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ウェルニッケ脳症の後遺症とは|主な症状と原因について現役医師が解説

ウェルニッケ脳症後遺症
公開日: 2025.07.31

「ウェルニッケ脳症の治療をしているのに、歩きにくさの症状が出ている」
「ウェルニッケ脳症を発症した親に記憶障害がある気がする」

このような不安を抱えている方もいるでしょう。

ウェルニッケ脳症は、治療後も運動性失調や眼球運動障害、記憶障害などの後遺症が出ることがあります。とくに、治療の開始が遅れたり、治療が不十分だったりした場合に後遺症が残りやすい傾向です。本人も記憶障害によって混乱している場合があるため、周囲のサポートが欠かせません。

本記事では、ウェルニッケ脳症の後遺症として現れる症状や原因を詳しく解説します。ご家族にできるサポート方法もあわせて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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ウェルニッケ脳症の後遺症における主な症状

ウェルニッケ脳症の後遺症には、さまざまな症状が見られます。代表的な症状は以下の3つです。

  • 運動性失調
  • 眼球運動障害
  • 記憶障害・作話

1つずつ詳しく見ていきましょう。

運動性失調|ふらつきやまっすぐ歩けない

運動性失調は、ウェルニッケ脳症の原因であるビタミンB1の欠乏によって、小脳や前庭核といった体のバランスを保つ部位が障害されることで現れます。

主な症状は、お酒に酔ったときのようなふらつきや、まっすぐな線をたどって歩くのが難しいといった体幹の失調です。

体幹の失調は、数日から数カ月にわたって続く場合があります。ある報告によると、運動性失調が改善したのは全体の40%であり、残りの60%の方には症状が残ったとされています。(文献1

そのため、長期的なケアやリハビリが必要になるケースも少なくありません。体幹の失調については以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

眼球運動障害|目の動きに異常が出る

ウェルニッケ脳症の急性期に見られる目の動きの異常が、後遺症として残ることがあります。具体的には以下の症状です。

  • 眼振:自分の意思とは関係なく目が動く
  • 麻痺:目の筋肉が部分的に動かなくなる

眼振があると、景色が揺れて見えたり、一点を見つめるのが難しくなったりします。また、眼筋麻痺によって物が二重に見える複視が起き、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

適切な治療により一部の患者で回復へ向かうとされる眼球運動障害ですが、目の麻痺は改善したものの、約60%の症例で水平方向への眼振が後遺症として残ったとの報告も存在します。(文献1

回復の程度には個人差があるため、症状が続く場合は主治医や眼科医へ相談しましょう。

記憶障害・作話|物忘れや作り話をする

ウェルニッケ脳症の後遺症として、新しいことを覚える機能や過去の出来事を思い出す機能に障害が残る場合があります。ある報告によれば、記憶障害が完全に回復したのは20%にとどまるとの結果でした。(文献1

数分前の会話を忘れる、新しいことを覚えられないといった「記銘力障害」が慢性化し、「コルサコフ症候群」へと移行する場合があります。

コルサコフ症候群の特徴的な症状の1つが、記憶の空白を埋めるために無意識に創作した話をしてしまう「作話」です。本人は嘘をついている自覚がないため、周囲は戸惑うかもしれません。

また、時間や場所がわからなくなる見当識障害も現れます。これらの症状は本人の混乱や不安を招くため、家族の理解と適切な対応が求められます。

ウェルニッケ脳症で後遺症が出る原因

ウェルニッケ脳症で後遺症が出る主な原因は、治療開始の遅れや、適切な治療を受けられなかった点にあります。そのため、後遺症を残さない、あるいは症状を軽くするためには、早期の診断と治療が重要です。

しかし、たとえ早期に治療を始めても、ビタミンB1の補充が不十分といった適切な治療がおこなわれないと、完全な回復は難しくなります。その結果、認知機能の障害を主症状とするコルサコフ症候群に移行するケースも少なくありません。(文献2

ウェルニッケ脳症を未治療のまま放置した場合、約80%がコルサコフ症候群へ移行するとされています。また、治療をおこなった場合でも、アルコール摂取が原因のウェルニッケ脳症では、16.9%の確率でコルサコフ症候群を発症するとのデータもあります。(文献3

