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- 脳梗塞
脳梗塞になりやすい人とは?発症や再発予防で注意しておくべきこと 脳梗塞とは、脳の血管が血栓などで詰まり血流が悪くなることで、脳血管が細くなって脳細胞に障害が起こって様々な症状を呈する病気です。 高齢者が寝たきりになる原因の多くを占める脳梗塞は、初期段階での早期治療を行うと共に発症予防することが非常に重要なポイントであると言われています。 今回は、脳梗塞になりやすい人はどんな人なのか、脳梗塞を発症予防、あるいは再発予防するための方法などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 脳梗塞になりやすい人とは 脳梗塞は、いわゆる危険因子を持った方に起こりやすく発症しやすい方は存在します。その危険因子にはいくつかの要素があり、脳梗塞の主な危険因子は3つあり、「高血圧」「糖尿病」「心房細動」があげられます。 1,高血圧 脳梗塞は脳の血管が詰まることが原因で起こり、その原因疾患でもっとも多いのは高血圧であると考えられています。 一般的には、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、あるいは最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であれば、「高血圧症」と診断されることからも、最高収縮期血圧が140mmHg以上を上回ったら脳梗塞の発症リスクが高くなります。 2,糖尿病 また近年では、糖尿病の増加に伴って、「アテローム血栓性脳梗塞」の発症数が増えてきており、血糖値が高い状態が続くと血液中に多量に存在するブドウ糖が血管の壁を傷つけることで、動脈硬化が悪化することとなり、脳梗塞などの病気の発症リスクが高くなります。 3,心房細動 さらに、心臓の中にできた血液の塊が時に遊離して、不幸にも脳の動脈の方に流れていってしまうことで脳の血管が詰まってしまう状態、つまり閉塞してしまうことが原因で起こる脳梗塞のことを、「心原性脳塞栓症」と呼んでいます。 心房細動と呼ばれる不整脈を有する場合には、心房内に血栓を形成し、その心房内の血栓は血流に乗って全身へ飛ばされる恐れがあるため、脳梗塞の発症リスクも上昇します。 脳梗塞の発症予防方法は? 脳梗塞を発症させる危険因子の有無をチェックして、ひとつでも危険因子が見つかった人は、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」などで脳梗塞の発症予防に努める必要があります。 高血圧の制御で、脳血管障害の発症を予防 高血圧症は日本において約4000万人以上にも及ぶ国民が罹患しているといわれており、高血圧を制御することによって脳血管障害の発症を抑制することが大いに期待されています。 普段から高血圧を指摘されている方では「塩分を控える」「適正体重となるように日々の食生活で腹八分目にする」「なるべく歩くようにする」などの工夫が必要であるとともに、血圧降下作用のあるカリウムやカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取することが重要となります。 ・塩分を控える ・適正体重となるように日々の食生活で腹八分目にする ・なるべく歩くようにする ・カリウムやカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取する また、普段から規則正しい食生活、運動をするようにして、ストレスや喫煙習慣など生活スタイルに注意して、糖尿病にならないように心掛けましょう。 脳梗塞を引き起こしやすいと考えられている危険な不整脈として認識される心房細動があると、毎年約5%の方に脳梗塞が発症すると指摘されているので、日常生活で動悸を自覚するなどの症状が出現した際には、心臓専門の医療機関で詳しく調べてもらいましょう。 脳梗塞の再発予防とは? 最近、脳ドックを受診する方が増えて「無症候性脳梗塞」が見つかる頻度が増えてきており、この隠れ脳梗塞が発見されたのち数年以内に3割の人が再び脳梗塞の発作を起こすと言われていますので、脳梗塞に一度かかったら再発する危険性があると考えておくべきでしょう。 脳梗塞を発症した方においては、再発を予防するための薬剤を飲む必要があって、通常では「ラクナ梗塞」や、「アテローム血栓症」に対しては動脈のように血流がとても速い血管のなかで血栓がつくられるのを防ぐため、「抗血小板薬」が有用となります。 ご注意頂きたいのは、症状が悪化していない、調子が良いからと勝手に自己判断で薬剤服用をやめてしまう方がおられますが、基本的には脳梗塞を再発するための予防薬は継続する必要があります。 また、心臓が原因で起こる脳塞栓の場合には、心臓の中に出来る血液の塊そのものが血管の中に出来る血栓とは性質が異なっているために、その再発予防には通常では「ワーファリン」という薬を使用します。 この薬を飲んでいる方は、定期的に血液検査でプロトロンビン時間(PT-INR)を測定して、薬効を評価しておく必要がありますし、ワーファリンを服用している際には、薬の効果に影響を与えますので、納豆や青汁などを食べてはいけません。 ・脳ドックで「無症候性脳梗塞」が見つかると3年以内に脳梗塞を発症しやすい ・脳梗塞の再発予防に「抗血小板薬」が有用となる ・脳梗塞の予防薬を自己判断で中断してはならない ・脳梗塞の予防として心臓内でできる血液の塊を防ぐ「ワーファリン」の服用時には納豆や青汁を摂取しないこと まとめ・脳梗塞になりやすい人とは?発症や再発予防で注意しておくべきこと 今回は脳梗塞になりやすい人はどんな人なのか、脳梗塞を発症予防、あるいは再発を予防するための方法などについて詳しく解説してきました。 脳梗塞は突然に起こる病気であり、かかってからしまったと後悔しても手遅れですので、健常人でも普段から脳梗塞を予防しておく方法を知って身に付けておくことが重要です。 脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病は動脈硬化を進展させますので、脳梗塞の発症や再発を予防するために、高血圧や糖尿病を罹患している場合には疾病の治療を行うとともに、常日頃の生活習慣を見直すことも重要な観点となります。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.093 監修:医師 坂本貞範 こちらも併せてご参照ください。 https://fuelcells.org/topics/18480/
2022.11.07 -
- 脳梗塞
それ、軽い脳梗塞かもしれません!初期症状チェックリストはこちらです! 脳梗塞は脳の血管が細くなり、血液が固まった血栓と言われるもので脳の血管が詰まり、血液の流れが止まってしまうことで起きる怖い病気です。 大きな脳梗塞だと呂律が回らなくなったり、体の片側に力が入らなくなったりする運動障害や、言葉が分からなくなる失語症などの症状が出てしまうことがあります。 そういった重篤な症状になると、ほとんどの場合で早急に医療機関を受診することとなりますが、中には症状が軽かったりして、その症状も自然に治ったりすることがあるため、脳梗塞はもちろん、その前兆だとも気が付かないケースがあります。 そこで本記事では、以下に脳梗塞を判定するためのチェックリストを設けました。 一つでもチェック☑が当てはまるようであれば、今すぐにでも医療機関を受診し、ご相談されることをお勧めします。 今回は、脳梗塞の起き方から、それぞれの症状、軽い脳梗塞とも言われる一過性脳虚血発作、脳梗塞の治療について詳しく解説していきます。ぜひ参考にされてください。 脳梗塞のメカニズムは? まずは脳梗塞の起き方についてです。脳梗塞は大きく分けて次の3つに分類されます。 ①動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞 アテローム血栓性脳梗塞は高血圧、高脂血症、糖尿病という所謂生活習慣病に伴い、血管壁にコレステロールが溜まる「動脈硬化」という病態が主な原因です。 予防のためには、食事や運動に気を付けることや薬物治療を通して「動脈硬化の進行」を抑えることが最も重要です。 ②心臓から流れてきた大きな血栓による心原性脳塞栓症 心原性脳塞栓症は心房細動といった不整脈などの心疾患が原因で心臓内に血栓が生成され、それが血流に乗って脳血管に運ばれることで引き起こされます。 予防には心疾患の早期発見・治療が重要となります。 ③高血圧により穿通枝という比較的細い血管が詰まるラクナ梗塞 ラクナ梗塞は「高血圧」が主因とされ、予防のためには血圧の管理が重要となってきます。 このように脳梗塞は生活習慣を主として様々な原因で引き起こされるため、リスク因子の発見や対処といった予防が重要となってきます。 脳梗塞で現れる症状を知って万一に備える 脳梗塞の主な症状としては下記のようなものが突然現れることが特徴的です。複数の症状が現れたり、1つだけであったりもします。 以下が「万一に備える脳梗塞の症状のチェックリスト」です。たとえ一つでも当てはまるものがあれば要注意です。 脳梗塞の症状のチェックリスト 運動障害 ☐ 片半身が動かしにくくなる ☐ 片側の顔に力が入らない ☐ 箸や鉛筆が持てない ☐ 片足を引きずってしまう ☐ 呂律が回らない 言語障害 ☐ 言葉が出てこない ☐ 言葉の意味がわからない ☐ 相手に話が伝わらない 感覚障害 ☐ 片半身が痺れる ☐ 触られてもわからない 視覚障害 ☐ものが二重に見える ☐ 視野が狭くなる ☐ 目の前が真っ暗になる 平衡感覚障害 ☐ 体が傾く ☐ まっすぐ歩けない ※一つでも当てはるようなら、すぐに病院にご相談ください 上記のような症状が急に現れると驚かれ、多くの方は医療機関を受診されると思います。しかし、すぐに良くなってしまうことがあるのです。 その場合は、「気のせいか」「まあいいか」と自己判断で治った、大事ないと意図的に良い方に考えて医療機関を受診されようとしない方が一定数いらっしゃいます。 自験例では2週間も症状が続いたにも関わらず、その後ようやく医療機関を受診した方もおられました。 実際、厚生労働省の研究班の調査では症状が続いていれば8割の方が医療機関を受診すると答えたのに対して、症状が自然に改善した場合は5割程度しか受診しないと答えています。 この考え方は極めて危険です! 症状が一時的であって、その後治まった場合でも、再度同様の症状を起こし、今度は一生涯の症状となることがあるからです。 一過性の脳梗塞症状のことを一過性脳虚血発作と言い、脳梗塞の前兆と考えられております。 上記でしましたチェックリストに、一つでもチェック☑があるようなら、早急に医療機関で相談してください。 軽い脳梗塞?一過性脳虚血発作とは 一過性脳虚血発作は文字通り、一時的に脳梗塞のような症状が出現し、時間経過とともに(多くは30分程度)自然に改善するような病態です。