも、除痛目的にNSAIDsを用いることが一般的です。(文献12)
肩関節内へのステロイド注射は炎症を強く抑える手段で、海外のレビューでも治療選択肢として挙げられ、症状の軽減や可動域の改善に役立つ可能性が示されています。(文献5)
理学療法
四十肩・五十肩では、炎症が落ち着いた後に肩の硬さ(拘縮)が目立ちやすくなるため、回復には理学療法が欠かせません。
日本理学療法士協会の資料でも、炎症が落ち着いた後に硬さが目立ちやすいことと、理学療法士による運動療法やセルフエクササイズの指導が推奨されています。(文献3)
エビデンスレビューでは、標準化した理学療法を含む保存療法で高い改善率が報告されており、無理に強く伸ばすより状態に合わせた穏やかな運動が良い可能性も示されています。(文献13)
海外の患者向け資料でも回復には時間がかかるため理学療法の継続が不可欠とされており、自己流は避けて段階に合った運動を続けることが大切です。(文献14)
保存療法で改善しない場合の手術療法
| 手術の種類 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 麻酔下での関節モビライゼーション(マニプレーション) | 全身麻酔下で肩関節を動かし、硬くなった関節包を伸ばして可動域を改善する方法 | 短時間で可動域改善が期待、術後のリハビリ継続が欠かせません。 |
| 関節鏡下関節包遊離術 | 関節鏡(カメラ)と器具を挿入し、癒着した関節包を切開して可動域を改善する方法 | 皮膚切開が小さい、術後回復が比較的早い傾向 |
| サイレントマニピュレーション(非観血的関節授動術) | 首の神経に麻酔の注射をして肩の感覚を抑えた状態で、医師が肩を動かし、硬くなった関節包をはがす方法 | ・皮膚を切らずに行う ・日帰りで実施する医療機関もある ・術後は数カ月のリハビリ通院が必要 |
保存療法で十分な改善が得られない場合や、肩関節の硬さ(拘縮)が強い場合は、手術療法を検討します。
代表的な方法として、全身麻酔下で肩関節を動かして硬くなった関節包を伸ばす麻酔下関節モビライゼーション(マニプレーション)や、関節鏡を用いて癒着した関節包を切開する関節鏡下関節包遊離術があります。(文献5)
このほか、外来で行う「サイレントマニピュレーション」という方法もあります。(文献2)首の神経に麻酔の注射をして、肩の感覚を抑えた状態で医師が肩を動かし、硬くなった関節包をはがします。
皮膚を切らずに行う方法で、日帰りで実施している医療機関もあります。術後は数カ月ほどリハビリへの通院が必要で、骨がもろい方などは受けられない場合もあります。
手術は保存療法より短期間で可動域の改善が期待できますが、骨折、神経障害、感染症などの合併症リスクもあるため、適応については医師と相談して慎重に判断しましょう。
再生医療
| 再生医療が選択肢となる理由 | 説明 |
|---|---|
| 炎症に関わる環境へのアプローチ可能性 | 血小板由来因子などを介した局所環境への作用の考え方 |
| 成長因子を含む治療の概念 | PRPが成長因子などを含む血漿(けっしょう)である点 |
| 研究報告で検討が進む領域 | 可動域や評価尺度を用いた臨床研究や系統的レビューの蓄積 |
| 注射治療として実施される枠組み | 入院や手術を前提としない注射手技としての位置づけ |
| 細胞特性に基づく治療概念 | 自己由来幹細胞の分化能や体内環境に関わる働きを活用する考え方 |
(文献15)
四十肩・五十肩は、炎症に続いて関節包の拘縮が残りやすい疾患です。再生医療は、注射を用いて局所環境に働きかける考え方に基づいており、研究でも可動域などの指標で検討されています。
また、手術を前提としない治療として実施できるため、侵襲が比較的小さく、感染症や術後の合併症リスクを抑えやすいのが利点です。
さらに、患者自身の細胞を用いる治療では、薬物療法のような全身性の副作用が生じにくい可能性も期待されます。
ただし、標準治療の代替ではなく、適応や期待できる効果は状態により異なるため、医師と相談の上で判断が必要です。
当院「リペアセルクリニック」では、四十肩・五十肩に対する再生医療を用いた治療を行っております。
詳しくは、以下の四十肩・五十肩に対する再生医療の症例をご覧ください。
また、以下の動画では、当院で行っている肩関節の症状に対する再生医療について詳しく解説しています。
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四十肩・五十肩の時期に合わせた過ごし方
「四十肩は動かしたほうがいいの?」という疑問の答えは、時期によって異なります。痛みが強い時期に無理をすると悪化しやすく、肩が固まる時期に動かさないと回復が遅れることがあります。
