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脳幹出血|重症化はもとより生存率が問題!発症時治療の大切さと、その後の見通し(予後)を医師が解説 脳出血の中でも、脳幹出血(brainstem hemorrhage)は生存率が低いと言われています。それは、脳幹という生命維持にとって大切な部分の障害が起こってしまうからです。 重症である場合は、重度の意識や呼吸・循環障害をきたします。治療を行っても、意識回復せずに、脳死状態に陥ってしまったり、亡くなってしまったりすることもあります。 出血量が多くなくても、麻痺などの後遺症が残ると入院期間が長引いてしまいます。 この記事では、脳幹出血を起こした場合にどんな症状をきたすのか、そして治療や予後(治療の経過、見通し)について解説していきます。 脳幹とはなにか 「脳幹」は中脳・橋・延髄という3つの部位から成り立っています。この部位には様々な神経の細胞や、そこから伸びる神経線維があります。感覚を脳に伝えたり、脳から手足などに指令を送ったりするための信号を伝達しています。 また、意識を保ったり、呼吸や血液の流れを調整したりと、生きていく上で重要な役割を担っています。 脳幹出血とは 脳出血とは脳にはりめぐらされた血管が破れてしまい、脳の中に出血を起こす病気です。脳出血が脳幹に起こると、「脳幹出血」と呼ばれます。脳出血全体のおよそ1割程度が脳幹出血とされています。 脳幹出血のほとんどは橋の出血です。そのため、「橋出血」という言葉は脳幹出血とほぼ同じ意味で使われることがあります。 多くの場合、原因は高血圧です。血管に非常に高い圧がかかり、破れてしまうことで起こります。脳は柔らかい組織で、血が広がっていくため、広い範囲に出血をきたしてしまいます。 一部の患者さんでは、血管の奇形が出血の原因になることがあります。高血圧による出血よりも、若い方に多いのが特徴です。代表的なものは、海綿状血管腫という血管が塊になったものです。血管奇形が原因だと、出血量は比較的少なく、症状が軽く済むことが多いとされています。ただし、繰り返し出血を起こすことも少なくありません。 脳幹出血の症状について 出血が少なく、軽症であれば、出血部位により多彩な症状をきたします。 脳幹出血の前兆の可能性として、初期に感じる軽症の症状の一例を挙げると下記のようなものがあります。 軽症の症状例 ・複視:ものが二重に見える ・顔の感覚や運動の障害 ・手足の運動や感覚の障害 ・運動失調:バランスが取れずにふらつきが起こる ・嚥下の障害 脳幹出血以外の脳血管疾患でも、初期症状として起こる可能性があります。このような異変を感じたら、早い段階での受診が必要です。 出血が多い場合は、重篤な意識障害・呼吸障害をきたします。当初は意識あり、自発呼吸ありという状況でも、急激に悪化し、短時間で死に至ることもあります。 特に予後の悪い症例では、下記のような症状が認められます。 重症の症状例 ・昏睡など重篤な意識障害 ・異常な呼吸パターン ・瞳孔異常:瞳孔不同(左右の黒眼大きさが異なる)、縮瞳(黒眼が小さい)など ・除脳硬直:筋肉が過剰に緊張し、手足が伸びきった状態 ・両手両足の麻痺 ・中枢性高熱:体温調節の中枢の障害による高い熱 脳幹出血の予後について 高血圧による脳幹出血では、重篤な場合は、急速に体の状態が悪化し、発症して数時間〜数日で亡くなってしまいます。脳のすべての働きがなくなり、人工呼吸器などのサポートがなければ生命を維持できない、「脳死」状態となってしまうこともあります。 もし一命を取り留めても、脳の障害を受けた範囲が広いと、後遺症が長く残ります。 血管の奇形によるものでは、症状は軽く、すぐに回復することもあります。一回の出血で命に関わることはほとんどありません。ただし、海綿状血管腫は、出血を繰り返すことで徐々に大きくなっていきます。そうなると、やはり重い後遺症に悩まされるかもしれません。 脳幹出血の治療について 高血圧による出血の場合は、基本的には血圧を下げ、体の状態を保つ保存的治療が最優先されます。 脳幹はすでに出血でダメージを受けており、手術で状況をより悪化させてしまう危険性が高いのです。そのため、手術適応は非常に限られます。 血管奇形が原因の場合は、状況によっては手術が検討されます。ただし、出血直後ではなく、時期を見て行う場合が多いです。 脳幹という重要な部分の手術は合併症リスクも高いです。手術するべきか、またそのタイミングについては慎重に判断しなければなりません。 脳幹出血についてよくあるQ & A Q 脳幹出血を起こすと、どのくらい入院が必要になりますか? A 脳幹出血単独でのデータはありません。厚生労働省の統計では、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳卒中」全般では平均入院期間は77.4日となっています。脳卒中を起こすと、神経にダメージが起こってしまうからです。 神経の回復は他の組織よりも遅く、麻痺や感覚障害などは完治しにくいものです。一番危ない時期を過ぎても、その後の体力の回復・リハビリテーションに時間がかかってしまうことが大きいでしょう。 Q 脳幹出血を起こさないために、どのようなことに気をつけたらいいでしょうか? A 一番重要なのは血圧の管理です。そして適切な運動を心がけ、減塩に努めましょう。すでに治療を受けている方は、しっかりと通院を続けてください。血圧が下がったからといって自己判断でお薬をやめないようにしましょう。 脳ドックなどで血管奇形が見つかった場合でも、出血症状がなければすぐに手術適応になることはありません。ただし、慎重な経過観察が必要になります。この場合も、血圧の管理は必要です。 まとめ・脳幹出血|重症化はもとより生存率が問題!発症時治療の大切さと、その後の見通し(予後)を医師が解説 脳幹出血は時に死に至ることもある恐ろしい病気です。命に関わらない場合も、一度発症すると重い後遺症を残してしまう可能性があります。 予防の第一歩は適切な血圧管理を行い、健康的な生活を送ることにあります。定期的な健康診断を受け、必要な方は治療をしましょう。脳幹出血を起こさない為には、日常の予防が大切です。ご参考にしていただければ幸いです。 ▶万が一、手術後に後遺症が残ってしまった場合には、再生医療である幹細胞治療が適応になります。もし術後の後遺症にお困りであれば、ぜひ一度当院にご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=pSaJBptY3Bc&t=2s No.S137 監修:医師 加藤 秀一 ▼こちらもご参考に 脳幹出血の前兆|見逃してはいけないサインと症状! <参考文献> 横沢路子. ブレインナーシング. 37(1): 94-97, 2021. 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 茂木陽介, 川俣貴一. 日本臨牀. 80(増刊号2): 320-324, 2022. 伊藤康裕. ブレインナーシング. 38(3): 432-433, 2022. 竹内和人. 脳神経外科速報. 32(3): 371-377, 2022. 厚生労働省. 令和2年(2020)患者調査の概況. 3退院患者の平均在院日数等(2023-6-8参照)
最終更新日:2024.05.01 -
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脳幹出血の予防?今すぐ見直せる3つの生活習慣! 脳幹出血とは、脳幹という呼吸や血圧を保つなどの生命活動の基本となる部分に起こる出血のことです。 その場所の性質上、脳幹出血が起こると生命に関わることもあります。 今回は、脳幹出血の原因やその症状、そして予防策として今すぐ見直したい3つの生活習慣を解説していきます。 脳幹出血はなぜ起こる? 脳幹出血(のうかんしゅっけつ)とは、脳幹という脳の部分に起こる出血のことです。 脳のイラストを以下に示します。 この中で、「脳幹」は、小脳・橋・延髄という部分の総称のことです。呼吸、体温、ホルモン調節といった、生きるために重要な働きをしています。 引用)脳(中枢神経)・皮膚各部位 脳幹出血の原因は? 脳の深刻な血管トラブルである脳卒中(脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血)の最大の要因は、高血圧であると考えられています。 高血圧によって動脈硬化が進み、血管が脆くなってしまうため、脳幹の血管が破れてしまうことがあり、これが脳幹出血です。 脳幹出血の原因としては、高血圧の他にも、食生活の乱れ、運動不足、ストレス、喫煙習慣、糖尿病、高脂血症などがあります。こうした因子が動脈硬化の原因となる可能性があるからです。 日本を含めた東アジア諸国では、脳出血の発症が欧米諸国より頻度が高いことがわかっており、遺伝子の影響も疑われています。 脳幹出血の症状と治療法 では、ここからは脳出血の症状や治療法について説明します。 脳幹出血の症状は? 脳幹出血を発症すると、吐き気やめまい、頭痛などの症状が突然現れたり、手足が動かず眼球のみが動くといった状況に陥る場合もあります。 脳幹部は先程説明したように、呼吸、体温、ホルモン調節といった、生きるために重要な働きをしています。出血量が多い場合などには、そのまま意識消失、呼吸停止が起こり、突然死してしまうこともあります。 脳幹出血の治療法は? 脳幹出血は、時間の経過とともに急速に症状が悪化します。そのため、初期症状を見逃さずに出来るだけ早く治療を受けることが、助かるためには重要です。 脳幹出血では、保存的な治療方法が基本で、血圧の管理や脳のむくみに対する対症療法などが行われます。 脳幹出血の中には、脳室内に出血が生じることもあるため、この際にはこの出血を外に出すためのドレナージ手術が行われます。 脳幹出血を予防するためには? 脳幹出血の予防にとって大切な点を、ここから解説していきます。生活習慣の見直しのために、ぜひお役立てください。 高血圧を防ぐために今すぐできる3つのこと ①減塩する 高血圧の予防に欠かせないのは、食塩の摂取量の制限です。 食塩摂取の目標は、「健康日本21(第二次)」の目標値では8g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。 日本人は、食生活として食塩の量が多くなる傾向があります。以下に、厚生労働省が発信している減塩のコツをお示ししますので、参考にしてみると良いでしょう。 1.漬物は控える 自家製浅漬けにして少量に 2.麺類の汁は残す 全部残せば2~3gの減塩になる 3.