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「肩に不快感や痛みを感じる」 「もしかしたら、肩関節唇損傷かもしれない」 野球やバレーボールなどの肩を酷使するスポーツでは、肩関節唇損傷が多く発生します。肩関節唇は関節を安定させる軟骨組織であり、これが損傷すると肩の不安定感や引っかかり感が生じます。放置すれば競技復帰が遅れるため、医療機関での早期診断が重要です。 本記事では、現役医師が肩関節唇損傷テストの種類と診断の方法について詳しく解説します。記事の最後には、肩関節唇損傷テストに関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肩関節唇損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷テストとは 目的 内容 損傷部位の推定 特定の動作で症状や反応を確認、前方・後方・上方など、どの部位の関節唇に異常があるか予測 画像検査の必要性の判断 徒手検査の反応をもとにMRIなどの精密画像検査が必要かどうかを判断し、不要な検査を回避 症状の再現・確認 患者が普段感じる引っかかり感や不安定感を診察室で再現、医師が症状を客観的に評価 肩関節唇損傷テストは、肩関節内の軟骨組織「関節唇」の損傷を確認するために行う徒手検査です。医師が肩をさまざまな角度に動かし、痛みや違和感の出方から損傷の部位や程度を推定します。 検査時は患者の反応を見ながら慎重に行い、強い不快感があればすぐに中止します。注射や器具を使用しないため身体的負担は少なく、検査時間も数分程度です。一時的に違和感が強まる場合はありますが、損傷の悪化はほとんどありません。 診断は問診・徒手検査・画像検査などを組み合わせて行い、必要に応じて関節鏡検査で最終確認します。検査前は、症状の経過、痛みが出る動作、過去の外傷歴、現在のスポーツ活動レベルを医師に伝えることが大切です。 肩関節唇損傷テストの種類 テストの種類 詳細 O'Brien(オブライエン)テスト 肩を前方90°挙上、内旋させて抵抗を加えた際の反応評価、上方関節唇損傷推定 Crank(クランク)テスト 肩を90°外転・肘90°屈曲し、肩関節に軸圧をかけて内外旋時のクリック音や違和感を確認、上方関節唇損傷推定 Speed(スピード)テスト 肩を90°前方挙上・肘伸展・前腕回外で抵抗を加え、肩前方の違和感有無を確認、上方関節唇損傷推定 Apprehension(不安定性)テスト 肩を90°外転し外旋運動で不安感や抜けそうな感じの有無を判断、前方不安定性や関節唇損傷推定 その他の補助的なテスト リフトオフテストやベリープレステストなど、腱板・他軟部組織の状態確認、複合的判断材料として活用 肩関節唇損傷には複数の徒手検査が用いられます。代表的なものがO'Brien(オブライエン)テスト、Crank test(クランク)テスト、Speed(スピード)テスト、Apprehension(不安定性)テストです。 これらは肩を特定の角度に動かし、関節内で音や不快感が生じるかを確認する検査です。テストによって関節唇の損傷部位(上方・前方・後方)や関節の安定性を評価できます。複数のテストを組み合わせることで診断精度が高まり、より的確な治療計画の立案が可能になります。 O'Brien(オブライエン)テスト 手順 内容 1.姿勢の確認 座位または立位で実施。腕を前方へ90度挙げ、やや内側(水平内転10〜15度)に誘導。肘は伸ばしたままの状態 2.肩の内旋 手のひらを下向きに回し、腕を内側へ寄せた姿勢を保持。拳を下向きにした状態で準備 3.抵抗動作(内旋位) 医師が腕を下方向に押し、患者がそれに抵抗して押し返す動作。痛みや違和感の有無を確認 4.抵抗動作(外旋位) 同じ姿勢で手のひらを上向き(親指を上に)にし、再度下方向への抵抗動作を実施。痛みの変化や症状の差を評価 (文献1) O'Brien(オブライエン)テストは、肩関節唇(SLAP損傷)を確認するための代表的な徒手検査です。腕を前方へ90度挙げ、内旋位(手のひら下向き)と外旋位(手のひら上向き)で抵抗動作を行います。 内旋位で痛みが出て、外旋位で軽減する場合は陽性と判断され、肩の奥の痛みは関節唇損傷、肩上部の痛みはAC関節障害が疑われます。O'Brienテストは有用ですが単独では確定診断にならず、他の徒手検査やMRI、問診と併せた総合的な評価が必要です。 Crank test(クランクテスト) 手順 内容 1.姿勢の確認 仰向けまたは座位で実施。リラックスした姿勢で肩を安定させる準備 2.肩の位置調整 医師が肩を肩甲骨面方向に約160度持ち上げ、肘を90度に曲げた状態で保持 3.軸方向への圧迫 上腕(肩から肘の部分)に軸方向の力を加え、関節を軽く押しつけるように圧をかける動作 4.回旋動作による確認 肩を内旋(手を体側へ)・外旋(外側へ)と回し、関節唇のひっかかり感や痛みの有無を確認 Crank(クランク)テストは、肩関節唇損傷の有無を確認するために行う代表的な徒手検査です。患者が仰向けまたは座位で検査を行い、腕を回旋した際にクリック音や痛みが生じた場合、関節唇の損傷や断裂が疑われます。 Crankテストは、感度91%・特異度93%と高い精度が報告されています。(文献2) ただし、すべての症例に当てはまるわけではなく、O'BrienテストやMRIなど他の検査を併用し、総合的に評価することが重要です。検査は痛みを無理に誘発しないよう、十分な問診と状態把握のもと慎重に実施します。 Speed(スピード)テスト 手順 内容 1.姿勢の確認 立位または座位で実施。肘を伸ばし、前腕を回外(手のひらを上向き)にした状態を保持 2.抵抗動作の実施 医師が腕を前方(前方挙上)に挙げさせ、その状態で下方向に抵抗をかけ、患者がそれに抗して腕を支える動作 3.痛みの確認 抵抗動作中に肩の前方や上腕二頭筋付近に痛みや違和感が出るかを確認 (文献3)(文献4) Speed(スピード)テストは、肩関節唇損傷や上腕二頭筋腱の炎症・障害を確認するために行う徒手検査です。患者は肘を伸ばし、手のひらを上に向けて腕を前方に挙げ、医師が下方向に抵抗を加えます。 この際、上腕二頭筋腱部に痛みが生じる場合は陽性とされ、上腕二頭筋腱炎や関節唇損傷の可能性が考えられます。Speedテストは感度が高く、異常の有無を見極める際に有用ですが、特異度は低く単独での診断は困難です。 そのため、O'Brienテスト、Crank test(クランクテスト)、Yergasonテスト、MRIなどと併用して総合的に評価します。検査中に強い痛みが出た場合は無理をせず中止し、症状に応じて慎重に判断します。 Apprehension(不安定性)テスト 手順 内容 1.姿勢の確認 仰向けまたは安定した座位で実施。必要に応じて肩甲骨を支えるように位置を調整 2.検査肢位 検査側の腕を外転90度、肘屈曲90度の位置に保持 3.外旋動作の実施 手のひらが上・外側を向くように外旋を加える動作。医師が上腕を支えながら慎重に実施 4.不安感の確認 肩が抜けそうな感覚、不安感、違和感の有無を確認。これがアプレヘンション(apprehension=不安感)の指標 5.追加操作の確認 必要に応じて前方への軽い圧迫や、後方への戻し動作(リロケーション操作)を行い、不安感や痛みの変化を確認。肩の安定性を評価 (文献5) (文献6) 肩関節の前方安定性を評価する徒手検査で、肩が抜けそうな不安感を確認します。肩を90度外転・外旋させた際に脱臼への恐怖感や逃避反応があれば陽性と判断され、前下方関節唇損傷や靭帯・関節包の損傷が疑われます。 特異度が高く前方不安定性の検出に有用ですが、感度は低く他の検査やMRIとの併用が必要です。筋緊張や他の肩疾患の影響で結果が誤ることもあり、総合的な評価が欠かせません。 その他の補助的なテスト テスト名 目的 実施法 Yergason(ヤーガソン)テスト 上腕二頭筋長頭腱の炎症・亜脱臼の有無を確認する検査 肘を90度に曲げ、手のひらを下向きに構えた状態で、検査者が前腕を上向きに回す抵抗を加え、痛みや異常な動きを確認 Anterior Slide(アンテリア・スライド)テスト 肩関節唇上方部の損傷を確認する補助的検査 両手を腰に当てて立位または座位で構え、検査者が肩を固定し、肘を前上方へ押して抵抗を確認 (文献7)(文献8)(文献9)(文献10) Yergason(ヤーガソン)テストとAnterior Slide(アンテリア・スライド)テストはいずれも、肩関節唇損傷や上腕二頭筋長頭腱の異常を確認する補助的検査です。 Yergasonテストでは、肘を90度に曲げた状態で前腕を回外させ、肩前方の溝に痛みやクリックが生じれば陽性とされ、腱炎や腱の不安定性が疑われます。 Anterior Slideテストは、両手を腰に当てた状態で上腕骨を前上方に押し、痛みや引っかかり感が誘発されればSLAP病変の可能性が示唆されます。 これらの検査は特異度が比較的高いものの感度は低く、単独では確定診断に至りません。最終的な診断は、他の徒手検査やMRI、関節鏡による評価を併用して行います。 肩関節唇損傷テスト(徒手検査)で陽性の場合に行う画像検査 画像検査 詳細 MRI・MR関節造影(MRA)検査 軟部組織の詳細描写、関節唇損傷や炎症の有無の確認、造影剤使用による診断精度の向上 X線・CT検査 骨構造の確認、脱臼の有無の評価、骨の変形や骨棘の検出 超音波(エコー)検査 リアルタイムでの腱板や関節周囲軟部組織の状態観察、非侵襲で即時評価可能 肩関節唇損傷の評価は複数の画像検査が欠かせません。MRIやMR関節造影(MRA)で軟部組織を詳細に描出し、関節唇損傷や炎症の有無を高精度に確認します。X線やCT検査では骨構造や脱臼の有無、骨の変形や骨棘を評価します。 さらに、超音波(エコー)検査では、腱板や関節周囲の軟部組織をリアルタイムで観察でき、非侵襲的に即時評価が可能です。これらの検査結果を総合的に判断し、治療方針を決定します。 MRI・MR関節造影(MRA)検査|関節唇の状態を確認 画像検査 詳細 MRI検査(非造影) 軟部組織(関節唇、腱板、靭帯など)の描出。軽度損傷は見落とす可能性あり MR関節造影(MRA) 関節内に造影剤を注入し微細損傷を明瞭化。造影剤使用による診断精度向上。注射に対する抵抗感やリスクの確認が必要 (文献11)(文献12) MRI・MRA検査では、関節唇の損傷や変性、靱帯・腱の炎症などを詳細に評価します。造影を用いることで微細な損傷を明瞭に描出できます。検査中は身体を動かさないことが大切です。 また、造影剤使用時は腎機能やアレルギー歴の申告が必要です。最終的な診断は画像所見に徒手検査や症状を加えて総合的に行います。 X線・CT検査|骨構造や脱臼の有無を確認 画像検査 詳細 X線検査(レントゲン) 骨の形状(骨折・変形・骨棘)や関節のずれ・脱臼を確認。軟部組織は写らないが迅速・低コスト CT検査(断層撮影) 骨の詳細な断層評価。骨変化や骨性損傷を詳細に把握。造影CTで関節唇の間接的評価も可能 (文献13)(文献14) 徒手検査で肩関節唇損傷が疑われた場合、骨の状態や関節の位置関係を詳しく確認するには、X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うことがあります。X線検査は、骨折や脱臼、骨変形、骨棘などを確認する基本的な検査で、短時間で実施できる利点があります。ただし、軟部組織は描出できません。 CT検査は骨の詳細構造を立体的に評価でき、骨性損傷や手術前の形状把握に有用です。さらに、関節内に造影剤を注入して撮影する関節造影CT(アルトログラフィー)では、関節唇や靱帯の損傷を間接的に確認でき、より精密な診断が可能です。 超音波(エコー)検査|腱板や軟部組織の状態を観察 項目 内容 目的・役割 肩の腱板(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋など)、滑液包、周囲軟部組織の断裂・損傷・炎症の観察。動作時の組織変化の確認。注射治療時の針位置確認ガイドとしての利用 特徴・利点 リアルタイム観察による動作中の変化の確認。放射線被曝なしで体への負担が少ない。短時間で実施可能な迅速性・簡便性。診療所レベルでも実施可能な汎用性 限界・注意点 肩関節唇は深部構造のため、損傷の直接的確認が困難。検者の技術に依存し、観察角度や体形で視認性に差が出る。MRIやMRAなど他検査との併用が推奨 (文献15)(文献16) 超音波(エコー)検査は、肩の腱板(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋など)や滑液包、周囲の軟部組織の断裂・損傷・炎症をリアルタイムで観察できる検査です。動作時の組織の変化も確認でき、注射治療時の針位置確認にも用いられます。 放射線被曝がなく体への負担が少ない点が特徴で、短時間で実施できる手軽さも利点です。ただし、関節唇のような深部構造の評価は難しく、体形によって精度に差が出るため、MRIなどの併用が推奨されます。 肩関節唇損傷テストで陽性の場合に行う治療法 治療法 詳細 保存療法 安静・物理療法・リハビリによる筋力回復と関節安定化の促進。投球や腕の酷使動作の制限による自然治癒のサポート 薬物療法 鎮痛薬や抗炎症薬の内服・外用による痛みや炎症の軽減。症状が強い場合はステロイド注射を併用する場合あり 手術療法 関節鏡を用いた関節唇の縫合・修復や、断裂部の再固定による安定性の回復。保存療法で改善しない中等度〜重度損傷が適応 再生医療 自己血液由来のPRP(多血小板血漿)や幹細胞を利用した組織修復の促進。自然治癒力を高め、手術を回避または回復を補助する目的 肩関節唇損傷で陽性と判断された場合、症状の程度や生活背景に応じて治療方針を決定します。軽度の損傷は保存療法で回復を目指し、高度な損傷や不安定性を伴う場合は手術を検討します。 近年は再生医療による組織修復も選択肢のひとつです。しかし、実施できる医療機関は限られており、適応は医師と相談して判断します。 以下の記事では、肩関節唇損傷の治療法を詳しく解説しています。 肩関節唇損傷の治し方|効果的な治療法やリハビリ方法について解説【医師監修】 保存療法 区分 目的 内容 注意点 安静・運動制限 炎症増悪防止 投球・オーバーヘッド動作・重い荷物の持ち上げ制限 長期完全安静による拘縮予防。炎症軽減後は軽度可動域訓練 初期段階(炎症軽減期・可動域回復期) 炎症軽減・関節柔軟維持 ゆるやかな関節可動域訓練・ストレッチ・リラクゼーション 無理のない範囲での動作継続 中間期(筋力再構築期) 筋力増強・肩関節安定 腱板筋群・肩甲帯筋群・体幹筋群の強化。姿勢・連動性改善 急な負荷増加の回避 後期(競技復帰準備期) 実践動作獲得・疲労耐性強化 段階的投球動作練習・技術修正・負荷管理 過負荷・痛み出現時の中止 再発予防・動作修正期 再発防止・肩負荷軽減 投球フォーム・姿勢制御の改善トレーニング 継続的なフォーム確認とセルフケア (文献17) 保存療法は、安静・運動制限・理学療法を組み合わせ、損傷部位の自然治癒を促す治療法です。初期には炎症を抑えつつ可動域を保ち、肩周囲の筋力と安定性を回復させます。 軽症から中等症では、適切なリハビリと段階的な運動調整により症状改善と再発予防が期待でき、競技復帰も可能です。 以下の記事では、肩関節唇損傷のリハビリ方法について詳しく解説しています。 薬物療法 薬剤・方法 目的・効果 特徴・注意点 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 痛み・炎症の軽減。関節可動の確保と拘縮予防 内服による不快感や動かしにくさの緩和。リハビリ実施の補助 ヒアルロン酸ナトリウム注射 関節潤滑性の改善と痛みの軽減、組織修復の促進 潤滑液補充による動きの滑らかさ向上。非手術的治療の一環 ステロイド注射 強力な炎症抑制。症状の短期的改善 NSAIDsで効果不十分な場合に使用。過度使用による筋力低下・軟骨障害に注意 薬物療法全体の目的 痛みや炎症の軽減。リハビリ促進。保存療法の補助的役割 症状改善を図り、手術回避および運動再開を支援 (文献18) 肩関節唇損傷に対する薬物療法は、症状の緩和と炎症の抑制を目的とした保存的治療です。主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用し、痛みや腫れを抑えることで、日常生活の質を保ちつつリハビリを円滑に進めます。 薬物療法は炎症を抑えることで理学療法の効果を高め、運動機能の回復を補助します。ただし、長期服用には副作用のリスクがあるため、医師の指示に従った適切な管理が必要です。 薬物療法は補助的手段であり、運動療法や姿勢改善との併用で効果が高まります。 手術療法 肩関節唇損傷の手術療法は、損傷部を修復し肩の安定性と機能の回復を目的とします。主に関節鏡を用いた低侵襲の関節唇修復術が行われます。 損傷の程度に応じて手術法を選択します。術後は安静とリハビリを経て、日常生活は約1カ月、スポーツは3〜6カ月で復帰を目指すのが治療の流れです。 術後は無理な動作や早期の負荷を避けながら、医師の指導下でリハビリを行うことが大切です。 再生医療 再生医療は、患者自身の細胞を利用して損傷した組織の修復を促す治療法です。関節唇や周囲組織の自然治癒を促進し、炎症を抑えながら回復を促進します。症状の軽減に効果が期待でき、場合によっては手術を回避できる可能性もあります。 ただし、すべての症例で効果が得られるわけではないため、医師による適切な診断と治療計画が不可欠です。 以下では、再生医療について詳しく解説しています。 肩関節唇損傷テストの内容を理解したうえで改善を目指そう 肩関節唇損傷は放置すると慢性化しやすい疾患ですが、適切な診断と治療で改善が期待できます。徒手検査や画像検査で原因を特定し、リハビリや薬物療法を組み合わせることで早期回復が可能です。自己判断で放置せず、医師の指導のもとで計画的に治療を行うことが重要です。 肩関節唇損傷についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、損傷組織の修復を促す再生医療も提案しています。従来の治療では難しかった部位へのアプローチが可能な治療法です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 肩関節唇損傷テストに関するよくある質問 肩関節唇損傷のテストは自分でできますか? 肩関節唇損傷の検査(O'Brienテストなど)は、肩に特定の負荷をかけて評価する徒手検査であり、専門的な知識と技術が必要です。 自己流で行うと症状を悪化させる恐れがあります。違和感や引っかかり感がある場合は、無理に動かさず整形外科を受診してください。 肩関節唇損傷の治療を受けるにはテストを受けなければいけませんか? 肩関節唇損傷の治療には、医療機関での徒手検査やMRIなどの画像検査による正確な診断が必要です。 検査によって損傷の有無や程度を評価し、保存療法や手術療法など治療方針を決定します。自己判断で治療を進めることは避け、医師の診察を受けることが重要です。 肩関節唇損傷テストの結果で復帰時期はわかりますか? 肩関節唇損傷の復帰時期は、損傷の程度や治療法、年齢、体力、リハビリの進行度などにより異なります。 一般的には、保存療法で約3〜6カ月、手術後は日常生活に約1カ月、スポーツ復帰に3〜6カ月が目安です。復帰の判断は医師が総合的に行い、焦らず段階的にリハビリを進めます。 肩関節唇損傷テストで陽性と判断された場合は手術が必要ですか? 肩関節唇損傷テストが陽性でも、まずは安静やリハビリなどの保存療法で改善を図ります。 改善が見られない場合や損傷が重度の場合に手術を検討し、最終的な治療方針は医師が総合的に判断します。 野球やバレーボールの選手に肩関節唇損傷が起こりやすい理由は? 野球やバレーボールなどでは、投球やスパイクなど腕を頭上に大きく動かす動作の反復により、肩関節唇に過度な負荷がかかり、損傷や剥離が生じやすくなります。 さらに、オーバーユースや不適切なフォームも損傷リスクを高めるため、適切な休息とフォーム改善、筋力強化による予防が必要です。 以下の記事では、野球選手の肩関節唇損傷について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) O'Briens Test|Physiopedia (文献2) A prospective evaluation of a new physical examination in predicting glenoid labral tears|PubMed (文献3) Speed's Test | Biceps Pathology Assessment | SLAP Lesion|PHYSIOTUTORS (文献4) How do you do the Shoulder Speed Test? (文献5) Apprehension Test|Physiopedia (文献6) Anterior Shoulder Instability|National Library of Medicine (文献7) Yergason's Test|Cleveland Clinic (文献8) Special Physical Examination Tests for Superior Labrum Anterior-Posterior Shoulder Tears: An Examination of Clinical Usefulness|PMC PubMed Central (文献9) Anterior Slide Test | SLAP Lesions|PHYSIOTUTORS (文献10) Diagnostic Accuracy of History and Physical Examination of Superior Labrum Anterior-Posterior Lesions|PMC PubMed Central (文献11) スポーツ肩における関節唇損傷のMRアルトロ所見|肩関節21巻 第3号409-4 (文献12) 肩関節唇断裂|MSDマニュアル プロフェッショナル版 (文献13) X線CT|関節が痛い (文献14) 関節造影検査(アルトログラフィー)|慶應義塾大学病院 KOMPAS (文献15) 超音波医学|J-STAGE (文献16) 肩徒手検査の客観性 超音波画像観察による整形外科的徒手検査の検討 (文献17) 上方関節唇損傷を合併した非外傷性腱板断裂患者の肩関節機能の特徴|J-STAGE (文献18) National Athletic Trainers’Associationポジションステイトメント:オーバーヘッドアスリートにおける上方肩関節唇損傷の評価、治療、予後、および復帰基準|NATA
2026.02.02 -
