ばね指とは?原因と重症度の段階、治療方法を医師が解説
目次
ばね指とは?原因と重症度の段階のチェック法、治療について医師が解説
ばね指とは、指の腱や腱鞘に炎症が起こることで手指に痛みや動作時の引っかかりが起こる病気です。
以下のような特徴があります。放置して症状が悪化すると指が伸びなくなってしまうこともあるので、早めの対策が必要です。
- ばね指の特徴
- ・朝に症状が強くなる
- ・指の曲げ伸ばしでカクカクとした感じがする
ばね指の治療では、注射や手術などもあり、病気の不安に加えて費用面の不安もあると思います。
この記事では、ばね指の症状や原因、検査や治療方法について解説していきます。さらに、ばね指について「よくある質問」には、Q&Aでお答えしています。参考にしていただければ幸いです。
ばね指の症状と原因
指を動かすのに必要な筋肉は前腕にあり、その力を腱が指に伝えることで曲げ伸ばしをすることができます。その通り道で、指を曲げる腱が浮き上がらないように押さえているのが腱鞘(けんしょう)と呼ばれるものです。その構造はベルトとベルト通しの関係に似ています。この腱鞘や腱に炎症を起こし、痛みが生じてしまうのが「腱鞘炎」です。
軽い腱鞘炎の状態で指を使いすぎてしまうと、摩擦のために炎症が進み、腱鞘が厚くなったり、腱が太くなってしまうことで通過しづらくなり、ばね指へと悪化してしまいます。悪化してしまうと、簡単に指を伸ばせなくなり、曲がったままとなってしまいます。
症状
症状は、指の付け根の手のひら側の痛み、腫れや引っかかり感です。朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも多いです。
ばね指に進行してしまうと、指の可動域が悪くなってしまう場合もあります。
原因
家事や仕事、スポーツなどによる「手や指の使い過ぎ」が主な原因となっており、ホルモンバランスの乱れる更年期、妊娠出産期の女性にも多く生じます。
また、糖尿病、関節リウマチ、透析患者さんにもよくみられる症状で、母指・中指に多くみられます。
ばね指の重症度チェック
ばね指の症状の重症度は、3段階に分けられます。
軽症はバネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がないもの、中等症はバネ現象があるものの、指の可動域がいいもの、重症は指が曲がった状態となっており、伸ばせない状態を指します。
引っかかりが起きている状態を“ばね指”と言い、腱鞘炎が進行すると、ばね指に悪化してしまいます。
|
バネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がない |
|
バネ現象があるものの、指の可動域がいい |
|
指が曲がったままの状態となっており、伸ばせない |
ばね指の検査
一般的に症状と診察から診断は可能であり、レントゲン検査は不要です。
しかし、関節リウマチや変形性関節症などの骨、関節に生じる病気を見つけるために行われる場合もあります。
ばね指の治療/保存療法
保存治療、腱鞘内ステロイド注射、手術治療について解説します。
保存治療は痛みのみで、引っかかり感のない軽症例や注射、手術希望がない方が対象です。
①安静(手指の使用制限、シーネ・装具など)
軽症例の自然経過は良好ですので、数日間の安静で、自然に改善する可能性があります。
また、シーネ・装具で指を良肢位で固定することが効果的です。
②薬物療法(外用薬、消炎鎮痛薬投与など)
内服薬、外用薬はいろいろな状況下で使用されますが、非ステロイド性消炎鎮痛薬の投与は、初期治療に他の保存的療法と組み合わせて使用されます。
また、腱鞘炎の治療にエストロゲン(女性ホルモン)と類似作用のあるエクオール(大豆イソフラボンの代謝物)が有効であるという報告が散見されています。
③理学療法
消炎鎮痛と関節拘縮予防や可動域改善目的で行われる場合があります。
腱鞘内ステロイド注射
腱鞘内ステロイド注射は軽症、重症を問わず有効な治療方法です。
局所麻酔薬とステロイドを手の平側から腱鞘に注射する方法で、症状改善が期待できます。再発する場合は再度注射が可能ですが、腱が断裂する危険性もあり3カ月以上あけることが望ましいです。
手術治療
手術の適応は、以下のような場合に検討されます。
指の付け根の手のひら側を1―1.5 cmほど切開して、腱の周囲にある腱鞘を切離します。日帰りで可能な手術であり、術後のリハビリは特に必要ありません。
|
ばね指についてよくある質問
ばね指についてよくある質問に、Q&A形式でお答えしています。
Q:ばね指は朝だけなぜ痛くなるのですか?
A:正確な原因は明らかになっていませんが、夜間寝ている間は指を動かさないので、腱が炎症でむくむためだと推測されています。
指を動かしていると腱のむくみが減少するので、日中には症状が少なくなると考えられています。
Q:ばね指の手術費用はどの程度ですか?
A:ばね指の手術は健康保険が適用されます。保険点数は2,050点のため、3割負担では6,000円前後で費用を提示している病院が多くなっています。
実際の手術では薬剤費なども含め、もう少し金額が高くなるため、事前に病院に確認するようにしましょう。
Q:注射の副作用はありませんか?
A:ステロイド注射の合併症として、腱断裂、感染症があります。実際に、腱自体へのステロイド注入では腱の軟化を生じる場合がありますが、断裂自体の報告は少数です。医師もその危険性は知っており、連続で使用する場合は3ヶ月以上あけるか、手術治療をおすすめすることが多いです。
同様に感染症についても報告は少数であり、コントロール不良な糖尿病では注意を要しますが、過度な心配は不要と考えられています。
まとめ・ばね指とは?原因と重症度の段階、治療方法を医師が解説
ばね指は、中高年の方に追い病気です。指の腱や腱鞘に炎症が起こることで生じる病気で手指の痛みや動作時の引っかかりなどの症状が現れます。日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
症状が軽いうちに無理をしてしまったり、指が伸びない状態で放置してしまうと、関節の拘縮など悪化してしまうこともある病気です。
主な原因は手や指の使い過ぎであり、更年期や妊娠出産期の女性にも多く見られます。
症状は朝に強く現れ、日中は軽減することもあります。ばね指は軽症から重症まで進行する可能性があり、重症になると指の可動域が悪化し、指を伸ばせなくなることもあります。
ばね指の治療方法には、「保存治療」「腱鞘内ステロイド注射」「手術」などがあります。
保存治療では安静や薬物療法が行われ、腱鞘内ステロイド注射は痛みの軽減が期待されます。手術は重症や保存治療が効果的でない場合に検討されます。
適切な治療を受けられるように、早めに病院で診断・治療を受けるようにしましょう。
この記事がご参考になれば幸いです。
No.122
監修:医師 坂本貞範
▼ばね指は、以下も参考にしていただけます
ばね指を自分で治すためのストレッチとセルフケア