分かりやすく地震に例えると余震であり、本震の前兆、前触れとして真剣に向き合うべき事柄なのです。 つまり、数日以内に「本格的な脳梗塞を起こす可能性」があるため、脳梗塞の前兆とも言われております。症状が良くなったからもう良い、疲れが出たからだろうと考えていると、足元を掬われる可能性があります。 実際、一過性脳虚血発作患者の約15%が90日以内に脳梗塞をきたすとされ、一過性脳虚血発作患者には脳梗塞の予防が重要です。 特に脳梗塞に至ってしまうリスクが高いとされる項目は以下です。当てはまるなら、更なる注意が必要です。 ・年齢(60歳以上) ・血圧(140/90mmHg以上) ・臨床症状(片麻痺、言語障害) ・症状の持続時間(10分以上) ・糖尿病 リスクが高い方は入院したり、お薬を開始したりすることがあります。その時に用いるのがアスピリンやクロピドグレルといった血液を固まりにくくするお薬です。 そういったお薬を用いたり、高血圧・高脂血症・糖尿病といった疾患へ生活習慣の介入や薬物治療を行ったりすることで再度の一過性脳虚血発作や脳梗塞を予防していくこととなります。 症状を感じたら、どこに相談したら良いのか? 上記のような症状に心当たりがある場合、脳神経内科・脳血管内科・脳外科など、脳を専門としている病院にご相談ください。診療科名は病院によって異なることもあるため、詳しくは病院のホームページ確認や問い合わせをすると良いでしょう。 特に発症したばかりの脳梗塞を疑う場合の治療は一刻を争うことが多く、ためらわず救急車を呼ぶ必要があります。 ・脳神経外科、脳神経内科 ・脳血管内科 ・脳外科 まとめ・それって軽い脳梗塞かもしれません!初期症状チェックリストはこちらです! いかがでしたでしょうか。 脳梗塞の起き方からそれぞれの症状、軽い脳梗塞とも言われる一過性脳虚血発作、脳梗塞の治療についてご紹介させていただきました。 高血圧・高脂血症・糖尿病といったリスクのある方は特に、チェックリストに当てはまるような症状があれば医療機関に至急相談をすることをおすすめします。 ご参考になれば幸いです。 No.S092 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.31 -
- 脳梗塞
脳梗塞は治るのか!?治療方法や入院期間、費用を徹底解説! 「脳梗塞って治る見込みはあるのかな・・・」 「脳梗塞になったら、どのくらい入院するのか知りたい。」 脳梗塞は日本の死因第 4 位に入るとても怖い病気です。 脳梗塞になってしまった場合、治る見込みがあるのか?!と、不安なお気持ちになられる方は多くおられることでしょう。脳梗塞を発症した時に最も大切なことは、いかに「早い段階で治療を受けるか」ということになります。尚、年齢や障害の部位、程度によって受ける治療や入院期間が異なります。 そこで、今回は脳梗塞の治る見込みや、具体的な治療方法、そして気になる入院期間や費用についても記した保存版的内容になりました。参考にしていただければ幸いです。 脳梗塞は治すことはできても後遺症が残る危険性が高い病気です 結論から言うと表題で記した通り、脳梗塞は治すことができても発症後、早期に治療を受けないと、重篤な後遺症が残ってしまう場合があります。 脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで脳細胞が壊死し、脳機能が低下してしまう病気であり、主に以下の3つの種類に分けられます。 ・アテローム血栓性脳梗塞 : 首や脳などのより太い血管が詰まることで起こる ・ラクナ梗塞 : 比較的小さな血管が詰まり、緩やかに症状が現れる ・心原性脳梗塞 : 心臓の血栓の一部が血流により脳に運ばれ、血栓を作る いずれも高血圧や脂質異常症、高血糖などの生活習慣病による動脈硬化が主な原因となり、後遺症としては、片麻痺やしびれなどの感覚障害のほか、記憶や注意力の低下などとして現れます。 脳梗塞を治すにはまず、脳内の正常な血流を回復するために急性期の治療を行い、その後、リハビリ治療によって、後遺症などの二次的影響を治すことになります。 損傷した脳組織を治療によって元に戻すことは不可能ですが、リハビリテーションによって、損傷した部分を補うことを目指すことになります。 脳梗塞の検査は? 脳梗塞に対して早期に治療介入する上で重要になるのが検査です。 脳梗塞を診断するためだけでなく、他の考えられる原因を除外する必要があるため非常に大切です。 ・身体検査 : 心臓の音や血圧を測ったり、神経学的診察を行います。 ・血液検査 : 血液が凝固する速さ、血糖値、感染症の有無を調べます。 ・CT検査 : 脳内出血、虚血性脳梗塞、腫瘍などを調ます。 ・MRI検査 : 虚血性脳梗塞や脳出血によって損傷した脳組織を検出します。 ・頸動脈超音波検査 : 頸動脈の脂肪沈着物 (プラーク) の蓄積と血流が示されます。 ・脳血管造影検査 : 脳と首の動脈を詳細に調べます。 ・心エコー検査 : 心臓から脳に移動して脳梗塞を引き起こした可能性のある心臓内の血栓の原因を見つけます。 これらの検査を行うことで診断を確定することが可能となり、適切な治療へと導くことができる大切な治療プロセスになります。。 脳梗塞の急性期(病状が表れた時期)の治療について それでは、実際にどのような治療を行うのか詳しく見ていきましょう。主に3つの治療に加え、薬物療法もおこなっていくことが基本となります。 ①血栓溶解療法(t-PA治療) 虚血性の脳梗塞の場合は、血栓を溶かして脳への血流を回復させるアルテプラーゼと呼ばれる薬を注射することで治療できます。 このアルテプラーゼは、脳卒中の発生後できるだけ早く、確実に 4 . 5 時間以内に開始すると最も効果的です。 4 . 5 時間以上経過した場合は、薬が出血性脳梗塞による出血を悪化させる可能性があるため、利用できません。 ②血管内治療(血栓回収療法) 重度の虚血性脳梗塞の場合は、血栓回収療法と呼ばれる血管内のカテーテル治療によって治療できます。 局所麻酔下または全身麻酔下でカテーテルを動脈に挿入し、小さなデバイスを、カテーテルを通して脳の動脈に挿入します。 このデバイスを使用して血栓を除去することで、脳への血流が回復します。 血栓溶解療法同様に、脳梗塞後できるだけ早く開始すると最も効果的です。 ③抗血栓療法(内服治療) 血管の閉塞を治す急性期治療に加え、再発予防として、内服による治療も同時に行います。 1.抗血小板薬(アスピリン/クロピドグレル) アスピリンは抗血小板薬であり、新しく血栓が形成される可能性を減らすことができます。 また、クロピドグレルなど、他の抗血小板薬も同時に併用する場合があります。 2.抗凝固剤(ワーファリンなど) 将来、新たな血栓ができるリスクを軽減するために、抗凝固薬を投与されることがあります。 ワルファリン、ダビガトランなど、長期間使用できる抗凝固薬があります。 脳梗塞のリハビリについて 急性期治療の後は、できる限り多くの機能を回復するようリハビリに努めることが大切です。それが自立した生活を取り戻すことに繋がるからです。 リハビリには主に急性期、回復期、生活期の 3 つの段階があり、年齢、全体的な健康状態、および脳梗塞による障害の程度に基づいて、リハビリ内容を医師が決定します。 退院後は、同じ病院はもちろんですが、利便性を考慮して自宅の近くなど、別のリハビリ施設で、リハビリを続けることもできます。 リハビリは患者の状態に応じて以下のようなチームで行われるます。 ・医師(脳外科、脳神経内科、精神科など) ・理学療法士 ・看護師 ・栄養士 ・理学療法士 ・作業療法士 ・言語聴覚士 ・ソーシャルワーカー 発症後48時間以内の早期にリハビリを開始することで、脳梗塞による治療後の後遺症を軽減することがわかっています。 脳梗塞の入院期間と費用はどのくらい? 脳梗塞の一般的な入院期間は 78 日前後であり、数ヶ月入院する必要があります。 がん患者では、平均在日日数は 30 日前後なので、入院期間は一般的な病気に比べ長いことが分かります。 費用に関してですが、脳梗塞の入院でかかる費用は平均 50 万円前後と言われています。 ただし、受ける治療内容によってもちろん異なりますし、入院期間が伸びてしまうと追加の費用がかかります。 平均的な入院期間:78 日 費用:50 万円前後(健康保険-3割負担の場合)※高額療養費制度の活用で更に安価になります) ※上記は、治療内容、症状、入金機期間によって変動します 入院期間が伸びてしまう要因としては主に障害部位や重症度があり、詳しく見ていきましょう。 1.障害部位や重症度 脳梗塞の入院期間は、まず障害されている脳の部位や範囲によって異なります。 軽症の場合は、2 週間程度で退院できる場合もありますが、重症度が高くなると、リハビリ期間も長くなるため、入院期間が長くなり、費用も高くなってしまいます。 2.高齢者 年齢が高くなると、急性期治療後のリハビリが長期化するケースも稀ではありません。 令和元年の厚生労働省による平均入院日数調査によると 27. 6 日となっていますが、75歳以上の後期高齢者になると、40 日を超える場合もあります。 脳梗塞の治療や入院に関するよくある質問 最後に、脳梗塞に関するよくある質問についてです。治療期間やリハビリ、仕事復帰の目安などについてまとめていますので、ぜひ参考にされてください。 Q.脳梗塞の治療後、仕事復帰はどのくらいでできる? A.仕事復帰までの期間は、患者それぞれによって異なりますが、基本的には3ヶ月後に退院できるケースが多いようですが、退院してすぐに復帰できるわけではありません。 多くの場合、発症から半年または1年後を目途に復帰できるケースが多いようです。 Q.脳梗塞を早く治すにはどうしたらいいですか? A.脳梗塞を早く治すには、何といっても早期治療が大切です。ただし、早期治療後にすぐに治るというわけではなく、リハビリなど日常生活に戻るには個人差があるのが実情です。 発症後 3ヶ月過ぎると、治りづらくなるため、できるだけ早くリハビリに取り組むことが、早く治すことにつながります。 まとめ・脳梗塞は治るのか!?治療方法や入院期間、費用を徹底解説! いかがでしたでしょうか。 脳梗塞は早期の治療開始が大切で、適切なリハビリを行うことで克服できる病気です。 ただし、一刻も早い治療と適切な対処が必要です。遅れれば後遺症が重くなる可能性があり、日常生活にも大きな影響を及ぼしかねません。 脳梗塞は、入院期間の長い病気ではありますが、早い段階からの適切治療と、リハビリを行うことで社会、仕事復帰することも十分に可能です。 費用的にも健康保険や高額療養費制度を用いれば最小の負担で治療に取り組むことが可能です。 この記事では、脳梗塞は治るのか!?治療方法や入院期間、費用を解説として、詳しくまとめましたので参考にしていただければ幸いです。 No.091 監修:医師 坂本貞範 脳卒中・脳梗塞 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.28 -
