-
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について はじめに もやもや病という病名を聞いたことがあるでしょうか?正式には、「ウィリス動脈輪閉塞症」といい、脳の血管が閉塞もしくは狭窄することによって引き起こされる脳に起こる疾患です。もやもや病には、脳の血液供給の大事な一部を担う、内頚動脈や中大脳動脈とよばれる血管が関与しています。 この記事では、もやもや病の病態や症状、治療などについて詳しく解説します。もやもや病について正しく理解を深めましょう。 もやもや病とは? もやもや病は、脳に血液を送るための重要な血管である「内頚動脈」が、狭くなったり詰まったりすることで起こる疾患です。このようになると足りない血液を補おうと、細い血管が脳内に異常に発達していきます。画像検査では、この細い血管がまるで「もやもやした煙」のように見えます。これが「もやもや病」という名前の由来です。 もやもや病は、10歳以下の小児で症状が現れる場合と、30〜40歳代の成人で現れる場合の2つのパターンが多く見られます。 ウィリス動脈輪の構成について まず、もやもや病の原因となる、ウィリス動脈輪について解説します。 ウィリス動脈輪は、脳内に形成されている血管経路であり、その名の通り、輪になっています。内頚動脈と椎骨・脳底動脈という重要な血管から流れた血液を脳内に供給するため、重要な役割を担っています。その一部が閉塞もしくは狭窄すると、脳の特定の部位への血流が不足してしまうため、非常に重要な血管経路です。 もやもや病では、このウィリス動脈輪のなかで、内頚動脈から中大脳動脈・前大脳動脈が分岐する部分に狭窄が起きます。どうしてその部分が狭窄してしまうのかは、はっきりとはわかっていません。 ウィリス動脈輪の狭窄が起こることで、中大脳動脈や前大脳動脈から供給を受けている脳細胞への血流が低下します。私たちの体は、この血流を補おうとして、小さな新しい血管(側副血行路)を形成します。この側副血行路が、MRIや血管造影で、もやもやとした陰影として見られるため、もやもや病と呼ばれるようになりました。 もやもや病の症状|もやもや病は何が危険? ここからはもやもや病の症状について詳しく解説していきます。 もやもや病で形成された側副血行路は、細い血管であるため不足した脳への血流を十分には補うことができません。 小児では、熱いものをフーフーと冷ましたり、楽器を吹いたりした際に症状を発症することが多いです。これは、過呼吸になることで、脳の血管が収縮し、血流を十分に送ることができなくなるからです。そうすると、一時的に脳への血流が不足し、脱力発作やけいれん、意識障害などを引き起こします。 小児の症状 ・脱力発作 ・けいれん ・意識障害 成人でも、小児と同じように一時的な脳虚血の症状で発症することもあります。具体的には、手足がしびれる、うまく手足を動かせない、言葉が出にくいなどがあげられます。 成人の症状 ・手足がしびれる ・うまく手足を動かせない ・言葉が出にくい しかし、もっと怖いのは一時的な症状ではなく、「脳梗塞」や「脳出血」を起こしてしまう可能性があるということです。 成人では、ウィリス動脈輪のうち閉塞していない椎骨・脳底動脈への血流が増え、その負荷によって椎骨・脳底動脈に動脈瘤が形成されるケースがあります。その動脈瘤が破裂してしまうと、脳出血やクモ膜下出血を突然発症する可能性があるのです。これらは成人のもやもや病の発症パターンの半分を占めます。 また、細く脆いもやもや血管が閉塞してしまうと、脳梗塞を引き起こします。小児のように一過性の虚血発作であればよいですが、そのまま血流が回復せず脳細胞が死んでしまうと、長期的に続く麻痺や機能障害が残ってしまいます。 もやもや病の危険性 ・脳梗塞 ・脳出血 ・くも膜下出血 もやもや病の治療と予後について もやもや病は、患者さんの年齢やどんな症状で発症したか、また症状の重さなどによって、治療法や予後が異なります。症状が軽度である場合は、小児では、慎重な経過観察を行いながら、内科的な薬物療法などを行う場合が多いです。 また、脳血流を改善させるための手術もあります。浅側頭動脈という頭蓋骨の外側にある血管と中大脳動脈を直接吻合する血行再建手術です。バイパス術ともよばれます。この手術を行うことで、脳梗塞や脳出血のリスクを減らすことができます。 ただし、脳梗塞や脳出血で発症してしまうと、重篤な後遺症を残す可能性もあります。後遺症が残った場合には、リハビリテーションを重点的に行い、併せてこれ以上脳出血や脳梗塞を繰り返さないように、薬物療法を行います。 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)についてのQ&A Q . どのような検査をすればわかりますか?人間ドックで調べられますか? A . 血管造影という造影剤を用いた方法でもわかりますが、最近はMRAと呼ばれる造影剤を使わない検査で、もやもや血管を確認することができます。 MRAはMRIの一種で、電磁波を当てて脳の血管を立体画像として書き出すことができる検査です。通常の人間ドックでは行われない場合もありますので、心配な場合は脳ドックを受けることをおすすめします。 Q . もやもや病になりやすい人はいますか? A . もやもや病は日本を含む、東アジア諸国に多いといわれています。 また、15〜20%の方では血のつながった家族に、もやもや病の方がいて、遺伝する可能性があるといわれているため、家族にもやもや病の人がいる方は、脳ドックなど受けてみると良いでしょう。 まとめ・もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について 今回は、もやもや病について解説しました。 脳梗塞や脳出血で発症した場合は、命に関わる可能性がある非常に怖い病気です。ですが、早期発見できれば、重篤な後遺症を残さず社会復帰できる可能性も高くなります。 どのような症状が危険信号なのかを知っておくことで予防できますので、是非みなさんも、もやもや病についてご理解頂ければ幸いです。 ▼モヤモヤ病については、以下もご参考にしていただけます もやもや病による性格変化とは?高次機能障害について解説
2023.09.28 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント もやもや病とは、脳の重要な血管である内頸動脈が細くなり、代わりにもやもやとした異常な血管が増える病気です。大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 この記事では、もやもや病の大人と子どもの違いや注意すべきポイントについて述べていきます。 もやもや病とは? もやもや病は、脳の血管に生じる病気で、脳の中の内頸動脈という重要な血管の終末部が徐々に細くなっていきます。人口10万人あたり3〜10.5人程度いると考えられており、日本人に多く見られます。 脳血管は脳に酸素や栄養を供給していますが、血管が細くなるにつれて脳の血流が足りなくなり、その足りなくなった血流を補うために、周囲に異常な血管(もやもや血管)が網のように出現します。このため、もやもや病では、脳血流不足による脳の虚血(きょけつ)や、異常に発達した細い血管が切れることで脳出血が起こります。 もやもや病の原因ははっきりしていませんが、ある特定の遺伝子を持つ方で発症しやすい傾向があるようです。 もやもや病の症状は大人と子どもでは異なる?注意すべきポイントは? もやもや病の症状は大きく分けると、脳虚血(脳血流が不足すること)、脳出血となります。その他にも、頭痛やけいれんといった症状がでることもあります。 さらに大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 子どもの症状 子どもの場合は、脳虚血症状がほとんどで、脳出血はまれとされています。 脳虚血症状としては、手足が動かしづらい、言葉がうまく出ない、手足や顔面が痺れる、などの症状が急に起こります。 特に、子どものもやもや病では、呼吸が激しくなること(過呼吸:かこきゅう)によって、この発作が起こりやすくなることが知られています。過呼吸となる場面としては、うどんなどの熱い食べ物を「フーフー」と吹く、リコーダーや鍵盤ハーモニカを吹く、または歌を歌ったり、大笑いしたりすること、激しく泣くことなどがあります。 こうした行動などによる一過性脳虚血発作は、自然に治りますが、脳梗塞の前触れなので、軽視してはなりません。特に、小さな子どもほど進行が早く、脳梗塞になる危険性が高いので、注意が必要です。 大人の症状 一方、大人の場合は、脳の血流不足を補うための側副血行路が破れて出血する、脳出血が起こることが多いです。 脳出血は、もやもや病による死亡や後遺症の最大の原因とされています。 もやもや病の検査や治療法は? ここでは、もやもや病の検査や治療法について解説します。 もやもや病の検査 もやもや病かどうかを検査する方法としては、MRI(磁気共鳴画像診断)・MRA(磁気共鳴血管造影)、脳血管造影検査(カテーテル検査)、脳血流検査、の3つが代表的です。 検査方法 ・MRI(磁気共鳴画像診断)、MRA(磁気共鳴血管造影) ・脳血管造影検査(カテーテル検査) ・脳血流検査 いずれの検査も、安静にして行う必要があるので、小さな子どもの場合には、眠たくなる薬を使う場合が多いです。 もやもや病の治療 もやもや病の治療の目的は、脳梗塞や脳出血を防ぐこととなります。 治療法としては、薬による治療と、脳血流量を増やすためのバイパス手術があります。 薬による治療 ・薬による治療は、抗血小板薬で血液が固まるのを防ぐ方法があるが効果に限界がある。 バイパス手術 ・バイパス治療については、虚血型もやもや病の場合に、脳梗塞を予防する効果が認められています。 ・バイパスの治療には、頭皮の血管を脳血管に直接つなぎ合わせる「直接バイパス」 ・頭皮に血管をつけたまま血流豊富な組織として脳の表面に接触させて、新たな血管が生えるのを待つ「間接バイパス」 ・これらを組み合わせる手術があります。 ・大人の手術では、「直接バイパス」のみ、または間接と直接を組み合わせた「複合血行再建術」が行われます。 ・子どもの手術は、「間接バイパス」のみ、 もしくは「複合血行再建術」が行われ予後の改善効果がそれぞれ報告されています。 