治療と並行して自宅でできる工夫は、以下のとおりです。
- 動かしてよい時期・控えたい時期
- 夜間痛を和らげる寝方
- 着替え・荷物・運転など日常生活の工夫
それぞれ詳しく解説します。
動かしてよい時期・控えたい時期
肩を動かしてよいかどうかは、今どの時期にいるかで判断します。時期ごとの目安は以下のとおりです。
| 時期 | 過ごし方と運動の例 |
|---|---|
| 炎症期 | 痛い動作は避け、楽な姿勢で安静にする |
| 拘縮期 | 温めて血行をよくしてから、痛みのない範囲で動かす ・振り子運動(前かがみで腕の力を抜いて垂らし、前後左右に揺らす) ・テーブル運動(テーブルに置いたタオルに手を乗せ、体を前に倒して手を滑らせる) |
| 回復期 | 痛みに注意しながら、積極的に動かす ・Y-W運動(両腕を斜め上に広げてY字にし、ひじを脇に引き寄せて肩甲骨を寄せ、W字にする) |
(文献3)
運動で痛みが増す場合は、すぐに中止して医師や理学療法士に相談してください。回数ややり方は自己流にせず、理学療法士の指導を受けることをおすすめします。
夜間痛を和らげる寝方
夜間痛がつらいときは、寝るときの姿勢を工夫することで、肩への負担を減らせます。主な工夫は以下のとおりです。
- 痛い側の肩を下にして寝ない
- 仰向けで寝るときは、腕の下にタオルやクッションを入れ、ひじが肩より下がらないようにする
- 横向きで寝るときは痛い側を上にし、お腹の前に抱えたクッションに腕を乗せる
痛みが出にくい腕の位置を見つけ、リラックスできる環境を整えることが大切です。(文献3)
工夫しても眠れないほど痛む場合は、医療機関を受診して、痛みの治療について相談しましょう。
着替え・荷物・運転など日常生活の工夫
日常の動作を少し工夫するだけで、肩への負担を減らせます。場面ごとの工夫は以下のとおりです。
| 場面 | 工夫 |
|---|---|
| 着替え | 着るときは痛い側の腕から袖を通し、脱ぐときは痛くない側の腕から先に抜く |
| 荷物を持つとき | 痛い側の手で持たず、肩掛けかばんや買い物カートを使う |
| 車の運転 | 長時間の運転は避け、シートを前に出して脇が開きすぎないようにする |
| 座っているとき | ひじ掛けを使い、タオルなどで腕の高さを調整する |
| デスクワーク | ときどき休憩し、ひじで円を描くように肩甲骨を動かす |
(文献3)
できるものから取り入れて、肩をいたわりながら生活しましょう。
四十肩・五十肩の予防法
| 予防法 | 詳細 |
|---|---|
| 肩を動かす習慣をつけ可動域低下を防ぐ | 肩甲骨を意識した軽い運動習慣 |
| 肩を固定しすぎず日常で軽く動かす | 安静のしすぎ回避とこまめな可動 |
| 基礎疾患を管理し発症リスクを下げる | 糖尿病などの血糖管理と定期受診 |
四十肩・五十肩の予防は、「固めない」「偏らせない」「基礎疾患を整える」が基本です。肩は動かさない期間が続くほど可動域が落ちやすく、反対に偏った使い方が続くと炎症のきっかけになります。
日常的に肩甲骨と肩関節を軽く動かし、固定しすぎないことが大切です。デスクワークでは猫背や巻き肩が定着しやすいため、姿勢と作業環境の見直しも欠かせません。糖尿病などの基礎疾患がある場合は、内科的管理も含めた全身の調整が予防につながります。
肩を動かす習慣をつけ可動域低下を防ぐ
四十肩・五十肩は、肩関節周囲の炎症に続いて関節包が硬くなり、肩が固まって可動域が落ちることがある疾患です。そのため、動かさない期間が長いほど拘縮が進みやすく、外傷や手術後などで肩を固定した後に発症することがある点からも「動かさないこと」がリスクになり得ます。
日本整形外科学会では、急性期を過ぎたら運動療法(拘縮予防や筋力強化)を行うと明記されています。(文献16)
肩を動かすことは単なるセルフケアではなく、医学的にも「動きの低下を防ぐ」ための重要な手段として位置づけられています。
可動域を保つことは、洗髪や服の着脱など日常動作の維持にも直結するため、無理のない範囲で穏やかに動かす意識が大切です。
肩を固定しすぎず日常で軽く動かす
肩を固定しすぎず日常で軽く動かすことが重要なのは、「動かさない期間」そのものが四十肩・五十肩の引き金になり得るためです。
AAOS(米国整形外科学会)では、手術や骨折などで肩を固定したあとに凍結肩(四十肩・五十肩)が起こり得ると説明されており、固定がリスク因子になることが示されています。(文献5)
肩を動かさない状態が続くと、肩関節周囲の組織が硬くなり、関節包の線維化や拘縮が進みやすく、可動域低下につながります。
