-
- 脳卒中
- 頭部
「最近、会話が噛み合わないと感じる」 「簡単な話が理解できず、人間関係に支障をきたしている」 言葉が通じず会話が成り立たなくなると、多くの方はまず認知症を疑います。しかし、会話や言葉の意味が理解しにくくなる原因として、ウェルニッケ失語症(感覚性失語)と呼ばれる失語症の一種が存在します。 ウェルニッケ失語症(感覚性失語)は、脳の言語理解に関わる領域が障害されることで、言葉の意味の理解が難しくなる失語症のひとつです。原因となる脳の病気が進行したり再発したりすると、認知機能や運動機能にも影響が及ぶおそれがあります。 本記事では、現役医師がウェルニッケ失語症について詳しく解説します。 ウェルニッケ失語症の原因 ウェルニッケ失語症の治療法 ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント 記事の最後にはよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ウェルニッケ失語症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ウェルニッケ失語症(感覚性失語)とは 項目 内容 原因 言語理解に関わる脳領域(ウェルニッケ野)の損傷 主な症状 流暢だが意味の伝わりにくい発話、言葉の理解困難、言い間違いの頻発 自覚の有無 発話内容や理解の問題に対する自覚の乏しい傾向 知能・記憶 知能や記憶が保たれ、他の認知機能は比較的保たれる傾向 誤解されやすい点 認知症と誤認されやすいが、主体は言語機能の障害 よく困る場面 家族との会話、電話応対、テレビ視聴での理解困難 対応のポイント 早期診断とリハビリテーション開始、医師への相談 (文献1)(文献2) ウェルニッケ失語症は、言葉を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)が損傷されることで起こる失語症です。話す量は多く流暢ですが、言葉の選び方や内容がちぐはぐになり、相手に意味が伝わりにくくなります。 音としての言葉は聞こえているものの、意味と結びつきにくいため、会話がかみ合わず認知症と誤解されることもあります。外見や日常動作からは気づきにくいため、会話の様子を注意深く観察することが重要です。 治療は、原因となる脳の病気への対応と言語理解を高める訓練を組み合わせ、日常生活での工夫や環境調整も行いながら進めていきます。 ウェルニッケ失語症とブローカ失語症の違い 項目 ウェルニッケ失語症 ブローカ失語症 障害される部位 左側頭葉の言語理解の領域 左前頭葉の言語産出の領域 発話の特徴 流暢だが意味の伝わりにくい発話 言葉が出にくく非流暢な発話 言葉の理解 聞いた内容の理解が難しい傾向 聞いて理解する力は比較的保たれる 読み・書き 文章の理解や書字が難しい傾向 読む力は残るものの、書字が難しい傾向 会話の印象 話は多いが、内容が支離滅裂 話したいが言葉が出ず短い発話 本人の自覚 問題を自覚しにくい傾向 話せないもどかしさを自覚しやすい 伝わりにくさ 伝えても理解されにくい 理解できるが、表現が困難 リハビリの方向性 言語理解の再獲得と意味処理の訓練 発話生成の練習と伝達手段の確立 (文献3)(文献4) ウェルニッケ失語症の特徴は、言語理解の障害により流暢に話せても意味が伝わりにくくなることです。一方、ブローカ失語症の場合、理解は保たれるものの、言葉が出にくく非流暢な話し方になります。 両者は損傷部位が異なるため、症状や必要な支援も異なります。違いを把握し、適切なリハビリやコミュニケーション方法を医師の指導のもと選択しましょう。 以下の記事では、ブローカ野とウェルニッケ野の違いを詳しく解説しています。 ウェルニッケ失語症の症状 症状 詳細 言葉の意味が理解できない 聞こえた言葉や文章の内容が正しく理解できない状態 話す内容がまとまらない 流暢に話せるが意味が通じず支離滅裂になりやすい状態 症状への自覚が乏しい 発言の誤りや会話の不適切さに気づきにくい傾向 ウェルニッケ失語症では、脳の言語理解を担う領域が損傷されるため、聞こえた言葉の意味がつかみにくくなり、会話がかみ合いにくくなります。 発話そのものはスムーズでも、言葉の選び方や内容がまとまりにくく、支離滅裂な印象になりがちです。さらに、自分の発言の誤りや会話のずれに気づきにくいため、ご本人と周囲との間で認識のギャップが生じやすいことも特徴です。 言葉の意味が理解できない ウェルニッケ失語症は、言語理解を担う左側頭葉(ウェルニッケ野)の損傷によって生じます。 会話がかみ合わない、的外れな返答をする、話は流暢でも意味が通じない、読み書きが困難になるといった症状が現れるのが特徴です。 左側頭葉(ウェルニッケ野)は耳や目から取り込んだ言語情報に意味を付与する役割を担っているため、損傷が起こると音声や文字そのものは認識しても、その内容の理解は難しくなります。 こうした症状は、言語情報を受け取って解釈し、適切に応答するまでの過程で行われる「意味づけ」が途絶えることによって生じると考えられています。 話す内容がまとまらない ウェルニッケ失語症では、言語の意味を処理する機能が障害されるため、流暢に話せても内容がまとまらず理解しにくくなるのが特徴です。 言い間違いや実在しない言葉が混ざることも多く、話は長くても相手に伝わる情報が少ない「空虚な発話」と呼ばれる状態になることがあります。 ご本人は症状を自覚しにくいため、周囲が戸惑いやすい一方で、適切な言語訓練を継続することで、会話のわかりやすさが改善していく例も報告されています。 症状への自覚が乏しい 項目 詳細 障害される部位 言葉の意味を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)の損傷 自覚しにくい理由 自分の言葉の誤りや会話のズレを認識しづらい 症状の背景 音声の認識や発声は保たれるため、「自分は話せている」と認識しやすい 主な問題点 言葉の意味処理が障害され、問題の所在を自分で把握しにくい状態 ウェルニッケ失語症では、言葉の意味を処理する脳の領域が障害されるため、自分の発言の内容や相手の反応を正しく把握しにくくなります。 音声の認識や発話は保たれるため、ご本人は「話せている」と感じやすく、発話内容の誤りに気づきにくい傾向があります。 ウェルニッケ失語症の原因 原因 詳細 脳梗塞による左側頭葉の損傷 言語理解を担う領域への血流障害による神経細胞の損傷 脳出血によるウェルニッケ野の障害 出血による圧迫や破壊で生じる言語中枢の機能低下 その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など) 腫瘍や外傷、炎症による言語領域への影響 言葉の意味を理解する脳の領域が傷つくと、ウェルニッケ失語症が生じます。主な原因は、脳梗塞による血流障害や脳出血による出血・圧迫で、神経細胞の機能低下によって起こります。 そのほか、脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも同じ領域が障害されることがあり、原因によって治療方針が大きく異なるため、画像検査などによる評価が欠かせません。 ウェルニッケ失語症は認知症とは性質が異なりますが、適切なリハビリテーションにより言語機能の改善がみられる場合があります。 脳梗塞による左側頭葉の損傷 ウェルニッケ失語症は、脳梗塞により左側頭葉後部が障害されることで生じます。脳梗塞は血管が詰まり血流が途絶える疾患で、とくに中大脳動脈後方枝が閉塞すると、神経細胞が急速に機能不全に陥ります。 左側頭葉後部には言語理解を担うウェルニッケ野があり、右利きでは約95.5%、左利きでは約61.4%の人が言語中枢を左半球に持つため、この領域の損傷が言語障害に直結します。 脳梗塞では、発症から短時間のうちに不可逆的な変化が進行するため、できるだけ早期に血流を再開させる治療が重要です。 以下の記事では、脳梗塞について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 脳梗塞後遺症で性格が変わる?主な変化と原因を解説 脳出血によるウェルニッケ野の障害 脳出血は、長期の高血圧により脳血管が破裂し、周囲の脳組織に出血が広がる疾患です。左側頭葉後部のウェルニッケ野周辺で出血が起こると、血腫による直接的な圧迫と周囲の浮腫により神経細胞が損傷されます。 高血圧性脳出血の好発部位である被殻や視床からの出血が拡大した場合や、ウェルニッケ野を栄養する後大脳動脈分枝の細動脈が破綻した場合に、この領域が障害されます。 出血した血液成分が神経毒として働き数時間で細胞死が進行し、とくに急性期の血腫拡大が症状をさらに悪化させるため、血圧管理と早期の止血処置が不可欠です。 以下の記事では、脳出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 脳出血で後遺症なしの確率は?発症後の意識レベルによる予後や余命を解説 その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など) 原因 障害の起こり方 主な特徴 発症の経過 脳腫瘍 腫瘍の増大によるウェルニッケ野の圧迫・血流障害 浮腫や出血を伴い、ゆるやかに言葉の理解が低下 徐々に進行することが多い 頭部外傷 衝撃による脳の揺れや打撲でウェルニッケ野を損傷 出血や脳のむくみにより神経細胞が圧迫 怪我の後、数日以内に症状出現 脳炎 ウイルス感染による炎症や腫れでウェルニッケ野が障害 発熱や頭痛に続き急な言葉の障害が出現 数時間〜数日の急速な発症 (文献5) 脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも言語理解を担う部位が損傷し、ウェルニッケ失語症が生じることがあります。これらは脳卒中と異なり、急激に発症する場合、もしくは徐々に進行する場合もあるため、日常の変化に注意が必要です。 言葉の理解や会話の様子に違和感を覚えた場合は、画像検査と言語評価が必要です。また、治療の基本方針は、原因疾患への対応と言語症状へのリハビリテーションを並行して行います。 以下の記事では、脳腫瘍及び、脳炎の後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳膿瘍の手術で起こりうる後遺症を医師が解説|術後のリハビリ方法も紹介 脳炎で起こりうる後遺症を医師が解説|回復の見込みについても紹介 ウェルニッケ失語症の治療法 治療法 詳細 基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など) 原因となる疾患を治療し、脳機能の悪化を防ぐ リハビリテーション(言語理解の再学習など) 言語理解や表現を回復する訓練による機能改善の促進 コミュニケーション支援 身振りや文字、環境調整による意思疎通の補助 脳損傷に対する再生医療 幹細胞治療などによる損傷部位の機能回復を目指す ウェルニッケ失語症の治療では、まず脳梗塞や脳出血、脳炎などの基礎疾患を適切に治療し、脳機能の悪化を防ぐことが重要です。 その上で、言語理解や表現力を回復するためのリハビリテーションを継続し、身振りや文字などを活用したコミュニケーション支援を組み合わせることで、日常生活での意思疎通を補います。 近年、幹細胞を用いた再生医療に関する研究も進められていますが、現在のところ適応となる病態や条件が限られており、実施している医療機関も多くはありません。 利用を検討する際は、医師に相談し、適応条件や得られる可能性のある効果や考えられるリスクなどについて十分な説明を受けた上で判断することが大切です。 以下の記事では、ウェルニッケ失語症の原因となる脳梗塞の治療について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞の後遺症は治る?治療法や種類・症状別に医師が解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など) 基礎疾患 詳細 脳梗塞 血栓溶解療法により血流を回復し神経細胞の壊死を抑える対応 脳出血 血腫除去により脳への圧迫を軽減し二次損傷を防ぐ対応 脳炎 抗ウイルス薬やステロイドで炎症や浮腫を抑え神経細胞を保護する対応 脳腫瘍 手術や放射線などで腫瘍を縮小し言語中枢への圧迫を解除する対応 ウェルニッケ失語症は、言語理解に関わる脳領域が損傷されることで起こるため、まずは原因となる基礎疾患を適切に治療することが重要です。 脳梗塞では、血流をできるだけ早く回復させて神経細胞の障害を最小限に抑えることが治療の中心となります。脳出血では、必要に応じて血腫を除去し、周囲の脳への圧迫を軽減することが目標となります。 脳炎や脳腫瘍では炎症や圧迫を取り除き、神経細胞の機能を守ることが目的です。これらの治療により、言語機能の改善に向けた土台が整い、リハビリの効果が高まりやすくなります。 以下の記事では、脳梗塞のリハビリについて詳しく解説しています。 リハビリテーション(言語理解の再学習など) リハビリ内容 目的・特徴 絵カードや写真を使う練習 物の名前をいう力や言葉を思い出す力の向上 短い文章の聞き取りと応答 聞いた内容を理解し、簡単に返事する力の練習 絵や映像を言葉で説明 内容を整理して言葉で伝える力の強化 書く練習(段階的) 単語や文を書く力を少しずつ回復 ジェスチャーやノートの活用 言葉以外の手段で意思を伝える補助 家族・介護者への指導 わかりやすい話し方や環境づくりの支援 ウェルニッケ失語症では、脳の神経可塑性(しんけいかそせい)により損傷後も新しい回路を形成できるため、言語リハビリテーションが有効です。 言語聴覚士は検査結果に基づいて訓練内容を計画し、音声の識別や語彙の再学習などを行い、言語理解の回復を目指します。 急性期は意思疎通手段の確保、回復期は意味理解や文の処理を高める訓練が中心となります。 また、家庭での短時間の練習も大切です。音読やメモ書き、家族とのゆっくりとした会話を続けることで脳が刺激され、リハビリの効果を高めることが期待できます。 とくに発症後12カ月以内は言語機能が回復しやすい時期とされており、この期間に集中的なリハビリテーションを行うことが有効と報告されています。 コミュニケーション支援 方法・視点 詳細 間違い指摘を避ける 自尊心を保ち、会話意欲を維持する支援 「はい・いいえ」質問とジェスチャー 理解負荷を減らし、意思確認を容易にする支援 非言語手段の併用 絵や描画などを組み合わせ、伝達成功率を高める支援 意思汲み取りと成功体験の重視 伝えられた喜びを感じさせ、発話意欲を高める支援 言葉が通じにくい経験が続くと会話への意欲が低下しやすくなるため、相手の表現を否定せず意思疎通しやすい環境を整えることが大切です。 単純な質問やジェスチャーを組み合わせると、理解の負担を軽減できます。成功体験が増えることでコミュニケーションが円滑になります。 また、絵や文字などの非言語的手段を活用すると、伝える手段が広がり生活の質が向上します。 周囲の工夫により会話参加の意欲やリハビリの効果が高まることが期待されるため、できないことに対しても根気よく長期的な視点で取り組むことが大切です。 脳損傷に対する再生医療 ウェルニッケ失語症に対する治療の選択肢として、再生医療を用いる取り組みが検討される場合があります。 脂肪由来の幹細胞は、体内で他の細胞に変化する分化能や、生体内環境に作用する働きが報告されており、脳の損傷部位に関連した研究が進められています。 再生医療は、損傷した脳組織の修復や機能回復を目的として検討されている治療法です。しかし、疾患の状態によっては適用できない場合も多く、実施する医療機関も限られるため、希望する場合は医師に相談し、内容を十分に確認しましょう。 以下の記事では再生医療について詳しく解説しています。 ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント 悪化を防ぐためのポイント 詳細 基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する 血圧管理や生活習慣改善による脳血管障害の再発予防 リハビリテーションを早期に開始し継続する 言語機能の維持と回復のための継続的な訓練 家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける 理解しやすい環境づくりによる意思疎通の促進 ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血といった基礎疾患が再発すると症状が悪化する可能性があります。そのため、血圧管理や生活習慣の見直しが重要です。 言語リハビリテーションは早期に開始して継続することで機能維持につながります。また、家族や周囲が適切なコミュニケーション方法を理解し環境を整えることで、日常の意思疎通が円滑になり患者の不安や負担が軽減されます。 基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する 観点 詳細 再発でウェルニッケ野の二次損傷が起きる 追加の血流障害や圧迫で言語理解機能が低下する可能性 再発率が高い 危険因子の放置による脳梗塞・脳出血の再燃リスク 服薬・生活習慣管理で再発抑制が望める 血管保護により再発リスクを低下させ残存機能を守る取り組み 定期通院で早期発見・基礎疾患を防ぐ 画像検査で血管の状態を把握し発作を未然に防ぐ取り組み (文献6) ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血が再発すると新たな脳損傷が生じ、言語理解機能がさらに低下する可能性があります。高血圧や糖尿病などの危険因子を管理し、服薬や生活習慣の改善を継続することが重要です。 また、定期的な通院によりMRIや血管検査を受けることで、再発の兆候を早期に捉えられます。再発予防は、残存する言語機能を守り、リハビリテーションの効果を維持するための重要な取り組みです。 【関連記事】 脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものとは?理想的な食事の摂り方 脳出血は再発する?再発率や血圧管理を含む予防法を解説 リハビリテーションを早期に開始し継続する リハビリテーションの早期開始と継続は、ウェルニッケ失語症の回復に極めて重要です。 脳には損傷後も神経回路を再編成する可塑性(かそせい)があり、早期から言語刺激(聞く・話す・読む・書く)を積極的に行うことで脳の再編成を促し、言語機能の回復が得られやすくなります。 実際、早期リハビリの有益性を示す報告があります。(文献7) 研究では、発症後約10日〜3カ月までに言語機能の改善が著しく、発症から6カ月頃まで改善が続くとされています。この時期に集中的な訓練を行うことは効果的です。 慢性期であっても、高頻度・高強度のリハビリにより日常会話能力が改善した報告があり、これらの介入は効果的です。(文献8) さらに、早期リハビリは廃用症候群(筋力低下、関節拘縮など)の予防にもつながります。(文献9) 継続的なリハビリにより、完全回復に至らなくても補助的コミュニケーション手段と組み合わせて日常生活で使える言葉を取り戻せる可能性があり、言語聴覚療法(SLT)が失語症後の機能改善に有効です。(文献10) 家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける 観点 詳細 会話意欲低下を防ぎ言語機能を維持する 指摘を避けジェスチャーを併用し成功体験を増やす支援 二次的合併症(うつ・孤立)を防ぐ 過ごしやすい環境づくりによる心理的安定の確保 家族負担を軽減し長期継続を可能にする 医師の助言による適切な関わり方の習得 (文献11) ウェルニッケ失語症では、言葉が伝わらない経験が続くと会話を避けるようになり、言語機能の低下につながることがあります。 家族が誤りの指摘を控え、ジェスチャーや簡潔な表現を取り入れることで日常生活での成功体験が増え、発話意欲を保ちやすくなります。 また、安心してやり取りできる環境は、うつや孤立といった心理的な悪化を防ぐ上で大切な取り組みです。さらに、言語聴覚士による家族教育を受けることで適切な関わり方を学べるため、支援の負担が軽減され長期的に続けやすくなります。 ウェルニッケ失語症の症状が出た際は早期に受診しよう ご家族が急に言葉を理解できなくなったり、会話が噛み合わないと感じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 ウェルニッケ失語症は、脳梗塞や脳出血などの重大な脳疾患を原因として発症することが多く、早期の診断と治療が求められます。 とくに脳梗塞や脳出血では発症から治療開始までの時間が治療効果に影響するため、医療機関の受診が重要です。 ウェルニッケ失語症の症状でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、ウェルニッケ失語症の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。 再生医療は幹細胞を用いた治療のひとつで、脳機能回復を目指した研究が進められています。リハビリとの併用による相乗効果が期待されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 ウェルニッケ失語症に関するよくある質問 ウェルニッケ失語症は完治しますか? ウェルニッケ失語症では、障害された部位や範囲によっては、元の状態までの回復が難しい場合もありますが、早期から言語リハビリテーションを行うことで、会話能力の改善が期待できます。 とくに発症後2週間で自然回復が最大となり、12カ月で約40%の改善が見込まれると報告されています。 言語聴覚士による訓練を継続することで日常会話が可能になる例もみられますが、症状や損傷範囲には個人差があります。そのため、再発予防や家族のコミュニケーション支援を含めた長期的な取り組みが大切です。 ウェルニッケ失語症の平均寿命は? ウェルニッケ失語症そのものに特有の平均寿命は示されていません。 ただし、脳卒中により失語症を発症した患者は、失語のない患者と比較して死亡率が高く、機能回復率が低いとする報告があります。(文献12) 一方で、適切なリハビリテーションや支援、合併症の管理を継続することで、長期にわたり生活機能を維持できる可能性があります。 これらは寿命そのものを示すものではなく、予後や生活の質に関する指標として理解することが大切です。 ウェルニッケ失語症の家族との向き合い方を教えてください ウェルニッケ失語症の方を支える際は、失語が言語の障害であり、人格や知性が変わるわけではないことを理解し、尊重した関わりが重要です。 伝える際は短くゆっくり話し、簡単な言葉やジェスチャー、絵カードを併用すると意思疎通がしやすくなります。 質問は「はい・いいえ」や選択式が有効です。返答に時間がかかるため急かさず、静かな環境で落ち着いてやり取りをしましょう。 絵や筆談などの補助手段を活用し、判断や意思決定は可能な範囲でご本人に任せることで自立性を支えられます。また、ご家族自身も専門家や支援団体を利用し、負担を軽減することが大切です。 ウェルニッケ失語症と診断された際に受けられる助成制度はありますか? ウェルニッケ失語症は、条件を満たす場合に身体障害者手帳(音声・言語機能障害)の対象となります。また、障害者総合支援法や介護保険制度に基づき、補装具・福祉用具の助成や意思疎通支援などを利用できる場合があります。 ウェルニッケ失語症で利用できる主な助成制度は以下です。 制度名 内容 申請先・対象 身体障害者手帳 3・4級で医療費助成、税制上の優遇措置、コミュニケーション機器の給付 市区町村窓口 障害者総合支援法 補装具(意思伝達装置)・日常生活用具(AAC機器)の支給・貸与 市区町村窓口 介護保険 福祉用具貸与、訪問リハビリ、言語支援機器の利用 要介護認定者 意思疎通支援事業 支援者派遣、道具や絵を用いたコミュニケーション支援(無料) 市区町村(地域生活支援事業) 障害年金・就労支援 障害基礎年金、就労移行支援、復職時の配慮 年金事務所・支援機関 (文献13)(文献14) 制度は自治体によって異なります。具体的な利用条件や手続きについてはお住まいの自治体に相談しましょう。 参考文献 (文献1) Wernicke's Aphasia (Receptive Aphasia)|Cleveland Clinic logo (文献2) Wernicke’s Aphasia|the Aphasia library (文献3) 失語の種類|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献4) 失語症|社会福祉法人恩賜財団済生会 (文献5) 失語|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献6) 脳卒中の再発予防|脳卒中療養支援シリーズ (文献7) Early Aphasia Rehabilitation Is Associated With Functional Reactivation of the Left Inferior Frontal Gyrus: A Pilot Study|Go to homepage (文献8) Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed® (文献9) Ⅶ.リハビリテーション (文献10) Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed® (文献11) 失語症者の家族から見た失語症状の認識に関する検討|川崎医療福祉学会誌 (文献12) Epidemiology of Aphasia Attributable to First Ischemic Stroke: Incidence, Severity, Fluency, Etiology, and Thrombolysis|American HeartAssociation. (文献13) 障害者支援機器の活用ガイドブック|障害者自立支援機器の活用のための支援体制構築の活性化に向けた調査研究 (文献14) 厚生労働省|意思疎通支援
2025.12.29 -
- 頭部
- 脳卒中