もやもや病についてよくある質問 Q:「もやもや病」の人はすべて手術をするのですか? A 症状が多発していない患者さんの場合は、すぐに手術をする必要はありません。 しかし、脳虚血症状がすでにある人や、脳血流検査での血流低下が認められる方、あるいは過去に頭蓋内出血の既往がある方に対しては手術を勧めるのが一般的です。 また、子どもの場合は、将来の脳虚血や出血予防のために、手術適応は広く考えられています。 これらの観点を元に、もやもや病の経験豊富な医師が的確な検査や年齢、患者さんの状況を総合的に検討・判断して手術適応が決まります。 Q:子どもの「もやもや病」の予後はどのようになっていますか? A 子どものもやもや病の場合は、ほとんどが脳虚血発作なので、大きな脳梗塞が起こる前に、バイパス手術を受けることができれば、その後脳梗塞を発症することは少ないとされています。 社会生活については、8割以上の子どもたちが通常の生活を送ることができます。一方、2割弱は普通学級への就学困難、もしくはその後の就職が困難になってしまうようです。 診断が遅れ、手術治療を受ける時点ですでに脳梗塞が起こってしまっていると、その後の社会生活に支障が出てしまう可能性がありますので、早期診断と適切なタイミングでのバイパス手術がとても重要です。 まとめ・もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント 今回は、子ども・大人のもやもや病の違いについて解説しました。 脳梗塞や脳出血をきたす前に、もやもや病の診断・治療を受けることが大切です。脳梗塞や脳出血後の後遺症に対しては、機能回復のためのリハビリテーションが行われますが、再生医療を組み合わせることで、身体機能の改善効果の向上が期待できます。 この記事がもやもや病の大人と子どもの違いについての理解を深めるのに役立てば幸いです。 参考文献 もやもや病…ここまできた診断・治療 日本小児神経外科学会|小児もやもや病 ▼もやもや病の情報、以下も参考にされませんか もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と予防策について解説
2023.09.25 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
橋出血はどんな初期症状が出るのだろう。 橋出血になったら、助かるのかな。 この記事を読んでいるあなたは、聞きなれない「橋出血」という病気について不安を抱いているのではないでしょうか。「これからどうなるのだろう」と、心配しているかもしれません。 橋出血とは、脳の中心部にある「橋(きょう)」という部分からの出血で、脳出血全体の5〜10%を占めます。初期症状として意識障害や頭痛が出るケースが多く、状態によっては助からないケースも珍しくありません。 本記事では、橋出血の初期症状や死亡率、予防法を詳しく解説します。記事を最後まで読めば、橋出血の全容がわかり、リハビリや再出血予防を含む今後の見通しをたてられるでしょう。 橋出血の初期症状は「意識障害や頭痛」 橋出血を含む脳出血は、突然脳の血管が破れて発症し、前兆や予兆がないケースも珍しくありません。しかし、初期症状がわかれば早期治療が可能となり、出血の拡大を予防できます。 橋出血の初期症状は、以下のとおりです。 ・なん何となく受け答えが悪い(意識障害) ・強い頭痛が続く ・手足がうまく動かせない ・身体の片方だけ感覚が鈍い このような症状がある場合は、救急車の利用も考慮に入れ、できるだけ早く医療機関を受診してください。 また、当院リペアセルクリニックでは、脳梗塞や脳出血といった「脳卒中」の治療法の1つとして再生医療をおこなっています。「メール」や「オンラインカウンセリング」によるご相談も可能です。橋出血の治療法に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 橋出血における2つの症状 出血の部位や大きさによって異なりますが、橋出血の症状は「瞳孔の変化」と「四肢の麻痺」が特徴的です。また、意識障害、視覚障害、言語障害、呼吸障害などのさまざまな症状が出るケースもあります。 本章では、橋出血の特徴的な症状である瞳孔の変化と四肢の麻痺について、解説します。 瞳孔の変化 瞳孔とは、目の真ん中にある「黒目」のさらに中心にある黒い部分です。瞳孔のはたらきは、目の中に入る光の量の調整です。まぶしいときは光の取り込み量を減らすために縮小し、暗いときは取り込み量を増やすために拡大します。 脳の奥にある「橋」には、瞳孔の大きさを調整するための神経が通っています。そのため、橋出血によりこの神経が影響を受けると、瞳孔が極端に収縮するのです。両側瞳孔の高度縮小はpinpoint pupilともよばれ、橋出血に特徴的な所見です。 四肢の麻痺 橋には、四肢の運動機能を担う神経も通っています。橋からの出血がその部分を巻き込んだ場合、運動機能の調節ができなくなり、手足の麻痺があらわれます。広い範囲で出血が起こった場合は、片側だけでなく、四肢の麻痺となるでしょう。 ただし、出血量が少なければ、「片側の麻痺に留まる」「運動は保たれて感覚のみ麻痺する」などの場合もあります。片側に麻痺が出る際は、機能が失われた脳の反対側の手足に症状が出るケースが一般的です。 脳内における「橋」の役割については、以下の記事で詳しく説明しています。橋出血について詳しく知りたい方はあわせてチェックしていただければ幸いです。 橋出血の治療は「保存療法がメイン」 橋出血の治療は、原因となる血圧を下げる「血圧コントロール」「脳のむくみ予防の点滴」などの「保存療法」が基本です。 脳のほかの部位で出血したときは、血腫(出血によって生じた血の塊)を取り除く手術をするケースがあります。しかし、脳の深部にあり、正常な組織を傷つける可能性が高いため、基本的に橋出血の手術はおこなわれません。 また、身体を動かしても問題のない状態になり次第、日常生活に戻るためのリハビリもおこないます。 橋出血の治療法は、以下の記事で詳しく説明しています。 橋出血の死亡率は約50% 橋出血の死亡率は、約50%です。(文献1) 入院時の意識レベルが低い、出血が多いなどの場合は死亡率が高く、予後も不良です。場合によっては出血してから数時間で命を落とすケースもあります。 出血の範囲が小さく、量も少ない場合の予後は比較的良好で、退院後は自宅での生活に戻れる方もいます。しかし、運動麻痺や感覚麻痺などの後遺症が出る方も多いのが現実です。自宅での生活が難しければ、回復期リハビリテーション病院や病棟に移動してリハビリを続けるケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」が取り扱う再生医療は、リハビリと併用すると身体機能の回復効果を高められます。「メール」や「オンラインカウンセリング」によるご相談も可能です。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。 橋出血の予後については、以下の記事も参考にしてください。 橋出血の予防には血圧コントロールが大切 橋出血のみならず、脳出血の最も多い原因は高血圧です。高血圧は一般的な病気であり、多くの人が指摘されたことがあるのではないでしょうか。 高血圧は、ほかの生活習慣病と同じく、食事、運動が基本的な治療です。とくに塩分の摂りすぎには注意した方が良いでしょう。 血圧が高い状態が続いている場合は、投薬治療が必要な場合もあるため、医師に相談してください。 脳出血が再発すると、今回無事だった部位もダメージを受け、さらに後遺症が重くなる可能性も考えられます。再発を防ぐために、できる限りの対策をおこないましょう。 まとめ|橋出血の初期症状があらわれたらすぐに受診を 本記事では、橋出血の初期症状やその後あらわれる症状、死亡率などを詳しく解説しました。 橋出血の初期症状は、意識障害や頭痛などです。脳出血はいきなり起こるため、予兆や前兆がないケースもありますが、初期症状を知っておくことで早めの受診が可能になるでしょう。 また、意識がない、出血量が多いなどの場合の死亡率は高く、助からないケースも珍しくありません。高血圧は橋出血のリスクを高めるため、減塩や運動などの生活習慣にも気をつけましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中の再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。壊れた脳細胞の再生ができれば、リハビリの効果を高める、再発防止などの効果が期待できるでしょう。 再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 橋出血の初期症状に関するよくある質問 橋出血の症状が出た人におこなうリハビリは何? 橋出血後に姿勢の保持が難しい、歩行時のふらつきなどの「運動失調」という後遺症が出た場合、以下のようなリハビリをおこないます。 フレンケル体操 重り負荷での運動 弾性緊縛帯 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) 橋出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく説明しています。 橋出血を予防する方法は何? 橋出血はほかの脳出血と同様に、「高血圧」によって起こるケースが多くみられます。完全な予防は困難ですが、適正な血圧の維持がリスクの低下につながるでしょう。 具体的な方法は、以下のとおりです。 生活習慣の見直し:減塩・適度な運動・健康的な食生活・禁煙 適切な薬物治療:処方された薬の正しい服用 橋出血の予防・再発予防のために、血圧が高い方は早めに治療を受けるようにしましょう。 脳出血を防ぐ方法は、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参照文献 文献1 Behrouz R. Prognostic factors in pontine haemorrhage: A systematic review. Eur Stroke J. 2018 Jun;3(2):101-109. doi: 10.1177/2396987317752729. Epub 2018 Jan 8. PMID: 31008342; PMCID: PMC6460408.