とくに、けがや手術後は肩を動かせる範囲が限られやすいため、医師の指示に従いながら可能な範囲で早期から軽く動かすことが、拘縮予防と機能回復において大切です。
基礎疾患を管理し発症リスクを下げる
糖尿病や甲状腺疾患は四十肩・五十肩(凍結肩)の発症と関連するため、基礎疾患を管理し発症リスクを下げることが大切です。糖尿病や甲状腺疾患がある人は凍結肩のリスクが高く、炎症や組織変化が起こりやすくなる可能性があり、症状が長引く要因にもなり得ます。(文献5)
海外の医療情報では、糖尿病や甲状腺疾患の管理は、凍結肩のリスク低減につながる可能性が示されています。(文献5)
これは「特別な運動だけで予防する」のではなく、全身状態の管理が肩の病気にも影響し得るという考え方です。
そのため、定期通院を継続し、血糖や甲状腺機能を安定させることが、発症予防と重症化回避の両面で欠かせません。
四十肩と五十肩の違いを理解して適切に対処しよう
四十肩と五十肩は、呼び方が違うだけの同じ病気です。本記事の要点は以下のとおりです。
- 四十肩と五十肩の違いは発症した年齢による呼び名だけで、症状や治療法は同じ
- 肩こりと違い、腕が上がりにくくなったり、夜間に痛んだりする
- 炎症期・拘縮期・回復期の時期によって、適した過ごし方が異なる
一方で、肩の痛みや動かしづらさは、腱板断裂や石灰沈着性腱板炎、頸椎由来の神経症状などでも生じます。痛みが長引く場合や、筋力低下が目立つ場合、急に症状が悪化した場合は、自己判断せず医療機関で原因を確認しましょう。
四十肩・五十肩の症状が改善せずお悩みの方は当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。再生医療は注射によって局所の環境に働きかける治療です。炎症や組織変化が関与する四十肩・五十肩に対して、症状の緩和や可動域の改善につながる可能性が検討されています。
ご質問やご相談は、「LINE」や「メール」、「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。
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四十肩・五十肩に関するよくある質問
四十肩・五十肩は自然治癒しますか?
四十肩・五十肩は自然に軽快することもあります。ただし、放置すると関節包の癒着が進み、肩の動かしにくさが残ることがあります。
「そのうち治る」と我慢せず、早めに整形外科で評価を受けましょう。
四十肩・五十肩は整体や鍼灸で改善しますか?
四十肩・五十肩は、整体や鍼灸で一時的に楽になる可能性はありますが、改善効果が明確に証明されているとは言い切れません。
とくに鍼灸は、役立つと感じる人がいる一方で根拠は決定的ではないとする整理が多く、治療の中心は整形外科で原因を評価した上で、薬物療法や理学療法を行うことになります。
四十肩・五十肩に対してやってはいけないことはありますか?
四十肩・五十肩で避けたいことは、無理に動かすことと、固定し続けることです。
症状が強い時期に無理をすると炎症が悪化しやすく、反対に動かさなさすぎると肩が固まって可動域が低下することがあります。
痛みの出ない範囲で動かすことを基本とし、症状が悪化する場合は整形外科で相談しましょう。
一度四十肩になったら五十肩にはなりませんか?
四十肩と五十肩は呼び名が違うだけの同じ病気なので、「四十肩の次に五十肩になる」という区別は医学的にはありません。
同じ肩に再び起こることは多くないとされています。ただし、糖尿病などの要因が残っていると、同じ肩に再発することもあります。(文献5)
また、片方の肩が治った後に、反対側の肩に起こることはあります。治った後も、肩を適度に動かす習慣を続けましょう。
四十肩・五十肩は温めるのと冷やすのはどちらがよいですか?
痛みが強い時期を過ぎたら、入浴やホットパックで温めてから動かすのが基本です。(文献1)
一方、熱っぽさや強い痛みがある時期には、冷湿布などで冷やす方法がとられることもあります。どちらが合うか判断が難しい場合は、医師に相談しましょう。
参考文献
「五十肩」、本当の病名は「凍結肩」!?|公益財団法人 運動器の健康・日本協会
理学療法ハンドブック シリーズ 13 肩関節周囲炎|肩にやさしい関わり方で快適な生活を
Frozen shoulder: MedlinePlus Medical Encyclopedia
「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」|公益社団法人 日本整形外科学会






