「ウェルニッケ野とブローカ野の役割の違いは?」 「失語症の症状の違いは?」 「失語症の方との関わり方やリハビリについて知りたい」 ウェルニッケ野は、耳から入った言葉を理解する役割を担っています。一方、ブローカ野は、言葉を発することが役割です。この脳の部位が脳梗塞や脳出血により障害されると失語症を引き起こします。 本記事では、ウェルニッケ野とブローカ野の役割の違いをはじめとして、以下を解説します。 失語症の症状の違い 失語症の原因となる病気 失語症が患者様にもたらすもの 失語症に対するリハビリ 失語症の方との関わり方 失語症の方は、コミュニケーションが困難になり、苛立ちや不安などさまざまな精神的苦痛を感じます。そのため、サポートをする周囲の方の失語症に対する理解は重要です。本記事を失語症の理解を深めるためにお役立てください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳梗塞や脳出血の後遺症でお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ウェルニッケ野とブローカ野の役割の違いとは ウェルニッケ野とブローカ野の役割の違いは以下の通りです。 役割 ウェルニッケ野 耳から入った言葉を理解するための役割 ブローカ野 組み立てられた言葉を発するための役割 それぞれの役割の違いについて解説します。 ウェルニッケ野|言葉を理解するための役割 ウェルニッケ野は、耳から入った言葉を理解する役割を担っています。場所は脳の左側後方辺りです。 耳に入った言葉は聴神経(耳と脳をつなぐ神経)から聴覚中枢(音を認識、識別する脳の領域)を経て、ウェルニッケ野に伝達されます。耳から入った言葉の理解だけでなく、自分の考えを言葉として組み立てる役割もあります。 ブローカ野|言葉を発するための役割 ブローカ野は、組み立てられた言葉を話せるようにする役割を担っています。場所は脳の左前方辺りです。 会話をしようとすると、ウェルニッケ野が元となる言葉を組み立て、その後に組み立てられた言葉がブローカ野に伝達されます。そして、ブローカ野が言葉を発するために必要な運動を発語器官の筋肉に伝達させて、会話をできるようにします。 ウェルニッケ失語症とブローカ失語症の症状の違いとは ウェルニッケ失語症とブローカ失語症の主な症状の違いは以下の通りです。 症状 ウェルニッケ失語症 相手の話す言葉を理解できない ブローカ失語症 すらすらと話せない それぞれの失語症について解説します。 ウェルニッケ失語症|相手の話す言葉を理解できない ウェルニッケ失語症は、会話を理解する過程に障害が起きています。 以下のような症状が現れます。 相手の言っていることが理解できない 流暢に話すことはでき多弁であるが言い間違いが多い 自分の言葉を理解しないで話してしまう 会話を理解できず言い間違いが多いため、会話がかみ合いにくくなる特徴があります。例えば、「ラーメンを食べたい」と言いたいところを「お箸を食べたい」と言ってしまうなどです。聞いたことのない日本語を話してしまうこともあります。 軽度の方でも、複雑な会話を理解することは困難です。重度の方は、日常会話の意思疎通が難しくなります。ウェルニッケ失語症は、感覚性失語とも呼ばれています。 ウェルニッケ失語症に関する詳細は以下の記事をご覧ください。 ブローカ失語症|すらすらと話せない ブローカ失語症は、言葉を発する過程に障害が起きています。 以下のような症状が現れます。 流暢に話すことができずぎこちなくなる 話そうとしてもなかなか言葉が出てこない 言葉のはじめの音がとくに出しにくい 相手の言葉はある程度理解できます。軽度の方は、文章で話すことができますが、会話のスピードはゆっくりで発音は不明瞭です。重度の方は、単語レベルでの発話は可能な場合もありますが、文章を組み立てて話すことが困難です。 ウェルニッケ失語症とブローカ失語症の原因となる病気 失語症の原因となる病気には以下のようなものがあります。 病名 特徴 脳梗塞 脳の血管が詰まってしまう病気 脳出血 脳の血管が破れてしまう病気 脳腫瘍 脳の細胞に腫瘍ができてしまう病気 脳外傷 交通事故や転倒などの強い衝撃により、脳に損傷が起きてしまった状態 脳炎 細菌やウイルスが脳の中に入り込み炎症が起きてしまう病気 これらの病気によって、ウェルニッケ野やブローカ野が障害されてしまうと、失語症を引き起こしてしまいます。 脳卒中の後遺症に対する再生医療 失語症の原因となる脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症に対する治療法の1つに、再生医療があります。再生医療とは、人が本来持っている「再生する力」を活用した治療方法です。 失語症などのコミュニケーション障害も治療対象になっています。その他にも、以下のような後遺症が治療対象です。 歩行や立ち上がりの能力の低下 手足のしびれや麻痺 関節や筋肉の痛み 脳卒中の後遺症や再発予防についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 失語症が患者様にもたらすもの ウェルニッケ失語症やブローカ失語症を発症してしまうと、患者様に以下のようなことがもたらされます。 他者とのコミュニケーションが困難になり、苛立ちや不安感など精神的な苦痛が発生する 読書やカラオケ、映画鑑賞などの趣味の活動による生きがいを喪失する 失語症を発症した方には、残っている能力でできるコミュニケーション方法の獲得や生きがい作りなどのサポートが必要です。 ウェルニッケ失語症やブローカ失語症に対するリハビリプログラム ウェルニッケ失語症やブローカ失語症に対するリハビリは、一般的に以下のような流れで進みます。 失語症の程度や症状を把握する 標準失語症検査を行う 症状に合わせたリハビリを行う それぞれの詳細を解説します。 1.失語症の程度や症状を把握する 脳梗塞・脳出血後にリハビリを開始する際は、言語聴覚士がベッドサイドでコミュニケーションを行い、失語症の程度や症状を把握します。 また、可能であれば以下のような簡易的な検査を実施します。 年齢や氏名、住所などを呼称できるか 単語や短文の復唱はできるか 指示した通りの動作はできるか 言語聴覚士は、これらの検査や患者様との関わりを通して今後のリハビリの方針を検討します。 2.標準失語症検査を行う 患者様の病状が安定して、車椅子に一定時間座れるようになった場合は、言語室に場所を移してリハビリを行います。患者様の状態によりますが、可能であれば標準失語症検査を行い失語症の状況を確認します。 標準失語症検査とは「聞く、話す、読む、書く」のそれぞれの分野に分けて、系統的・段階的に評価する検査です。 例えば、「話す」の分野では、「物の名前を述べる」「描いた絵を説明する」「漫画の説明を行う」などの検査を行い「話す」能力を評価します。 3.症状に合わせたリハビリを行う 検査を実施して、失語症の程度を把握できたら、症状に合わせたリハビリを行います。 リハビリの一例を紹介すると以下のようなものがあります。 訓練の種類 詳細 話す訓練 ・絵が描いてあるカードを見て、対応する単語を述べる ・単語から文章を話す ・文字を見て文章を読む 聞く訓練 ・聞いた単語や短文に対応するカードを選ぶ ・難しい単語への変更、カードの枚数の増減などで難易度を調整する 文字を理解する訓練 ・漢字や仮名、文章を読み対応するカードを選ぶ ・問題を解く 文字を書く訓練 ・名前や漢字の単語、仮名の単語など身近な文字を書く ・徐々に文章を書く訓練に移行する 失語症のリハビリは、あせらずにゆっくりと取り組むことが大切です。 ウェルニッケ失語症やブローカ失語症の方との関わり方 失語症の方と関わる際は、以下のことに注意してください。 症状 関わり方 話す障害 ・「はい」「いいえ」で答えられるような会話をする ・話し出しが遅れるためせかさない ・「○○のことですか?」と適当なタイミングで言葉を引き出す ・質問カードなどを作成しておく 聞く障害 ・言葉だけでなく、身振りや手振りを加えて話す ・イメージできるイラストや物を活用して話す ・急に話題を変えない 読む障害 ・漢字ではなくひらがなを使う ・図を用いてイメージしやすくする 全体を通してあせらずゆっくりとコミュニケーションをとることが大切です。 ウェルニッケ野とブローカ野以外の失語症 ウェルニッケ野とブローカ野以外にも以下のような失語症があります。 失語症の種類 特徴 健忘性失語 相手の話の理解はでき、口頭でのコミュニケーションもよくできるが、物の名前が出てこないため回りくどくなる 伝導失語 相手の話している言葉は理解できるが、復唱(真似して言うこと)に障害があり「話す」「書く」際にも誤りが出る 全失語 相手の言葉をほとんど理解できず、声を発することも困難で、できたとしても一語程度である まとめ|それぞれの失語症の特徴に応じたリハビリに取り組もう ウェルニッケ失語症は「相手の話す言葉を理解できない」、ブローカ失語症は「すらすらと話せない」のが特徴です。リハビリは「聞く、話す、読む、書く」それぞれ症状に応じて進めて行きます。 失語症を発症すると、コミュニケーションが困難になり、苛立ちや不安感など精神的な苦痛が発生します。失語症の方と関わる際は、これらの特徴を踏まえて「簡潔に答えられる会話をする」「ジェスチャーを交えて会話をする」などの工夫をして、コミュニケーションを取ることが重要です。 医師や言語聴覚士と相談しながら、その方に応じたリハビリを行い、残った能力でコミュニケーション方法を獲得しましょう。 脳卒中の後遺症改善や再発予防には、再生医療という選択肢もあります。詳しくは当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。
2025.12.13 -
- 脳卒中
- 頭部
「ウェルニッケマン肢位の上肢や下肢の特徴は?」 「日常生活にどのような影響がある?」 「効果的な治療方法やリハビリの内容を知りたい」 ウェルニッケマン肢位とは、上肢と下肢が異常な姿勢になる症状のことです。脳梗塞や脳出血を発症したあとに後遺症として起きる場合があります。 本記事では、ウェルニッケマン肢位の特徴をはじめとして以下を解説します。 日常生活への影響 原因となる病気 治療方法 リハビリテーション ウェルニッケマン肢位は、早期に適切な治療やリハビリを進めることが大切です。関節が固まってしまい元に戻らなくなるおそれがあるためです。本記事を参考にして、適切な治療やリハビリの選択に役立ててください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳梗塞や脳出血の後遺症でお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ウェルニッケマン肢位とは?上肢と下肢の特徴 ウェルニッケマン肢位(Wernicke-Mann肢位)とは、脳卒中などを発症したあとに起きる場合がある後遺症のことです。 ウェルニッケマン肢位を引き起こすと、体の片側の上肢と下肢が以下のような特徴的な状態になります。 ウェルニッケマン肢位の特徴 上肢 ・肩関節や前腕が内側に入り込んだ状態になる ・肘関節と手首が曲がり胸の辺りにくる ・こぶしを握った状態になる 下肢 ・股関節が内側を向いた状態になる ・膝関節が過剰に伸びた状態、または曲がった状態になる ・足首が下向きに突っ張り、つま先立ちのような状態になる ・足の指の第一関節が曲がった状態になる このような筋肉が緊張して硬くなる状態を痙縮(けいしゅく)といいます。ウェルニッケマン肢位は痙縮の中の1つです。 痙縮が進行すると関節の動きが固まってしまい、元に戻らなくなる拘縮(こうしゅく)という状態になるおそれがあります。脳卒中の患者様118万人のうち、41万人が痙縮の後遺症を引き起こしているとの報告があります。(文献1) ウェルニッケマン肢位が引き起こす日常生活への影響 ウェルニッケマン肢位を引き起こすと、以下のように日常生活へ影響をきたします。 体の片側が緊張しているため衣服の脱ぎ着や体を洗うことが困難になる 手を握りこんでいるため物がつかみにくい 手を握りこんでいるため爪が切れず手も洗いにくい 足が突っ張っているため歩行が難しく転倒のリスクがある 筋肉の緊張により痛みが現れ動作の妨げや夜間不眠の原因になる 以上のような影響により、患者様の生活の質が低下してしまいます。また、本人だけでなく、介護者の心身の負担も増えてしまいます。 ウェルニッケマン肢位を引き起こす病気 ウェルニッケマン肢位を引き起こす病気には、以下のようなものがあります。 病名 特徴 脳卒中 脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳に障害が起きる病気 脊髄損傷 交通事故などの強い衝撃により脊髄が損傷した状態 重度頭部外傷 頭部に強い衝撃を受けて、脳に損傷が起きる外傷 脳性麻痺 胎児のときから生後4週間までに発生した脳の損傷による運動障害 多発性硬化症 神経を覆っている膜のようなものが、炎症などによってむき出しになってしまう病気 脳卒中の後遺症に対する再生医療 脳卒中の再発予防や後遺症、または脊髄損傷に対する治療法として再生医療という選択肢があります。再生医療とは、人が本来持っている「再生する力」を活用した治療方法です。 例えば、以下のような後遺症が治療の対象になります。 手足のしびれや麻痺 感覚障害 筋力低下 関節や筋肉の痛み 言語機能の低下 嚥下機能の低下 注射や点滴で治療が行われるため、手術が不要というメリットもあります。当院「リペアセルクリニック」では、ウェルニッケマン肢位の原因となる脳卒中や脊髄損傷に対して再生医療を行っています。 当院で行っている再生医療については、以下の症例を参考にしてください。 【症例記事】 運動機能、言語機能ともに改善! 脳梗塞・脳出血・硬膜下血腫 80代男性 投与直後から歩容改善 頚椎症性脊髄症 70代男性 ウェルニッケマン肢位の治療方法 ウェルニッケマン肢位などの痙縮に対する治療は、主に筋肉の緊張を和らげるために行います。 治療方法には以下のようなものがあります。 治療方法 詳細 薬物療法 筋肉の緊張を和らげる筋弛緩剤(きんしかんざい)の服用 ボツリヌス療法 筋肉の緊張を和らげるボツリヌス製剤の投与 装具療法 装具による患側(かんそく:症状が出ている側)への負荷の軽減 手術療法 足の突っ張りや足の指の変形に対する直接矯正 それぞれの治療方法を詳しく解説します。 薬物療法 薬物療法では、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩剤を服用して治療を行います。初期治療として選択されることが多いです。症状に応じて、複数の薬を組み合わせることもあります。 筋弛緩剤の主な副作用は眠気や脱力感、飲み込みにくさなどです。副作用が出ないように少量から服用を始める必要があります。 ボツリヌス療法 ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作るたんぱく質を活用した治療方法です。痙縮が強い部位にボツリヌス菌が含まれた注射をすることで、筋肉の緊張を和らげることが可能です。 注射の効果は、投与してから約10日後に始まり、約1〜2カ月で効果が最も高まります。約3カ月経過すると効果が弱まります。主な副作用は脱力感です。 治療費が高額であるため、多くの部位に投与する場合は、医療費助成制度等を活用できるかの確認を推奨します。 装具療法 ウェルニッケマン肢位などの痙縮は、足底などの特定の部位に体重がかかると悪化するおそれがあります。装具を用いることで、特定の部位に体重がかからないようにして、痙縮の悪化を抑えます。 装具単体の治療では限界があるため、その他の療法と組み合わせて治療を進めることが一般的です。また、患側の筋肉を伸ばしたり、安定させたりすることで、余計な緊張が起きないようにする役割もあります。 手術療法 手術療法は、筋肉が固まってしまい既存の治療方法では効果が不十分な場合に検討します。足の突っ張りや足の指の変形を直接矯正する治療方法などがあります。 手術を検討するには、以下のような条件を満たさなければなりません。 拘縮等が起きていない 手術前に歩行訓練ができている 術後であっても症状は悪化する場合があります。装具療法の継続や定期的なボツリヌス療法なども必要です。 ウェルニッケマン肢位のリハビリテーション リハビリテーションは、主に筋力増強や拘縮予防のために行います。痙縮に対するリハビリは、発生したその日からベッドサイドで関節を動かす訓練を始めることが大切です。 起立に耐えられる状態である場合は、以下のような器具を用いたリハビリの実施を検討します。 リハビリ器具名 詳細 ティルトテーブル 寝たままの状態で徐々に立位姿勢にできる器具 スタンディングテーブル 立位姿勢をサポートする器具 これらの器具を用いたリハビリは、膝や股など各関節をゆっくりとストレッチできます。その結果、関節を動かせる範囲の維持・向上の効果を期待できます。 まとめ|ウェルニッケマン肢位の治療は医師と十分に相談しながら進めよう ウェルニッケマン肢位の治療方法は多岐にわたります。筋肉の緊張から拘縮に移行させないためにも、早期に適切な治療やリハビリを始めることが重要です。 症状の程度によって治療方針が決定します。初期治療の多くは筋弛緩剤を服用する薬物療法です。既存の治療では効果が見られない場合は、足の突っ張りや足の指の変形に対する手術療法も検討します。 ボツリヌス療法も効果的ですが、高額な治療となるため、医療費助成制度等を利用できるかの確認をしましょう。ウェルニッケマン肢位の治療は、医師と本人、家族と十分に相談しながら進めてください。 脳卒中の後遺症や脊髄損傷の治療法として、再生医療という選択肢もあります。再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。 ウェルニッケマン肢位に関するよくある質問 歩行はできるようになる? 症状の程度によっては歩行可能です。ウェルニッケマン肢位のような痙縮が起きると、歩行は不安定になり転倒リスクがあります。歩行能力を維持・向上するには、早期から杖や装具を活用した歩行の訓練を取り入れることが重要です。 症状はリハビリなどで改善する? リハビリを適切に取り入れれば、痙縮で行えなかった動作を獲得できる場合があります。また、リハビリは関節の動く範囲や、筋力の維持・向上のために重要な療法です。 参考文献 (文献1) 脳卒中後痙縮のリハビリテーションとボツリヌス治療|浜松市リハビリテーション病院
2025.12.13 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
「ある日突然、激しい頭痛や吐き気に襲われた」 「片側が麻痺するような感覚や、言葉がうまく話せない」 これらは脳出血のサインの可能性が高く、脳の血管が破れて出血し、脳細胞を損傷・死滅させる疾患です。短時間で命や生活に重大な影響を及ぼします。 飲酒や喫煙、高血圧、糖尿病といった生活習慣や持病があれば、若年でも脳出血を発症する危険があります。脳出血は年齢を問わず起こるため、予防が欠かせません。 本記事では、脳出血について現役医師が詳しく解説します。 脳出血の症状 脳出血の種類 脳出血の原因 脳出血の治療法 脳出血の予防法 記事の最後には、脳出血についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳出血について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脳出血とは 項目 内容 主な原因 長期間続く高血圧による血管の脆弱化。加齢による脳アミロイド血管症。脳動静脈奇形などの血管異常 他の脳卒中との違い 脳出血は脳卒中の一種で、脳実質内の出血を指し、くも膜下出血(脳表面の隙間の出血)や脳梗塞(血管の詰まり)とは異なる 出血で起きること 血腫形成による脳細胞の圧迫。麻痺・言語障害・意識障害の発症。部位と出血量による症状の違い。血腫吸収後も残る神経障害の可能性 早期治療の理由 発症後48時間以内に進行する脳浮腫。再出血や脳圧上昇による生命危機。血圧管理・外科的処置・全身管理の必要性 主な症状 片側の麻痺・しびれ。言語障害。意識障害。吐き気・嘔吐。激しい頭痛 対応の重要性 急性期の対応が予後を左右。再出血や浮腫悪化時は緊急処置の必要性 予防と再発防止 高血圧管理。生活習慣改善。血管異常の検査。医師による定期的なフォロー (文献1) 脳出血は、脳内の細い血管が破れて出血し、血液が脳組織を直接傷つけたり、血腫(けっしゅ)となって周囲を圧迫し、脳組織を損傷する疾患です。意識障害、手足の麻痺、言語障害などの重い症状が突然現れることがあります。 脳の血管は非常に細く、高血圧などで慢性的な負担がかかると血管壁が脆くなり、破れやすくなります。出血は脳全体の圧力を高めて血流を妨げ、生命に関わる危険な状態を引き起こし得ます。急な頭痛、意識の変化、麻痺などが現れた場合は、一刻を争うため直ちに救急要請が必要です。 以下の記事では、脳梗塞と脳出血の合併症について詳しく解説しています。 脳出血の症状 症状 詳細 片麻痺・顔面のゆがみ 手足の力が入らなくなる現象。顔半分の筋肉のゆがみ。片側だけ口角が下がる状態 言語障害(話す・理解) 思ったことを言葉にできない状態。会話や文字の理解困難。意思疎通の困難 視覚・平衡感覚の異常 視野が欠ける現象。一部が見えなくなる状態。物が二重に見える現象。ふらつきや歩行困難 頭痛・吐き気・意識障害 突然の激しい頭痛。吐き気や嘔吐の発現。意識がもうろうとする状態。反応が鈍くなる現象 脳出血では、出血の部位や程度により多様な症状が突然現れます。代表的なのは片麻痺や顔面のゆがみで、口角が片方だけ下がることもあります。 言葉が出にくい、相手の話や文字が理解しづらいといった言語障害に加え、視野の一部が欠ける、物が二重に見えるなどの視覚異常や、平衡感覚の異常によるふらつき・歩行困難も特徴です。 さらに、突然の激しい頭痛、吐き気や嘔吐、意識の混濁、反応の鈍化などが起こることもあり、これらの症状が現れた場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。 以下の記事では、脳出血の前兆を詳しく解説しています。 片麻痺・顔面のゆがみ 症状 詳細 片麻痺(かたまひ) 脳の片側が出血で障害されると、反対側の手足の動きが悪くなる現象。力が入らない、動かせない、物を落としやすくなる状態 顔面のゆがみ 顔の筋肉を動かす神経が障害され、片側の筋肉がうまく動かなくなる状態。笑ったときに口角が片側だけ下がる、まぶたが閉じにくい左右差 重要性 いずれも脳出血の可能性が高い危険なサインで、突然出た場合は直ちに救急車を呼び医療機関を受診する必要性 脳出血が運動をつかさどる脳の部分に起こると、身体の片側が急に動かしにくくなり、腕や足に力が入らず物を落とすこともあります。 顔面神経にも障害が及ぶと、笑ったときに口角が一方だけ下がる、まぶたが閉じにくいなどの左右差が出ます。発症した場合は直ちに救急車を呼ぶことが重要です。 以下の記事では、脳出血の前兆として現れる手足のしびれについて詳しく解説しています。 【関連記事】 手がしびれる病気は?前兆とチェックを医師が解説 手足のしびれの原因となる病気の症状や予防法を解説!前兆も紹介 言語障害(話す・理解) 項目 詳細 言葉が話せなくなる理由 脳の左側にある言語中枢の出血による機能障害 主な症状 思ったことを言葉にできない発語障害。相手の言葉の意味がわからない理解障害 危険なサインの理由 脳の重要領域の障害を示す重大な兆候で、早急な治療が必要 対応の必要性 突然の発語困難や理解困難が出た場合は、脳出血や脳梗塞の可能性があり直ちに受診が必要 脳の言語中枢が出血で損なわれると、言葉を話す・理解する機能に障害が生じ、言葉が出ない、入れ替わる、理解しづらいなどの症状が現れます。口や舌の動きが悪くなり発音が不明瞭になることもあり、失語症や構音障害と呼ばれます。 これらは本人が気づきにくく、周囲の早期発見が重要です。突然の発症は脳出血の可能性が高く、速やかに医療機関を受診する必要があります。 視覚・平衡感覚の異常 項目 詳細 視覚の異常 脳の後頭葉や視覚信号の経路への障害による視野狭窄や見えにくさ。目そのものの異常ではなく、脳の視覚処理の問題 平衡感覚の異常 小脳や脳幹の損傷による急なめまい、ふらつき、歩行時のバランス障害、方向感覚の喪失 重要性 突然の視覚や平衡感覚の異常は脳への深刻な障害のサインであり、緊急受診が必要 脳の視覚中枢や平衡感覚をつかさどる部位に出血が起こると、視界が欠ける、二重に見える、ふらつくなどの症状が現れます。歩行が不安定になり、立ち上がった際に倒れそうになることもあります。 視覚障害やめまいは一時的に治まる場合もありますが、脳出血は進行する恐れがあるため、軽視は禁物です。とくに、これまでにない視覚の異常やバランスの崩れは、早急な診断が必要な危険信号です。 頭痛・吐き気・意識障害 症状 詳細 激しい頭痛 脳の血管破裂による脳を覆う膜や血管への強い刺激。普段と異なる突然の強烈な痛み 吐き気・嘔吐 脳圧の上昇による脳幹の嘔吐中枢刺激。身体からの危険信号としての反応 意識障害 血液や腫れによる脳の重要部位圧迫、意識がぼんやりする状態、重症の場合は意識消失の可能性 脳出血によって脳内の出血が増えると、頭蓋内の圧力が急激に上昇し、強い頭痛・吐き気・嘔吐などが起こります。これは、硬い頭蓋骨の中で血液が増えて脳が圧迫されるためです。 出血範囲が広くなると脳幹や全体へのむくみ(脳浮腫)により、意識がもうろうとしたり呼びかけに反応できなくなることもあり、命に関わる緊急事態となります。このような症状が急に現れた場合には、一刻も早く救急車を呼び、迅速な治療を受けることが非常に重要です。 以下の記事では、吐き気を伴う頭痛について詳しく解説しています。 脳出血の種類 種類 詳細 被殻出血 大脳基底核の一部である被殻での出血。主に高血圧が原因。反対側の手足の麻痺や感覚障害、言語障害が起こることが多い 視床出血 感覚情報の中継を行う視床での出血。反対側の感覚障害や麻痺、意識障害を伴うことが多い 皮質下出血 脳の表面近く、皮質直下の白質での出血。一部運動障害や感覚障害、視覚や言語の障害が現れる場合がある 小脳出血 運動のバランスを司る小脳での出血。めまいや歩行困難、吐き気などが強く現れることが多い 橋出血 生命維持に重要な脳幹の一部である橋での出血。四肢麻痺や重度の意識障害、呼吸不全など重篤な症状が出やすい 脳出血は、出血する部位によって症状や重症度が異なります。被殻出血は、大脳深部の被殻に起こる脳出血で、高血圧が原因となることが多い病態です。視床出血は感覚の中継を行う視床で発生し、片側の感覚障害や麻痺、意識障害を伴うことが多くあります。 皮質下出血は脳の皮質下白質で起こり、運動・感覚・視覚・言語など多様な障害を引き起こす可能性があります。小脳出血はバランス機能を担う小脳で発生し、めまいや歩行困難、吐き気が顕著に現れることがあります。橋出血は脳幹の一部である橋で発症し、四肢麻痺や重度の意識障害、呼吸不全など重篤な症状を引き起こしやすく、とくに注意が必要です。 被殻出血 被殻出血は、脳の深部にある被殻で起こる脳出血で、手足の動きや感覚に関わる重要な部位が障害されます。脳出血のうち、約40~50%は被殻出血であり、脳出血全体の中で最も多くを占めています。被殻は脳の深部に位置し、手足の運動や感覚をつかさどる重要な部位です。 このため、被殻で出血が起こると、反対側の手足の麻痺やしびれが現れます。多くは高血圧が背景にあり、発症は急激です。言葉のもつれや視野の欠けを伴うこともあります。 さらに重症化すると意識障害に進行することがあるため、早期の診断と適切な血圧管理が不可欠です。日本国内の統計でも、視床出血(約30%)、小脳・脳幹・皮質下出血(いずれも約10%前後)と比べて圧倒的に頻度が高いことが示されています 視床出血 視床出血は、脳の深部にある視床で起こる出血です。