2023.09.18 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
橋出血(きょうしゅっけつ:英語名「pontine hemorrhage」)は、脳卒中の中でも、とくに生命予後の悪い疾患の1つです。 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など、脳の血管が詰まったり破れたりする病気を総称して「脳卒中」と呼びます。 「脳卒中の症状ではないから大丈夫」と安心し、症状の発見が遅れると、重症を患う恐れがあります。 脳卒中の1つ「橋出血」の重症例では、意識・呼吸障害、四肢麻痺などをきたし、急激な経過で死に至るケースもあるのです。 本記事では、橋出血の症状・原因や治療について詳しく解説をしていきます。 橋出血とは 橋出血とは脳出血の1つで、5〜10%が橋出血に該当するといわれています。 突然脳の血管が破裂する症状なので、橋出血が発症すると以下の症状が起こります。 ・意識障害が起きる ・頭痛が続く ・手足の動きや感覚が鈍い など 血栓や動脈硬化で起こる脳梗塞を含め、脳の病態は複数あるので、早急に医療機関で受診しましょう。 なお、橋出血の疑いがすでにある方はとくに、以下の記事で初期症状や診断方法などを詳しくまとめました。 予後についても解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。 橋出血の「橋」は脳幹における構造物 橋出血が起こる「橋」とは、脳の一部分である「脳幹」の1つです。 上にある中脳、下にある延髄と共に「脳幹」の構成をしています。 脳幹には、以下4つの構造物があります。 ・神経伝達路 ・神経の中継(分岐地点) ・自律神経反射中枢 ・脳幹網様体 それぞれ構造の役割とともに、橋出血による症状について見ていきましょう。 ①神経伝達路としての役割と橋出血の症状 脳幹には神経線維の束が通っており、以下の役割を果たしています。 ・大脳から運動神経の伝達 ・大脳へ感覚神経の伝達 ・脳幹の真後ろにある小脳との連絡経路 橋出血は神経の伝導路が障害されるため、運動麻痺や感覚障害が起こるのです。 運動麻痺は出血の部位にもよりますが、重症例では両方の手・足ともに動かなくなる四肢麻痺をきたすケースもあります。 四肢麻痺と顔の麻痺まで加わる特殊な形に「閉じ込め症候群」があります。 意識や感覚は保たれますが、まばたきと一部の目の動き以外の運動がすべてできません。 看護・介護を行う人とのコミュニケーションは、眼の動きのみで行うのです。 他にも橋出血が発症すると幾つかの運動失調が起こります。 以下の記事では橋出血による運動失調の種類を詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 ②神経の分岐・中継地点の役割と橋出血の症状 脳幹には、脳から直接伸びる末梢神経である脳神経核をはじめ、神経回路の分岐点や中継地点になる複数の神経核(神経細胞体の塊)があります。 橋出血が発症する「橋」にも、以下4つの脳神経核があります。 三叉神経;主に顔面の感覚を伝える 外転神経;眼球の運動の一部を支配する 顔面神経;表情筋など顔面の運動に関わる 内耳神経;聴覚や平衡感覚を司る 橋出血で障害を受けた際の症状は以下の通りです。 ・顔の感覚や運動の障害 ・眼球運動の障害 ・聴力障害 とくに三叉神経や顔面神経は舌の動きや感覚などにも関わる神経です。 橋出血が起こると飲み込み障害とも呼ばれる「嚥下(えんげ)障害」も起こる可能性があるので注意しましょう。 ③自律神経中枢の役割と橋出血の症状 自律神経は生命維持の上で必要な動作を調整する神経です。 意識せずとも呼吸をし、心拍数をコントロールしています。 明るさに応じて瞳孔の大きさを調節しているように、自律神経は、脳幹に中枢があるのです。 橋には呼吸の中枢があるため、橋出血の患者様は呼吸障害が多くみられます。 橋出血では瞳孔の異常も多く、瞳孔の縮小や瞳孔を開く交感神経の障害もあるためです。 ④脳幹網様体の役割と橋出血の症状 脳幹の中心から背中側には「網様体」と呼ばれる神経線維の束と神経細胞体が合わさった構造物があります。 網様体の役割は主に以下3つです。 脳幹内の自律神経中枢と連絡し、生命維持機能を果たす 筋肉の緊張をコントロールする 大脳へ刺激を与えて意識を保つ 重症の橋出血だけでなく、網様体の障害でも呼吸・循環障害をきたします。 網様体の損傷により、「意識障害」の症例もあり、重症例では急激な経過で昏睡状態に陥っているケースもあるため、注意が必要です。 橋の網様体には眼球の運動の中枢もあるので、出血部位や程度により、さまざまな眼の動きの異常が認められます。 代表的な症例は、眼の動きがまったくできず、真ん中で固定される眼球の正中固定位が挙げられます。 眼球が真下に急に動き、ゆっくり真ん中に戻ってくる「眼球浮き運動」が認められるケースもあるので注意しましょう。 なお、橋出血を含め脳卒中は、手術しなくても治療できる時代です。 詳しくは以下のページをご覧ください。 橋出血が起こる2つの原因とそれぞれの治療法 橋出血の原因として、高血圧と血管奇形の2つが挙げられます。 原因により治療法が異なるので、それぞれ解説していきます。 高血圧で起こる橋出血と治療 橋出血の最大の原因は高血圧です。 橋への栄養動脈が、高い圧により破綻してしまいます。 橋は小さい中に重要な構造物が詰まっているところなので、出血が一気に広がり損傷が起こると、短時間で致命的になるので要注意です。 損傷を受けた脳幹の回復は難しく、手術は基本的には行いません。 可能な限り血圧を下げ、呼吸や循環などの生命維持のサポートをするのが治療の中心です。 血管奇形で起こる橋出血と治療 高血圧性の橋出血よりも若い方に多いのが、脳の血管奇形(赤あざ)によるものです。 代表的なものに「海綿状血管腫」と呼ばれる血管の塊があります。 生まれつき静脈の成分が拡張した場合によくみられ、発症場所や大きさなどは人によって異なります。 海綿状血管腫を持っている一部の患者様は、局所的な出血を起こすケースが大半です。 出血は少量で、重篤になりにくい反面、何度も繰り返すリスクがあります。 出血が落ち着いているときに手術が考慮されるケースもあるので注意してください。 橋出血についてよくあるQ&A Q , 橋出血の検査はどのようなものがありますか? A , 橋出血に限らず疑わしい症状があれば、CT撮影をします。 脳は灰色に映りますが、出血がある部分は白くなります。 なお、血管奇形の診断にはMRI も有用です。 近年では脳ドックなどにより症状がないまま発見されるものも多くあります。 Q , 海綿状血管腫は必ず手術が必要ですか? A , 症状のない海綿状血管腫が出血を起こすのは、年間で1,000人中4〜6人程度です。 手術の合併症リスクの方が高く、全員におすすめできません。 ただし、一度出血を起こすと、2年以内の再出血リスクが高くなります。手術のメリットとリスクを比較しつつ、手術ができない場合は、放射線治療が考慮されるケースもあります。 橋出血の後遺症や予後について、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 まとめ・橋出血の症状を理解して適切に治療しよう! 橋出血は、重症例では命にかかわりかねない恐ろしい病気の1つです。 「橋」と呼ばれる部位でもあるため、神経伝達や自律神経においての重要な役割を果たしています。 高血圧は重症の橋出血のリスクになるため、しっかりと治療を受けるのがおすすめです。 症状を見つけるタイミングも当然早い方が良いので、少しでも不安に感じた方は医療機関でのカウンセリングを検討しましょう。 ▼以下もご参考下さい <参考文献> 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 茂木陽介, 川俣貴一. 日本臨牀. 80(増刊号2): 320-324, 2022. 医学書院 標準解剖学 第1版 メディックメディア 病気がみえるvol7. 脳・神経 第1版 中外医学社 イラスト解剖学 第7版 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.14 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病の後遺症による性格変化とは?高次機能障害について解説 もやもや病は、脳の重要な動脈が狭くなり、そのかわりにバイパスとなる細い血管が発達することにより起こる病気です。 細い血管は検査で見ると「もやもやと煙が立ち上るよう」に見え、この所見が診断基準にも必須の項目となっています。この「もやもや血管」が収縮してしまうと、脳に十分な血液が行き届かなくなります。その結果、意識障害や脱力、てんかん、頭痛などの症状を発作的に繰り返すのです。 また、細い血管は詰まったり破れたりしやすいため、脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血)を起こしてしまうこともあります。脳卒中の後遺症というと、麻痺や感覚障害が思い浮かぶかもしれません。しかし、一部の患者さんでは、麻痺などがなくても、生活や仕事に差し障る後遺症を残すことがあります。それが「高次脳機能障害」です。 本記事では、「もやもや病の後遺症」としての高次脳機能障害について、どのようなことが起こるのか具体例を交えて解説していきます。 高次脳機能障害とは? 「高次脳機能」とは、さまざまな情報をもとに、高度で複雑な処理をする脳の機能のことです。 大脳をその機能別に見てみると、運動や感覚などを司るはっきりとした機能がある「一次野」と、それ以外の「連合野」に区分されます。連合野は特に人間で大きく発達した部分で、高次脳機能に関わるところです。情報をもとに考えたり、感じたり、何かの行動に移したりということを可能にしています。 この連合野がなんらかの原因で傷つくとどうなるでしょう。複雑な処理の過程で支障が起こります。例えば、記憶や行動、物事を実行する能力の障害など、損傷部位に応じて多彩な症状をきたします。その結果、日常生活や社会生活を送る上で制約を受けている状態が「高次脳機能障害」です。 もやもや病と高次脳機能障害 もやもや病は、もやもや血管が詰まったり破れたりすることで、脳卒中をきたします。それだけでなく、明らかな脳卒中のエピソードがなくても、血液の巡りが悪いため、脳にダメージが蓄積されていくリスクもあるのです。このようにして、脳の連合野にダメージを受けると、高次脳機能障害を認めます。 どのような症状が出るかは、障害部位によって変わってきますが、もやもや病では「前頭葉の障害」が起こることが多いです。 