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「投球時に肩に違和感がある」 「スイング動作で痛みを感じる」 野球選手に多く見られる肩関節唇損傷は、放置するとプレーに支障をきたすおそれがあります。痛みがなくても不安定感が続く場合、復帰時期の判断は難しくなります。多くの選手が「手術を受けるべきか」「リハビリで復帰できるか」で悩みますが、治療法は損傷の程度や競技レベルによって異なります。 本記事では、現役医師が肩関節唇損傷を発症しやすい理由と手術や復帰目安について詳しく解説します。 記事の最後には、肩関節唇損傷で悩む野球選手からよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肩関節唇損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください 野球選手が肩関節唇損傷を発症しやすい理由 理由 詳細 投球動作・フォームの乱れ 運動連鎖の崩れによる肩関節への過剰負荷 外傷・脱臼の既往 関節の不安定化による再損傷リスクの増大 上腕二頭筋腱への牽引ストレス 投球時の牽引力集中による関節唇への慢性刺激 肩関節唇損傷は、投球やスイングなどで肩を酷使する野球選手に多くみられる障害です。肩関節は可動域が広い一方で構造的に不安定なため、繰り返しの投球動作によって関節内に摩耗や牽引ストレスが蓄積しやすい特徴があります。 とくに投手では、フォームの乱れや筋力バランスの崩れが関節唇への負担をさらに増大させます。加えて、外傷や脱臼の既往がある場合には関節の安定性が低下し、損傷リスクが一層高まります。これらの要因が重なることで、プレー中に肩の違和感や引っかかり感を訴える選手が少なくありません。 投球動作・フォームの乱れ 理由 状況・特徴 影響 運動連鎖の破綻 下半身や体幹の動きが使えず、肩だけで投げる状態 肩関節への負担集中、関節唇への過度なストレス 肘下がりの投球フォーム 肘が極端に下がった投球姿勢 上方関節唇へのせん断力増大、損傷リスク上昇 身体の開きの早さ 上半身が早く打者側に向く動作 肩関節唇損傷リスクの増加、制球の不安定 リリースポイントのばらつき ボールを離す位置の不安定さ 肩関節への負荷不均一、特定部位へのストレス集中 疲労時のフォーム崩れ 連投や試合後半での下半身・体幹機能低下 下肢・体幹が使えず肩主導となる代償動作 柔軟性不足 肩・肩甲骨・胸椎・股関節などの可動域制限 無理な代償動作、関節唇への負担増大 成長期の身体変化 身長や重心の変化によるフォーム不適合 成長に伴う体格変化にフォームが追随できず負担が増加 投球フォームの乱れは、肩関節へ過剰な回旋力や牽引力を生じさせ、関節唇に微細な損傷を蓄積させる原因となります。リリース時の肘下がりや体幹の回転不足は、上腕骨頭が前方へずれやすくなり、関節唇への圧迫ストレスを増大させます。 また、肩甲骨周囲筋の筋力低下や柔軟性の不足も肩の安定性を損なう要因です。これらのフォームの乱れは一過性ではなく、疲労や過度なトレーニングによって慢性化しやすいため、投球動作の分析とリハビリによるフォーム修正が欠かせません。 外傷・脱臼の既往 内容 詳細 再発リスクの上昇 損傷部位の完全回復が難しく、再負荷による再損傷や症状悪化の可能性 二次的な変化や二次損傷の恐れ 関節の不安定性や機能低下による腱板・靱帯への過剰負担、他組織損傷の誘発 外傷や脱臼の既往によるリスク増大 外傷や脱臼による構造的ダメージによる安定性低下、再発のリスク上昇 慢性的な肩痛や可動域制限の継続 関節機能の低下や可動域制限による日常生活・競技動作への支障 (文献1) 肩の脱臼や亜脱臼を経験した野球選手では、関節唇や関節包などの支持組織が損傷し、肩の安定性が低下していることがあります。 そのままプレーを続けると、再脱臼や関節唇の更なる損傷を招くため、外傷歴のある選手は痛みがなくても医療機関で画像検査を受け、関節の状態を確認することが大切です。 肩関節唇損傷の既往は再発や二次損傷のリスクを高めるため、適切な治療と定期的なフォローアップが必要です。予防には肩の柔軟性維持と筋力強化を心がけ、異変を感じた場合は早めに医師へ相談しましょう。 上腕二頭筋腱への牽引ストレス 肩関節唇の上方(SLAP領域)には上腕二頭筋腱が付着しており、この腱に加わる繰り返しの牽引ストレスが関節唇損傷の主な原因とされています。 投球動作では、コッキング期やフォロースルー期に上腕二頭筋腱と関節唇に強い張力が生じ、関節唇の剥離や裂傷を引き起こすことがあります。 とくに肩関節唇損傷は、この付着部への過度な牽引力が関与する代表的な損傷です。上腕二頭筋腱と関節唇は肩関節の安定を支える一体の構造として機能しているため、腱への負荷は関節唇損傷の進行や再発にも影響します。そのため、適切なフォーム指導と肩周囲筋のバランス強化が欠かせません。 肩関節唇損傷を発症した野球選手の復帰率・時期の目安 研究(発表年) 対象・治療法 復帰率(RTS) 成績レベル・復帰レベル(RPP) 復帰までの期間 主な特徴・補足 Paul et al.(2025) プロ野球選手(SLAP修復) 投手82.4%、野手80.6% 投打ともに成績低下なし 約9〜11カ月(投手280日、野手327日) 手術後も高い復帰率。パフォーマンスの維持も確認 Lack et al.(総説) SLAP修復・上腕二頭筋手術 投手40〜80%、野手76.3〜91.3% - - 投手よりも野手の復帰率が高い傾向。治療法により差あり Fedoriw et al.(2014) プロ野球選手(手術/非手術比較) 手術:投手48%、野手85% 非手術:投手40% 手術:投手7%、野手54% 非手術:投手22% - 投手は復帰しても元のレベルに戻る割合が低い傾向 Castle et al.(2023) MLB選手(肩関節唇修復) 投手48%、野手85% 投手7%前後 - 投手は成績復帰が難しい傾向。手術後も再発・成績低下例あり 非手術リハビリ(総説) 保存的リハビリ治療 全体53.7%、完遂者78% 全体42.6%、完遂者72% 約6カ月以内 手術なしでも一定の回復が可能。軽症例では有効 他レビュー(複数報告) オーバーヘッド動作選手全般 約50〜60%(とくに投手で低下) - - 投手では成功率がやや低く、復帰まで時間を要する傾向 (文献2)(文献3)(文献4)(文献5)(文献6)(文献7)(文献8) 肩関節唇損傷を発症した野球選手の競技復帰率(RTS)は、全体でおよそ70〜85%と報告されています。なかでも投手は40〜80%と幅があるのが特徴です。これらは、投球動作に特有の肩への負担が影響していると考えられます。 一方、野手では75〜90%と比較的高い復帰率が示されています。復帰までの期間は平均9〜11カ月(約280〜330日)とされ、リハビリを含めた長期的な治療計画が必要です。 保存療法を選択した場合、約6カ月以内に復帰できる例もありますが、再発や再手術のリスクも残るため、段階的な復帰と医師の指導のもとでのリハビリが必要です。 以下の記事では肩関節唇損傷のテストについて詳しく解説しています。 野球選手の肩関節唇損傷における手術が必要なケース 手術が必要なケース 詳細 保存療法で効果が乏しい場合 リハビリや薬物治療を続けても痛みや可動域制限が改善しない状態 損傷範囲が広く不安定な場合 肩関節唇が大きく裂け、関節の安定性が失われている状態 高い競技レベルと早期復帰を目指す場合 プロ・競技選手として高負荷の投球動作を必要とするケース 合併損傷を伴う場合 腱板損傷や上腕二頭筋腱の損傷を同時に認める状態 肩関節唇損傷では、保存療法を行っても痛みや可動域制限が改善しない場合や、損傷範囲が広く関節の安定性が失われている場合に手術が検討されます。 とくにプロ選手など高い競技レベルでの早期復帰を目指すケースでは、機能回復を優先して手術が選択されることがあります。また、腱板損傷や上腕二頭筋腱損傷などを合併している場合は、関節機能の維持や再発防止のために外科的治療が有効です。 保存療法で効果が乏しい場合 保存療法で効果が乏しい理由 詳細 損傷度が大きすぎる・進行しているため 関節唇が大きく断裂・剥離し、周囲組織も損傷している状態 負荷が肩にかかるため 投球動作によるねじれ・牽引・摩擦などの過大ストレス 肩に他の異常が一緒にあることが多いため 回旋筋腱板損傷や関節包のゆるみ(弛緩)、インピンジメントの併発 診断や治療方針が不確か・リハビリが十分でなかった可能性 原因特定の誤りやリハビリ不足による改善不良 予後を悪くする因子がもともとあるため 過去の損傷歴、可動域制限、筋力低下、年齢・競技レベルの影響 痛みや制限が長く続くと身体が変わるため 筋萎縮や拘縮による可動性低下・機能不全 野球選手には特別なレベルが求められる 全力投球・実戦復帰レベルまでの回復困難 (文献9)(文献10)(文献11) 保存療法では関節唇自体を修復することは難しく、周囲の筋力を強化して肩を支える治療となります。そのため、リハビリを続けても肩の不安定感や投球時の違和感が改善しない場合は、手術を検討します。 投球時の違和感が続き、MRIで関節唇の剥離が確認された場合、手術による修復が有効です。 損傷範囲が広く不安定な場合 手術が必要な理由 詳細 関節唇が大きく剥がれていると肩関節の安定性が著しく低下する 関節唇の断裂・剥離による関節不安定性と脱臼リスクの増大 繰り返す脱臼や亜脱臼を防止するため 関節包や靱帯への再損傷防止のための解剖学的修復 重度の損傷では自然治癒が望めず症状の慢性化を防げない 広範な断裂による慢性疼痛・機能障害の持続 スポーツ特性と年齢を考慮した早期の手術適応 若年投手における肩の安定性維持と競技力確保 関節唇の損傷範囲が広く、肩関節の安定性が低下している場合は、手術による修復が推奨されます。 損傷が大きいと関節唇が本来の役割を果たせず、不安定感や脱臼を繰り返す原因となります。保存療法では改善が難しく、自然治癒も期待できません。そのため、関節鏡視下で関節唇を縫合し、安定化を図ることが重要です。 とくに投手など肩への負荷が大きい選手では、早期の手術により関節の安定性を回復し、再発防止と競技復帰を目指します。手術による修復は、肩の正常な機能を取り戻し、長期的なパフォーマンス維持にもつながります。 高い競技レベルと早期復帰を目指す場合 手術が必要になる理由(求められるレベルが非常に厳しいため) 詳細 競技レベルで求められる肩機能の高さ 投球速度・回転数・マウンドでの安定性を維持する肩機能の確保 日常生活レベルでは不十分な回復目標 全力投球レベルへの回復に必要な構造補強・修復 耐久性・反復ストレスへの対応 シーズン中の反復投球による過大負荷への抵抗性維持 回復許容度・リスク許容度の低さ 微細な不安定性や違和感が成績低下につながる競技特性 構造的限界・不可逆的変化の進行 軟部組織の変性・線維化による柔軟性・安定性の低下 診断・治療の精度の重要性 わずかなずれやアンバランスがパフォーマンスに影響する特性 合併障害・複雑病変の併発 回旋筋損傷やインピンジメントなどの多部位損傷 手術後の復帰率・成功率の限界 SLAP修復後の復帰率50〜70%、エリート復帰率7%前後の報告 (文献12)(文献13) プロや大学レベルなど高負荷な投球を求められる選手では、機能回復を優先して手術を選択する場合があります。 ただし、SLAP修復後の投球動作を伴う選手の復帰率はおおむね50〜70%と報告されており、全員が元のレベルまで戻れるわけではありません。(文献12) とくにエリートやプロレベルでの復帰・成績維持は難しく、エリート水準まで回復できた選手は約7%にとどまるとの報告もあります。(文献13) そのため、術後は安定した可動域の獲得と競技特性に応じた段階的リハビリが重要です。 合併損傷を伴う場合 手術が必要な理由(合併損傷を伴う場合) 詳細 損傷が関節唇単独でなく複合的であるため症状が重い 腱板断裂・靱帯損傷・関節内遊離体などを伴う複合損傷 肩の安定性や可動性に対する影響が大きいため 不安定性や可動域制限の進行による関節変形リスク スポーツ復帰のためには包括的な修復が必要 合併損傷も含めた機能回復による競技パフォーマンス維持 保存療法では症状の改善や再発予防が不十分 痛みや不安定感の残存による再発・機能低下のリスク (文献14) 腱板損傷や上腕二頭筋腱損傷などの合併損傷を伴う肩関節唇損傷では、関節の安定性が大きく低下し、保存療法での改善は困難です。そのため、関節唇の修復と同時に腱板や靱帯の損傷を関節鏡下で包括的に修復し、機能回復と再発予防を図ります。とくに損傷範囲が広い場合や脱臼を繰り返す場合は、手術による安定化が不可欠です。 また、高い競技レベルでの早期復帰を目指す選手では、肩にかかる負荷が大きく、不安定感や疼痛が残るとパフォーマンスに直結して影響するため、より積極的な外科的介入が求められます。適切な手術と段階的なリハビリにより、安定性と可動域が確保された肩を再構築し、早期の競技復帰を支援します。 肩関節唇損傷に合併しやすい腱板断裂に対しては、再生医療が治療法の選択肢となるケースがあります。肩の腱板断裂に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 【野球選手向け】肩関節唇損傷のリハビリ方法 リハビリ方法 詳細 保護期|術後0週目〜6週目 肩関節の安静保持と痛み・炎症のコントロール、装具による可動域制限 中等度保護期|術後7週目〜12週目 他動運動から自動運動への移行と軽度の可動域拡大、肩周囲筋の再教育 機能回復期|術後13週目〜20週目 筋力強化と肩甲骨・体幹連動性の改善、日常動作での安定性向上 高度強化期|術後21〜26週 投球動作に近い負荷トレーニングと肩周囲筋群の持久力強化 競技復帰期|術後6カ月〜9カ月 段階的な投球プログラム再開とフォーム修正、実戦復帰に向けた最終調整 (文献14) 肩関節唇損傷の術後リハビリは、肩の安定性と機能を段階的に回復させることが目的です。術後0〜6週は安静と炎症の抑制、7〜12週で可動域の拡大、13〜20週で筋力と体幹の連動性向上を図ります。 21〜26週には投球動作に近い負荷を加え、6〜9カ月を目安に投球を再開し、フォーム修正と再発予防を行いながら実戦復帰を目指します。 以下の記事では、肩関節唇損傷のリハビリ方法について詳しく解説しています。 保護期|術後0週目〜6週目 フェーズ I(保護期) 詳細 この時期の目的 関節唇や縫合部の保護、炎症・腫れ・痛みの抑制、可動域の維持 行う運動・ケア スリング着用による肩の保護、手首・肘・手の軽運動、肩の受動運動(前方挙上90°・外旋30〜40°)、肩甲骨の可動運動、冷却と軽圧迫による炎症管理 避けること 肩の自力運動や抵抗運動、物を持ち上げる・押す・引く動作、上腕二頭筋に負担をかける動作、無理な外旋・後方引き・外転動作 次のステップに進む目安 肩の前方挙上90°・外旋30〜40°の可動確保、痛みや腫れの軽減 (文献14) 術後0〜6週の保護期は、修復した関節唇や縫合部を守りながら炎症や痛みを抑えることが目的です。この時期はスリングを着用し、肩を安静に保ちます。手首や肘の軽い運動、セラピストによる他動運動で可動域を維持し、肩甲骨の動きを保つことが重要です。 一方で、肩を自力で動かす動作、物を持ち上げる動作、上腕二頭筋に負担をかける動作は避ける必要があります。痛みや腫れが落ち着き、肩を前方に90°、外旋30〜40°まで動かせるようになれば、次の段階へ進みます。 中等度保護期|術後7週目〜12週目 フェーズ II(中等度保護期) 詳細 この時期の目的 肩関節可動域の拡大、筋力回復への準備、肩甲骨と体幹の安定性強化 行う運動・ケア 受動運動から補助運動・自動運動への移行、ゴムバンドを用いた軽い抵抗トレーニング、肩甲骨・体幹安定化トレーニング、リズミック安定化による感覚向上 避けること 外旋・外転方向への強い負荷、外転+外旋動作、全力投球やスピードをつけた動作 次のステップに進む目安 正常範囲に近い可動域の回復、痛みのない軽負荷運動の実施、肩甲骨・ローテーターカフの安定性改善 (文献14) 術後7〜12週の中等度保護期は、肩の可動域を広げながら筋力回復の準備を進める時期です。受動運動から補助付き運動、自力での運動へと段階的に移行し、ゴムバンドを用いた軽い抵抗トレーニングで肩周囲の筋肉を鍛えます。さらに、肩甲骨や体幹の安定性を高めるトレーニングを行い、投球動作に必要なバランス感覚を養います。 一方で、外旋や外転など強い負荷をかける動作や全力投球は避け、痛みのない範囲で可動域を回復させることが重要です。 機能回復期|術後13週目〜20週目 フェーズ III(機能回復期) 詳細 この時期の目的 軽い投球動作の導入、全方向への肩の安定化、スポーツ動作への移行準備 行う運動・ケア 全方向への自動運動(AROM)の拡大、ゴムバンドやウエイトによる段階的抵抗トレーニング、肩甲骨・体幹の持続トレーニング、プライオメトリック運動の導入、投球フォームの模倣と軽いキャッチボール準備 避けること 全力投球や強負荷のオーバーヘッド動作、痛みや違和感のある無理な運動 次のステップに進む目安 ほぼ正常な可動域の回復、抵抗負荷での無痛運動、十分な筋力・安定性の獲得による投球動作再開 (文献14) 術後13〜20週の機能回復期は、スポーツ動作への移行を目的とした重要な段階です。肩の可動域を広げながら、抵抗トレーニングで筋力を強化し、肩甲骨や体幹の安定性を高めつつ軽い投球やフォーム練習で実戦復帰に備えます。 この時期は全力投球を避け、痛みや違和感があれば運動を中止し、次の強化期への準備とします。 高度強化期|術後21〜26週 フェーズ IV(高度強化期) 詳細 この時期の目的 肩の筋力・瞬発力の強化、動作スピードへの適応、競技動作への移行 行う運動・ケア 片腕でのプライオメトリック運動、肩回旋筋のスピードトレーニング、投球フォームの確認と補正、段階的なインターバル投球プログラムの実施 避けること 全力投球への急な移行、痛みや違和感を無視した無理な投球 次のステップに進む目安 筋力と安定性の左右差の改善、内旋・外旋筋力バランスの回復、無痛での投球動作の実施、インターバル投球プログラムの完遂 (文献14) 術後21〜26週の高度強化期は、肩の筋力と瞬発力を高め、実戦に近い動作を取り戻す重要な段階です。メディシンボールやゴムバンドを使った片腕のプライオメトリック運動や、肩の回旋筋を素早く動かすトレーニングで動作スピードを高めます。 投球フォームを修正しながら段階的にインターバル投球を進め、スピードと強度を回復させます。全力投球を控えて筋力バランスと安定性を整えることが競技復帰の鍵です。 競技復帰期|術後6カ月〜9カ月 フェーズ V(競技復帰期) 詳細 この時期の目的 全力投球の再開、実戦復帰、肩の筋力・可動域・安定性の維持、再発予防の習慣化 行う運動・ケア マウンドでの全力投球、野手の実戦動作練習、打者を想定した投球や守備・送球練習、筋力と安定性を保つ維持トレーニング(ウエイト・バンド運動) 避けること 痛みや不安定感のある状態での全力投球、急激な練習量・強度の増加、登板間隔を詰めすぎる過負荷 復帰の判断基準 健側と同等の可動域・筋力、段階的投球での無痛、医師・理学療法士・コーチの総合判断による競技参加許可 (文献14) 術後6〜9カ月以降の競技復帰期は、全力投球を再開し実戦に戻る最終段階です。投手はマウンドでの投球、野手は守備や送球を含む実戦動作を取り入れ、実戦感覚を取り戻します。同時に、筋力・可動域・安定性を維持するためのトレーニングを継続し、再発を防ぐことが重要です。 ただし、痛みや不安定感がある場合は無理をせず、練習量や強度を段階的に調整します。肩の状態が健側と同等に回復し、医療チームとコーチが復帰を認めた段階で、競技復帰となります。 【野球選手向け】肩関節唇損傷の再発予防方法 再発予防方法 詳細 筋力・柔軟性の維持と身体機能の向上 肩関節周囲筋・体幹・下半身の強化による動的安定化と柔軟性保持、神経筋協調性・固有受容感覚の向上による再損傷防止 投球量の管理とフォームの改善 投球回数・登板間隔の適正化と、肩への負担を抑える正しいフォーム習得による関節唇へのストレス軽減 段階的復帰と身体の変化への早期対応 リハビリ進行に応じた段階的復帰計画の実施と、痛み・違和感・疲労など身体サインへの早期対応による再発防止 一度損傷した肩関節唇は再発のリスクが高く、復帰後も継続的なケアが重要です。肩や体幹、下半身の筋力と柔軟性を維持し、全身の連動性を高めることで再発を防ぎます。 また、投球量の管理やフォームの改善により、肩への負担を最小限に抑えることが大切です。リハビリ後も段階的な負荷調整と身体の変化への早期対応を心がけ、日常的なメンテナンスで長く競技を続けられる身体を保ちましょう。 筋力・柔軟性の維持と身体機能の向上 再発予防のポイント 詳細 肩関節周囲筋による動的安定化 回旋筋腱板の強化による上腕骨頭の安定保持と関節唇への負担軽減 肩甲骨周囲筋による土台の安定化 前鋸筋・僧帽筋などの機能向上による肩甲骨の安定化と力の伝達効率化 体幹・下半身筋力による全身連動 投球動作におけるエネルギー伝達と肩への負担分散 筋力バランスの維持 外旋・内旋筋のバランス(理想比3:4)による肩前方不安定性の防止 柔軟性による負荷分散 適切な可動域確保による肩関節唇へのストレス軽減 肩甲胸郭関節と胸椎の可動性 肩甲骨と胸郭の滑らかな連動による肩の可動効率向上 下半身・体幹の柔軟性維持 投球時の運動連鎖の改善と上半身への負担軽減 左右差の調整 利き腕・非利き腕の柔軟性バランス維持による再損傷リスクの軽減 固有受容感覚の改善 不安定面でのトレーニングによる肩位置感覚の再教育と制御力向上 神経筋協調性の向上 投球連動動作での正確な筋活動タイミングの再構築 疲労耐性の向上 筋持久力向上によるフォーム維持と過負荷防止 継続的トレーニングの実践 年間を通じた筋力・柔軟性・身体機能の維持管理と再発予防 肩関節唇損傷の再発を防ぐには、筋力・柔軟性・身体機能の維持が欠かせません。とくに回旋筋腱板や肩甲骨周囲筋を中心とした肩の安定性の確保、体幹や下半身の筋力による全身の連動性向上が重要です。 また、可動域の維持と左右差の調整で負担を分散し、固有受容感覚や神経筋協調性を高めることで再発リスクを軽減します。疲労耐性の向上と継続的なトレーニングにより、肩の安定性と競技パフォーマンスを長期的に守ることが大切です。 投球量の管理とフォームの改善 投球量の管理とフォームの改善は、肩関節唇損傷の再発予防に極めて重要です。まず、過剰使用(オーバーユース)ストレスの抑制が基本であり、投球回数や強度が増えるほど関節唇への微小損傷リスクが高まります。 過負荷を避けるため、球数・登板間隔の管理は再発予防の基盤です。たとえば、1試合75球超・シーズン600球超で肩肘障害リスクが上昇するとの報告があります。(文献15) また、ASMIの推奨でも日次の球数制限と休息日の設定が示されています。(文献16) 加えて、動作バイオメカニクスの健全性維持も重要です。肩関節の軌道異常や軸偏位は関節唇(ラブラム)損傷と関連しており、正しいフォームを習得することで可動性と安定性のバランスを保ち、肩への過剰なストレスを防止できます。(文献17) 段階的復帰と身体の変化への早期対応 肩関節唇損傷からの復帰では、治癒期間を守りながら段階的に負荷を高めることが、再発防止のために大切です。術後は関節唇・縫合部が脆弱なため、過負荷を避けつつ段階的リハビリで関節包・腱板などを徐々に強化し、身体の適応時間を確保します。 実際、SLAP修復後のリハビリは複数フェーズにわかれ、軽い抵抗運動から反復運動、プライオメトリクス、投球動作へと進行します。(文献18) また、投球導入時期にストレスを軽減するのも重要です。いきなり全力投球を行うと肩や肘に過大な負担がかかります。 ARTHROSCOPIC SLAP REPAIR CLINICAL PRACTICE GUIDELINEの資料では、術後12〜16週で軽い投球を開始し、6〜8か月で競技復帰を目指す段階的プロセスが推奨されています。(文献19) 肩関節唇損傷でお悩みの野球選手は当院へご相談ください 肩関節唇損傷は、早期の診断と段階的なリハビリテーションにより、野球選手でも競技復帰が十分に期待できる疾患です。ただし、復帰までの期間は損傷の程度や選手個々の競技レベルによって異なります。 治療やリハビリには時間を要しますが、焦らず段階的に進めることが重要です。諦めずに継続することで、競技への復帰を目指せます。 改善が難しい肩関節唇損傷についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、肩関節唇損傷に対して再生医療を用いた治療もご提案しています。再生医療は、損傷した組織の修復を促すことで、従来の治療では難しかった箇所へのアプローチが期待できる治療法です。選手の状態に応じて適応を慎重に判断します。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 肩関節唇損傷で悩む野球選手からよくある質問 復帰する際のリスクや再手術率はどのくらいですか? 肩関節唇(SLAP)損傷修復後の競技復帰率(RTS:Return to Sport)は、およそ60〜80%と報告されています。(文献12) たとえば、あるシステマティックレビューでは69.6%の選手が競技に復帰したとされています。(文献12) 別のシステマティックレビューでは、再手術率については、SLAP修復後で3〜15%です。(文献20) また、別の報告ではSLAP修復の再手術率は約12%であり、上腕二頭筋腱固定術(BT)では約6%と、より低い傾向が示されています。(文献21) なお、これらの数値は再発率ではなく、再手術が必要となった症例の割合を示しています。復帰後に以前と同等のパフォーマンスを維持できるかは個人差があり、術後のリハビリや肩への負担管理が不可欠です。 中学生・高校生でも手術が必要になりますか? 中学生や高校生などの思春期年代でも、肩関節唇(SLAP)損傷に対して手術が行われるケースがあります。18歳未満の患者1,349例を調査した研究では、約83.8%がSLAP修復手術を受けていました。(文献22) ただし、若年者ではまずリハビリなどの保存療法を優先し、改善がみられない場合に手術を検討するのが一般的です。手術を行った例では、競技復帰率や症状改善が良好だったとの報告もあります。(文献23) 肩関節唇損傷を経験したプロ野球選手は誰ですか? 肩関節唇損傷は、プロ野球選手の間でも発症が報告されています。発症が報告されているのは以下の選手です。 谷岡竜平(元読売ジャイアンツ投手) 福原忍(元阪神タイガース投手) 由規(元東京ヤクルトスワローズ投手) 小久保裕紀(元福岡ダイエーホークス、元ソフトバンクホークス内野手) 斎藤佑樹(元北海道日本ハムファイターズ投手) 肩関節唇損傷は引退に至る例もあるため、競技レベルを問わず適切な治療が欠かせません。 