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肝硬変が疑われる数値とは?血液検査での目安や対策・予防法も解説!
健康診断で肝硬変を疑われる数値が出てきた場合、より精密な検査を受けながら対策を進めていくことが欠かせません。正常な状態に戻すためにも、検査で使われる数値に関する知識は大切です。
肝硬変に関する数値や目安を知っていると、今後の治療や予防で目標を立てるのに活用できます。
本記事では、肝硬変が疑われる数値や目安、対策・予防法を解説します。なお、肝硬変の血液検査で用いられる指標や、正常とされる数値の目安は日本臨床検査医学会の基準をもとにご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
肝硬変の血液検査の指標・正常な数値の目安
肝硬変の疑いで血液検査を受ける際に、検査に使われる指標や正常な数値の目安を知っていると、結果を踏まえての対策や心の準備に役立ちます。
検査で肝機能を調べる際の指標として、以下に挙げるものが一般的です。
以上の指標を、日本臨床検査医学会の基準を参考に肝硬変が疑われる数値の目安とともに解説します。(文献1)
本章で紹介する血液検査の数値は肝硬変の可能性を示唆するものですが、確定診断には医師による総合的な判断と追加検査が必要です。数値の異常があっても自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
肝硬変の原因や症状について詳しくは、以下の記事が参考になります。
AST(GOT)
| 下限値 | 上限値 |
|---|---|
| 13 | 30 |
単位:U/L (文献1)
ASTは肝細胞がアミノ酸を生成する際に使われる酵素です。肝細胞内に多く含まれているのが特徴で、肝臓疾患をはじめとする原因で肝細胞が壊れると、血液中に漏れ出ます。
このため、高い値が出るときは、肝臓でなんらかの問題が起きていることが疑われます。ただし、ASTは心筋や骨格筋にも多く含まれるため、肝機能の検査では次に触れるALTの数値とともに確認します。
標準とされる目安は13~30単位です。ASTとALTの両方が150単位以下で、そのうちASTが高い場合は肝硬変の疑いがあります。
ALT(GPT)
| 下限値 | 上限値 |
|---|---|
| 8 | 36 |
単位:U/L (文献1)
ALTも肝細胞に多く含まれる酵素です。全体の9割程度が肝細胞に含まれているため、チェックする際に数値が極端に高いときは、肝機能の問題が疑われます。
基準値は8~36単位です。
γ-GTP(γ-GT)
| 下限値 | 上限値 |
|---|---|
| 9 | 47 |
単位:U/L (文献1)
γ-GTPは肝臓や胆管に多い酵素で、たんぱく質の分解や解毒に役立ちます。肝細胞や胆管細胞がなんらかの原因で破壊されると、血液中に流出して数値が上昇する仕組みです。
とくにアルコールに強く反応するため、日頃お酒を大量に飲む人であれば、たとえ肝障害がなくても数値が上昇します。加えて、すでに脂肪肝があったり薬剤を服用したりする方も、数値が上がるケースがあるために注意が必要です。
基準値は9~47単位で、50単位を上回っていれば肝臓の疾患が疑われます。
LDH(LD)
| 下限値 | 上限値 |
|---|---|
| 124 | 222 |
単位:U/L (文献1)
LDH(LD)は、肝細胞のほかに心筋や赤血球などに多い酵素です。通常は体内のブドウ糖をエネルギーに変換する際に活動するものの、疾患をはじめとする原因で肝細胞が破壊された際には血中に流出します。
基準値は124~222単位で、数値が高いほど肝硬変を含む肝臓疾患や心筋梗塞の疑いがあります。
ALP
| 下限値 | 上限値 |
|---|---|
| 38 | 113 |
単位:U/L (文献1)
ALPは肝臓や骨、腸などで生成され、リン酸化合物の消化のはたらきがある酵素です。ALPも胆管や肝臓になんらかの異常が発生した際に、血中に流れ出て数値が上昇します。
ALPの基準値は38~113単位で、それ以上高くなると肝硬変が疑われます。
血小板数
| 下限値 | 上限値 |
|---|---|
| 158 | 348 |
単位:10³μL (文献1)