前頭葉の働きと高次脳機能障害 もやもや病で障害を受けやすい前頭葉は、大脳の前の部分に位置します。前頭葉にある、「前頭連合野」は、ヒトで特に発達している部分です。本能や激しい感情の動きをコントロールして、思考力・創造性・社会性を発揮するための機能を果たす役割があります。単に欲求に従うのではなく、状況を見極めて判断し、意味のある行動を起こすという「人間らしさ」に関わる場所なのです。 具体的に前頭連合野の障害による高次脳機能障害の症状を見ていきましょう。 〈前頭連合野の障害による高次脳機能障害の例〉 記憶障害 ・作業記憶(ワーキングメモリー)が障害されます。 ・作業記憶の障害は、何かを行うときに一時的においておく「記憶の引き出し」が使えません。 ・聞いたことをすぐ忘れて何度も聞き返す。 ・買い物を頼まれても何を買えばいいか忘れてしまう。 注意障害 ・注意障害があると、気が散りやすくなり、一つの物事に集中できません。 ・ちょっとした周りの変化が起こるとそちらに気をとられ、動作が止まってしまいます。 社会的行動障害 ・自分の感情をうまくコントロールできなくなります ・突然かっとなり怒りだすなど感情の振れ幅が大きくなります。 ・ギャンブルにのめり込みやすくなるなど、欲求がうまく抑えられません。 ・逆に、人や物事に興味がなく、自発性がなくなることもあり社会生活上で問題になります。 遂行機能障害 ・物事を順序立てて行うことができなくなります。 ・段取りが悪くなり、優先順位をつけることができなくなります。 ・臨機応変に行動することができず、ちょっとしたトラブルにも対応することができません。 このように、前頭葉の障害による高次脳機能障害が起こると、無責任で怒りっぽくなったり、意欲や興味がなくなったりと、まるで性格変化をしたようになってしまいます。 もやもや病による高次機能障害についてよくあるQ & A Q1.高次脳機能障害は完治しますか? 脳に傷がある状態なので、完全に治すことは難しいです。しかし、得意なこと、苦手なことを考えた上で工夫をしていくことにより、より生活をしやすいようにしていくことはできます。根気強いリハビリが大切です。 Q2.脳卒中による高次脳機能障害があるとき、入院期間はどのくらいになりますか? 脳卒中では一般的に、発症直後の急性期を過ぎたあと、回復期リハビリテーション病棟というところに移ってリハビリを続ける方が多いです。回復期リハ病棟では、脳血管障害の入院期間は一般的に150日となっています。ただし、高次脳機能障害の合併があると、180日まで入院が可能です。 この期間全部を使っての入院が必要というわけではありません。しかし、高次脳機能障害は麻痺などと違って一見して分かりづらく、周りの理解が得られにくいことが多いです。社会復帰のためのリハビリや環境整備のためにしっかり時間をかけていくことが必要です。 まとめ・もやもや病の後遺症、性格変化とは?高次機能障害について もやもや病による後遺症のうち、高次脳機能障害は外見では分かりにくいものです。 しかし、社会生活を送る上で大きな支障をきたしてしまいます。苦手なことをカバーするための訓練を行うとともに、周囲が理解し、支援を続けていくことが必要です。当事者や家族のみで悩まず、。 もやもや病の方で上記のような症状があり、日常生活に困っているときは、まずは地域の高次脳機能障害支援のための拠点機関に相談してみる必要があります。 リハビリ科や精神科の病院、地域の保健福祉センターなどが該当します。地域の自治体のホームページなどでも情報提供されていることが多いため、一度専門機関で相談をされることをおすすめします。この記事がご参考になれば幸いです。 ▼もやもや病の後遺症については以下でも解説しています もやもや病による後遺症|社会復帰や運転への影響について 〈参考文献〉 中川原. BRAIN NURSING. 31(11), 32-34, 2015. 冨永ら.脳卒中の外科. 46 (1), 1-24, 2018. 中村. 日本臨牀 80(増刊号1), 386-390, 2022. 平岡. 日本臨牀 80(増刊号1), 592-596, 2022 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/47.最終閲覧2023年7月3日. 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/209.最終閲覧2023年7月3日 坂井. 標準解剖学第1版, 医学書院. 2017.
2023.08.10 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病は遺伝するのか?家族性もやもや病、遺伝との関係 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は脳卒中を引き起こす脳血管の病気です。この病気は長きにわたって、原因不明の難病とされていました。しかし、一部では家族内で複数人のもやもや病患者さんがいることがわかっており、遺伝が関与する可能性が考えられています。 本記事では、家族性に発症するもやもや病について解説していきます。 もやもや病とは もやもや病患者さんでは、内頸動脈終末部という脳の主要な血管が徐々に狭窄を起こします。足りない血液を補うため、代わりに細い血管が多く発達します。MRA(磁気共鳴血管撮影法)や脳血管造影などの画像の検査では、このような細い血管がもやもやとした煙のように描出され、これがもやもや病という名前の由来です。 細い「もやもや血管」のせいで脳は血流不足を起こしやすくなります。脳に血が回らなくなる「脳虚血」の状態になると、再発性の脱力や手足の痺れ、てんかんなどを認めます。また、もやもや血管は高い血圧によるストレスで破れやすいです。そのため、一部の患者さんでは脳出血を起こします。 もやもや病はどんな人に発症する? もやもや病の患者さんは、人口10万人につき3〜10.5人ほどいるとされています。女性患者さんが男性の約2倍ほどです。 小児での発症 発症する年齢は最多が小児期で、5〜10歳頃が多いとされています。 子供の場合は、脳虚血発作を認めることが多いです。発作は、息を大きく早く吸ったり吐いたりする「過呼吸」により誘発されやすくなります。これは、二酸化炭素が減り、脳の血管が収縮しやすくなるためです。例えばハーモニカなどの楽器の演奏や、熱いラーメンをふーふーと冷ますことがリスクになります。また、痛み止めの効かない頭痛や、てんかんを起こすこともあります。 成人での発症 小児期以外で発症が多いのは、30〜40歳の成人です。 大人の場合は、半数は脳虚血の症状をきたしますが、残りの半分程度は脳出血で発症すると言われています。また、MRIの普及により、症状がなくても、脳ドックなどの機会に血管の異常が判明する患者さんも増えてきています。 家族性もやもや病 実は、もやもや病の10〜20%の方で、家族内の発症が認められているのです。そして、家族性もやもや病の一部では、「表現促進現象」を認めることがあります。表現促進現象とは、次の世代にうつるにつれて、発症年齢が早くなり、また、より重症化しやすくなることです。 もやもや病と関連した遺伝子とは? もやもや病は、発症に人種差があることもわかっています。この病気が発見されたのは日本でした。その後の報告でも、東アジアでは他の地域よりも多いことが判明しています。 家族内での発症や人種での違いがあることから、もやもや病の発症には、遺伝的な因子があるのではないかと考えられていました。 そして、近年、「RF213」という遺伝子に「遺伝子多型」があると、もやもや病が発症しやすくなるということが判明しています。 遺伝子多型 私たちの体を構成する細胞は23組46本の遺伝子を持っています。遺伝情報を構成するDNAは、塩基・リン酸・糖という3つの部品からなる「ヌクレオチド」が繋がってできたものです。このうち、塩基にはアデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類があります。4種類の塩基の並びで遺伝情報が決まっています。 遺伝情報は、ヒト同士であればほとんどの部分は同一です。しかし、わずかに塩基配列のバリエーションが違う部分があります。この塩基配列の違いを遺伝子多型と呼びます。遺伝子多型があっても、個人間の差がないことも多いです。しかし、一部の遺伝子多型は、個人の特徴を決定づける肌や髪の色の違い、さまざまな体質の違いなどとなって現れます。 RF213遺伝子多型p.R4810K RF213遺伝子は、23ペアのうち17番目の染色体にある遺伝子です。もやもや病の日本人患者さんのRF213遺伝子を調べると、8〜9割もの患者さんにおいて「p .R4810K」という遺伝子多型があることがわかりました。このことから、RNF213遺伝子多型が、もやもや病の発症と大きく関わっていることが推察されます。 しかし、このp .R4810Kという遺伝子多型は、健常な日本人の1〜2%も持っていることがわかっています。つまり、RF213遺伝子多型を持っている人のごく一部がもやもや病を発症しているに過ぎないのです。 現在では、もやもや病の発症には、このような遺伝的な背景に加えて、何かしらのきっかけがあって起こるのではないかと考えられています。 もやもや病の遺伝についてよくあるQ&A Q , もやもや病の患者がいる家系なので子供の発症が心配です。画像検査は何歳からできますか? A ,結論から言うと、何歳から可能かは、お子さんの状況や、病院によって異なってきます。 外来で検査が可能なのはMRAという検査です。磁気を使って脳や血管の状態を調べるため、体への負担は大きくありません。ただし、じっとしていないと撮影は難しいです。狭い機械に入らなければいけないため怖がってしまう子もいます。場合によっては鎮静剤を使って眠った状態で検査をしないといけません。 その一方で、お子さんの場合は、早めに適切な対処をすると予後も良いことがわかっています。検査するかどうか、いつするのかについては病院に相談されることをお勧めします。 Q , もやもや病が心配なので、遺伝子検査はできますか? A , 残念ながら現時点で、RNF213遺伝子の多型を通常の診療で検査することはできません。そもそも、この遺伝子多型を持っているから発症するのではなく、あくまで「もやもや病を起こしやすい」遺伝子多型です。診断は遺伝子の検査ではなく、血管の画像の検査を中心に行います。 まとめ・もやもや病は遺伝するのか?家族性もやもや病、遺伝との関係 もやもや病は一部で家族性に発症を認めます。発症と関連した遺伝子も見つかっています。しかし、絶対に遺伝するわけではなく、発症についてはまだわかっていないことも多い病気です。過剰に遺伝を心配し過ぎる必要はありませんが、気になることは専門医としっかり相談をしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 〈参考文献〉 中川原. Brain Nursing. 31(11): 1064-1066, 2015. Koganebuchi K, et al. Ann Hum Genet. 85(5):166-177, 2021. 公益財団法人循環器病研究振興財団 知っておきたい循環器病あれこれ117 もやもや病…ここまできた診断・治療 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/47.最終閲覧2023年7月3日. 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/209.最終閲覧2023年7月3日 小児慢性特定疾病情報センター 対象疾病 39.もやもや病. https://www.shouman.jp/disease/details/11_15_039/. 最終閲覧2023年7月5日 ▼モヤモヤ病の原因など、以下のページも参考にされませんか もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説