参考文献 (文献1) 投球障害肩のリハビリテーション治療|Jpn J Rehabil Med 2018 (文献2) Return-to-sport and performance outcomes after isolated superior labrum anterior to posterior (SLAP) repair in professional baseball players|PubMed (文献3) Biceps Tenodesis and SLAP Repair Show Similar Outcomes in Overhead Throwing Athletes With Baseball Pitchers Exhibiting Worse Rates of Return to Sport: A Systematic Review|Arthseopy (文献4) Return to play after treatment of superior labral tears in professional baseball players|PubMed (文献5) High Return to Play Rate and Diminished Career Longevity are Seen Following Arthroscopic Shoulder Labral Repair in Major League Baseball Players|Original Article (文献6) Return to Play Following Non-Surgical Management of Superior Labrum Anterior-Posterior Tears: A Systematic Review|ResearchGate (文献7) SLAP Tears in the Throwing Shoulder: A Review of the Current Concepts in Management and Outcomes|ResearchGate (文献8) Return to Sport After Surgery for Throwing Athletes with SLAP Tears|Justin T. Smith, MD, FAANA, FAAOS (文献9) SLAP Lesions: An Update on Recognition and Treatment|MOVEMENT SCIENCE MEDIA JOSPT (文献10) Type II SLAP Lesions in Overhead Athletes: Why the High Failure Rate?|AANA (文献11) Predictive factors associated with failure of nonoperative treatment of superior labrum anterior-posterior tears|ScienseDirect (文献12) Return to Sport After Arthroscopic Superior Labral Anterior-Posterior Repair: A Systematic Review|PMC PubMed Central (文献13) Return to Sport After ArthroscoEditorial Commentary: Outcomes After SLAP Repair and Biceps Tenodesis Are Unpredictable for Throwing Athletes With SLAP Lesions|Arthtscopy (文献14) POST-OP MANAGEMENT OF SLAP REPAIR & BICEPS TENODESIS/TENOTOMY (文献15) Baseball Pitching Biomechanics in Relation to Injury Risk and Performance|PMC PubMed Central (文献16) Updated April 2013|ASMI (文献17) Disabled Throwing Shoulder: 2021 Update: Part 2—Pathomechanics and Treatment|Arthtscopy (文献18) POST-OP MANAGEMENT OF SLAP REPAIR & BICEPS TENODESIS/TENOTOMY (文献19) ARTHROSCOPIC SLAP REPAIR CLINICAL PRACTICE GUIDELINE (文献20) Lower Reoperation and Higher Return-to-Sport Rates After Biceps Tenodesis Versus SLAP Repair in Young Patients: A Systematic Review|PMC PubMed Central (文献21) Repair versus biceps tenodesis for the slap tears: A systematic review|Sage Journals Home (文献22) SLAP TEARS IN THE PEDIATRIC PATIENT: WHO IS TREATING THEM AND WHERE?|PMC PubMed Central (文献23) Return to Play in Adolescent Baseball Players After SLAP Repair|PMC PubMed Central
2026.02.02 -
- 肩関節、その他疾患
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「肩の痛みが続いている」「腕を上げたときに引っかかる感じがする」といった悩みを抱えている方は、肩関節唇損傷の可能性があります。肩関節唇損傷は、肩の安定性を保つために重要な「関節唇」が損傷することで、日常生活やスポーツ動作に支障をきたす疾患です。放置すると悪化し、脱臼や慢性痛につながるため注意が必要です。 今回は、肩関節唇損傷の症状や原因、治し方などをわかりやすく解説します。リハビリ期間と復帰の目安についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷とは 肩関節唇損傷とは、肩関節の安定性を保つ重要な組織である「関節唇」が損傷した状態のことです。 関節唇は肩の受け皿を補強して関節の安定性を保つ組織で、スポーツでの強い腕の振りや反復する動作によって傷つきやすい部位です。 とくに野球やバレーボール、テニスといった腕を頭上に大きく振り上げるオーバーヘッド動作を繰り返す競技では負担が蓄積しやすく、肩関節唇損傷の発生が多いことで知られています。 肩関節唇損傷の症状 肩関節唇損傷の主な症状は、以下のとおりです。 肩の痛み 肩の不安定感 可動域の制限 など とくに腕を振り上げる動作や、背中側に手を回す動作で痛みが強くなる点が特徴です。 また、肩を動かしたときに「引っかかる感じがする」「肩が抜けそうで不安」といった違和感を覚えるケースも少なくありません。ほかにも、動作時に音が鳴ったり、力が入りにくくなったりすることもあります。 なお、これらの症状が続く場合、放置すると悪化することもあるため、早めに医療機関を受診して診断を受けることが大切です。 肩関節唇損傷の原因 肩関節唇損傷は、スポーツによる過度な負担や外傷によって引き起こされます。とくに野球やバレーボール、テニスなどのオーバーヘッド動作を繰り返す競技では、腕を大きく振り上げるたびに肩関節へねじれや牽引の力が加わり、関節唇が徐々に摩耗して損傷しやすくなります。 一方で、転倒して手をついたり相手と衝突したりする際に急激な外力が加わって、関節唇が一気に傷つくことも原因の一つです。また、肩の脱臼を起こした際に関節唇が剝がれるように損傷するケースもあり、これが反復性脱臼につながる場合もあります。 このように、繰り返しの負荷や突発的な外力などが肩関節唇損傷の主な原因となっています。 肩関節唇損傷のテスト方法 肩関節唇損傷が疑われる場合、肩を動かして痛みの出方を確認する徒手検査を実施するのが一般的です。肩関節唇損傷の徒手検査には以下のようなテスト方法があります。徒手検査や問診、画像検査を組み合わせて診断し、必要に応じて関節鏡で最終確認します。 テストの種類 概要 O'Brien(オブライエン)テスト 肩を90°前方挙上・内旋させた状態で抵抗を加え、痛みの有無を確認 上方関節唇損傷推定 Crank(クランク)テスト 肩を90°外転・肘を90°屈曲した状態で肩関節に軸圧をかけ、内外旋時のクリック音や違和感を確認 上方関節唇損傷推定 Speed(スピード)テスト 肩を90°前方挙上・肘伸展・前腕回外した状態で抵抗を加え、関節唇や上腕二頭筋腱の痛みを確認 上方関節唇損傷推定 Apprehension(不安定性)テスト 肩を90°外旋・外転した状態での不安定感や脱臼感を評価する 関節唇損傷推定 なお、複数のテストを併用することで診断の精度が向上し、より適切な治療方針を立てることが可能です。各検査の具体的な方法や特徴については、こちらの記事で詳しく紹介しています。 肩関節唇損傷の治し方 肩関節唇損傷の治療法は、損傷の程度や症状の強さ、患者の生活スタイルやスポーツ活動レベルによって異なります。まずは保存療法で炎症や痛みを抑えつつ機能回復を目指し、必要に応じて薬物療法や手術療法を検討するのが一般的です。 ここでは、肩関節唇損傷の代表的な治療法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 保存療法 保存療法は、安静や運動制限、理学療法を組み合わせて損傷した関節唇の自然治癒を促す方法です。初期は炎症を抑えることを優先し、安静の確保やアイシングで肩への負担を最小限にします。また、可動域が狭くならないよう、無理のない範囲で軽いストレッチも行うことがポイントです。 痛みが落ち着いてきたら、肩周囲の筋肉を鍛えるトレーニングや、肩甲骨の動きを改善するエクササイズを取り入れ、徐々に肩の安定性を高めていきます。損傷が比較的軽度であれば保存療法のみで症状が改善し、手術を回避できる可能性があります。 薬物療法 薬物療法は、痛みや炎症を抑えてリハビリを円滑に進める保存的治療の一つです。 一般的にはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が用いられ、動作時の痛みを抑えることで、リハビリやトレーニングの効果を高められます。また、炎症が強い場合にはヒアルロン酸注射やステロイド注射を併用した治療が行われるケースもあります。 ただし、薬物療法はあくまで痛みや炎症を抑える対症療法であり、関節唇そのものを修復するものではありません。そのため、多くの場合はリハビリやほかの治療と組み合わせて実施します。 手術療法 手術療法は、損傷部を修復して肩の安定性と機能を回復させる治療法です。関節唇の損傷が大きい場合や、競技復帰を目指すスポーツ選手などの場合は、関節鏡手術による修復が選択される場合があります。 関節鏡手術は小さな傷口からカメラと器具を挿入して行う低侵襲手術で、損傷した関節唇を縫合し、肩の安定性を回復させます。術後は肩を一定期間固定して安静を保ち、段階的にリハビリを実施します。完全復帰までには数カ月を要しますが、スポーツ活動を再開したい方にとって有効な選択肢です。 再生医療 肩関節唇損傷の治療法として、従来の治療で十分な改善が見られないケースでは、再生医療が新たな選択肢となりつつあります。主にPRP療法(多血小板血漿注射)や幹細胞治療など、自身の細胞や成分を利用して損傷部位の修復を促す方法が代表的です。 再生医療は、手術せずに肩関節唇損傷を治したい方や早期のスポーツ復帰を目指す方の治療を後押しする治療法です。ただし、医療機関によって実施状況が異なるため、治療を希望する際は医師への相談が不可欠です。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。肩関節唇損傷の治療法についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷のリハビリ方法 肩関節唇損傷のリハビリは、以下のように3段階で進めるのが基本です。(文献1) 1.炎症管理 痛みの軽減と可動域の維持 2.可動域拡大 可動域の改善と筋力の強化 3.動作練習 競技動作の練習 手術後の初期は安静を保ち、癒着防止のための軽い運動からリハビリを開始します。1〜2カ月で可動域と筋力の改善を図り、3カ月以降は競技動作の再習得に取り組みます。なお、肩関節唇損傷のリハビリは必ず医師や理学療法士の指導下で進めることが重要です。 肩関節唇損傷のリハビリ期間と復帰の目安 肩関節唇損傷からの回復期間は、損傷の程度や治療内容によって大きく変わります。 手術後の目安としては、日常生活への復帰まで約1カ月、スポーツや激しい運動への復帰には3〜6カ月必要とされています。軽度の損傷で保存療法が中心の場合は比較的早く回復しやすい一方、手術をする場合は一定期間の固定や段階的なリハビリが必須となり、復帰までに時間を要するのが一般的です。 また、筋力や可動域の回復度、痛みの有無によってリハビリの進度も変わるため、自己判断で負荷を増やすことは避けましょう。医師や理学療法士の指導に従って段階的に運動量を調整しながら無理のない復帰を目指すことが、結果として早期復帰につながります。 なお、肩関節唇損傷の再発予防に効果的なセルフケアについて知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。 関連記事:肩が痛いのは病気のサイン?がんの可能性や注意すべき症状を解説 肩関節唇損傷から早期復帰を目指すためには適切な治療法を選択しよう 肩関節唇損傷から早期復帰を目指すためには、早期診断と適切な治療法の選択が欠かせません。軽度であれば保存療法で改善が見込めますが、症状が強い場合や競技復帰を目指す場合は手術療法や再生医療が選択肢となります。 また、肩の安定性を回復させるためには、治療と並行して段階的なリハビリに取り組むことが重要です。自身の症状や治療目的に合わせて適切な方法を選び、無理のないペースで回復を目指しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷に関するよくある質問 野球やバレーボールの選手が肩関節唇損傷になりやすいのはなぜですか? 野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツでは、腕を高く振り上げる動作を繰り返すことにより肩関節にねじれや牽引のストレスがかかるため、肩関節唇損傷につながりやすいと考えられます。 こうしたストレスが積み重なると、関節唇が摩耗して微細な損傷が生じやすくなり、結果として肩関節唇損傷につながるリスクが高まります。 肩関節唇損傷を放置するとどのようなリスクがありますか? 肩関節唇損傷を放置すると、肩の不安定感が強まり、脱臼や再損傷を繰り返す可能性が高まるため注意が必要です。また、痛みが慢性化すると肩の可動域が狭くなり、衣服の着脱や荷物の持ち上げといった日常動作にも支障をきたす可能性があります。 肩関節唇損傷を放置すると競技復帰が難しくなるケースもあるため、早期に診断を受け、適切な治療を行うことが重要です。 肩関節唇損傷は手術しなくても治りますか? 軽度の肩関節唇損傷であれば、安静や理学療法などの保存的治療で痛みや機能の改善が見込めます。ただし、損傷した関節唇そのものが自然に元通りに修復されることはありません。 日常生活レベルの動作で問題がなければ保存療法で対応できますが、競技への完全復帰を目指す場合や肩の不安定感が続く場合は、手術療法が選択肢になります。 肩関節唇損傷のときにやってはいけないことはありますか? 肩関節唇損傷を発症した場合、痛みをこらえて肩を無理に動かしたり、自己判断で筋トレや投球を再開したりするのは避けましょう。自己判断で負荷をかけると炎症や損傷を悪化させる可能性があるためです。必ず医師や理学療法士の指示に従い、段階的にリハビリを進めることが重要です。 参考文献 文献1 投球障害肩のリハビリテーション治療|日本リハビリテーション医学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/55/6/55_55.495/_pdf
2026.02.02 -
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「肩や首がこって痛い」 「肩甲骨はがしが肩こりに良いと聞くけど本当?」 「自分でもできる?」 肩のこりや痛みでお悩みの方の中には、肩甲骨はがしに興味を持たれている方もいらっしゃることでしょう。肩甲骨はがしは骨をはがすものではなく、肩甲骨周囲の筋肉にアプローチするものです。 正しいやり方で行えばこりの軽減や姿勢の変化などの効果も期待できますが、効果には限界があり、リスクも存在します。 本記事では肩甲骨はがしのやり方や効果、リスクを中心に解説します。 肩こりに悩まれている方の参考になりますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肩のこりや痛みでお悩みの方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 肩甲骨はがしとは 肩甲骨はがしは骨をはがす施術ではなく、肩甲骨周囲にある硬くなった筋肉をほぐして動かしやすくするアプローチです。肩関節の柔軟性を向上させるものでもあります。 肩甲骨の動きは首や肩、背中の筋肉と連動しており、これらの部分が緊張していると動きがぎごちなくなります。 具体的な症状は主に以下のとおりです。 肩こり 背中の張り 腕の上げにくさ 肩こりの程度が強い場合、頭痛や吐き気を伴う場合もあります。 肩甲骨が硬くなりやすい原因 肩甲骨は、首や肩、背中の筋肉と連動して動く構造です。 しかし、デスクワークやスマートフォン操作などで長時間同じ姿勢が続くと、周囲の筋肉の緊張や血行不良、疲労などが原因で硬くなってしまいます。 その他の原因としてあげられるものは、主に以下のとおりです。 長時間のデスクワークやスマートフォンの操作 猫背や巻き肩など肩に負担がかかる姿勢 運動不足(肩や背中を動かす機会が少ない) ストレス 冷え 加齢による筋柔軟性の低下 ただし、日常の姿勢や体の使い方を見直すことで、肩甲骨の動きが改善する可能性もあります。 以下の記事では、肩甲骨が動かない原因および放置のリスクについて解説しています。あわせてご覧ください。 肩甲骨はがしの限界について 肩甲骨はがしは、すべての肩や背中の不調に効果があるとは限りません。 肩や背中の不調は、筋肉の緊張だけでなく、関節や神経の疾患、姿勢の影響、ストレスなど、複数の要因が関わっています。(文献1) 肩甲骨はがしは筋肉由来のこりには適していますが、それ以外の原因では効果が得られないこともあります。 「肩こりは、肩甲骨はがしで必ず良くなる」と過信しないことが大切です。 以下の記事では、肩のこりや痛みに関係する病気やけがについて解説しています。あわせてご覧ください。 【始める前にチェック】肩甲骨はがしを実施する際の注意点 肩甲骨はがしは気持ちよく動かせる範囲で行い、痛みを我慢して続ける方法は避けましょう。 強い痛みを伴うストレッチや無理な動きは筋肉や腱に負担をかけ、症状の悪化につながる可能性があります。 主な注意点を以下に示しました。 反動をつけず、ゆっくり動かす 呼吸を止めないで行う 動きや痛みに左右差がある場合、無理に両方を同じ角度まで動かさない 夜間および安静時にも痛みやしびれがある場合は、自己流で続けず医療機関受診を検討しましょう。 座ってできる肩甲骨はがしのやり方 座ったまま行う肩甲骨はがしは、日常生活の合間にも取り入れやすい方法です。簡単に行える方法を2種類ご紹介します。 【方法1】 背筋を伸ばして椅子に座る 両肘を曲げて肩の高さまで上げる 両肘をゆっくり後ろに引き、肩甲骨を寄せる 【方法2】 背筋を伸ばして椅子に座る 両手の指先を肩にのせる 円を描くように肩を前後に回す いずれの場合も「肩甲骨を寄せる、もしくは開く」を意識すると、肩甲骨周囲の筋肉が動きやすくなります。 途中で肩や首に痛みが生じた場合は、無理に続けず中止しましょう。 寝ながらできる肩甲骨はがしのやり方 寝ながら行う方法は、首や腰への負担が少なく、リラックスしながらできる点が特徴です。 実際のやり方を以下に示しました。 仰向けに寝て、両腕を体の横に置く 肘を肩の高さまで上げる 内側に半円を描くように両手を動かす 外側に半円を描くように両手を動かす 仰向けになるときに膝を立てると、腰を傷めにくいでしょう。ただし、途中で肩や首、腰に痛みが生じた場合は、無理に続けず中止しましょう。 タオルを使った肩甲骨はがしのやり方 タオルを使うと、自分の力だけでは動かしにくい部分も含めて、無理なく肩甲骨周囲を動かせます。 実際のやり方を以下に示しました。 フェイスタオルの両端を持つ タオルが首の後ろを通るようにゆっくりと腕を下ろす 肩甲骨の内側が伸びる感覚を意識する 反動を付けずにゆっくりと動かすこと、痛みが生じない範囲で動かすことがポイントです。 肩甲骨はがしで期待できる効果 肩甲骨はがしで期待できる効果は、主に以下の3点です。 筋緊張の緩和 姿勢の改善 呼吸の改善 筋緊張の緩和 肩甲骨はがしは肩関節の運動に含まれます。運動は肩や首まわりの筋肉の緊張を和らげ、こり感を軽くする作用があります。(文献1) 肩甲骨周囲の筋肉(僧帽筋・肩甲挙筋など)がこる原因は、運動不足や良くない姿勢の影響、長時間の筋緊張による血流低下などです。 肩甲骨はがしで肩回りを動かすことにより筋肉の緊張が和らぎ、血流促進にもつながります。 姿勢の改善 肩甲骨はがしにより肩まわりが動きやすくなると、姿勢が改善する可能性があります。 良くない姿勢の例を以下に示しました。 肩が前に出ている 背中が丸まってしまう 姿勢を意識しても長く保てない 肩甲骨周囲が動きやすくなり肩関節の可動域が広がると、胸が開きやすくなったり背中が自然に伸びやすくなったりします。その結果、猫背や巻き肩といった前かがみ姿勢も改善する可能性があります。 ただし、姿勢改善のためにはストレッチに加えて、日常の立ち方や座り方、作業姿勢を整えることも必要です。 呼吸の改善 肩甲骨はがしにより呼吸状態が改善する可能性があります。 肩甲骨周囲が緊張し猫背や巻き肩などの姿勢が続くと、胸郭(胸まわりの骨格)の動きが制限され、呼吸が浅くなります。具体例を以下に示しました。 深呼吸がしづらい 呼吸が浅い 呼吸時に肩が上がりやすい 肩甲骨はがしで肩甲骨周囲を動かすことで胸郭も動きやすくなり、呼吸がしやすくなる場合があります。 ただし、呼吸器疾患がある方の場合は、原因疾患の治療が必要です。 肩甲骨はがしのリスク 痛みを我慢して肩甲骨はがしを続けると症状が悪化するリスクがあることを知っておきましょう。 症状の悪化としては、以下のようなケースが考えられます。 痛みが増して日常生活に支障が出てきた 関節可動域が狭くなり動かしにくくなってきた 強い痛みを伴う動きは筋肉や腱に過度な負担がかかり、炎症や筋肉の損傷につながる場合があります。 痛いほど効くといった考え方や、痛みを悪化させる運動は避けましょう。 肩甲骨はがしと受診を検討するべきケース 以下のような症状がある場合は、医療機関の受診を検討しましょう。(文献2) 肩甲骨はがしで症状が悪化している 片側だけの強い痛みが続いている 腕や指にしびれや脱力、感覚異常がある 夜間や安静時にも痛みがある 呼吸時の痛みや胸部症状、発熱などを伴う 受診先の基本は整形外科ですが、胸部症状や発熱などがある場合は内科も選択肢となります。症状が強い場合や急激に悪化した場合は救急外来を受診しましょう。 肩甲骨はがしの正しいやり方と効果・リスクを把握しておこう 肩甲骨はがしは、肩や背中まわりの筋肉を動かしやすくするためのセルフケアです。 本記事では、座ってできるやり方や寝ながらできるやり方、タオルを使ったやり方を紹介しました。正しい方法で行えば、肩こりや姿勢の改善が期待できるケースもあります。 ただし肩甲骨はがしの効果には限界があり、すべての不調に効果があるとは限りません。また、痛みを我慢して肩甲骨はがしを続けると症状が悪化するリスクもあります。 肩甲骨はがしを行っても肩のこりや痛みといった気になる症状が続く場合は、無理して続けず医療機関受診を検討しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しておりますので、ぜひご利用ください。 肩甲骨はがしに関するよくある質問 肩甲骨はがしには医学的根拠がありますか? 肩甲骨はがしに関する医学的根拠は、現段階では明示されていません。 肩甲骨周囲の運動やストレッチが、肩の可動域や痛みの軽減に役立つ可能性を示した研究も存在するものの、実際の効果には個人差があります。 肩甲骨はがしの翌日に痛くなるのはなぜですか? 肩甲骨はがしの翌日に生じる痛みの主な理由は、遅発性筋肉痛です。 遅発性筋肉痛とは、運動後数時間から数日経過してから生じる筋肉痛です。肩甲骨はがしを含むストレッチで筋肉を伸ばしたときに生じる場合もあります。 肩甲骨はがし後に痛みが生じたときは、無理をせず休みましょう。 参考文献 (文献1) 肩こり|公益社団法人日本整形外科学会 (文献2) Shoulder pain|NHS