視床は、手足や顔の感覚情報を脳の各部に中継し、意識の維持にも関わる重要な部位です。主な原因は長期の高血圧による細い血管(穿通枝)の破裂で、突然の頭痛、嘔吐、意識の低下、片側の手足のしびれや麻痺といった症状が急に現れます。 視床出血は感覚・運動・意識・眼球運動など多彩な症状を伴い、視覚異常や瞳孔反応の変化、言語障害、高次脳機能障害、慢性的な強い痛み(視床痛)が現れ、出血が大きい場合は運動障害が悪化します。 治療は血圧や脳の腫れを抑える保存療法が中心で、早期診断とリハビリが回復が重要です。 以下の記事では、視床出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 手足のしびれの原因となる病気の症状や予防法を解説!前兆も紹介 【保存版】視床出血の主な症状はなに?原因や治療法・予後について現役医師が解説 皮質下出血 皮質下出血は、脳の表面に近い大脳皮質の直下で起こる脳出血です。高血圧が原因となることは少なく、若年者では脳動静脈奇形や海綿状血管腫、高齢者ではアミロイドアンギオパチーなどの血管異常が多くみられます。 症状は突然の激しい頭痛や吐き気、嘔吐に始まり、意識障害、片側の手足の麻痺、言語障害、てんかん発作などが出ます。数時間以内に症状が進行することもあり、予後は出血の大きさや原因に左右されます。 診断はCTなどで行い、大きな出血や重症例では手術が検討されますが、多くは薬物療法や経過観察が中心です。早期受診と原因に応じた治療が不可欠です。 小脳出血 小脳出血は、頭の後ろにある小脳で起こる脳出血です。小脳は体のバランスや運動の調整を担い、出血すると後頭部の激しい痛み、強いめまいやふらつき、吐き気、歩行障害、構音障害などが現れ、急速に悪化することがあります。 原因は高血圧が最も多く、血管奇形や頭部外傷も関与します。出血が大きいと脳幹を圧迫し命に関わるため、治療は血圧管理や脳浮腫の抑制が中心であり、必要に応じて手術が必要です。早期受診と適切な治療が予後を左右します。 橋出血 橋出血は、脳幹の一部である「橋」に発生する脳出血です。橋は呼吸や心拍の調整、感覚や運動の伝達など、生命維持に欠かせない機能を担っています。主な原因は長期の高血圧で、血管壁が弱くなり破れることで発症します。血管奇形や外傷、血液疾患が原因となるケースもあります。 症状は急速に進行し、激しい頭痛や嘔吐、意識障害、四肢麻痺、顔面のしびれや運動障害、呼吸困難、言語障害、めまい、眼球運動異常などが現れ、橋は重要な神経が集中する部位のため重症化しやすく、手術が困難な場合も多くあります。 治療は血圧や呼吸の管理が中心で、早期発見と迅速な対応が予後を左右するため、発症時は直ちに医療機関での治療が必要です。 以下の記事では、橋出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 橋出血とは?症状・原因・治療法を現役医師がわかりやすく解説! 橋出血の初期症状は意外と身近な痛み?!死亡率や予防法も現役医師が解説 脳幹出血は回復の見込みある?治療や時期別のリハビリ内容も解説 脳幹出血の原因は?今からできる予防策も解説【医師監修】 脳出血の原因 原因 詳細 高血圧性出血 持続する高血圧による脳内小動脈の血管壁破綻。血圧の過度な上昇による血管の破裂 血管異常(奇形・アミロイド) 先天的な脳動静脈奇形や海綿状血管腫などの血管奇形。高齢者に多いアミロイド血管症による血管の脆弱化 薬剤・出血傾向を伴う血液の病気 抗凝固薬や抗血小板薬の服用による出血傾向。血液疾患による止血障害や血液成分異常 脳梗塞からの出血性転化 脳梗塞後に血管の浸食や血流再開で出血を伴うこと。脳組織の壊死に血管破綻が加わる状態 頭部の外傷 交通事故や転倒などの頭部への直接的な強い衝撃による脳内出血。とくに高齢者で転倒リスクが高い 脳出血の原因は多岐にわたります。中でも代表的なのは、持続する高血圧による脳内小動脈の破綻です。ほかにも、先天的な脳動静脈奇形や海綿状血管腫、高齢者に多いアミロイド血管症などの血管異常、抗凝固薬・抗血小板薬の服用や血液疾患による出血傾向、脳梗塞後の血管破綻による出血性転化、交通事故や転倒といった頭部外傷などがあります。 これらの要因は脳の重要な部位に急激な出血を引き起こし、命に関わる重篤な症状へとつながる可能性があります。突然の頭痛、麻痺、言語障害、意識の変化などの症状が出た場合は、脳出血の可能性があるため直ちに医療機関を受診することが重要です。 高血圧性出血 項目 詳細 血圧の慢性的上昇 小さな脳血管の壁への持続的な負担。血管壁の弾力低下と脆弱化 微小動脈瘤の形成 弱った血管にできる小さなコブ。血管の一部が膨らみ、破裂リスクの増加 急激な血圧上昇 強いストレスや激しい運動、寒冷刺激による急な負担。もろい血管の破裂誘発 高血圧症の頻度 多くの人が持つ慢性疾患。目立たないうちに脳血管障害の進行 脳出血の発症機序 血管壁の脆弱化と微小動脈瘤の破裂による脳出血 予防のポイント 血圧の治療・生活習慣改善による脳血管の保護。血圧管理の重要性 脳出血は、脳内の細い血管が破れて血液がたまり、脳を圧迫する病気です。そのうち約6割から9割は高血圧が原因とされています。 慢性的に高血圧が続くと脳の細い動脈が硬く脆くなり、血圧が急に上がったときに破れやすくなります。とくに寒暖差、過度の飲酒、強いストレスは発症のきっかけになります。高血圧性出血は脳出血全体の多くを占めるため、日頃から血圧を適切に管理することが最も重要な予防策です。 血管異常(奇形・アミロイド) 項目 詳細 血管奇形の種類 脳動静脈奇形や海綿状血管腫などの先天性または後天性の血管構造異常 アミロイド血管症 高齢者の脳血管壁にアミロイド蛋白が沈着し脆弱化する状態 出血のきっかけ 弱くなった血管の血圧変動や外的刺激による破裂 若年者での特徴 高血圧がなくても血管奇形が原因で発症する脳出血 高齢者での特徴 アミロイド血管症が原因となる脳出血 重要性 高血圧以外の独立した脳出血原因としての臨床的意義 血管異常には、若年層にも見られる脳動静脈奇形や海綿状血管腫などの血管奇形と、高齢者に多いアミロイド血管症があります。血管奇形は生まれつき構造が弱く、血圧の急変や軽い刺激でも破れやすく、若年層の脳出血の原因です。 アミロイド血管症は血管壁に異常なたんぱく質が沈着し、もろくなった血管から出血を招きます。これらは高血圧の有無に関係なく発症しやすく、とくに若年層と高齢者の脳出血で重要な原因です。 予防には、定期的な健康診断や脳ドックで早期発見し、生活習慣を改善することが重要です。海綿状血管腫は無症状のことも多いため、症状が現れたら速やかに受診することが、命を守り再出血や重症化を防ぎます。 異常血管と診断された場合は、専門医による経過観察や必要に応じた治療が推奨されます。脳出血は突然発症し、対応の遅れが命や後遺症に直結するため、少しでも異変を感じたら直ちに受診することが大切です。 薬剤・出血傾向を伴う血液の病気 項目 詳細 出血傾向の仕組み 血液凝固機能の低下による止血力の低下 薬剤による影響 抗凝固薬(ワルファリン・DOACなど)や抗血小板薬(アスピリンなど)による血液凝固抑制 薬剤の目的 血栓予防のための血のかたまり形成抑制 薬剤の副作用 脳内の細い血管からの出血リスク上昇 血液の病気による影響 血小板減少や凝固異常による全身的な出血しやすさ 高血圧性出血との違い 血管壁の脆弱化ではなく、血液そのものの止血不全 注意点 定期的な検査と医師の指示遵守による出血リスク管理 抗凝固薬(ワルファリン・DOACなど)や抗血小板薬(アスピリンなど)は、血液の凝固を抑えることで血栓予防に有効です。しかし、これらの薬剤は脳内の細い血管からの出血リスクを高める可能性があります。 また、血友病や白血病などの血液疾患では、血小板減少や凝固機能の異常により全身で出血しやすくなります。これらのケースにおける脳出血は、血管壁の脆弱化ではなく、止血機能の低下によって発症する点が特徴です。服薬中または血液疾患の既往がある方は、定期的な血液検査や診察を受け、医師の指示を厳守することが重要です。 脳梗塞からの出血性転化 項目 詳細 出血性転化とは 脳梗塞で詰まった血管が再び開通した際、損傷した血管や脳組織から血液が漏れ出す状態 原因となる仕組み 血流遮断による血管壁・脳組織の脆弱化と、再開通による血流再流入 リスクを高める要因 広範囲の脳梗塞、高血糖、抗血栓薬の使用 起こりやすい時期 脳梗塞発症後の治療中や経過観察期間 主な影響 脳圧上昇や脳損傷の拡大による症状の急激な悪化 予防・対策の重要性 出血性転化リスクの管理、早期発見と適切な治療 出血性転化とは、脳梗塞で詰まった血管が再び開いた際に、損傷した血管や脳組織から血液が漏れ、脳出血を起こす状態です。脳梗塞では、血流が途絶えた部分の脳細胞が酸素や栄養を失い壊死します。 長時間の血流不足により血管壁や脳組織は脆くなり、治療や自然回復で血流が戻ると出血が発生しやすくなります。梗塞範囲が広い場合や高血糖、抗血栓薬の使用はリスクを高めます。出血が起こると脳の圧迫や損傷が加わり、症状が急激に悪化するため、治療中や経過観察中は早期発見と慎重な管理が欠かせません。 以下の記事では、脳梗塞の症状について詳しく解説しています。 頭部の外傷 項目 詳細 原因 交通事故、転倒、スポーツ中の衝突などによる頭部への強い衝撃 発症の仕組み 脳の内部や周囲の血管損傷による出血 主な種類 脳内出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫 症状 意識障害、手足の麻痺、言語障害、激しい頭痛、嘔吐 症状発現の特徴 外傷直後または数時間〜数日後の症状悪化 検査方法 CTやMRIによる画像検査 治療方法 薬物療法、外科的血腫除去術 受診の重要性 頭部を強打した際の早期受診による重症化予防 頭部に強い衝撃が加わると、脳の血管が損傷し、脳内やその周囲で出血(外傷性脳出血)が起こることがあります。主な原因は交通事故、転倒、スポーツ中の衝突などです。出血部位によっては、脳内出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫などに分類されます。 血液が脳を圧迫すると、意識障害、手足の麻痺、言語障害、激しい頭痛や嘔吐などの症状が現れます。発症は受傷直後とは限らず、数時間から数日後に出ることもあります。 とくに高齢者や抗凝固薬を服用している方は、軽い衝撃でも出血の危険があるため、頭を打った場合は症状がなくても早急に医療機関で検査を受けることが重要です。治療は血腫の大きさや症状に応じて薬物療法または手術が行われ、早期診断と治療が予後を左右します。 以下の記事では、頭部の外傷で発症する外傷性脳出血について詳しく解説します。 脳出血の治療法 治療法 詳細 保存療法 出血の広がり抑制と状態の安定化。血圧管理や脳圧コントロール 薬物療法 降圧剤による血圧低下。脳浮腫を軽減する薬剤の使用 リハビリテーション 運動機能や言語機能の回復訓練。日常生活動作(ADL)の自立支援 手術療法 血腫除去や圧迫軽減のための開頭手術、内視鏡下血腫除去術 再生医療 脳組織の再生促進を目指す先進治療。臨床応用段階の研究・実施 脳出血の治療は、出血の規模や症状、患者様の全身状態に応じて選択されます。軽症時は安静と血圧管理を行い、必要に応じて薬物で脳浮腫や血圧を調整します。麻痺や言語障害があれば早期にリハビリを開始します。 血腫が大きい場合や脳を強く圧迫している場合は、手術での除去が必要です。また、再生医療は損傷した脳組織の機能回復を目指す新しい選択肢です。ただし、治療法によっては合併症や再出血のリスクもあるため、必ず医師の判断のもと適切な方法を選ぶことが大切です。 保存療法 項目 詳細 血圧管理(降圧療法) 降圧薬による血圧コントロール。収縮期140mmHg未満または平均血圧130mmHg未満の維持 脳浮腫の抑制 浸透圧利尿薬(高張グリセロール・マンニトール)による脳圧の低下維持 全身管理と合併症予防 酸素投与や循環管理による低酸素・低血圧予防。感染対策や深部静脈血栓症予防 栄養・水分補給と休養確保 点滴や経管栄養による栄養・水分補給と十分な安静の確保 (文献2) 保存療法は、脳出血のうち出血量が少なく、脳や神経への圧迫が軽度な場合に選択される治療法です。全身状態が手術に耐えられない患者や高齢者、出血部位が深く手術が困難な症例にも適用されます。治療は安静を保ち、血圧を適切に管理することが基本です。 具体的には収縮期140mmHg未満、または平均血圧130mmHg未満を目標とします。(文献2) 降圧薬により再出血や細小血管への負担を軽減し、脳浮腫がみられる場合は高張グリセロールやマンニトールなどの浸透圧利尿薬を用いて脳圧を低下させます。点滴や経管栄養で水分・栄養を補給し、感染症や深部静脈血栓症の予防も並行して行います。 定期的な画像検査で経過を確認し、出血の自然吸収を促す、侵襲性が低くリスクの少ない治療法として、多くの患者にとって有力な選択肢です。 薬物療法 項目 詳細 血圧の管理 降圧剤(カルシウム拮抗薬・硝酸薬など)による血圧コントロール 止血剤の投与 トラネキサム酸等の止血剤による出血拡大の防止 脳浮腫の抑制 マンニトールや高張グリセロールによる脳内のむくみ軽減 抗凝固薬中和の対応 ワルファリンやDOACの効果を中和する薬剤の投与 合併症の予防 発作や感染症などの予防薬の使用 薬物療法は、脳出血治療において重要な役割を果たします。主な目的は、血圧の適切なコントロールと脳浮腫(脳の腫れ)の軽減です。降圧薬を用いて血圧を安定させることで再出血のリスクを低減し、さらにグリセロール(高張グリセロール液)などの脳圧降下薬で脳圧の上昇を抑えます。 また、けいれん発作の恐れがある場合には、抗てんかん薬を予防的に使用します。薬物療法は、手術が困難な症例や軽症例で有効です。症状の悪化防止と全身状態の安定化に寄与します。加えて、継続的な血圧管理や合併症予防の観点からも欠かせない治療手段です。 リハビリテーション 項目 詳細 理学療法 筋力回復、バランス改善、歩行訓練による身体機能の向上 作業療法 食事、着替え、排泄など日常生活動作の練習による生活自立支援 言語療法 発話・理解能力や嚥下機能の改善訓練によるコミュニケーション能力向上 認知療法 記憶力、注意力など脳の働きの改善訓練 脳出血の回復には、発症後できるだけ早い時期(通常24〜48時間以内)からのリハビリ開始が重要です。早期にリハビリを行うことで、運動機能や日常生活能力(ADL)の回復が促されます。 これは脳の神経可塑性を刺激し、新たな神経回路の再構築を助けるためです。リハビリは寝返りや起き上がり、座位保持などの基礎動作から始まり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が連携して段階的に進めます。継続訓練により、運動機能、言語機能、嚥下機能を改善し、日常生活の自立と社会復帰を支援します。 手術療法 項目 詳細 手術の目的 血腫除去による脳圧の軽減と脳損傷の予防 有効な理由 脳の圧迫解消による症状の悪化防止 適応となる状況 大量出血、急激な脳圧上昇、小脳出血による脳幹圧迫、一定以上の血腫での意識障害 期待される効果 意識障害や麻痺の進行防止と生命予後の改善 重要性 早期血腫除去による生命救助と回復促進 脳出血の手術療法は、血腫が大きく脳を強く圧迫している場合や、意識障害を伴い生命に危険が及ぶ場合に行われます。目的は、血腫を除去して脳の圧迫を軽減し、脳損傷の進行を防ぐことです。 主な方法には、頭蓋骨を約10cm開けて直接血腫を取り除く開頭血腫除去術、頭蓋骨に約1.5cmの小孔を開けて内視鏡で吸引・除去する内視鏡的血腫除去術、髄液の流れが障害され水頭症を起こした場合に管で体外へ排出する脳室ドレナージがあります。 手術方法の選択は、出血部位や量、全身状態を基に脳神経外科医が慎重に判断します。血腫除去後も、再出血予防のための血圧管理、脳浮腫対策、リハビリテーションなどの継続的治療が不可欠です。 再生医療 再生医療は、脳出血で損傷した脳細胞や血管を幹細胞で修復し、後遺症の改善や再発予防を目指す治療法です。 患者自身の骨髄・脂肪・歯髄から採取した幹細胞を体外で増殖させ、注射などで損傷部位に戻すことで、神経や血管の再生や炎症の抑制が期待されます。これにより、麻痺・言語障害・しびれなどの症状軽減が見込まれます。 リハビリテーションと併用することで効果が高まる可能性があり、早期の開始が望ましいとされています。 当院「リペアセルクリニック」では脳出血に対する再生医療の症例を紹介しているので、ぜひご確認ください。 脳出血の予防法 予防法 詳細 血圧・生活・嗜好の改善 塩分控えめの食事、適度な運動、禁煙、節度ある飲酒、ストレス管理 慢性疾患・薬剤使用の見直し 高血圧や糖尿病、脂質異常症の適切な管理。医師による薬剤調整や定期検査 若年・再発時の血管精密検査 血管奇形やアミロイド血管症などの精密検査。再発リスクの評価と対策 脳出血の予防には、まず血圧管理を含めた生活習慣の改善が重要です。塩分を控えた食事、適度な運動、禁煙、節度ある飲酒、ストレスの軽減は血管への負担を減らします。高血圧、糖尿病、脂質異常症といった慢性疾患は、医師の指導のもと適切に管理し、薬剤の調整や定期検査を行います。 若年発症や再発例では、血管奇形やアミロイド血管症などを早期に発見するための精密検査を実施し、再発リスクを評価・対策します。こうした予防法を行っても改善が見られない場合や、体調に不安がある場合は、早めに医療機関を受診し、医師の診断と治療を受けることが大切です。 以下の記事では、脳出血の再発率と再発防止につながる行動を詳しく解説しています。 血圧・生活・嗜好の改善 項目 詳細 高血圧管理 定期的な血圧測定と医師の指示に従った治療。薬物療法と生活習慣管理の継続 減塩と食事の見直し 塩分摂取量の制限。バランスの良い食事内容への改善 適度な運動 毎日のウォーキングや週150分以上の有酸素運動の継続 禁煙・節酒 タバコ・過度な飲酒の制限。血管への負担軽 ストレス管理 十分な休養や趣味時間の確保。心身のリフレッシュ 体重管理・糖尿病コントロール 適正体重の維持と糖尿病・生活習慣病の管理 脳出血の最大の原因は高血圧であり、日頃からの血圧管理が不可欠です。塩分を控えたバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、喫煙や過度な飲酒は避けましょう。これらの習慣は血管への負担を減らし、脳出血のリスク低下につながります。 規則正しい生活やストレスの軽減も血圧安定に有効です。とくに脳出血の既往がある方は、より厳格な血圧管理(130/80mmHg未満を目安)が推奨されます。継続した血圧管理と生活改善により、再発や新たな発症を防ぎやすくなります。 以下の記事では、高血圧の予防について詳しく解説しています。 慢性疾患・薬剤使用の見直し 脳出血のリスクは、高血圧に加え、糖尿病、脂質異常症、心疾患、腎疾患、血液疾患などの慢性疾患によっても高まります。これらは血管を脆弱にし、発症を招きやすくするため、継続的な管理が不可欠です。 抗凝固薬や抗血小板薬などの一部の治療薬は、管理が不十分だと出血リスクを増やす可能性があるため、定期的な診察や血液検査で病状と薬剤の効果・副作用を確認し、必要に応じて治療を見直すことが重要です。 薬剤の中止や変更は必ず医師・薬剤師と相談し、自己判断は避けましょう。生活習慣の改善と薬剤管理を含む慢性疾患の適切なコントロールが、脳血管の健康維持と脳出血予防につながります。 若年・再発時の血管精密検査 検査名 詳細 MRI/MRA(磁気共鳴画像検査・血管造影検査) 脳の組織や血管の状態確認。血管の狭窄、動脈瘤、血管奇形の有無を評価 頸動脈超音波検査(エコー) 首の動脈の血流測定と動脈硬化の評価。脳への血流状態の確認 血管造影検査(必要に応じて) カテーテルと造影剤による詳細な血管形状の評価。治療計画立案の補助 脳出血は高齢者に多く発症しますが、若年での発症や再発が疑われる場合には、脳動静脈奇形(AVM)や未破裂脳動脈瘤などの血管構造異常が隠れていることがあります。これらを放置すると再出血の危険性が高まるため、早期発見と症状の管理、必要に応じた外科的治療が重要です。 再発時には初回と異なる原因や血管の変化が生じている可能性があり、再評価としての精密検査が有効です。血管の詳細な状態を把握することで、発症リスクを正確に評価し、適切な治療や予防策を講じることができます。若年発症や再発例では、再発予防のため脳血管の精密検査が推奨されます。 脳出血が疑われる方は早急に医療機関を受診しよう 脳出血は時間の経過とともに脳への損傷が広がり、命や生活に深刻な影響を及ぼす危険性が高まります。 片側の手足が急に動かしにくい、言葉が出にくい、視界の一部が欠ける、強い頭の違和感や吐き気がある場合は、症状が軽くても急速に進行する可能性があるため、自己判断せずに迷わず救急要請してください。早期の診断と治療開始が後遺症を減らすために重要です。 脳出血の症状が改善しない、後遺症にお悩みの方は当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、脳出血による後遺症に直接アプローチできる再生医療を、治療の選択肢のひとつとしてご提案しています。 また当院では、現在も後遺症や症状でお困りの方の思いや生活上の不安に耳を傾けながら、状況に合わせた治療計画を一緒に考えてまいります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 脳出血に関するよくある質問 脳出血の後遺症にはどのような症状があるのでしょうか? 脳出血後には、半身の麻痺や手足のしびれといった運動・感覚障害、言葉が出にくくなる失語や構音障害、記憶力や注意力の低下などの認知機能障害、嚥下障害、視野欠損や視力低下などの視覚障害がみられることがあります。 これらの症状は出血部位や範囲によって異なりますが、多くの場合、急性期から1年後もなんらかの後遺症が出るケースもあります。ただし、適切なリハビリテーションや継続的な医療支援によって、症状が改善する可能性も十分にあります。 以下の記事では、脳出血の後遺症について詳しく解説しています。 脳出血は若い人も発症する病気ですか? 若年層(18〜49歳)でも脳出血は発症する可能性があり、実際にこの年代が脳出血全体の約30%を占めるとの報告があります。(文献3) 日本における45歳未満の年間発症率は、平均で人口10万人あたり52.4人(95%信頼区間:35.7~69.2)とされ、高齢者に比べると頻度は低いものの、若年層でも発症が報告されています。(文献4) 発症の背景には、高血圧や血管異常、外傷、薬剤使用などがあり、とくに血管奇形や遺伝的要因は若年層における重要な原因とされています。 脳出血の入院期間はどのくらいですか? 一般的な入院期間の目安は以下のとおりですが、これはあくまで統計上の平均であり、実際の期間は年齢、症状の程度、合併症の有無、離床の進み具合などによって大きく異なります。厚生労働省の統計では、平均入院期間は77.4日と報告されています。(文献5) 以下の記事では、脳出血の入院期間について詳しく解説しています。 脳出血の退院後の生活は? 脳出血の再発予防には、毎日の血圧測定と降圧薬の適切な服用、減塩・栄養バランスの取れた食事、禁煙、節酒、適度な運動、規則正しい生活によるストレス軽減が重要です。 さらに、定期通院やリハビリを継続し、自宅でも訓練を行いながら症状の変化を医師に報告し、転倒防止のための住環境整備や介助者との連携を行うことで、再発リスクを減らし生活の質を保てます。 以下の記事では、脳出血の退院後の生活について詳しく解説しています。 脳出血の既往歴がありますが頭皮マッサージを受けても大丈夫でしょうか? 脳出血の既往がある方が頭皮マッサージを受ける際は、発症直後の急性期(24〜48時間以内)は再出血の危険が高いため、強い圧迫や刺激を避ける必要があります。 血圧が安定していても過度な力は脳や血管に負担をかけるため、優しい力加減で行うことが重要です。発熱、頭痛、めまいなど体調不良がある場合は施術を控え、施術前には医師に相談してください。 施術中に違和感や不調を感じたら直ちに中止し、医師の許可と適切な力加減のもとで強い刺激は避けましょう。 以下の記事では、頭皮マッサージと脳出血の関係性について詳しく解説しています。 家族が脳出血になってしまったときにできることはありますか? 脳出血からの回復には、ご家族の適切な支援が欠かせません。病気や治療内容、予想される後遺症を正しく理解し、リハビリ、日常生活の介助を行いましょう。精神的な寄り添いや励ましは、患者さんの意欲を高める重要な要素です。 介護保険や各種福祉サービスを活用して負担を軽減し、ご家族自身の健康管理にも配慮が必要です。医療スタッフと情報を共有しながら、患者さんとともに回復への道を歩んでいくことが大切です。 以下の記事では、脳出血後の介護ケアについて詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) 脳卒中患者に対する発症後48 時間以内の起立と定義した早期離床導入の効果|J-STAGE (文献2) 脳卒中治療ガイドライン2009|Ⅲ.脳出血 (文献3) Spontaneous Intracerebral Hemorrhage in the Young: An Institutional Registry Analysis|PMC PubMed Central® (文献4) Epidemiology of intracerebral hemorrhage: A systematic review and meta-analysis|frontiers (文献5) 退院患者の平均在院日数等
2025.08.31 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 頭部