新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理 4.具だくさんの味噌汁にする 同じ味付けで薄味の調理 5.むやみに調味料を使わない 味付けを確かめて使う 6.低ナトリウムの調味料を使う 酢、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングを上手に使う 7.香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する こしょう、七味、ショウガ、柑橘類の酸味を組み合わせる 8.外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する 引用) e-ヘルスネット(厚生労働省) ②お酒を飲みすぎない 大量飲酒も脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血の全てのリスクを高くすることがわかっています。お酒はほどほどにしましょう。 飲酒の目安としては以下のようになります。 一日あたりのアルコールの目安! ・ビール: 中瓶1本500ml ・清酒: 1合180ml ・ウイスキー・ブランデー: ダブル60ml ③たばこは吸わない たばこは、がん、心臓病、脳卒中、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のすべてのリスクを高めます。 たばこを吸っている人は、今からでも遅すぎることはありません。これを期に、禁煙しましょう。 その他にも運動習慣を身につけるのももちろん大切ですが、今日からすぐに始められるものを3つ挙げてみました。日頃から体調管理に気を配り、特に高血圧については予防やコントロールをしていきましょう。 脳幹出血についてよくある質問 それでは、脳幹出血に関するよくある質問について解説していきます。 Q 脳幹出血を起こしても助かりますか? A 少しでも早く治療を受けることが大切です。 脳幹出血は、その部位の役割や特徴から、生命に直結する危険性もある病気です。しかし、早く治療を開始することができれば、命が助かる可能性ももちろんあります。 日頃から、高血圧予防などの生活習慣改善に努め、健康診断などを受けて体調管理をしておくことがおすすめです。 Q 脳幹出血は再発しますか? A 再発することがありますが、血圧のコントロールをすることでリスクが減らせると考えられます。 脳幹出血に限らず、脳卒中には再発するリスクがあります。しかし、血圧のコントロールをすることで、再出血のリスクを下げられることが期待できます。 減塩や、場合によっては高血圧の治療を行うことが大切となります。 まとめ・脳幹出血は生活習慣の見直しで今すぐ予防を! 今回は、脳幹出血とは何か、そして原因や予防策などについて解説しました。 脳幹出血は、脳卒中の中でも症状が重篤になりやすい疾患です。日頃から体調管理に気を配り、特に高血圧については予防やコントロールをしていきたいですね。この記事がご参考になれば幸いです。 ▶万が一、手術後に後遺症が残ってしまった場合には、再生医療である幹細胞治療が適応になります。もし術後の後遺症にお困りであれば、ぜひ一度当院にご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=pSaJBptY3Bc&t=2s No.137 監修:医師 坂本貞範 【参考文献】 脳(中枢神経)・皮膚各部位 脳幹出血について | メディカルノート 脳卒中|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ e-ヘルスネット(厚生労働省) アルコール|厚生労働省
最終更新日:2024.06.24 -
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脳梗塞の種類!知っておきたい合併症と治療を解説します 脳梗塞は、ある日突然、脳の血管が詰まって血流が止まることで脳の神経細胞が死んでしまう病気です。脳の血流が止まると、脳にある細胞は数時間以内に死んでしまいます。 死んでしまった脳の神経細胞の再生は非常に難しく、時に生命に関わることもあり、大きな後遺症が残る危険性があります。脳梗塞は誰にでも起こる起こる可能性がある重篤な病気です。 そこで脳梗塞の原因や症状について正しい知識を持つことが重要となるのです。 この記事では脳梗塞の原因と、3つの種類について解説してまいります。また、治療を行う上で気をつけるべき合併症と、合併症の原因ほか、脳梗塞についても記載し、脳梗塞でよくある質問もご紹介してまいります。 脳梗塞の3つの種類とは? まず脳卒中は、脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」と、血管が破れて出血する「脳出血」に大きく分けられます。 脳梗塞では神経細胞に血液を運ぶ血管の一部が詰まってしまい、神経が障害されることにより麻痺や痺れ、意識障害などのさまざまな症状を起こします。 このように脳梗塞の原因は、血管が詰まることにありますが、以下のように3つに分類されます。 1.ラクナ梗塞 動脈硬化によって細くなった血管が詰まる「ラクナ梗塞」です。 細い血管が詰まることが多く、他の種類の脳梗塞と比べて症状が軽いことが多い点が特徴です。 2.アテローム血栓性脳梗塞 血管にコレステロールが溜まった結果、そこに血の固まりができて詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」です。 最初は軽症でも、徐々に血管が詰まっていくことで症状が悪化するなど、段階的に増悪することが特徴です。 3.心原性脳塞栓症 心臓など他の部位で作られた血の固まりが血流によって脳の血管に運ばれて詰まる「心原性脳塞栓症」です。 大きな血の塊が太い血管に詰まることによって突然発症し、障害される脳の範囲が広いため重症な場合が多い点が特徴です。 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞は、高血圧、糖尿症、脂質異常症や喫煙などの生活習慣が危険因子のため、これらを適切に治療することが予防のために必要です。 一方で、心原性脳塞栓症は心房細動という不整脈が原因であることが多く、その他にも心臓弁膜症でも起こりえます。心房細動では脈が乱れ打ちになってしまい、心臓の中で血液がよどんで血栓ができてしまう場合があります。 この血栓が脳の血管に運ばれて詰まってしまうと脳梗塞を発症します。 そのため、脳梗塞のリスクが高い方は抗凝固薬という血液をサラサラにするお薬を服用して予防をする場合があります。お薬には副作用もあるため、薬のリスクや服用のメリット、デメリットを考えて治療が検討されます。 脳梗塞の3分類 脳梗塞:分類別の原因 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞 高血圧、糖尿症、脂質異常症や喫煙などの生活習慣 心原性脳塞栓症 心房細動(不整脈)、その他にも心臓弁膜症 脳梗塞の合併症とは 脳梗塞では、合併症として発熱、肺炎、脳・消化管出血、脳梗塞の再発など、さまざまなものがあります。 こういった合併症は、なぜ起こるのでしょうか。 脳梗塞の合併症の種類と原因、治療法 知っておくべき主な合併症の種類と原因、併せて治療に関して解説します。 種類:発熱 ・原因:体温は脳の中枢で管理されていて脳が障害を受けると体温調節中枢も障害され発熱することがあります ・治療:通常は解熱鎮痛薬で対症的に治療します。 種類:誤嚥性肺炎 ・原因:意識障害や、飲み込みの機能の低下で唾液や痰が肺に入り肺炎を起こしてしまうことがあります ・治療:誤嚥性肺炎と呼ばれており、抗菌薬の投与や酸素投与などを必要とする場合もあります 種類:脳出血・消化管出血 ・原因:動脈硬化は血管の色々な部位に起こり、一度脳梗塞を発症した方は再発する危険性が高くなっています ・治療:再発予防には、血液をサラサラにする薬を服用することが推奨されます※ ※血液をサラサラにする薬の副作用として、脳、胃や腸などの消化管で出血を起こしてしまう場合があります。脳出血では、麻痺の悪化、消化管の出血では貧血によって全身状態が悪化してしまうリスクがありますが、完全に予防することは困難で早期発見、対処が重要になってきます。 脳梗塞について、よくあるQ&A 普段、脳梗塞で患者様からお聞きする代表的な質問を記載しました。 Q : 脳梗塞になりやすい人の特徴は? A:脳梗塞の危険因子として生活習慣病があります。 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などが挙げられ、健診で異常を指摘されている方は早めに治療を開始することが勧められます。 Q : 脳梗塞の前兆の症状はありますか? A:脳梗塞は突然発症するものから、前兆を伴う場合もあります。脳梗塞の前兆とは急に手足や顔の麻痺やしびれが出現して、時間が経って改善することです。 この症状は一過性脳虚血発作と言われており、動脈硬化などによって一時的に脳の血流が悪くなることが原因とされています。 一過性脳虚血発作がみられた場合には脳梗塞になってしまう危険性があり、早期に病院で治療することが必要です。 Q : 合併症を予防する方法はありますか? A:現代の医学でも合併症を完全に予防することは困難です。危険性を下げるために、発症してからすぐの間は医師、看護師の治療や指導を守ることが必要です。 また消化管出血については、胃潰瘍の既往がある方などでは胃酸の分泌を抑えるお薬を服用してリスクを下げる方法が取られる場合があります。 まとめ ・脳梗塞とは、原因と種類!知っておきたい合併症と治療について 脳梗塞には、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3つがあり、それぞれ発症の原因や重症度が異なるのが一般的です。 また、治療の過程では、合併症として発熱や肺炎を起こす場合があったり、再発予防のための血液をサラサラにする薬を使用することが原因となって出血を起こしてしまうことがあります。 そのため、脳梗塞を起こさないようにすることが最も重要ですので、脳梗塞に関する正しい知識を持ち、予防に努めた上で症状がある時には早期発見・治療することが大切です。 健康で充実した生活を送るためにも、ぜひ参考にしてみてください。 No.126 監修:医師 坂本貞範 ▼発症、前兆を見逃さないため以下も参考にされませんか 脳梗塞の前兆を逃さない!初期症状のチェックリストはこちらです!