- 脳梗塞
若年性脳梗塞をご存知ですか?!脳梗塞は「まだ若いから」との油断は禁物! 脳梗塞という病気を知ってはいても、高齢者の病気だと思っている方も多いのではないでしょうか。 確かに年を取るにつれて脳梗塞の発症率は上昇しますが、若い人でも脳梗塞を発症する人がいることをご存知でしょうか。 この記事では、20代でも起こりうる脳梗塞について解説します。 脳梗塞とは? そもそも脳梗塞とは、どのような病気なのでしょうか。 脳梗塞とは脳卒中と言われる病気のひとつで、脳の血管が障害を受けることによって起こる病気の一つです。 脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血がありますが、その中でも脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうことで脳への血流が途絶し、脳の機能に傷害が起こる病気です。 脳梗塞ではどのような症状が起こるの? 脳は、場所によってそれぞれさまざまな機能を分担していて、脳梗塞になって血流が途絶してしまうと、その部分の機能が障害されてしまいます。 脳梗塞は、脳の障害を起こす部位によって症状が様々に異なります。 例えば、 ・右手を動かす脳の部位が脳梗塞になれば、右手が動かなくなります ・片方の目から入ってきた情報を処理する部分が脳梗塞になれば、片方の目が見えなくなってしまいます 他にも、脳は感覚や感情、さらには生命維持のために不可欠な様々な機能を担っています。 脳梗塞は様々な症状が起こる上に、場合によっては命に関わってくることもあります。 脳梗塞はどのような原因で起こるの? 脳梗塞は、主に3種類に分類されています。 1,アテローム血栓型脳梗塞 1つ目のアテローム血栓型脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が動脈硬化などによってだんだんと狭くなり、ついに血流が途絶したときに起こります。 そもそも動脈硬化が起こると血管は硬くなるだけではなく、血管の壁の中に粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれるコレステロールの塊が蓄積してきます。 血管と粥腫の間は内膜と呼ばれる薄い膜で隔たれていますが、何らかの原因で内膜が破綻すると、粥腫が血液に触れます。 すると血管を修復しようとして血液が凝固します。もともと狭い血管内で血液が固まりますので、血液の流れが完全に途絶してしまい、脳梗塞になってしまうのです。 大きな血管が詰まると、非常に広い範囲の脳が脳梗塞となってしまい、命に関わるような重篤な症状となる事もあります。 2,ラクナ梗塞 2つ目のラクナ梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈の血管の中でも末端の非常に細い動脈に起こる血流の途絶によって起こります。 小さい範囲の脳梗塞のため、症状がない場合もありますが、非常に重要な部分に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうと、重篤な状態となってしまうこともあります。 3,心原性脳塞栓症 3つ目の脳梗塞の原因である心原性脳塞栓症は、脳以外の血管に原因がある脳梗塞です。 種々の病気によって、足や心臓の中で血栓という血の塊ができてしまうことがあります。 この血栓が、ある時その場所から剥がれ落ちて血流に乗って脳に届き、血管に詰まってしまいます。血栓のサイズによって症状は様々となります。 多くの場合、心房細動という不整脈に伴って心臓内に血栓ができます。 また、普通心臓内では静脈で全身から帰ってきた血液(静脈血)と、肺から帰ってきて全身に送る血液(動脈血)は混ざらないように分かれています。 しかし、先天性の病気で心臓に穴が空くなどして、静脈血が動脈血に混じってしまう人がいます。 このような人の場合、足の静脈でできた血の塊が動脈に入り込み、脳へ飛んでしまう事があります。これを奇異性塞栓と言います。 脳梗塞はどのように治療するのか? 脳梗塞の治療は、発症後なるべく早い時間に血流を再開させることが重要となります。 血液が届かなくなった脳の細胞は時間が経つにつれ、どんどんと壊死してしまいます。血流が途絶した時間が長くなれば、壊死している範囲が広がってしまいます。 血流を早期に回復させることができたら、最小限の壊死でとどめることができますので、後遺症を減らす事ができます。 特に有効とされているのが、血栓を溶かす治療です。 しかし出血などの合併症があるため、発症4時間30分以内にしか使用できず、なるべく早く病院を受診する必要があります。 他には、血管内治療と言って、カテーテルという細い管を血管の中に通し、脳の中にまで届かせて血栓を吸い取って血流を再開させる治療も行います。 若年性脳梗塞とは? 脳梗塞の中でも、若年に起こる脳梗塞を特別に若年性脳梗塞と言います。 どのような特徴があるのでしょうか。 若年性脳梗塞とはどのようなものなの? 若年性脳梗塞は、特に国際的に決まった定義はありませんが、日本では国立循環器病センターが50歳以下における脳梗塞と区分しており、その辺りの年齢より若い人に起こるものを若年性脳梗塞と言います。 若年性脳梗塞はどのような原因で起こるの? 若年とはいえ、原因は高齢者に起こる脳梗塞と同様に、動脈硬化によるものが多いです。 動脈硬化の原因としては、以下のようなものが挙げられます。 ・喫煙 ・過度の飲酒 ・糖尿 ・高血圧 ・高コレステロール血症 いずれも生活習慣の乱れから起こるものと言えます。 また、前述の奇異性脳塞栓はどの年代でも起こりえますが、動脈硬化の割合が高齢者より少ない分、若年性脳梗塞においては奇異性脳梗塞の割合が高くなる傾向があります。 つまり、危険因子を持ち合わせると、20代であっても脳梗塞が起こる可能性は十分にあり得るのです。 若年性脳梗塞を予防するためにできること では、若年性脳梗塞を予防するためにはどのような事に気をつければ良いのでしょうか。 生活習慣の見直し 若年性脳梗塞を予防するためには動脈硬化を予防する事が最も重要です。 その為には生活習慣を整えることが必要とされています。 ・バランスの取れた食事を意識する ・適度な運動をする ・十分な睡眠をとる ・喫煙、飲酒量の見直し ・ストレスを溜めない 塩分の高い食事や栄養が偏った食事、不規則な生活リズム、運動不足は動脈硬化を悪化させます。 さらに、喫煙や飲酒も問題となりますので、禁煙や飲酒量の調整も必要です。 また、ストレスも動脈硬化の原因となります。ストレスを感じていることが多い場合には、ストレス解消を意識することも重要となります。 検診の受診 高血圧や糖尿病、高コレステロール血症は自覚症状がほとんどないため、検診を受けて診断を受け、適切に治療を受ける必要があります。 また、奇異性脳塞栓の原因となる心臓の異常は、検診の心電図で発見されることもあります。 早期に脳梗塞の原因となる芽を見つけ、脳梗塞を発症する前に治療を開始することで脳梗塞を起こさないように対策をしましょう。 まとめ・20代,30代の脳梗塞「まだ若いから」との油断は禁物! この記事では、若年層、20代でも起こりうる若年性脳梗塞について解説しました。 若年性脳梗塞は、高齢者の脳梗塞に比べて「奇異性脳塞栓」といった特殊な脳梗塞が多いという特徴がありますが、やはり生活習慣病の結果として起こる場合が多くを占めます。 脳梗塞を起こすと、様々な症状が起こります。そして、後遺症を残してしまうことも少なくありません。 普段の生活習慣を改めた上で、医療機関での検診を活用し、若い頃から脳梗塞にならないように気をつけていきましょう。 ご参考になれば幸いです。 No.S091 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.26 -
- 脳卒中
くも膜下出血|その原因と治療、怖い再発について 「くも膜下出血」は、脳と、くも膜の間に出血した血が溜ることをいいます。 「脳」に関する病気は、死亡を伴う、命を落とす危険性が高いため、とても怖いものです。その意味で「くも膜下出血」も脳に関わる怖い病気の一つです。 ちなみに、この疾患は中年期40代以降から、発症リスクが高まるほか、男性よりも女性に多く発症しています。特に、喫煙や飲酒といった習慣がある場合や、高血圧の場合は、発症するリスク、その確率が高くなるとされています。 くも膜下出血が起こると激しい頭痛がおこるほか、死亡に至らずとも重い後遺症が残る可能性が高いことが知られていますが、実際には具体的なことは「よく知らない!」という人も少なくないのではないでしょうか。 そこで今回は、くも膜下出血の症状や原因、治療方法などの概要に合わせて、再発予防の観点からも、その注意点を紹介してまいりましょう。 くも膜下出血の症状 くも膜下出血を発症した際の症状で、代表的なものとして挙げられるのが「頭痛」です。くも膜下出血に場合、痛みは徐々に訪れるのではなく、数秒でピークに達するのが特徴です。 症状としては、これまでに経験したことがないような激しい頭痛で、大げさではなく「ハンマーで思いっきり叩かれたような痛み」が突然起こるという具合に例えられています。脳内での出血量が少ないと痛みも少ないのですが、出血量が多くなると痛みも強なりく、意識障害を引き起こすケースも少なくありません。 また、くも膜下出血によって脳が圧迫されると脳細胞が破壊されてしうことで「麻痺やしびれ、言語障害などの後遺症」が残るケースは珍しくありません。 そこで、これまで体験したことのない激しい痛みが突然、頭に覚えた場合は、大至急、救急車の手配など緊急で医療機関の受診が必要であることを忘れてはなりません。意識がある状態で病院に到着することが生死を分けると言います。 ぜひ前兆や初期症状を見逃すことなく対応下さい。 くも膜下出血の原因 くも膜下出血は、「激しい頭痛に見舞われる」「後遺症が残る」など、危険で怖い病気の一つです。くも膜下出血の原因は、脳動脈にできる瘤(こぶ:脳動脈瘤/のうどうみゃくりゅう)にあります。 血管には、膜が薄く弱い部位あります。その弱い部位が強い血流を受けると膨らんで瘤ができてしまいます。その瘤に、高い血圧がかかるなどした場合に破裂してしまうのが「くも膜下出血」です。 脳動脈瘤は血流が強くなる部分、血管が分岐している箇所などにできやすいのが特徴です。 くも膜下出血の治療 くも膜下出血の治療法は、原因となる脳動脈瘤が再び破裂しないように、頭痛や後遺症が発症するのを防ぐことが目的になります。ただし、脳動脈瘤を小さくしたり、脳動脈瘤を消したり、無くしたりする方法は無いことから、脳動脈瘤へ血液が流れないようにする手術的治療が行われます。 脳動脈瘤へ血液が行かないようにする手術方法として代表的なものの一つは、開頭して行う手術で動脈本管と動脈瘤がつながっている部分(ネック)を専用のクリップで挟む「ネック・クリッピング」という治療法です。 