「突然、手足がしびれる、言葉が出にくい」 「最近、意識がもうろうとすることがある」 「もしかして脳梗塞かも」と不安を感じたことはありませんか。高血圧や糖尿病を抱え、脳梗塞のリスクを心配している方も多いでしょう。脳梗塞は年齢や性別に関係なく、誰にでも起こり得ます。 本記事では、現役医師が脳梗塞について詳しく解説します。 脳梗塞の種類 脳梗塞の一般的な症状 脳梗塞の初期症状 脳梗塞の原因 脳梗塞の治療法 脳梗塞の予防法 脳梗塞は、正しい知識を持ち早期発見に努めることが重要です。記事の最後には、脳梗塞に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳梗塞について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脳梗塞とは 項目 内容 血管の詰まり 脳の血管内に血栓ができ、血流が止まる状態 酸素・栄養の不足 血液が届かず、脳細胞が酸素と栄養不足に陥る 脳細胞の壊死 酸素不足により神経細胞が死滅し、機能障害が生じる 後遺症の可能性 麻痺・言語障害・意識障害など、回復が難しい症状の発生 脳梗塞とは、脳の血管に血栓ができて血流が止まり、酸素や栄養が届かなくなる病気です。脳細胞が壊死し、手足の麻痺や言葉の障害、意識低下などの神経障害が引き起こされます。 症状は突然現れ、進行も速いため、早期の発見と治療が非常に重要です。 種類や原因によって症状や治療は異なります。脳梗塞の早期発見・治療には、正しい理解が不可欠です。異変を感じたら早めに医療機関を受診することで、後遺症の軽減および生活の質の維持に寄与します。 以下の記事では、脳梗塞のサインや後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説 目の奥が痛いのは脳梗塞の前兆?目の病気との見分け方や対処法を解説【医師監修】 脳梗塞になりやすい人の特徴は?前兆や後遺症も解説 脳梗塞の種類 種類 原因 特徴 BAD(脳梗塞) 太い血管にできたプラークが、小血管の入口をふさぐことで生じるタイプ 数時間以内の症状進行。TIA(一過性脳虚血発作)の前兆の反復。進行性麻痺の出現 ラクナ脳梗塞 細い脳血管が高血圧で詰まる。小さな梗塞が深部にできる 軽症のしびれや手足が動かしにくくなる。ときに無症状(無症候性脳梗塞)で進行することもある アテローム血栓性脳梗塞 太い血管の動脈硬化で狭くなり血栓ができる。高血圧・糖尿病など関係 徐々に症状が進行。前触れ症状が出ることもある 心原性脳梗塞 心房細動などで心臓内血栓が脳へ流れて詰まる 突然の激しい症状。意識障害や半身麻痺が多い 小脳梗塞 小脳の血流が遮断される めまい、吐き気、バランス障害など 脳梗塞は、血管の詰まり方や原因によっていくつかのタイプに分類されます。 種類は「BAD」「ラクナ脳梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳梗塞」「小脳梗塞」があり、それぞれのタイプによって症状や治療法、再発のリスクも異なるため、正確な診断と対処が求められます。 BAD(脳梗塞) 項目 内容 原因 太い動脈(中大脳動脈や脳底動脈)近くの小さな枝(穿通枝)の起始部にアテローム性プラークができる。高血圧・糖尿病・脂質異常症が関係。細い動脈自体ではなくそのすぐ近くに病変がある 症状の特徴 症状が徐々に悪化する傾向。発症後数時間以内に手足の麻痺や構音障害が進むことが多い 特徴的な現象 微細なTIA(一過性脳虚血発作)が繰り返される症状が起こることがある 梗塞巣の大きさ ラクナ脳梗塞より大きく(15mm以上)広がりやすい傾向がある BAD(Branch Atheromatous Disease)は、主に中大脳動脈や脳底動脈の分岐部にできたアテローム性プラークが、穿通枝の起始部を閉塞することで発症する脳梗塞です。 このため、細小動脈そのものの病変によるラクナ脳梗塞とは病態が異なります。梗塞病巣は直径15mmを超えることが多く、画像上では通常の穿通枝梗塞よりも広範囲に広がりやすい傾向があります。 症状の特徴は、発症後数時間以内に局所麻痺や構音障害が徐々に悪化する進行性経過をたどることです。脳梗塞に進行することがあります。BADの発症には、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が関与しています。 以下の記事では、BADについて詳しく解説しています。 ラクナ脳梗塞 項目 内容 原因 脳の奥にある細い血管(穿通枝)が高血圧などで閉塞 梗塞の大きさ 小さく、直径1.5cm以下の深部にできる梗塞 症状 軽い手足のしびれや麻痺。無症状(無症候性脳梗塞)もある 予防 血圧管理が重要で、再発リスクが高い 注意点 軽度のため発見されにくいが、放置すると重篤な脳梗塞につながる ラクナ脳梗塞とは、脳の奥にある細い血管が詰まって起こる小さな脳梗塞です。主な原因は高血圧で、脳の深部に直径1.5cm以下の梗塞ができることが特徴です。 症状は軽く、手足のしびれや軽い麻痺などが中心で、無症状のまま気づかれないこともあります。そのため無症候性脳梗塞とも呼ばれており、再発率が高いのが特徴です。 放置すると重い脳梗塞につながります。重篤化する前に早期発見と血圧管理、生活習慣の見直しが重要です。 以下の記事では、ラクナ脳梗塞について詳しく解説しています。 アテローム血栓性脳梗塞 項目 内容 原因 脳の太い血管(中大脳動脈など)が動脈硬化で狭窄。狭くなった部分に血栓(かたまり)が形成。高血圧・糖尿病・脂質異常症が関係 症状の特徴 症状が徐々に進行するケースが多い。手足の動きづらさや言語障害が代表的。発症前に軽い違和感や前兆が現れることも 進行の速度 比較的ゆっくり進行し、数日かけて症状が悪化しやすい 予防と管理 生活習慣の見直しによる動脈硬化の予防、定期的な血圧や血糖値の管理が重要 アテローム血栓性脳梗塞は、脳の太い動脈が動脈硬化で狭くなり、その部分に血栓ができて血管が詰まることで発生します。主な原因は高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病であり、これらの管理が予防の基本となります。 症状は突然ではなく、数日かけて徐々に手足の動かしにくさや言葉が出にくくなるなどの言語障害が進行することが多いのが特徴です。 発症前に軽い違和感や前兆が現れることもあるため、異変を感じた際には早急に医療機関への受診が重要です。適切な治療と生活習慣の改善によって動脈硬化の進行を抑え、再発を予防することが不可欠です。 以下の記事では、アテローム血栓性脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 心原性脳梗塞 項目 内容 原因 心房細動などの心臓の不整脈による心臓内の血栓が脳まで流れ詰まる 詰まる血管 脳の太い血管が突然詰まる 症状の特徴 激しい頭痛、意識障害、半身麻痺、言語障害などが急激に現れる 重症度 重症化しやすく、迅速な救急対応が必要 注意点 心疾患を持つ方は脳梗塞リスクが高く、日頃から注意が必要 心原性脳梗塞は、心房細動などの不整脈で心臓内にできた血栓が血流に乗り、脳の太い血管を塞ぐことで発症します。突然、激しい頭痛や意識障害、片側の麻痺、言語障害などの重症症状が現れ、急速に進行するのが特徴です。 症状に気づいた場合は、迷わず救急車を呼び、一刻も早く治療を受ける必要があります。心臓に病気を抱えている方は、血栓ができないように抗凝固薬を服用し、定期的に心臓の状態を管理するのが重要です。日常生活での自己管理と医療機関との連携が、脳梗塞の予防と命を守るために不可欠です。 以下の記事では、心原性脳梗塞の症状について詳しく解説しています。 小脳梗塞 項目 内容 原因 小脳の血流が途絶えること 主な症状 ふらつき、めまい、バランス障害 その他の症状 手足の震え、歩行の不安定さ、吐き気 注意点 症状が脳梗塞と気づきにくいことが多い。脳幹に近く、放置すると命に関わる場合がある 受診のタイミング 急なふらつきや歩行障害が現れたら速やかな受診が必要 小脳梗塞は、バランスや運動の調整を担う小脳への血流が止まることで起こる脳梗塞の一種です。主な症状には、突然のふらつき、めまい、手足の震え、歩行の不安定さなどがあります。これらの症状は、脳梗塞と気づかれにくいことがあるため注意が必要です。 とくに、小脳は脳幹に近いため、放置すると命にかかわる危険性があります。症状が軽く見えても、急に悪化するおそれがあるため、急なバランスの乱れや歩行障害が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。早期に診断と治療を行うことで、重い合併症を防ぐことが期待できます。 以下の記事では、小脳梗塞で起こりうる後遺症について詳しく解説しています。 脳梗塞の一般的な症状 脳梗塞の一般的な症状 詳細 片側の麻痺・しびれ(顔・手足) 脳の片側血流障害による反対側の顔や手足の動きにくさ、感覚障害、部分的または全身的な麻痺 言語障害(ろれつが回らない・言葉が出にくい) 発語困難、発音の不明瞭さ、言葉を選ぶのが困難な状態、口や舌の動きの制限 視覚・平衡感覚の異常(視野・視力・めまい・バランス障害) 視野欠損、視力低下、めまい、ふらつき、平衡感覚の乱れによる歩行不安定や転倒の危険性 意識障害・混乱・突然の激しい頭痛 意識の鈍麻や消失、思考混乱、急激な強い頭痛、脳機能の急激な低下、緊急対応を要する状態 脳梗塞は脳の血流が突然止まることで起こり、その影響で手足の片側に麻痺やしびれ、言葉が出にくくなる言語障害、視野や視力の異常、めまいやバランスの乱れなどの症状が現れます。これらの症状は脳のどの部分に障害が起きたかによって異なります。とくに早朝や起床直後に起こることが多いのが特徴です。 症状に気づくのが遅れると後遺症のリスクが高まるため、少しでもおかしいと感じた場合は迷わず速やかに医療機関を受診しましょう。早期の対応が命を守り、後遺症を減らすことにつながります。 片側の麻痺・しびれ(顔・手足) 脳梗塞の初期症状としてよく見られるのが、顔や腕など身体の片側に起こる麻痺です。麻痺は脳の血流が悪くなり、運動機能をつかさどる神経の働きが妨げられるために起こります。 顔の場合、大脳から顔の筋肉を動かす神経への伝達がうまくいかなくなり、口角が下がる、目が閉じにくいといった左右差が表れます。 腕の麻痺は、脳の運動野の損傷によって起こり、脳の片側が障害されると反対側の手足に症状が現れるのが特徴です。これらは脳梗塞のサインとして非常に重要で、少しの変化でも見逃さないことが大切です。 以下の記事では、手足のしびれとして現れるアッヘンバッハ症候群と脳梗塞の関係性について詳しく解説しています。 言語障害(ろれつが回らない・言葉が出にくい) 項目 内容 脳の言語中枢の障害 脳の左側大脳半球にある「ブローカ野」(言葉を作る)と「ウェルニッケ野」(言葉を理解・選ぶ)への血流不足や細胞損傷 ブローカ失語 話の理解は可能だが、言葉が出にくく短くぎこちない話し方になる ウェルニッケ失語 流暢に話すが言葉のつながりが悪く意味不明、時に自分の異変に気づかない 構音障害 脳幹や神経線維路の障害により舌や口の筋肉の動きが鈍り、「ぱ・た・か」が言いにくい、かすれ声や鼻声などになる アノミア 言葉を思い出せず探す時間がかかる状態で、軽度から重度まで幅広い言語困難 言語障害は、脳梗塞によって脳の言語機能を司る部分が障害されることで起こります。とくに左脳のブローカ野やウェルニッケ野が損傷を受けると、言葉を作ったり理解したりする力に支障ができるのが特徴です。 ブローカ失語では言葉が出にくくぎこちない話し方になり、ウェルニッケ失語では流暢に話せても内容が伝わりにくくなります。構音障害は、話すための筋肉の動きがうまくいかなくなり「ぱ・た・か」が言いづらくなったり、かすれ声や鼻声が出る状態です。 言いたい言葉が思い出せず、言葉を探すのに時間がかかるアノミアも見られます。これらの症状は突然現れることが多く、早期の治療とリハビリが重要です。 視覚・平衡感覚の異常(視野・視力・めまい・バランス障害) 日常で気づきやすいサイン 内容 片方の視野が見えにくくなる・ぼやける・二重に見える 突然の視野の欠損や視覚障害。脳の視覚中枢の異常の可能性 ぐるぐる回るめまい・ふわふわ感覚・バランス崩し 回転性めまいやふらつき。脳の平衡感覚を司る部分の障害のサイン 立っているだけでのふらつきや倒れそうな感覚 バランス調整障害による重度の不安定さ。転倒や事故のリスク上昇 早期受診の重要性 これらの症状があれば、迅速に医療機関に相談・受診が不可欠 脳梗塞は、脳の一部に血液が届かなくなることで発症します。視覚をつかさどる後頭葉や視覚野、視神経が障害されると、片側の視野が欠けたり、視界がぼやける、ものが二重に見えたりする症状が現れます。 小脳や脳幹が障害されると、めまいやふらつき、立てなくなることがあり、転倒のリスクが高い状態です。小脳は姿勢や歩行、脳幹は眼球や頭の位置の調整に関わっています。視覚と平衡感覚は連携して働いており、脳梗塞によって情報の統合がうまくいかなくなると、バランスが崩れやすくなります。 「突然片方の視野が見えにくくなる」「視界がぼやける・二重に見える」「めまいやふわふわした感覚」「立っているだけでもふらつく」などの症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。 視野の一部がかすむ症状が気になる方は、視覚に異常が起きる閃輝暗点の見え方について解説している以下の記事もあわせてご覧ください。 意識障害・混乱・突然の激しい頭痛 項目 内容 意識障害・混乱の原因 脳の特定部分への血流不足による酸素・栄養不足。意識や思考を司る部分の機能低下による反応の鈍化や混乱状態 意識障害の重篤さ 10秒以上の血流停止で意識消失の可能性。脳全体の機能低下による重篤な状態 突然の激しい頭痛の原因 血管破裂や血液漏出による頭蓋内圧の急上昇。雷鳴頭痛(サンダークラップ頭痛)と呼ばれる瞬間的な強烈な違和感 症状が突然起こる理由 血管の閉塞や破裂という急激な出来事が一瞬で発生するため。予兆なしに症状が始まる特徴 緊急対応の重要性 脳細胞は酸素をすぐに必要とし、放置で脳細胞の死滅と後遺症リスクが増加。即時の救急医療搬送が必要 意識障害や混乱は、脳の特定部位に血液が届かなくなり、酸素や栄養が不足することで起こります。とくに意識や思考を司る領域が影響を受けると、反応が鈍くなったり、ぼんやりしたりする混乱状態になることがあります。 血流が一時的に止まり10秒以上続くと意識を失うこともあり、これは脳全体の機能が急激に低下するためです。(文献1) 突然の激しい頭痛は、脳の血管が破れて血液が漏れ出し、頭蓋内の圧力が急上昇することで生じ、雷鳴頭痛と呼ばれる非常に強い違和感として現れます。 これらの症状が突然起こるのは、血管の詰まりや破裂が急に発生するためであり、予兆なく始まるのが特徴です。脳は常に酸素を必要とするため、症状が現れたら直ちに医療機関を受診しましょう。 脳梗塞の初期症状(早期のサインに注意) 脳梗塞の初期症状 詳細 表情・上肢の麻痺 顔の片側の動きにくさや歪み、片方の腕や手の力が入らない状態 言語サイン ろれつが回らない、言葉がスムーズに出ない、話しにくさや発音の異常 覚醒・自律系の前兆サイン(目・平衡・あくび・耳鳴り・いびき) 目のかすみや視野異常、めまいやバランスの乱れ、頻繁なあくび、耳鳴り、いびきの変化などの自律神経や覚醒状態の乱れ 脳梗塞は一刻を争う疾患であり、発症から治療までの時間が短いほど、後遺症を軽減できる可能性が高くなります。初期症状を見逃さず、迅速に対応することが重要です。 顔のゆがみ、腕の脱力、言葉のもつれは脳梗塞を疑う代表的なサインです。さらに、脳の深部や後方が障害されると、視覚や平衡感覚、自律神経にも異常が現れることがあります。視野のかすみ、めまい、ふらつき、頻繁なあくび、耳鳴り、大きないびきの変化なども注意が必要な前兆です。 以下の記事では、脳梗塞の危険なサインを詳しく解説しています。 表情・上肢の麻痺 脳梗塞の初期症状として、表情や上肢の麻痺が現れるのは、脳の血流不足により運動機能をつかさどる神経が障害されるためです。顔の表情筋は大脳皮質から顔面神経核を経て動かされますが、この経路が遮断されると、顔の片側に麻痺が生じ、笑顔が左右非対称になったり口角が上がらないなどの変化が見られます。 また、脳の運動野の損傷により、反対側の腕や手に力が入らなくなる上肢麻痺も起こります。これらの症状は脳梗塞の代表的なサインであり、顔と腕の麻痺が同時に見られた場合はとくに注意が必要です。本人が異変に気づかないこともあるため、周囲が早期に異変を察知し、受診を促すことが重要です。 言語サイン 項目 内容 言語機能を担う部位 脳のブローカ野(言葉を作る場所)とウェルニッケ野(言葉を理解する場所) 失語症 言葉の理解や表現が難しくなる状態 構音障害 発声器官の動きが悪くなり、言葉がはっきり話せなくなる状態 発症の特徴 血流不足で言語を司る部分が急に働かなくなり、言葉が出にくくなったりろれつが回らなくなる 重要性 急に起こるため初期サインとして早期発見・治療が脳の回復に重要。本人や周囲が気づきやすく、脳梗塞の疑いを持つ大切なサイン 「話しかけても返事が変」「言葉がはっきりしない」「言っていることが理解できない」といった言語の異常は、脳梗塞の典型的なサインです。とくに左脳に障害が起きた場合、言葉を話す・理解する力に影響が出ます。 「名前が出てこない」「簡単な文章が言えない」など、わずかな違和感でも見逃さないことが大切です。ろれつが回らないときは、無理をせずに医療機関を受診しましょう。 覚醒・自律系の前兆サイン(目・平衡・あくび・耳鳴り・いびき) 覚醒・自律系の前兆サイン 内容 目・視野の異常 後頭葉・視覚路の血流不足による視野の一部欠損(半盲)や物が二重に見える(複視)状態 平衡感覚の異常 小脳や脳幹の循環障害による立ち上がり時のめまい・ふらつき、歩行困難や転倒の危険性 耳鳴り・聴覚異常 延髄や聴橋の血流不足で起こる突発性のザー音の耳鳴りや耳詰まり、時に片側の難聴。めまいやふらつきと併発しやすい 頻回・異常なあくび 脳の血流不足による自律神経の乱れで突然起こる異常なあくび 急に始まったいびき・睡眠呼吸の変化 延髄や橋の虚血で気道を開く筋肉が一時的に働かず呼吸が不安定に。初めてのいびきや呼吸音の変化は脳卒中の前兆の可能性 脳梗塞の前兆として、覚醒や自律神経に関わるさまざまな症状が現れることがあります。視野の一部が見えにくい(半盲)や物が二重に見える(複視)は、後頭葉の血流不足によるものです。ふらつきや歩行困難は小脳や脳幹の障害によって起こり、突然の耳鳴りや耳の詰まり感にも注意が必要です。 また、頻繁なあくびや急に始まったいびきも脳の異常を示す場合があります。これらの症状は脳梗塞の可能性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。 以下の記事では、脳梗塞の前兆を詳しく解説しています。 【関連記事】 目の奥が痛いのは脳梗塞の前兆?目の病気との見分け方や対処法を解説【医師監修】 耳鳴りは脳梗塞の前兆?耳鳴りを伴う脳や耳の病気も解説 生あくびは脳梗塞の前兆?病的な生あくびであるかの見分け方も解説 脳梗塞といびきは関係がある!危険ないびきの見分け方 脳梗塞の原因 原因 詳細 生活習慣病・動脈硬化(高血圧・糖尿病・脂質異常症) 高血圧による血管への強い圧力、糖尿病による血管の傷害、脂質異常症による動脈硬化の進行。これらが血管を狭くし脳梗塞のリスク増加 心房細動などの心疾患(心臓由来の血栓) 心房細動などの不整脈で心臓内に血栓ができ、それが脳に飛んで大きな血管を詰まらせる。突然の重症発症の原因 血液・血管の固有要因(加齢・もやもや病・脱水など) 加齢による血管の劣化やもやもや病による血流障害、脱水による血液の粘度上昇などが血管詰まりの要因となる 生活習慣・環境因子(喫煙・過度飲酒・ストレス・脱水) 喫煙による血管収縮や動脈硬化促進、過度の飲酒による血圧上昇、ストレスによる血管への悪影響、脱水による血液粘度増加が脳梗塞リスクを高める 脳梗塞は、動脈硬化や心臓病などで血管が詰まって起こります。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が血管を狭くし血栓ができやすくなるのが特徴です。 心房細動など心臓の不整脈も血のかたまりを作りやすく、脳の血管を塞ぐことがあります。また、加齢や脱水で血液が濃くなったり血管が弱ったりすることも要因です。喫煙や飲酒、ストレスなどの生活習慣もリスクを高めるため、生活の見直しが予防につながります。 生活習慣病・動脈硬化(高血圧・糖尿病・脂質異常症) 項目 内容 生活習慣病とは 食事・運動・喫煙・飲酒などの習慣が原因で起こる病気。高血圧・糖尿病・脂質異常症などを含む 動脈硬化との関係 生活習慣病の進行で血管壁に脂肪やコレステロールがたまり血管が硬く狭くなる状態 脳梗塞とのつながり 動脈硬化による血管の狭窄や血栓形成が脳血流を妨げ、脳梗塞の主な原因となる 高血圧の危険因子 血管に強い負担がかかり動脈硬化を進める要因 糖尿病の危険因子 血管内皮の傷害促進による血栓形成のしやすさ 脂質異常症の危険因子 悪玉コレステロール(LDL)の増加による血管壁への脂肪沈着と動脈硬化の促進 対策の重要性 塩分控えめの食事、適度な運動、禁煙など生活習慣の改善による動脈硬化進行抑制と脳梗塞リスク軽減 高血圧、糖尿病、脂質異常症は、血管に負担をかけて動脈硬化を進める病気です。血管が狭くなると血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。これが脳の血管で起こると脳梗塞につながります。 脳梗塞を防ぐには、血圧・血糖・コレステロールをしっかり管理し、薬や食事療法を継続することが大切です。 以下の記事では、生活習慣病について詳しく解説しています。 【関連記事】 糖尿病の初期症状とは?合併症の特徴やセルフチェックリストを紹介 【なぜ治らない?】糖尿病が完治しない理由やなってしまったらどうするべきか医師が解説 心房細動などの心疾患(心臓由来の血栓) 心房細動とは、心臓の上部にある心房が電気信号の乱れで細かく震え、不規則かつ速く動く不整脈です。そのため心房が十分に収縮できず、血液の流れが悪くなります。とくに心房の左心耳部分に血液がたまりやすくなり、よどみができて血液が固まり血栓が形成されやすくなります。 できた血栓は心臓から血流に乗って脳へ運ばれ、脳の太い血管を詰まらせることで酸素や栄養の供給が遮断され、脳梗塞を引き起こします。この現象を心原性脳梗塞と呼び、範囲が広く重症化しやすい特徴があります。 心房細動による血栓は比較的大きく、脳の重要な血管を塞ぎやすいため、命に関わる重篤な状態になりやすく、後遺症のリスクも高い状態です。自覚症状がない無症候性の場合でも脳梗塞の危険があり、症状の有無に関わらず予防治療が非常に重要となります。抗凝固薬の服用や定期的な心電図検査による管理が推奨されます。 以下の記事では、心房細動になりやすい人の特徴を詳しく解説しています。 血液・血管の固有要因(加齢・もやもや病・脱水など) 原因 内容 とくに注意が必要な点 加齢 細い血管がもろくなり、詰まりやすくなる 高齢者では血管の弾力低下により、リスク増加 遺伝的要因(もやもや病など) 脳の血管が狭くなり、異常な細い血管ができる 若年層でも発症しやすく、出血や血流不足を起こしやすい 脱水・血液の濃さ 脱水や赤血球の増加で血液がドロドロになる 暑さや下痢・嘔吐時にリスク上昇、小さな血管が詰まりやすくなる 加齢に伴い、血管は徐々に弾力を失い、狭くなり詰まりやすくなります。こうした変化は、脳梗塞のリスクを高める大きな要因のひとつです。 また、先天的な血管異常であるもやもや病にも注意が必要です。脳の血流が不安定になり、わずかな刺激で脳梗塞を起こすことがあります。若年層にも発症し、進行すると重い症状を引き起こすことがあります。 加えて、脱水も見過ごせないリスクです。とくに夏場の水分不足や、下痢・嘔吐が続くと、血液が濃くなり、血流が滞りやすくなります。これが小さな血管の閉塞を招き、脳梗塞につながることがあります。 血管や血液の状態は脳梗塞の発症に深く関係しています。日常的な体調管理に加え、こまめな水分補給や定期的な健康チェックが予防には欠かせません。 以下の記事では、もやもや病について詳しく解説しています。 【関連記事】 もやもや病とは指定難病の一つ|症状や治療法を解説【医師監修】 もやもや病がまねく脳梗塞のリスク要因と予防策について 生活習慣・環境因子(喫煙・過度飲酒・ストレス・脱水) 項目 内容 喫煙 血管内皮の損傷による動脈硬化の促進。血液の凝固能力向上による血栓形成の増加。悪玉コレステロール増加、善玉減少。血圧上昇と心拍数増加による血管ストレス 過度な飲酒 高血圧誘発による動脈硬化リスク増加。心房細動など不整脈の誘発と血栓形成。脂質異常症の悪化。利尿作用による脱水状態の促進 ストレス 自律神経の乱れによる血圧上昇。ストレスホルモンによる血糖・コレステロールの一時的上昇。生活習慣の乱れ(喫煙増加や過食、過飲酒)によるリスク複合化 脱水 体内水分減少による血液粘度上昇と血栓形成の促進。重度脱水による血圧低下と脳血流の滞り。夏場の熱中症時に悪化しやすく、高齢者はとくに水分補給の注意が必要 喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を進める大きなリスクです。過度な飲酒も心臓に負担をかけ、不整脈の原因になります。加えて、強いストレスや不規則な生活は自律神経を乱し、血圧の急激な変動を引き起こす要因です。 環境要因が重なることで、脳梗塞の発症リスクは高くなります。生活習慣の改善は、今からでも始められる大切な予防策です。 以下の記事では、生活習慣について詳しく解説しています。 【関連記事】 尿酸値と痛風の関係性|8.0mg/dLはやばい?高い原因と治療法を解説 女性の尿酸値が高い原因は?生活習慣やホルモン・食べ物についても解説 脳梗塞の治療法 治療法 詳細 再開通療法 血栓を溶かす薬剤(アルテプラーゼなど)の静脈注射。発症後できるだけ早く、4.5時間以内の使用が効果的。 薬剤が使えない場合は、血管内カテーテル治療で血栓を直接除去 薬物療法 抗血小板薬や抗凝固薬の使用。血小板の働きを抑え血栓形成を防ぐ薬や、血液の凝固を抑制する薬剤を用いて脳梗塞の再発や進行を抑制。副作用や投与量管理が必要 リハビリテーション 麻痺や言語障害などの機能回復を目的とした理学療法・作業療法・言語療法の開始。できるだけ早く取り組むことが望ましい 再生医療 脳細胞の損傷修復を目指し、幹細胞などを用いた先進的な治療法。まだ研究段階であるが将来の治療法として期待されている 脳梗塞の治療では、詰まった血管をできるだけ早く再び開通させることが最も重要です。発症後すぐに対応することで、後遺症や死亡リスクが大きく左右されます。 治療方法には、血栓を溶かす薬剤(アルテプラーゼなど)の静脈注射があり、薬剤が使用できない場合は血管内カテーテルによる血栓の除去を行います。再発を防ぐためには抗血小板薬や抗凝固薬を用います。 発症後は麻痺や言語障害の回復を目指して、リハビリテーションを早期に開始することが重要です。さらに、幹細胞を用いた再生医療も将来の治療法として期待されています。患者様の状態に応じて、これらの治療法が適切に選択されます。 以下の記事では、脳梗塞の治療方法や入院期間について詳しく解説しています。 再開通療法 項目 内容 脳細胞の壊死防止 血管の詰まりを早期に解消し、壊死の進行を止めることで脳機能のダメージを最小限に抑制。回復しやすいペナンブラ領域の血流再開 治療開始までの時間の重要性 発症後時間が短いほど救える脳細胞が多く、回復の可能性が高まる 後遺症の重篤化防止 血流回復で麻痺・言語障害・意識障害など重篤な後遺症を防ぐか軽減し、日常生活への影響を小さくする可能性 t-PA静脈内投与療法(点滴) 血栓を溶かす薬剤を点滴投与。発症から4.5時間以内の治療が効果的 血栓回収療法(カテーテル治療) カテーテルで直接血栓を取り除く治療。t-PAが使えない場合や大きな血管閉塞に対応。発症から6時間以内(一部24時間まで)に実施が有効 (文献2)(文献3) 再開通療法は、脳の詰まった血管の血流を回復させるための重要な治療です。 発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす薬剤「t-PA」を点滴で投与するt-PA静脈内投与療法が有効です。4.5時間を過ぎた場合や血管が太い血管が詰まった場合は、足の付け根などからカテーテルを入れて直接血栓を取り除く血栓回収療法が行われます。