2026.01.31 -
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「肩こりは温めると良いと聞いたのでカイロを貼っているが、効果がわからない」 「カイロを貼っても、肩こりが和らぐのは一時的」 「カイロを効果的に使って、肩こりを和らげたい」 慢性的な肩こりにお悩みの方の中には、このようにお考えの方もいらっしゃることでしょう。 カイロは肩こりにおける有効なセルフケアの1つですが、正しい使い方や注意点を理解する必要があります。 本記事ではカイロで肩こりが和らぐ仕組みや、カイロを使った肩こり改善法を中心に解説します。 より効果的に肩こりを緩和できる方法も紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 カイロを始めとする肩こりのセルフケアを詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 カイロの活用と肩こりの関係性 この章では、以下の内容を解説します。 カイロで肩こりが和らぐ仕組み カイロによる肩こり改善の利点と注意点 カイロで肩こりが和らぐ仕組み カイロは身体を局所的に温めるもので、温熱療法の1つに含まれます。 肩こりの主な原因は、血流の悪化と筋肉の緊張です。血流が悪化すると老廃物や疲労物質がたまり、筋緊張が高まります。 とくに冬は、寒さによって血流悪化や筋緊張を引き起こしやすく、肩こりの発症や悪化が多い時期です。 温熱療法では以下のような効果が期待できます。(文献1)(文献2) 皮膚温度の上昇 関節内および筋肉の温度上昇 血管拡張による血流改善 筋肉疲労軽減 血流改善により老廃物がスムーズに排出され、その結果筋緊張が和らぎ、こりや痛みが軽減されることが温熱療法の仕組みです。 冬に肩こりが起きやすい理由については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 カイロによる肩こり改善の利点と注意点 カイロによる肩こり改善の主な利点は、手軽に温熱療法を行えることです。 温熱療法は、筋骨格系の痛みや傷に対する薬を使わないアプローチの1つであり、身体の浅い部分にも深い部分にも適用可能です。カイロは、体の浅い部分に対する温熱療法に含まれます。 カイロ使用時の注意点は、長時間使用による低温やけどのリスクです。電気温熱パッドやホットパック、床暖房などでも、低温やけどが生じやすいとされています。(文献3) もう1つの注意点は、肩こりの原因によってはカイロを使うと悪化する可能性があることです。炎症および外傷による肩の痛みやこりの場合、温めると悪化する可能性があります。カイロ使用前には、必ず肩こりの原因を確認しましょう。(文献4) カイロを含めた温熱療法については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 カイロを使った肩こり改善法 カイロを使って肩こりを改善するためのポイントは、主に以下の3点です。 肩こりに効果的なカイロを貼る場所 カイロを使う時間と低温やけど予防のポイント 妊娠中や高齢者のカイロ使用における注意点 肩こりに効果的なカイロを貼る場所 肩こりに効果的なカイロを貼る場所は、肩甲骨まわりや首の付け根です。 肩甲骨回りには、僧帽筋や肩甲挙筋、菱形筋(りょうけいきん)などの筋肉が存在しています。いずれも、頭や両腕を支える役割を果たすため、負担が大きくこりやすい筋肉です。そのため肩甲骨回りは、肩こりを引き起こしやすい部位です。 肩甲骨回りの筋肉をあたためると、血流がよくなったり筋肉の緊張が和らいだりするため、肩こり改善につながります。 首の付け根には、僧帽筋の上部繊維と呼ばれる部分や肩甲挙筋に加えて、太い血管も存在しています。この部分を温めると血液循環が良くなるため、肩こり改善が期待できるのです。 カイロを使う時間と低温やけど予防のポイント カイロを使う時間は、1回につき4〜6時間程度が目安です。長時間使用は低温やけどのリスクがあるため、避けましょう。就寝時の使用も避けてください。 低温やけどは、心地良いと感じる温度(40~50℃程度)に長時間皮膚が接した結果生じるやけどです。42℃のものに6時間接触していると、細胞が変化するとの報告もあります。(文献5) 低温やけどは、高温のものに触れたときよりも自覚症状が現れにくい点が特徴です。そのため、気づかないうちに皮膚の奥まで損傷しているケースも少なくありません。 カイロによる低温やけどを防ぐため、必ず下着やインナーウェアの上からカイロを貼ってください。 低温やけどのリスクは、温度と接触時間の組み合わせによって変わります。化学製品PL相談センターの報告では、44℃では3〜4時間以上、46℃では30分〜1時間程度で低温やけどが発生する可能性があると示されました。(文献6)これらを考慮して、カイロを使用するときは、1〜2時間おきに肌の状態を確認しましょう。 妊娠中や高齢者のカイロ使用における注意点 妊娠中の方がカイロを使用するときは、背中や腰など、お腹以外に貼るようにしましょう。お腹を温め過ぎると汗が出てしまい、結果として身体を冷やすリスクがあるためです。 高齢者は皮膚が薄く、皮膚感覚も鈍くなっているため、低温やけどを起こしやすく重症化しやすい状況です。(文献7) カイロを長時間使用すると、低温やけどを引き起こす可能性があります。妊娠中の方や高齢者の方も、使用方法や注意書きをよく守ってご使用ください。 カイロを日常生活に取り入れて肩こりを緩和させる工夫 この章では、以下の内容について解説します。 デスクワークや家事の合間でカイロを取り入れる方法 外出時に役立つカイロの使い方 肩こりを悪化させない生活習慣との組み合わせ デスクワークや家事の合間で取り入れる方法 デスクワークで肩や首のこりを感じたときには、首の付け根や肩甲骨の内側にカイロを貼ってみましょう。血流改善や筋緊張緩和の効果が期待できます。 冷房の効いた環境で肩が冷えた場合も、肩にカイロを貼ると良いでしょう。冷えからくる肩こりの改善に役立ちます。 家事の合間や立ち仕事の後にもカイロの使用がおすすめです。洗濯や掃除、料理などの家事や立ち仕事では前かがみの姿勢になることが多く、筋肉もこわばりやすくなります。 デスクワークのときと同様に、首の付け根や肩回りにカイロを貼ると良いでしょう。血流を促され、筋肉疲労の回復に役立ちます。 首肩用の温熱グッズとカイロを併用するのもおすすめの方法です。 外出時に役立つカイロの使い方 外出時にカイロを使う場合も、首の後ろから肩にかけての部分にカイロを貼りましょう。肌に直接貼るのではなく、下着やインナーウェアの上から貼るようにしてください。 貼らないタイプのカイロであれば、マフラーやネックウォーマーのポケットに入れるのも効果的です。冷たい風の侵入を防ぎながら、肩から首の血行を促進できます。 腰にカイロを貼ると、上半身全体の冷えを防げます。温熱効果が腰から上に広がるため、肩回りの筋緊張予防や緩和にもつながるでしょう。 貼らないタイプのカイロを上着やコートのポケットに入れて手先を温めるのもおすすめです。手先を温めると全身の緊張がほぐれるため、肩こり予防の間接的な効果が期待できます。 肩こりを悪化させない生活習慣との組み合わせ 肩こりを悪化させないためには、ストレッチや軽い体操もおすすめです。カイロの温熱効果で筋肉が柔らかくなったタイミングで軽く動かすと、血流が促進されやすくなります。 首回しや肩甲骨回し、背伸びなどを、無理のない範囲で取り入れるのがポイントです。 肩こり予防のためには、正しい姿勢を取ることや長時間同じ姿勢を取らないことを心がけてください。姿勢を整えることで、筋肉の緊張を軽減できます。1時間に1回程度、姿勢をリセットする時間をとると望ましいでしょう。 カイロの使用は、あくまでも補助的なセルフケアであると考えておきましょう。 カイロで一時的に肩こりは緩和できますが、根本的な解消のためにはストレッチや姿勢改善などの工夫が欠かせません。 温めて肩こりを緩和しつつ、根本対策も意識するといったバランスが必要です。 「カイロ」と「カイロプラクティック」の違い カイロは温熱グッズの1つであり、カイロプラクティックは背骨や骨盤の矯正を目的とした施術です。 この2つは語感が似ているため混同されやすいものですが、まったく異なるものであると認識しておきましょう。 カイロプラクティックの特徴 カイロプラクティックは、背骨や骨盤の矯正を目的とした手技療法です。神経や筋肉への圧迫を和らげるアプローチが中心の施術であり、いわゆる「医業類似行為」にあたります。 カイロプラクティックの施術者の資格は、国家資格ではなく民間資格です。 厚生労働省の「医業類似行為に対する取扱いについて」では、カイロプラクティックが適切ではない疾患として、以下のものがあげられています。(文献8) 腫瘍性疾患 出血性疾患 感染性疾患 リュウマチ 筋萎縮性疾患 心疾患 加えて、手技によって症状が悪化する頻度が高いとされる疾患も、カイロプラクティック実施が適切ではないと記されています。 例を挙げると、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などです。 肩こりにおけるカイロとカイロプラクティックの使い分け カイロは、自宅でのセルフケアや寒さ対策に有効です。これに対しカイロプラクティックは、骨格の調整や慢性症状の軽減を目的とした施術です。 両者はアプローチも役割も異なるため、目的に応じて使い分けましょう。カイロを使った温熱ケアを試しつつ、必要に応じてカイロプラクティック施術を活用するのも一つの方法です。 カイロおよびカイロプラクティックを活用しても症状が長引いたり強くなったりする場合は、医療機関を受診して原因を明確にしましょう。 カイロを適切に活用して肩こりの緩和を目指そう カイロは血行促進や筋肉の緊張緩和に役立ち、肩こり緩和の一助となります。しかし、長時間貼り続けたり皮膚に直接貼ったりすると、低温やけどのリスクがあります。 カイロは使用方法や注意書きを守って正しく使用しましょう。 カイロを正しく使いつつ日常生活を工夫することで、効果的な肩こりケアが期待できます。 カイロと似た言葉がカイロプラクティックです。しかし、両者の意味はまったく異なります。カイロプラクティックは、背骨や骨盤の矯正を目的とした施術です。 カイロを適切に活用しても肩こりが長引いたり、強い痛みやしびれを伴ったりする場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。 医師の診察を受けることで、肩こりの背景に潜んでいる病気の有無がわかります。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。肩こりにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 カイロの活用と肩こりに関するよくある質問 肩こりでカイロを使う場合寝るときに貼っても良いですか? 寝るときにカイロを貼ることは望ましくありません。体の同じ場所に長時間カイロを貼り続けると、低温やけどを発症する可能性があるためです。 また、寝ている間は熱さや皮膚の異変に気づきにくいため、仮に低温やけどを発症した場合も発見が遅れるリスクがあります。 このような理由があるため、寝るときのカイロ使用は控えましょう。 肩こりは冷やすと温めるどちらが良いですか? 慢性的な肩こりの場合は温める、急性期の肩こりで炎症を起こしているものは冷やすと覚えておきましょう。急性期とは、痛みが生じてすぐの時期です。 急激に肩を使ったために肩が炎症を起こしている場合は、冷やす方が望ましいといえます。炎症が起きているときに温めると、かえって炎症が悪化する可能性があります。 急な肩こりはなんらかの疾患が隠れている可能性があるため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。 急な肩こりの危険性についてはこちらの記事でも解説しています。あわせてご覧ください。 参考文献 (文献1) Thermotherapy Plus Neck Stabilization Exercise for Chronic Nonspecific Neck Pain in Elderly: A Single-Blinded Randomized Controlled Trial|PubMed Central (文献2) Local Heat Applications as a Treatment of Physical and Functional Parameters in Acute and Chronic Musculoskeletal Disorders or Pain|SciencesDirect (文献3) Early Intervention for Low-Temperature Burns: Comparison between Early and Late Hospital Visit Patients|PubMed Central (文献4) Potential Risks and Contraindications of Heat Therapy|Spine-health (文献5) 熱傷(やけど)に関する簡単な知識|一般社団法人日本熱傷学会 (文献6) 低温やけどに注意|化学製品PL相談センター (文献7) 高齢者のやけどに御注意ください!|消費者庁 (文献8) 医業類似行為に対する取扱いについて|厚生労働省
2025.12.13 -
- 肩関節、その他疾患
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「冬になると肩こりがひどくなる」 「肩こりの原因は何だろう」 「実は何かの病気ではないか」 このようにお考えの方も多いことでしょう。 冬は寒さで血行が悪くなったり、筋肉が硬くなったりするために肩こりが起きやすい季節です。また冬の室内環境の影響で肩こりが生じる場合もあります。 本記事では、冬特有の肩こりの原因やセルフケア、受診が必要な症状などについて解説します。 冬に向けた肩こり対策がわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 冬の肩こりが気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 冬に肩こりが起こりやすい原因 冬に肩こりが起こりやすくなる、または悪化しやすくなる原因は主に以下の4点です。 冷えによる血行不良と筋肉のこわばり 寒さによる姿勢の変化 自律神経の乱れとストレスの影響 室内環境の影響 冷えによる血行不良と筋肉のこわばり 冬になると、寒さの影響で肩周辺の筋肉である僧帽筋がこわばり、肩こりが起こりやすくなります。 僧帽筋は、首の後ろから肩、背中にかけて広がる筋肉です。 寒さによって筋肉が血行不良を起こすと、新陳代謝が低下します。その結果、疲労物質が筋肉にたまり、こわばりを引き起こします。 筋肉のこわばりにより生じる現象が、血管および末梢神経の圧迫です。血管が圧迫されると血流が低下し、さらに筋肉がこわばるという悪循環が生じます。この悪循環により末梢神経がダメージを受けた結果、こりやしびれなどが生じます。 肩こりとは、疲労やストレスによって肩およびあごの筋肉が緊張し、硬くなった状態です。 2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況によると、男性は人口千人に対して53.3人、女性は人口千人に対して105.4人が肩こりを訴えています。(文献1) 下記の記事で、肩こりの治療や予防などについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 寒さによる姿勢の変化 寒くなると、冷えが原因で身体が震えてしまい、肩をすくめる姿勢が増えます。これも肩こりの一因です。 人の体は震えることで筋肉を収縮させ、熱を生み出そうとしています。冷えると身体が震えるのはそのためです。 肩をすくめている姿勢は、言い換えると、肩に力が入った姿勢です。この姿勢が長時間続くと筋肉に無理な負担がかかり、疲れやすくなります。 無理な姿勢は、肩が冷えたときと同様に筋肉の血行不良を引き起こし、結果として肩こりにつながります。 自律神経の乱れとストレスの影響 冬は寒くなったり寒暖差が大きくなったりするため、身体が急激な温度変化に対応できず、自律神経が乱れやすい時期です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、冬は交感神経が優位な状況にあります。 冬の寒さや寒暖差は身体にとって大きなストレスです。ストレスが強い状況でも、交感神経が優位になります。 また、冬になると血管を収縮させたり心臓の動きを早めたりして体内で熱を産生します。血管収縮や心拍数増加は、交感神経のはたらきによるものです。 交感神経が優位になると筋肉の緊張や血流の変化が生じ、肩こりに影響を及ぼします。 室内環境の影響 冬特有の室内環境としてあげられるものが暖房です。暖房をつけると空気が乾燥するため、呼吸が浅くなります。 乾燥した空気は、異物を外に出す機能やウイルスから身を守る機能を低下させます。(文献2)浅い呼吸は、乾燥した空気をなるべく肺に入れないようにするための防御反応です。 浅い呼吸は身体を防御する反面、肩こりをはじめとする筋肉のこわばりを引き起こします。 呼吸が浅いと、筋肉の細胞が酸素不足になるため、呼吸数が増加します。呼吸数の増加は、肩や首周りの筋肉に負担をかける因子の1つです。 加えて、浅い呼吸は交感神経を優位にします。交感神経優位の状況は筋緊張や血流の変化につながり、肩こりに影響を及ぼします。 冬の肩こりでよく見られる症状 冬の肩こりでよく見られる症状は、頭痛やめまい、吐き気などです。睡眠の質低下や全身の疲労感が生じる場合もあります。 頭痛やめまい、吐き気 肩こりのある方に起こりやすい頭痛は「緊張性頭痛」と呼ばれるものです。(文献3)肩や首周りの筋緊張が高まり、血流障害や神経痛が生じるために起こるとされています。頭痛以外の症状は、めまいや吐き気、手のしびれなどです。 緊張性頭痛は、精神的ストレスや天候の変化などでも悪化します。 緊張性頭痛のほかにも、さまざまな種類の頭痛があります。主なものを以下に示しました。 片頭痛 群発頭痛 脳血管疾患による頭痛 脳血管疾患による頭痛は、命に関わる場合もあります。肩こりに加えて、頭痛や吐き気が続く場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。 睡眠の質低下および全身の疲労感 肩こりは、肩や首の筋肉が緊張している状態です。筋肉の緊張によりリラックスできず、眠りも浅くなりがちです。肩こりがあると眠っているときも不快感があり、気持ちよく眠れないこともあります。寝返りが打ちづらくなり、睡眠中何度も目が覚める場合もあります。 その結果、もたらされるものが睡眠の質低下です。睡眠の質が低下すると眠りも浅くなり、疲労が蓄積されます。疲労の蓄積は日中の集中力低下や倦怠感を招き、慢性疲労につながります。 韓国の論文では、首や肩の痛みがひどいほど、また肩の動きが不自由なほど、ミドルエイジ(35歳から64歳まで)女性の睡眠の質が低下するとの結果が示されました。(文献4) 【悪化する?】冬の肩こりを放置した際に起こりうるリスク 冬に肩こりを放置すると、慢性化および自律神経への悪影響といったリスクが起こりえます。本章では、それぞれのリスクについて詳しく解説します。 肩こりの慢性化 寒さが続く冬は血流がとどこおり、筋肉の硬直が続きがちです。そのため、肩こりが改善しにくく慢性化しやすい状況です。 マッサージや湿布でケアしても、改善は一時的なケースも少なくありません。 ノルウェーの論文では、肩のこりや痛みがある方は、筋肉・血管の反応性が低下し、痛みが長引きやすい体質になるとのデータが示されました。(文献5) 肩こりの慢性化は、自律神経の乱れを引き起こす可能性があります。日本の研究者による論文では、肩こりを含めた慢性的な筋肉や骨格の痛みは、自律神経の乱れや仕事の生産性低下に影響するとのデータが示されました。(文献6) 自律神経への影響 肩こりや痛みといった症状は身体にとって大きなストレスであり、自律神経を乱す原因の1つです。 肩の痛みや肩関節周囲炎がある方は、自律神経が乱れやすいとの研究データも存在しています。(文献7)肩関節周囲炎、いわゆる五十肩の主な症状は肩関節の痛みや可動域制限(関節の動きが悪くなること)です。 冬の寒さや寒暖差による身体へのストレスも、自律神経の乱れにつながります。そのため、冬は肩こりによって自律神経が乱れる時期といえるでしょう。 自律神経の乱れは、イライラや胃腸の不調、睡眠の質低下など全身にさまざまな悪影響をもたらします。 冬の肩こりを改善・予防するためのセルフケア 肩こりのセルフケアとしてあげられるものは、主に以下のとおりです。 温熱ケア 肩回りの運動 室内環境の整備 生活習慣の改善 温熱ケア 温熱ケアは血行促進や筋緊張の緩和をもたらし、肩こりの改善・予防につながります。 肩の痛みや機能障害を有する患者に高周波治療用深部温熱装置を用いたところ、痛みの軽減や機能回復が認められたとの結果が示されました。(文献8)また、肩関節周囲炎患者に対し、ストレッチと深部加温を実施したところ、ストレッチと表面加温のグループよりも痛みが軽減されたとのデータも存在します。(文献9) 温熱ケアの具体的な方法は、主に以下のとおりです。 入浴で全身を温める 蒸しタオルで肩周囲をピンポイントに温める カイロを肩甲骨まわりに貼る カイロの長時間使用は、低温やけどのリスクがあるため控えましょう。 カイロを使った肩こりのケア方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 肩回りの運動 肩甲骨を動かすストレッチや肩回しは、肩こりのケアとして有効です。肩回りを動かすことで、血流改善や筋肉の柔軟性向上、こりの予防などの効果が期待できます。 温熱療法とストレッチの併用で、肩の痛みが軽減されたとの研究データもあります。(文献9) 具体的な運動の例を以下に示しました。 両肩を前後に大きく回す 両手を肩に当てて、円を描くように動かす 肩をすくめた後、ストンと落とす 強い痛みが出ない範囲で、続けて行うことをオススメします。 室内環境の整備 室内環境で大切なのは、室温と湿度です。湿度を一定に保ち乾燥を防ぐと呼吸が深くなり、肩や首周りの筋肉の負担軽減につながります。 冬の室内は、温度20〜23℃、湿度40〜70%が望ましい環境です。暖房機器と加湿器を併用して室温と湿度を調整しましょう。 暖房でエアコンを使うときは、吹出口からの風が身体に直接当たらないようにしてください。風が直接当たると、血液循環が悪くなり、肩や首のこりが引き起こされやすくなるためです。 生活習慣の改善 生活習慣改善の1つが運動習慣を取り入れることです。ストレッチやウォーキング、ヨガなどを取り入れてみましょう。 運動習慣がある方は、首や肩の痛みのリスクが低いといった研究データも示されています。(文献10) 食生活も肩こりケアの一部です。筋肉疲労回復のため、タンパク質やビタミンB群を含む食品を積極的にとりましょう。タンパク質を多く含む食品は、肉や魚、大豆製品、卵などです。ビタミンB群は、豚肉やレバー、マグロ、大豆などに多く含まれます。 ビタミンB群を多く含む食品は、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 疲労やストレス軽減もセルフケアの1つです。そのためにも、十分な睡眠をとりましょう。6時間以上の睡眠が目安です。 パソコンを使う方は、正しい姿勢を心がけましょう。具体的には以下のとおりです。 背筋を伸ばす 椅子に深く腰掛ける 足裏全体を床につける スマホを操作するときも、背筋を伸ばす、スマホを目の高さにするなどの正しい姿勢を心がけてください。 冬の肩こりで医療機関を受診すべきサイン 冬の肩こりの中には、医療機関を受診すべきものも存在します。主なものは以下のとおりです。 強い頭痛や吐き気、しびれを伴う肩こり 片側に集中する肩こり 再発を繰り返し長引く肩こり 強い頭痛や吐き気、しびれを伴う肩こり 肩こりに加えて、強い頭痛や吐き気、しびれがある場合は、なんらかの疾患が隠れている可能性があります。その1つが頸原性頭痛です。 頸原性頭痛とは、首の関節や筋肉、椎間板といった首の構造的な異常が原因で起こる頭痛を指します。右側だけ、もしくは左側だけなど、首の病変がある方だけに起こる頭痛が一般的です。(文献11) 頭痛や吐き気・しびれを伴う場合は、脳血管疾患の可能性もあります。思い当たる症状があるときは、早急に医療機関を受診しましょう。 片側に集中する肩こり 片側に集中する肩こりも、疾患のサインである可能性が大きいとされます。