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【医師監修】iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の実用化はいつ?効果や課題を解説

ips細胞パーキンソン病
公開日: 2025.12.13

「パーキンソン病に対して、iPS細胞は有効と耳にしたが本当か?」

「iPS細胞の実用化はいつになるのか?」

パーキンソン病には進行を抑える薬剤はあるものの、根本的な治療法はまだありません。そこで注目されているのが、iPS細胞を用いた再生医療です。

京都大学など国内外で研究が進み、すでに臨床試験段階です。ただし、品質や長期効果の検証など課題も残っており、現時点では一般の医療機関では受けられません。そのため、今後の実用化が期待される分野です。

本記事では、現役医師が、iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の実用化がいつ頃見込まれているのかを詳しく解説します。

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iPS細胞とパーキンソン病の関係性

項目 内容
パーキンソン病とは ドパミンをつくる神経細胞の減少による、動作の鈍さ・ふるえ・こわばりなどの症状
原因 黒質と呼ばれる脳の部位でドパミン神経が減少
iPS細胞とは 身体の細胞を再プログラムし、どんな細胞にも変化できる能力を持たせた細胞
治療への応用 iPS細胞からドパミン神経を作り、失われた細胞を補う研究
研究の進み具合 臨床試験が始まり、一部で効果の確認が進行している
期待される効果 根本的な機能回復への可能性
注意点 腫瘍化や免疫拒絶などのリスクあり、一般治療にはまだ時間が必要

文献1)(文献2

パーキンソン病は、脳でドパミンを作る神経細胞が徐々に減少し、動作の鈍さや震え、歩行障害などが現れる疾患です。iPS細胞を用いれば、失われた神経細胞を作り直して補えると考えられています。

現在、iPS細胞から作ったドパミン神経の移植研究が進行中で、根本的な治療法になることが期待されています。

ただし、リスク面や長期効果の確認が必要であり、実用化にはもう少し時間がかかる見込みです。

以下の記事では、パーキンソン病の完治の可能性について詳しく解説しています。

パーキンソン病の病態と治療の現状

パーキンソン病は、現時点で「根本から治す方法」が確立されておらず、症状を和らげながら生活の質を保つ対症療法が中心となっています。

代表的な治療薬であるレボドパは、脳内のドパミンを補い、震えや動作の緩慢といった運動症状を改善します。(文献3

しかし、薬の効果が次第に弱まったり、服薬の時間帯で症状が再び現れる「off時間」や不随意運動などの副作用が生じたりするのが課題です。文献4

また、理学・作業・言語・運動療法などのリハビリや、電極を脳に埋め込み刺激を与える深部脳刺激(DBS)も有効な選択肢として活用されています。(文献5

以下の記事では、パーキンソン病について詳しく解説しています。

【関連記事】

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iPS細胞がパーキンソン病に応用される仕組み

パーキンソン病は、脳内でドパミンを作る神経細胞が徐々に減少し、動作の鈍さや震え、歩行障害などが現れる疾患です。

iPS細胞を用いた治療では、患者自身や提供者の細胞からiPS細胞を作製し、ドパミン神経細胞へ分化させて脳内に移植することで、減少した細胞を補います。

移植した細胞がドパミンを産生して神経回路に組み込まれることで機能回復が期待され、患者自身の細胞を用いる場合は免疫拒絶のリスクを軽減できる可能性があります。(文献6

一方で、長期的な機能維持や神経回路との接続、腫瘍化などのリスク面について課題が残されており、現在は臨床試験段階です。(文献7

iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の実用化はいつ?

日本では、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)を中心に、2018年からiPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞をパーキンソン病患者へ移植する第I/II相臨床試験が進められています。(文献8

とある試験では7名の患者に移植が行われ、重大な副作用は確認されず、一部で運動症状の改善が報告されています。(文献2

また、京都大学が主導した臨床試験では、健康なドナー由来のiPS細胞から作製したドパミン産生細胞を7名のパーキンソン病患者に移植し、2年間の観察で重大な副作用は認められず、一部の患者で症状の改善が報告されました。(文献9

近年の報告では安定性と一定の有効性が示され承認申請に向けた動きも具体化しつつあります。しかし、現段階では少人数かつ非対照の試験であるため、大規模かつ長期的な検証や、細胞製造・保管体制、手術施設の整備、コスト面などが課題です。(文献10

2025年時点では実用化の時期は未定ですが、iPS細胞研究は再生医療の新たな可能性を切り開いています。文献11

以下の記事では、iPS細胞の作り方や課題について詳しく解説しています。

iPS細胞を用いたパーキンソン病治療で期待される効果

期待される効果 詳細
ドパミン神経の再生と運動機能の改善 失われた神経の再生と運動症状の改善
症状の持続的な安定化への期待 長期間続く症状の安定と機能維持
拒絶反応を抑えた細胞移植の可能性 拒絶反応を抑える移植治療

移植した細胞が長期的に機能することで、症状の安定化や薬の使用量軽減が期待されます。また、免疫反応を抑えるiPS細胞を活用することで、拒絶反応のリスクを低減した治療の実現を目指しています。