最終更新日:2024.06.24 -
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頭に「こぶ」のようなものができて押すと痛い!考えられる疾患についてご説明します シャンプーのときや髪をかきあげた時など、ふとしたときに頭に「こぶ」のようなものに触れた経験はありませんか? 放置して何事もなかった場合にはよいですが、押したり触れたりすると痛みがある場合は不安ですよね。 今回は、頭にできる「こぶ」の原因と受診の目安について解説します。 コブの種類 ・皮下血腫(たんこぶ) ・感染(ニキビ) ・皮膚炎 ・腫瘍(良性、悪性) 頭にできる「こぶ」の種類 頭のこぶは大きく、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍に分けられます。 皮下血腫(たんこぶ) 皮下血腫はいわゆる「たんこぶ」のことです。頭をぶつけた際に、皮膚の近くの血管が切れてしまい、血溜まりを作ってしまった状態です。 皮下血腫自体は特に治療をせずに治ることが多いですが、頭を打撲して嘔吐したり、意識が悪くなったり、打撲した前後のことを覚えていなかったりする場合にはすぐに受診をするようにしましょう。 感染(ニキビ) ニキビは皮脂が毛穴を閉塞することで、アクネ菌が増殖することで炎症を起こします。ニキビといえば顔のイメージがありますが、頭皮にも起こることはあります。 また、毛包炎・毛嚢炎は毛穴に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が感染することで炎症を起こす疾患です。どちらも菌により炎症が起こるので、押すと痛い、赤く腫れることがあるのが特徴です。 皮膚炎 頭皮がシャンプーや整髪料、髪染めなどに反応してしまい、炎症を起こす接触性皮膚炎もこぶ・できものの原因になります。ただれ、水ぶくれが多く、大きなしこりはあまり起こりません。原因となるものを使用しないことが重要です。 腫瘍 腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。医療機関でのご相談をお勧めします。 良性の腫瘍(粉瘤、脂肪腫) 良性の腫瘍には「粉瘤(ふんりゅう)」があります。粉瘤は、毛穴の一部に皮脂などが溜まって、袋状となった良性の腫瘍です。柔らかいしこりとして触れ、痛みはあまりありません。 内部で細菌が増殖して炎症を起こしてしまうと、痛くなったり膿が出たりすることがあります。脂肪腫も良性の腫瘍です。同じく、柔らかいしこりとして触れます。 悪性の腫瘍 頭皮にできる悪性腫瘍には、「有棘細胞癌」や「悪性黒色腫」があります。触るとごつごつしたり、硬いという特徴があります。また、潰瘍となって液体が出てきたり、血がでたりすることもあります。 一般に良性のものでは大きさは変わらずに経過することが多いです。しかし、小さな「イボ」として感じていたものがどんどん大きくなっている、血が出ているなどは悪性を疑う情報となります。 「こぶ」と脳卒中との関係は? 頭は外面から、皮膚、骨膜、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳とたくさんの層構造になっています。 頭蓋骨という非常に硬いもので分け隔てられているので、皮膚のできものと脳卒中に直接的な関係はありません。イボやこぶとして触れる病気は、主に頭の皮膚に起こることが多いです。 逆に脳卒中になっても、頭皮にこぶができることもありません。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤も、皮膚の上から触れるものはありません。脳卒中が考えられる症状は、突然起こることが特徴です。 脳の発症部位によりその症状は様々ですが、代表的な脳卒中の症状は、以下のようなものです。 脳卒中の症状 ・言葉が出づらい ・左右どちらかの手足が動かしにくい ・意識の状態が悪い 注意!頭の「こぶ」で受診したほうがよい場合 こぶや、しこりが赤く腫れて痛い場合、膿が出てくる場合は感染症の可能性があります。切開や抗菌薬を投与したほうが速やかに治る可能性があるため、数日待っても良くならない場合は受診をおすすめします。 こぶやしこりが、大きくなっていたり、数が増えたりする場合は悪性腫瘍を考えなければなりません。早めの受診をしましょう。 また、頭をぶつけた際にできたこぶが、どんどん大きくなっている、意識の状態が悪くなっている、話しづらさや手足の動きづらさが出てきたりするなどの場合は、早急に受診をするようにしましょう。 早急に受診してください!(皮膚科、形成外科、脳外科) ・こぶや、しこりが赤く腫れて痛い: 感染症の可能性 ・膿が出てくる場合: 感染症の可能性 ・こぶやしこりが、大きくなっている: 悪性腫瘍の可能性 ・こぶやしこりがの数が増えてきた場合: 悪性腫瘍の可能性 ・頭をぶつけて:「こぶ」が大きくなってきた場合 ・頭をぶつけて:意識の状態が悪くなってきた場合 ・頭をぶつけて:話しづらさ、手足の動きづらい場合 頭の「こぶ」についてよくある質問 頭にできるコブについて患者様から、よく頂く質問から抜粋して記載します。 Q: 小さな時からある頭の「こぶ」は、どうしたらよいですか? A:幼少期から長期間ある場合は、重篤な病気である可能性はそこまで高くはないでしょう。見た目として気になる場合、赤みや痛みなど新しい症状がでた場合、大きくなる場合は受診するようにしましょう。 Q:頭の「こぶ」が心配なとき、何科を受診したらよいですか? A:皮膚科や形成外科を受診するのが良いでしょう。 頭のこぶやしこりが気になるのなら、皮膚科もしくは形成外科を受診しましょう。頭をひどくぶつけて、皮下血腫(たんこぶ)ができた際には、脳外科を受診するのが良いでしょう。 受診する際は、いつ頃からできているか、できものに心当たりはあるか、痛みはどうか、他に症状がないかを言えるようにすると、正確な診断に繋がりやすいです。 Q:頭の「こぶ」に痒みがある場合、どうしたらよいですか? A:まずは頭を清潔にしましょう。シャンプーや整髪料を変えたなどがあれば、一時的に使わずに様子を見ましょう。かゆみがひどくて掻きむしってしまう場合は、皮膚科などを受診するとよいでしょう。 まとめ・頭のこぶに少しでも異常を感じたら早急に受診をしよう! 頭の「こぶ」は自分では見えない部分なのでより不安にも感じやすいと思います。 「こぶ」の原因は、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍などさまざまな原因が考えられます。一般的には良性のものが多いのですが、痛みや腫れがひどい場合や、悪性腫瘍が疑われる場合は、早めの受診をお考え下さい。 尚、頭皮の「こぶ」と脳卒中との関係はありませんし、頭のこぶが脳卒中の前兆というわけでもありません。脳卒中の症状は突然起こることが特徴的であり、言葉が出づらい、手足の動きが鈍くなるなどの症状があります。 頭に「こぶ」ができた際は、症状や変化に注意し、必要に応じて早めに医師の診断を受けることが重要です。 特に痛みや膿がある場合、大きくなっている場合、数が増えている場合は、感染症や悪性腫瘍の可能性があるので、お近くの皮膚科や形成外科、脳外科など、早急に受診をしたほうが良いでしょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S125 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭のことについて以下もご覧になりませんか 頭を打つと危ない場所!危険な打ち方と症状を医師が解説!
最終更新日:2024.05.17 -
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頭痛で吐き気は危険!一次性頭痛と注意すべき二次性頭痛の見分け方 頭痛は、ありふれた疾患であり、日本人の約4割は、慢性的な頭痛持ちとも言われています。慢性的ではなくても、頭が痛いというような頭痛を感じたことがない人は、ほとんどいないのではないでしょうか。 一口に「頭痛」といっても様々なタイプがあります。国際頭痛分類ってご存知でしょうか?なんと数百種類の頭痛が示されていることに驚かれるはずです。 今回は、そんな頭痛の中でも危険な「吐き気を伴う頭痛」について、具体的にどのような病気が考えられるか、どのように対処したらよいのかなどを中心に解説します。 頭痛の種類 まず、頭痛の種類について詳しくみていきます。頭痛にはたくさんの種類がありますが、大きく分類すると「一次性頭痛」と「二次性頭痛」にわけられます。 一次性頭頭痛とは、頭痛の原因となる疾患が特定できないものをいい、二次性頭痛は原因の疾患が特定できる頭痛です。具体例としては以下の通りです。 一次性頭痛(原因を特定できない) ・片頭痛 ・緊張型頭痛 ・群発頭痛 注意が必要な二次性頭痛(原因を特定できる) ・脳卒中 ・脳腫瘍 ・髄膜炎 ・慢性硬膜下血種 ・緑内障 ・副鼻腔炎 一次性頭痛は直接、命にはかかわらない頭痛ですが「二次性頭痛」は、命に関わることもあり特に注意しなければなりません。 頭痛の種類と特徴|一次性頭痛と二次性頭痛の見分け方 ではどうやって、一次性頭痛と二次性頭痛を見分ければよいのでしょうか。頭痛診療ガイドラインでは、以下のような症状の場合は、注意が必要といわれています。 頭痛でこれらのような症状を伴う場合は、二次性頭痛の可能性があります。原因となる疾患が隠れている可能性があるため、我慢せずに病院を受診し、検査を受けることをおすすめします。 二次性頭痛が疑われる注意すべき症状(医療機関を受診する) ・発熱や意識の低下を伴う場合 ・がんや免疫不全疾患などを患っている ・急激に発症する ・今まで経験したことのない痛み ・50歳以上で初めて経験する症状 ・最近発症した新しい頭痛 ・ろれつが回らない ・目が見えにくくなる ・上記が合併している 吐き気を伴う危険な頭痛と対処法 頭痛が強いと、吐き気も伴うという方も多いかもしれません。ここからは、吐き気を伴う頭痛について、詳しく見ていきます。吐き気を伴う頭痛は、主に3つあります。脳卒中、髄膜炎、片頭痛です。 ・脳卒中 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで起こる疾患の総称です。具体的には「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つを指すことが多いです。脳卒中による頭痛は吐き気を伴うことが多く、注意が必要です。 くも膜下出血の場合は、「突然発症し、今までに経験したことがない強い頭痛」が特徴といわれています。 