その1つが頸椎症性神経根症です。 頸椎神経根症は、首の骨(頸椎)から出る神経の根元が炎症を起こしたり損傷したりしたことで、神経の働きに異常が出る疾患です。身体の片側の神経が圧迫されると、片方の肩から腕にかけて痛みやしびれ、筋力低下が生じます。(文献12) 片側に集中する肩こりには、脳血管疾患が隠れているケースもあります。 片側に鋭い痛みを感じ、突然出現する肩こりや、短時間で急速に悪化する突然の肩こりは、脳梗塞の前兆である可能性が高いものです。早急に医療機関を受診しましょう。 以下の記事で、突然の肩こりと脳梗塞の関係を解説しています。あわせてご覧ください。 また、脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 再発を繰り返し長引く肩こり 温熱療法やストレッチで一時的に改善されてもすぐに再発する慢性化した肩こりは、医療機関受診が望ましいといえます。 肩こりの原因が筋肉の緊張ではなく、なんらかの疾患である可能性が否定できないためです。 肩こりの原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 肩関節周囲炎 脊髄症(頸椎の構造異常) 自律神経失調症 顎関節症 症候性肩こりと呼ばれる、疾患による肩こりの場合は、原因疾患の治療が必要です。 冬は肩こりが起きやすい季節!改善しない場合は医療機関を受診しよう 冬は寒さによる血流悪化や筋緊張、室内の乾燥による浅い呼吸などの影響で肩こりが起こりやすい季節です。肩こりだけではなく、頭痛やめまい、吐き気といった症状や睡眠の質低下をもたらすことも少なくありません。 肩こりを放置すると慢性化し、自律神経に影響を及ぼす場合もあります。 肩こり改善や予防のためのセルフケアが、温熱療法やストレッチなどです。 しかし、強い頭痛や吐き気を伴う肩こりや、片側だけに集中する肩こり、再発を繰り返す肩こりの場合は、早急に医療機関を受診しましょう。なんらかの疾患が隠れている可能性があるためです。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。冬の肩こりにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 冬の肩こりに関するよくある質問 冬の肩こりはパジャマも起因となりますか? パジャマの種類によっては、肩こりの原因となりうるものもあります。代表的なものが、フード付きのパジャマです。 パジャマに付いているフードは就寝時に首の下に溜まり、首の動きを妨げる可能性があります。その結果、寝返りがしにくくなり、肩こりや頭痛などを引き起こす可能性を高めます。 パジャマを選ぶときは、フードがないものにしましょう。 冬の肩こりにおすすめのグッズはありますか? 気軽に使えておすすめのグッズは使い捨てカイロや、肩をあたためる専用のサポーター、温熱シートなど、主に温熱ケアに用いるものです。各種通販サイトやドラッグストアなどで購入可能です。 各種温熱ケアグッズは、長時間使用すると、低温やけどを起こす可能性があります。取扱説明書を読んで、正しく使用しましょう。 冬の肩こり以外に寒いと体が痛くなる病気はありますか? 坐骨神経痛や肋間神経痛などのほか、膝関節痛や腰痛などがあげられます。また、冬になると関節リウマチによる関節痛が強まる場合もあります。 主な原因は、寒さによる血行不良や筋肉の収縮による神経の圧迫、自律神経の乱れなどです。 参考文献 (文献1) 2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省 (文献2) Low ambient humidity impairs barrier function and innate resistance against influenza infection|PubMed Central (文献3) 頭痛の原因は?|国立研究開発法人国立長寿医療研究センター (文献4) The relationship between sleep quality, neck pain, shoulder pain and disability, physical activity, and health perception among middle-aged women: a cross-sectional study|BMC Women's Health (文献5) Work-induced pain, trapezius blood flux, and muscle activity in workers with chronic shoulder and neck pain|PubMed Central (文献6) Impact of Chronic Musculoskeletal Pain on Autonomic Function, Work Productivity, and Mood During Working Hours: A Pilot Cross-Sectional Study on IT Desk Workers|ResearchGate (文献7) Autonomic Nervous System Function and Central Pain Processing in People With Frozen Shoulder: A Case-control Study|PubMed Central (文献8) Effects of a Newly Developed Therapeutic Deep Heating Device Using High Frequency in Patients with Shoulder Pain and Disability: A Pilot Study|PubMed Central (文献9) Effects of deep and superficial heating in the management of frozen shoulder|PubMed Central (文献10) Association between lifestyle and musculoskeletal pain: cross-sectional study among 10,000 adults from the general working population|PubMed Central (文献11) 緊張型頭痛と頸原性頭痛の比較|日本頭痛学会誌 (文献12) What Is Cervical Radiculopathy?|Spine-health
2025.12.13 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「腱板損傷は安静にすれば自然に治るのでは?」 「手術や注射を避けたい」 本記事では、腱板損傷が自然に治癒する可能性や治療期間、放置による悪化のリスクについて、医学的根拠に基づき現役医師が解説します。 記事の最後にはよくある質問をまとめています。まずは自分の症状と損傷の程度を正しく把握し、適切な治療と生活管理を始めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板損傷の治療について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板損傷は自然治癒する? リスク項目 内容 断裂拡大 放置により断裂が広がる可能性 機能低下 肩の筋力や動きの制限による日常生活への支障 手術困難 長期放置で脂肪浸潤・変性が進み再縫合が困難になる可能性 関節症進行 腱板断裂性肩関節症への移行リスク 手術成績への影響 断裂が進行した状態での手術は術後の回復遅延や満足度低下のリスクが高い 腱板は肩の重要な働きを担う組織で、血流が乏しく自然治癒が極めて困難な部位です。1996年と2002年に行われたMRIによる経過観察では、完全断裂の約66%が拡大し、縮小例はゼロでした。中等度の部分断裂でも縮小は27%にとどまり、自然治癒はまれと報告されています。(文献1) 放置すると断裂拡大や筋力低下が進行し、洗濯干しや着替えなどの日常動作に支障をきたす恐れがあります。さらに、長期放置は手術の難易度を上げ、術後の回復や満足度に影響します。保存療法で痛みを抑えることは可能ですが、断裂そのものの修復はできません。早期に医療機関で画像検査を受け、適切な治療方針を立てることが重要です。 腱板損傷の原因や治療法など、包括的な内容に関しては「【医師監修】腱板損傷とは|症状・原因・治療法を詳しく解説」をご覧ください。 腱板損傷を放置するリスク 放置するリスク 詳細 断裂が進行し機能が低下する 断裂部の拡大による肩の可動域と筋力の低下。日常生活の基本動作が困難になる状態 手術が必要になる可能性 断裂の悪化で手術適応となるリスク増大。放置による筋肉の脂肪浸潤や変性による縫合困難 腱板断裂性肩関節症に進行するリスク 肩関節のバランス崩壊による軟骨・滑液包障害。人工肩関節置換を検討せざるを得ない段階 肩以外にも負担が広がる 周囲の筋肉や関節への過負荷。肩こり、腰痛、姿勢不良など他部位の不調の原因となる状態 腱板損傷を放置すると損傷が拡大し、肩の可動域が狭まり日常生活や仕事に支障が出ます。初期は保存療法で改善するケースもありますが、進行すれば手術が必要になる場合が多く、肩を酷使する人ほど悪化は早まります。 長期放置で肩関節が変形し腱板断裂性肩関節症に進行すると治療は複雑化します。また、肩をかばうことで首や背中、反対側の肩などにも負担がかかり、二次的な不調や全身バランスの崩れを招きます。早期診断と適切な治療が不可欠です。 以下の記事では、腱板断裂を放置するリスクを詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板断裂を放置するとどうなる?日常生活や仕事への影響を現役医師が解説! 腱板損傷と断裂の違いは?症状の進行や治療法について現役医師が解説 断裂が進行し機能が低下する 放置による影響 詳細 腱の裂け目拡大と張力の喪失 断裂部分の拡大による腱板の安定性低下。本来の張力喪失による腕の挙上・支え動作の困難 筋肉の萎縮・脂肪化 使われない腱板筋の萎縮と脂肪浸潤。不可逆的変化による筋力回復困難 肩の連携動作の乱れ 腱・筋連動の喪失による肩甲骨運動障害。負荷の偏りによる他の腱板や筋肉への損傷拡大 生活動作の制限 腕の動き制限による洗濯・着替え・整髪動作の困難。生活の質低下と介助依存のリスク増大 腱板損傷は、日常的な肩の使用により徐々に進行する可能性があります。とくに、断裂部に持続的な負荷が加わると、裂傷が拡大し、部分断裂から完全断裂へ移行することがあります。 断裂範囲が拡大すると、腕の挙上や物の把持といった基本的な動作が困難となり、肩の機能は顕著に低下します。 手術が必要になる可能性 断裂が進行すると修復は難しくなり、手術が複雑化して回復も遅れます。活動的な方や症状が長く続く場合は、断裂部を骨に縫合する手術で機能改善が期待できますが、リスクもあるため必ず医師と相談してください。 放置は将来的に手術が必要になるリスクを高めるため、早期の診断と適切な治療・リハビリの検討が重要です。 以下の記事では、肩腱板断裂の手術と入院期間について詳しく解説しています。 腱板断裂性肩関節症に進行するリスク 進行する理由 詳細 腱板断裂による肩の安定感喪失 腱板の支え消失による上腕骨の位置異常と関節動作の不安定 骨同士の衝突と軟骨摩耗 上腕骨の上方移動による肩峰との接触と関節軟骨の持続的摩耗 関節変形と機能低下 軟骨消失による関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨変形による摩擦増加 筋肉バランスの崩れと関節不安定化 腱板機能の喪失による筋肉の不均衡と骨・軟骨への負荷増大 腱板損傷を長期間放置すると、肩関節の安定性が失われ、腱板断裂性肩関節症へ進行する可能性があります。これは肩関節内の軟骨が摩耗し、関節自体が変形する病態です。 一度変形した関節は元に戻らず、強い痛みが慢性化して日常生活に大きな障害をもたらします。 肩以外にも負担が広がる 腱板損傷で肩の機能が低下すると、首や肩甲骨周囲の筋肉、腰、肘、手首、反対側の肩などに過度な負担がかかり、こりや痛みが広がります。 これは肩の回復ではなく代償動作によるもので、全身のバランスを崩す原因となります。早期診察と適切な治療で負担拡大と症状悪化を防ぐことが重要です。 腱板損傷の治療期間 進行度 詳細 注意点 軽度の腱板損傷(保存療法で3〜6カ月) 安静、薬、リハビリにより約3カ月で日常動作が可能に。スポーツや重作業復帰は最大6カ月。断裂は修復されず症状コントロールが目的 年齢・筋力・仕事内容で回復に差。無理な運動は再断裂リスク。必ず医師・理学療法士の指導下で実施 中等度の腱板損傷(6〜12カ月) 2〜3カ月で日常生活復帰。可動域・筋力回復には6〜12カ月。軽作業は約3カ月で可能だが、高負荷作業・スポーツは6カ月が目安 3カ月以上改善が乏しい、断裂範囲が広い場合は手術検討。年齢・生活スタイルを踏まえ治療方針を決定 重度・広範囲断裂(手術必要例|6カ月〜1年以上) 手術後の回復は6カ月〜1年以上。年齢・断裂の大きさ・筋肉状態で差あり。MRIや超音波で定期評価しながらリハビリ継続 回復は長期計画が必要。自己判断で負荷増加しない。医師・リハビリ専門職と連携 腱板損傷の回復期間は損傷の程度によって異なります。軽度では、安静や薬、リハビリなどの保存療法で3〜6カ月が目安です。受傷から約3カ月で日常動作がほぼ可能になりますが、断裂が完治するわけではありません。 中等度では、日常生活復帰に2〜3カ月、肩の動きや筋力の回復に6〜12カ月かかります。軽作業は約3カ月で可能な場合もありますが、重い作業や高負荷スポーツは6カ月程度が目安です。3カ月以上治療しても改善がない場合や断裂が大きい場合は手術を検討します。 重度・広範囲では手術が必要で、回復には半年〜1年以上かかります。年齢や筋力、生活環境により差があるため、無理をせず医師や理学療法士の指導のもとで治療とリハビリを行うことが重要です。 腱板損傷の治療法 治療法 詳細 薬物療法 症状緩和目的の消炎鎮痛剤や湿布、関節内注射による炎症抑制 温冷療法 血流促進と筋肉の緊張緩和を狙う温熱・冷却処置。リハビリ補助療法 リハビリテーション 肩周囲筋の筋力維持・可動域拡大。残存機能の強化と動作指導 手術療法 断裂部の縫合修復。関節鏡による小切開手術が主流。重症例で適応 再生医療 幹細胞等を用いて損傷組織の再生促進。新規治療法として注目 腱板損傷の治療は、患者の年齢や活動レベル、損傷の範囲・重症度を総合的に考慮して決定されます。保存療法では、消炎鎮痛剤や湿布、関節内注射による炎症抑制、温熱や冷却による血流改善と筋緊張緩和、肩周囲筋の筋力維持や可動域拡大を目的としたリハビリテーションを行います。 重度の断裂や保存療法で改善が得られない場合は、関節鏡による小切開での縫合修復術などの手術が適応です。幹細胞を用いた組織再生を促す再生医療も、新たな選択肢として注目されています。 薬物療法 有効な理由 詳細 炎症や腫れの抑制 NSAIDsやステロイド注射による炎症抑制と腫れ軽減。夜間の不快感や動作時の負担軽減 リハビリ継続のための環境づくり 痛み軽減による可動域訓練や筋力トレーニング開始の容易化 日常動作のストレス軽減 家事や運転などの日常動作時の違和感や不安の軽減 保存療法の柱としての役割 保存療法構成要素の一つとして症状軽快の確率向上。手術回避の補助 腱板損傷に対する薬物療法は、炎症や腫れを抑えて痛みを軽減し、治療を円滑に進めるための重要な方法です。NSAIDs(消炎鎮痛薬)やステロイド注射は、痛みや可動制限を緩和し、夜間の不快感や日常生活での負担を減少させます。 ステロイド注射は腱の損傷を悪化させずに症状を改善し、その効果が半年以上続くため、リハビリ継続と肩機能の改善に寄与します。 薬物療法は腱を修復する治療ではありません。しかし、残存する腱や筋肉の機能を活かし、肩の使い方を改善するための支援となります。リハビリや他の治療と組み合わせることで、機能回復を効果的に支えます。 温冷療法 状況・時期 詳細 急性期(受傷〜48時間以内) アイスパックや冷湿布による炎症・腫れの抑制。痛みの緩和と患部保護 慢性期(炎症が落ち着いた後) 温湿布や温浴による血行促進。筋肉のこり緩和と関節可動性の向上 温→冷の交替使用 血流改善とこわばり軽減。疲労回復の補助 日常生活での取り入れやすさ 自宅でも実施可能な負担軽減法。リハビリ前後の補助にも有用 注意点 1回15分以内・1時間に1回目安。冷やす際は肌を保護。温め過ぎはやけどリスク。循環障害・皮膚脆弱部位は医師指示必須 温冷療法は、腱板損傷の症状や回復段階に応じて冷却と温熱を使い分ける方法です。受傷直後や炎症が強い急性期は、冷却により炎症と腫れを抑え、痛みを軽減します。炎症が落ち着いた慢性期には温めることで血流を促し、筋肉のこりを和らげ、肩関節の動きを改善しやすくします。 また、温めた後に冷やす交替浴により循環が促進され、こわばりの軽減にもつながります。自宅でも実践可能で、リハビリ前後の痛みコントロールや準備運動の補助として有効です。ただし、冷やしすぎや温めすぎは逆効果となる場合があり、皮膚の保護や時間管理が重要です。 また、循環障害や皮膚が弱い方は使用前に医師へ相談しましょう。温冷療法は腱断裂を直接治すものではなく、あくまで保存療法の一部として症状緩和と機能改善を支える補助的役割を果たします。 リハビリテーション 有効な理由 詳細 周囲の筋肉で肩を支える 残存する筋肉や肩甲骨周辺の動きを整え、三角筋などで断裂部を補う安定性の向上 可動域維持と拘縮予防 動かせる範囲を保ち、肩のこわばりや凍結肩の発症を防ぐ可動域練習 筋力回復による日常動作改善 手を挙げる・物を持つ動作を支える筋力強化による機能回復 正しい姿勢と使い方の習得 肩甲骨の動かし方や姿勢の修正による再断裂予防と負担軽減 手術回避や術後回復の促進 中等度以下では保存療法で症状改善、術後の機能回復促進 腱板損傷は断裂した腱の自然修復は極めて困難ですが、リハビリテーションにより残存する筋群や肩甲骨周囲の機能を整え、肩関節の安定性と可動性を向上させることが可能です。とくに三角筋などの働きが断裂部を補完し、日常生活動作の円滑化に寄与します。 長期間の不動は拘縮や凍結肩を招きやすいため、疼痛のない範囲で関節可動域を維持することが重要です。さらに、段階的な筋力強化により物の把持や挙上動作が改善し、生活復帰が促進されます。理学療法士による姿勢や肩の使用方法の適正化は、再発予防にも効果的です。 軽度〜中等度の損傷では手術回避が可能な場合があり、手術を行う場合でも術後の機能回復を支援します。定期的な評価と継続的介入が良好な治療成績と将来的な肩障害予防につながります。 以下の記事では、痛みを和らげる方法やストレッチの方法をわかりやすく解説しています。 手術療法 有効な理由 詳細 腱板断裂を元の位置につなげる唯一の方法 関節鏡や直視下手術による断裂部の再固定と修復 進行防止と肩機能維持 偽性麻痺や変形関節症への進行予防 関節鏡手術による低侵襲治療 約1.5cmの小切開から器具を挿入し、出血・感染・身体負担を軽減 手術は早期ほど有利 早期対応で医療費増加や再治療リスクを抑制 術後リハビリの重要性 可動性と筋力を段階的に回復させ結果を向上 腱板損傷の手術は、切れた腱を骨へ再固定できる唯一の方法です。自然治癒ではほとんど再接着しないため、進行すれば肩を上げられなくなる偽性麻痺(肩を上げられなくなる状態)や、関節の変形を伴う変形性関節症に至る危険があります。 現在は関節鏡を使った低侵襲手術が主流です。1.5cm程度の小切開から器具を挿入するため出血や感染のリスクが少なく、身体への負担も軽減されます。 腱板損傷は手術開始の遅れが再治療リスクを高める可能性があり、術後は理学療法士の指導による早期リハビリで可動域と筋力を回復させることが、長期的な肩機能の維持と生活の質向上に直結します。 再生医療 再生医療は、自身の身体から採取した幹細胞を培養・増殖させ、損傷部へ注射することで腱板の修復・再生を促す先進的治療法です。従来の薬物療法やリハビリでは改善が難しい場合でも、損傷した腱板の治癒力を高め、根本的な回復を目指せます。 手術のような大きな切開や入院を伴わず、注射で行うため身体への負担が少なく、感染症リスクも極めて低いことが特徴です。さらに、日常生活への制限がほぼなく、リハビリと併用することで機能回復をより効果的に進められる可能性があります。 ただし、実施している医療機関は限られているため、受診前に対応可否を確認することが必要です。痛みの軽減と腱板の再生を同時に実現し、手術を回避できる選択肢として有効性が期待されています。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷に対する再生医療の症例を紹介しています。 また、以下の記事では、再生医療について詳しく解説しているのでご覧ください。 【関連記事】 PRP療法のメリット・デメリットは?効果や費用も紹介 肩の腱板損傷にはテーピングが有効!巻き方やリハビリについて専門医が解説 腱板損傷は自然治癒に頼らず医療機関を受診しよう 腱板損傷は放置すると進行し、手術が必要となる可能性があります。軽度の場合でも、画像診断で損傷範囲を正確に把握し、適切な治療計画を立てることが重要です。早期に受診すれば保存療法による改善が期待でき、生活や仕事への影響を最小限に抑えることが可能です。 腱板損傷でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院は、腱板損傷の治癒に有効である再生医療を選択肢のひとつとしてご提案しています。再生医療は、手術に伴う感染症や薬物による副作用のリスクが低いメリットがあります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 腱板損傷の自然治癒に関するよくある質問 サプリメントや市販品で腱板損傷は良くなりますか? 腱板損傷は、サプリメントだけで断裂が治る科学的根拠はありません。成分によって痛みの軽減など短期的な効果が期待できる場合はありますが、腱を物理的に修復する証拠はなく、機能改善の裏づけも不十分です。 サプリに頼りすぎることで治療のタイミングを逃し、症状が悪化する恐れがあります。まずは医師による診察と画像検査で損傷の程度を確認し、適切な治療計画を立てることが大切です。 腱板損傷を再発させない方法はありますか? 腱板手術後は、専門家の指導のもとで可動域回復から筋力強化まで、段階的にリハビリを行うことが推奨されます。 日常生活では、重い荷物の運搬や腕を大きく振る動作を避け、肩甲骨周囲の筋力と柔軟性を維持します。姿勢の改善、過負荷の回避、適切な栄養管理も再断裂予防に重要です。 参考文献 (文献1) 腱板断裂の自然経過|J-STAGE