ケガをした際に出血を止めるはたらきをする血小板の数も、肝硬変をチェックする際に使われる指標です。肝硬変は症状が進むと、肝臓の線維化(肝臓の組織が硬く変化すること)に併せて血小板の数が減っていくためです。
通常は15.8万個から34.8万個で基準とされる一方、10万個を下回った場合は肝硬変が疑われます。
総ビリルビン数
| 下限値 | 上限値 |
|---|---|
| 0.4 | 1.5 |
単位:mg/dL (文献1)
ビリルビンは古くなった赤血球を肝臓で破壊する際に生成される色素です。色が黄色であるのが特徴で、肝機能が低下すると血中に多く見られるようになります。
肝硬変の症状の1つで、皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)は、血中のビリルビンの量が増えることで発生する仕組みです。なお総ビリルビンの基準値は0.4~1.5㎎で、それ以上増えると肝臓疾患が疑われます。
数値で肝硬変が疑われるときの検査
もし、健康診断の数値で肝硬変の疑いがあるときには、より詳しく分析するために次のような検査が行われます。
以下の検査についても知っておくと、事前に心の準備をする上で役に立つでしょう。
腹部超音波検査
腹部超音波検査とは、機械が発する超音波を使って肝臓全体を観察・検査する方法です。とくに肝臓の形状の変化や表面の凸凹、脂肪肝が見られるときには肝硬変が疑われます。
ほかにも、肝臓がんが発生しているときには、がん細胞も観察できます。
フィブロスキャン検査
フィブロスキャン検査(肝硬度測定)は、肝臓の硬さを測定する検査です。肝臓に振動波を伝えることで、振動速度から肝臓の硬さを数値として検出します。(文献2)
なお、振動速度は肝臓の硬さと密接に関わっていて、硬いほど速度が速くなる傾向です。
肝生検
肝生検は肝臓に直接針を刺すやり方で組織の一部を採取し、実際に顕微鏡で観察する方法です。直接の観察によって肝臓の組織がどの程度硬くなっているのかや、炎症が出現しているのかを医師が自らの目で確認します。
ただ近年では、超音波検査が主要な検査の手段になってきているため、取り扱っていない医療機関も増えています。
胃カメラ
胃カメラも肝硬変の精密検査で推奨される手法の1つです。肝硬変を発症すると、食道や胃の血管が膨らんでこぶ状になる静脈瘤(じょうみゃくりゅう)が発生するケースがあるため、胃カメラでの検査を勧められます。
この食道・胃静脈瘤は、発生する原因の大半が肝硬変の進行によるものと考えられています。しかも、静脈瘤は膜が非常に薄い分、ちょっとしたはずみで大量出血や吐血、黒い便のリスクがあるために、細心の注意が必要です。以上の理由から、肝硬変の疑いがあるときは、胃カメラを使った検査も一緒に受けると良いでしょう。
肝硬変が疑われる数値が出たときの対策・予防法
もし健康診断で肝硬変が疑われる数値が出てきた場合、さまざまな対策や予防法で肝硬変のこれ以上の悪化に備えられます。主な対策や予防法は以下のとおりです。
以上の方法を活用しながら、少しでも状況を良くしていくことが大切です。
休肝日を設けるなどして飲酒の量を調整
肝硬変の予防には、禁酒や休肝日を設けるなどの対策が欠かせません。肝硬変は日頃から大量のお酒を飲むことによるアルコールの大量摂取が大きな要因であるためです。実際に近年の研究では、わが国で発症する肝硬変の原因で最も多いのがアルコール摂取であることも報告されています。(文献3)
アルコールを大量に摂取すると、肝臓で分解されるアセトアルデヒドや、肝臓に蓄積される中性脂肪が処理しきれなくなります。これらを放置すると、肝臓だけでなく他の消化器官にも多大な負担をかけるため、注意が必要です。
肝硬変の疑いがあるときは、ただちに飲酒をやめて適切な治療に臨みましょう。また、現在のところ肝硬変の可能性が低い方も、週に2~3回は休肝日を設けて肝臓をいたわるべきです。
食事の栄養バランスや量に注意
肝硬変の治療や予防には、食事の栄養バランスや量への注意も有効な対策として挙げられます。
主食・主菜・副菜を一通りそろえた献立での食事のほか、損傷が進んだ肝臓の回復に欠かせないたんぱく質の意識的な摂取がポイントです。具体的には肉類だけでなく、魚介類・卵類・大豆類を使った料理を口にするのがおすすめです。