脳出血や脳梗塞の場合は、頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えないなどの脳神経が障害されている症状を合併します。また、頭がふらふらする感じやめまいを伴うこともあります。 このような症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。 注意すべき命に係わる頭痛 ・ くも膜下出血:突然、経験したことがない強い頭痛 ・脳出血や脳梗塞:頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えない、めまい ・髄膜炎 髄膜炎は、脳や神経を包む「髄膜」という膜に炎症が起きたものです。細菌やウイルスが原因のこともありますが、がんや薬剤が原因で起こることもあります。 頭痛や嘔吐を伴うものが多く、髄膜刺激症状と呼ばれる首を前に曲げると痛みがあるといった特徴的な症状を起こすことが多いです。発熱や下痢を伴うことも多く、風邪と間違われることもあります。 子供でも起こることがあり、子供が頭痛を訴えて嘔吐している場合はすぐに病院を受診して検査を受けるようにして下さい。 ・片頭痛 吐き気を伴う一次性頭痛として割合が多いのが、片頭痛です。 片頭痛は20〜40代の女性に多く発症し、こめかみから側頭部にかけてズキンズキンと脈打つような頭痛が生じます。また、頭痛が起きる前には、閃輝暗点(せんきあんてん)といって、視野にギザギザした光がちらつく前兆がある場合もあります。 片頭痛を発症した際には、光や音、においなどに過敏になることもあるので、暗く静かな場所で安静にするのが良いといわれています。 また、血管が開いて血行がよくなると症状が増悪するため、リラックスするために長風呂をしたり、マッサージを受けたり、お酒を飲んだりすることは逆効果なので避けましょう。 あまりにもひどい片頭痛の場合は、薬で症状を軽くすることもできるため、悩んでいる方は病院を受診するようにしてください。 頭痛でよくある質問 Q:片頭痛持ちですが、食事で気を付けることはありますか? A:赤ワイン、チョコレート、チーズ、ピーナッツ、豚肉などは片頭痛を誘発する可能性があるアミン類を含んでおり、控えるべきといわれています。 また、緑茶やコーヒーなどに含まれているカフェインは、摂取しすぎると悪化の原因となるため控えましょう。 Q:デスクワークだと頭痛が起こりやすいですか? A:ストレスや長時間のデスクワークが原因となって発症する、「緊張型頭痛」と呼ばれるものがあります。頭や首の筋肉の緊張によって引き起こされるといわれており、頭を締め付けられるような痛みがおこります。同じ姿勢を長時間続けることで悪化するため、30分に1回程度は休憩をとるようにしましょう。 また、筋肉の緊張をほぐすために、肩や首などをこまめに動かすストレッチを行いましょう。 まとめ ・頭痛で吐き気は危険!一次性頭痛と注意すべき二次性頭痛の見分け方 今回は頭痛について解説しました。 頭痛は、誰もが経験したことがある一般的な症状であり、日本人の多くがその経験をしています。しかし、頭痛にはさまざまなタイプがあり、一次性と二次性の区別が重要です。 一次性頭痛は、直接命に関わることは少ないですが、二次性頭痛には命にかかわる可能性もあります。特に吐き気を伴う頭痛は、脳卒中や髄膜炎など深刻な疾患のサインであることがあります。 このような症状がある場合は、すぐに医師の診察を受けることが重要です。また、片頭痛のような一次性頭痛でも、適切な対処が必要な場合があります。 安静にし、リラックスすることで症状を軽減できる場合もありますが、症状がひどい場合は医師の指示に従うことが大切です。 頭痛はよくある症状ですが、たかが頭痛と甘く見ず、いつもと違う、何か違和感を感じられたら早めに病院を受診するようにしてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.124 監修:医師 坂本貞範 ▼頭痛に関し以下も参考にされませんか 頭が痛い、重いとき…頭痛の種類と、それらの原因と治し方!医師が解説
最終更新日:2024.05.23 -
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脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程について 脳出血とは、脳内の血管が破れて脳内で出血する病気です。これにより神経組織がダメージを受け、命を左右し、さまざまな後遺症を起こす危険性があります。 脳出血は、日本における三大死亡原因のひとつである重篤な病気です。社会復帰できる方もいますが、中には意識不明、重症のまま意識が戻らず亡くなってしまう場合もあります。 脳出血を起こしてしまった方や、ご家族にとって、余命はどのくらいなのか、生存率・死亡率はどの程度で、退院後の生活はできるのか、長生きできるのかなど、多くの心配事に悩まされることでしょう。 この記事では、脳出血を起こした後の予後予測、生存率や回復過程について解説していきます。 脳出血後の予後予測 脳卒中は、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血の3つに分けられますが、2022年の脳卒中データバンクでは、「脳出血」の頻度は18.0%と報告されています。また、脳出血の死亡率は高く、発症した方の13.8%が入院中に亡くなっています。 脳出血の発症で死亡してしまう方が多いタイプとは 死亡してしまう方が多いタイプとして、血腫の量が多い、混合型の出血、脳幹の出血、急性閉塞性水頭症を合併している場合などがあります。血腫量が多い場合は血腫の除去、水頭症に対しては脳脊髄液を排出して圧力を下げるドレナージ手術の方法があり、同じく2022年のデータでは手術率は12.6%と報告されています。 このように、脳出血の大部分は保存的に治療されますが、約1割程度は手術を必要とする重症であると考えられます。 脳出血の予後は発症時の意識レベルが重要 脳出血の重症度、死亡率に影響するものとして、発症時の意識レベルがあります。一般的に発症時に意識状態が悪いほど、後遺症も重くなり、死亡率が高くなってしまいます。 また、時間経過とともに、症状が進行することも予後が悪い原因となります。実際に2022年のデータでは、脳出血において19.6%の方は発症時に昏睡状態(Japan Coma Scale 100以上)を呈しています。 脳出血後の5年生存率は報告によってばらつきがありますが、27〜57%程度と報告されており、発症した時の年齢が高齢で意識状態が悪い方ほど死亡率が高くなってしまいます。 参照:「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握(日本脳卒中データバンク)報告書 2022年」 参照:「PubMed®初めての脳卒中後の5年生存率」 脳出血の回復過程の3段階 脳出血を起こした後の回復過程は、急性期、回復期、生活期の3段階に分かれていて、それぞれの段階に応じた治療、リハビリが必要です。 回復過程は3段階 急性期(発症~3か月) 急性期は発症直後から2週間程度の期間です。 出血が広がらないように血圧を下げる治療や呼吸・循環を補助する治療が行われ、場合によって手術治療が行われます。急性期のリハビリは筋肉が衰えたり、関節が固くならないように無理のない範囲で行います。 回復期(3~6か月) 回復期は、急性期の終了後の3か月から6ヶ月までの期間です。 麻痺や動作の障害に対しては理学療法や作業療法を行い、しゃべり辛さ、飲み込みの障害に対しては言語聴覚療法を行います。 生活期(6か月以降) その後の生活期のリハビリでは軽めの運動を取り入れながら、生活の範囲を広げ、動作に慣れるリハビリを行っていきます。 実際に、2022年の脳卒中データバンクでは脳出血後のリハビリは、理学療法を86.4%、作業療法を84.4%、言語聴覚療法を74.3%の方が受けており、55.4%の方がリハビリ目的に転院できています。 しかし、同じく2022年のデータでは、自宅に退院できた方は約26%で、リハビリ目的以外の病院への転院が12.4%、その他の施設(介護老人保険施設、老人ホーム等)への退院が5.4%となっており、急性期を過ぎた後に自宅へ退院できる方は少なく、約2割程度の方は生活機能が低下してしまっていて、療養型病院への転院や施設へ入所していることがわかります。 脳出血についてよくある質問 Q: 脳出血の予防方法はありますか。 A:脳出血の原因は、高血圧性脳出血が約8割と最多です。 高血圧は基本的には無症状ですが、動脈硬化による脳梗塞や脳出血の原因になってしまうため、異常値を指摘されている方は早めに医療機関を受診して治療することをお勧めします。 Q:意識障害はよくなりますか。 A:脳出血の症状と治療は、出血した場所、出血の量によって異なります。 意識障害を起こしている場合は、脳幹という神経が集まっている部位の出血や、出血の量が多く脳が浮腫を起こしている可能性があります。 高血圧に対する降圧、脳の浮腫を和らげる点滴、呼吸状態が悪い場合には、呼吸の補助をするための人工呼吸を行い、場合によっては血腫を取り除くために開頭手術などが必要となることもあります。これらの治療によって意識状態が回復する場合もありますが、損傷した神経自体を回復させる治療はまだないため、重度の意識障害では症状が残ってしまう可能性が高くなると言われています。 そのため、脳出血を発症しないように、血圧管理を含めて日常的な生活習慣に気をつけることが重要です。 Q:脳出血はどこまで回復しますか。 A:脳出血による後遺症、回復の程度は、発症時の症状とその後リハビリにより大きく異なります。 発症した時に意識障害がある場合や高度の麻痺がある場合には、一般的に後遺症が残ってしまいます。また、発症後6ヶ月までは回復する見込みがあり、その期間に集中してリハビリを行うことが勧められます。 ご自身の想定される回復の程度、リハビリが必要な期間について担当の医師とよく相談するようにしましょう。 まとめ・脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程とは 脳出血は、生命はもちらん、一命を取り留めてもその後の生活に関わる重症な病気であり、発症の予防、早期治療が最も大切です。 現代の医療でも損傷された神経を完全に回復させることはできませんが、適切に治療をすることによって残された機能を回復させることができます。少しでも発症前の生活に戻れるようにリハビリを頑張っていただくことが必要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.123 監修:医師 坂本貞範 ▼脳出血の情報はいかにもございます。 脳出血の後遺症、寝たきりにならないためのリハビリについて