2025.08.31 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「腱板損傷の症状が一向に良くなる兆しが見えない」 「腱板損傷はどれくらいで治るのか知りたい」 違和感や力の入りにくさを感じると、仕事や私生活に大きな支障が生じます。腱板損傷と診断されても、どのような治療法があり、どれくらいで回復できるのかがわからず、不安を抱く方は少なくありません。 とくに日常的に肩を酷使する人やスポーツ愛好者にとって、放置による悪化は避けたいものです。本記事では、腱板損傷の治療法について現役医師が詳しく解説します。記事の最後には、腱板損傷の治療についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板損傷の治療法について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板損傷はどれくらいで治る? 進行度 詳細 軽度 保存療法による日常生活の改善期、症状の安定期(慢性化抑制)、3〜6カ月で日常生活動作の支障軽減、最大6カ月でスポーツ・肉体労働復帰の目安 中等度 保存療法とリハビリ継続、6カ月〜12カ月程度の治癒期間、症状の程度や個人差による回復期間の変動、日常生活や軽いスポーツ復帰の可能性 重度 手術が必要な場合が多い術後2〜3カ月で日常生活の支障が軽減し、3カ月頃から軽作業が可能、6カ月程度で重作業やスポーツ復帰目安、場合により1年以上の回復期間 腱板損傷の回復期間は、損傷の程度や治療方法、肩の使い方によって異なります。 軽度は保存療法で数週間〜3カ月で症状が安定し、3〜6カ月で日常生活に支障がほぼなくなります。中等度は6〜12カ月、重度は6カ月〜1年以上かかることもあります。(文献1) 広範囲の断裂では手術が必要となり、術後2~3週間の固定と2~3カ月のリハビリが必要です。(文献2) 年齢や基礎疾患、肩を酷使する習慣も影響するため、早期からの適切な治療とセルフケアが重要です。 腱板損傷の原因や治療法など、包括的な内容に関しては「【医師監修】腱板損傷とは|症状・原因・治療法を詳しく解説」をご覧ください。 腱板損傷|軽度 項目 内容 状態 腱板の一部に炎症や小さな損傷がある状態 主な治療法 安静、日常動作の見直し、物理療法(温熱・冷却)、消炎鎮痛薬、軽いリハビリ 回復までの目安 日常生活の改善は3〜6カ月、スポーツ・重作業復帰は最大6カ月ほど 注意点 肩に負担をかける動作の回避、症状が軽くても無理をしない 予後・見通し 早期治療により損傷拡大を防ぎ、数週間〜3カ月で症状を安定させる 軽度の腱板損傷は、腱の一部に炎症や小さな損傷がある状態です。原因は繰り返しの肩の使用や急な動作による負荷で、放置すると悪化し中等度・重度になる可能性が高い状態です。治療は安静、生活動作の見直し、物理療法、消炎鎮痛薬、リハビリを組み合わせて実施されます。 早期治療で損傷の拡大を防ぎ、症状は数週間〜3カ月で安定します。日常生活には早期復帰できますが、スポーツや重作業は3〜6カ月かかる場合があり、痛みが軽くても肩の酷使を避け、休養と段階的リハビリが必要です。 腱板損傷|中等度 項目 内容 状態 腱板の一部に部分断裂や炎症の拡大 主な治療法 安静、日常動作の見直し、物理療法(温熱・冷却)、消炎鎮痛薬、計画的なリハビリテーション 回復までの目安 日常生活復帰は約2〜3カ月。スポーツ・重作業復帰は一般的に6〜12カ月 注意点 痛みが軽減しても無理な復帰は再発リスク。リハビリ・保存療法で十分な改善が得られない場合は手術を検討 予後・見通し 計画的な治療・リハビリ継続で比較的円滑な社会・スポーツ復帰が可能(ただし症状や治療法により期間は前後) 中等度の腱板損傷は、腱の部分断裂や炎症が広がり、肩の可動域制限や筋力低下がみられる状態です。治療は安静、生活動作の見直し、物理療法、薬物療法、リハビリを組み合わせた保存療法が中心で、改善が乏しい場合や断裂範囲が広い場合は関節鏡手術を検討します。 保存療法では、日常生活復帰まで約2〜3カ月、スポーツ・重作業復帰まで約6カ月、治癒まで6〜12カ月かかる場合が多いです。手術を行った場合は術後リハビリを含め半年以上かかります。自然治癒は難しいため、無理な動作を避け、医師や理学療法士の指導に沿って段階的に回復を進めることが重要です。 腱板損傷|重度 項目 内容 状態 腱の完全断裂により日常動作や腕の挙上が著しく制限される状態 主な治療法 手術による腱の修復、術後3〜6週間の固定・安静後にリハビリ開始 回復までの目安 術後2〜3カ月で日常生活の支障が軽減し、3カ月頃から軽作業が可能、6カ月でスポーツ・重作業復帰が一般的だが個人差大 影響要因 放置による関節変形や機能回復の限界、再断裂リスク、リハビリの継続と医師指導の厳守が重要 注意点 年齢、損傷範囲、治療法、リハビリ状況などによる回復期間の差異 重度の腱板損傷は、腱が完全に断裂し、日常生活の動作や腕の挙上が著しく困難となる状態です。保存療法のみでの回復は難しく、多くの場合は手術による修復が必要です。手術後は約3〜6週間の安静期間を経てリハビリを開始し、縫合部の修復にはおよそ3カ月を要します。 日常生活への復帰は術後2〜3カ月、軽作業は術後3カ月頃から可能となる場合が多く、スポーツや重作業への復帰は術後6カ月以降が目安です。全体の回復期間は半年〜1年程度ですが、損傷範囲や年齢、肩の使用状況によっては1年以上を要することもあります。 保存療法を選択した場合でも、重度損傷では回復に半年以上かかることが多いため、放置による関節変形や機能低下を防ぐために、早期の医療介入と計画的なリハビリの実施が重要です。 以下の記事では、重度の腱板損傷について詳しく解説しています。 腱板損傷の治療法 治療法 詳細 セルフケアと生活上の工夫を実践する 肩への負担の軽減、姿勢・動作の見直し、日常生活での適切な休養と工夫 温冷療法 急性期の冷却による炎症抑制、慢性期の温熱による血流促進と筋肉のこわばり緩和 薬物療法 消炎鎮痛薬の内服、局所ステロイド注射による炎症抑制と症状の緩和 リハビリテーション 可動域改善、筋力強化、専門家指導のもと段階的に負荷を増やす運動療法 手術療法 重度断裂に対する腱の修復手術、術後の安静期間と段階的リハビリ 再生医療 幹細胞・PRP療法による腱修復促進、保存療法や手術の補完的治療 腱板損傷の治療は、症状や損傷の程度に応じて適切な方法を選択します。セルフケアでは、肩への負担を減らし、姿勢や動作を見直し、十分な休養を取ることが重要です。温冷療法は、急性期に冷却で炎症を抑え、慢性期に温熱で血流を促進します。 薬物療法では、消炎鎮痛薬の内服や局所ステロイド注射により炎症と痛みを軽減します。リハビリテーションは、可動域改善や筋力強化を目的に、専門家の指導のもと段階的に運動を行います。重度断裂では、腱修復手術が必要となり、術後には安静期間と継続的なリハビリが欠かせません。 再生医療は、幹細胞やPRP療法で腱修復を促す方法ですが、実施医療機関が限られており、事前に対応可否と適応の有無について医師の診察を受ける必要があります。 以下の記事では、肩腱板断裂(腱板損傷)の痛みについて詳しく解説しています。 セルフケアと生活上の工夫を実践する 内容 詳細 肩への負担を減らす生活習慣の見直し 重い物を持つ・腕を急に上げる動作の回避、姿勢改善による肩への負担の軽減 温冷療法の活用 怪我初期は冷却で炎症抑制、その後は温熱で血流促進と筋緊張緩和 適切なリハビリやストレッチの実践 医師の指導で痛みのない範囲の運動・可動域拡大、筋力強化 適切な安静と休息 無理な動作を避け、日常生活で安静時間を確保 医療機関でのフォローに併せた自宅ケア 注射・物理療法の補完として計画的なセルフケア継続 腱板損傷は自然治癒が難しく、肩への負担軽減と肩周囲筋の強化が症状の軽減と機能維持に重要です。セルフケアでは、無理な腕の挙上や高所への手の動きを避け、就寝時は肩を圧迫しない姿勢を保ち、必要に応じてタオルやクッションで支えます。 荷物は片手に偏らず両手や身体全体で分散し、デスクワークではモニター位置を調整して長時間同姿勢を避けることで、炎症悪化防止や可動域維持、再発予防につながります。医療機関での治療と併用することで、より効果的な症状管理が可能です。 以下の記事では、肩の腱板損傷のセルフケアに役立つテーピングについて詳しく解説しています。 温冷療法 方法 適用時期・目的 実施方法 注意点 冷却療法(アイシング) 急性期(受傷〜48時間以内)、炎症・腫れの抑制、二次損傷予防 氷嚢やアイスパックをタオルで包み、患部に15分程度あてる。15〜20分ごとに繰り返す 直接長時間あてない、皮膚の凍傷防止、間隔を空ける 温熱療法 慢性期・回復期、血行促進、筋肉や腱の柔軟性改善、可動域拡大 ホットパック、温タオル、入浴などで温める 急性期は避ける、皮膚低温やけど防止、持病がある場合は医師へ相談 温冷療法は、腱板損傷による痛みや炎症の管理に有効な方法です。冷却療法は、受傷直後や急性期に氷嚢やアイスパックをタオルで包み、15分程度患部にあてることで血管を収縮させ、炎症や腫れを抑えます。これにより二次的な組織損傷の予防にもつながります。 温熱療法は、炎症が落ち着いた慢性期や回復期に行います。ホットパックや入浴で肩を温めることで血流を促進し、筋肉や腱の柔軟性を高め、可動域の改善や痛みの緩和を図ります。症状や時期に応じた適切な使い分けが重要です。 冷やすべき時期に温めると悪化する恐れがあります。また、長時間の直接冷却や高温での長時間温熱は避け、持病がある場合は必ず医師に相談の上で実施する必要があります。 薬物療法 薬物療法の種類 詳細 消炎鎮痛剤(NSAIDs) 飲み薬や貼り薬による炎症物質生成の抑制と症状軽減、軽度〜中等度症状への初期対応、日常動作負担の軽減 局所ステロイド注射 関節内や周囲への直接注入による強力な炎症抑制、即効性のある一時的効果、4回以上の連続使用非推奨、医療機関での実施とリハビリ併用 その他の補助的薬物療法 筋弛緩薬や鎮痛補助薬による補助的対応、消炎鎮痛剤の補完的使用 薬物療法は、炎症を軽減し機能回復を支援する目的で行われます。一般的に使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は炎症や疼痛の軽減に使用される薬剤です。 急性期や症状が強い場合は関節内ステロイド注射で炎症を抑え、リハビリや生活を行いやすくします。長期使用は副作用の恐れがあるため医師の指示に従い、生活改善やリハビリと併用して効果を高めます。 リハビリテーション 段階 詳細 急性期 安静、アイシング、無理のない範囲での肩関節可動域運動 回復期 ストレッチ開始、肩の柔軟性回復、肩甲骨・肩関節周囲筋の軽い筋力強化 強化期 抵抗トレーニング導入、肩周囲筋力と持久力向上 維持期 適切な負荷管理下での定期的運動継続、肩機能維持と再発防止 患者指導 痛みを悪化させる動作回避法、日常生活での肩負担軽減法 医療機関との連携 段階的運動負荷調整、安定したリハビリ進行のための医師・理学療法士の指導 腱板損傷の回復と疼痛軽減には、段階的かつ計画的なリハビリテーションが重要です。リハビリは可動域改善と筋力強化によって肩関節の安定性を高め、肩甲帯の適切な働きで関節への負担を減らします。 急性期は安静とアイシング、軽い可動域運動で炎症を抑え、回復期にはストレッチや軽い筋力トレーニングで柔軟性と支持力を回復します。 強化期には抵抗運動で筋力・持久力を高め、維持期では定期的な運動と負荷管理で再発を防ぎます。全過程を通じて、医師や理学療法士の指導のもと日常生活での負担軽減と安定した運動進行を実施することが大切です。 以下の記事では、腱板損傷に効果的なリハビリ方法について解説しています。 手術療法 項目 詳細 手術の目的 保存療法で改善しなかった場合、重度機能障害を伴う場合に有効 主な適応 大きな断裂、進行例、保存療法で改善が乏しい症例 手術方法 関節鏡視下手術による断裂腱の縫合固定、腱と骨の再連結 手術の流れ 肩に小切開を数か所、関節鏡と専用器具で断裂部確認・修復 手術後経過 数週間の固定後、専門的リハビリ開始、軽作業は数カ月、運動復帰は半年程度 期待される効果 肩機能改善、可動域制限や再断裂リスク低減、長期的予後の向上 保存療法(リハビリや薬物療法)では修復が困難な大きな断裂や進行例に有効です。対して手術療法は、重度の機能障害や保存療法で改善しない場合に推奨されています。 主流は関節鏡視下手術で、小切開からカメラと器具を挿入し断裂部を修復、腱を骨に縫合固定します。腱と骨の癒合により肩の安定性と可動域が改善します。術後は数週間固定し、その後リハビリを行い、軽作業は数カ月後、スポーツや重作業は半年程度で復帰可能です。 再生医療 腱板損傷に対する再生医療は、患者自身の幹細胞や血小板を培養し、損傷部へ注射して組織の修復・再生を促す治療法です。 自然治癒が難しい損傷に対し、痛みの緩和と正常に近い組織回復を目指します。手術や入院の負担がなく侵襲も少ないため、保存療法と併用して回復を促すこともあります。ただし、適応条件や症例は限られ、実施施設も限られているため、医師の慎重な判断が必要です。従来治療で効果が不十分な場合や手術を避けたい場合に選択されます。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷に対する再生医療の症例を紹介しています。ぜひご確認いただき、再生医療も治療法の一つとしてご検討ください。 腱板損傷を放置するリスクと注意点 放置するリスク 詳細 症状の進行と機能低下 断裂部位の拡大、肩関節の筋力低下、可動域制限、日常生活動作の困難 炎症の慢性化と関節変形 慢性的な炎症の持続、滑膜炎、関節内の癒着、関節の変形や骨の摩耗 生活・仕事への影響 肩の動かしにくさ、作業や趣味の制限、睡眠障害や日常動作への支障 手術が必要になることもある 保存療法での改善困難、断裂の悪化、機能回復不全、最終的に手術や人工関節置換術の必要性 腱板損傷を放置すると損傷拡大や炎症慢性化により、筋力低下や関節変形、日常生活への支障が進行します。断裂が進めば手術が必要となり、回復期間が長期化する恐れがあります。 症状の進行防止と機能低下の抑制のため、早期に医療機関で診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。 以下の記事では、腱板損傷を放置するリスクについて詳しく解説しています。 症状の進行と機能低下 理由 詳細 断裂部位の拡大 損傷部が自然修復されず裂け目が広がることで、肩の安定性低下 筋肉の萎縮 使わなくなった腱板筋のやせ細りによる筋力低下 可動域の制限 筋力低下や断裂の進行による関節の動きの狭まり 慢性炎症と拘縮 持続する炎症による組織の硬化と肩のこわばり 関節変形の進行 軟骨摩耗による骨同士の接触と変形性関節症の発症 腱板は肩関節の安定を保つ重要な組織ですが、血流が乏しく自然修復が難しいため、損傷を放置すると悪化しやすくなります。 時間の経過とともに断裂が拡大し筋力が低下、可動域制限や拘縮が進行して肩の動きが困難になります。長期間放置すると軟骨摩耗や骨の接触による変形が進み、痛みや機能低下で日常生活に影響を及ぼすため早期治療が必要です。 炎症の慢性化と関節変形 理由 詳細 炎症の慢性化 損傷部位の持続的刺激による炎症継続、組織の硬化と拘縮発生、肩可動域の制限、痛みや使いにくさの長期化 関節変形 腱板機能低下による軟骨摩耗、骨同士の直接接触、骨形態の変化(変形性肩関節症)、肩動作の制限と痛みの悪化 腱板損傷を放置すると肩関節内の炎症が慢性化し、周囲組織が硬くなる拘縮が生じることで、可動域が制限され、腕の動かせる範囲が狭くなります。 腱板機能の低下が長期化すると肩関節への負担が増え、軟骨摩耗や骨の変形を伴う変形性肩関節症へ進行する危険が高まります。変形が進行すると不可逆的な変化となり、手術を含む大規模な治療が必要になる場合があるため、早期診断と適切な治療で重度の関節障害を防ぐことが重要です。 生活・仕事への影響 リスク・注意点 詳細 炎症の慢性化 長期間の損傷による炎症持続、肩周囲組織の硬化(拘縮)、痛みや不快感の長期化 関節変形 腱板機能低下による軟骨摩耗、骨同士の接触、変形性肩関節症への進行と症状悪化 生活・仕事への影響 腱板筋力低下による動作不全、日常生活動作の困難化、睡眠や仕事への悪影響 腱板損傷を放置すると炎症が慢性化して拘縮が起こり、可動域が制限されます。さらに機能低下が進み、軟骨摩耗や骨の接触から変形性肩関節症へ進行し、痛みや動作制限が悪化します。 筋力低下による動作不全は日常生活や仕事、趣味に支障をきたし、生活の質低下や精神的負担を招くため、早期診断と適切な治療が重要です。 手術が必要になることもある 理由 詳細 断裂の拡大による修復困難 切れた腱板が自然修復されず裂け目が広がり、手術での修復難易度が上昇 症状悪化による生活支障 強い痛みや可動域制限による日常生活・仕事・趣味の制限 筋力低下・腱の退縮 長期放置による筋萎縮や腱の硬化による回復不良と再断裂リスク増加 重症化による手術の必要性 進行例で腱板修復が困難となり、筋膜移植や人工関節置換術が必要となる可能性 腱板損傷は肩関節の安定と動きを担う腱が切れる病態で、軽症なら保存療法で改善することもありますが、放置すると損傷が進行し、断裂拡大により手術が難しくなり、痛みや可動域制限で生活に支障をきたします。 長期放置は筋萎縮や腱退縮を招き、再断裂や機能回復不良のリスクを高め、重症化すれば大規模手術が必要になります。症状が悪化したり生活への影響が大きい場合は、早期に専門医を受診し、手術時期を含めた治療方針を検討することが重要です。 腱板損傷の再発を防止する方法 再発を防止する方法 詳細 適切なリハビリで肩周囲筋と肩甲帯を強化する 棘上筋・棘下筋・肩甲骨安定化筋の筋力向上、肩関節と肩甲帯の安定性確保 定期的なストレッチと可動域訓練で柔軟性を維持する 肩関節と肩甲骨周囲の筋群の柔軟性保持、関節可動域の正常化 姿勢や腕の動きを見直し肩への過負荷を抑える 猫背や巻き肩の矯正、腕の急激な挙上や過度な外旋の回避 回復期には運動強度を段階的に調整して進行させる 急激な負荷増加の回避、運動内容と強度の計画的漸増 腱板損傷の再発を防ぐには、回復後も肩周囲筋と肩甲帯の安定性を維持することが重要です。棘上筋・棘下筋・肩甲骨安定化筋を中心とした筋力強化と、定期的なストレッチや可動域訓練による柔軟性保持が欠かせません。 日常生活では猫背や巻き肩を避け、急激な腕の挙上や過度な外旋など肩に負担をかける動作を控えます。さらに、作業環境やスポーツ動作を見直し、運動強度は段階的に調整することが大切です。こうした継続的な取り組みにより、再発リスクを低減し、肩機能の長期的な維持が可能となります。 適切なリハビリで肩周囲筋と肩甲帯を強化する 項目 詳細 肩関節周囲のストレッチと可動域訓練 肩甲骨周囲の柔軟性向上、関節可動域の拡大 チューブや軽い抵抗を使った筋力トレーニング 回旋筋群(外旋・内旋)と肩甲帯の段階的強化、肩状態に応じた負荷調整 姿勢改善や動作指導 肩への過度な負担軽減、日常生活や仕事での適切な肩の使い方指導 医師の指導のもとでの段階的リハビリ 理学療法士などによる継続的な運動指導、再発予防 腱板損傷は、保存療法で改善が見込める段階を過ぎると腱の再接合が難しくなり、手術が必要になる場合があります。手術は有効な治療法ですが、身体的・精神的負担が大きく、術後には長期間のリハビリが必要です。 軽度〜中等度の損傷は、保存療法で回復することが一般的ですが、放置すると断裂の進行や慢性痛により手術が必要になるリスクが高まります。早期治療は手術回避や将来の機能低下防止に有効です。 定期的なストレッチと可動域訓練で柔軟性を維持する 運動名 詳細 振り子運動 前かがみ姿勢で反対腕を支え、痛む腕を下に垂らして左右・前後に小さく揺らす可動域拡大運動 クロスボディストレッチ 腕を肩の高さまで上げ、反対の手で肘を体側へ引き寄せ肩後方を伸ばす柔軟性向上運動 手のひら回し 両腕を肩の高さに上げ、手のひらを回して肩甲骨周囲を動かす可動性向上運動 腕の上げ下げ運動 椅子に座って背筋を伸ばし、痛みのない範囲で腕をゆっくり上げ下げする可動域維持運動 腱板損傷のリハビリでは、肩関節の柔軟性を保ち可動域を広げることが重要です。振り子運動やクロスボディストレッチ、手のひら回し、腕の上げ下げ運動などを痛みのない範囲で行いましょう。 筋肉が硬くなると可動域が狭まり、肩に過度な負担がかかりやすくなります。これを防ぐためには、定期的なストレッチや可動域訓練を習慣化することが大切です。肩回しや肩甲骨を意識したストレッチを日常に取り入れ、とくに起床時や運動前後に実施することで筋肉の柔軟性を維持し、再発リスクを減らせます。 姿勢や腕の動きを見直し肩への過負荷を抑える 項目 詳細 姿勢改善 猫背矯正と背筋伸展による肩甲骨位置の正常化、デスクワーク時のモニター高さ・椅子高さ調整 腕の動きの工夫 過度な挙上や急なねじり動作の回避、肩負担軽減を意識した動線確保 肩甲骨の動きを意識 肩甲骨安定化筋の活用による滑らかな肩・腕の動作、肩甲骨周囲ストレッチやエクササイズの実践 仕事・日常動作の見直し 両手での物の持ち運び、左右の腕の使用バランス確保による肩負担分散 腱板は肩関節の動きと安定性を支える重要な組織です。不適切な姿勢や腕の使い方は過剰な負担となり損傷や再発の原因になります。猫背や巻き肩は肩甲骨の動きを制限し、肩関節に不要なストレスを与えます。 腕の無理な高挙や急なひねり、誤ったスポーツフォームはリスクを高める原因です。日常生活や仕事では背筋を伸ばし、モニターや椅子の高さを調整して姿勢を整え、物は両手で持ち左右均等に使います。肩甲骨安定化筋を鍛える運動やストレッチも有効です。必要に応じて専門家の動作指導を受けることが望まれます。 回復期には運動強度を段階的に調整して進行させる 腱板損傷のリハビリでは、回復期に運動強度を段階的に調整することが重要です。損傷部が完治する前に強い負荷をかけると、腱や筋肉に過剰なストレスがかかり、再断裂や炎症悪化の恐れがあります。 初期は軽い可動域訓練から始め、回復状況に応じてチューブや軽負荷を使った筋力強化へ移行し、最終的には日常生活やスポーツ動作に進めます。 段階的な負荷増加は腱や筋肉の適応を促し、肩関節の安定性を高める上で効果的な方法です。医師や理学療法士の指導のもと、状態に合わせた調整を行うことで無理なく長期的な機能回復に寄与します。 腱板損傷の治療にお悩みの方は当院へご相談ください 腱板損傷は放置すると断裂の進行や慢性化を招き、痛みや可動域制限が悪化して日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。早期に正しい治療を開始し、継続的に取り組むことが回復への近道です。 腱板損傷が改善せずお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、損傷部位の修復を目的とした再生医療を選択肢のひとつとしてご案内し、症状や状態に応じた治療方針を検討いただけます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 腱板損傷の治療に関するよくある質問 腱板断裂でやってはいけないことはありますか? 腱板断裂では、肩に大きな負担をかける動作は避けましょう。重い物を持ち上げる、遠くへ手を伸ばす、腕を強くひねる、急な動作や過度な力をかける、肩を後ろに回すなどは悪化や再断裂の原因になります。 とくに手術後3カ月ほどは無理な運動を控え、医師の指示に従って段階的に動かすことが大切です。 腱板損傷の筋力や痛みを確認する方法はありますか? 腱板損傷の状態を確認するには、自宅でできるセルフチェックと医療機関での検査があります。腕の挙上時に肩の中央付近で痛む(ペインフルアークサイン)、腕の内外旋で痛みや力の入りにくさがある、肩の外転時に筋力低下や痛みが出る場合は注意が必要です。 医療機関では徒手筋力テスト、視診・触診、超音波やMRIで損傷の程度を評価します。痛みや筋力低下が続く場合は早期受診が重要です。 腱板損傷で社会保険(労災・障害年金など)は受けられますか? 腱板損傷で社会保険を受けるには以下の条件を満たす必要があります。 種類 条件 労災保険 仕事中や業務関連の事故・負傷で「業務遂行性」と「業務起因性」が認められること 勤務中の作業や出張中の事故、業務に密接した活動中の負傷が対象 重作業の蓄積で発症した場合も対象となることがある MRIや診断書など医学的証拠が必要、原因の業務起因性の明確化が必須 障害年金 腱板損傷により肩の機能障害や可動域制限が残り、日常生活や労働に著しい支障がある場合 MRI画像や可動域制限の度合いにより12級や14級などの障害等級が認定されることがある 医師の診断書提出が申請に必須で、障害状況が詳細に評価される この表は、労災保険は業務に関連した明確な原因が認められ、医学的証拠が必要である点、障害年金は日常生活や労働に著しい支障をきたす機能障害が条件となることを示しています。 それぞれの制度で求められる証明や認定基準に基づいて申請されます。これにより患者様は、労災保険と障害年金の適用条件を理解し、適切な手続きを行うためのポイントが把握できます。 参考文献 (文献1) 肩腱板損傷はどのくらいで治る?日常生活への影響と回復のタイムライン|むとう整形外科・MRIクリニック (文献2) 「肩腱板断裂」|公益社団法人 日本整形外科学会
2025.08.31 -
- 腱板損傷・断裂