(文献4) こちらは発症から6時間以内、場合によっては24時間以内まで有効です。(文献5) いずれの治療も早期発見・早期対応が命と後遺症の軽減に直結し、症状に気づいたら迷わず救急要請を行うことが大切です。 薬物療法 分類 内容 急性期の治療 血栓を溶かす薬(t-PA)による再開通の促進。脳浮腫や脳圧上昇を抑える薬剤の使用 再発予防の治療 抗血小板薬・抗凝固薬による血栓形成の抑制。降圧薬・血糖降下薬・脂質異常症治療薬による基礎疾患の管理 補助的な薬物療法 メコバラミンによる神経回復の補助と後遺症軽減のサポート 薬物療法は、脳梗塞の治療において重要な役割を果たします。発症直後は、血栓を溶かす薬(t-PA)で血流を再開させ、脳の腫れを抑える薬でダメージを最小限に抑えます。 また、脳細胞を保護する薬剤も使用されます。回復期には再発防止のため抗血小板薬や抗凝固薬を使用し、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患の管理も重要です。さらに、神経の修復を補助する目的でメコバラミンが使われることもあり、薬物療法は段階ごとに多面的な役割を担います。 以下の記事では、脳梗塞に対する薬物療法について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞に使われるメコバラミン(メチコバール)とは?副作用と有用性を解説 【医師監修】メチコバールの効果が出るまでの期間は?効かないと感じたときの対処法も解説 脳梗塞の痙縮・麻痺に対するボトックスの効果や影響について現役医師が解説 リハビリテーション リハビリの種類 目的・内容 理学療法 歩行・筋力・バランス機能の回復、拘縮予防、廃用症候群の防止 作業療法 着替え・食事・入浴など日常生活動作(ADL)の練習、自立支援 言語療法 言語の理解・発話機能や、飲み込み(嚥下)機能の回復 認知リハビリ 注意力・記憶・判断力などの回復、身体と認知を組み合わせた訓練の実施 脳梗塞の発症後は、麻痺や言語障害などの後遺症が出ることがあります。機能障害がある場合、できるだけ早期にリハビリを開始することが重要です。 とくに脳の可塑性(回復力)が高まるのは発症後数カ月以内、なかでも最初の3カ月が最も効果的とされています。この時期に集中的にリハビリを行うことで、機能回復が大きく促進されることがわかっています。(文献6) リハビリでは、歩行訓練や作業療法、言語療法などを、患者様の状態に合わせて段階的に進めていきます。退院後もリハビリを継続することで、再発予防や生活の質(QOL)の維持にもつながります。 再生医療 項目 内容 損傷した脳組織の修復・再生 患者様自身や他者の幹細胞を使い、神経細胞の新生・神経回路の再構築・脳内の血管新生を促進。脳機能の回復が期待される 脳の保護作用と炎症抑制 幹細胞が神経を保護し、過剰な炎症を抑制することで、さらなる脳細胞の損傷防止と脳の環境改善を促す効果 リハビリテーション効果の増強 再生医療による脳機能改善がリハビリの効果を高め、神経ネットワークの回復で機能改善や学習効果の向上につながる可能性 再生医療は、損傷した脳細胞や神経の機能回復を目指す先進的な治療法です。幹細胞などを用いて神経の再生を促す方法で、脳梗塞の後遺症への新たなアプローチとして注目されています。 再生医療は、症状の程度や発症からの時期によって適応が異なるため、希望する場合は対応している医療機関で診察を受け、医師と相談することが必要です。 脳梗塞の後遺症に対する再生医療の症例を以下の記事で紹介しています。再生医療について知りたい方は、ぜひ一度ご覧ください。 脳梗塞の予防法 予防法 詳細 血圧・血糖・コレステロールの管理 高血圧や糖尿病、脂質異常症の適切なコントロール。薬物療法や生活習慣の改善による動脈硬化予防と血管負担の軽減 規則正しい生活習慣と食事の工夫 バランスの良い食事(野菜中心、塩分・脂肪の制限)。適度な運動、禁煙、適量の飲酒、ストレス管理による生活習慣の改善 定期的な検診と医師の指導に基づいた継続的なケア 定期的な検査と医師の指導に基づく継続的な健康管理の実践 脳梗塞の予防には日々の生活習慣の見直しが欠かせません。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患がある方は、症状が安定していても油断せず、日々の血圧や血糖値などの数値を管理し、定期的に通院しましょう。 食事は野菜を中心に、塩分や脂肪を控え、適度な運動、禁煙、適量の飲酒、ストレス管理を心がけることが大切です。定期的な検診を受け、医師の指導に基づいた健康管理を継続することで、脳梗塞の発症や再発のリスクを大きく減らせます。日々の生活習慣を見直し、脳の健康を守ることが重要です。 血圧・血糖・コレステロールの管理 項目 内容 血圧の管理 高血圧による血管壁への負担軽減。動脈硬化の進行抑制。脳梗塞や脳出血の発症・再発リスクの大幅な減少。目標血圧140/90mmHg未満、リスク高い人は130/80mmHg未満。生活習慣改善と薬物療法の併用 血糖値の管理 高血糖による血管壁の傷害防止。動脈硬化の進行抑制。血管狭窄や血流障害を防ぎ、脳梗塞リスクを下げる コレステロールの管理 悪玉コレステロール(LDL)の抑制によるプラーク形成防止。動脈硬化や血栓形成の予防。血管の健康維持による脳血管障害リスクの減少 高血圧・高血糖・脂質異常は、脳梗塞の三大リスク要因です。これらを放置すると、血管の壁に負担がかかり、動脈硬化や血栓ができやすい状態になります。 毎日の食事や運動、薬の服用に加えて、家庭用の血圧計や血糖値測定器を活用することで、日常的な数値管理がしやすくなります。異常な数値が続く場合は、早めに医師に相談することが大切です。 以下の記事では、生活習慣病改善について詳しく解説しています。 【関連記事】 脂質異常症改善のための正しい運動とお茶の選び方|生活習慣の見直しポイントを医師が解説 血圧の正常値とは?内科医師が詳しく解説! 規則正しい生活習慣と食事の工夫 項目 内容 塩分・脂肪の摂取制限 塩分過剰は高血圧の原因。飽和脂肪酸や悪玉コレステロール(LDL)が動脈硬化を促進し血管詰まりを引き起こす バランスの良い食事 野菜、果物、青魚(EPA・DHA)、大豆製品、食物繊維の摂取による血圧低下と血管の健康維持。動脈硬化の進行抑制 規則正しい食事のリズムと食べ方 早食いやながら食いを避け、よく噛んでゆっくり食べることによる過食防止と血糖値の急上昇抑制。肥満や糖尿病の予防 適度な運動の習慣化 週150分程度のウォーキング、水泳、ヨガなど有酸素運動による血流改善。高血圧、糖尿病、肥満の改善。血管の健康維持とリスク低減 十分な水分摂取 脱水による血液の粘度上昇と血栓形成リスクの軽減。とくに起床時や就寝前にコップ1杯の水の摂取推奨 ストレス管理と睡眠促進 慢性ストレスによる血圧上昇と自律神経バランス崩れの予防。ストレス発散法の実践と良質な睡眠の確保 睡眠不足や不規則な生活は、血圧や自律神経に悪影響を及ぼします。できるだけ毎日同じ時間に起き、バランスの取れた食事を意識しましょう。 とくに減塩・低脂質・高カリウムの食事は、脳梗塞予防に効果的です。また、喫煙や過度な飲酒は血管へのダメージを加速させるため、禁煙・節酒にも取り組みましょう。健康維持は日々の積み重ねが大切です。 以下の記事では、脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものを解説しています。 定期的な検診と医師の指導に基づいた継続的なケア 項目 内容 生活習慣病の早期発見と管理 血圧・血糖・コレステロールなどの数値の継続的モニタリング。異常発見時の早期治療や生活習慣改善の開始。動脈硬化・血栓形成の進行防止 無症候性の脳梗塞や血管異常の早期発見 MRIや頸動脈エコーによる画像検査で自覚症状のない脳梗塞や血管狭窄、動脈瘤などの異常を把握。適切な治療・生活指導による重症化予防 医師の指導に基づく継続的なケアと生活習慣改善 検査結果に基づく専門医の生活指導と薬物療法。自己管理意識の向上と持続的な血圧測定・食事・運動の改善。再発防止のためのリハビリやフォローアップの実施 再発リスクの定期評価と予防対策の更新 定期的評価による治療方針の見直し。個別的かつ効果的な予防策の継続的実施 不安の軽減と健康意識の向上 健康状態の把握。医師のサポートで予防意識・生活管理意識の向上。モチベーション維持の促進 自覚症状がなくても、脳梗塞のリスクが徐々に進行していることがあります。年に1〜2回は定期健診を受け、血圧・血糖・脂質の数値を確認しましょう。 医師から生活指導を受けている場合は、自己判断で中断せず、継続的な管理が重要です。検診結果をもとに、将来のリスクを見据えた予防計画を立てることが、脳梗塞予防の第一歩となります。 以下の記事では、脳梗塞の患者様の家族が看護する際に注意すべきポイントを詳しく解説しています。 脳梗塞でお悩みの方は当院へご相談ください 脳梗塞は、脳の血管が詰まり血流が途絶えることで、脳細胞が壊死してしまう病気であり、発症後の早期対応が重要です。治療だけでなく、再発予防やリハビリも継続的に行うことが不可欠です。 脳梗塞でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、脳梗塞の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。 再生医療は、幹細胞の投与によって脳細胞の再生を促し、後遺症の改善や身体機能の回復を目指す治療法であり、リハビリとの併用による相乗効果が期待されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 脳梗塞に関するよくある質問 脳梗塞が進行して手遅れになるとどうなりますか? 脳梗塞は発症後すぐの治療が重要です。治療が遅れると脳の損傷が進み、半身麻痺、言語や発音の障害、嚥下障害、記憶・判断力の低下などの重い後遺症が出ることがあります。 重症では寝たきりや意識障害、命の危険も伴います。こうなると回復は限られ、長期介護が必要になることも多くなります。早期受診と治療が何より大切です。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症と手遅れにならないための治療法について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞後遺症で性格が変わる?主な変化と原因を解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 脳梗塞は20代でも発症する可能性はありますか? 脳梗塞は高齢者に多い病気とイメージされていますが、若い世代でも珍しくありません。 若年成人(18〜50歳)の脳梗塞は全体の約10〜15%を占め、20〜30代でも1%程度の発症が確認されています。若年性脳梗塞は加齢以外の原因によることが多く、脳動脈解離、もやもや病、オーラを伴う片頭痛や卵円孔開存などが原因です。 近年、米国では20〜44歳の脳卒中発症率が1993年の10万人あたり17件から2015年には28件へ増加しています。(文献5) CDCの報告では、2020〜22年に18〜44歳の脳卒中が14.6%増加しており、生活習慣の乱れ、ストレス、肥満などの影響が指摘されています。(文献6) 年齢に関係なく、異変を感じたら早急に受診することが重要です。 以下の記事では脳梗塞と年齢との関係性について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】脳梗塞になりやすい年齢は?女性と男性の発症確率も紹介 20代でも脳梗塞になる!確率と原因を詳しく解説【医師監修】 脳梗塞の後遺症で補助金などは受けられますか? 脳梗塞により後遺症が残った場合、公的な支援を受けられる場合があります。身体障害者手帳の交付や、障害年金、介護保険サービスの利用などが該当します。 以下に、利用可能な支援制度の一覧を記載しています。 支援制度の種類 詳細 障害年金 麻痺や言語障害などの後遺症がある場合に受給対象。障害基礎年金・障害厚生年金の支給 障害手当金 障害年金に該当しない軽度の障害にも一時金(約100万円前後)の受給可能性 高額療養費制度 医療費自己負担が一定額超過時の払い戻しによる経済的負担の軽減 傷病手当金 働けなくなった会社員等への健康保険からの収入補填。給与約2/3相当の給付 介護保険・自治体手当 要介護認定で訪問介護やリハビリサービスの利用可。自治体による追加支援金の活用 身体障害者手帳 麻痺や言語障害など後遺症がある場合の取得可。医療費助成・税金軽減・公共交通割引などの支援適用 申請には医師による診断書などの必要書類が求められるため、まずは主治医や自治体の窓口にご相談ください。 参考文献 (文献1) ヒト被験者における脳血流の実験的停止|PMC (文献2) 『発症 3 時間超 4.5 時間以内の虚血性脳血管障害患者に対する rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の適正な施行に関する緊急声明』 (文献3) 慈恵ICU勉強会2015年3月31日石垣 昌志|脳梗塞䛾血管内治療 (文献4) A critical time window for recovery extends beyond one-year post-stroke|JNP (文献5) Stroke in young adults: Current trends, opportunities for prevention and pathways forward|ScienceDirect (文献6) Why so many people are having strokes in their 20s, 30s and 40s: ‘We’ve never had patients so young’|NEWYORKPOST
2025.08.31 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 頭部
脳梗塞の後遺症で性格が変わることは、よく知られている症状の一つです。(文献1) 脳梗塞を発症をする前は穏やかで几帳面な性格だった方が、後遺症で怒りっぽくなったり、だらしなくなったりするケースが散見されます。 脳梗塞の後遺症のわかりやすい症例は麻痺です。一方、外見からは分からない症状もあります。これが高次脳機能障害です。 高次脳機能障害を発症すると性格が変わるだけでなく、記憶に問題が生じたり言語を適切に発せなくなったりとさまざまな症状があらわれます。 本記事では脳梗塞の後遺症が原因で起こる性格の変化や治療法について解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳梗塞の後遺症や再発予防に関する再生医療について、詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脳梗塞の後遺症によって変化する性格の主な具体例 脳梗塞の後遺症によって変化する性格の主な具体例は以下のとおりです。 易怒性・攻撃性 意欲低下・無関心(アパシー) 感情の不安定さ(感情失禁) 衝動性・自制の欠如 固執性・融通のなさ それぞれについて解説します。 脳梗塞の症状や原因など、包括的な解説は「脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説」をご覧ください。 易怒性・攻撃性 脳梗塞の後遺症として多く見られる性格変化の一つが易怒性(いどせい:怒りっぽくなること)・攻撃性です。 脳梗塞により感情のコントロールを司る脳の前頭前野が損傷されると、感情の抑制が困難となり易怒性・攻撃性が見られる傾向にあります。(文献2) 発症前には気にならなかった些細な出来事が原因でイライラしたり、怒声を発したりするのが特徴です。 脳梗塞を発症した事実を知らない周囲の人からは「単に怒りっぽい人」と認識されて敬遠されるなど、社会生活が困難になるケースもあります。 易怒性・攻撃性がどのような場面で見られるのか原因を特定し、家族やパートナーなどの協力を得て対処する必要があります。 意欲低下・無関心(アパシー) 意欲低下や無関心(アパシー)も、脳梗塞の後遺症として多く見られる性格の変化の一つです。 脳梗塞が原因で脳の前頭葉や大脳辺縁系の機能が低下すると、脳内の神経伝達物質の働きが妨げられます。その結果、意欲の低下や無関心状態を引き起こすと考えられています。(文献3) 脳梗塞後に高次脳機能障害と診断された方のおよそ71%に、意欲発動性の低下・アパシーが見られるとの報告も見られます。(文献4) 意欲が低下して何事にも関心を持てなくなると、脳梗塞後のリハビリテーションにも非協力的になり、麻痺やADL(日常生活動作:食事、入浴、着替えなど基本的な生活行為)からの回復が遅延しがちです。 感情の不安定さ(感情失禁) 脳梗塞の後遺症として多く見られる性格の変化としては、感情の不安定さ(感情失禁)も挙げられます。 感情失禁は、感情の表出が適切にコントロールできない状態です。過剰に泣いたり突然笑いだしたりするケースも少なくありません。(文献5) 脳の前頭葉のなかでも眼窩面の障害により感情失禁を来すと、児戯性や多幸感により些細なことで泣いたり、面白くもないことで笑いだしたりします。 感情失禁は他者とのコミュニケーションを困難にさせるだけでなく、食事中の誤嚥や吹きこぼしのリスクも高めるため早期の対処が求められます。(文献6) 衝動性・自制の欠如 脳梗塞の後遺症として多く見られる性格の変化としては、衝動性および自制の欠如もよく知られています。 衝動性・自制の欠如も感情のコントロールが困難になる高次脳機能障害の一種で、とくに前頭葉の障害により発症しやすい傾向にあります。 もともと穏やかだった方が急に怒りっぽくなるなどの変化が見られる場合、脳梗塞の後遺症の高次脳機能障害を疑う必要があるでしょう。 衝動性や自制の欠如も他者とのコミュニケーションを阻害する原因の一つで、社会生活を営む上で重大な障壁となりかねません。 本人は自分の性格が変わったことに気付いていないケースが多いため、専門家のアドバイスを得て柔軟に対処する必要があります。 固執性・融通のなさ 固執性や融通のなさも、脳梗塞後の後遺症として多く見られる性格変化の一つです。 脳梗塞の後遺症により固執性や融通のなさを発症すると、一つのことにこだわって他に目が向かず、いつまでたっても同じことを繰り返すのが特徴です。(文献7) 行動だけでなく考え方に関しても固執が見られるようになり、多様な選択肢から適切な解を導き出せなくなります。 環境や状況の変化に対して柔軟に対処できないため、初対面の方とのコミュニケーションもうまく取れません。 固執性や融通のなさを改善していくためにはリハビリテーションはもちろん、安定した環境を整えることも重要です。 脳梗塞の後遺症における性格変化は損傷部位によって異なる 脳梗塞の後遺症によりあらわれる性格の変化や運動機能の低下、言語障害などを総称して高次脳機能障害と呼びます。 どのような変化があらわれるかは脳の損傷部位により異なります。 高次脳機能障害に伴う症状、および脳の損傷部位は以下のとおりです。(文献8) 損傷部位 主な機能 具体的な症状 前頭葉 計画立案・行動・注意力など 注意障害・失行・遂行機能障害・社会的行動障害など 頭頂葉 空間認知・触覚など 半側空間無視・失認など 側頭葉 言語理解・聴覚・記憶など 失語症・記憶障害など 後頭葉 視覚 視野狭窄・視覚失認など 右脳と左脳のどちらに障害を起こしたかによって、あらわれる症状も異なります。 たとえば左脳に障害を起こすと失語症などの言語障害が見られ、右脳の障害を起こすと半側空間無視などの空間認知障害が見られます。 脳梗塞の後遺症に伴う高次脳機能障害において、性格の変化をもたらすのは主に前頭葉の障害です。 前頭葉のなかでも、内側の穹窿面(きゅうりゅうめん)を損傷すると無関心や無感情が見られやすく、下側の眼窩面(がんかめん)を損傷すると感情の不安定さが生じやすくなります。 脳梗塞の後遺症で家族の性格が変わったらどうすべき? 脳梗塞の後遺症で家族の性格が変わった場合、まずは原因を突き止める必要があります。 性格の変化は主に以下2つの原因によりもたらされることを理解しておいてください。 前頭葉の損傷により感情がコントロールできなくなって起こる 注意障害や遂行機能障害に伴い二次的に起こる 感情がコントロールできない方に対しては、本人の意思を尊重し感情の変化が起こりにくい環境を整える必要があります。 注意障害や遂行機能障害が見られる場合は、気が散る原因を取り除いたり、根気強くリハビリテーションに取り組んだりするのが大切なポイントです。 感情がコントロールできない社会的行動障害は、本人も無自覚なケースがほとんどのため、家族やパートナーの方は感情に任せず冷静に対処する必要があります。(文献9) 脳梗塞の後遺症に対する治療法 脳梗塞の後遺症に対する主な治療法は以下のとおりです。 高次脳機能障害に対するリハビリテーション 薬物療法 再生医療 それぞれ解説します。 高次脳機能障害に対するリハビリテーション 脳梗塞の後遺症として多く見られる高次脳機能障害に対しては、以下のリハビリテーションやカウンセリングが行われます。 認知リハビリテーション 認知行動療法(CBT) 行動変容療法 社会技能訓練 心理カウンセリング 認知リハビリテーションは、脳梗塞に伴う高次脳機能障害を改善する目的で行われます。 記憶力や判断力、注意力などの認知機能を向上させる目的で行われ、ADL(日常生活動作)の向上を目指すのが特徴です。 認知行動療法(CBT)は考え方や行動パターンを変化させる心理療法の一種で、感情のコントロールに役立ちます。 行動変容療法も心理療法の一種で、問題行動の原因となる行動を抑制し、より適切な行動を習得するのが目的です。 社会技能訓練ではコミュニケーション能力を高め、自信をもって生活を送るためのサポートを行います。 心理カウンセリングは高次脳機能障害患者を支援するだけでなく、家族へのサポートも行う点が特徴です。 症状の回復度合いを大きく左右するため、高次脳機能障害に対するリハビリテーションは発症から6カ月以内に開始することが推奨されます。 薬物療法 脳梗塞の後遺症を治療する際に行われる治療の一つが薬物療法です。 高次脳機能障害に伴う感情のコントロールや、うつ病・不安症などの精神症状を軽減し、日常生活の質を向上させる目的で行われます。 用いられる主な医薬品および期待できる効果は以下のとおりです。(文献10) 主な医薬品 期待できる効果 メチルフェニデート・アマンタジン 注意障害・意欲低下を改善する リスぺリドン・ハロペリドール 不安や興奮を抑制する ミルナシプラン・トラゾドン 意欲を向上させる ブロマゼパム・ロラゼパム 不安や緊張、抑うつ状態を緩和する ゾピクロン・ニトラゼパム 睡眠障害を改善する カルバマゼピン・バルプロ酸 易怒性・攻撃性を緩和する 高次脳機能障害に伴う症状を抑制する医薬品だけでなく、脳の神経伝達物質のバランスを整えるために抗うつ薬や抗精神病薬なども用いられます。 再生医療 脳梗塞の後遺症に対する治療法の一つが再生医療です。 再生医療では患者自身の脂肪細胞から抽出した幹細胞を分離して培養し、増殖させたうえで点滴を用いて静脈内に注入します。 患者自身の細胞を用いた治療法のため拒絶反応が起こりにくく、副作用のリスクも低い点が特徴の一つです。 日帰りでも治療が受けられるため、手術を避けたい方にとって適した選択肢となっています。 脳梗塞の後遺症や予防についてお悩みの方は、再生医療に関する以下の記事もご覧ください。 脳梗塞の後遺症による性格変化が気になる方は当院へご相談ください 脳梗塞の後遺症によるご家族やパートナーの性格の変化が気になる方は、当院「リペアセルクリニック」までお気軽にご相談ください。 脳梗塞の発症に伴い前頭葉が損傷されると易怒性や攻撃性、意欲の低下、感情の不安定など社会的行動障害を起こしがちです。 社会的行動障害はご家族やパートナーの方に大きな負担となる上、患者本人が社会生活に復帰する際に障害となります。 脳梗塞の後遺症に対する治療法の一つが再生医療です。再生医療では患者の脂肪細胞から採取した幹細胞を培養・増殖させ、点滴を用いて損傷部位に注入します。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療に関してLINEでの簡易オンライン診断を実施しています。再生医療に興味がある方は、ぜひ一度お試しください。 脳梗塞の後遺症に関してよくある質問 脳梗塞になると顔つきは変わる? 脳梗塞を発症すると顔つきが変わることがあります。 たとえば写真を撮る際に笑顔を作ると片方の口角や頬しか上がらず、顔つきが左右でゆがんで見えるケースがあります。 笑顔を作った際に顔つきが左右で違って見えるのは、脳梗塞を発症する前兆の可能性もあるため注意が必要です。 脳梗塞の後遺症で片麻痺を発症すると、左右いずれかの表情筋がはたらかず、表情を作った際に顔がゆがんで見えやすくなります。 また、脳梗塞の後遺症で意欲低下や無関心(アパシー)状態に陥ると、表情の変化に乏しくなるケースがあります。 脳梗塞後の麻痺が左右どちらかで症状は変わる? 脳梗塞後の麻痺が左右いずれにあらわれるかによって、症状にも変化が見られます。 脳梗塞に伴う麻痺は、損傷した脳と反対側にあらわれます。たとえば脳梗塞に伴い左脳を損傷すれば、麻痺は右半身にあらわれやすいです。 右脳には運動だけでなく空間認知や感情を司る機能があるため、右脳を損傷すると運動機能障害や社会的行動障害(感情のコントロールが難しくなるなど)が見られます。 左脳には言語や論理的思考を司る機能があるため、左脳を損傷すると言語障害や思考能力の低下が起こります。 脳梗塞の後遺症はもやもや病とどう違う? 脳梗塞の後遺症ともやもや病はいずれも脳の血管障害が原因で起こりますが、主に以下の違いがあります。 疾患 原因 症状 治療法 もやもや病 脳血管の狭窄 虚血症状 バイパス手術など 脳梗塞 脳血管の閉塞 言語障害・麻痺など 血管拡張術・薬物療法など もやもや病はなんらかの原因により脳の血管が狭くなって(狭窄)血流不足を起こし、細い血管が煙のようなもやもやした見た目に発達する病気です。(文献11) 発症原因や症状、治療法は脳梗塞と異なりますが、脳梗塞の前兆のケースもあるため、頻繁に症状が見られる場合は速やかに医療機関を受診してください。 (文献1) 作業療法士Q&A|一般社団法人日本作業療法士協会 (文献2) 感情はどこから?実は生存をかけて脳が下した判断|日本経済新聞 (文献3) 脳卒中後遺症としての意欲低下について|社会福祉法人さわらび会 (文献4) 社会的行動障害への対応と支援|国立障害者リハビリテーションセンター (文献5) 脳卒中で笑い止まらぬ感情失禁の原因と対処法|ニューロテックメディカル (文献6) 不安な表情の多い高齢者への介護福祉士の関わり|高田短期大学 (文献7) よくある質問|国立障害者リハビリテーションセンター (文献8) 高次脳機能障害のリハビリテーション|慶應義塾大学病院 (文献9) 社会的行動障害とは?行動や感情への影響とリハビリ方法|御所南リハビリテーションクリニック (文献10) 高次脳機能障害とは|沖縄県医師会 (文献11) もやもや病|国立循環器病研究センター