栄養バランス以外にも、食事の量や回数も意識します。食べすぎると肝臓に脂肪肝が蓄積され、より肝硬変を悪化させる原因になるためです。このため腹八分目程度がちょうど良いでしょう。
食べる回数も1日3回が基本です。朝食を抜くなどして1日の食事回数を減らすと、肝臓が蓄えていた栄養分で足りないエネルギーを補てんしようとするため、ただでさえ弱っている肝臓に負担がかかります。
便秘対策
肝硬変が疑われる場合は便秘対策も大切です。便秘になると腸内でアンモニアを発生させる細菌が優位になり、健康な人であればそのアンモニアは肝臓で解毒されます。しかし、肝硬変では肝機能の低下でアンモニアが解毒されないため、アンモニアが血中に流出した上に、脳に達すると肝性脳症を発症する場合があります。
アンモニアの解毒も肝臓に大きな負担をかけるものであるため、肝硬変の疑いがある場合は便秘対策が欠かせません。普段から野菜や果物、きのこ類のようなビタミンや食物繊維を多く含むものを摂取して、お通じを良くしましょう。
適度な運動の習慣
適度に運動する習慣も肝硬変対策に役立ちます。とくにアルコール以外の原因で肝硬変の疑いがある場合は、肝硬変の原因物質である脂肪肝を減らすことで、症状の改善が期待できます。
1日30分以上の運動を、週3回以上行う程度がおすすめです。運動の内容も、ウォーキングやジョギング、サイクリングのような少し汗をかく程度の有酸素運動が良いでしょう。なお、途中に休憩を挟みながらやる方法でも問題ありません。ただし、肝硬変対策に運動を取り入れる際には、事前に担当の医師と運動の頻度や量をよく相談しましょう。
まとめ|肝硬変が疑われる数値の把握と予防が大事
血液検査などによる肝硬変や肝機能に関する数値の把握は、今後の肝硬変の治療や予防には欠かせません。もし、血液検査で肝硬変が疑われる数値が出てきたときは、すぐにより詳しい検査を受けることが大切です。
実際に肝硬変の診断を受けたり、医師からなりかけていることを指摘されたりしたら、禁酒や節酒でお酒を控えながら、食事や運動などの生活習慣を見直しましょう。肝硬変に関係する数値に向き合うことで、肝硬変のこれ以上の悪化や将来なる可能性を防ぐ上で重要です。
肝硬変が判明した方は、再生医療による症例記事も参考までにご覧ください。
肝硬変の数値に関するよくある質問
肝硬変の診断基準は?
肝硬変の診断基準は、血液検査で肝機能などに関係するASTやAGTなどを確認します。もし数値が正常値を逸脱している場合は、腹部超音波検査をはじめとするより精密な検査を行います。血液検査や精密な検査の結果を総合して、肝硬変かどうかを判断する流れです。
肝臓の数値がどのくらいであれば入院が必要?
肝臓の数値で入院が必要な目安は以下のとおりです。
| 項目 | 入院が必要な目安 | (参考)正常とされる数値 |
|---|---|---|
| AST | 500U/L以上 | 13~36U/L |
| ALT | 500U/L以上 | 8~36U/L |
| γ-GTP | 500U/L以上 | 9~47U/L |
| ALP | 400U/L以上 | 38~113U/L |
| 総ビリルビン数 | 10㎎/dL以上 | 0.4~1.5㎎/dL |
ただしこれらは参考値であり、実際の治療方針は医師が全身状態を総合的に判断して決定します。
肝臓の数値が急に上がる原因は?
肝臓の数値が急に上がる原因には肝臓の疾患のほか、過度な飲酒や服用している薬剤の影響、栄養バランスの偏った食事などさまざまな要因が挙げられます。必ずしも肝臓疾患によるものではないものの、場合によっては医師への相談がおすすめです。
肝臓で高い数値が出るのはストレスが原因?
ストレスが原因で肝臓の数値が上がる場合はあり、ASTとALTが上昇します。ストレスを受けると交感神経が優位になる一方、肝臓を動かす際に欠かせない副交感神経が機能しないためです。副交感神経が機能しないことで肝細胞が損傷し、中に含まれるASTやALTが血液中に流出すると数値が高くなります。
参考文献
(文献1)
臨床検査のガイドライン JSLM2024|日本臨床検査医学会
(文献2)
関谷千尋・矢崎 康幸・高橋 篤・沼崎 彰・並木 正義 (1979) 腹腔鏡による肝硬度測定に関する研究 ―新しい肝硬度計の試作― | 日本消化器内視鏡学会雑誌