最終更新日:2024.03.29 -
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頭を打つと危ない場所!危険な打ち方と症状を医師が解説! 日常生活のなかで、頭を打つことは少なくありません。立ち上がろうとして頭を打った、転倒した、階段から落ちた、交通事故で頭をぶつけた、殴られた・・・など、さまざまなエピソードがあります。 頭を打つとより危ない場所・安全な場所というのはありませんが、ぶつけた部位と強さにより様々な危険な症状が出ることがあります。では、どのような場合が危険なのでしょうか。 今回の記事では、頭を打った場合に見られる危険な症状や、考えられる疾患について詳しく解説していきます。 危険な頭の打ち方 頭を打った際、「強い力がかかって頭をぶつけた場合」には注意が必要です。 例えば、以下のような場面などが考えられます。 危険な頭の打ち方 ・1m以上の高さから転落した ・階段で5段以上の高さから落ちた ・受け身をとらずに転倒した ・交通事故で頭を打った ・車の外に放り出された ただし、高齢な方や薬(特に血液を固まりにくくする薬剤)の影響もあるため、同じ打ち方だから大丈夫ということはなく、その人ごとに判断する必要があります。 また、どのような原因で頭をぶつけたかも重要です。 例えば、「気を失って転倒して頭をぶつけた場合」には、心疾患や不整脈などの別の失神の原因も探さなければなりません。「急に手足の力が抜けて転倒した場合」には、脳卒中などの可能性もあります。 受診をした際には「どのようにぶつけたか」を伝えられるとよく、さらに目撃者がいれば伝わりやすいでしょう。 頭を打った際に危険な症状 誰が見ても重症な場合(明らかに意識の状態が悪い、手足の一部が動かない、血が止まらないなど)は救急で受診をしましょう。 一見重症に見えなくとも、以下の症状がある場合にはできるだけ早く医師の診察を受けるようにしましょう。 医師に相談すべき状態 ・何回も嘔吐する ・頭をぶつけた理由や受傷前の記憶がない ・けいれんがある ・耳や鼻から液体(血も含む)が出てくる ・目の周りや耳の後ろが黒くなる また、自分で症状を言うことができる人もいますが、小さな子供や高齢者では症状を言えないことがあります。何かがおかしいと思った際には、周りに助けを求め、子供でも大人でも悩まず受診するほうがよいでしょう。 頭を打ったことで起こること 大きく急性期(頭をぶつけてすぐ)と慢性期(頭をぶつけてしばらくたってから目立つようになる)に分けられます。代表的なものを以下に記載します。 急性硬膜下血腫・急性硬膜外血腫 脳と骨の間には膜が3層(外側から硬膜、くも膜、軟膜)あります。 頭をぶつけた数時間以内に、硬膜と脳の間で出血するものを「急性硬膜下血腫」、骨と硬膜の間で出血するものを「急性硬膜外血腫」といいます。 急性硬膜下血腫は受傷すぐから意識が悪くなることが多いのに対し、急性硬膜外血腫は受傷しても数時間ほど症状が出ない「意識清明期」があるのが特徴です。 他の症状には、手足の麻痺、悪心・嘔吐、けいれん、瞳孔の左右差などがあります。いずれもCTで診断でき、重症な場合には緊急で手術を行います。 外傷性くも膜下出血 頭をぶつけたことにより、くも膜と脳の間で出血が広がった状態です。 くも膜下出血はほとんどが脳動脈瘤(血管の一部が「こぶ」のようにふくらみ、破れやすくなった状態)によるものであり、頭をぶつけた場合は区別して外傷性くも膜下出血と呼ばれます。 基本は入院での経過観察で、脳圧が高くなる場合は投薬や手術などを行います。 脳挫傷 頭部打撲により、脳そのものが損傷してしまうことです。 頭をぶつけた場合は、ぶつけた部分とその反対の部分を損傷する場合があります。損傷された部位により、片麻痺(左右どちらかの手足が動かしにくい)や失語症(言葉が理解できない、言葉を表に出しにくい)、高次脳機能障害(後述)などがあります。重症な場合は、意識が悪くなったり呼吸がうまくできなくなったりします。 呼吸・循環(血圧や脳血流量)・脳圧・体温をコントロールを第一に行い、それでも進行する場合は手術も検討されます。 高次脳機能障害 頭部外傷では後遺症として、高次脳機能障害を起こすことがあります。 高次脳機能障害には以下のようなものがあります。 記憶障害 ・新しくものを覚えられない、思い出せない 注意障害 ・作業や生活の中で集中できなくなる ・気が散りやすくなったりする 社会的行動障害 ・自分から何もしようとしない ・「無関心」や社会常識から外れた行為が目立つ ・怒りやすい、性的に逸脱する行為、ギャンブルに熱中しすぎる 遂行機能障害 考えて、判断して、課題を解決するという一連の流れができない 頭を打った際のよくある質問 Q.頭を強くぶつけたが、どのようなときに受診したらよいですか? A.意識が不明瞭、手足の麻痺、嘔吐、転倒の記憶がない、けいれんなどがある場合には受診しましょう。 また、高齢者や基礎疾患のある方(特に血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合)も受診したほうがよいです。 Q.何科を受診すればよいですか?その際に注意することは? A.受診するのは脳神経外科や脳神経内科を検討しましょう。 また、顔面のぶつけ方により、眼科や耳鼻咽喉科、歯科などの受診をするのが良いです。受診する際は、どのようにして頭をぶつけたかを伝え、目撃者がいる場合は様子を聞くのが良いです。 普段飲んでいる薬があれば、忘れずに伝えてください。 まとめ・頭を打った際の危険な症状を見逃さないように!迷わず受診しよう 今回の記事では強く頭をぶつけた場合に、どのような症状が出ると危険かを解説しました。 頭を打つことは日常生活でよくあることですが、危険な症状が発生する可能性もあることを知っておきたいものです。特に、強い力がかかって頭をぶつけた場合や、頭部を損傷するような事故に遭った場合には注意が必要です。 頭を打った際には、以下のような危険な症状に注意する必要があります。 ・ 嘔吐が続く ・ 頭をぶつけた理由や受傷前の記憶がない ・けいれんがある ・耳や鼻から液体(血も含む)が出てくる ・目の周りや耳の後ろが黒くなる また、急性期と慢性期の両方にわたって、頭を打ったことによって生じる様々な症状があります。急性期では、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷などが起こる可能性があります。 慢性期では、高次脳機能障害が後遺症として現れることがあります。 頭をぶつけないことが第一ですが、もしぶつけてしまった際には、症状や事故の状況をしっかりと把握し、「何かがおかしい」と感じた際には、病院の受診を躊躇わないようにしましょう。 また安全な選択をするために、周囲の人々のサポートも活用しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S122 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭痛に関する記事も参考にされませんか 頭痛で吐き気を伴うと危険!考えられる病気やその対処法
最終更新日:2024.04.25 -
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脳出血とストレスの関係性について!その種類と部位を分かりやすく解説! 脳出血とは脳卒中の一種で、脳内の血管が破裂することで出血する病態のことです。脳出血が起きると、出血によってあふれた血液が血腫(血の塊)を形成し、脳神経を圧迫することで多様な症状を生じます。 本記事では脳出血の原因、症状、そしてよく耳にする“脳出血とストレスの関係性”について詳しく解説していきます。 脳出血とストレスの関係性とは ストレスは万病の元とされており、脳出血の一因となります。 人間はストレスを受けると、副腎からコルチゾールという「ストレスホルモン」が多量に分泌されるようになります。 コルチゾールは適度であれば、生活リズムの調整や代謝促進などを行ってくれますが、過剰に分泌されることで、血管が収縮し血圧が高くなり、脳出血の発症リスクが高めてしまいます。高血圧や血圧の乱高下は、血管への圧力となってしまうためです。 ストレスによって生じる脳出血リスク また、ストレスによって脳出血が生じやすい、下記のような状況にも注意が必要です。 睡眠不足による動脈硬化リスク 過剰なストレスによって脳や体は緊張状態となり、睡眠障害となることがあります。不眠症によって動脈硬化が進むこともあり、脳出血の要因となります。 暴飲暴食による高血圧リスク ストレス解消をお酒や食事に求める方も多いと思われます。適度な酒量であれば、問題となることは少ないですが、過度の飲酒が続くと血圧が上昇し、脳出血のリスクを高めてしまいます。 食事も食べ過ぎると胃や腸に負担をかけ、生活習慣病の原因になり、脳出血を生じやすくなります。 喫煙による動脈硬化リスク ストレスにより喫煙の本数が多くなることもあるかと思いますが、喫煙も当然のように動脈硬化のリスクの一つです。 お酒に関しては適量であれば血流が改善する面もありますが、喫煙に関しては悪影響しかありません。 脳出血の種類 脳出血の原因としては、高血圧などの生活習慣が関与しているイメージがありますが、その他にも多様な原因疾患があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 高血圧性脳出血 脳出血の中で最も頻度が高いのが、「高血圧性脳出血」で、その名の通り高血圧が主な原因です。 高血圧は動脈に強い負担をかけるため、長期間高血圧に晒されることにより、血管が脆くなり出血してしまいます。ストレスによる影響が最も強いのはこのタイプとなります。 血管腫 血管腫とは、血管にできるコブのような塊のことです。血管が拡張したり増殖することによって生成され、多くは良性ですが血管腫ができると、脳出血を招いてしまうことがあります。 血管腫の中でも海綿状血管腫は出血するリスクが高く、稀に多発することがあります。出血自体も繰り返すことが多いのが特徴で、出血を繰り返すごとに血腫が成長し、脳神経などを圧迫することでてんかん発作を引き起こすことがあります。 動静脈奇形 動静脈奇形とは、胎生期に起こる先天性異常で、血管に奇形が生じる状態のことです。 脳内の動脈と静脈は毛細血管を経由してつながっていますが、動静脈奇形が起きると、動脈と静脈が直接つながるようになります。結合した動脈と静脈の間には、「ナイダス」という異常な血管の塊が生じ、これは通常の血管と比べて非常に脆くなっています。