2025.07.31 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 頭部
「メチコバールを服用しているのに、効果を感じない」 「効かないと感じたときの対処法を知りたい」 メチコバールを服用し始めたものの、効果を実感できずに不安を感じている方は少なくありません。とくに末梢神経の異常やしびれに悩んでいる方にとって、回復の兆しが見えない日々はつらいものです。 メチコバールは即効性のある薬ではなく、効果が現れるまでには一定の期間が必要です。本記事では、メチコバールの作用機序や効果が出るまでの期間、効かないと感じたときの対処法を現役医師が詳しく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 メチコバールの効果が出るまでの期間 期間 効果の感じ方 注意点 1〜2週間 効果を強く実感できないケースが多い 継続して様子を見る 2〜4週間 徐々に変化を感じ始める方が多い 効果が少し現れ始める場合も 2〜3カ月 慢性症状の場合は改善までこの期間 継続的な服用が重要 4週間以上続けて変化がない場合 医師に相談 服用を自己判断で中断しない メチコバールは末梢神経障害や脳梗塞後遺症のしびれ、坐骨神経痛などでよく処方されるビタミンB12製剤です。傷ついた神経の修復を助ける作用により、症状の改善が期待できますが、服用後すぐに効果を実感できるとは限りません。 多くの場合、数週間から1カ月程度で徐々に変化を感じ始めることが一般的です。ただし、神経の回復は時間を要し、重症例や慢性症状では2〜3カ月かかるケースもあります。 焦らず継続することが重要です。1〜2週間の服用では効果を実感しづらいこともありますが、自己判断で中止せず、経過を観察することが推奨されます。 以下の記事では、メコバラミン(メチコバール)について詳しく解説しています。 メチコバールが効かないと感じる原因 効かないと感じる原因 詳細 効果が現れるまでに時間がかかる薬であるため 神経修復に数週間〜数カ月かかる特徴 症状や病気の性質により効果が出にくいケースもある 損傷範囲の広さや慢性化、基礎疾患による個人差 併用薬や持病などが効果に影響することも 他の薬剤との相互作用や消化・吸収機能の低下 メチコバールは神経の修復を助ける薬ですが、効果が現れるまでに数週間から数カ月かかることがあります。そのため、すぐに効かないと感じる方も少なくありません。 また、神経の損傷範囲が広い場合や症状が慢性化している場合には、効果が出にくい傾向があります。さらに、糖尿病などの基礎疾患があると、改善が遅れることもあります。くわえて、他の薬との併用や消化・吸収機能の低下によっても、メチコバールの効果が弱まることがあります。 効果が現れるまでに時間がかかる薬であるため メチコバールは、神経の修復を助けるビタミンB12製剤で、効果が現れるまでにある程度時間がかかります。神経の再生は細胞レベルでゆっくり進むため、メチコバールには即効性が期待できません。 また、体内で作用するまでに一定期間を要することも覚えておく必要があります。たとえば、成人が1,500μgを服用した場合、血中濃度のピークは約3時間後に現れ、12週間の継続服用でビタミンB12の濃度が約2〜2.8倍に上昇するとされています。(文献1) さらに、臨床試験でも、1日1,500μgを12週間継続して服用した結果、4週後に血中濃度が約2倍、12週後には約2.8倍に達し、服用中止後も効果が持続したとする報告もあります。また、帯状疱疹後神経痛の研究でも、4週間ほどで違和感やしびれの軽減がみられた例があります。(文献2) したがって、効果が現れなくても、焦らず数週間〜数カ月は続けることが改善への近道です。 症状や病気の性質により効果が出にくいケースもある 症状や病気の性質によって効果が出にくいケース 詳細 関節や筋肉の不調が原因の場合 筋肉や関節の炎症・こわばりによる神経圧迫 中枢神経(脳・脊髄)の障害が原因の場合 脳梗塞や脊髄疾患などによる感覚異常 血流障害や代謝異常による症状の場合 糖尿病・血管障害・ホルモン異常による神経障害 神経の傷が重度の場合 強い損傷・慢性的な神経のダメージ 神経の障害期間が長期に及ぶ場合 長期間にわたり改善しづらくなった神経細胞 メチコバールは末梢神経の修復を助けてしびれや感覚異常を改善する薬剤ですが、すべての神経症状に効果が出るわけではありません。 たとえば、しびれの原因が関節や筋肉の不調、脳や脊髄の障害、血流や代謝の異常など神経以外にある場合は、薬の作用が直接的に効きづらいことがあります。また、神経の損傷が重度であったり、長期間にわたって慢性的なダメージを受けていた場合は、回復が難しく、効果を感じにくくなることがあります。 こうした場合、メチコバールだけで十分な改善が得られないこともあるため、症状が続く場合は自己判断せず、他の原因が隠れていないか医師に相談することが大切です。 併用薬や持病などが効果に影響することも 影響する要因 詳細 一部の併用薬・サプリメント 葉酸やビタミンCの高用量、抗がん剤・抗てんかん薬の一部によるビタミンB12吸収や代謝の低下 ビタミンB12製剤・サプリメント重複 成分摂取過剰による身体への負担 肝臓や腎臓の機能低下 吸収・代謝・排泄の遅延による薬効の低下 その他の持病 体質や疾患による薬の作用変化 メチコバールは多くの薬剤と併用可能ですが、一部の薬剤やサプリメントとの組み合わせでは効果に影響するケースがあります。 高用量の葉酸やビタミンC、抗がん剤や一部の抗てんかん薬は、ビタミンB12の吸収や代謝を妨げる可能性があります。また、市販のビタミンB12製剤やサプリメントと重複して摂取すると、成分が過剰になることがあるため注意が必要です。 さらに、肝臓や腎臓などの持病がある場合、薬の吸収・代謝・排泄に影響が出ることがあり、十分な効果が得られにくくなることもあります。薬の効きが悪いと感じた場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。 メチコバールが効かないと感じたときの対処法 対処法 詳細 服用方法や期間を見直し継続して様子を見る 用法・用量の再確認と1〜2カ月の継続的な服用 医師に相談し症状や経過を具体的に伝える 詳細な症状・経過・服用状況の報告 他の疾患や要因の可能性を評価してもらう 神経障害以外の疾患や合併症の再評価 メチコバールの効果を実感できない場合は、まず服用方法に誤りがないかを確認し、用量や服用期間が適切かを見直すことが重要です。 神経の修復には時間を要するため、自己判断で中止せず、通常は1〜2カ月程度継続して経過を観察することが推奨されます。それでも効果が不十分な場合は、医師に症状や経過を詳しく伝え、薬の見直しや必要な検査について相談しましょう。 また、しびれや感覚異常の原因が他の疾患や合併症に起因している可能性もあるため、総合的な再評価を受け、より適切な治療方針を検討することが推奨されます。 服用方法や期間を見直し継続して様子を見る メチコバールは、傷ついた神経を修復する作用を持つ薬であり、神経のミエリン鞘(神経を覆う膜)や軸索(神経細胞から伸びる突起)の再生を助ける働きがあります。しかしその効果はゆっくりと現れるため、服用初期に目立った変化を感じにくいこともあります。とくに、神経修復には時間がかかるため、効かないと感じても自己判断で中止せず、正しい方法で継続することが大切です。 臨床試験によると、糖尿病性末梢神経障害の患者に対し、メチコバールを1日1500μg、24週間継続投与した研究では、しびれや振動覚、神経伝導速度の有意な改善が確認されています。(文献3) このように、初期に効果が出なくても、継続がその後の改善につながることが報告されています。中断すると蓄積された効果がリセットされる可能性もあるため、医師の指示のもと、根気よく服用を続けることが治療を進める上で重要です。 医師に相談し症状や経過を具体的に伝える メチコバールの効果を感じにくいときは、医師に症状や経過を具体的に伝えることが非常に重要です。しびれがいつから始まったのか、どのように変化しているか、薬剤の服用量や回数、併用薬や持病の有無などを詳しく伝えることで、原因の特定や治療方針の見直しに役立ちます。 とくに、吸収障害や他の医薬品の影響が疑われる場合は、正確な情報が必要です。また、飲み忘れや服用中断の有無を確認することで、不適切な薬剤変更を避けられます。 さらに、貧血や糖尿病、腎機能低下、甲状腺疾患など他の病気が原因の可能性もあるため、検査のきっかけにもなります。医師としっかり話し合うことで信頼関係が深まり、注射への切り替えや用量調整など柔軟な対応も受けやすくなります。 他の疾患や要因の可能性を評価してもらう 対処法の目的 詳細 B12不足の根本原因の確認 悪性貧血、胃切除後、吸収障害、腸疾患などの除外 隠れた慢性疾患の発見 糖尿病、甲状腺異常、自己免疫疾患による神経症状の見極め 他の疾患による神経障害の可能性 腫瘍、神経の圧迫、炎症性疾患などの鑑別 不要な治療の回避と的確な処方判断 原因不明のまま服用を続けるリスクの軽減 メチコバールを服用しても効果が感じられない場合は、神経障害の原因が他にある可能性を考慮することが大切です。ビタミンB12不足の背景には、悪性貧血や胃の手術後の吸収障害、腸疾患などが関係することがあり、薬剤が効かない原因として、体内で十分に吸収されていない可能性があります。 また、糖尿病や甲状腺疾患、自己免疫性疾患など、別の慢性疾患が神経症状の原因のケースもあり、その際は根本的な治療が必要です。さらに、腫瘍や神経圧迫など他の病態が隠れていることもあるため、血液検査や画像検査を通じた評価が重要です。 的確な診断により無駄な服用を避け、より効果的な治療に進むことができます。不安を感じたときは、医師に相談して、必要な検査や再評価を受けましょう。 メチコバールの効果が出るまでの期間を理解して適切な治療を受けよう メチコバールは即効性のある薬ではなく、継続的に神経の再生を促すことで症状の改善を目指す薬です。服用開始から効果を実感するまでの期間は、症状や重症度によって異なります。焦らずに服用を継続し、変化がない場合には医師と相談しながら治療を進めることが重要です。 メチコバールを服用しても効果が感じられない等のお悩みは、当院「リペアセルクリニック」までご相談ください。メチコバールの服用で十分な効果が得られなかった神経症状に対しても、幹細胞などを用いた再生医療によって、損傷した神経の再生や修復を促し、根本的な改善が期待できる可能性があります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 メチコバールの効果に関するよくある質問 メチコバールの飲み合わせに禁忌はありますか? メチコバールに明確な併用禁忌薬はありません。併用注意とされる薬も報告されていませんが、他の薬やサプリを使用中の方、アレルギー歴のある方は医師・薬剤師に相談が必要です。 葉酸製剤や高用量ビタミンC、一部の抗がん剤・抗てんかん薬はB12の作用に影響する可能性があります。 メチコバールの長期投与は危険でしょうか? メチコバールは副作用が少ない薬剤ですが、効果が実感できないまま長期間服用するのは避けましょう。1カ月続けても効果がなければ医師への相談が必要です。ごく稀に消化器症状や発疹、肝機能異常が出ることもあるため、長期使用時は定期的な検査が重要です。 食事やサプリメントでビタミンB12を摂れば薬は不要ですか? ビタミンB12は通常、肉や魚、卵、乳製品などの食品から十分に摂取できますが、胃の手術後や高齢の方、吸収障害がある方は注意が必要です。 症状がある場合、サプリメントではなく、治療薬であるメチコバールなどが必要になることもあります。自己判断せず、医師に相談しましょう。 子どもや妊娠中でも使えますか? メチコバール(ビタミンB12製剤)は、小児や妊娠・授乳中の方にも医師の判断で処方されることがあります。神経の不調や貧血などに使われ、有効性も比較的高いとされています。(文献3) ただし、自己判断での使用や中止は避け、医師の指示に従う必要があります。ビタミンB12不足が気になる場合は、健診時に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 日本薬局方 メコバラミン錠|キョーリンメディオ株式会社 (文献2) 医療用医薬品 : メチコバール|エーザイ株式会社 (文献3) 「妊娠・授乳と薬」|愛知県薬剤師会「妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班」
2025.07.31 -
- 脳梗塞
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「最近、首がドクドク脈打つような気がする」「家事をしているときふと首が重だるい」 このような首の違和感に、不安を抱えていませんか。とはいえ、症状が軽いと「病院に行くほどではないかも」と受診をためらう方も中にはいるでしょう。 実は、首の血管(頸動脈)に動脈硬化が生じていても、多くは自覚症状がないまま進行します。 とくに、めまいや片側のしびれといった症状があらわれている場合、脳梗塞や動脈硬化などのリスクが高まっている可能性もあり、注意が必要です。 早期に医療機関を受診し、検査を受けることで、動脈硬化の進行を防げる可能性が高まります。 本記事では首の動脈硬化によって起こる症状やチェック方法について詳しく解説します。首の違和感に不安を抱える方は、ぜひご自身の健康チェックにお役立てください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 首の動脈硬化について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 首の動脈硬化の疑いがある症状 首の動脈硬化は、初期には自覚症状が出にくく、多くの場合ゆっくりと進行します。気がつかないうちに重症化しているケースも少なくありません。 そのため、年齢や不規則な生活リズム、脂質の多い食事など生活習慣にリスクがある方は、症状がなくても一度検査を受けておくと良いでしょう。 ここでは、頸動脈の動脈硬化によって起こりやすい代表的な症状を紹介します。 片側の手足にしびれや脱力感が出る 言葉が出づらくなる ふらつきやめまいが頻繁に起こる 少しでも気になる症状がある方は、ご自身が当てはまっていないかを本章でチェックしてみてください。 片側の手足にしびれや脱力感が出る 首の血管が動脈硬化によって狭くなると、脳に十分な血流が届かなくなり、片側の手足にしびれや脱力感があらわれることがあります。これらの症状は、脳梗塞の前触れ症状として見られる代表的な症状です。 脳神経は体の左右を交差してコントロールしているため、異常がある脳の部位とは反対側の手足に症状が出やすくなります。 また、一時的にしびれや脱力感が消えた場合でも、脳梗塞の前触れと言われている「一過性脳虚血発作(TIA)」の可能性があるため注意が必要です。放置すると本格的な脳梗塞に進行するリスクがあるため、症状が一度おさまっても、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。 言葉が出づらくなる 首の血管が動脈硬化によって狭くなると、脳への血流が一時的に低下し「ろれつが回らない」「言葉がうまく出てこない」といった症状があらわれることがあります。 さらに、脳の言語中枢やその周辺に十分な血液が届かなくなると、発声や会話に異常が生じやすくなります。(文献1) たとえば、次のような兆候が見られる場合は注意が必要です。 会話中に突然「言葉が詰まる」「人に言葉をうまく伝えられなくなる」 「ありがとう」といったような、簡単な言葉が急に出てこなくなる 電話中、突然言葉が出なくなる こうした症状は一時的におさまることもありますが、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性もあるため、注意が必要です。少しでも異変を感じたら単なる疲労と軽視せず、早めに専門医を受診しましょう。 ふらつきやめまいが頻繁に起こる 頻繁にふらつきやめまいが起こる場合、首の動脈硬化による血流障害が関係している可能性があります。 とくに以下のような症状が繰り返しあらわれる場合は、注意が必要です。 立ち上がった際にふらつく 歩いている途中にクラッとする 目の前が急に暗くなる これらの症状が目立つ場合は、バランス感覚をつかさどる脳の部分に十分な酸素が届かず、平衡感覚に支障をきたしているおそれがあります。(文献2) めまいやふらつきが頻繁に続くようであれば、早めに専門の医療機関を受診して検査を受けましょう。 首の動脈硬化の症状をセルフチェックする方法 首の動脈硬化は無症状で進行するケースが多いため、セルフチェックでは早期に気が付くのは難しいのが実情です。 しかし、首の血管に違和感がある場合、首の血管が細くなっている、動脈硬化が関わる脳梗塞の初期症状であるなどの可能性もあります。次のような症状が出ていないか、自宅のような落ち着いた場所で確認してみましょう。 頸動脈がポコっと浮き出て見える 拍動が左右で異なる 顔のゆがみがあり、あからさまに左右非対称である ただし、これらの症状があるからといって、必ずしも動脈硬化が原因とは限りません。症状が長引く場合は、別の病気の可能性もあるため、早めに専門医へ相談しましょう。 首の動脈硬化症状が起こる原因 首にある「頸動脈」は、脳へ血液を送る主要な血管です。途中で枝分かれしている部分は、血液の乱流が起こりやすく、コレステロールや脂質の蓄積でできる「プラーク」が形成されやすい構造です。 プラークが血管の分岐部に蓄積すると、血流が妨げられ、動脈硬化が進行しやすくなります。(文献3) さらに放置すると、プラークが大きくなって血管を狭めたり、剥がれたプラークが血流に乗って脳の血管を詰まらせ、脳梗塞を引き起こす可能性があるため注意が必要です。こうしたリスクを防ぐためには、原因を知り、早期に検査や治療を行うことが大切です。 首の動脈硬化が起こる原因として、主に以下の3つが挙げられます。 生活習慣病 喫煙 加齢 これらの要因によって、プラークの肥大化や血管を狭めるリスクが高まります。首の動脈硬化を正しく理解し、日々の生活習慣を見直すきっかけにしてみてください。 生活習慣病 現代でも問題視されている「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」などの生活習慣病は、いずれも自覚症状が出にくく、気づかないうちに動脈硬化へと進行するリスクがあります。 これらの疾患は、血管に負担やダメージを与えるだけでなく、血中のコレステロール値を上昇させる原因にもなります。その結果、プラークができやすくなり、動脈硬化の発症リスクを高めてしまうのです。 そのため、すでに生活習慣病の診断を受けている方は、専門医のもと、原疾患を適切に治療することが大切です。 なかでも糖尿病は、放置すると腎臓病や緑内障などの合併症を引き起こすおそれがあります。初期段階では症状に気づきにくいケースも多いため、血糖値に不安がある方は早めの対策を心がけましょう。 糖尿病の初期症状や予防法について詳しく知りたい方は、以下のコラムもぜひご覧ください。 喫煙 喫煙は、動脈硬化を進行させる大きなリスク要因です。 タバコに含まれるニコチンやタールなどの有害物質は、血管の内壁を傷つけ、血管を収縮させる作用があります。これにより血流が悪化し、動脈硬化が促進されやすくなるのです。(文献4) 実際に、喫煙者は非喫煙者と比べて動脈硬化の進行が早く、脳梗塞のリスクが高いことも研究で明らかになっています。(文献5) そのため、動脈硬化の予防には禁煙が有効です。 しかしながら、意思があってもなかなか禁煙ができない方も多くいます。その場合は禁煙外来を利用し、医師のサポートを受けながら禁煙を目指すことをおすすめします。 加齢 年齢もまた、動脈硬化のリスクを高める避けられない要因です。 加齢とともに、コラーゲンやエラスチンといった血管の壁を構成する成分が変化し、弾力性が徐々に失われることで血管が固くなります。(文献6) 加齢による変化は避けられないものの、生活習慣の改善により動脈硬化のリスク予防に取り組むことは可能です。前述のような生活習慣病リスクをできるだけ抑えることで、加齢による血管の老化スピードを緩やかにできます。 今から健康的な生活を心がけ、血管の健康を保つ生活習慣を取り入れましょう。 首の動脈硬化を予防する方法 首の動脈硬化を予防するには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。なかでも、今日から意識できる具体的な対策として、次の2つが挙げられます。 運動習慣をつける 血管プラークを減らす食事を心がける 本章では、これらの習慣を無理なく取り入れるためのポイントをご紹介します。ぜひ日々の生活に取り入れてみてください。 運動習慣をつける 運動は、血圧やコレステロール値、血糖値などの動脈硬化に関わるさまざまなリスク要因に働きかける効果があります。これらを総合的に改善することで、血管への負担が軽減され、動脈硬化の進行を抑えることが期待できます。 日常生活に取り入れやすい有酸素運動としては、次のようなものがおすすめです。 ウォーキング ジョギング ラジオ体操 階段の上り下り これらを週2〜3回を目安に行うのが理想です。(文献7) また、運動する時間を設けられない場合は「1駅分歩く」「外出の際に少し遠回りする」「歩くスピードを少し上げる」など、普段の動作にひと工夫いれるだけでも効果があります。 無理のない範囲で気持ちよく続けられる方法を見つけて、運動習慣を生活の中に取り入れていきましょう。 血管プラークを減らす食事を心がける 動脈硬化は、血管内にプラーク(脂質の塊)がたまることが原因のひとつとされています。 これを防ぐためには、油分の多い食品を控え、野菜を積極的にとるなど「プラークの蓄積を抑える」食生活を意識することが大切です。 動脈硬化予防に効果的な食生活の例として、以下のような点が挙げられます。 【積極的にとりたい食事の工夫】 食事の工夫 期待される効果 主な食品例 食物繊維を多くとる コレステロールを吸着し、体外へ排出する ごぼう、わかめ、キャベツ 青魚を積極的にとる DHA・EPAが血液をサラサラにし、プラークの蓄積を抑える サバ、イワシ、サンマ 【避けたい食品・控えたい習慣】 食事の工夫 期待される効果 主な食品例 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を控える 悪玉コレステロール(LDL)の増加を防ぐ 肉の脂身、バター、マーガリン 塩分・糖分を控える 血圧上昇や血管ダメージのリスクを軽減する 加工肉、インスタント食品、菓子パン これらの食生活を意識すると、血管プラークの蓄積を抑えて動脈硬化のリスクを軽減できます。ぜひ本記事を参考に、毎日の食事を見直してみてください。 また、脳梗塞の再発予防においても、適切な食事管理が大切です。詳しくは、以下の記事で解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。 首の動脈硬化の症状を見逃さず早期に対策をしよう 首の動脈硬化は、初期には自覚症状が少ないものの、進行すると片側の手足のしびれや脱力感、言葉が出づらくなるなどの症状があらわれることがあります。これらの症状は、脳梗塞の前兆である可能性も考えられるため、決して見過ごしてはいけません。 「なんとなく首がドクドクする」「最近よくふらつく」といった軽微な変化も、放置せずセルフチェックを習慣にし、早期に受診するようにしましょう。 脳梗塞は一度発症すると再発リスクが高く、その後は予防的なケアが欠かせません。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による脳梗塞の再発予防を提供しています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて、無料相談を受付中です。気になる方はぜひ、当院までご連絡ください。 首の動脈硬化の症状に関してよくある質問 首の動脈硬化の症状が出たら何科を受診すべき? 首の動脈硬化の症状があらわれたら、以下の診療科が適しています。 循環器内科 脳神経外科 脳神経内科 現在通院している病院がある場合は、診療科に関わらず、まずはかかりつけ医に相談するのも良いでしょう。また、近隣にこれらの診療科がない場合は、総合病院を受診し、適切な診療科を紹介してもらう方法もあります。 めまい・視力低下・手足のしびれなどの神経症状がある場合は、とくに注意が必要です。症状を放置せず、できるだけ早く受診しましょう。 動脈硬化の初期症状は? 動脈硬化は首だけでなく、全身の血管に影響を及ぼす病気です。しかし、動脈硬化そのものには自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行しているケースが多くみられます。 動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞など重大な病気を引き起こすおそれがあるため注意が必要です。 脳梗塞や心筋梗塞などの前触れとして、以下のような症状があらわれることがあります。 軽いふらつき 耳鳴り 集中力の低下 ただし、これらの症状は動脈硬化に特有のものではなく、他の原因でも起こりうるため、気になる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。 また、血管の状態を調べる検査や、生活習慣病を発見する定期的な健康診断を受けておくことも大切です。自覚症状が少ないからこそ、日ごろの生活習慣を見直しながら、早期発見・早期対策に取り組みましょう。 脳梗塞の前兆についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 参考文献 文献1 言語機能の局在地図|高次脳機能研究 文献2 脳における平衡機能の統合メカニズム|理学療法学 文献3 頸部血管超音波検査ガイドライン|日本脳神経超音波学会ほか 文献4 喫煙と循環器疾患|厚生労働省 文献5 喫煙本数による脳卒中リスク|ファルマシア 文献6 3.加齢による動脈硬化の分子機序|日本老年医学会雑誌 文献7 《健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023 推奨事項一覧》|厚生労働省
2025.07.31 -
- 脳梗塞
- 頭部