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「肩に違和感がある」 「夜中に目が覚めるほどつらい」 それは腱板断裂のサインかもしれません。腱板断裂とは、肩の腱板が損傷または断裂し、腕が上がらない、筋力低下、夜間の痛みなどを引き起こす疾患です。とくに肩を長年酷使してきた人や中高年では発症リスクが高まります。 本記事では、腱板断裂について現役医師が詳しく解説します。 腱板断裂の原因 自分でできる腱板断裂のセルフチェック 腱板断裂の治療法 腱板断裂の予防法 腱板断裂と似ている症状 腱板断裂は、適切な診断と治療により症状の改善が期待できます。本記事を通じて症状を正しく理解し、治療法の選択に役立てください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板断裂について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板断裂とは 項目 内容 定義 肩の深部にある腱板の腱が、上腕骨の付着部から部分または完全に剥がれた状態 役割 肩関節の安定維持と腕の上下・回転動作の補助 構成筋 棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋 主な原因 加齢による腱の弱化、肩の酷使(スポーツ・肉体労働)、外傷(転倒や事故) 症状 腕の挙上や物を持つ力の低下、挙上制限、肩の不安定感、動作時や夜間の違和感 診断方法 MRI検査、超音波検査、医師による徒手テスト 要点 発症は中高年に多く、原因や症状は多様。早期診断と適切な治療が肩機能維持の鍵 腱板断裂は、肩の運動と安定性に重要な腱板が損傷または断裂した状態です。腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの筋肉の腱で構成され、上腕骨頭と肩甲骨をつなぎ、腕の挙上や回旋を担います。 損傷が生じると、肩の違和感や筋力低下、可動域の制限などが現れ、日常生活に支障を及ぼします。断裂にはすべての腱が切れる完全断裂と、一部のみが損傷する部分断裂があります。放置すると悪化し、回復が難しくなる場合があるため、症状が見られた場合は早期に医療機関で診断と適切な治療を受けることが重要です。 以下の記事では、肩腱板断裂(損傷)について詳しく解説しています。 腱板断裂の原因 原因 詳細 加齢による腱の変性と断裂のリスク 腱の老化・血流低下による組織の弱化および弾力低下 スポーツや肉体労働による肩の酷使 繰り返しの肩使用や過度の負荷による腱の摩耗・損傷 転倒や事故など外傷による断裂 強い衝撃や捻挫による急激な腱の断裂・損傷 腱板断裂は、加齢に伴う腱の老化や血流低下による組織の弱化・弾力低下、スポーツや肉体労働などでの繰り返しの肩使用による摩耗、さらに転倒や事故による強い衝撃や捻挫など、さまざまな要因で発症します。原因を理解することは、予防や早期発見のためにも重要です。 加齢による腱の変性と断裂のリスク 加齢により肩の腱は弾力や柔軟性を失い、損傷しやすくなります。原因はコラーゲン繊維の劣化、水分量の減少、血流低下による修復力の低下です。 日常生活や仕事、スポーツでの長年の使用による摩耗も影響し、わずかな負荷や軽い外傷でも断裂が起こります。40歳以降でリスクが高まり、60歳を超えると発症が増えます。(文献1)肩の違和感や動きの変化があれば、早期の医療機関への受診が重要です。 スポーツや肉体労働による肩の酷使 肩を繰り返し使うスポーツや肉体労働は腱板に負担をかけ、損傷や断裂の原因となります。野球やテニス、水泳、重量物の持ち運びなどの頭上動作は肩関節への負荷が大きく、腱板が骨にこすれて摩耗しやすくなります。 この摩耗が蓄積すると強度が低下し断裂に至ります。利き腕に多く、慢性的な酷使が主因ですが、転倒など一度の衝撃でも発症します。肩の痛みや違和感があれば早期の受診が必要です。 以下の記事では、腱板が再断裂する原因を詳しく解説しています。 転倒や事故など外傷による断裂 腱板は腕の動きと肩関節の安定に重要で、強い外力で急に損傷することがあります。高所からの転倒や交通事故、スポーツ中の衝突などで肩や腕に瞬間的な過負荷がかかると、とくに腕を伸ばして手をついた場合や肩から転倒した場合に断裂しやすくなります。 加齢や酷使で変性した腱板はわずかな外力でも断裂することがあるため、受傷後に肩の動きや筋力に異常を感じたときは早期に診察と画像検査を受けることが重要です。 自分でできる腱板断裂のセルフチェック セルフチェック 詳細 ドロップアームテスト 腱板の主に棘上筋の断裂や筋力低下の有無 リフトオフテスト 腱板の主に肩甲下筋の損傷や機能低下の有無 ホーンブローワーテスト 腱板の主に棘下筋や小円筋の損傷や外旋筋力低下の有無 腱板断裂が疑われる場合、自宅で行える簡易的な確認方法として、ドロップアームテスト・リフトオフテスト・ホーンブローワーテストがあります。ドロップアームテストは、腕を横に上げたまま保持できず途中で落ちる場合に棘上筋の損傷や筋力低下を調べる検査です。 リフトオフテストは、腰の後ろに回した手を背中から離せない場合、肩甲下筋の機能低下が疑われます。ホーンブローワーテストは、腕を外に開く動作で力が入らないず場合に棘下筋や小円筋など外旋筋の状態を確認する検査です。これらはいずれも目安であり、異常があれば医療機関での診断が必要です。 ドロップアームテスト 項目 詳細 目的 腱板のうち主に棘上筋の断裂や筋力低下の有無の確認 方法 腕を真横に90度(肩の高さ)まで上げ、そのまま支えずにゆっくり下ろす動作の観察 陽性所見 腕が途中で急に落ちる、または動作をコントロールできない状態 判定の意味 陽性の場合は棘上筋を中心とした腱板損傷の可能性 留意点 自分一人でも行える簡易的な確認方法だが、陽性時は医療機関での診察・画像検査が必須 ドロップアームテストは、棘上筋損傷を確認するための簡易検査です。腕を横に伸ばして肩の高さまで上げ、そのまま支えずにゆっくり下ろします。健康な腱板であれば滑らかに下ろせますが、損傷があると保持できず途中で落ち、動きが不安定になります。 棘上筋は腕を横に上げる筋肉で、損傷すると筋力低下や動作制限が起こるため、異常があれば早期の受診とMRIや超音波検査による診断が必要です。 リフトオフテスト 項目 詳細 目的 肩甲下筋の損傷や機能低下の確認 方法 片手を背中の腰あたりに回し、手の甲を背中につけた状態から背中から離す動作の実施 陽性所見 手を背中から離せない、動かしづらい状態 特徴 肩甲下筋の機能確認に有効な簡易的セルフチェック方法 注意点 異常を感じた場合は放置せず、医療機関での検査を推奨 リフトオフテストは、肩のインナーマッスルである肩甲下筋の損傷や機能低下を調べる簡易検査です。肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内側にひねる動き)を担い、腱板を構成する4つの筋肉のひとつです。 テスト方法は、背中の腰あたりに手を回し手の甲を背中につけ、その状態から手を背中から離そうとします。正常であれば手を浮かせられますが、損傷があると自力で離せなかったり、痛みで動かせなかったりします。この検査で異常がある場合は肩甲下筋の腱板断裂が疑われ、早期に整形外科で診察と画像検査を受けることが重要です。 ホーンブローワーテスト 項目 詳細 目的 棘下筋や小円筋の損傷や機能不全の確認 方法 腕を肩の高さ(外転90度)に上げ、肘を90度に曲げた状態で腕を外に押し出す動作の実施 陽性所見 腕がスムーズに動かない、力が入らない、または動作時の違和感 特徴 外旋筋群の機能を評価できる簡易的セルフチェック方法 注意点 陽性の場合は医師による診察と画像検査の受診推奨 ホーンブローワーテストは、肩の腱板の中でも主に棘下筋と小円筋の機能を評価するための検査です。方法は、腕を肩の高さ(外転90度)に上げ、肘を90度に曲げた状態で、腕を外に回す動作(外旋)を行い、その際に抵抗を加えます。 筋肉や腱の損傷があると動きが不自然になり、力が入らず違和感が生じ、これは腱板断裂の可能性を示します。自宅でも鏡を見ながら実施できますが、結果が陽性の場合や症状が続く場合は、早期に整形外科を受診し、MRIなどで状態を確認することが重要です。 腱板断裂の治療法 治療法 詳細 保存療法(薬物療法・注射・リハビリテーション) 薬剤や注射で痛みを抑え、リハビリで肩の動きを改善する方法 手術療法(関節鏡手術・縫合術など) 関節鏡などを使って断裂した腱板を修復する方法 再生医療 幹細胞やPRPで腱の修復を促す先進的な治療方法 腱板断裂の治療は、損傷の程度や症状、日常生活への影響に応じて方法を選びます。軽度の場合は、鎮痛薬や注射で痛みを抑え、リハビリで肩の動きや筋力を取り戻す、保存療法が行われます。これは手術をせずに回復を目指す方法です。 一方、大きな断裂や保存療法で改善が見られない場合は、関節鏡を用いて断裂した腱を縫い合わせる「手術療法」が選ばれます。適切な治療選択のためには、早めの診察と正確な診断が重要です。 近年では、幹細胞療法やPRP療法などの再生医療も腱の修復促進を目的に導入されていますが、実施する医療機関は限られているため、事前に対応の可否や症状が適応するかを確認することが重要です。 以下の記事では、肩関節の治療法について詳しく解説しています。 保存療法(薬物療法・注射・リハビリテーション) 項目 詳細 目的 症状の軽減と生活の質の向上 方法 消炎鎮痛薬や湿布、ステロイド注射による痛み・炎症の緩和 リハビリの役割 肩甲骨周囲筋の柔軟性と筋力の維持・強化、肩関節のバランス改善 適応 部分断裂、高齢者、持病による手術リスクが高い方 特徴 手術に比べ身体への負担が少なく開始しやすい方法 注意点 腱板断裂そのものは自然治癒せず、定期的な経過観察が必要 保存療法は、手術を行わずに症状を和らげ、日常生活を維持する方法です。薬物療法で炎症や痛みを抑え、リハビリで肩の筋力・柔軟性を回復させて関節の安定性を高めます。 保存療法は、手術のリスクが高い高齢者や部分断裂の方、持病のある患者に適しており、身体への負担が少ないことが特徴です。ただし、腱板断裂は自然に修復されないため、症状が落ち着いた後も定期的な診察と経過観察が必要です。 以下の記事では、肩腱板断裂の痛みを和らげる方法を詳しく解説しています。 手術療法(関節鏡手術・縫合術など) 項目 詳細 確実な再固定 関節鏡を用いて断裂した腱板を元の骨に縫い付けることで自然な形に修復可能 低侵襲 小さな切開で行うため体への負担や術後の痛みが少ない方法 症状進行の抑制 断裂拡大や筋萎縮・脂肪変性の進行を防ぐ効果 機能回復の促進 回復期間が比較的短く早期リハビリ開始が可能な利点 適応の柔軟性 年齢・断裂の程度・生活環境に応じた治療方針の選択 保存療法で症状が改善しない場合や、断裂が大きく日常生活に支障がある場合、さらに活動性が高く早期の機能回復を希望する方には手術が検討されます。 現在主流の関節鏡手術は、小さな切開から関節鏡を挿入し、モニターで内部を確認しながら損傷した腱板を修復する方法です。身体への負担が比較的少なく、回復が早い点が特徴です。 腱板縫合術では、断裂した腱板を骨に縫い付けて固定し、断裂の程度に応じて方法を選択します。術後は腱板が骨に癒着するまで安静が必要で、その後のリハビリテーションが機能回復に重要な役割を果たします。 以下の記事では、肩腱板断裂の手術と入院期間について詳しく解説しています。 再生医療 再生医療は損傷した腱板の修復や再生を促進します。幹細胞治療は、患者自身の脂肪などから幹細胞を採取・培養し、断裂部位へ注射で投与する方法です。 幹細胞は損傷部位で修復を促し、注射で行えるため負担が少なく、手術困難例や保存療法無効例に適します。幹細胞やPRP療法は炎症を抑えつつ腱組織を修復し、痛み軽減や可動域改善、断裂進行防止に寄与します。 ただし、再生医療は実施している医療機関が限られており、適応には事前の相談や診察が必要です。投与後は適切なリハビリを併用することで、肩の機能回復がより効果的に進みます。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板断裂に対する再生医療の症例を紹介しています。ぜひご確認いただき、再生医療も治療法の一つとしてご検討ください。 腱板断裂の予防法 予防法 詳細 肩の柔軟性&筋力維持 肩甲骨や肩周囲筋の柔軟性と筋力の維持・強化による肩関節の安定化 姿勢・使い方の見直し 胸を張り肩甲骨を適切な位置に保つ、正しい姿勢と肩への負担を減らす動作の習慣化 オーバーユース回避 肩の過剰使用を避けることによる筋肉や腱への負担軽減 生活管理と違和感への早期対応 肩の違和感や痛みの早期発見・専門医受診と適切なケアによる悪化防止 腱板断裂を予防するためには、肩甲骨や肩周囲の筋肉の柔軟性と筋力を維持・強化して肩関節の安定性を高めることが重要です。 胸を張り、肩甲骨を正しい位置に保つ、肩を過剰に使わず休養を取り、違和感があれば早期に受診して悪化を防ぎます。 以下の記事では、腱板断裂を放置するリスクを詳しく解説しています。 肩の柔軟性&筋力維持 項目 詳細 肩や肩甲骨の連動性維持 肩関節と肩甲骨の動きのバランスを保ち腱板への負担を軽減 可動域の維持 動きの制限による摩擦や腱の摩耗の防止 インナーマッスル強化 腱板筋群を中心に肩関節の安定性を高め負荷を分散 全体バランスの改善 偏った動きや代償動作の防止による怪我リスク低減 日常・スポーツ時の負担軽減 正しい肩の動きによる過度な使用からの保護 腱板断裂を予防するには、肩の柔軟性と筋力の維持が欠かせません。肩関節は肩甲骨と連動して動くため、柔軟性が落ちると動きのバランスが崩れ、腱板に負担が集中します。その結果、可動域が狭まり摩擦が増えて損傷を招く恐れがあります。 日常的なストレッチで柔軟性を保つことは、こうした負担の軽減に有効です。さらに、腱板を構成するインナーマッスルや周囲の筋力を維持・強化すると、肩関節の安定性が高まり、運動時や荷物を持つ際にも腱板への負荷を分散できます。柔軟性と筋力をバランスよく整えることで、スポーツや日常生活での無理な動きが減り、怪我や断裂のリスクが低下します。とくに肩を酷使する方は、予防のために日常的なストレッチと筋力トレーニングを継続することが重要です。 以下の記事では、右肩や左肩がズキズキと痛い症状について詳しく解説しています。 姿勢・使い方の見直し 肩甲骨や胸椎の位置と可動性を適切に保つことは、肩関節の動きを整え、腱板への負担を減らします。猫背や巻き肩では肩甲骨が前傾し、可動域が狭くなって筋肉や腱板が骨にこすれやすくなり、摩耗や断裂のリスクが高まります。 正しい姿勢を保ち肩甲骨を適正位置に維持すれば、摩擦と負荷の軽減が可能です。また、日常生活やスポーツでは腕の使い方も見直し、腕を高く上げすぎたり同じ姿勢を長時間続けることを避けます。重い物を持つ際は腕だけでなく体全体を使い、肩関節の安定性を保つことが腱板損傷の予防につながります。 オーバーユース回避 予防ポイント 理由 肩の使いすぎの回避 繰り返し動作による腱板への微細損傷の蓄積 適切な休息の確保 腱板の自然修復を促すための負荷軽減 正しいフォーム・作業姿勢の習得 肩関節への不要なストレスの軽減 負担の分散 肩のみで行わず、体幹や下半身も活用 痛みや違和感時の使用中止 傷の進行防止 腱板断裂は、肩の筋肉と骨をつなぐ腱板が損傷する疾患です。野球やテニスなどのスポーツや重い物を扱う仕事で肩を繰り返し酷使すると、腱板に小さな損傷が蓄積します。腱板は血流が乏しく修復力が弱いため、休息を取らずに使い続けると回復が追いつかず、摩耗や断裂が進行します。 予防には、肩の使用を適度に制限して休養を確保し、動作や姿勢を見直して負担を軽減することが重要です。また、体の他の部位を活用して負担を分散し、痛みや違和感があれば早めに使用を中止することが推奨されます。これらの対策によって、腱板断裂の発症や悪化を防ぐことができます。 以下の記事では、腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことを詳しく解説しています。 生活管理と違和感への早期対応 項目 詳細 肩への過度な負担回避 重労働やスポーツでの繰り返し負荷を避け、肩の筋力・柔軟性を維持 早期受診の重要性 違和感や動作制限を感じた段階で専門医を受診し画像検査で診断 進行予防による負担軽減 症状の進行抑制による手術回避や機能障害予防 全身状態の改善 血糖値管理や禁煙による腱の健康維持 無理な使用の回避 違和感がある場合の安静による損傷拡大防止 腱板断裂を予防するには、日常生活で肩への負担を減らし、症状への早期対応を徹底することが重要です。重労働やスポーツでの反復動作、無理な姿勢や動作は腱板損傷のリスクを高めます。 普段から肩周囲の筋力と柔軟性を保ち、過度な使用を避けることが予防の基本です。肩に違和感や動きの制限を感じた場合は、症状が軽くても早めに医療機関を受診し、MRIや超音波検査によって診断を受けます。 早期に保存療法やリハビリを開始すれば断裂の進行を防ぎ、手術を回避できる可能性が高まります。また、糖尿病や喫煙(文献2)は腱の健康を損なうため、生活習慣の改善も重要です。違和感がある時は無理な動作を控え、安静を保つことが損傷拡大の防止につながります。 以下の記事では、腱板断裂(損傷)における超音波(エコー)検査について詳しく解説しています。 腱板断裂と似ている症状 似ている症状 詳細 肩関節の炎症・拘縮(五十肩・肩関節周囲炎・石灰沈着性腱板炎) 肩関節周囲の炎症や拘縮による痛みと可動域制限。腕が上がりづらく動作時の痛みやこわばりが特徴 関節や骨の変性(変形性肩関節症・インピンジメント症候群) 肩関節の軟骨や骨の変性による運動時の痛み、インピンジメントは腱板が骨に挟まることで生じる痛み 腱や周囲組織の障害(上腕二頭筋長頭腱炎) 上腕二頭筋の腱の炎症で、肩の前方の疼痛や動作時痛、押すと痛みが出ることが多い 首からくる症状(頚椎症性神経根症など) 首の神経圧迫に伴う放散痛やしびれ、腕の筋力低下、肩の動かしにくさ。首の動作で症状が誘発されることも 腱板断裂と症状が似ている疾患はいくつか存在します。肩関節の炎症や拘縮を伴う五十肩(肩関節周囲炎)や石灰沈着性腱板炎では、肩の強い痛みや可動域の制限、腕の上げにくさ、こわばりが見られます。変形性肩関節症やインピンジメント症候群では、軟骨や骨の変性や腱板の挟み込みによって動作時の痛みが生じます。 上腕二頭筋長頭腱炎は、肩の前方に限局した痛みや押したときの圧痛、動作時痛が特徴です。さらに、頚椎症性神経根症など首からくる症状では、肩から腕にかけての放散痛やしびれ、筋力低下があり、首の動きで症状が誘発されることもあります。これらは腱板断裂と症状が似ているため、正確な診断には医師による診察と画像検査が欠かせません。 肩関節の炎症・拘縮(五十肩(肩関節周囲炎)・石灰沈着性腱板炎) 項目 腱板断裂 五十肩(肩関節周囲炎) 石灰沈着性腱板炎 主な症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 慢性的な痛み・力が入りにくい 肩全体の広い痛みと動きの硬さと急な激痛や腫れ 原因 腱板腱の断裂 肩関節周囲の炎症と拘縮 腱板へのカルシウム沈着 痛みの特徴 特定動作や夜間で強く出やすい 夜間痛が強く、徐々に拘縮へ進行 発作的な強い痛みと寛解期 可動域制限 外転・外旋がとくに制限 全方向で強く制限 発作時は動かしにくい 経過 自然治癒は稀で、放置すると悪化しやすい 数年で自然回復傾向 数日〜数週間の発作後軽快しやすい 主な治療 保存療法または手術 保存療法主体 薬物・注射・石灰除去(手術は稀) 主な共通症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 腱板断裂、五十肩(肩関節周囲炎)、石灰沈着性腱板炎はいずれも肩の痛みと可動域制限を伴いますが、原因や経過が異なります。五十肩は関節全体の炎症と拘縮により全方向の動きが制限され、数年かけて自然回復することが多い疾患です。 腱板断裂は肩の腱が部分的または完全に切れ、特定動作で力が入らず自然治癒はほぼありません。石灰沈着性腱板炎は腱板にカルシウムが沈着し、急激な激痛発作を起こしますが多くは自然軽快します。症状が似ていても治療法は異なるため、正確な診断には医師による診察とMRIや超音波検査が重要です。 以下の記事では、五十肩(肩関節周囲炎)と石灰沈着性腱板炎の症状について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板断裂と五十肩(四十肩)の違い|主な症状や治療法を解説 石灰沈着性腱板炎の原因とは?症状や痛みが続く際の治療法を紹介 関節や骨の変性(変形性肩関節症・インピンジメント症候群) 項目 腱板断裂 変形性肩関節症 インピンジメント症候群 主な症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 (途中で力が入らないことも) 肩の痛み、可動域制限、関節変形、慢性痛 肩の痛み、特定動作や挙上で強まる痛み、可動域制限 原因 腱板腱の断裂 長年の摩耗や軟部組織損傷で関節軟骨のすり減り・骨変形 腱板の摩擦や圧迫 症状の特徴 肩から腕にかけて広がる・断裂部周辺 関節内部が中心、動作時や負荷時に増す痛み 肩前面、動作中に鋭い痛み 可動域制限 外転・外旋などに強く制限 全方向で強く制限 特定動作(挙上など)で制限 経過 保存療法で経過観察も多い 進行性で慢性化しやすい 保存療法で多くが改善傾向がある 主な治療 保存療法または手術 保存療法中心だが症状で手術選択 保存療法、重症時は手術 主な共通症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 腱板断裂と関節や骨の変性によって起こる疾患(変形性肩関節症やインピンジメント症候群)は、どちらも肩の痛みや動かしにくさを伴い、症状が似ているため混同されやすい疾患です。 腱板断裂は肩の腱が部分的または完全に切れて特定動作で力が入らず、夜間痛が出やすいのが特徴です。変形性肩関節症は軟骨の摩耗や骨変形で肩全体の動きが制限され、進行すると関節音を伴います。 インピンジメント症候群は腕を上げる際に腱板が骨に挟まれ炎症を起こし、特定の角度で痛みや引っかかり感が生じます。原因と治療は異なり、腱板断裂は保存療法や手術、変形性肩関節症は保存療法を基本に進行例で人工関節手術、インピンジメント症候群は保存療法が中心です。診断にはMRIやレントゲンなどの画像検査と専門医の診察が必要です。 以下の記事では、インピンジメント症候群について詳しく解説しています。 腱や周囲組織の障害(上腕二頭筋長頭腱炎) 項目 腱板断裂 上腕二頭筋長頭腱炎 主な症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 肩前面の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 原因 腱板腱(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)の断裂 上腕二頭筋長頭腱の摩擦や炎症 症状の特徴 特定動作で力が入らない、肩の上・外側の痛み 肩前面、結節間溝付近の痛みや圧痛 可動域制限 外転・外旋の制限 肘の曲げや前腕の回内外で痛み増強 経過 自然治癒しにくく進行することあり 安静や保存療法で多くは改善 主な治療 保存療法または手術療法 保存療法(安静、薬物、リハビリ) 合併の可能性 発症により上腕二頭筋長頭腱炎を伴うことあり 腱板断裂を伴うことあり 主な共通症状 40歳以上の中高年に多い傾向、動作時や夜間に強まる肩前面や周囲の痛み、動かしにくさや筋力低下、スポーツや肉体労働による肩の反復使用による負担 腱板断裂と上腕二頭筋長頭腱炎は肩の痛みや動きの制限を引き起こしますが、原因や特徴に違いがあります。共通点として、肩の痛みや筋力低下、とくに40歳以上に多く、スポーツや肉体労働がリスク要因です。 腱板断裂はインナーマッスルの腱が断裂し、外転や外旋で痛みが生じます。一方、上腕二頭筋長頭腱炎は炎症により腕を曲げる動作で痛みが生じます。診断にはMRIや超音波検査が使用され、症状がひどい場合は手術が必要です。治療法としては、保存療法と手術が選択肢となります。 以下の記事では、腱や周囲組織の障害について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板損傷と断裂の違いは?症状の進行や治療法について現役医師が解説 上腕二頭筋長頭腱炎とは?医師が徹底解説 首からくる症状(頚椎症性神経根症など) 項目 腱板断裂 頚椎症性神経根症 主な症状 肩や腕の痛みやしびれ、動かしにくさや筋力低下、夜間痛 肩の痛み、とくに動作時の痛みと可動域制限、夜間痛 首から肩・腕・手にかけての痛みやしびれ、感覚鈍麻、筋力低下 原因 肩の腱板(棘上筋など)の部分または完全断裂 頚椎や椎間板の変性による神経根の圧迫 症状の特徴 腕を特定角度まで上げると痛みや力が入らなくなる(ドロップアーム) 首の動きや姿勢で悪化する放散痛・しびれ、片側の筋力低下 痛みの範囲 肩関節周囲の局所痛、動作に伴う痛み 首から肩・腕・手・指先までの放散痛やしびれ 可動域制限 特定の肩の動きで強く制限 首の動きで痛み増悪、上肢の動作制限 診断方法 肩のMRIや超音波検査で腱板の損傷確認 頚椎X線・MRIで変性や神経圧迫を確認 主な治療 保存療法(安静・薬物・リハビリ)、必要に応じ手術療法 薬物療法、神経根ブロック、まれに手術 主な共通症状 肩や腕の痛みやしびれ、動かしにくさや筋力低下、夜間痛 腱板断裂と頚椎症性神経根症は、肩や腕の痛みやしびれを引き起こしますが、原因や症状に違いがあります。共通点として、肩や腕の痛み、筋力低下、とくに夜間痛が見られ、腱板断裂は肩のインナーマッスルの腱が切れ、特定の動作で痛みが強くなります。 頚椎症性神経根症は首の骨の変形による神経圧迫で痛みやしびれが広がり、頚椎のX線・MRIで確認し、早期に医師の診察を受けることが重要です。 以下の記事では、頚椎症性神経根症について詳しく解説しています。 腱板断裂でお悩みなら当院へご相談ください 腱板断裂は、加齢やスポーツ、肉体労働により腱板が損傷または断裂し、肩の痛みや腕が上がらない原因となります。適切な治療を継続することで改善が期待できますが、症状が改善しない場合は手術が必要となることもあります。 腱板断裂の症状にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、腱板断裂で損傷した組織の回復を促す治療法である再生医療を提案しています。再生医療は、手術に比べてリスクが少なく、断裂部分に直接アプローチできる治療法として近年注目されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 参考文献 文献1 一般人口における症候性および無症候性の回旋腱板断裂の有病率:ある村での集団スクリーニングから|PMC 文献2 腱板断裂:エビデンスに基づくアプローチ|PMC