そこに動脈の血流が直接静脈に流れ込むため、血管に負担がかかり、破れることで出血が生じます。 硬膜動静脈瘻(:こうまくどうじょうみゃくろう) 硬膜動静脈瘻は、脳にある硬膜のなかで、動脈と静脈が直接つながってしまう状態のことです。上述した動静脈奇形が先天異常であるのに対し、硬膜動静脈癭は後天的に発生しますが、その原因についてまだ詳しいことはわかっていません。 動脈の血流が静脈に直接流れ込むことで、静脈の血管が耐えきれずに破れてしまい出血が生じます。 脳腫瘍(悪性) 脳腫瘍(悪性)は脳に発生する癌のことで、腫瘍自体が破裂することにより出血することがあります。 脳アミロイド血管症 脳アミロイド血管症は、高齢者に多い脳出血で、脳血管にアミロイドという異常な物質が溜まることで生じます。アミロイドが沈着することで血管が脆くなり、最終的に出血に至ります。 脳アミロイド血管症による脳出血は、再発を繰り返すことが特徴で、脳出血と同時に認知症を発症することも少なくありません。 脳出血は上記のように多様な原因がありますが、高血圧などの生活習慣病を患っていると動脈硬化が進行し、より出血のリスクが高まります。 この他にも、運動や睡眠不足、過剰なストレスを抱え込むことでも血圧が上昇しやすくなり、脳出血のリスクは高まるので、規則正しい生活を送ることが重要です。 脳出血の生じやすい部位と症状 脳出血の症状では強い頭痛や嘔気などが出ることは共通していますが、出血の起こる部位によって他にも様々な症状が出現します。 被殻出血 脳出血の中で最も多い出血部位(約40%)が被殻出血です。頭痛や体の半身が麻痺を起こす片麻痺や表情が歪んでしまう顔面神経麻痺などが生じます。 視床出血 被殻出血の次に多いのが視床出血で脳出血の約30%程度にみられます。視床は視覚や聴覚などで得た情報を集め、感覚中枢に送り届ける役割を担っており、この部分で出血が起こると、頭痛や片麻痺といった上記の症状に加えて、意識障害なども見られることがあります。 小脳出血 小脳は大脳の下に位置しており、運動機能を司っています。この部分で出血が起きると体を動かしづらくなり、ふらつきなどといった運動失調が生じます。徐々に意識障害が起こることもあります。 橋(脳幹)出血 脳幹は大脳と脊髄をつなぐ部位のことで、大脳が処理した情報を身体の運動機能につなげる役割を果たしています。そのため脳幹出血が起きると、四肢の麻痺や眼球運動障害があらわれやすくなり、意識障害なども生じることがあります。発症から数分で昏睡状態になり、数時間で死亡する場合もある重篤な疾患です。 皮質下出血 皮質下出血とは、大脳皮質という大脳を覆う膜の下で出血が起きることです。上記の4つの出血は高血圧が原因となることが多いですが、皮質下出血は動静脈奇形や硬膜動静脈瘻が原因であることが多いです。症状としてはけいれんや、軽めの意識障害などがみられることが多いです。他の部位の脳出血よりも比較的症状が軽い場合が多く、予後が良好なことが多いとされています。 まとめ・脳出血はストレスを和らげ規則正しい生活で予防しよう! 脳出血はストレスなどに起因した高血圧などや生活習慣の乱れなどによって発症することが多いですが、その他にも血管自体の異常によって発症することがあります。 脳出血の予防には、規則正しい生活やストレスを抱え込み過ぎないことが重要となります。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S121 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.26 -
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くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 水頭症とは、文字通り、頭に水がたまってしまう病気のことを言います。小児でも発症することがありますが、大人ではくも膜下出血の後遺症として起こることが多い病気です。代表的な症状に「歩行障害」「認知症」「尿失禁」などがあります。 しかし、頭に水がたまるというのが具体的にはどのような状態なのかよくわからない、という方も多いかと思います。 今回は、くも膜下出血の後遺症に多い「水頭症」とはどんなものなのか、どのような症状があるのか、後遺症や予後についてもわかりやすく解説します。 水頭症とは 人間の脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液という水に浮いています。脳の内部にも、脳室という空間があり、こちらにも脳脊髄液が流れています。この脳脊髄液には、脳を外部から守ったり、栄養やホルモンを運搬したり、脳の老廃物を除去したりと様々な役割を担っています。脳脊髄液は常に入れ替わっており、毎日500 ml分が新しく作られ、同じ分だけ吸収されています。 正常な状態では、脳脊髄液は、脳の周りや脳室を循環しており、その循環量は150 mlと言われています。何らかの原因でこの流れが悪くなり、脳脊髄液が多量にたまってしまうことによって、脳を圧迫する状態を「水頭症」といいます。 水頭症の種類について 水頭症のタイプとして「非交通性」と「交通性」があります。 非交通性水頭症は子供に起こりやすく、脳脊髄液の流れの中で、どこかが通行止めになっているイメージです。一部でせき止められてしまうことによって、たまった脳脊髄液が脳を圧迫します。数は少ないですが、成人でも脳腫瘍などで起こる場合もあります。 成人、特に高齢者に多いのは、交通性水頭症です。これは、流れ経路には問題がないのにもかかわらず、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳脊髄液の循環量が多くなってしまう状態です。 何らかの原因で、脳脊髄液の吸収機構がダメージを受けることによって起こる続発性が多いですが、突然発症する特発性もあります。 交通性水頭症の場合、徐々に進行するため、脳圧とよばれる頭蓋骨の中の圧は正常に保たれていることが多く、別名「正常圧水頭症」ともいいます。 続発性と特発性の違いは以下の通りです。 正常圧水頭症 原因 発症時期 続発性 くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎など 左記疾患の数週〜数カ月後 特発性 不明 60~70代の高齢者 特にくも膜下出血では、発症の1~2カ月後に、30%程度の割合で正常圧水頭症を発症するといわれています。看護する人たちは、急性期が落ち着いたあとも、患者さんの様子を注意してみていく必要があります。 水頭症(正常圧)の症状とは ここからは高齢者に多い、「正常圧水頭症」について詳しく見ていきます。 正常圧水頭症の代表的な3つの症状は、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の3つです。 これらは、数カ月から数年単位でゆっくりと進行します。そのため老化の症状と間違えられやすく、長期間放置されている場合もあります。 ご自身やご家族で、以下のような症状はありませんか? ・歩幅が小さくなる ・すり足歩行になる ・両足を開いて歩く ・歩行が不安定になる ・物忘れが多く自発性が低下している ・無気力・無関心な状態になっている 初期には歩行障害が出現し、「歩幅が小さくなる」「すり足歩行になる」「両足を開いて歩く」「歩行が不安定になる」などの特徴がみられます。その後、物忘れや自発性の低下が出現し、徐々に活動性が下がって無気力・無関心な状態になります。 症状が進むと寝たきりになってしまう場合もあるため、早期に変化に気付いて検査を行うことが大切です。 水頭症と診断されたら 水頭症は薬で治せるものではありません。基本的には手術療法が必要となります。 具体的には、頭にたまった余分な脳脊髄液をおなかへ流すチューブをいれる「シャント術」が行われます。 一般的には、頭と腹腔をつなぐチューブを体の中に挿入します(V-Pシャント)。また、脳脊髄液は、背骨の神経の周りにも流れており、そこから腹腔へチューブをつなぐ方法もあります(L-Pシャント)。これらの手術は、脳脊髄液の出口を作ることで、症状を改善させることを期待して行います。 水頭症の後遺症や予後は 正常圧水頭症は、手術を行ってもすぐに完治するものではありません。手術後も、シャントから排出される脳脊髄液の量が適切になるように、調整する必要があります。また、退院後に症状の改善が見られなくなり、元の状態に戻ってしまうこともあります。その場合は、シャントの閉塞がないかどうか、チェックする必要があります。 また、3大症状の中では、歩行障害の改善率が最も良好とされています。反対に認知症や尿失禁の改善率は、歩行障害に比べるとやや劣るとも言われています。そのため、治療開始が遅くなった場合は、認知機能の低下や尿失禁などの症状が後遺症として残ってしまう可能性もあります。 予後は、多くの要因に左右されます。たとえばくも膜下出血などでは、そもそも社会復帰できるのは、罹患した患者さんの3分の1とも言われていますので、もともとの病気や脳機能も大きく予後に影響します。 ただし、シャントがうまく機能していれば、脳機能が回復し、症状も改善する症例が多いのも事実です。そのため「治る認知症」とも言われることがあります。 早期に適切な処置を行うことによって、健康寿命を延ばすことができるため、早期発見がポイントになります。 水頭症についてよくある質問 Q:水頭症を疑った場合どんな検査をしますか。 A:まずは、CTなどの画像検査を行い、脳脊髄液が溜まったことによって脳室が拡大しているかどうかを確認します。そのうえで、水頭症が疑わしい場合にはタップテストを行います。 タップテストとは、実際に頭にたまった脳脊髄液を、一時的に抜くことで症状が改善するかを確認するテストです。このテストは、短期間の入院で行います。麻酔の注射をし、背中に針を刺して脳脊髄液を抜き取ります。 タップテストで症状が改善した場合は、シャント手術に進むことになります。 Q:手術は急いで受けた方が良いでしょうか。 A: 正常圧水頭症はゆっくりと進行するため、手術を受けるかどうか、しっかりと検討する時間はあります。また、診断後すぐに手術を受けた患者と3ヶ月後に手術を受けた患者では、1年後の症状改善に大きな差がなかったという研究もあります。 ただし、歩行障害による筋力低下が進むと、手術後の回復が思わしくない場合もありますので、その点は注意が必要です。 Q:シャント手術をした後は、CTやMRIなどを撮っても大丈夫でしょうか。 A:基本的には問題ありません。経過が問題なくても、手術後の脳脊髄液の状態を見るために、定期的に外来で画像を確認する必要もあります。 まとめ・くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 今回は水頭症の原因と症状、くも膜下出血の後遺症の関係について解説しました。 水頭症のなかでも、とくに正常圧水頭症は早期に発見・治療ができれば、症状の改善を期待できる病気です。少しでもおかしいと思った際には、早めに病院を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.119 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.12.26 -