「生あくびは脳梗塞の前兆?」 「生あくび以外に注意すべき症状はある?」 「病的なあくびであるかどうかの判断方法は?」 睡眠不足や疲労から生じるあくびは生理現象なので問題はありません。しかし、眠気や疲労がないにもかかわらず頻繁に現れる生あくびは、なんらかの病気が隠れている恐れがあるため注意が必要です。 本記事は、生あくびが脳梗塞の前兆であるかどうかをはじめとして以下を解説します。 生あくびとあくびの違い 病的なあくびの見分け方 脳梗塞の前兆の判断方法 脳梗塞以外であくびが現れる病気 「最近とくに眠くない疲れていないのにあくびがよく出る」という方は参考にしてください。 生あくびは脳梗塞の前兆? 脳梗塞の前兆として生あくびが現れることがあるため、注意が必要です。(文献1)生あくびは、脳梗塞によって脳への血流が減少して現れると考えられています。この血流減少が軽度で一時的な場合、一過性脳虚血発作という短時間のみ神経症状が現れる病態となります。 その後、本格的な脳梗塞を発症する恐れがあるため、生あくびなどの特定の症状が消えたからといって安心はできません。あくびと一緒に頭痛やめまい、立ちくらみ、手足のしびれなどの症状が現れている場合は注意が必要です。 生あくびとあくびの違い 生あくびとあくびの違いは以下の通りです。 生あくびとあくびの違い 生あくび 脳の病気によって起こる病的なあくび。脳梗塞や脳出血などなんらかの病気が隠れている場合がある。 あくび 生理現象のあくび。睡眠不足や疲労により脳に酸素が足りていないときに起こる場合が多い。退屈を感じているときに現れることもある。 (文献1) 病的な生あくびと病的ではないあくびの見分け方 病的な生あくびと病的ではないあくびの見分け方は以下の通りです。 生あくびの回数を確認する その他に脳梗塞の前兆が現れていないかを確認する それぞれの詳細を解説します。 生あくびの回数を確認する あくびの回数を確認すれば、病的であるかどうかの判断に役立ちます。実際に15分以内に3回以上のあくびは病的なあくびと定義した研究では、急性脳卒中で入院した161人のうち、69人(42.9%)の患者さまに病的なあくびが見られたと報告があります。(文献1) とはいえ、あくびだけでは生理現象の範囲内であるか、病的であるかの判断は難しいです。生あくびとその他の症状から、病的であるかを判断する必要があります。 その他に脳梗塞の前兆が現れていないかを確認する 脳梗塞の前兆と考えられる症状は多岐にわたります。生あくびと一緒に以下のような症状が現れている、または現れたことがある場合は要注意です。 体調を崩しているわけでもないのに頭痛や頭の重さがある 手足や口のまわりにしびれやふるえがある 目の前が真っ暗になったことがある 意識を失ったことがある めまいや立ちくらみがある フラフラと歩いてしまう ものがゆがんで見える、または二重に見える 文字を書くとゆがんでしまう 舌がもつれて話しにくい 以前よりも物忘れが多くなった (文献2) 以上のような脳梗塞の前兆は、たとえ短時間で消失したとしても、その後に本格的な脳梗塞に移行する恐れがあります。該当する症状が現れた場合は、医療機関を受診しましょう。 【関連記事】 目の奥が痛いのは脳梗塞の前兆?目の病気との見分け方や対処法を解説【医師監修】 突然の肩こりは脳梗塞の前兆?受診すべき症状や予防法を医師が解説 こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説 脳梗塞の前兆の判断に迷ったときのFAST(ファスト) 脳梗塞の前兆の判断に迷った際は、FAST(Face Arm Speech Time)によるチェック方法があります。以下のような3つの症状で簡潔に脳梗塞であるかを判断する方法です。 FAST 症状 Face(顔の麻痺) 顔の片側が下がる、歪みがある、笑顔を作れない Arm(腕の麻痺) 片腕に力が入らない、両腕を上げたまま維持できない Speech(言語の麻痺) 言葉が出てこない、呂律が回らない (文献3) 脳梗塞は治療が遅れてしまうと命に関わります。該当する場合は速やかに救急車を呼びましょう。 脳梗塞の症状や原因など、包括的な解説を見たい方は「脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説」をご覧ください。 脳梗塞以外であくびが現れる病気 脳梗塞以外であくびが現れる病気には以下のようなものがあります。 脳出血 脳腫瘍 心筋梗塞 睡眠時無呼吸症候群 片頭痛 それぞれの詳細を解説します。 脳出血 脳出血とは、脳の血管が破れて脳内で出血が起きる病気です。脳出血を発症すると生あくびが現れることがあります。(文献4)軽度の脳出血の場合は以下のような症状が現れます。 頭痛 嘔吐 めまい しびれ 軽度の脱力 放置すると重症化する恐れがあるため、医療機関を受診してください。重度になると、脳梗塞と同様に「顔の片側が下がる」「手足が麻痺する」「呂律が回らない」などの症状が現れます。自分や周囲の人にこのような症状が現れている場合は、速やかに救急車を呼びましょう。 脳腫瘍 脳腫瘍とは、脳の細胞や神経、脳を包む膜などから発生する腫瘍です。脳腫瘍でも生あくびが現れることがあります。(文献4)脳腫瘍が発生すると、脳内の圧力が上がっていき以下のような症状が現れます。 頭痛 吐き気 麻痺 しびれ ふらつき 歩行障害 脳腫瘍も早期発見が重要です。該当する症状が現れている場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 心筋梗塞 心筋梗塞とは、心臓の血管が詰まってしまう病気です。心筋梗塞でも生あくびが現れた症例があります。(文献5)心筋梗塞を発症した際は以下のような症状が現れます。 突然、胸を締め付けられるような強い痛み 胸の圧迫感 肩や腕、首などの痛み 男性は冷汗を伴うことが多く、女性は息苦しさや吐き気が現れることがあります。心筋梗塞は治療が遅れると危険な状態になります。該当する症状が現れた際は、速やかに救急車を呼びましょう。 睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に一定間隔で呼吸が止まる病気です。睡眠が浅くなってしまうため、日中にあくびが出るようになります。以下に該当する方は、睡眠時無呼吸症候群の恐れがあります。 夜間のいびきがうるさいと指摘された 夜間に大きないびきが止まったと思ったら、大きな呼吸とともに再びいびきが始まると指摘された 夜間何度も目が覚める 朝起きると頭痛や頭の重さがある 寝起きが悪い 日中の眠気が強い、または居眠りをしてしまう 睡眠時無呼吸症候群の原因で多いのは肥満です。 中には脳梗塞が原因で睡眠時無呼吸症候群を発症する場合もあります。(文献6)気になる症状がある方は医療機関を受診しましょう。 片頭痛 片頭痛とは日常生活に支障のある頭痛を繰り返す病気です。片頭痛の発作が起きる2日ほど前に、予兆としてあくびが現れることがあります。(文献7)この期間を予兆期と言います。 そのほかに予兆期に現れることがある症状は以下の通りです。 気分の変化 無気力感 注意力の欠落 落ち着きのなさ 寒気 光に対する過敏 このような頭痛とは一見関係ないような症状が、片頭痛の予兆として現れます。片頭痛は悪化すると日常生活に支障をきたします。医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。 まとめ|脳梗塞の早期発見のために生あくびが現れたら受診しよう 生あくびが現れている場合、脳になんらかの病気が隠れている恐れがあります。15分以内に3回以上のあくびがあり、その他にも、めまいや手足のしびれ、ふらつきなどの症状が現れている場合は、医療機関を受診してください。 「顔の片側にゆがみがある」「片腕や足に力が入らない」「呂律が回らない」などの症状が現れている場合は、本格的な脳梗塞が起きている恐れがあります。自分または周囲の人に該当する症状が見られる場合は、速やかに救急車を呼びましょう。 参考文献 (文献1) Aslı Aksoy Gündoğdu, et al. (2020)「Pathological Yawning in Patients with Acute Middle Cerebral Artery Infarction: Prognostic Significance and Association with the Infarct Location」『Balkan Med J』37(1), pp.24-28. https://balkanmedicaljournal.org/text.php?lang=en&id=2145(最終アクセス:2025年6月22日) (文献2) 自治医科大学附属さいたま医療センター「どんな人が検査を受けるのでしょうか?」 https://www.jichi.ac.jp/braindock/sub2.htm(最終アクセス:2025年6月22日) (文献3) 国立循環器病研究センター「脳卒中」 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/(最終アクセス:2025年6月22日) (文献4) 北一郎,有田秀穂.「脳内低酸素とあくび反応」『比較生理生化学』18(2), pp.96-101, 2001年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika1990/18/2/18_2_96/_pdf(最終アクセス:2025年6月22日) (文献5) 住吉正孝.「ゴルフ中に心筋梗塞を起こさないために」『順天堂医学』49(3), pp.321-326, 2003年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjmj/49/3/49_321/_pdf(最終アクセス:2025年6月22日) (文献6) 兵庫県医科大学病院「睡眠時無呼吸症候群」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/93(最終アクセス:2025年6月22日) (文献7) 永田栄一郎.「片頭痛の予兆期・前兆期,発作末期にみられる随伴症状とその病態」『日本頭痛学会誌』51(1), pp.131-134, 2024年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjho/51/1/51_131/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月22日)
2025.06.30 -
- 脳梗塞
- 頭部
「熱中症により脳梗塞のリスクは高まる?」 「脳梗塞と熱中症を見分ける方法は?」 暑い夏は、脱水症によって熱中症だけでなく脳梗塞のリスクまで高まります。 水分が不足すると血液の流れが悪くなり、血管が詰まりやすくなるためです。 本記事では、熱中症と脳梗塞の関係や見分け方、さらに脱水症による脳梗塞を防ぐための5つの習慣を解説します。脳梗塞と熱中症の症状の違いや判断に迷ったときのチェック方法も紹介するので、緊急時の対応に役立ててください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 熱中症や脳梗塞について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 熱中症でろれつが回らなくなるのはなぜ? 熱中症でろれつが回らなくなるのは、脳の働きが一時的に低下している可能性があるためです。 とくに脱水症が進行すると、脳に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、言葉をうまく発する機能に影響を与えます。 脱水からろれつが回らなくなる流れは以下の通りです。 暑い環境で長期間過ごす→大量に発汗する 水分・塩分が失われ、脱水症になる 血液がドロドロになり、流れが悪くなる 血管が詰まりやすくなる 脳梗塞や脳血流不足を起こし、ろれつが回らなくなる 注意すべき点は、熱中症と脳梗塞の初期症状が似ていることです。 熱中症と脳梗塞は対応方法が異なるため、早期に見分けることが非常に重要です。 そのためにも、熱中症と脳梗塞の症状の違いを正しく理解しておきましょう。 脳梗塞の症状や原因など、包括的な解説は「脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説」をご覧ください。 熱中症の進行で脳機能が低下する理由 熱中症が進行すると、体温が異常に上昇し、脳の働きに深刻な影響を与えることがあります。 人間の脳は約40℃を超える高体温に弱く、細胞や神経組織がダメージを受けやすくなります。 とくに、言語や運動を司る脳の部位が障害されると、ろれつが回らない、会話がスムーズにできないといった症状が現れます。 さらに、高体温は脳への血流を減少させ、酸素や栄養の供給が不足する原因にもなります。 これにより脳の機能が一時的、あるいは長期的に低下し、意識障害や認知機能の低下が起こる可能性があります。 重症化を防ぐためには、初期段階での適切な冷却と水分補給が重要です。 ろれつが回らない症状は重症化のサイン 熱中症でろれつが回らない状態は、すでに脳の機能に障害が生じている可能性が高く、重症化のサインといえます。 軽度の熱中症では、めまいやだるさなどの症状が中心ですが、ろれつ障害が出る段階では脳や神経にまで影響が及んでいる恐れがあります。 この症状は、脳梗塞や脳出血などの重大な疾患でも見られるため、自己判断は危険です。 とくに、ろれつが回らない症状が急に現れた場合や、手足のしびれ、顔のゆがみ、意識もうろうなどを伴う場合は、すぐに救急要請を行う必要があります。 早期対応が、命や後遺症のリスクを大きく減らすポイントです。 ろれつが回らない症状は脳梗塞かも?見分け方と注意点 熱中症によるろれつ障害は、脳梗塞でも起こる可能性があるため、症状だけで判断するのは危険です。 とくに、高齢者や生活習慣病を持つ方は、暑さ以外の要因で脳梗塞を発症するリスクが高まります。 脳梗塞と熱中症を見分けるポイントは主に2つあります。 脳梗塞と熱中症の症状の違いを理解する 迷ったときはFAST(顔・腕・言葉)で確認する この2つを押さえておくことで、緊急時に適切な判断と行動がとりやすくなります。 次の項目では、それぞれの具体的な方法を解説します。 熱中症と脳梗塞の症状の違い 脳梗塞と熱中症の症状の違いは以下の通りです。 病名 初期症状 脳梗塞 激しい頭痛がする 片方の手足や顔半分にしびれや麻痺がある ろれつが回らない 言葉が出ない 体のバランスが取れない 物が2つに見える 片方の目が見えない 熱中症 頭痛 めまい 手足の運動障害 意識障害 吐き気 嘔吐 失神 けいれん 全身の脱力 大量の発汗 見分けるポイントは症状が片側に出ているかどうかです。 熱中症では、症状が片側だけに出ることはほとんどありません。 一方、脳梗塞は麻痺やしびれ、動きにくさが体の片側のみにでることが多いです。(文献1) FASTチェック(顔のゆがみ・言葉・腕の動き)で確認 脳梗塞か熱中症かで迷ったときは、FAST(Face Arm Speech Time)で確認してください。 FASTとは、以下の3つの症状で脳梗塞であるかを判断する方法です。 FAST 症状 Face(顔の麻痺) 顔の片側が下がる 顔の片側に歪みがある 笑顔を作れない Arm(腕の麻痺) 片腕に力が入らない 両腕を上げたまま維持できない Speech(言語の麻痺) 言葉が出てこない ろれつが回らない いつも通り話せない (文献2) これら3つの症状にTime(発症時刻の確認)を加えたものがFASTです。 3つの症状のうち、1つでも該当する場合は脳梗塞の疑いがあります。 発症時刻を確認して、すぐに救急車を呼んでください。 高齢者はとくに注意が必要な理由 高齢者は、体内の水分量が若年層より少なく、喉の渇きを感じにくい傾向があります。 そのため、脱水症や熱中症に気づくのが遅れやすく、症状が急速に進行する危険があります。 さらに、血管の老化や動脈硬化などにより、脳梗塞の発症リスクも高まっています。 ろれつが回らない、顔のゆがみ、手足の動きに異常がある場合は、軽い症状でも見過ごさず、すぐに医療機関を受診することが重要です。 熱中症でろれつが回らないときの対処法 ろれつが回らない症状は、熱中症の重症化や脳梗塞の可能性を示す危険なサインです。 少しでも異常を感じたら、自己判断せずに速やかに対応する必要があります。 救急要請の目安(ろれつ・意識障害・歩行困難) 以下の症状が一つでも見られた場合は、迷わず救急車を呼んでください。 ろれつが回らず、会話が不明瞭になる 意識がもうろうとしている まっすぐ歩けない、ふらつく 迷った場合でも「少し様子を見る」のは危険です。 発症からの時間が短いほど回復の可能性が高まるため、早期対応が命を守ります。 応急処置の手順(涼しい場所・水分・体温冷却) 救急車を呼ぶまでの間に、できるだけ早く体温を下げることが大切です。 以下のような応急処置を行いましょう。 直射日光を避け、風通しの良い涼しい場所に移動させる 衣服をゆるめて熱を逃がす 首・脇の下・太ももの付け根など太い血管が通る部分を保冷剤や冷たいタオルで冷やす 意識がはっきりしていれば、経口補水液や水で水分・塩分を補給する 意識がない場合や飲み込みが難しい場合は、誤嚥の危険があるため無理に飲ませず、救急隊到着を待ちましょう。 熱中症後にろれつが回らないのは後遺症?脳への影響と回復の見通し 熱中症の回復後もろれつが回らない症状が続く場合、脳や神経に何らかのダメージが残っている可能性があります。 早期に医療機関を受診し、原因を明らかにすることが大切です。 脳障害や神経へのダメージの可能性 熱中症の重症化により脳細胞や神経が損傷すると、症状が回復した後も影響が残る場合があります。 とくに「ろれつが回らない」「言葉が出にくい」といった言語障害や、手足のしびれ・麻痺などは、脳や神経の回復が不十分なサインです。 脳は一度損傷を受けると完全に元の状態に戻るまで時間がかかるため、早期からのリハビリや定期的な神経学的検査が重要です。 また、年齢や基礎疾患によっては、後遺症が長期化することもあります。 後遺症が治らないケースと回復の目安 熱中症後のろれつ障害や言語の不自由さは、多くの場合は数日から数週間で改善しますが、脳や神経への損傷が大きい場合は長期間続くことがあります。 とくに脳梗塞や重度の脳障害を併発したケースでは、半年以上症状が残ることも珍しくありません。 回復のスピードは、損傷の範囲や年齢、リハビリの開始時期によって大きく変わります。 発症から早期に治療やリハビリを始めた場合は改善が見込めますが、改善が見られない場合でも、医師と相談しながら長期的なサポートを受けることが大切です。 熱中症の後遺症について詳しくは、以下の記事も参考になります。 また、脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 熱中症や脱水による脳梗塞・ろれつ障害を防ぐための5つの習慣 熱中症によってろれつが回らない症状や、脱水症が引き金となる脳梗塞を防ぐためには、日常生活の中での予防が重要です。 熱中症予防のために以下の5つの習慣を意識しましょう。 生活習慣病の管理で血管リスクを減らす 脱水を防ぐためにこまめな水分補給をする 夜間の熱中症対策にエアコンを賢く使う 熱中症が多発する時期を把握する アルコールの摂りすぎに注意する それぞれの詳細を解説します。 1.生活習慣病の管理で血管リスクを減らす 熱中症でろれつが回らない症状や、脱水による脳梗塞を予防するには、生活習慣病の管理が欠かせません。 生活習慣病が進行すると血管がもろくなり、詰まりやすくなるため、脳への血流が妨げられるリスクが高まります。 生活習慣病 脳梗塞のリスクが高くなる理由 高血圧 血圧が高いほど脳の血管に負担がかかり、動脈硬化が進行して血管が詰まりやすくなります。 糖尿病 血管の老化(動脈硬化)を早め、さらに血液の流れを悪化させます。 脂質異常症 血管壁に脂質が蓄積して動脈硬化が進み、血管が細くなることで詰まりやすくなります。 これらの病気は、熱中症や脱水時に脳梗塞を起こす確率をさらに高めます。 治療を受けてない方は、医療機関を受診して適切な治療と数値管理を行いましょう。 2.脱水を防ぐためにこまめな水分補給をする 熱中症によるろれつが回らない症状を防ぐには、脱水症を起こさないことが重要です。 脱水になると血液が濃くなり、脳への血流が悪化して脳梗塞のリスクが高まります。 水分を摂り過ぎると「体がバテる」「汗をかき過ぎる」といった考え方は間違いです。 体温を調整するためには、発汗で失った水分と塩分をしっかりと補給しなければなりません。(文献3) 水分補給のポイントは以下の通りです。 喉が渇く前に水分を補給する アルコール飲料で水分を補給しない 1日1.2L以上を目安に水分を摂る 起床時、入浴前後などのタイミングで水分を補給する 大量に汗をかいた際は塩分もあわせて補給する 水分補給は水やお茶が最適です。 大量に汗をかいた際は、塩分が含まれたスポーツドリンクや経口補水液などが良いでしょう。 3.夜間の熱中症対策にエアコンを賢く使う 暑い夏の夜は就寝中に大量の汗をかきます。 その結果、就寝中に脱水症を引き起こし脳梗塞のリスクを高めることがあります。 就寝中の脱水症のリスクを下げるために、寝る前にコップ1杯の水を飲むことと、室温などの就寝環境の調整が大切です。 就寝環境を整えるポイントは以下の通りです。 室温が28℃を超えないようにする エアコンの風が直接体に当たらないようにする 窓からの直射日光が寝室に入らないようにする 気温が体温より高い場合、扇風機は逆効果になることがある とくに高齢者は体の水分保有量が少なくなっています。 加えて、高血圧などにかかっていればさらに脳梗塞のリスクが高まるため注意が必要です。 節電のために夏の暑さをがまんしすぎず、エアコンを上手に活用しましょう 4.熱中症が多発する時期を把握する 脱水症を予防するためにも、熱中症が多発する時期を把握しておきましょう。 熱中症は、梅雨入り前の5月から発生し始め、梅雨明けの7月下旬から8月上旬に多発する傾向です。(文献3) また、人の体は暑さに適応して適切に発汗できるようになるまで時間がかかります。 暑い環境で運動や作業を始めてから3〜4日で、自律神経の反応が改善し体温上昇を防ぎやすくなる さらに3〜4週間経過すると、汗から余分な塩分が失われにくくなり、けいれんや塩分欠乏の予防につながる 急に暑くなると、この適応期間がないまま暑さにさらされるため、熱中症が起きやすくなってしまいます。 とくに高温多湿の時期は、いきなり長時間外で活動するのを避け、徐々に体を慣らすことを心がけましょう。 5.アルコールの摂りすぎに注意する アルコールはどのようなお酒であっても利尿作用があり、体内の水分を尿として排出してしまいます。 そのため、お酒は水分補給の代わりにはなりません。 とくに夜間の飲み過ぎは注意が必要です。 アルコールによって体内の水分が失われた状態で、暑い夜に就寝すると、就寝中に脱水症や熱中症を起こす危険が高まります。 さらに、脱水が進むことで脳梗塞のリスクも上昇します。 夜にお酒を楽しむ場合は、量を控えめにし、同時に水やお茶などでしっかりと水分補給を行いましょう。 まとめ|ろれつが回らないのは命のサインかも?早めの対処と予防が大切 脱水症は血液の流れを悪化させ、脳梗塞のリスクを高めます。 とくに高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を抱えている場合、脱水症が引き金となって脳梗塞を発症する危険がより高くなるため要注意です。 生活習慣病の治療を受けてない方は、早めに医療機関を受診して治療を始めてください。 また、脳梗塞と熱中症では適切な対応方法が異なるため、症状が似ていて迷う場合はFASTで確認しましょう。 さらに、過去に脳梗塞を経験した方は再発に注意が必要です。脳梗塞の再発予防の治療の選択肢として再生医療があります。 脳梗塞の再生医療は当院「リペアセルクリニック」でも行っているので、再発予防にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 福祉医療機構「脳梗塞、夏も要注意 脱水原因 熱中症と区別つきにくく 福井赤十字病院 西村医師解説 見分け方は『半身のみ症状』」 (文献2) 国立循環器病研究センター「脳卒中」 (文献3) 環境省「熱中症を防ぐためには」
2025.06.30 -
- 脳梗塞
- 頭部