また、二つ目に、脳動脈瘤のなかに血液が入らないようにするために、開頭をせずに血管を使ってカテーテルを動脈瘤まで進め、破裂した部位にプラチナ製のコイルを詰める方法があり「コイル塞栓術」という治療方法になります。 いずれの治療法であっても必要なのは術後の経過観察です。定期的な診察を受けることが大切です。 ・くも膜下出血の治療(手術) ・ネック・クリッピング(開頭) ・コイル塞栓術(血管から) くも膜下出血が危険で怖い理由は「再発」です くも膜下出血が起こった際に適切な治療が行われても安心してはいけません。くも膜下出血は、非常に恐ろしく危険な病気だと呼ばれるのは、「命にかかわる病気であること」、そして何よりも「再発率の高さ」が挙げられます。 その「再発には前兆」があります。そこで再発を防ぐために気を付けて欲しいことを記しました。 くも膜下出血を発症した場合、治療を受けることは当然ですが、それに満足しないでください。その後、再発しないように気をつけることが重要なテーマになります。くも膜下出血の再発を防ぐためには、その前兆を知っておき、常日ごろから注意するという意識が大切です。 今回は、「くも膜下出血の再発の前兆」と題して既に発症し、治療をうけたものの再発に注意すべき人に向けて、覚えておいて欲しい点を解説しました。また、併せて発症後の後遺症に対してもご説明してまいります。 1.くも膜下出血の再発の前兆、初期症状「動眼神経麻痺」とは くも膜下出血の再発の前兆、初期症状として代表的な症状が目に現れます。それが動眼神経麻痺」です。動眼神経麻痺とは、片方の瞼が開かなくなって、両目で物を見ようとすると物が2つに見えるようになる状態をいいます。 動眼神経麻痺は、大きくなった動脈瘤が動眼神経を圧迫するために起こります。そのため、「動眼神経麻痺になってしまうと動脈瘤が大きくなっている可能性があるります。 この動脈瘤が破裂してしまうと、くも膜下出血が再発してしまう可能性があるいため、この症状を忘れないでくださいす。また、大きくなった動脈瘤は動眼神経だけではなく、「視神経を圧迫」することもあります。 そうなると視力が低下したり視野が欠けたりするケースもあるのでそのような症状に気が付いたときは、何よりも早く病院で脳外科、脳神経外科などの医療機関を受診し、治療を受けてください。 動眼神経麻痺の特徴 ・両目でモノを見るとモノが二つに見える ・視力の低下 ・視野が欠ける 2.くも膜下出血の再発の前兆、初期症状「頭痛」に注意 動眼神経麻痺のほかにも、くも膜下出血の再発の前兆、初期症状として「頭痛」があります。視野の乱れと共に起こることがあり、くも膜下出血が再発する兆候として頭痛も疑って欲しいと思います。 その症状を感じた場合は、すでに少量の出血が生じている可能性が高いため、早急に治療すべきとの意識を持ってください。この際に「軽い頭痛」についてご注意ください。 初期症状として頭痛の程度はそれぞれで、例えば「軽い頭痛」の場合、「くも膜下出血」の再発の前兆とは考えずに見過ごしてしまいかねないことがあります。軽い頭痛であっても異常を感じたら念のため病院へ向かいましょう。 受診する際には、過去の既往症として「くも膜下出血を発症した」という情報を与えなければなりません。そうで無い場合、単なる風邪などと診断されてしまうケースが少なくないからです。 ついては、過去に「くも膜下出血」を発症したことがあるなら、重い軽いに、関わらず頭痛がある場合には明確に「過去、くも膜下出血を患った」という情報を伝えるようにすることが大切です。 その他にも症状を感じたなら、「いつもと違う」「初めての痛み」などと、症状の内容を詳しく医師に伝えるよう努めてください。 くも膜下出血の再発の前兆 ・動眼神経麻痺 ・めまい ・視力低下 ・頭痛(症状は様々、軽い場合も要注意) くも膜下出血の再発を防ぐのは定期的な検査 ここまで「くも膜下出血の再発防止」のために、知っておきたい前兆について記してまいりましたが、再発防止には定期的に検査を受けることが非常に重要です。 くも膜下出血の原因となる動脈瘤を検査で発見することができれば、動脈瘤が破裂してしまう前に処置することができるからです。くも膜下出血を発症して10年くらい経過してから治療した動脈瘤が再び大きくなったり、新しい動脈瘤ができて破裂したりする可能性もあります。 一度検査して問題なかったからと安心や、油断をせずに定期的に検査を受けるようにしましょう。 再発を防ぐために ・定期的な検査を受け続けることが何より大切 まとめ/くも膜下出血とは|その原因と治療、怖い再発について くも膜下出血の特徴について簡単に分かりやすいようにご紹介しました。発症時にハンマーやバットで突然殴られたような激しい頭痛に見舞われること。再発率が非常に高いため、くも膜下出血を経験したなら再発防止にも力を入れる必要があること等をご説明しました。 また、くも膜下出血は、危険です。死亡を免れても後遺症が残る可能性が高いとても怖い病気です。ここで記したような症状を感じたらすぐに病院の脳外科や、脳神経外科等の専門医療機関を受診してください。 手術による方法としては「ネック・クリッピング」や、「コイル塞栓術」というものがあります。 また、治療後であっても再発率は高いため、くも膜下出血の前兆を知っておくことは大切です。早期に対処すれば再発を防ぐ可能性が高まります。何度も申しますが何か頭に違和感を感じたら迷わず医療機関を頼りましょう。 ただ、くも膜下出血が早期に発見され、適切な処置を受けた場合でも麻痺や痺れといった障害が残る可能性が高いのが現実です。 障害については治療後、リハビリに励むことで改善を目指せますが慢性期に移行すると機能の回復は困難となり、最終的に身体を動かせなくなってしまいかねません。 そんな、くも膜下出血の後遺症でお困りの方へ再生医療の可能性を伝えることができればと考えています。興味があれば以下のリンクをクリックして下さい。 以上、くも膜下出血とは、その原因と治療、怖い再発について、記させていただきました。ご参考にしていただければ幸いです。 No.S053 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療で脳卒中の治療する 脳卒中(脳梗塞、脳内出血)は、再生医療による幹細胞治療で復活を目指せます
2022.03.14 -
- 脳卒中
- 脳梗塞
脳卒中の3つの症状と治療法!脳梗塞の再発を予防する具体的なコントロール方法 厚生労働省によると、脳卒中は、2018年の1年間における死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は10万8,186人で全体の7.9%を占め、死因の上位から4番目という結果となっています。 その翌年、2019年においても、10万6,552人で全体の7.7%となり、こちらも2018年同様に死因の上位から4番目という結果になっています。 脳血管疾患で亡くなった方のうち、60%にあたるおよそ7万人の方が脳梗塞で亡くなっており、一命を取り留めたとしても、後遺症である麻痺が残り、寝たきりになってしまう場合も少なくない怖い病気です。 しかし以前、1950年頃より約30年間、脳卒中は日本人の死因の第1位でした。 少しではあるものの順位が下がったのは、1960年頃より脳卒中発症において最大のリスク原因である高血圧に対する治療が広く行われるようになり、脳卒中の発症を一定以上抑制することが可能になったからです。 また、脳梗塞の発症直後に閉塞した血管を再開通させ、神経細胞死を防止する血栓溶解薬(t-PA)が日本でも認可(2005年)され、さらにカテーテルで脳血管を閉塞している血栓を除去する血管内治療も認可(2010年)されるなど、脳卒中直後の超急性期において神経細胞死を防ぐ治療法も進歩してきました。 脳卒中の兆候を見つけたら即病院を受診 脳卒中は、その兆候を発見したら直ちに病院へ向かいましょう。 早期に治療を開始することで「後遺症が軽くなる可能性」があるからです。 治療を行うには検査が必要となり、その検査に1時間程度必要ですので症状を発見したら早急!遅くとも2時間以内を目処に速やかに病院で受診すべきです。この時間が症状を左右する可能性があります。 病院ではまず、問診、診察、採血、胸部レントゲン、心電図、頭部CT、頭部MRI、頸動脈エコー、心エコーなどの検査を行います。検査の結果、脳卒中と診断されると次は治療に移ります。 脳卒中の中でも「脳出血」、「くも膜下出血」、「脳梗塞」など各症状別に治療法は少し異なり、点滴や飲み薬による脳血流改善、血栓をできにくくする抗凝固療法や抗血小板療法、脳梗塞後に脳内で発生する活性酸素などの有害な物質を除去して、脳の障害を予防する脳保護薬の使用などがメインで行われます。 また、血圧、体温、脈拍などの全身状態の管理も行い、併せて日常生活動作の改善を目的としてリハビリも行います。 脳卒中の3つの症状とその治療法 1)脳出血 高血圧が脳出血の原因になることが多いので、降圧薬(血圧を下げる)を投与します。また、出血を止めるために止血剤を使用されることもあります。 さらに、出血によって脳が圧迫されるので、浮腫をとるための薬剤(抗浮腫剤)も投与します。また出血量が多い場合には、命にかかわる事もあるので、開頭手術によって血のかたまりを取り除く手術を行うこともあります。 2)くも膜下出血 脳の血管にできた「こぶ」が破裂して出血するので、破裂した部位をふさぐ手術をします。手術の方法は2通りあります。 ■開頭クリッピング術 頭の骨をはずして、「こぶ」の根元を洗濯ばさみのような道具(クリップ)ではさんでふさぎます。 ■血管内コイル塞栓術(動脈瘤塞栓術) 「こぶ」の中にコイルと呼ばれる細い金属をいれて「こぶ」全体をふさいでしまいます。カテーテルという細いストローのような道具を使って血管を通し、「こぶ」までコイルを運ぶので、開頭手術をすることはありません。 3)脳梗塞 脳梗塞は、脳の血管の動脈硬化が起きた部位に形成された血栓、あるいは心臓で出来た血栓によって脳の血管が詰まり脳が壊死してしまうものです。 脳梗塞がおこってから4.5時間くらいまでを超急性期といい、この時間内に詰まった血管を再開通させることができると、劇的に症状が改善する可能性があります。 脳梗塞がおこってから48時間以内であれば、血が固まるのを抑制する抗凝固薬を投与します。 脳梗塞の急性期のみに施行される治療には「t-PA」という点滴や、血管内治療などがあります。これらの治療を受けるには、発症してからの経過時間をはじめ、さまざまな条件があります。 それらをクリアする必要があり、そのため脳梗塞で病院に来られた方の2~5% (100人中で2~5人)程度しか、この治療は行われていません。 さらに、ルールを守って使っても 6%(100人に6人)程度の確率で症状が悪化するような脳出血を生じます。 