以下の記事では、iPS細胞と再生医療の関係性について詳しく解説しています。

ドパミン神経の再生と運動機能の改善

iPS細胞を用いたパーキンソン病治療は、失われたドパミン神経を再生し、運動機能の改善を目的とした再生医療です。

京都大学などの臨床試験では、50~69歳の患者にiPS細胞由来のドパミン神経細胞を移植し、2年間にわたり観察が行われました。その結果、多くの患者で運動機能の改善が確認され、画像検査によりドパミン産生が持続していることが示されました。(文献12

こうした成果は、神経再生が症状改善に直結する可能性を示唆しています。一方で、この治療はまだ臨床試験段階にあり、リスク面や長期的な効果の検証が必要です。

症状の持続的な安定化への期待

iPS細胞でドパミン神経を補充し、パーキンソン病の症状を持続的に改善する治療法です。

ドパミン神経前駆細胞の移植により、運動機能の長期的な維持が期待されています。

臨床試験では長期観察データが出始めており、CiRA(京都大学iPS細胞研究所)の試験では、移植後24カ月にわたりドパミン産生と運動機能の改善・安定傾向が報告されています。文献2

さらに、動物実験でも移植後1〜12カ月間にわたり細胞の生存と機能が確認されており、長期効果の可能性が示唆されています。(文献13

拒絶反応を抑えた細胞移植の可能性

iPS細胞を用いた移植療法では、移植された細胞を身体が異物と認識して攻撃する拒絶反応が大きな課題です。

北海道大学の研究チームは、iPS細胞から造血幹・前駆細胞を作製し、移植前に患者へ投与することで免疫の寛容状態を誘導し、拒絶反応を抑える新しい方法を開発しました。(文献14

この手法により、免疫抑制剤を長期使用せずに細胞を生着させることを目指しています。さらに、清野教授らはT細胞の活性化を抑える新たな免疫抑制法も報告し、従来よりも効果的な拒絶反応の制御が期待できることを示しました。(文献15

加えて、ゲノム編集技術を応用し、免疫攻撃を回避できるiPS細胞の開発も進行中であり、将来的にはより安定した細胞移植治療の実現が期待されています。文献16

iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の課題とリスク

課題とリスク 詳細
腫瘍化・免疫拒絶反応などの医学的リスク 移植した細胞の腫瘍形成や免疫拒絶の可能性。長期的なリスク管理の必要
治療効果の個人差と長期的な持続性の課題 患者ごとの反応差や移植細胞の機能維持期間のばらつき。効果持続性の標準化の課題
製造コスト・供給体制・承認プロセスの課題 高度な製造技術による高コストと供給体制の未整備。承認手続きの複雑さによる実用化の遅れ

iPS細胞を用いたパーキンソン病治療は、根本的な改善を目指す先進的な再生医療ですが、いくつかの課題も残されています。

移植細胞の腫瘍化や免疫拒絶反応といった医学的リスクに加え、患者ごとの効果の差や長期的な持続性の検証が求められています。また、細胞製造にかかる高コストや供給体制の整備、承認手続きの複雑さなども実用化に向けた課題です。

腫瘍化・免疫拒絶反応などの医学的リスク

リスク 詳細
腫瘍化(がん化)のリスク 分化が不完全な細胞や遺伝子変異をもつ細胞が残存し、異常増殖を起こす可能性
免疫拒絶反応 他人由来の細胞や、性質が変化した自家細胞に対して免疫が反応し、炎症や細胞死を起こす可能性

文献17)(文献18

iPS細胞治療の主なリスクに関する課題は腫瘍化と免疫拒絶反応です。

未成熟細胞や変異細胞による腫瘍化と異物認識による拒絶反応を防ぐため、細胞の品質管理と免疫制御の研究が進められています。

治療効果の個人差と長期的な持続性の課題

iPS細胞を用いたパーキンソン病治療では、患者の状態により効果に個人差があり、持続性も課題のひとつです。

また、移植細胞の量・質・分化成熟度にばらつきがあり、臨床試験では高用量群でより高い効果が報告されています。(文献2

さらに、移植細胞が神経回路にどの程度統合できるかも個人差があり、前臨床研究では移植後に細胞数が減少する報告もあります。(文献19

また、移植細胞の長期生存とドパミン分泌の持続性は未確認です。現在のデータは12〜24カ月の観察に限られています。文献2

時間経過に伴う治療効果の低下や、移植細胞の機能低下の可能性があり、長期的な安定性の確保が課題です。(文献19

製造コスト・供給体制・承認プロセスの課題

課題 詳細
製造コストの課題 細胞作製に高額な費用を要する現状。ロボットやAI導入によるコスト削減への取り組み
供給体制の課題 標準化された細胞を大量に保管する「細胞バンク」の整備の必要。安定供給体制の構築
承認プロセスの課題 長期的な臨床試験と有効性の検証を経た規制当局の承認の必要

iPS細胞治療の実用化には、医療面以外にも社会的・制度的な課題があります。細胞製造には高いコストがかかるため、機械による自動化技術でコスト削減が進められています。