2023.08.07 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は非常に致死率の高い病気です。 かつて脳卒中は、日本人の死因の1位でした。しかし、医療技術が進歩するにつれて、脳卒中による死者数は徐々に減少しています。2022年においては死因の第4位でした。 橋出血は、その中でもいまだに生存率が低いとされており、発症すると半分近くの方が亡くなるという報告もあります。 本記事では、致命的になることの多い橋出血の予後の予測、また後遺症の回復について、解説をしていきます。 橋出血が重症化しやすいのはなぜか? 橋出血の最大の原因は高血圧です。高い血圧がかかり続けると、血管が急に破れてしまうことがあります。 血管をホース、血圧を水の勢いと考えてみてください。高血圧による脳出血は、勢いよく水を出しているホースが途中で破れてしまった状態と同じです。破れたところから、水はさらに激しく飛び散るでしょう。 脳は柔らかい組織で、一度出血すると簡単に止血できず、機能が急激に失われていきます。橋は意識や生命維持のための機能のコントロールを行う場所です。そのため、橋出血は死に直結することも少なくありません。 橋出血の生命予後に関わる症状とは? 重症の橋出血で起こる症状には次のようなものがあります。これらの症状は、橋出血において生命予後不良であることを示すものです。 ・発症早期の高度の意識障害 橋を含む脳幹は大脳へ刺激を与え、意識を保ちます。橋出血によりその刺激ができなくなると、昏睡状態など、高度の意識障害を認めます。 ・四肢麻痺 橋は大脳からの運動の伝達経路です。大脳の損傷でも麻痺は起こりますが、基本的には片麻痺(左右どちらかのみの麻痺)です。橋の広い範囲の出血では、運動神経が一気に障害されるので、四肢麻痺を呈します。 ・除脳硬直 意識障害下に、痛み刺激を加えると、手足が強く緊張して伸びたような姿勢になります。橋を含む脳幹のダメージにより、筋肉の緊張をコントロールすることができなくなるからです。 ・眼球正中位固定 橋には眼球の動きを司る部分があります。この障害により、目が真ん中から動かなくなります。 ・対光反射の消失 対光反射とは、瞳孔に光を当てた時、瞳孔の大きさが小さくなることです。この反射の中枢の「動眼神経」は橋の上の中脳にあります。橋出血の範囲が広いと中脳まで影響がおよび、対光反射は消失します。 ・失調性呼吸 脳幹の呼吸中枢が障害されるために起こる不規則な呼吸です。リズムも、一回ごとの呼吸の量も、バラバラで、呼吸が止まる直前の状態と考えられます。 ・中枢性過高熱 体温の調節中枢は脳幹のすぐ上にある間脳の視床下部というところです。広範な橋出血により、間脳までダメージが広がると、高い熱が出ます。 後遺症の治療について 重症にならず命が助かっても、出血で脳が傷つくと、後遺症が残ってしまうケースもあります。 例えば、神経の伝達経路の損傷による片麻痺、感覚障害などです。 橋は小脳という動作のコントロールに重要な部分と密接に関連しているため、運動失調によりふらついたり、動作がスムーズにいかなくなったりする方もいます。 また、物を飲み込む力が弱くなる嚥下障害も、頻度の高い後遺症です。飲み込みに関わる神経の多くは、橋をはじめとする脳幹から、顔・頸などに直接のびているからです。 後遺症のために、すぐに自宅に帰ることができなくなる方も多くいらっしゃいます。そのような場合に行うのが、リハビリテーションです。 急性期(発症直後の体の状態が安定しない時期)からリハビリが始まりますが、それだけでは不充分なことも多いです。そのため、患者さんの多くは、急性期がすぎると回復期病院(病棟)に移動し、集中的にリハビリを受けることになります。 リハビリの種類 理学療法・作業療法・言語聴覚療法の3種類があります。 ・理学療法 ・作業療法 ・言語聴覚療法 理学療法は、基本的な動作能力の回復を目指すリハビリです。 作業療法は日常生活に必要な作業の訓練を行います。同じリハビリでも、理学療法は立つ・歩くなどの基本的な動作、作業療法は着替え・入浴など応用的な動作が主体です。それぞれ、理学療法士・作業療法士という専門のスタッフがいます。 言語聴覚療法の担当は、言語聴覚士というスタッフです。構音障害などコミュニケーションの障害に対してリハビリを行います。また、橋出血に多い嚥下障害へのアプローチも行います。 リハビリの目標と後遺症の回復の見通しについて リハビリの最終的な目標は、個人個人の後遺症の具合、また退院後の生活環境を踏まえて決定していきます。そして、機能予後、つまり後遺症の回復見通しを勘案しながら、リハビリテーション計画を考えます。 では、回復の見通しはどのように立てるのでしょうか。 脳卒中全般で、発症時の重症度、画像の所見、入院時の日常生活動作(ADL)など、初期の評価からの機能予測についての研究が複数行われています。 また、急性期の回復の具合から、最終的な回復の見通しを立てる方法も模索されています。その中で、最初の1ヶ月での回復具合が大きいほど、最終的に自立した生活につながりやすいことが示されているのです。状態が許せば、早いうちから積極的なリハビリを行なうことは、回復につなげるために非常に重要です。 麻痺が回復するのは発症後どのくらいまでか 一般的に麻痺の回復は、3〜6ヶ月程度までと言われています。そのため、発症して早いうちから、集中的にリハビリに取り組むことが重要です。 この期間を過ぎてしまっても、リハビリを続ける意味がないわけではありません。麻痺の無い側でうまく補ったり、補助具を使ったりする訓練ができます。 まとめ・橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は現在の医療の進歩をもってしても、いまだに生命予後の悪い病気です。 また、後遺症も残りやすく、回復には時間がかかります。早いうちにリハビリに集中的に取り組むことで、麻痺などの後遺症が軽くなる可能性がありますので、諦めないことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考ください 橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 〈参考文献〉 奥田佳延 他. Neurosurg Emerg 13:63-71,2008. 木村紳一郎 他. 脳卒中の外科. 39: 262-266, 2011. 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 佐藤栄志. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 373-375, 2014. 厚生労働省.令和4年(2022)人口動態統計月報年計の概況. 結果の概要. (閲覧2023年6月28日). 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.03 -
- 頭部
- 脳卒中
- 脳出血
「視床出血の症状や後遺症は何があるの?」 「視床出血のリハビリ方法は?」 視床出血は、脳の中でも脳内ネットワークの中心となる視床で起こる出血です。 脳の中心である視床に出血が起きると、片麻痺や感覚障害、また運動失調の原因にもなります。 この記事では、視床出血で運動失調が起こる理由を始め、特徴や治療方法、リハビリなどを解説します。 再生医療の可能性も解説するので、視床出血後の症状に悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。 視床出血とは【脳の視床で起こる出血】 視床出血は、脳卒中と総称される脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血の中でも、脳の中の視床で起こる出血です。 主な原因は高血圧で、脳出血の中では、被殻(ひかく)出血の次に視床出血の頻度が高いとされています。(文献1)(文献2) 視床と被殻は隣にあり、視床出血は脳室とも隣接しています。視床出血と被殻出血は、脳室にまで出血が広がるかどうかが違いのひとつです。 また、視床出血は、重症度によってI〜IIIに分類されます。 その中でも、脳室穿破(せんぱ:脳室と呼ばれる脳脊髄液がある部分まで出血が及んでいるか)の有無で「無=a」「有=b」とさらに細かく分類できるのがポイントです。 視床に限局しているものをⅠ、内包に進展したものをⅡ、視床下部または中脳に進展したものをⅢとしています。 簡単に述べると、出血が大きくなるほど、数字も大きくなるようなイメージで良いでしょう。 視床出血による症状 視床は、脳内ネットワークの中心になる場所で、感覚神経をはじめ、さまざまな神経線維がここを経由しています。 視床出血によって、以下のようにさまざまな症状が起こるのが特徴です(文献3) ・片麻痺 ・瞳孔径の縮小 ・顔面神経麻痺(病変と反対側に起こる) ・知覚障害 ・病変側への共同偏視 ・外転神経麻痺 ・半盲 ・嘔吐 ・運動失調 など 他にも、視床出血では失語症や半側空間無視、注意障害などの高次脳機能障害が起こる場合もあります。(文献4) また、他の脳卒中と同じように症状が出たばかりの急性期には、視床出血が原因となり、嚥下障害(食べ物の飲み込み運動に支障が出る)が起こる可能性もあるでしょう。