うまくいけば劇的に症状が改善する一方で、効果が期待できなかったり、症状が悪化したりする可能性がある治療法であることを知っておいていただければと思います。 ■t-PA:組織型プラスミノゲン・アクティベーター (tissue-type plasminogen activator:t-PA) こちらの薬を点滴して血栓を溶かし、脳の血流を再開させます。t-PAを使用することで、3ヶ月後に自立した生活を送れる患者さんが、使用しなかった時と比べて約50%増加するとされています。 脳梗塞により脳神経細胞が死に至る経過は早く、適切なタイミングを逃すと、出血などの合併症で逆に症状が悪化する危険があります。基本的には発症してから4.5時間以内に治療が開始できる患者さんに限り、治療の対象となります。 (t-PAは2005年10月から日本で認可され、発症後3時間以内の患者さんを対象に使用されていましたが、2012年9月より対象となる治療間が4.5時間に延長されています。) ■血管内治療 脳梗塞の血管内治療は、発症してから8時間以内の患者さんが対象となる治療です。 細いビニールの管(カテーテル)を足の血管から挿入して、脳の血管へ進めて、血管の詰まりの原因となっている血栓を溶解したり、回収したりして、閉塞した脳血管を再度開通させます。 具体的な方法として、カテーテルを閉塞した血管に導入し、血栓溶解剤(ウロキナーゼ)を投与する方法、バルーンを閉塞した血管に留置し血栓を破壊する方法。 また、メルシーリトリーバーという、先端がらせん状になっている柔らかいワイヤーで、脳の血管をつめている血栓をからめとって回収する方法。 ペナンブラという血栓を吸引する器具で、まるで掃除機のように血栓を吸引し回収する方法(柔らかい血栓も回収することが可能)などがあります。 ■t-PA療法の注意点 問題点としては、t-PA療法の適応対象となる時間「4.5時間」が強調されるあまり、「4.5時間を過ぎた場合は治療してもあまり意味がない」と誤解されることが多く、専門病院への受診を躊躇されるケースもみられます。 また発症時刻がはっきりとわからない場合では、発見から早急に病院へ搬送してもt-PA療法の適応とならないことがありました。しかし2019年3月より、頭部MRI検査で「発症からあまり経過していない可能性が高い」という所見がみられる場合には、t-PA療法を検討できるようになりました。 そして、脳卒中専門の病棟であるSCU(脳卒中ケアユニット)で従来使用される薬を用いた治療や急性期のリハビリテーションを積極的に行うことで、発症後4.5時間を過ぎて来院された患者さんでも良い治療効果が現れることも少なくないので時間にかかわらず専門施設でしっかりとした初期治療を始めることが重要です。 脳梗塞の再発予防 一度脳梗塞を起こすと再発しやすい傾向があり注意が必要です。統計的には脳梗塞発症後1年で10%、5年で35%、10年で50%もの人が再発しています。 そこで、脳卒中の再発を予防するには、まず生活習慣の改善を行うことです。脳卒中の危険因子とされている高血圧や喫煙、多量の飲酒、糖尿病、肥満、運動不足などは脳卒中の発症の危険性が高まります。 医師、薬剤師、栄養士など専門職の指導に従い、規則正しい生活や禁煙、減塩や減量に取り組みましょう。 また再発予防として、抗血栓薬を処方されることがあります。脳卒中の原因によって処方される薬剤は違い、心臓が原因で発症した心原性脳塞栓症には抗凝固薬が、心臓以外の原因(血管由来)の非心原性脳梗塞には抗血小板薬が使用されます。 【具体的な再発予防①~危険因子のコントロール~】 脳卒中の危険因子は、再発の危険因子でもあります。過去に一度脳卒中を発症しているということは、すでに危険因子があるということなので、十分注意をしましょう。 脳卒中の危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、多量飲酒、肥満、喫煙、運動不足などです。これらを予防し、さらにコントロールしていくことが再発予防につながりますので、以下のようなことを心がけましょう。 禁煙 文字通りタバコを止めましょう 塩分の取り過ぎを控える 成人男性8g未満、女性7g未満で高血圧患者では6g未満 減量 標準体重を知ってダイエットを行う 食事に気を付ける 毎日5種類以上の野菜(350g/日以上)、魚、果物の摂取 減塩、低カロリー、低コレステロール入浴 節酒 アルコール換算20g程度(日本酒1合程度)に抑える 既往症に注意する 高血圧、脂質異常症、糖尿病、心臓病などがある場合には適切に治療する 運動 適度な運動を行う、ストレスや疲労をやめない 定期健診 定期的に健診を受け、血圧、コレステロール、中性脂肪、血糖などをチェックする 水分を取る 脱水症状にも注意 【具体的な再発予防②~定期的な検査~】 脳梗塞が治まった後も年に1回程度専門病院へ行き、検査を受けることが重要です。CT、MRIの他に頸部の血管を検査する頚動脈エコーも脳梗塞再発予防には有用です。 【具体的な再発予防③~服薬継続~】 再発予防のためには、処方された薬をきちんと服用することも大切です。主治医の指示に従って、正しく継続して服用しましょう。なお、服用中に副作用が現れるなど気になることがある場合は、すぐに相談しましょう。 まとめ・脳卒中の3つの症状と治療法!脳梗塞の再発を予防する具体的なコントロール方法 脳卒中の治療には、手術・点滴・内服薬などがあります。 これらの中で内服薬な自分で管理をする必要があります。ところが、処方された量を決められた日数できちんと飲みきる人は意外と多くありません。実際のところ、薬を飲み残してしまう理由の大半は単なる飲み忘れです。 服薬カレンダーの使用や一包化するといった工夫で、その時間帯に服用すべきお薬を選ぶのは容易ですが、定刻に服薬することを思い出すことは、高齢者にとっては難しい面もあります。 定刻に服薬することを思い出すためには、お知らせ機能付きのピルケースやスマートフォン・携帯を利用してアラームや通知を設定し、飲み忘れを防ぎましょう。 以上、脳卒中3つの症状とそれぞれの治療法、再発を予防する具体的なコントロール方法について解説にしました。参考にしていただければ幸いです。 No.S024 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳卒中の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳卒中の先端治療法として脚光を浴びています
2021.12.21 -
- 脳卒中
脳卒中のリハビリで予後予測は非常に重要です 脳卒中のリハビリテーションの予後に関する予測について「予後」とは、病の経過や、結果に関する見通しを指します。 今回は、脳卒中についてリハビリ後の医学的な見通しについて、病気の進行具合や,治療に対する効果,そして今後の改善の見込みを予測するということの重要性を記させていただきます。 脳卒中の予後予測をすることは、必要だと分かっているけど、いつ、どんな時に、どのようにすればいいか分からない方が多いのではないでしょうか。 まず、予後予測を立てることによって、リハビリの内容や、進め方といった治療内容などを修正をしながら進めることができます。 しかし、予後予測をせずにリハビリを続けていくと、果たしてその治療法が合っているのか、効果的であるのかどうか、今後の軌道修正が必要なのかさえもわからなくなります。 例えば予後予測を立てずにリハビリを行うというのは、目的地を決めずにドライブをしているようなものです。それでは最短の道順を決められず、だらだら寄り道をしながら進むことになるため、どこへ到着するのか、それさえも分かりません。 つまり、リハビリにおいては予後予測をして「目的地」を決めることこそが何よりも大切だということです。 リハビリにおいて予後予測をすることが大切とされている理由として、目標を共有することで治療内容を吟味することができ、病棟での対応の統一化、退院際の検討があげられるからです。 リハビリは、生活そのものを対象に行う リハビリは、一人で行うわけではなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医師、看護師、ソーシャルワーカーなど様々な職種がチームとして情報共有しながら関わるべきです。 仮にトイレ動作の確立を目標にした場合、 リハビリでの練習だけでなく、病棟で看護師にもリハビリと同じやり方でできるように動作方法を伝えておくことで、入院中の生活においても自然と練習ができるようになります。 そして、患者さんごとに予後予測をたてて、治療を進めますが、「2か月後には自立歩行」できると予測したとして、達成することができていれば、そのリハビリは正解であったということになります。 その場合、たとえ目標が達成できなかったとしても「脳画像の解読が不十分だった」のか、「治療内容が適切でなかった」のか、「既往歴の影響があった」のか、「認知面の影響で学習が阻害されていた」のか、などの点を振り返ることが必要です。 もし、その患者さんに関わる期間がまだ残っているのであれば、再度、予測をたて直すことで治療内容を改善することが可能です。またリハビリが終了してしまったのであれば、今後の自分の成長につなげることもできるでしょう。 入院中にリハビリで介入している時間は、回復期病棟の場合でも最大で3時間であり、それ以外の時間は病棟で過ごすことになってしまうため、病棟での生活にもおいても「起き上がり」、「靴の脱ぎ、履き」、「車椅子のこぎ方」、「更衣の仕方」、「トイレでの動作」などをリハビリの一貫として取り組むことが改善の早道になることは言うまでもありません。 具体的には、片麻痺の患者さんであれば患側(麻痺側)から足をズボンに通すなどの順番があるため、定着できるように病棟で指導したり、部屋に手順を記した紙を貼って普段から意識できるようにすることが大切です。 予後予測の大切さ また、予後予測をして今後は、独歩での歩行が可能になると予測できれば、あえて車椅子の片手片足駆動のやり方や、ブレーキ、フットレストの管理に関する指導は形程度で済ませ、それよりは病棟に頼んでリハビリの時間以外に看護師さんと歩くための練習時間をつくるなどの対応を求めるべきでしょう。 このときに「今後、歩く見込みがないならやる必要ない」と指摘されないためにも予後予測が必要という訳です。 また、今後の方針を決める場合に「リハビリの経過をみて決めていきましょう」という内容で家族と話すことが多いのではないでしょうか。 この場合、1ヶ月程度リハビリをしてみて、回復度合いなどから考慮して予後予測ができればいいですが、2~3ヶ月たっても見通しがつかないとなるとなかなか退院時期をはっきりすることができません。 もしも自宅への退院が難しい場合、家族は受入施設を探す必要があります。その際、いくつかの施設を見学して決めることになると思うのですが、実施のところ一日で全部の見学が終わるわけではなく、検討する時間も必要になります。 