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水頭症による高齢者の認知症症状は“手術で治る”って本当? 認知症の発症率は、高齢化が進むにつれて増えてきています。認知症には複数の原因となる疾患がありますが、その中でも治療可能とされているのが水頭症が原因による「特発性正常圧水頭症」です。 特発性正常圧水頭症による認知症は、認知症全体の5%~10%を占めるといわれており、他にはアルツハイマー型・レビー小体型認知症・血管性認知症などがあります。 【認知症の主な原因疾患】 ・特発性正常圧水頭症 ・アルツハイマー型 ・レビー小体型認知症 ・血管性認知症 本記事では、“水頭症による高齢者の認知症症状が手術で治る”とはどういうことなのか、さらに特発性正常圧水頭症の症状や検査、治療について詳しく解説していきます。 特発性正常圧水頭症とは 認知症の中でも「特発性正常圧水頭症」とは、頭蓋内に脳脊髄液が溜まり、脳が圧迫されて様々な症状が出る水頭症の一種です。 脳脊髄液は、脳室で毎日一定量がつくられ、脳と脊髄の周囲を循環し、静脈などに吸収されていきます。何らかの原因で、この循環に異常が生じると水頭症が発生します。 正常圧水頭症には3つのタイプがあり、最も多いのが特発性正常圧水頭症です。原因は不明ではありますが、主に高齢者に多く発症するとされています。 その他にも、くも膜下出血や髄膜炎などを発症した後に生じる二次性正常圧水頭症や、遺伝的要因により発症しやすいと考えられる家族性正常圧水頭症がありますが、極めて稀な疾患です。 ◇水頭症の症状 特発性正常圧水頭症では、脳の前頭葉の広範囲が障害されることにより、歩行障害、排尿障害、そして認知障害が現れます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 歩行障害 特発性正常圧水頭症による歩行障害には、下記のような特徴があります。 ・開脚歩行(足が開き気味で歩く) ・小刻み歩行(小股でよちよち歩く) ・すり足歩行(膝を上げずに歩く) ・不安定な歩行(方向転換の時にふらつきやすい) ・歩き出しづらい ・突進現象(歩き出すとうまく止まることができない) 排尿障害 頻尿になったり、尿意を感じにくくなったりします。症状が進行すると、尿意を感じてから我慢できる時間が短くなり、失禁しやすくなります。 認知障害 物忘れや理解力の低下が生じ、ぼーっとするような時間が多くなります。 特発性正常圧水頭症は、歩行障害が初期症状として現れることが多いとされています。 上記の症状のセルフチェックを行い、歩行障害に加えて、排尿障害や認知障害が生じた場合は特発性正常圧水頭症を疑い、病院を受診するようにしましょう。 ◇水頭症の検査 特発性正常圧水頭症では、上記症状をチェックする身体診察が行われ、その程度が確認されます。そのあと、MRIやCTによる脳の画像検査が行われ、特発性正常圧水頭症の疑いが濃厚になった時点で、「タップテスト※」が行われます。 ※タップテストとは、腰椎から脊髄液を30ml程度排除することにより、症状改善がみられるかどうかを確認するテストです。 脊髄液の排出後、歩行などの動きが良くなった場合は「水頭症」と診断され、手術(シャント術)が勧められます。 ◇水頭症の治療 特発性正常圧水頭症の治療では、脳脊髄液の流れを良くする「髄液シャント術」と呼ばれる手術を行います。これは、カテーテル(管)を体内に埋め込むことで、過剰に溜まってしまった脳脊髄液を排出することで脳への圧迫を解放し、髄液循環や脳神経機能を改善させる治療法です。 髄液シャント術の方法には、「VPシャント(脳室-腹腔シャント)」、「VAシャント(脳室-心房シャント)」、「LPシャント(腰椎-腹腔シャント)」があります。 最近では、LPシャントが主流になりつつありますが、腰椎の変形などが強い場合には他のシャントを行います。いずれの手術も脳神経外科の手術としては比較的短時間で行われる手術です。手術時間の目安はおよそ1時間程度です。 ◇水頭症の手術費用 一般的な手術費用は、診療報酬点数が24,310点となっているので、1点=10円とすると約7万円(3割負担)となります。 高額療養費制度を利用すると、自己負担限度額を超えた部分が払い戻されるので、最終的には更に軽減される可能性があります。 ◇水頭症の術後 手術により植え込まれたカテーテルは、定期的に詰まったり壊れたりしていないかチェックし、髄液を抜く量が適切に設定できているか確かめる必要があります。 シャント圧調整方法としては、管の途中に脳脊髄液圧を調節するバルブがついているため、体外から設定圧を調節できるようになっています。シャント圧を下げ過ぎてしまうと、頭蓋内圧が低下し低髄圧症候群を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。 カテーテルにより抜ける髄液量は、生活の仕方や体格の変化によって変動するため、定期的にCTやMRIを撮影して頭の中に異常がないかを確認し、適切な髄液量を決めていく必要がありますので定期的に通院するようにしましょう。 まとめ・水頭症は手術で治る可能性のある認知症! 現在のところ、薬物療法はなく手術が唯一の治療法になります。手術しなければ症状が進行し、寝たきりになってしまうなど、手遅れになるリスクもありますが、生命に関わる病気というわけではありません。手術は症状の改善を主な目的としているため、生活の質を上げたい方にはおすすめです。 現在では、歩行障害は8~9割、排尿障害や認知障害は5~7割に有効とされています。このようなことから、“水頭症による高齢者の認知症症状は手術で治る”と言われています。 しかし、特発性正常圧水頭症は治る可能性のある認知症ですが、正確に診断され治療に至るケースはまだまだ少ないのが現状です。早期発見、治療により生活の質が格段に改善する可能性があるので、疑わしい症状がある場合は早期受診をおすすめします。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S119 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.26 -
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脳出血の原因と症状、後遺症の種類とリハビリによる改善の可能性 脳出血は、手足の麻痺や呂律が回らないなどの症状で発症することが多く、後遺症が残った場合は日常生活に支障をきたしてしまいます。そのため、治すことができるかは深刻な問題です。 一般的に脳出血の後遺症の程度は出血が起こった場所や発症した時の症状の重さと関係があります。そのため、症状が重い場合は完全に症状をなくすことは難しいのですが、早期からのリハビリテーション(リハビリ)によって、改善する可能性があります。 この記事では、脳出血の症状と原因、後遺症の種類、さらに後遺症を改善するためのリハビリについて解説していきます。 脳出血の症状と原因 脳出血は頭痛や吐き気、手足の麻痺など様々な症状を引き起こします。 脳に張り巡らされている血管の一部が破れて出血を起こす病気で、漏れ出た血液が脳の細胞を圧迫してしまい、脳細胞が障害を負ってしまうことが症状の原因です。 脳は部位によって機能が分かれているため、出血した部位に応じた症状が出てきます。脳幹という脳の重要な神経が密集している部分や錐体路(すいたいろ)という運動神経が走行している部分に障害が及ぶと、意識状態が悪くなってしまったり、重い麻痺が出てしまうことがあります。 また、場所の他に出血の量が多ければ、それだけ脳が圧迫される部分が多くなってしまうので症状が強くなります。部位による症状の例として、前頭葉という脳の前の部分の脳出血では、意欲の低下などが起こりやすくなります。さらに言語・記憶などを制御する側頭葉に障害が及ぶと、言語障害や記憶障害などが出てしまいます。 また、ご高齢であることや、初めの症状が重症であるほど、後遺症が残ってしまう可能性が高くなります。一度障害を負った脳細胞は完全に回復することができず、脳の他の部分がカバーして機能を改善させていきますが、それにも限度があります。そのため、急激に症状が悪化しないように発症してすぐは血圧を下げるなどの症状を悪化させない管理、治療が必要となります。 脳出血|後遺症の種類 脳出血は適切な治療をしても、後遺症が残ることが少なくありません。 脳出血による主な後遺症は以下のような種類があります。 運動麻痺 片側の手足が動かしづらくなる症状で、脳出血が生じた部位によって変わります。 感覚障害 触覚や痛覚が鈍くなったり、逆に過敏になり痺れを感じる場合もあります。 言語障害 構音障害という呂律が回りづらくなる症状や、失語症という言葉が出づらくなったり、理解できなくなる症状があります。 目の障害 視野が狭くなったり、物が二重にみえる症状がでる場合があります。 嚥下障害 食べ物を飲み込みにくくなります。 高次脳機能障害 記憶や注意の障害、感情障害(怒りっぽい、感情の起伏が激しくなる、感情が鈍くなる、悲観的になる、何事にもやる気が出なくなる)などが出現します。 後遺症によっては、治療後も日常生活に影響が出ることもあるので、後遺症の内容を知っておくことが大切です。 リハビリの可能性と改善の程度 このように、脳出血は一度発症すると、完全に回復することは難しいです。しかし、脳出血の後遺症は、リハビリ次第で軽くできる可能性があるので、なるべく自立した生活を取り戻すことができるように積極的にリハビリを行うことが勧められます。 脳出血では発症してから早期のリハビリが推奨され、特に廃用症候群(※)の予防をすることや、障害された部位を積極的に使うリハビリが必要となります。 ※廃用症候群とは、病気の治療のために安静にしすぎた結果、筋力が衰え身体機能が低下してしまう状態です。 そのため、全身状態を管理しながら、関節を動かす程度の負荷の少ないリハビリから行っていきます。特に麻痺側は関節拘縮(こうしゅく)が起こりやすい状態となっているため、可動域制限の予防のためにできるだけ早期に行うことが重要です。