(文献5) 嚥下運動は、大脳から脳幹に至るまでの複雑なネットワークによって成り立っているからです。 視床出血による運動失調が起こる理由 運動失調とは、動作や姿勢保持などの協調運動に起こる障害です。 運動麻痺がないときもあれば、軽症の運動麻痺があるケースも含まれます。 視床出血で失調症状がでるのは、小脳の運動機能調節に重要な経路に小脳や視床、大脳皮質、橋があるためです。 上記のいずれかが障害されても、小脳性運動失調を生じるのです。 また、視床出血によって、深部感覚が障害されるのも原因のひとつと考えられています。 【失調と麻痺の違いとは?】 失調と麻痺の違いは、筋力の低下があるかどうかです。 視床出血による運動失調だと、意識障害や片麻痺を伴う場合が多い傾向にあります。協調運動障害や不随意運動、感覚障害が認められる場合は少ないとされています。 つまり、運動失調の症状があっても、四肢の麻痺によるものなのか判別がつきにくいと考えられるのです。(文献6) 視床出血の種類と特徴 運動失調の種類には、以下のようなものがあります。 視床出血の失調症状では、四肢の失調症状や歩行の異常が認められます。 視床出血の治療方法 視床出血が起こったときの治療は、血圧を下げるのが中心となります。視床は脳の深部にあるため、手術適応にはなりにくいのです。 また、視床出血によって、水頭症と呼ばれる脳室に脳脊髄液がたまる症状になってしまう場合があります。 水頭症を放置しておくと、脳ヘルニア(脳の一部が頭蓋骨の外側に飛び出してしまう状態)になる危険性があるのです。 呼吸障害などが起こり生命に関わるため、シャント術の手術を行い、余分な髄液を脳室から腹腔にまで流します。 視床出血後のリハビリについて【後遺症が出る場合】 視床出血では、発症後から感覚障害があった場合、感覚障害の症状が残ったり、逆に半身の痛み(視床痛)が出現したりします。 運動失調が残る場合を始め、出血が大きいときは、片麻痺の後遺症が出る可能性もあるでしょう。 視床出血後、ある程度落ち着いた段階で、作業療法や理学療法などのリハビリを行います。 ・作業療法 ・理学療法 作業療法 作業療法では、麻痺している上肢(肩口から先の手)を積極的に使い、日常生活への復帰を目標とします。 たとえば、麻痺側の手を中心に動かして、食事に必要なお箸の使い方などを訓練する流れです。 リハビリは毎日続けて行うと、身体機能をサポートする働きかけにつながります。 理学療法 理学療法では、以下のように、日常生活を送る上で必要な動作の練習をします。 ・重り負荷 ・弾性包帯による圧迫 ・フレンケル体操 ・立ち上がりや立位時の荷重負荷練習 ・視覚誘導 視床出血後には片麻痺が出て、運動障害と運動失調症状が同時に起こる場合もあるでしょう。 そのため、視床出血後のリハビリの一つとして、免荷式(めんかしき)トレッドミルの機械を使い、歩行のリハビリを行います。 上記の方法は、体を上から吊るしてハーネスで体を支えると、足にかかる体重を調整できて、バランス感覚を鍛える働きかけにつながります。(文献8) 視床出血に関するリハビリについては、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。 まとめ|視床出血による運動失調はリハビリと再生医療の治療法もある 視床は脳内ネットワークの中心で、視床出血が起こると運動失調などの症状が出る場合もあります。 視床出血は後遺症が残ってしまう可能性が高い疾患です。 ただ、当院ではリハビリに再生医療を組み合わせて、脳神経細胞の修復や身体機能の改善への取り組みを行っています。 また、関連する内容として、当院の患者様で視床出血後に左半身の麻痺があり、膝の強直における幹細胞治療の実績もあります。 脳卒中後の後遺症に対しての再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献 文献1 加齢の面からみた脳出血の部位 文献2 脳血管障害による脳室内出血症例の臨床的検討一脳室内出血の重症度評価と転帰についてー 文献3 脳出血部位と症状 (CM Fisher)|秋田大学 大学院医学系研究科 文献4 原著視床出血の高次脳機能障害 文献5 急性期脳出血における摂食・嚥下障害の検討 文献6 運動失調を主徴とした左視床出血の1例 文献7 神経メカニズムから捉える失調症状 文献8 運動失調に対するアプローチ
2023.07.27 -
- 頭部
- 脳卒中
- 脳出血
橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 橋という脳の一部に出血が起こった後には、運動失調という後遺症が残ることがあります。 今回は、橋出血後の運動失調とはどのようなものか、そしてどのようなリハビリプログラムがあるのか解説し、最新治療法の一つである、再生医療の可能性にも触れていきます。 ぜひ参考にしてみてくださいね。 橋出血とは?どのような症状が出るの? 橋出血(きょうしゅっけつ)とは、脳幹という脳の一部分の中の橋で起こる出血のことです。 脳幹は、中脳・橋・延髄に分けられますが、構造や機能は脳幹全体が同じようなものとなっています。橋出血は脳出血の中の約10%で、脳幹出血の中では橋出血が多くみられます。そのため、脳幹出血と橋出血が同じような意味で用いられるようです。 橋は大部分の脳神経の出入口であり、運動や感覚をつかさどる神経が通り、睡眠や覚醒、呼吸運動や循環機能などの自律運動をつかさどっている重要な部分です。 そのため、橋出血が起こると、以下のような重篤な症状が生じることがあります。 1)高度の意識障害 2)高熱 3)両側の瞳孔縮小 4)片側・両側の四肢麻痺、異常反射、知覚障害 5)高血圧 6)呼吸異常 7)眼球運動障害 8)運動失調 運動失調は、小脳の障害で現れることが典型的ですが、橋と小脳が連絡繊維を持っているため、橋出血を起こすと運動失調も生じます。 橋出血による運動失調の症状はどんなものがある? それでは、まずは運動失調の分類について解説し、その後橋出血による運動失調についても説明していきます。 運動失調の症状とは 運動失調とは、運動麻痺はない、または軽度であるにもかかわらず、動作や姿勢保持などの協調運動ができなくなるという状態のことです。 運動失調は、起立・歩行時のふらつきといった症状が代表的なものです。 その他にも、手の細かな動作も障害され、字を書くのが下手になったり、水を満たしたコップを持つと手が震えてこぼしてしまったり、またボタンをかけたり箸を使ったり、食事をすることがスムーズに行えなくなります。 また、むせるようになる、呂律が回らなくなるといった症状も出ます。 運動失調障害の分類 運動失調障害は、障害される部位によって、以下の3つに大きく分けられます。 1)小脳性運動失調 2)感覚性運動失調 3)前庭性運動失調 これらの3つは、以下のような特徴を持ちます。 引用)2 神経メカニズムから捉える失調症状 この中でも、先ほども述べたように、橋の出血でも小脳と橋が神経繊維で連絡をしているため、小脳性運動失調をきたすことがあります。 橋出血後のリハビリプログラムについて 橋出血後に、運動失調障害に対するリハビリプログラムをご紹介します。 フレンケル体操 フレンケル体操は、運動失調に対して古くから行われている治療法です。 反復訓練と、その訓練に集中することを基本としています。 身体の動きを目で見ながら、つまり視覚を使いながらの身体の動きのコントロールをします。 そのコントロールを反復して練習することで、協調運動を再びできるようになることを期待しています。 重り負荷での運動 足関節や手関節、または腰部に重りをつけ、固有感覚入力の強化、つまり感覚を強めると、過剰な運動を抑える力が働き、運動失調が軽減するというものです。 弾性緊縛帯 重り負荷での運動と同様の発想です。 上肢・下肢の近位部を弾性包帯で圧迫し、感覚入力の強化をすることで、上下肢の過剰な運動を抑えられ、運動失調が軽減することを目的としています。 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) これは、筋肉や皮膚、関節などにある感覚の受容体を刺激しながら、体を動かしていくという手技です。 治療者(セラピストなど)が患者の関節を交互に動かし、 患者はその抵抗に打ち勝つように、 その関節を常に特定の位置に保つように指示します。 治療の効果の持続性は短時間ですが、毎日反復して行うことで、機能の回復が期待できるという報告もあります。 橋出血による運動失調についてよくある質問 Q1. 運動失調と麻痺の違いは? A1. 何かの運動をしようとする際に障害があるという状態を運動障害といいます。 運動障害には、「運動麻痺」と「運動失調」があります。 運動麻痺は、筋肉そのものや、筋肉に命令を送る大脳皮質や脊髄・末梢神経の障害によって、筋肉を自分の意思で動かせなくなった状態をさします。 一方、運動失調は、運動に関わる筋肉の動きを調整する機能が失われたため、スムーズな運動が難しくなった状態のことをさすという違いがあります。 Q2. リハビリの効果を高めるための方法はあるの? A2. リハビリは確かに失われた機能を改善する効果が期待できますが、一方で橋出血により死んでしまった脳細胞を再生させることは難しいです。 また、発症から時間が経つにつれて、リハビリの効果は現れにくくなることもあります。 一方、自己脂肪由来幹細胞の投与をすることで、脳神経細胞が修復再生し、運動失調からの回復や、リハビリの効果を高める効果も期待できます。 まとめ・橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 今回は、橋出血による運動失調の特徴やリハビリプログラムなどを解説しました。 急性期のみならず、発症から時間がたっている場合でも、再生医療を組み合わせてリハビリを行うことで、運動失調の改善が期待できます。 運動失調に今お悩みの方や、身近で困っている方がいる場合には、ぜひ一度当院の再生医療のご相談を受けてみてくださいね。 ▼以下もご参考下さい 橋出血とは?症状、原因、治療法を医師が分かりやすく解説 参考文献 脳の機能と構造 「危ないめまい」, 後頭蓋窩の急性脳血管障害 (その1) 2 神経メカニズムから捉える失調症状 症状|(疾患・用語編) 運動失調症|神経内科の主な病気 失調症の リハビリテーション 4 小脳性運動失調のリハビリテーション 医療―体幹・下肢について―
2023.07.24 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