「耳鳴りは脳梗塞の前兆として現れる?」 「耳鳴り以外に注意すべき症状は?」 耳鳴りは脳梗塞の前兆として現れることがあります。耳鳴りがよく起きる方は、その他の注意すべき前兆や症状を知っておくことが大切です。 本記事では、耳鳴りが脳梗塞の前兆であるかどうかをはじめとして、以下を解説します。 症状を感じにくい隠れ脳梗塞とは? 耳鳴り以外で注意すべき前兆 後遺症として現れる耳鳴り 脳梗塞の検査方法 脳梗塞以外で耳鳴りが現れる脳や耳の病気 注意すべき脳梗塞の前兆や症状をチェックリストにして紹介しています。耳鳴り以外にも気になる症状が現れている方は参考にしてください。 耳鳴りは脳梗塞の前兆? 耳鳴りは脳梗塞の前兆として現れることがあります。(文献1) 耳鳴りが現れるのは小脳梗塞を起こしているときです。小脳梗塞を起こすと耳鳴りの他に以下のような症状が現れることがあります。 めまいがする 難聴が起きる バランス感覚が低下する 規則的な運動ができない 呂律が回らない 小脳梗塞の特徴的な症状はめまいや四肢の運動が正常にできなくなるなどです。 症状を感じにくい隠れ脳梗塞とは? 脳梗塞には、症状を感じづらい隠れ脳梗塞があります。正式な病名は、無症候性脳梗塞(むしょうこうせいのうこうそく)です。 無症候性脳梗塞とは、脳の細かい血管が詰まることで起こる脳梗塞です。ほとんど症状を感じられず外から見ても病気と判断できない特徴があります。耳鳴りを訴えていた患者さまを検査したところ無症候性脳梗塞だった症例もあります。(文献3) 症状が感じられないからといって安心はできません。無症候性脳梗塞は、命の危険を伴う本格的な脳梗塞や脳出血に移行するリスクがあるためです。(文献2)無症候性脳梗塞を起こさないためには、高血圧や脂質異常症などにより起こる動脈硬化を予防しなければなりません。 脳梗塞の症状や原因など、包括的な解説を見たい方は「脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説」をご覧ください。 また、加齢も無症候性脳梗塞を引き起こす原因です。定期的に脳ドックなどを受けて早期発見するのが大切です。 耳鳴り以外で注意すべき脳梗塞の前兆【チェックリスト】 以下のような前兆や症状が現れている場合は脳梗塞が起きている可能性があります。 前兆や症状 脳梗塞の疑いがある前兆 風邪を引いているわけでもないのに、頭痛や頭の重さがある 手足や口元がふるえたりしびれたりする 目の前が真っ暗になり意識を失ったことがある まっすぐに歩けないまた転ぶようになった ものがゆがんで見えることがある 文字を書くとゆがむ 舌がもつれて話がしづらいときがある 以前より物忘れが多い 緊急性の高い症状 片方の手足や顔半分にしびれや麻痺が起こる ろれつが回らない、言葉がでない、他人の話が理解できない 立てない、歩けない、体のバランスがとれずフラフラする 今まで経験したことの激しい頭痛が現れる 片目が見えない、ものが2つに見える、視野が半分になる (文献1)(文献4) 脳梗塞の疑いがある前兆は、短時間で消えてしまうためそのまま放置されることが多いです。しかし、前兆が起きたあとは大きな梗塞に移行する場合が多いため放置してはいけません。緊急性の高い症状が1つでも現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 【関連記事】 目の奥が痛いのは脳梗塞の前兆?目の病気との見分け方や対処法を解説【医師監修】 突然の肩こりは脳梗塞の前兆?受診すべき症状や予防法を医師が解説 こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説 脳梗塞の後遺症として現れる耳鳴り 耳鳴りは脳梗塞の後遺症として発生する場合があります。(文献5)脳梗塞の後遺症としての耳鳴りの程度は人それぞれで、ほとんど気にならない人もいれば、生活や睡眠の妨げになると訴える人もいます。 耳鳴りのほかにも、めまいや頭痛、しびれなども後遺症として現れることが多いです。耳鳴りの治療には、脳の血管を拡張する脳循環改善薬のほか、ビタミン剤、抗不安薬などが用いられます。 脳梗塞の後遺症の改善や再発予防の選択肢として期待されているのが再生医療です。脳梗塞の再生医療に関して詳細を知りたい方は、こちらを参考にしてください。 脳梗塞の検査方法 脳梗塞の主な検査方法は以下の通りです。 検査方法 詳細 頭部CT検査 X線を用いて脳梗塞が起きていないかを調べる検査。 頭部MRI検査 磁場を用いてCT検査よりも詳細に調べられる検査。発症直後の病巣を発見できることがある。 頭部MRA検査 MRIは脳の組織や形を描写するのに対して、MRAは脳血管を画像化する検査。 血管超音波検査 超音波を用いて脳の血管が詰まっていないか、狭くなっていないかを迅速に調べられる検査。 脳梗塞以外で耳鳴りが現れる脳や耳の病気 耳鳴りが現れることがある主な脳や耳の病気は以下の通りです。 脳出血 片頭痛 突発性難聴 メニエール病 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう) それぞれの詳細を解説します。 脳出血 脳出血でも耳鳴りが起きることがあります。脳出血とは、脳の血管が破れて脳内で出血が起きることです。脳出血も脳梗塞と同様に発症した際は以下のような症状が現れます。 突然の意識障害 顔や手足の麻痺 言語障害 脳出血は高血圧の患者さまが発症しやすいです。脳出血が疑われる際も、速やかに医療機関を受診して適切な治療を行う必要があります。 片頭痛 片頭痛と耳鳴りは併存する場合があります。片頭痛とは、頭痛により日常生活に支障をきたす病気です。耳鳴りのほかにも吐き気や嘔吐などの症状が現れます。 片頭痛は前兆がないものとあるものに大別されます。前兆がない片頭痛の診断基準は以下の通りです。 前兆がない片頭痛の診断基準 A B~Dを満たす発作が5回以上ある B 頭痛発作の持続時間が4~72時間である ※治療をしていないまた治療の効果が出ていない場合 C 以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす 1.頭痛は片側である 2.「ズキズキ」と脈を打つような頭痛である 3.中等度から重度の頭痛である 4.歩行や階段昇降などの日常動作により頭痛が悪化する。もしくは頭痛が原因で日常動作を避けている D 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす 1.吐き気や嘔吐がある 2.光や音に対して過敏である E ほかに頭痛の診断を受けていない (文献6) 突発性難聴 突発性難聴とは、突然片耳が聞こえなくなる原因不明の難聴です。難聴を発症した際に耳鳴りやめまい、吐き気などを伴うことがあります。 前触れもなく突然に発症したり、朝に目が覚めた際に聞こえなくなっていたりします。突発性難聴は改善と悪化を繰り返す病気です。幅広い年代で発症しますが、50〜60歳代の方がとくに多い傾向です。 発症から1カ月ほどで難聴が固定されてしまう恐れがあります。発症して1〜2週間以内には治療を始めることが重要です。(文献7) メニエール病 メニエール病は、内耳がむくんでしまうことで起きる病気です。片側の耳に、耳鳴りやめまい、難聴、耳閉感といった症状が現れます。病気が進行すると、両側の耳に症状が現れることがあります。 メニエール病は、30〜50歳代の女性に多い傾向です。睡眠不足やストレス、過労、悪天候などが引き金になり症状が現れることが多いです。耳鳴りを伴うことがある小脳梗塞と症状が似ているため、意識障害や麻痺などが現れている場合は、メニエール病ではなく脳梗塞を疑う必要があります。 聴神経腫瘍 聴神経腫瘍とは、耳の奥にできる良性の腫瘍です。初期症状として多いのが耳鳴りや聴力低下です。突然音が聞こえなくなることがあるため、突発性難聴から発見されることもあります。 進行すると以下のような症状が現れます。 顔面の麻痺 顔面のしびれ めまい 歩行障害 飲み込みづらさ 腫瘍は基本的にゆっくりと大きくなりますが、中には増大が早いものもあります。腫瘍が大きくなると命に危険を及ぼすこともあるため早期治療が重要です。 まとめ|耳鳴りとその他の症状も現れている場合は受診しよう 耳鳴りは脳梗塞だけでなくなんらかの病気が隠れている恐れがあります。とくに手足や顔面の麻痺、言語障害、歩行障害、激しい頭痛などが現れている場合速やかに救急車を呼んでください。 耳鳴り以外にも、頭痛や手足のしびれ、ふらつきなどが現れている、または現れた経験がある場合は脳梗塞の前兆の恐れがあります。本格的な脳梗塞に移行する前に一度受診をしましょう。 また、脳梗塞の後遺症の改善や再発予防の選択肢として再生医療があります。脳梗塞の再生医療は当院「リペアセルクリニック」でも行っています。脳梗塞の再発や後遺症にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 自治医科大学附属さいたま医療センター「どんな人が検査を受けるのでしょうか?」 https://www.jichi.ac.jp/braindock/sub2.htm(最終アクセス:2025年6月21日) (文献2) 山口 修平.「無症候性脳梗塞の予後と対策」『脳卒中』26(4)pp.661- 664, 2004年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/26/4/26_4_661/_pdf(最終アクセス:2025年6月21日) (文献3) 西野裕仁ほか.「難聴・耳鳴・眩量患者の内耳道MRI所見の分析」『耳鼻臨床』92(11),pp.1191-1194, 1999年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/92/11/92_11_1191/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月21日) (文献4) 国立循環器病研究センター「脳卒中」 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/(最終アクセス:2025年6月21日) (文献5) 加我君孝ほか.「脳梗塞後遺症に伴うめまいに対する塩酸インデロキサ ジン(エレンR)の有効性」『耳鼻咽喉科展望』40(1),pp.132-136, 1997年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo1958/40/1/40_1_132/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月21日) (文献6) 日本頭痛学会「一次性頭痛」 https://www.jhsnet.net/kokusai_2019/1-1.pdf(最終アクセス:2025年6月21日) (文献7) 兵庫医科大学病院「突発性難聴」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/105(最終アクセス:2025年6月21日)
2025.06.30 -
- 頭部
- 脳梗塞
- 脳卒中
「脳梗塞の後遺症で手足が動かしづらくなった」 「筋肉がつっぱってうまく歩けない」 痙縮や麻痺があると、服の着脱や階段の上り下り、立ち上がりといった動作も困難になり、こうした症状により、日常生活の質(QOL)は大きく低下します。このような状態に対して注目されているのがボトックス注射です。 ボトックスは美容だけでなく、医療でも活用されており、痙縮の軽減を目指す選択肢のひとつです。本記事では、脳梗塞の痙縮・麻痺に対するボトックスの効果や影響について現役医師が詳しく解説します。 脳梗塞後の痙縮・麻痺に対するボトックスの効果・影響 ボトックスの効果・影響 詳細 筋緊張と痙縮による違和感の軽減 筋肉の過剰な収縮を抑え、不快なつっぱり感やこわばりの軽減 日常生活動作(ADL)の向上とリハビリテーションの促進 動作しやすい状態の維持による着替え・歩行・排泄などの日常動作の改善 拘縮の予防 関節可動域の維持と筋肉の柔軟性保持による拘縮の進行抑制 脳梗塞後にみられる痙縮は、筋肉が異常に緊張し、手足のつっぱりや動かしにくさを引き起こします。 ボトックス治療は、ボツリヌストキシンを緊張した筋肉に注射し、神経から筋肉への信号を一時的に遮断することで、過剰な収縮を抑えます。これにより筋緊張が緩和され、痙縮によるこわばりや不快感が軽減されます。 ただし、ボトックス治療は脳梗塞そのものを治すものではなく、痙縮の改善やリハビリ効果の向上を目的とした補助的な治療です。 以下の記事では、医療ボトックスについて詳しく解説しています。 筋緊張と痙縮による違和感の軽減 項目 内容 痙縮のメカニズム 脳梗塞に伴う神経障害により筋肉の過度な緊張、関節を動かしにくくなる状態 ボトックスの作用機序 神経から筋肉への伝達物質(アセチルコリン)をブロック、筋肉の過剰な収縮の抑制 筋緊張の緩和 筋肉のつっぱりやこわばりの軽減、関節の可動域拡大 違和感の軽減 動作のしやすさ向上、日常生活の動作(ADL)の改善、リハビリ効果の向上 治療のポイント 効果の持続期間(約3~4カ月)、副作用や禁忌事項の確認、リハビリとの併用の重要性 (文献1) 脳梗塞の後遺症として現れる痙縮は、筋肉が自分の意思とは関係なく突っ張り、動かしにくくなる状態です。 ボトックスは、過剰に緊張した筋肉に直接注射することで、神経から筋肉への信号を一時的に遮断し、筋肉の過度な収縮を抑える作用があります。 その結果、手足のつっぱりやこわばりが和らぎ、安静時に感じる不快感や違和感の軽減が期待されます。ボトックスの効果は一時的なため、定期的な治療が必要です。継続して行うことで、痙縮の負担を軽減し、より自然な動作や姿勢の維持につながります。 日常生活動作(ADL)の向上とリハビリテーションの促進 項目 内容 痙縮による日常生活動作(ADL)の制限 手足の動きの制限、食事・着替え・歩行・排泄などの日常生活動作の困難 ボトックスの効果 筋肉の過度な緊張の緩和、手足の動かしやすさの向上 日常生活動作(ADL)の改善 食事、更衣、排泄、入浴、移動など基本動作のしやすさ リハビリテーション効果 筋肉の柔軟性向上、関節の可動域拡大、機能回復の促進 介護負担の軽減 補助動作のしやすさ、介護者の負担軽減、生活の質の向上 治療のポイント 効果の持続期間、副作用や禁忌事項の確認、リハビリとの併用の重要性 (文献2) ボトックス治療によって筋肉の緊張が緩和されると、関節の可動域が広がり、手足が動かしやすくなります。筋緊張を抑えることでこうした動作が改善され、リハビリの効果を引き出しやすくする点でも重要です。 また、着替えや入浴、歩行といった日常生活動作(ADL)が改善され、患者自身の自立度が向上します。筋肉のつっぱりが減ることでリハビリテーションが行いやすくなり、リハビリ効果の向上も期待できます。治療とリハビリを組み合わせることが、生活機能の維持・向上に欠かせません。 拘縮の予防 項目 内容 痙縮と拘縮の関係 脳梗塞後の筋肉の過度な緊張による痙縮、長期間続くことで筋肉や関節の硬化、可動域の制限、拘縮の発生 拘縮による影響 日常生活動作(ADL)の制限、違和感の発生、生活の質の低下 ボトックスの作用機序 筋肉を動かす神経からの伝達物質(アセチルコリン)のブロック、過剰な筋収縮の抑制 筋緊張の緩和 関節の可動域拡大、動作のしやすさ向上、痙縮による違和感や不快感の軽減 拘縮の予防 筋肉の柔軟性維持、関節の可動域保持、リハビリ効果の向上 リハビリとの併用 筋肉の柔軟性維持、機能回復の促進、拘縮予防の強化 痙縮が長期間続くと、筋肉が縮こまった状態で固まり、関節が動かなくなる拘縮へ進行するケースがあります。医療ボトックスは、拘縮の進行を抑えるための手段として有効です。 筋肉の過度な収縮を抑えることで、関節や筋肉が適度に動く状態を保ちやすくなります。その結果、拘縮の発生リスクを軽減できる可能性があります。拘縮を完全に防ぐことはできませんが、進行を遅らせる手段として医療現場で広く活用されている治療法です。 【脳梗塞】ボトックス治療を受ける際の注意点 注意点 詳細 禁忌事項に該当する方は治療不可 特定の持病やアレルギー歴、妊娠・授乳中などに該当する場合の治療制限 効果の持続と再投与の必要性 効果が一時的であり、数カ月ごとの定期的な再注射の必要性 筋力低下や表情の変化 意図しない筋肉への影響による一時的な動かしづらさや見た目の変化 副作用と体調不良のリスク 注射部位の腫れ・違和感、全身倦怠感・軽度の発熱などの一時的な体調変化 医療ボトックス治療を受けるにあたっては、いくつかの注意点があります。禁忌事項に該当する方は治療を受けられず、持病や妊娠中などの条件で制限がかかる場合もあります。 また、効果は一時的で定期的な再投与が必要です。副作用として筋力低下や全身の倦怠感などが現れる可能性があります。そのため、治療を受ける際は、事前に医師の診断が不可欠です。 禁忌事項に該当する方は治療不可 該当する方 起こり得るリスク 主な副作用の内容 妊婦・授乳中の方、妊娠の可能性がある方 胎児・乳児への影響の懸念 使用に関する有効性・影響が明確になっていないためのリスク ボトックスに対してアレルギーがある方 アナフィラキシーの危険性 全身のアレルギー反応 神経筋接合部の疾患をもつ方(例:重症筋無力症など) 筋力低下の悪化 全身性筋肉麻痺、嚥下障害、呼吸困難 筋弛緩剤を内服中の方 筋肉への作用の過剰な増強 筋力低下、嚥下障害、呼吸困難 ボトックス治療は、すべての方が受けられるわけではありません。全身性の筋力低下を引き起こす疾患(重症筋無力症など)がある方や、過去にボトックスに対して強いアレルギー反応を起こした経験がある方は、原則として治療が行えません。 また、妊娠中や授乳中の方も胎児や乳児への影響を考慮し、治療の適応外とされます。治療前には、既往歴や現在の内服薬、体調を医師に漏れなく伝える必要があります。副作用のリスクを避け、適切な治療方針を立てるためにも、事前の問診と診察が非常に重要です。 効果の持続と再投与の必要性 項目 内容 効果の持続期間 注射後2~3日から効果発現、3~4カ月持続 効果減弱後の状態 時間経過とともに効果減弱、再び注射前の筋緊張や痙縮の状態に戻る 再投与の必要性 効果維持のため3~4カ月ごとの定期的な再注射 再投与間隔の注意点 投与間隔が短すぎると抗体産生による効果減弱のリスク ボトックスは一度の注射で効果が長く続く治療ではなく、一般的に効果の持続はおおよそ3〜4カ月程度とされています。効果が薄れてくると、再び痙縮の症状が強くなることがあるため、定期的な再投与が必要です。 治療のタイミングや回数は、症状の強さや部位、日常生活への影響などを考慮し、医師と相談しながら決定されます。また、繰り返しの投与により耐性が形成され、効果が減弱する可能性があります。そのため、毎回の診察で効果や副作用の有無を確認しながら、必要最小限の量で適切な頻度を保つことが大切です。効果の維持には、ボトックス単独ではなくリハビリとの併用が推奨されます。 筋力低下や表情の変化 症状 主な原因 起こり得る影響 過度な筋力低下 注射部位や注入量が適切でない場合 嚥下困難、首や肩・顎まわりの筋力低下 表情の変化 表情筋への過剰な注射、注入位置の不均衡 額や眉間のこわばり、笑顔の不自然さ、左右差の発生 ボトックスは筋肉の動きを一時的に抑えるため、目的以外の筋肉にも影響が及ぶと、思わぬ筋力低下や表情の変化が起こることがあります。腕や手の筋肉に注射した際、力が入りづらくなることがあり、日常の細かな動作に影響を及ぼすこともあります。 顔周りに使用した場合には、表情が作りづらく感じることもあるため、適切な部位選定と投与量の調整が重要です。とくに高齢の方や筋力の低下が進んでいる方では、必要以上の筋弛緩が起きないよう、慎重な治療設計が求められます。 副作用と体調不良のリスク 副作用・リスク 内容 過度な筋力低下や脱力 投与量や注射部位による筋力低下、手足の動かしにくさや全身の脱力感 嚥下障害や呼吸困難 のみ込みづらさや呼吸しにくさ、とくに神経筋疾患や大量投与時の重篤なリスク 注射部位の腫れ・赤み・皮下出血 注射部位の一時的な腫れ、赤み、皮下出血、不快感 全身症状や体調不良 倦怠感、頭痛、めまい、発熱、吐き気、食欲不振などの全身的な体調変化 アレルギー反応 発疹、かゆみ、顔やまぶたの腫れ、呼吸困難、アナフィラキシーショックなど生命に関わる重篤な症状 (文献3)(文献4) ボトックス治療には、注射部位に軽い腫れや内出血、違和感が生じることがあります。また、ごく稀に全身のだるさ、頭重感、軽い発熱などの体調不良を伴う場合があります。 これらの副作用は一時的で自然におさまることが多いものの、症状が強い場合や長引く場合には、速やかに医師へ相談してください。 とくに初回は体の反応が不明なため、当日は激しい運動や長時間の外出を避け、安静に過ごすことが望まれます。持病の有無や他の治療との兼ね合いも考慮が必要なため、体調管理と医師との連携が重要です。 【ボトックス以外】脳梗塞後の痙縮・麻痺を軽減するための治療法 治療法 詳細 注意点 保存療法 ストレッチ・温熱・運動療法による筋緊張の軽減と関節可動域の維持 即効性は乏しく、継続的な取り組みが必要 薬剤療法 筋弛緩薬や抗不安薬による神経伝達の調整と痙縮の緩和 眠気や倦怠感などの副作用に注意が必要 再生医療 幹細胞を用いた神経や筋肉の修復・再生による根本的な機能回復の可能性 対象施設に制限があり、効果や適応に個人差があるため事前確認が必要 痙縮や麻痺の治療には、症状や目的に応じてさまざまな方法があります。ストレッチなどの保存療法から薬による症状の緩和、さらには再生医療による機能回復を目指す方法まで、治療の選択肢は多岐にわたります。それぞれの特徴と注意点に対する理解が大切です。 脳梗塞の症状や原因など、包括的な解説は「脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説」をご覧ください。 また、以下の記事では脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 保存療法 保存療法の種類 目的・効果 主な方法や特徴 持続伸長(ストレッチ) 筋肉や腱の短縮・関節拘縮の予防・改善 徒手ストレッチ、装具使用、段階的ギプス固定(シリアルキャスティング) 装具療法 不良肢位の矯正、関節可動域の保持、動作能力の維持 手足の変形予防や矯正のための装具使用 FES(電気刺激療法) 麻痺筋の活性化、痙縮緩和、随意運動の再建 筋肉への電気刺激による収縮促進、日常生活動作(ADL)向上への活用 振動刺激 筋肉の緊張緩和、ストレッチ・運動訓練の補助 痙縮筋への局所的な振動刺激 姿勢修正・バランス訓練 過度な筋緊張や二次障害の予防、全身の安定性向上 正しい座位・立位姿勢の保持、体幹や四肢のバランス改善 (文献5) 保存療法とは、手術や注射を用いず、日常のケアやリハビリによって症状の軽減を目指す治療法です。脳梗塞後の痙縮や麻痺に対しては、ストレッチや運動療法、温熱療法などが組み合わされます。 ストレッチでは、固くなった筋肉を定期的に伸ばすことで、拘縮の進行を防ぎ、関節の可動域を保ちます。また、温熱療法は血流を促進し、筋肉のこわばりを和らげるのに有効です。 運動療法では、麻痺した部位に刺激を与えながら、筋肉の再学習を促すことで、生活動作の改善を目指します。保存療法は即効性こそありませんが、根気強く続けることで効果が出やすく、ボトックスなど他の治療との併用で相乗効果も期待できます。 薬剤療法 治療法 主な目的・効果 特徴・注意点 中枢性筋弛緩薬(経口薬) 脳や脊髄の神経活動の抑制による全身の筋緊張の緩和 チザニジン・バクロフェンなどを内服、副作用(脱力・眠気)に注意 バクロフェン髄注療法(ITB療法) 脊髄への直接投与による強い痙縮の緩和 少量で高い効果、副作用が少なく重度の痙縮に適応 神経ブロック療法 神経伝達の遮断による筋肉の異常収縮の抑制 フェノールやアルコールを使用、特定の部位に注射 ボツリヌス療法(ボトックス注射) 局所的な筋緊張の緩和と動作の改善 注射による効果は3~4カ月持続、繰り返しの投与が必要 (文献1) 痙縮の症状が強い場合には、内服薬による治療も選択肢です。バクロフェンやチザニジンなどの筋弛緩薬は、脳や脊髄から筋肉への過剰な信号を抑制し、筋肉のつっぱりの緩和に効果を示します。 ジアゼパムなどの抗不安薬は、筋緊張だけでなく精神的な緊張の緩和にも役立ちます。これらの薬剤は、眠気や倦怠感などの副作用が現れることがあるため、医師の管理下での使用が不可欠です。 ボトックス注射や保存療法と組み合わせることで、日常生活の負担軽減やリハビリ効果の向上が期待できます。薬物療法だけに頼らず、複数の治療法を組み合わせて総合的に症状のコントロールを目指すことが重要です。 再生医療 脳梗塞後の痙縮や麻痺に対する再生医療は、従来の治療では改善が難しかった後遺症に対して、新たな選択肢となる治療法です。 患者自身の骨髄や脂肪から採取した幹細胞を体内に戻すことで、損傷した神経や血管の修復・再生が促され、麻痺や痙縮の改善が期待されます。さらに、幹細胞治療とリハビリとの併用で、より高い回復効果が期待できます。ただし、治療の効果や適応には個人差があるため、医師との相談が重要です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 ボトックスでは改善しにくい脳梗塞後の痙縮・麻痺に再生医療というアプローチ ボトックスは痙縮の一時的な緩和に有効ではあるものの、すべての症状に効果はありません。筋肉のこわばりだけでなく、脳や神経の損傷が原因となっている場合には、根本的な改善が難しいこともあります。ただし、ボトックス治療に加えて適切なリハビリや他の治療を継続することで、脳梗塞による後遺症を軽減できる可能性があります。 ボトックス治療を含む脳梗塞後の後遺症についてのお悩みは、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、脳梗塞後の後遺症に対するアプローチとして、再生医療をご提案することも可能です。 再生医療は、患者自身の幹細胞を使って損傷した神経や組織の再生を促す治療法です。神経機能の回復や関節の可動域改善が期待でき、原因に直接働きかける新たな治療の選択肢として注目されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 脳梗塞によるボトックス治療に関するよくある質問 脳梗塞によるボトックス治療はどの診療科で受けられますか? 脳梗塞によるボトックス治療は、以下の診療科で実施しています。 診療科名 主な特徴と役割 脳神経内科 脳卒中後の痙縮や麻痺に対する薬物療法の専門、ボトックス治療の実施 脳神経外科 脳卒中などの神経障害後の症状に対する治療、ボトックス治療の実施 リハビリテーション科 ボトックス治療と併用したリハビリによる機能回復の支援 受診前には、医療機関のホームページや電話で診療情報を事前に確認しておきましょう。 ボトックス治療後に日常生活にすぐ戻れますか? 脳梗塞後の痙縮や麻痺に対するボトックス治療後は、基本的に当日から日常生活に戻れます。ただし、治療効果を安定させ、副作用を防ぐためにいくつかの注意が必要です。 治療当日は激しい運動を避け、飲酒も控えましょう。アルコールは薬剤の拡散を促す可能性があるため、24〜72時間の間は控えることが推奨されます。また、サウナや長時間の入浴など高温環境は避け、注射部位を揉んだり擦ったりしないようにしましょう。 日常生活の中で少しでも異変を感じた場合は、速やかに医師に相談してください。 ボトックス治療を受けるとリハビリは不要ですか? ボトックスは痙縮を緩和する治療であり、リハビリの代わりになるものではありません。むしろ、ボトックスによって筋肉の過緊張が和らぐことで、リハビリが行いやすくなり、より効果的な訓練が可能になります。 治療後にリハビリを適切に行うことで、関節の動きや筋力の維持・改善を図るなど、生活機能の向上につながります。 ボトックス治療に健康保険は適用されますか? 脳梗塞後の痙縮に対するボトックス治療は、一定の条件を満たすことで健康保険が適用されます。たとえば、診断名が明確で、痙縮によって日常生活に支障があると医師が判断した場合などが該当します。 保険が適用されると、自己負担は通常1〜3割となりますが、治療の内容や施設によって異なるため、事前に確認しておきましょう。また、障害者手帳や特定疾患の医療費助成制度を活用できるケースもあり、経済的な負担を軽減できる可能性があります。 参考資料 (文献1) 最先端の医療をお伝えする活動推進委員会「脳卒中の今」先進医療.net, 2012年3月26日 https://www.senshiniryo.net/stroke_c/01/index.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年06月17日) (文献2) 医療法人社団永生会「ボツリヌス(ボトックス)療法」医療法人社団永生会 https://www.eisei.or.jp/clinic/eiseiclinic-gairai/botulinum/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年06月17日) (文献3) 一般社団法人日本小児神経学会「Q35:ボツリヌス(ボトックス)治療の副作用について教えてください。」一般社団法人日本小児神経学会, https://www.childneuro.jp/general/6502/(最終アクセス:2025年06月17日) (文献4) 金久研究所「医療用医薬品 : ボトックス」KEGG, https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058180(最終アクセス:2025年06月17日) (文献5) 松元 秀次.「論最新のリハビリテーション-痙縮のマネジメント-」『2007 年/第 2 回 リハビリテーション科専門医会 学術集会/札幌』巻(号), pp.1-7,2008年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/45/9/45_9_591/_pdf(最終アクセス:2025年06月17日)
2025.06.29