自宅への退院だとしても、自宅での環境の調整が不可欠、サービスの調整も必要となると意外と時間がかかります。反対に予後予測ができていれば、これらの退院の調整や準備をじっくりすることが可能です。 これら色々な事柄について予後予測が大切になってまいります。 脳卒中治療ガイドライン予後予測の必要性が書かれています。 1.リハビリテーションプログラムを実施する際、日常生活動作(ADL)、機能障害、患者属性、併存疾患、社会的背景などをもとに機能予後、在院日数、転帰先を予測し参考にすることが勧められる(グレードB)。 2.既に検証の行われている予測手段を用いることが望ましく、その予測精度、適用の限界を理解しながら使用すべきである(グレードB)。 引用文献:脳卒中ガイドライン2009 一般的に脳卒中には「6ヵ月の壁」といわれるものが存在します。発症から6ヵ月を過ぎると、脳自体が回復しなくなり、症状や機能も一定になるといわれており、これを「プラトー」といいます。 脳卒中には様々な症状があるので、一つの予後予測だけだと精度は不十分です。現在、運動機能、脳画像、FIM(機能的自立度評価法)、年齢からなど様々な方法が開発され、いろんな角度から予後予測することができるようになりました。 二木の早期自立度予測基準 臨床的で簡易に評価ができ、精度も高く、日本で最も使用されている予後予測法に「二木の早期自立度予測基準」があります。 発症時期に合わせて、①入院時の予測、②発症2週時での予測、③発症1ヵ月時での予測、の3つにわけられ、それぞれの時期によって使い分ける必要があります。 ①入院時の予測 入院時のADL能力 歩行能力予測 ベット上生活自立(※1) 歩行自立(大部分が屋外歩行可能で、かつ1か月以内に屋内歩行自立) 基礎的ADL(※2)のうち2項目目以上実行 歩行自立(その大部分が屋外歩行かつ、大部分が2か月以内に歩行自立) 運動障害軽度(※3) 発症前の自立度が屋内歩行以下かつ運動障害重度(※4)かつ60歳以上 自立歩行不能(大部分が全介助) Ⅱ桁以上の意識障害かつ運動障害重度(※4)かつ70歳以上 ※1:介助なしでベッド上の起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL・・・食事、尿意の訴え、寝返り ※3:Brunnstorm stage4以上(麻痺側下肢伸展挙上可能) ※4:Brunnstorm stage3以下(麻痺側下肢伸展挙上不能) ②発症2週時での予測 発症2週時でののADL 歩行能力予測 ベット上生活自立(※1) 歩行自立(かつその大部分が屋外歩行、かつ大部分が2か月以内に歩行自立) 基礎的ADL(※2)3項とも介助かつ、60歳以上 自立歩行不能(かつ、大部分が全介助) Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、夜間せん妄を伴った中程度の認知症があり、かつ60歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL:食事、尿意の訴え、寝返り ③発症1ヵ月時の予測 発症1か月でののADL 歩行能力予測 ベット上生活自立(※1) 歩行自立(かつその大部分が屋外歩行、かつ大部分が3か月以内に歩行自立) 基礎的ADL(※2)の実行が1項目以下かつ、60歳以上 自立歩行不能(かつ、大部分が全介助) Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、両側障害、高度心疾患などがり、かつ60歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL:食事、尿意の訴え、寝返り ④入院1ヵ月時に予測不能なケース ・全介助で59歳以下 ・全介助60歳以上だが、遷延性意識障害・認知症・両側障害・高度の心疾患を有さず、しかも基礎的ADLを3項目中2項目以上実行可能 損傷部位と予後 予後に与える影響は、脳の損傷した部位と大きさによって異なります。そしてそれは脳の損傷部位と大きさなどから、3項目に分類されます。 1.小さい病巣でも運動予後の不良な部位 ・放線冠(中大脳動脈穿通枝領域)の梗塞 ・内包後脚 ・脳幹(中脳・橋・延髄前方病巣) ・視床(後外側の病巣で深部関節位置覚脱失のもの) 2.病巣の大きさと比例して運動予後がおおよそ決まるもの ・被殻出血 ・視床出血 ・前頭葉皮質下出血 ・中大脳動脈前方氏を含む梗塞 ・前大脳動脈領域の梗塞 3.大きい病巣でも運動予後が良好なもの ・前頭葉前方の梗塞・皮質下出血 ・中大脳動脈後方の梗塞 ・後大脳動脈領域の梗塞 ・頭頂葉後方~後頭葉、側頭葉の皮質下出血 ・小脳半球に原曲した片側性の梗塞・出血 運動機能の予後は、放線冠、内包後脚など錐体路を含んでいれば、例え小さな梗塞でも予後不良といわれており、小脳出血や小脳梗塞では、良好な改善がみられる場合があるので、初期症状からは、予後予測の判断が難しいとされています。 脳卒中における予後予測の中でも歩行自立度に関しては理解力、学習能力があれば弛緩性完全麻痺の場合などを除き、ある程度の歩行自立は可能だと考えられています。そのため、理解力や学習能力の判断が重要になります. その他にも、発症後の機能をもとにした予後予測の方法があり、 ①脳卒中を発症して初日~3日で症状が安定しているとき ・背もたれがなければ座れない:車椅子レベル ・背もたれがなくても座れる:立位、装具と杖を使用して伝い歩きレベル ・手すりを持って立てる:装具と杖を使用して歩行可能 ・手すりを持たないでも立てる:杖歩行or杖なし歩行 ②脳卒中の発症7日後で下肢のブルンストローム(Brunnstorm Stage)を指標にしたもの ・Stage1:車椅子レベル ・Stage2:立位、装具と杖を使用して伝い歩きレベル ・Stage3:装具と杖を使用して歩行可能 ・Stage4:杖歩行or杖なし歩行 これらはあくまで発症後の機能をもとにしたものであるため、脳出血では脳内の血腫の吸収度合にもよっても予後予測は変わってきますし、運動麻痺では放線冠や内包にかかっているかどうかも重要な要素になってきます。 よって、これは参考程度の簡単な予後予測であることを理解しておきたいものです。 脳卒中|再生医療の可能性 ここまで脳卒中のリハビリに関する予後予測に関するご説明をしてまいりました。最後に、再生医療という先端治療の可能性についてお話いたします。 まだまだ一般的ではない治療法なのですが、症状を改善させる期待を持てる方法です。これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療の手法なら一度機能しなくなった脳細胞が復活し、後遺症を改善できることがわかってたからです。 もともと我々の身体にある「幹細胞」は神経、血管、骨、軟骨などに変化することがわかっています。その幹細胞を培養して数を増やし、いろいろな組織に変化する性質を利用して脳細胞を再生させるのです。 今では脳血管障害の再生医療の研究が進み、安全性が高く効果があると認められ、世界でも注目されている治療法となっています。 ▼ 脳卒中、再生医療の可能性はこちら 再生医療で脳卒中の予後を改善する先端治療法いついて 脳卒中|リハビリについての予後予測/まとめ リハビリでの目標を設定するには、予後予測が必ず必要です。しかし予後予測を行い「歩行自立は困難」という結果になったとしても、諦めるべきではありません。 予後予測の精度は高くてもそれはあくまで予測でしかなく、予後予測通りに目標を設定し、治療プログラムを進めたとしても、それ以上の結果は得られることは難しいこともあります。 なので、目標設定をする際は予後予測よりも、少し上、場合によってはさらに上を目指すことが大切です。これくらいが現実的かな、という冷静な考え方も必要ですが、絶対に諦めないという医療従事者としての強い想いも必要だと思います。 また、新たな可能性として再生医療という先端治療があることも解説させて頂きました。 No.S023 監修:医師 加藤 秀一
2021.12.21 -
- 脳卒中
脳卒中のリハビリで手足の麻痺を回復させ、残った機能を最大化させる方法 リハビリテーション(リハビリ)とは、元に戻すこと! リハビリテーションの語源はre(再び)+ habilis(適した)で「再び適した状態に戻ること」、「本来あるべき状態に回復すること」を意味します。 脳卒中においては、脳卒中による手足の麻痺(まひ)を回復させ、残った機能を最大限に活用することで「人間らしい生活の送り方を取り戻す活動が「リハビリテーション」というものでリハビリと略して言われることが多いです。 これまで、脳卒中のリハビリは、脳卒中を発症してから間もない急性期ではなく、病状が定着する慢性期や回復期から開始するのが一般的な段取りでした。 しかし、近年、脳科学の進歩に伴って脳卒中を発症した早期から開始することが、その後の良好な機能の回復につながる可能性が高いと指摘されるようになってきました。 脳卒中によって手足の麻痺などが生じた場合、程度には個人差がありますが、何らかの後遺症(障害)が残ることが多くみられます。この後遺症と付き合いながら、いかに人間らしく生活を送るかがリハビリテーションの意義となるのです。 その為には、麻痺した手足を回復させ、残った機能を最大限に活用します。 さらに、失った機能を補うための補装具や、コミュニケーション・エイド(コミュニケーションを助ける用具)の使用や、住宅の改修改造、ベッドや車いすを借りるなどについて公的な支援制度を生かし、「日常生活活動」(ADL:activities of daily living)の幅を広げるだけでなく、「生活の質」(QOL:quality of life)の向上を図ることが大切です。 脳卒中の発症を見逃さないために 脳卒中でみられる症状には様々あり、特に顔、手足、言語に障害がみられます。顔、手足、言語のうち一つでも異常があれば脳卒中である確率は、非常に高いとされています。 (1)頭痛やめまい ・突然の激しい頭痛(吐き気や嘔吐を伴うこともある)→くも膜下出血 ・回転性めまい(吐き気や嘔吐を伴うこともある) (2)意識の異常 ・意識がもうろうとし、反応が鈍い ・わけもなく暴れる (3)手足の力の異常 ・ろれつが回らない ・顔面を含む半身の脱力 ・口の片側からよだれが出る、食べたものがこぼれる ・食事中に箸を落とす、字がうまく書けない、手の動きがぎこちない ・足の片側でよくつまずく、片方のスリッパが脱げやすい ・片足を引きずる、壁伝いか手すりを使わないと歩けない (4)手足の感覚の異常 ・唇の周囲と片方の手のひらの感覚が同時におかしくなる ・顔の片側と左右どちらか一方の感覚がおかしくなる ・入浴した時に体の半分はお風呂の熱さを感じない (5)言語の異常 ・言いたいことがうまく言えない、書けない ・聞いた言葉や読んだ文章が理解できない (6)目の異常 ・片方の目が突然見えなくなる ・視野が半分になる ・物が二重に見える (7)バランスの異常 ・力はあるのに、うまく物がつかめない ・座ったり、立ったり、歩いたりするのにバランスが取れない (8)その他 ・突然の記憶障害 ・けいれん発作 脳卒中で3つの症状>FAST 脳卒中で起こる典型的な3つの症状と、発症時刻を組み合わせた言葉に“FAST”というものがあります。 ①Face:顔のマヒ ・・・顔の半分が下がる、ゆがんでいる、うまく笑えない ②Arm:腕のマヒ ・・・両腕を前に突き出した時に片腕が高さを保持できず下がってくる ③Speech:ことばの障害 ・・・ろれつが回らない、文章を正しく繰り返せない、返事が乏しい ④Time:症状に気付いた時刻 ・・・これらの症状に気付いたら発症時刻を確認してすぐに“119番通報”を! 【救急車の呼び方】 ① “119番”に電話をかける ② “救急です”と伝える ③ 現在地を伝える ④ 患者の姓名、性別、年齢、症状を伝える 脳卒中急性期のリハビリテーション リハビリは、医師の指示のもと、セラピスト(療法士)によって行われます。セラピストにはそれぞれ専門分野があり、それに応じて役割を分担して対応させて頂きます。 ■セラピストの種類と役割 ・理学療法士 (PT:Physical Therapist) 起き上がる、座る、立つ、歩くなど生活の基本となる動作(基本的動作)に、必要となる関節の動きや筋力などを評価し、能力の習得や向上を目指す運動や練習を行います。 ・作業療法士 (OT:Occupational Therapist) 患者さんがご飯を食べる、着替えをする、トイレに行く、歯を磨く、字を書くなどの動作(応用動作)を身につけるために、不自由となっている腕や手の機能などについて評価し、その動作能力を向上させたり獲得するための作業練習を行います。 ・言語聴覚士 (ST:Speech Therapist) 聞く、話す、読む、書くなど言語機能に障害のある患者さんの障害の程度によって、必要な練習や助言をします。 次に、実際のリハビリついて紹介します。 【1】理学療法 ■離床に向けてのベッド上でのリハビリテーション ベッドで寝ている状態のことを臥床(がしょう)といい、臥床期間が長期にわたると、麻痺した側の手足の関節が硬くなったり、麻痺していない側の手足の筋力が弱くなったりします。そのため病床でのリハビリは必要不可欠になります。 長期の臥床は、褥瘡(じょくそう)や肺炎・尿路感染症、心肺機能の低下、起立時の血圧低下によるふらつきの原因にもなります。このように動けないことによって生じる一連の障害を「廃用症候群」と言います。 ①床上安静期 ■関節可動域訓練・筋力増強訓練 廃用症候群を予防するため、早期からベッドサイドでのリハビリによって手足の関節を動かしたり、筋力をつけたりする練習を開始します。 脳卒中を発症してから浅い時期は、病状が進行する可能性があり、ベッドから起き上がることは控えた方が良いため、セラピストが病室にてリハビリを行います。 この時期には、手足の関節が硬くなること(関節拘縮)を予防する目的で、痛みが生じないよう関節を動かす関節可動域訓練、筋力の低下を予防するため、手足の筋力増強訓練も行います。 ②離床期 ■頭部挙上負荷試験(とうぶきょじょうふかしけん) 脳卒中の患者さんの場合、突然起き上がると血圧が下がり(起立性低血圧)、症状が悪化することがあるので、ベッド上で寝た状態から徐々に頭を上げていき、症状に変化がないかどうかを確かめます。 ・チェック項目:血圧、心拍数、自覚症状、徴候の変化 ・頭部挙上角度:30°→60°→90°の順 ・負荷試験時間:30分間 ■端坐位、座位練習 ベッドで90°まで頭を上げられるようになれば、足を床に下ろして座る(端坐位)練習に移行します。その後、徐々に自力で座位を保つ練習や自分で起き上がる練習を行います。 ■車椅子の練習 ベッドから車椅子に、車椅子からベッドへ移乗する練習、車椅子の動かし方や止め方(ブレーキ)などの練習を、行動範囲を広げていけるように行います。 【2】リハビリテーション室にて 離床が進み、車いすに乗れるようになると、患者さんの行動範囲は大幅に広がるため、多くは集中治療室を出て一般病棟へ移ります。ベッドサイドで行われていたリハビリもリハビリテーション室に変わります。 ■一般的なリハビリ リハビリテーション室での訓練が可能になると、まず立つ練習から始め、立位保持が可能になれば歩行練習に移ります。まずは平行棒などの手すりを用いて行い、歩行が安定していけば、杖を使う歩行練習です。 基本は、①杖をつく→ ②麻痺側の足をだす→ ③健常側の足を出す。このような順で歩行します。 杖は歩行障害の程度に応じて大きく3種類あり、患者さんの麻痺の程度により使用する杖の種類が検討されます。麻痺した足をコントロールできず、立位保持や歩行が困難な場合は、足関節の固定を目的とした短下肢装具を使用する場合があります。 短下肢装具にはいくつかの種類があり、金属支柱付き短下肢装具、プラスチック短下肢装具、ゲイトソリューションデザイン、ファイナーなどが使用されます。 どの装具を選択するかは、ふくらはぎの筋肉の緊張度合いによって決めます。ふくらはぎの緊張が強く、足関節の強固な固定が必要な場合には金属支柱付き短下肢装具を、緊張が低い場合にはファイナーを使います。 それぞれの装具の特徴を理解し、患者さんの症状や回復度合いに合わせて、最適な装具を使用します。装具は、医師の処方をもとに作製すれば、健康保険の適用となります。 その他、必要に応じて階段昇降やバランス練習など、患者さん毎に練習内容を計画し、実施していきます。 【3】作業療法 ■サンディング ・傾斜したボードを上下方向に滑らせるもの ・関節の動きの改善や麻痺側の手の機能回復を目的として行う ■ペグボード ・麻痺した手でペグ(木釘)をボードに差し込んだり、ペグを指先でつまんで反転させたりするもの ・手指の巧緻性(つまんだり、離したりする機能)を高める目的で行う 【4】言語聴覚療法 言語機能の障害は大きく「失語症」と「構音障害」にわけられます。 ① 失語症 失語症になると「話す」ことだけでなく「聞く」、「読む」、「書く」ことも難しくなります。失語症には次のような種類があり、「聞く」「話す」「読む」「書く」などの言語機能について評価し、コミュニケーション能力の向上に必要な訓練・助言を行います。 ・運動性失語 言葉を聞くと理解はできるのに、うまくしゃべれない ・感覚性失語 言葉を聞いても理解ができず、言い間違い(錯語)が多い ・健忘失語 よく話を理解し流暢な話し方なのに、物の名前が出てこないために回りくどい話し方になる ・全失語 「聞く、話す、読む、書く」すべてに重度の障害がある ② 構音障害(運動性構音障害) 一方で「構音障害」は、脳卒中によって言葉を話すのに必要な舌や口唇、声帯など発声発語器官の麻痺や、それらの動きをうまくコントロールできず(失調)、呂律(ろれつ)が回らなくなり発音が不明瞭となる状態です。 麻痺の程度について評価し、より明瞭に発音できるよう発声・発語の練習を行います。重症の患者さんには、状態に合わせて筆談や五十音表の使用など、代わりのコミュニケーション手段の提案を行います。 【5】摂食・嚥下機能療法 脳卒中をきっかけに、食べたり飲んだりすることへの障害(摂食・嚥下障害)が起こる場合があります。 このような場合、医師や看護師、栄養士などが連携を取りながら、嚥下機能の評価・訓練を行い、患者さんの障害程度に応じ、食べる際の姿勢や、食べる物の柔らかさ、形を調整し、摂食・嚥下能力を高める練習をします。 再生医療という選択肢 脳卒中のリハビリは、これまで不通にできたことが、できなくなるため、嘆きたくなりますが、粘り強く続けることが大切です。そんな時、ともすれば挫折しそうにもなるものです。 そこで、お知らせしたいのが「再生医療」という最先端の医療分野の可能性についてです。 これまで脳の血管が破れたり、詰まったりすると脳細胞に血液や栄養が届かず約3~6時間で脳細胞が死に至り、元には戻らないと言われてきました。 しかし、再生医療によって一度機能しなくなった脳細胞が復活し、後遺症を改善できることが分かってきたのです。患者様ご自身の幹細胞を用いて脳細胞を再生させる可能性があります。 安全性が高く効果があると認められ、世界でも注目されている治療法です。詳しくは以下よりお確かめください。 No.034 監修:医師 坂本貞範 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2021.12.14 -
- 脳卒中
脳卒中の4つの種類を知って、脳卒中にならないために、できること!できないこと! 脳卒中とは、脳の血管が突然つまったり破れたりすることで脳の血管に障害を起こす病気を総称して「脳卒中」といいます。この脳卒中、いくつか種類に分かれ、それぞれ発症原因も異なります。 そこで、脳卒中の4つの種類と、それぞれの特徴と発症原因、その対策を分かりやすく解説します。 原因 種類 ・脳の血管がつまる ① 脳梗塞 ・脳の血管が破れる ② 脳出血 ③ くも膜下出血 ・一時的に脳の血管がつまる ④ 一過性脳虚血発作 ①脳梗塞 脳梗塞とは、脳卒中のなかでも最も患者数が多いとされている病気で、脳の血管が詰まることが原因となって脳に栄養が運ばれなくなり、その結果、脳の組織が壊死(えし)してしまう病気を指します。 脳梗塞では、運動機能を司っている場所が障害を受けると、手足の麻痺が現れるといったように、壊死した部分が司っていた機能に応じた症状が現れるという特徴があります。 ②脳出血 脳出血とは、脳の血管が破れることが原因となって出血が起こり、脳の組織が壊されてしまう病気です。脳梗塞と同様、脳の障害された場所が司っている機能に応じた症状が現れる特徴があります。 ③くも膜下出血 くも膜下出血とは、血管にできた「こぶ(「脳動脈瘤」と呼ばれる)」が破裂することが原因となって脳の表面に出血が起こる病気です。特徴として、突然、強烈な頭痛を生じることが多く、緊急の処置を必要とするケースが多くみられ注意が必要です。 ④一過性脳虚血発作 一過性脳虚血発作とは、脳梗塞に近い病態であり、脳梗塞の前兆として現れることがあります。一時的に脳の血管がつまることで症状が現れますが、24時間以内に症状が消えてなくなる点が特徴的です。 脳卒中の原因 ①脳梗塞:動脈硬化や血栓が原因 脳梗塞には、主に「脳血栓症」と「脳塞栓症」があります。脳塞栓症は、脳血栓症と比べて脳の太い血管がつまり、広い範囲で脳梗塞を生じることが原因となって重症化することが多いのが特徴です。 ・脳血栓症 脳や頸部の血管に動脈硬化による狭窄や閉塞が起こることによって生じるもの。 ・脳塞栓症 心臓や足など全身のどこかにできた血栓(血のかたまり)が、血流に乗って脳に到達することによって生じるもの。 特に近年の高齢化に伴い、心房細動という不整脈によって心臓内に血栓が形成され、これが血流に乗って脳に到達して生じる「心原性脳塞栓症」が増加しています。 ②脳出血:動脈硬化が原因 脳出血は、脳の血管の動脈硬化が原因で発症します。動脈硬化によってもろくなった血管に高い血圧がかかることで血管が破れ、脳出血が起こると考えられており、運動時や用便時、入浴時など血圧が急激に上昇した際に発症しやすいとされています。 ③くも膜下出血:脳動脈瘤の破裂が原因 くも膜下出血は、脳動脈瘤と呼ばれる脳の血管にできたこぶが破裂することが原因となって起こります。脳動脈瘤ができる原因は正確にはわかっていませんが、高血圧や脳血管への血流、ストレス、喫煙や遺伝的要因が関与していると考えられています。 高血圧、喫煙は脳動脈瘤が破裂する危険因子にもなるといわれています。 また、脳動脈瘤が生じやすい体質は遺伝するともいわれており、家族の中に脳動脈瘤が生じたことがある方やくも膜下出血を起こしたことがある方がいる場合は発症しやすいといえます。 脳卒中にならないために、できること!できないこと! 脳卒中の危険因子(原因)は「修正できない危険因子」と「修正できる危険因子」とがあり、脳卒中を予防するためには「修正できる危険因子」を改善するように日頃から注意していく必要があります。 そこで、修正できない危険因子と、修正できる危険因子を明確にして、修正できる危険因子については、その対策を明示させて頂きました。 (1) 修正できない危険因子(原因)とは 自分ではどうしようもない発症原因となるもの ①年齢:55歳以上では、10歳ごとに脳卒中の発症リスクが約2倍になります ②性別:男性は女性よりもリスクが高いとされています ③家族歴 (脳卒中):両親や祖父母に脳卒中の既往がある場合、発症のリスクが高くなるとされています。 (2) 修正できる危険因子(原因)とは 修正できる危険因子を知ることは、修正できない危険因子を知った上で、取り組めば脳卒中の発症リスクを下げることが可能になります。意識することで自分でできる対策です。 修正できる危険因子(原因) ①高血圧 ②糖尿病(高血糖) ③脂質異常症 ④心房細動などの心疾患 ⑤喫煙 ⑥飲酒 ⑦肥満 ①高血圧 高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり、血圧が高いほど脳卒中の発生率は高くなります。食生活の乱れやアルコールの飲みすぎ、急激な運動などで血液の粘り気が強くなったり、血液が流れるときの抵抗が大きくなったりすることで血圧が上昇します。 【高血圧の場合の修正目標】 ・高齢者: 140/90mmHg 未満 ・若年、中年者: 130/85mmHg 未満 ・糖尿病や腎障害合併例: 130/80mmHg 未満が推奨されています (2009 脳卒中治療ガイドラインより) ▼▼▼ 【高血圧の場合に脳卒中の発症を避けるため、修正すべき対策】 ・起床後や就寝前など、定期的に血圧を測定する(自己測定) ・眼底検査や心電図、尿検査などで高血圧の合併症を定期的にチェックする ・薄味にしたり減塩しょうゆを使ったりするなど、食塩を摂りすぎないようにする (理想の塩分摂取量:6g/日未満) ・精神的、身体的ともに過剰なストレスを避ける (疲れたら無理をせず休む、気分転換など) ・暖かい部屋から寒い廊下に出る、突然エアコンの風を直接受けるなど、急激な寒暖差を避ける ・ぬるま湯は血管を拡張させるため、入浴時はぬるま湯にそっと入る ・定期的に有酸素運動を行う(例:毎日30分の散歩) ・野菜・果物・魚類(カリウムを多く含む食品が望ましい)を積極的に摂る ・体重を減らす ・医師の指示通りに降圧剤を内服する (カルシウム拮抗剤、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬、ACE 阻害薬、β遮断薬など) ②糖尿病(高血糖) 糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値が上昇する病態で、脳卒中のうち特に脳梗塞の危険因子として重要とされています。 【糖尿病の場合の修正目標】 ・空腹時血糖:110mg/dl以下 ・HbA1c:5.8%以下(ヘモグロビンA1c=過去約1ヵ月間の血糖値を反映する) ▼▼▼ 【糖尿病の場合に脳卒中の発症を避けるため、修正すべき対策】 ・医療機関で定期的に血糖を測定する(食前採血が望ましい) ・眼底検査や心電図、尿検査などで糖尿病の合併症を定期的にチェックする ・食事カロリー(エネルギー摂取量)を減らす ・バランスのよい食事摂取を心がけ、偏食傾向を治す ・散歩やジョギングなど、定期的に有酸素運動を行う ・規則正しく、疲れすぎない生活を送る ・医師の指示通りに、経口血糖降下剤を内服、またはインスリン注射を行う (インスリン注射を行っている場合は、血糖自己測定が望ましい) ・インスリン注射を行っている場合、低血糖状態を正しく理解して、対処法(飴をなめるなど)を知っておく ③脂質異常症 脂質異常症とは、高コレステロール血症(高 LDL-コレステロール血症)、高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症)、低 HDL-コレステロール血症を指します。 その中でも、高コレステロール血症が脳卒中のうち、特に脳梗塞の危険因子として重要で、高LDL-コレステロール血症は冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)の危険因子としても知られています。 【脂質異常症の場合の修正目標】 ・LDL-コレステロール 120~160mg/dl 以下 ・HDL-コレステロール 40mg/dl以上 ・トリグリセリド 150mg/dl ※他の冠動脈疾患の危険因子(年齢、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の家族歴など)の有無によって LDL-コレステロールの目標値は異なる (動脈硬化性疾患予防ガイドラインより) ▼▼▼ 【脂質異常症の場合、脳卒中の発症を避けるため、修正すべき対策】 ・肉や乳製品に多く含まれる動物性脂肪の摂りすぎに注意する (一日のコレステロール摂取量は 300g 以下にする) ・野菜、海そう、穀類、豆類に多く含まれる食物繊維を多く摂る ・植物油、大豆、緑黄色野菜を多く摂る ・定期的に有酸素運動を行う ④心房細動などの心疾患 心房細動は、脳梗塞(心原性脳塞栓症)の危険因子です。心房細動では心房内の血流が乱れて滞るため、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。血栓が血流に乗って脳に運ばれ脳の血管がつまると、脳梗塞を引き起こします。 治療法として、ワーファリンの内服による抗凝固療法を行うことで、脳梗塞の発症率が低下することが確認されています。 【心疾患の場合の修正目標】 ・ワーファリンを適切に内服して、定期的に医師の診察を受ける ▼▼▼ 【心疾患の場合、修正すべき対策】 ・精神的、身体的ともに過剰なストレスを避ける ・動悸、息切れ、めまい、胸痛などが出現したらすぐに医療機関を受診する ・体内水分が過剰になると、心臓に負担がかかるため過剰な水分摂取を避ける ・医師の指示通りにワーファリンを内服、定期的にプロトロンビン時間(INR)を測定する (INR を 2.0~3.0(高齢者では、1.6~2.6)にコントロールする) ※ワーファリンを内服している場合 ・ビタミン K を多く含む食品(納豆、緑色野菜など)の摂取を避ける ・打撲、切り傷で出血しやすいため出血傾向に気をつける ⑤喫煙 喫煙は、脳卒中のうち特に脳梗塞とクモ膜下出血の危険因子です。タバコは交感神経系を興奮させるため、タバコを吸うと一過性に血圧が上がり、ニコチンは、血管を収縮させて高血圧や動脈硬化を一層悪化させます。 また受動喫煙も、脳卒中の危険因子と考えられています。 【喫煙の場合の修正目標】 ・禁煙する ▼▼▼ 【喫煙の場合の修正すべき対策】 ・タバコを買わない ・灰皿やライターを捨てる ・皆の前で「禁煙宣言」をする ・禁煙外来を受診して、専門的な治療を受ける ⑥飲酒 飲酒量が増えるほど、脳内出血とクモ膜下出血の発症率は高くなります。脳梗塞の発症率は、少量や中等量の飲酒者ではむしろ低くなりますが、大量飲酒者では高くなるとされています。 大量飲酒は、脱水を誘発し血液が濃くなり、固まりやすく=詰まりやすくなります。 【飲酒の修正目標】 ・摂取アルコール量を一日 30g 以下にする (日本酒で 1 合以下、ビールで中びん1 本以下、ワインで 240cc 以下に相当) ▼▼▼ 【飲酒の場合の修正すべき対策】 ・アルコールを買わない ・「飲み会」「宴会」への参加を控える ・「休肝日」を作る ⑦肥満(メタボリック・シンドローム)・運動不足 肥満やメタボリック・シンドロームは新たな脳卒中の危険因子として注目されています。 ※メタボリック・シンドロームの診断基準 ・ウエスト周囲径が男性 85cm以上、女性 90cm 以上 ・トリグリセリド 150mg/dl 以上かつ/またはHDL-コレステロール 40mg/dl 未満 ・収縮期血圧 13mmHg 以上かつ/または拡張期血圧 85mmHg 以上 ・空腹時血糖 110mg/dl 以上 このうちの 2 項目以上が存在すること、とされています。 【肥満の場合の修正目標】 ・BMIを25未満にする (BMI=体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)}) ▼▼▼ 【肥満の場合の修正すべき対策】 ・過剰なカロリー摂取(エネルギー摂取)を避ける ・毎日、体重やウエスト周囲径を測定し、自己への動機づけを行う ・散歩、早歩き、ジョギング、自転車など定期的に運動を行う まとめ・脳卒中の4つの種類と脳卒中にならないために!できることと、できないこと 脳卒中は、一旦発症すると命に係わる病です。避けれるものなら避けたい病です。そこで、注意できない事柄を「修正できない危険因子」とし、注意することで避けられるものを「修正できる危険因子」に分けてご説明しました。 ご自身の状態に合わせて取り組むべき課題を見つけて頂ければと思います。以上、脳卒中の種類と原因について記しました。 ・30代になったら自分の血圧を把握し、コントロールすることを心がける ・塩分控えめの食生活で、コレステロールを減らす ・仕事の時間以外でリラックスできる趣味を持ち、適度な運動を習慣化する ・40代になったら脳ドックを定期的に受診し、脳の健康状態をきちんと把握する 脳卒中を発症してしまったら、再生医療という手段もございます。興味ある方は以下もご参考になさってください。 以上、脳卒中の4つの種類と発症原因、脳卒中にならないためにできること!について、記させて頂きました。 参考になれば幸いです。 No.033 監修:医師 坂本貞範 ▼脳卒中の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳卒中の新たな治療法として注目を浴びています
2021.12.14