脳幹出血の後遺症|運動失調の特徴とメカニズム 脳幹は意識を保ち、呼吸や循環を調整する役割を果たしています。脳幹出血が起こると、重度の場合は四肢麻痺や呼吸障害・意識障害をきたし、亡くなることもあります。その一方で、一部の方では出血が軽度で済むことがあります。しかし、軽症であっても、日常生活に支障をきたす後遺症を残してしまうことがあります。 脳卒中の後遺症として思い浮かぶものは何でしょうか。一般的には麻痺や感覚の障害、あるいは注意や記憶・遂行能力などにかかわる高次脳機能障害のイメージが強いと思います。 脳幹出血の後遺症でも、顔面神経麻痺や片麻痺(体の左ないし右半身どちらかの麻痺)、感覚障害などをきたします。さらに、「運動失調」に悩まされる方もいます。 今回の記事では、この「運動失調」について、どのような症状が起こるのか、なぜ脳幹出血で起こるのかについても解説していきます。 運動失調とはなにか? 運動失調とは、筋肉同士の連携がうまくいかず、姿勢やバランスを保ったり、動作をスムーズに行ったりすることができない状態を指します。 運動失調は原因により、次のように分けられます。 ・小脳性 小脳は運動のコントロールを行う場所です。協調運動に関与する領域が侵されることで運動失調が起こります。 協調運動とは、動作を行う際に必要な関節・筋肉などを調整しながら活動することです。これができなくなることで、手足の細かい動きの調整ができなくなったり、歩くときにふらついたりなど多彩な症状が出現します。 ・前庭迷路性 バランスをとるための平衡感覚に重要な前庭器官や、そこから情報を伝える神経の障害により起こります。そのため、立ったり歩いたりする際にバランスがとりづらいという症状が目立つようになります。 ・脊髄性 脊髄に障害が起こると、筋肉の伸び縮みの具合や関節の状態についての感覚(深部感覚)が障害されます。その結果、自分の筋肉や関節の状態がうまく把握できず、ふらつきが起こります。一部は視覚情報で補完できるため、目をつぶるとふらつきが強くなり、立っていられなくなるという特徴があります。 ・大脳性 大脳は小脳とともに協調運動に関わります。そのため、小脳性失調と症状が類似しています。 ・その他 末梢神経の障害などによっても運動失調をきたすことがあります。 脳幹出血で運動失調が起こるメカニズムとは 脳幹出血で運動失調が起こるのはなぜでしょうか。 脳幹は小脳の前面にあり、神経線維でつながっています。脳幹出血が起こると小脳との連絡経路に障害が起こります。そのため、脳幹出血では、小脳性失調の症状を認めることがあるのです。 また、脳幹には前庭から情報を受け取る前庭神経核という部分があります。脳幹出血により前庭神経核が障害を受けると、前庭迷路性失調をきたします。 どのような症状が起こるのか 脳幹出血で起こる運動失調では、例えば次のような症状が認められます。 ・体幹失調 体幹のバランスをとることができず、歩くときに足を広く開いて歩くようになります。また手足の動きがバラバラになり、まるで酔っ払っている時のような歩き方になります。体幹失調が強いと、座っている時も状態がぐらぐらと揺れてしまいます。 ・構音失調 話し言葉のリズムが乱れ、音の高さや大きさがバラバラになります。そのため、酔っ払っているときのような呂律の回らない喋り方になります。 ・四肢失調 手足の動きを目的のところで止めることができなくなる測定障害が起こります。結果、目の前に置いてあるものを上手く掴めなくなります。 また、反復拮抗運動障害と言って、素早く反復する動きを繰り返すことが苦手になります。例えば、手首を素早く裏表に返すような動作、「お星様キラキラ」のジェスチャーが上手くできなくなります。 ・眼球失調 目の動きを上手くコントロールできず、ものが二重に見えたり、めまいが起こったりします。 ・企図振戦 振戦とは震えのことです。何かをしようとしたときに手が震えます。特に、目的のものに手が届きそうになったときに震えが強くなります。 ・嚥下障害 ものを飲み込むことは複雑な動作の組み合わせです。運動失調が起こると、噛んだり舌で食べ物を送ったり、喉の筋肉を動かしたりという動きが上手に調整できなくなるとされています。 脳幹出血の運動失調についてよくあるQ&A Q, 運動失調と麻痺の違いは? A, 麻痺とは、医学的には運動麻痺のことを指すことが多いです。脳やそこから伸びる神経の障害により、手や足などの体の部分が自分の意思通りに動かせない状態です。「思ったように力が入らないので動かない」という状況になります。 一方、運動失調とは、運動麻痺がないのにも関わらず、筋肉が協力してうまく働かないことを指します。その結果、姿勢を保ったり、円滑に動作をしたりすることができなくなります。「ふらふらする」「スムーズに動くことができない」という状態です。 脳幹出血では、出血の部位や程度により、この両方がさまざまな程度で起こり得ます。 Q, 運動失調と協調運動障害の違いは? A, 協調運動障害は、運動失調の一つの形と捉えることが多いようです。特に、手足の運動が上手くできないことを協調運動障害と呼ぶことが多いです。 Q, 脳幹出血後の運動失調の治療は? A, 脳幹出血により傷ついてしまった神経を取り替えることはできません。そのため、失われた機能の回復と、残っている機能の維持のためのリハビリテーションが行われます。 リハビリを行う際は、上肢・体幹・下肢など部位ごとに、どのような症状がどの程度あるのかの検査・評価を行い、目標を設定していきます。個々人の目標毎にプログラムを組むため、焦りすぎず、セラピストと相談しながら継続しましょう。 まとめ・脳幹出血の後遺症|運動失調の特徴とメカニズム 脳幹出血後により運動失調が起こると、回復のためには長期的な訓練が必要になります。これまで無意識下にできていた動作が難しくなり、そのままでは日常生活に大きな影響を及ぼすからです。 目の前のコップをとる、まっすぐ歩くなど、これまで何気なく行っていたことができず辛い思いをされる方も多いです。 リハビリでは、失った機能を取り戻したり、残っている機能を伸ばして補完したりする訓練をしていきます。問題なく生活できるようになるまでには時間がかかりますが、少しずつ確実に継続していくことが大切です。 以上、脳幹出血の後遺症で運動失調の特徴とメカニズムについて記載させていただきました。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考下さい 脳幹出血の原因とは?今すぐ見直せる3つの生活習慣で予防を! 参考文献 渡邊裕文. 関西理学. 6:15-19. 2006. 水澤英洋. 日内会誌. 101:669-674.2012. 後藤淳. 関西理学.14:1-9.2014. 望月仁志、宇川義一. Jpn J Rehabil Med 2019;56:88-93 福岡達之、道免和久. Jpn J Rehabil Med 2019;56:105-109
2023.07.20 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
脳幹出血のリハビリプログラムを詳しく解説|早期アプローチの大切さ! 脳幹出血を起こすと、重度の場合は意識障害、呼吸障害、四肢麻痺などをきたします。軽度の出血でも、片麻痺や感覚障害、運動失調、嚥下障害や高次脳機能障害などの後遺症を残します。看護が必要なくなっても、元の生活に戻るまでには長い時間が必要です。少しでも後遺症を軽減し、寝たきり状態を防ぐために、リハビリテーションが重要となります。 リハビリテーションの内容は、発症からの時期により変わってきます。リハビリでは、「急性期」「回復期」「生活期(維持期)」という3つの時期に分けてプログラムを組みます。脳幹出血の具体的なリハビリテーションを、3つのステージ別に見ていきましょう。 急性期;早期からの介入が大切! 急性期とは、脳幹出血が起こって、まだ完全に状況が落ち着いていない時期を指します。発症から概ね2週間〜1ヶ月程度です。治療と併行しながらリハビリを進めていきます。 まず目指すのは、早い段階でベッドから離れる「早期離床」です。脳幹出血をはじめとした脳卒中では、体の状態に問題がなければ、24〜48時間以内にリハビリ介入をする方が、回復が早いとされています。 最初に行うことは、寝返りや、体を起こして座ることです。可能であれば、立ち上がり、補助具で歩くリハビリに進みます。着替えなどの日常生活に直結する動作を行うセルフケア訓練も開始します。 また、脳幹出血の患者さんでは、ものを飲み込む力が落ちる嚥下障害を伴っている方が多いです。肺炎予防のためにも、早くから嚥下の評価と口腔ケアを開始します。 一方で、重度の脳幹出血例では、呼吸や血液循環の障害を認めます。脳の周りにまで出血して、髄液の流れに影響する水頭症になることもあります。状況が落ち着かないと早期離床はできません。この場合はベッド上でできるリハビリを行います。 例えば、関節が固まらないように動かしていく関節可動域訓練などが該当します。 回復期;リハビリが中心の生活! 急性期から脱して体の状態は安定していますが、後遺症が固まりきっていない時期です。失われた機能を回復し、残っている機能を高める訓練をします。 多くの脳卒中患者さんは「回復期リハビリテーション病棟」というところに移ります。リハビリを専門にしている病院や病棟です。 理学療法士や作業療法士・言語聴覚士といったリハビリスタッフが多くいます。1日最大で3時間のリハビリが可能です。施設によっては、休日も含めてほぼ毎日リハビリを行っているところもあります。 一口に脳幹出血といっても、人により後遺症の内容や程度はさまざまです。症状別のリハビリは急性期から少しずつ始まります。回復期病棟ではそれをさらに掘り下げ、一人一人に合った詳細なリハビリプログラムを組んでいきます。ここでは一例を紹介します。 〈症状別のリハビリの例〉 運動麻痺 筋肉や関節の動きを自分の意思通りに動かせるよう、繰り返し訓練します。麻痺は3〜6ヶ月程で回復が止まってしまいます。症状が固定した後でも、麻痺のない部分でカバーしたり、装具や杖などを利用したりして動く訓練も行なっていきます。 運動失調 筋肉同士の協調性が失われ、運動をスムーズに行えない状態を運動失調といいます。 運動失調のリハビリでは、例えば、目で確認しながら何度も動作の練習をします。重りを使い、固有感覚(身体の位置や力の入れ具合を感じる感覚)を刺激して、運動のコントロールを行う訓練も行います。一つの動作をいくつかに区切って行うことも効果的です。 嚥下障害 急性期に引き続き、嚥下障害へのリハビリも続けます。どのくらいの固さのものが食べられるのか、一口量はどのくらいが適切かなど、詳細な評価を行います。飲み込む力を強化する訓練をしながら、少しずつ食事の形態を調整していきます。 