その後、状態が安定してきたら、徐々にベッドから離れて、様々なリハビリを開始します。 次に日常生活に復帰するためのリハビリを行います。回復期リハビリと言われ、およそ発症後2ヶ月から6ヶ月程度が目安です。ここでは機能や日常生活動作の障害の程度に基づいて多職種でリハビリを行い、在宅復帰や復職を目指していきます。また障害の程度に応じた介護のサービスも含めて、在宅支援のための調整を行っていきます。 脳出血の後遺症・リハビリに関してよくある質問 Q:後遺症はどの程度改善する可能性がありますか。 A:時間が経ってしまった麻痺症状は、改善の見込みが難しくなります。脳出血による麻痺では、一般的に発症後6ヵ月までは改善する見込みがあります。回復期と呼ばれるこの時期に、ダメージを受けた脳神経のネットワークの再構築が起こると考えられているため、機能回復を最大限にするための積極的なリハビリが必要です。 Q:脳出血のリハビリの期間は? A:急性期病院で脳出血の治療を受けた後は、回復期病院でリハビリを中心とした治療を行い、自宅復帰という流れが一般的です。 回復期病院での入院およびリハビリの可能な期間は、発症から最大で150日、高次脳機能障害を伴う場合は180日と決まっているので、長くても6ヶ月となります。 Q:リハビリはどこで受けられますか。 A:リハビリは医師の指示のもと、病院や診療所、医院もしくは在宅でも医療保険を利用して受けることができます。 また、介護保険を利用して、通所リハビリや訪問リハビリテーション等のサービスも利用することができます。 発症から最大で150日、高次脳機能障害を伴う場合は180日まで可能です。また期間を過ぎた後でも自費でリハビリを提供している施設などで、自費リハビリを行うことも可能です。施設によって多くのプランがあり、自分で選ぶことができます。 まとめ・脳出血の原因と症状、後遺症の種類とリハビリによる改善の可能性 いかがでしたでしょうか。脳出血で考えられる後遺症や、症状を改善させるためにリハビリが必要なことについて解説してきました。 脳出血は生活習慣病の1つであり、発症後の治療も重要ですが、予防が最も大切です。後遺症を残したり、寝たきりとなってしまわないように、日常生活を見直して発症予防に努めていくことが必要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S118 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳出血のチェック方法について 脳出血の初期症状をセルフチェック!早期治療で後遺症を残さない
最終更新日:2024.03.29 -
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頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 「頭痛」は多くの人が悩んでいる症状の一つです。 日本の製薬会社の調査では、約4人に1人が週に1回以上の頭痛を感じ、約3人に1人は自分を頭痛持ちだと思っているそうです。 頭痛の症状は人により様々です。 症状 「頭がクラクラする」 「頭の後ろが痛い」 「頭に血が上る感じがする」 「頭の右側が痛い」 「ぼーっとする」など多彩な言葉で表現されます。 この頭痛、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」とに分けられることをご存知でしょうか。二次性頭痛は他の病気の存在により引き起こされる頭痛であり、それ以外を一次性頭痛に分類されます。 この記事ではそれぞれの頭痛について、その説明と対処法を解説します。 頭痛の種類と治療法 一次性頭痛は、頭痛を有する患者のうち、約80%に及ぶと言われています。多いものから「偏頭痛」「緊張型頭痛」「三叉神経・自律神経頭痛」といわれるものが代表的な頭痛となります。 頭痛の原因となる疾患がなくても時には仕事や学校、家事などの日常生活に支障が出て、*QOLが下がることもあります。 それでは以下に頭痛の種類別の解説と治療法を記してまいります。 *QOLとは「Quality of Life」の略です 日本語では「生活の質」や「生活の満足度」と訳し、具体的には、健康、経済的状況、心理的な幸福感、社会的関係など、日常生活を送る上で感じる「満足度」や「充実感」の程度を表すものです。 1)偏頭痛とは 日本では年間に8.4%の人が片頭痛になると言われています。 この頭痛は、頭痛を起こす前に特徴的な前兆(きらきらした歯車のようなものが見える、チクチク感を感じ、それが体や舌などに波及するなど)が出現することがあります。 偏頭痛の症状としては「ズキンズキンと脈を打つように痛み、頭痛により寝込んだり、吐き気がしたりする」ことがあります。 また、偏頭痛が起きている間は光や音に過敏な状態となるため、「頭が痛い間は布団を被ってじっとしている」という方もおられます。 症状 ・ズキンズキンとした脈を打つように痛み ・吐き気がする ・寝込むことがあある ・光や音に過敏になる 偏頭痛の治療法 偏頭痛で痛かったり、辛かったりするときの治療には、解熱鎮痛剤(ロキソプロフェンや、アセトアミノフェンなど)、トリプタンという頭痛治療薬が有効です。 トリプタンを服用する有効なタイミングは、痛みが始まってすぐや、軽度なときが良いため、服用が難しいかもしれません。 予防には抗てんかん薬や、抗うつ薬がよく使われてきました。最近発売となった「抗CGRP抗体」という注射薬は、より高い予防効果があります。 必ずしも関連があるとは言えませんが、高血圧症、心疾患、うつ病などと共存することが多く、治療薬の選択に影響があるため注意が必要です 2)緊張型頭痛とは 緊張型頭痛は、左右の両方が痛むことが多く、症状は「圧迫されるような」「締め付けられるような」と表現されます。日本の研究では、年間に20%の人が症状を感じると言われています。 頭や首の筋肉を押すと痛みがみられることが特徴的です。 症状 ・圧迫されるような ・締め付けられるような 緊張型頭痛の治療法 痛みが出ているときは解熱鎮痛剤が有効です。予防には抗うつ薬やリラクゼーション、鍼灸などが有効です。 3)三叉神経・自律神経頭痛とは 三叉神経・自律神経頭痛の中にも細かな分類がありますが、群発頭痛が最も一般的です。 かなり強い痛みが、目の周囲もしくはこめかみに発生し、15~180分持続することが特徴です。10万人あたり56~400人程度の方が罹患し、男性に多いと言われています。 症状 ・目の周囲に強い痛み ・こめかみに強い痛み 三叉神経・自律神経頭痛の治療法 治療には、酸素投与と、片頭痛でも使用される薬でトリプタンの効果が高いです。 その他の頭痛とは 頭痛の約20%が二次性頭痛、つまり他の病気により引き起こされている頭痛と推定されています。症状を抑えるために解熱鎮痛薬などを用いることはありますが、治療の基本は原因の病気の治療となります。 ここでは一部の疾患を説明します。 脳血管障害 脳出血やくも膜下出血では、頭痛が起こることがあります。血管が裂ける、詰まることで起こる病気なので、症状も突然生じます。意識の低下や手足の動かしにくさ、話しにくさ、嘔吐を伴います。 生命の危機や重い後遺症も起こりうる、緊急度の高い頭痛です。 感染症 菌やウイルスが脳や全身で炎症を引き起こすことで、生じる頭痛があります。感冒(風邪)はウイルス性の上気道炎であり、頭痛を感じたことがある人は多いでしょう。 重篤なものでは、髄膜炎や脳炎があります。発熱、吐き気、意識の低下を伴うことが多いです。 頭痛というと軽く見がちですが何か違和感を感じるようであれば医療機関でご相談させれることをお勧めします。 目、鼻などの病気 急性副鼻腔炎の症状は「頭が重い」と表現されることが多いですが、それを痛みとして感じる場合もあります。 緑内障発作は目のかすみ、目の充血を特徴とする痛みであり、放置しておくと失明の危険もあります。 う歯(虫歯)の痛みを頭痛として自覚される方もいます。 頭痛についてよくあるQ&A 頭痛について、よくいただく質問を以下に抜粋しました。 Q , どのような頭痛の時に受診したらよいですか? A , 突然に(何時何分何秒がはっきり言えるような)最大の痛みとなった頭痛、話にくさや手足の動かしにくさを伴う頭痛、これまでに経験したことのないような頭痛、意識が低下している頭痛は、二次性頭痛の可能性があります。必ず受診を検討しましょう。 Q , 頭痛が出たら鎮痛剤は飲んでもよいですか? A , 手持ちの鎮痛薬がある場合は内服して構いません。鎮痛剤内服で診断が遅れることはほとんどありません。 ただし、頻繁に内服をしていると薬物乱用頭痛という新たな頭痛の原因となります。鎮痛剤を飲みたくなる頭痛が続く場合は受診を検討しましょう。 まとめ・頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 今回の記事では、頭が痛い時や、重いときについて、頭痛の種類と、症状、治療法などを解説しました。 頭痛は多くの人にとって日常生活で直面する問題です。 頭痛には、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があり、それぞれ適切な対処法を選択することが大切です。 まず、一次性頭痛には。「偏頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経頭痛」があり、それぞれの症状と治療法を知ることで対処方法を理解することで日常生活の質(QOL)を向上させることができます。 偏頭痛には、解熱鎮痛剤が効果的ですが予防には、抗てんかん薬や抗うつ薬が用いられます。緊張型頭痛の場合、解熱鎮痛剤や抗うつ薬、リラクゼーション、鍼灸も有効です。 三叉神経・自律神経頭痛は、酸素投与やトリプタンと言われる薬が効果的です。二次性頭痛は他の病気により発生するものですので原因となる疾患の治療を最優先にしましょう。 尚、脳血管障害や感染症、目や鼻の疾患などが頭痛の原因となることもあります。頭痛というと、ありふれた症状ではありますが、時に生命に関わる病気が隠れていることがあるため注意が必要です。 また、そのような疾患がなくとも、一次性頭痛はQOLに大きく関わるので、困ったことがあれば医療機関に相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S117 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭に関するご心配は、以下も参考されませんか 頭のこぶのようなものを押すと痛いとき、考えられる疾患とは?
最終更新日:2024.05.21