多くの患者への迅速な提供には標準化された細胞を備蓄する細胞バンクの整備が不可欠です。また、有効性を科学的に証明し規制当局の承認を得るため、長期的な臨床試験と慎重な検証が求められています。

【どこで受ける?】iPS細胞を用いたパーキンソン病治療先の医療機関・治験会場

日本では、京都大学病院(京都府)において、iPS細胞から作製されたドパミン神経前駆細胞を用いた臨床試験が実施されています。文献20

また、株式会社住友ファーマも将来的な実用化を見据え、日本および海外で同様の治験を準備していると報告されています。(文献21

この治療は限られた施設での治験段階にあり、参加には条件があるため、希望される方は実施機関や公的な臨床試験情報の確認が必要です。

iPS細胞はパーキンソン病に対する新たなアプローチ

iPS細胞を用いた治療は、従来の対症療法から失われた神経を再生する根治的治療への転換を目指すものです。パーキンソン病のみならず脊髄損傷や心筋症など多様な疾患への応用が期待されています。

実用化には時間を要しますが、研究は着実に進展しており、再生医療の動向を把握することが患者の将来的な治療選択肢の拡大につながると考えられます。

再生医療を用いたパーキンソン病治療を検討されている方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、再生医療を応用した治療を提供しています。

パーキンソン病に対する再生医療は、失われた神経回路の回復を目指す点が特徴であり、脳梗塞や認知症などの神経疾患への応用も期待されています。

ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。

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iPS細胞とパーキンソン病に関するよくある質問

パーキンソン病は将来完治する病気ですか?

現時点でパーキンソン病を完全に治す治療法は確立されていません。しかし、iPS細胞を用いた再生医療の進歩により、失われたドパミン神経を再生して神経機能を回復させる研究が進んでいます。

これにより症状を大きく改善できる可能性が示されており、パーキンソン病は「根本的な治療に近づきつつある病気」といえます。

以下の記事では、iPS細胞で治せる可能性のある病気について詳しく解説します。

iPS細胞を用いた治療は保険適用になりますか?

現時点(2025年)では、iPS細胞を用いたパーキンソン病治療は保険適用外で、臨床試験段階です。

安定性と有効性の検証が進められており、今後、国の承認と制度整備が進めば、将来的に保険適用が検討される可能性があります。

参考文献

(文献1)

The Progress of Induced Pluripotent Stem Cells as Models of Parkinson’s Disease|PMC PubMed Central®

(文献2)

Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson’s disease|Nature

(文献3)

NIH National Library of Medicine National Center for Biotechnology Information|PMC PubMed Central®

(文献4)

Current approaches to the treatment of Parkinson’s disease|PMC PubMed Central®

(文献5)

Treatment Parkinson’s disease|NHS

(文献6)

iPS細胞を使ったパーキンソン病治療の実態|国際幹細胞普及機構

(文献7)

パーキンソン病に対するiPS細胞を用いた治療の臨床応用|特別プログラム抄録

(文献8)

iPS cell-based therapy for Parkinson’s disease: A Kyoto trial|PMC PubMed Central®

(文献9)

Drugmaker in Japan seeks approval for stem cell treatment for Parkinson’s|The Japan Times

(文献10)

Clinical Trials of Stem Cell Therapy in Japan: The Decade of Progress under the National Program|PMC PubMed Central®

(文献11)

iPS Cell Research Can Give Japan Lead in Regenerative Medicine|JAPAN FORWARD

(文献12)

パーキンソン病の治療を目指して|京都大学 iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)

(文献13)

Long-Term Evaluation of Intranigral Transplantation of Human iPSC-Derived Dopamine Neurons in a Parkinson’s Disease Mouse Model|PubMed

(文献14)

iPS細胞ストックを用いた移植のための新規免疫抑制法を提案~他家iPS細胞由来組織を用いた移植医療への貢献に期待~(遺伝子病制御研究所 教授 清野研一郎)|北海道大学

(文献15)

iPS細胞ストックを用いた移植のための新規免疫抑制法を提案―他家iPS細胞由来組織を用いた移植医療への貢献に期待―|国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 Japan Agency for Medical Research and Development

(文献16)

ゲノム編集技術を用いて拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞を作製|京都大学 iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)

(文献17)

Overcoming Graft Rejection in Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Inhibitory Interneurons for Drug-Resistant Epilepsy|PMC PubMed Central®

(文献18)

Human Pluripotent Stem Cell-Based Therapies for Parkinson’s Disease: Challenges and Potential Solutions|YMJ

(文献19)

Long-Term Evaluation of Intranigral Transplantation of Human iPSC-Derived Dopamine Neurons in a Parkinson’s Disease Mouse Model|MDPI

(文献20)

iPS cell-based therapy for Parkinson’s disease: A Kyoto trial|PMC PubMed Central®

(文献21)

Initiation of Company-sponsored Clinical Study on iPS Cell-derived Dopaminergic Progenitor Cells for Parkinson’s Disease in the United States|PMC PubMed Central®