構音障害 呂律が回らない、声の大きさのコントロールがつかないなど、喋りづらさ(構音障害)を抱える方が多いです。正しい発音の練習や、話すスピードを調整する訓練によって、コミュニケーションが取りやすいようにしていきます。 綿密なリハビリテーションを続けながら、自宅への退院、社会復帰に向けた支援も行なっていきます。 生活期(維持期);家に帰った後も重要! 実際の生活に戻った上で、訓練を続けていく時期です。活動度を維持・向上させ、可能な範囲で自立した生活ができるように考えていきます。 リハビリができる施設に通ったり、訪問リハを受けたりすることで、体力や機能の維持・向上を図ります。 また、脳幹出血の最大の要因は高血圧です。運動習慣をつけることは、血圧を下げ、再発防止にも役に立ちます。 脳幹出血のリハビリについてよくあるQ&A Q, どうして急性期と回復期で病院(病棟)が変わるのですか? A, できれば同じところでリハビリを続けたいですよね。でも、場所が変わることにはきちんと理由があります。 発症直後に入院する「急性期病院(病棟)」の目的は、体の状態を落ち着かせることです。リハビリのための時間や人手には制約があります。治療がひと段落すれば、よりリハビリに特化した場所に移る方が良いのです。 次に急性期病棟に入院が必要な方にベッドをあけるためにも、状況が落ち着いてくれば行き先の調整を考え始めます。 Q, どのくらいの期間、入院が必要ですか? 麻痺などの回復が一定の段階に達し、日常生活に必要な動作ができるようになれば退院を考えます。どこまでできるようになるかという目標は患者さん毎に異なります。 ただし、回復期リハ病棟の入院は脳卒中の場合は最大で150日(高次脳機能障害がある場合は180日)までと決まっているため、これを超えることはありません。 まとめ・脳幹出血のリハビリプログラムを詳しく解説|早期アプローチの大切さ 脳幹出血後は、早期からアプローチをすることにより、後遺症を軽減し、もとの生活に近い状態に戻ることを目指していきます。とても時間がかかりますが、しっかりとリハビリテーションを続けていきましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下も参考にされませんか 脳幹出血後の後遺症(麻痺や障害)に「最新の治療法」という選択肢! 参考文献 標準リハビリテーション医学第4版【電子版】 医学書院. 2023年.東京 日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン 2021. 後藤淳. 関西理学.14:1-9.2014. 福岡達之、道免和久. Jpn J Rehabil Med. 56:105-109. 2019. 藤島一紘. ブレインナーシング 39(2): 320-323. 2023.
2023.07.17 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
脳幹出血は、命に関わる深刻な病気です。脳幹には生命維持に関わる機能が集中しているため、ここで出血が起こると最悪の場合、突然死を招く場合もあります。 本記事では、脳幹出血で突然死する可能性について解説しています。早期発見につながる前兆サインも紹介しているので、健康管理に力を入れたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血は突然死を起こす可能性がある【余命が短いケースも】 脳幹出血とは脳の脳幹部分に出血を引き起こす脳出血の一種です。 脳幹は人間の生命活動をつかさどる中枢で、呼吸・心拍のコントロールや視覚・聴覚の処理、ホルモン分泌などを担当しています。 この部位で出血が起きると、四肢麻痺や意識障害など深刻な後遺症を残す可能性があり、最悪の場合は突然死を招き余命が短くなるケースもあります。 一方で、出血量が少ない場合は、症状が軽く予後が良好なケースもあります。重症化を防ぐためにも、以降で紹介する脳幹出血の前兆サインを覚えて、早期発見に努めましょう。 以下の記事では、脳幹出血の後遺症について解説しています。後遺症の種類や症状を詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 なお、後遺症の治療には人間の自然治癒力を活用した「再生医療」が効果的です。再生医療により身体の機能(後遺症)が回復した症例は数多く報告されています。具体的な症例が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血で突然死のリスク警戒となる3つの前兆サイン 脳幹出血は、突然死のリスクを伴う怖い病気です。早期発見のためには、以下3つの特徴的な前兆サインを知っておくのが大切です。 ・めまい ・いびき ・視覚の異常 順番に見ていきましょう。 めまい めまいは、脳幹出血の症状の1つです。そのため、普段と異なる激しいめまいを感じた際は、脳幹出血の疑いがあります。 めまいが起こる原因は、脳幹内の体全体のバランスを調整する機能が出血により破綻するためです。(文献1) 脳幹出血によるめまいは、同時に目や手足の麻痺、顔のしびれなどを含む複数の症状が現れるケースが多いです。複数の症状が同時に現れた場合は、脳幹出血である可能性がより疑われるため、医療機関を受診して検査してもらうと良いでしょう。 早期の対応で命を守れる可能性が高まります。 いびき 脳幹出血における前兆のサインとして、いびきが大きくなることがあります。脳幹は呼吸や血圧を調整する機能があり、その機能に問題が生じると、大きないびきが発生するのです。 以下のように、いびきに変化が見られたら体からの警告サインかもしれません。 ・いつもより大きないびきをかく ・段いびきをかかないのに急に大きないびきをかく 「こんないびきはおかしい…」と感じたら、脳幹出血の疑いを視野に入れて医療機関の受診を検討してみましょう。 視覚の異常 脳幹は視覚情報を処理する役割も担っているため、出血が起きると視覚に関わる症状が現れることがあります。 たとえば以下のような症状です。 ・視野が狭くなる ・視力の低下する ・ものが二重に見える ・光がいつもよりまぶしく見える 視覚の異常は、目の問題だと思ってしまうケースも多いため、脳の異常に気づくのが遅れる場合もあります。早期に対応できるよう、視覚異常も脳幹出血の症状の1つであると覚えておきましょう。 脳幹出血に有効は2つの治療法 ここでは、脳幹出血に有効な治療法を2つ紹介します。 ・保存療法 ・再生医療 治療内容をそれぞれ詳しく見ていきましょう。 保存療法 脳幹出血では、保存療法が中心となります。 まず優先されるのは、血圧を下げて安定させることです。さらなる出血を防いで、脳へのダメージをできるだけ少なくするためです。入院中は安静にしながら、点滴を使って血圧を下げる薬を投与します。 ほかの部分の脳出血では、たまった血液(血腫)を取り除く手術をおこなう場合があります。しかし、脳幹出血の場合、手術は基本的に選択されません。 脳幹は、生命維持に関わる機能が集中しており、手術には大きなリスクがあるためです。また、脳幹はとても狭い空間にあるため、手術自体が困難です。 そのため脳幹出血では、血圧の管理や脳のむくみを抑える保存療法が一般的な治療法となります。 再生医療 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 再生医療では、麻痺や意識障害といった脳幹出血の後遺症の回復を早めたり、脳卒中の再発を予防したりする効果が期待されています。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング まとめ|脳幹出血における突然死のリスクを把握して前兆サインを見逃さないようにしよう 脳幹出血は命にも影響を及ぼす怖い病気ですが、早期発見・早期治療で重症化のリスクを軽減できる可能性があります。 早期発見の鍵は、前兆サインの理解です。本記事で紹介した3つのサインを心に留めておき、普段と違う症状を感じたら、早めに病院への受診をご検討ください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血に関するよくある質問 最後に脳幹出血に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血を起こしやすい人はいますか? 脳幹出血は、高血圧が主な原因となる病気です。また、血管の病気や脳血管奇形をもつ人にも起こる可能性があります。 また、以下のような生活習慣も脳出血のリスクを高める要因です。。 ・喫煙 ・過度なアルコール ・運動不足 ・ストレス ・肥満 ・高脂血症 生活習慣の見直しと改善をおこなえば、脳幹出血の予防につながります。 脳幹出血のリハビリテーションにはどんなものがありますか? 脳幹出血のリハビリは、どのような症状が出ているかによって患者さんごとにプランが立てられます。大きくは、以下3つにわけられます。 プラン 内容 理学療法 ・筋力の強化やバランス能力の改善を目指す ・歩行練習・軽めの筋力トレーニングをおこなう 作業療法 ・食事や着替え、入浴といった日常生活動作の獲得を目指す ・指先や手を動かす訓練をおこなう 言語療法 ・言語障害や嚥下障害の改善を目指す ・発声発語訓練・舌の体操をおこなう 精神的なサポートや心理療法も大事なリハビリです。個々の患者さんの病態にあわせて、いろいろな角度からリハビリをおこなっていきます。 以下の記事では、脳幹出血のリハビリプログラムを解説しています。リハビリの進め方を 詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら余命はどれくらいですか? 脳幹出血の発症後における、公的データは見つかりませんでした。 ただし、脳幹出血の予後を調べたとある研究結果によると、70歳以上の死亡率が79%、70歳未満の死亡率が57%となっています。(文献2) 脳幹は生命の維持を司る部位のため、発症すれば生命に関わる危険性があると覚えておきましょう。 以下の記事では、脳幹出血の余命について詳しく解説しています。脳幹出血の予後への理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 【参考文献】 文献1:https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051111092.pdf 文献2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/30/1/30_1_38/_pdf
2023.07.13