アルコールを多量に摂取する方は、ウェルニッケ脳症だけでなく、肝臓疾患のリスクも高くなります。肝臓疾患については以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。

【関連記事】
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肝臓疾患の治療方法として再生医療が選択肢の1つです。

再生医療を提供する当院では、メール相談オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。

ウェルニッケ脳症の後遺症に対する治療法

ウェルニッケ脳症の後遺症が残った場合、症状の安定や生活の質の維持を目指した治療が必要です。主な治療法は以下の通りです。

  • 食事療法
  • 薬物療法
  • リハビリ

1つずつ詳しく見ていきます。

食事療法

ウェルニッケ脳症の根本的な原因は、ビタミンB1(チアミン)の不足です。チアミンは体内で生成できないため、食事から摂取する必要があります。体内に貯蔵できる量も、主に骨格筋や心臓、脳、肝臓、腎臓を合わせても約30mgとごくわずかしかありません。

アメリカの国立衛生研究所によると、成人が1日に必要とするチアミンの量は1.1〜1.2mgとされています。もし、食事からまったく摂取しない場合は2〜3週間で枯渇するとの報告があります。(文献1

そのため、後遺症の治療においても継続的なチアミンの摂取が重要です。チアミンは以下の食材に多く含まれます。

  • 豚肉
  • うなぎ
  • 玄米
  • 全粒穀物
  • 豆類

ウェルニッケ脳症の後遺症の治療では、これらの食品を意識して食事に取り入れましょう。

薬物療法

ウェルニッケ脳症の後遺症がある場合、食事だけでは十分な量のビタミンB1補給が難しいケースも少なくありません。また、アルコールの多飲などで消化管の吸収能力が低下している可能性も考えられるでしょう。

そのため、食事療法と並行してビタミンB1製剤を内服する薬物療法がおこなわれます。医師の指導のもと、1日に100mg程度のビタミンB1製剤の継続的な服用が推奨されています。(文献1

薬の服用により期待できる効果は以下の通りです。

  • 体内のビタミンB1濃度を安定させる
  • 症状の悪化を防ぐ
  • 残された神経機能の回復をサポートする

治療効果を高めるには、医師の指示に従い、適切な量を服用し続ける必要があります。

リハビリ

運動性失調によるふらつきや歩行の不安定さが残った場合には、継続的なリハビリテーションが必要です。失調に対するリハビリには、以下のような種類があります。

  • フレンケル体操:正確な動きを反復練習して運動コントロールの改善を目指す
  • 重錘負荷運動:手足に重りをつけて運動の制御能力向上を目指す

また、本人が記憶障害を合併している可能性も考慮する必要があります。リハビリの前後で「前回はここまでできた」「今日はこれができるようになった」といった具体的なフィードバックや記録の比較をおこなうと良いでしょう。

これにより自身の状態を客観的に把握できるため、リハビリを続けるモチベーションの維持につながります。

運動性失調に対するリハビリの具体的な方法については、以下の記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。

ウェルニッケ脳症の後遺症患者に対するサポート方法

ウェルニッケ脳症の後遺症とともに生活していく上で、本人の努力はもちろんですが、家族をはじめとする周囲の方々のサポートも必要です。

具体的なサポートのポイントとしては、以下の点が挙げられます。

  • コミュニケーションを工夫する
  • 安全な生活環境を整える

まずはできるところから1つずつ始めていきましょう。

コミュニケーションを工夫する

コルサコフ症候群の症状は認知症と似ている点が多いため、認知症の方への接し方が参考になります。大切なのは、作り話などを頭ごなしに否定するのではなく、まずは本人の話に耳を傾けて安心感を与える姿勢です。

たとえば、「はい」か「いいえ」で答えられる短い質問をしたり、選択肢を示したりすると良いでしょう。また、話の内容を一度受け止めた上で「カレンダーを見てみましょうか」と、穏やかに現実の情報を補う対応も役立ちます。

頭ごなしに否定すると本人のストレスが溜まり、不安から再び飲酒に頼るリスクを高めてしまいかねません。

安全な生活環境を整える

ウェルニッケ脳症の後遺症である運動性失調や眼振は、体のバランスを崩しやすく、転倒のリスクを高めます。思わぬ事故を防ぐには、本人が安全に過ごせる生活環境を整える必要があります。

たとえば、廊下や階段に手すりを設置したり、屋内の小さな段差をスロープで解消したりする対策が有効です。また、電気の配線コードやティッシュ箱など、つまずきの原因になりそうな物は床に置かないようにしましょう。

本人の自室をトイレや浴室の近くに移動させて、家の中の動線を短くするのも1つの方法です。さらに、転倒時に机の角などで頭を打たないように、クッション性のカバーを取り付けるといった配慮も怪我の防止につながります。

ウェルニッケ脳症の後遺症を理解して献身的なサポートを心がけよう

ウェルニッケ脳症の後遺症としては、以下の症状が挙げられます。

  • 運動性失調
  • 眼球運動障害
  • 記憶障害

運動性失調と水平方向の眼振が残存する確率は、それぞれ約60%です。(文献1)また、記憶障害を主症状とするコルサコフ症候群へ移行する可能性は、未治療の場合で約80%、治療後もアルコールが原因であれば約17%にのぼると報告されています。(文献3

後遺症が残った場合、本人が不安や怪我なく暮らせるように、食事管理やコミュニケーションの工夫、安全な生活環境の整備といった周囲のサポートが必要です。

なお、同じくアルコールが原因となりうる疾患に肝硬変などの肝臓疾患があり、その治療法の1つとして再生医療といった選択肢もあります。

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ウェルニッケ脳症や後遺症に対するよくある質問

ウェルニッケ脳症及び後遺症の予後・死亡率は?

ウェルニッケ脳症は、早期に適切な治療がおこなわれれば、症状が改善する可能性のある疾患です。しかし、治療が遅れたり、コルサコフ症候群に移行したりした場合は、予後が良いとはいえません。

ある研究で、ウェルニッケ・コルサコフ症候群の患者様を対象に調査したところ、5年後・10年後の生存率は以下の通りでした。

  5年後の生存率 10年後の生存率
男性 67.7% 48.3%
女性 79.0% 62.9%

また、同研究では死因の32.6%がアルコール関連だったと報告されています。(文献4

これらの結果から、断酒の継続とアルコールでダメージを受けた他の臓器(とくに肝臓)の治療は、ウェルニッケ脳症の予後に少なくない影響を与えます。

アルコールの多量摂取による肝臓疾患治療の選択肢の1つが再生医療です。

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ウェルニッケ脳症は難病指定されていますか?

現在、ウェルニッケ脳症は国の難病には指定されていません。難病指定とは、以下のような疾患を対象とする制度です。

  • 原因が不明
  • 治療法が確立していない
  • 長期の療養が必要

ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の欠乏といった原因が明確であり、ビタミンB1の補充のような治療法も確立しているため、この要件には当てはまりません。

ただし、以下のような症状が出ている場合は、同じく目の動きや筋力に異常をきたす難病指定の「重症筋無力症」との鑑別が必要になるケースがあります。(文献5

  • 眼筋の麻痺
  • 手足の筋力低下
  • 飲み込みにくさ(嚥下障害)
  • 呼吸のしづらさ

主治医の指示のもと適切な検査を受けましょう。

参考文献

(文献1)
Wernicke脳症の診断と治療|愛仁会高槻病院 総合内科

(文献2)
Wernicke’s Encephalopathyの治療法|日本ビタミン学会学術誌「ビタミン」

(文献3)
Hospital Outcomes in Medical Patients With Alcohol-Related and Non-Alcohol-Related Wernicke Encephalopathy|Mayo Clin Proc.

(文献4)
Incidence and mortality of alcohol‐related dementia and Wernicke‐Korsakoff syndrome: A nationwide register study|Int J Geriatr Psychiatry.

(文献5)
指定難病とすべき疾病の支給認定にかかる基準|厚生労働省

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