2025.08.31 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩や腕に違和感がある」 「肩に力が入りにくい」 腱板損傷が疑われたとき、対処に迷う方は少なくありません。五十肩との違いがわからず、不安が強まるケースもあります。肩や腕の不調を放置すると症状が悪化する可能性があるため、早期の判断が重要です。腱板損傷の症状や原因を理解すれば、適切な対処方法が見えてきます。 腱板損傷の症状 腱板損傷の原因 腱板損傷の治療法 腱板損傷の予防と再発防止策 記事の最後には、よくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板損傷とは 項目 内容 腱板損傷の症状 肩や腕の動かしにくさや特定角度での違和感、夜間の不快感、力が入りにくいことや筋力低下などが挙げられる 似た症状の病気との違い 五十肩(肩関節周囲炎):関節包の炎症が主な原因で、動かし始めの違和感が強く、時間の経過とともに可動域が制限されます。一方、腱板損傷は腱の損傷により筋力低下が生じる点が特徴です。 変形性肩関節症:軟骨のすり減りによる関節の変形と違和感が原因。画像診断で確認 神経由来の痛み:首の神経圧迫による肩・腕のしびれや痛み。腱板損傷は局所の腱損傷が原因 原因 加齢、肩の使いすぎ、外傷など 診断 肩の動かしにくさや特定の角度での違和感が続く場合は、整形外科への受診が必要 腱板損傷は、肩の筋肉と腱で構成される腱板が傷ついた状態です。腱板は肩関節を安定させ、腕を動かす役割があります。負担や加齢によって腱に傷ができると、肩の動きが制限され、違和感が生じます。 日常生活に支障をきたすこともあるため、適切な診断と治療が必要です。軽度の場合は保存療法が中心で、症状や生活環境によっては手術が検討されます。 以下の記事では、腱板損傷と断裂の違いについて詳しく解説しています。 腱板損傷の症状 症状 詳細 肩や腕を動かしにくい 肩や腕の動作制限、腕を上げる動作が困難になる 特定の動作で違和感が出る 腕を一定の角度に動かした際の引っかかり感や不快感 夜間や安静時に症状が強まる 夜間や休息時の肩の不快感、睡眠障害の可能性 肩の力が入りにくい 筋力低下による物を持つ・支える動作が困難になる 腱板損傷では、肩や腕の動かしにくさ、特定の動作での痛み、夜間痛、筋力低下などの症状がみられます。 これらの症状は、物を持つ、腕の挙上、寝返りを打つといった日常の動作を妨げ、生活の質を低下させます。症状が強く時間が経っても改善しない場合は損傷が進行する恐れがあるため、早期に整形外科を受診することが重要です。 以下の記事では、腱板損傷の筋力や痛み確認方法について詳しく解説しています。 肩や腕を動かしにくい 内容 詳細 力が入らない 腕を横や上に持ち上げようとしても途中で力が抜ける状態 特定の角度で止まる 肩を一定の角度までは上げられるが、それ以上は力が入らず動かない 日常生活での不便 洗濯物を干す、棚の上の物を取る、髪をとかす・結ぶなどの動作が難しい 他人が動かそうとしても動かない 違和感が強く出る場合、自分以外が肩を動かしても固まって動かせないことがある 似た症状との違い 五十肩と違い、急に力が入らなくなることや特定方向だけ動きにくい特徴がある 腱板損傷では、腕を上げる・横に広げる・後ろに回すなどの動作で肩の痛みが生じ、動きが制限されます。 高い所の物を取る、服を着替えるといった日常動作にも支障が出ます。これは損傷した腱が正常に機能せず、肩関節の動きが妨げられるためです。 特定の動作で違和感が出る 腱板は肩関節を安定させ、腕を動かす役割を持つ組織で、動きの方向によって特定の部分が強く働きます。損傷があると、腕を横から90度まで上げる、後ろポケットに手を回す、頭上に物を持ち上げるなどの動作で負担が集中し、引っかかり感、脱力感、疼痛が生じやすくなります。 原因は腱が骨にこすれ、正常に収縮できず関節が不安定になるためです。腱板損傷では、できる動作とできない動作の差が特徴で、五十肩は方向に関係なく全体的に固くなります。また、動作中に「コキッ」という音や引っかかり感、腕を下ろす途中で力が抜けるドロップアームサインがある場合は、腱板の完全断裂が疑われます。 夜間や安静時に症状が強まる 原因 詳細 寝る姿勢と肩の負担 横向きで痛む側を下にすると体重で肩が圧迫され、仰向けでも腕の重みで肩に負担がかかる 筋肉の緊張と血流の悪化 筋肉が緊張して血流が悪くなり、酸素や栄養が届きにくくなるため、違和感が出やすくなる 関節の安定性低下による刺激 腱板損傷で筋肉と腱の連結が弱くなり、安静時でも肩関節内で組織が擦れ刺激を受けやすい 炎症の影響 損傷部位の炎症が夜間に強まり、血流悪化と体の休息中に違和感が増し、目が覚めることがある 肩の痛みは、腱板損傷により夜間や安静時に強まることがあります。寝る姿勢や腕の重みで肩に負担がかかり、筋肉の緊張や血流悪化で炎症が悪化するためです。 安静時でも肩内部で組織が擦れて刺激を受けやすく、痛みで目が覚めることもあります。姿勢の工夫と適切な治療が不可欠です。 肩の力が入りにくい 項目 詳細 腱板の役割と損傷の影響 肩関節の安定と腕を動かす筋腱複合体の損傷による力の伝わりにくさ 筋力低下のメカニズム 腱断裂による筋肉の付着不全と炎症による筋力低下 筋肉の萎縮や硬直 肩の使用減少による筋肉の細化と硬直 安定性低下に伴う不安定感 肩関節の緩みやずれ感による力の入りにくさと違和感・不安感 腱板は、肩関節を安定させながら腕を動かす重要な筋肉群の腱の集合体です。腕を上げる動きにも欠かせず、損傷すると肩に力が入りにくくなります。 とくに重い物を持つ時や腕を伸ばして物を取る時に力が出ず、腕が上がらないことがあります。これは、腱断裂により筋肉が骨にしっかり付着できなくなり、炎症や痛みによって筋力が低下するためです。 また、肩を使わない状態が続くと筋肉が痩せたり硬くなったりし、力が入りにくくなります。関節の安定性も損なわれ、動かす際にぶれやずれを感じることがあります。 腱板損傷の原因 原因 詳細 加齢による腱の変化 加齢に伴う腱の弾力性低下や摩耗による損傷の起こりやすさ 肩の使いすぎや外傷による負担 繰り返しの動作や急な衝撃による腱への過度な負担 生活習慣や体質の影響 姿勢不良や血流不足、体質的な腱の弱さによる損傷の起こりやすさ 腱板損傷は、加齢、肩の使いすぎ、外傷、姿勢不良、血流障害などによって腱が損傷し、肩関節の動きや腕の挙上が制限される状態を指します。 予防には肩への負担を減らしつつ、適度な運動で柔軟性を保つことが大切です。異常を感じたら早めに医療機関を受診してください。 加齢による腱の変化 項目 詳細 腱の柔軟性や強さの低下 腱の弾力や強度の低下、腱の硬化による負担耐性の減少 血流の悪化と修復力低下 血管の細さや閉塞による栄養不足、腱の修復能力の低下 繰り返しの負荷による摩耗 長期間の肩使用による腱の摩耗と変性、断裂リスクの増加 気づかない損傷の進行 進行がゆっくりで自覚症状が遅れることによる突然の症状出現 腱板は肩の動きを支える重要な腱ですが、加齢や長年の使用で弾力や強さが低下し、変性しやすくなります。細胞やコラーゲンの劣化、血流悪化で修復力も落ち、小さな負荷で損傷が進みやすくなります。 この変化は自覚しにくく、突然の痛みや動かしにくさとして現れることが多いため、違和感が出た場合は、早めの受診が大切です。 肩の使いすぎや外傷による負担 肩を繰り返し使いすぎると腱板に小さな損傷が蓄積し、炎症や違和感が生じやすくなります。野球やテニス、バレーボールなどのスポーツや重量物を扱う重労働は、肩の骨と腱が擦れたり衝突したりして損傷する原因のひとつです。 転倒や打撲、重い物を持ち上げた際の急な力でも損傷が起こり、突然の痛みや動かしにくさが現れます。とくに棘上筋は骨の突起の下を通るため摩擦や衝突を受けやすく、損傷しやすい部位です。そのため、肩を日常的に酷使する人は損傷が進行しやすくなります。 生活習慣や体質の影響 原因 詳細 年齢による変性(体質的影響) 加齢に伴う腱の老化と血流低下による修復力の低下、高齢者や大きな断裂のリスク増加 喫煙 ニコチンなどによる腱の細血管損傷と代謝・回復能力の低下 肥満・高BMI 体重増加による肩関節と腱への負担増加、慢性的炎症による腱の劣化促進 姿勢の悪さ 猫背や前かがみによる肩の動きの不均衡と腱への異常圧力・摩擦 運動不足 筋肉や腱の弱化による支持力低下と損傷のリスク増加 家族歴(遺伝的体質) 家族に腱板損傷の経験があることで、同様の体質的弱点の存在 生活習慣性疾患 高血圧や糖尿病による微小血流障害と腱の修復力低下、とくに糖尿病患者の組織老化促進 腱板損傷や腱板不全症候群は、加齢や生活習慣、体質が関与し、とくに65歳以上や広範囲の断裂がある方、喫煙者、糖尿病患者、筋萎縮や脂肪浸潤がある方、術後ケアを守らない方で発症リスクが高くなります。 2008年の研究では断裂の発生率が50~59歳で13%、60~69歳で20%、70~79歳で31%、80歳以上では51%に増加しています。(文献1) 喫煙は腱への血流を悪化させ修復力を低下させ、糖尿病などの生活習慣病も組織の修復を妨げます。遺伝的な体質が腱板の脆弱性に関与する可能性もあります。予防には、禁煙や適正体重の維持、良い姿勢と肩周りの軽い運動、慢性疾患の適切な管理が重要です。 腱板損傷の治療法 治療法 詳細 保存療法(薬物療法・注射・理学療法) 痛み軽減のための薬物使用、炎症抑制のステロイド注射、関節可動域維持の理学療法 リハビリテーション 肩周辺筋肉のストレッチと強化訓練、肩関節の動きの改善、関連部位の調整 手術療法 関節鏡視下手術による腱板断裂の修復、必要に応じた上方関節包再建術や人工肩関節置換 再生医療 神経や筋肉の機能改善を目指す細胞治療や組織修復技術 腱板損傷の治療は、症状や損傷の程度に応じて保存療法、リハビリテーション、手術療法、再生医療が選択されます。保存療法では薬剤や注射で炎症や痛みを抑え、理学療法で肩の可動域を維持します。 リハビリテーションでは筋力や柔軟性を向上させて日常生活での負担を軽減し、損傷が大きい場合や改善が得られない場合には手術を行います。 腱板損傷の治療法として、幹細胞を活用した再生医療も選択肢のひとつです。しかし、取り扱う医療機関が限られているため、事前に問い合わせや診察を受ける必要があります。 以下の記事では、腱板損傷の治療および自然治癒する可能性について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板損傷の治療法|どのくらいで治るのか・放置によるリスクを現役医師が解説 腱板損傷は自然に治癒する?放置のリスクと治療期間を現役医師が解説 保存療法(薬物療法・注射・理学療法) 治療法 詳細 薬物療法 違和感や炎症を和らげる消炎鎮痛剤の使用(飲み薬、湿布)による一時的な違和感の軽減と日常生活の改善 注射療法 超音波エコーで炎症部位を確認しながら行うステロイド注射やハイドロリリースによる炎症抑制と腱の拘縮を軽減 理学療法 理学療法士の指導による筋力強化運動、可動域拡大のストレッチ、温熱療法や電気治療を用いた負担を抑えた治療 注意点 腱の完全再生は困難で小康状態の維持を目指すこと、症状悪化時の医師受診の重要性、日常生活での肩負担軽減の工夫を含む 腱板損傷の保存療法は、手術を行わずに炎症や痛みを抑え、肩の機能維持を目指す治療法です。違和感や炎症を和らげる薬物療法(内服薬や外用薬)、直接炎症部位に注射をする注射療法(ステロイド注射やヒアルロン酸注射など)、そして温熱療法や電気療法を含む理学療法による血行促進や関節可動域の改善が行われます。 腱板が完全に治癒することは難しい場合もありますが、これらの方法で痛みの軽減や肩の動きの改善を目指します。 とくに加齢や軽度・部分断裂、高齢で活動量の少ない方では、保存療法で約75%の方に症状改善が見込まれます。(文献2) 以下の記事では、腱板損傷に対する保存療法について詳しく解説しています。 【関連記事】 肩の腱板損傷にはテーピングが有効!巻き方やリハビリについて専門医が解説 【痛み止め】関節症に使うステロイド注射の効果は?気になる副作用も解説 膝のヒアルロン酸注射が効かないのは失敗が原因?効果を感じないのはなぜ? リハビリテーション リハビリ内容 詳細 段階的な運動療法 初期の軽い可動域訓練・ストレッチによる関節可動域回復、腱板筋群強化、肩甲骨運動によるバランス改善 物理療法の併用 アイシング・温熱療法・超音波治療・電気刺激による痛みと炎症の軽減、血流改善 姿勢や動作の指導 日常生活での正しい肩の使い方や姿勢指導、負担軽減動作の習得 医師による継続的サポート 理学療法士や医師による個別プログラム作成と症状・状態に応じた進行管理 注意点 段階的な負荷設定の重要性、自己判断での継続回避、強い違和感が出た場合の中止と医師への相談 リハビリテーションは、腱板損傷の症状を改善し、肩の動きをスムーズにしながら筋力を強化して関節の安定性を高め、日常生活への支障を減らす重要な治療です。 痛みを軽減し、硬くなった関節の可動域を広げ、肩を支える筋肉を鍛えることで再発や悪化を防ぎます。理学療法士の指導によるストレッチや筋力強化運動で正常な肩の機能を取り戻し、生活の質向上と予防につながります。 以下の記事では、腱板損傷のリハビリや痛みを和らげる方法について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板損傷に効果的なリハビリとは?NG行為や治るまでの期間も解説 肩腱板断裂の痛みを和らげる方法5選!ストレッチや治療方法を現役医師が解説 手術療法 項目 詳細 手術が有効な理由 自然治癒困難な腱を物理的に修復して機能回復を図る効果、科学的根拠に基づく症状改善、早期修復による悪化防止 手術方法 関節鏡視下腱板修復術(ARCR)による小切開での腱板縫合と身体の負担軽減 手術の流れと適応 急性完全断裂や大きな損傷、保存療法無効例、生活や仕事への支障例での早期手術検討 効果 術後2〜10年間での肩の動きと機能回復の持続、従来法より優れた長期成績 注意点 感染症・神経障害・再断裂リスク、術前術後管理の重要性 (文献3) 損傷した腱は自然治癒が難しいため、手術で物理的に修復することで肩の違和感や動きの改善が期待できます。また、放置すれば損傷が拡大し、関節機能の低下や将来的な関節炎につながります。したがって、早期修復は進行防止に有効です。 現在主流の関節鏡視下腱板修復術は、小切開で腱を骨に縫合する低侵襲手術であり、術後の回復や合併症リスクの軽減が見込まれます。ただし、手術には感染、神経損傷、再断裂などのリスクがあります。とくに高齢者や大きな断裂、脂肪浸潤がある場合は再断裂のリスクが高く、術後リハビリの質が治療結果を左右するため適切な管理が必要です。 以下の記事では、肩腱板断裂の手術と入院期間について詳しく解説しています。 再生医療 再生医療は、患者様自身の脂肪組織や血液から採取した幹細胞や血液成分を用い、損傷した腱板の修復や再生を目指す治療法です。手術を伴わないため身体への負担が少ないのが特徴です。 幹細胞の働きによって、従来の薬物療法やリハビリでは改善が難しい損傷にも根本的な回復が期待できます。細胞は培養後に損傷部位へ注射で投与され、治療後も通常の生活を送りやすいのが利点です。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷に対する再生医療の症例を紹介しています。ぜひご確認いただき、再生医療も治療法の一つとしてご検討ください。 腱板損傷の予防と再発防止策 予防と再発防止策 詳細 生活習慣の見直しで肩への負担を減らす 重い物の持ち上げを控える、無理な動作の回避、禁煙による血流改善、健康的な体重維持 運動とストレッチで肩の柔軟性を維持する 肩周りの筋力強化運動、肩甲骨の動きを良くするストレッチ、適切なウォームアップとクールダウン 定期的な検診で早期発見につなげる 医師による状態評価、リハビリ進行の確認、違和感や痛みの早期相談による再発予防 腱板損傷を防ぐには、日常生活や運動習慣の見直しが重要です。重い物を避け、無理な動作を控え、禁煙と適正体重の維持によって肩の負担を軽減し、血流を改善します。 肩周囲の筋力強化や肩甲骨のストレッチ、適切なウォームアップとクールダウンで柔軟性を保つことも大切です。また、定期的な診察で状態を確認し、違和感があれば早めに医師に相談することで再発を防げます。 生活習慣の見直しで肩への負担を減らす 理由 詳細 肩への過度な負担の軽減 繰り返しの動作や重い荷物、長時間同じ姿勢による腱への負担減少、腱の疲労や損傷予防 筋肉や腱の老化・劣化の遅延 適度な運動やストレッチによる筋肉の柔軟性維持、血流改善による腱の健康促進と損傷リスクの軽減 肩の安定性と動きのサポート 無理な動作の回避や正しい荷物の持ち方による関節負担の軽減とケガ予防 炎症や疲労の蓄積防止 休息・睡眠の確保、ストレス管理による炎症悪化防止と肩の健康維持 具体的な生活習慣の見直し例 休憩の確保、体全体を使った荷物の持ち方、姿勢改善、適度な運動とストレッチによる肩周辺筋力と柔軟性の維持 生活習慣の見直しは腱板損傷の予防と再発防止に効果的です。繰り返し動作や重い荷物の持ち運び、長時間同じ姿勢など肩に負担をかける行動を減らすことで、腱の疲労や損傷を防げます。 適度な運動やストレッチ、正しい姿勢は筋肉の柔軟性と血流を保ち、腱の老化や劣化を遅らせます。肩の使い方を工夫し、重い物は両手で持つ、長時間同じ姿勢を避ける、作業中は休憩を取る、睡眠時の枕や姿勢に配慮することが大切です。 運動とストレッチで肩の柔軟性を維持する 予防ポイント 詳細 肩の柔軟性維持 肩の筋肉や腱の硬さや動きの悪さを防ぎ、不自然な負担を軽減し腱の損傷リスクを抑制 筋力強化による関節安定性向上 肩周囲の筋肉を適度に鍛え、肩関節を安定させ腱板への負担を分散、損傷予防に寄与 血流改善による組織回復促進 運動やストレッチで肩周辺の血行促進、栄養と酸素供給を増やし腱や筋肉の修復と疲労回復を支援 こわばり予防と動作負担軽減 肩のこわばりや硬さを防ぎ、動かしやすくすることで動作時の負担を減らし腱板の保護を図る 運動時の注意点 無理のない範囲での定期的なストレッチ、痛みがある場合は中止し専門家相談、軽い筋力トレーニング推奨 肩の柔軟性維持は腱板損傷の予防に有効で、筋力強化は関節を安定させ負担を分散します。運動やストレッチは血流を促し修復を助け、こわばり予防で腱板を守ります。 違和感がある場合は無理をせず医師の指導を受けることが大切です。 定期的な検診で早期発見につなげる ポイント 詳細 軽い損傷や初期変化の発見 問診・動作チェック・エコー・MRIによる自覚症状が軽い段階での異常発見 早期発見による治療効果 保存療法や生活習慣の見直しで状態安定、悪化防止と手術回避の可能性向上 再発・悪化リスクの管理 継続的な肩の状態確認と再発防止のための指導 状態把握によるセルフケア 日常生活での肩の使い方指導により無理な動作を避けやすく、良好な状態維持支援 肩に違和感が出た場合、放置せず早めに整形外科を受診しましょう。早期診断と適切な治療・ケアで症状の悪化や重症化を防げます。 とくにスポーツや肉体労働で肩を酷使する方は、症状がなくても定期検診で小さな異変を早期発見し、予防対策を講じることが大切です。 以下の記事では、MRI検査について詳しく解説しています。 腱板損傷でお悩みなら当院へご相談ください 腱板損傷は、日常生活に支障をきたします。腱板損傷を改善するには原因の特定と正しい治療の継続が不可欠です。 腱板損傷の症状が改善しない、強い違和感にお悩みの方は当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、腱板損傷の症状に直接アプローチする再生医療を、治療の選択肢のひとつとして提案しています。 再生医療は、薬物や手術を用いず、幹細胞を投与することで損傷した腱板を再生させる可能性がある治療法として、近年注目されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 腱板損傷に関するよくある質問 腱板損傷でやってはいけないことはありますか? 腱板断裂の悪化や再断裂を防ぐためには、肩への負担を避けて安静を保つことが重要です。 具体的には、重い物を持ち上げる動作(とくに頭上や水平位置)、無理に遠くや高所へ手を伸ばす動作、腕を強くひねる動作、急な動きや肩を大きく後ろに回す動作を控えましょう。症状や治療経過に応じて、医師の指示に従いましょう。 以下の記事では、腱板断裂の際にやってはいけないことを詳しく解説しています。 腱板損傷(断裂)は自然治癒で治りますか? 腱板断裂は程度によりますが、自然治癒は一般的に期待できません。完全断裂や広範囲断裂では自然には治らず、放置すると症状が悪化することがあります。 そのため、多くの場合は手術などによる治療が必要です。症状が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、腱板断裂の自然治癒について詳しく解説しています。 片桐作成KW(腱板損傷 自然治癒) 腱板損傷(断裂)を放置するとどうなりますか? 腱板断裂は自然に治癒せず、放置すると断裂が広がります。筋肉は萎縮して脂肪に置き換わり、修復が困難になります。 腱板の機能が失われると肩関節が変形し、違和感や動作制限、筋力低下で腕が挙がらなくなり、進行すると睡眠や服の着脱など日常生活にも支障が出るため、早期診断と適切な治療が重要です。 以下の記事では、腱板損傷を放置するリスクを詳しく解説しています。 腱板損傷を発症したスポーツ選手や有名人はいますか? 腱板損傷や断裂を経験したのは以下の日本人スポーツ選手です。 山本由伸(プロ野球・ドジャース) 由規(元ヤクルト) 浅尾拓也(元中日) 斉藤和巳(元ソフトバンク) 福田秀平(元ソフトバンク/ロッテ) 腱板損傷はプロスポーツ選手にも発症し、競技パフォーマンスや選手生命に大きな影響を与えることがあります。 以下の記事では、山本由伸選手が発症した腱板損傷について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) 修正中 (文献2) What happens to patients when we do not repair their cuff tears? Five-year rotator cuff quality-of-life index outcomes following nonoperative treatment of patients with full-thickness rotator cuff tears|PubMed (文献3) At a 10-Year Follow-up, Tendon Repair Is Superior to Physiotherapy in the Treatment of Small and Medium-Sized Rotator Cuff Tears|PubMed
2025.08.31 -
- 上肢(腕の障害)
- 肩関節、その他疾患
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「水泳のあとに肩が痛む……これって水泳肩?」 「水泳肩ってリハビリやストレッチで治るの?」 このような不安を抱えている方は多いでしょう。 水泳肩は、水泳による肩の使いすぎやフォームの崩れなどが原因で起こります。放置すれば痛みが慢性化し、日常生活や競技に支障をきたすこともあります。 しかし、正しく対処すれば症状の改善は可能です。 本記事では、水泳肩の特徴的な症状や原因、治療法を詳しく解説しています。自宅でできる対処法や再発防止も紹介しているので参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 水泳肩の痛みが治らず悩んでいる方や、再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 水泳肩とは 水泳肩は、泳いでいる時や泳いだ後に肩が痛む症状を指します。 1978年に医学界で初めて命名された用語で、当初は水泳による肩の痛みだけを表していました。(文献1) しかし、現在は水泳以外でも肩に違和感や痛みを感じる症状全般を含む呼び方に変化しています。 以下の記事では、肩の痛みが関係する病気について解説しています。視野を広げて肩の痛みの原因を探したい方は参考にしてみてください。 水泳肩の主な症状 水泳肩で現れる代表的な症状は以下の表のとおりです。 症状の種類 特徴 違和感・引っかかり感 肩を回すとゴリゴリといった不快な感覚や引っかかりがある 肩の痛み 水泳中や安静時にもズキズキした痛みが現れ、程度は軽い違和感から激痛まで幅がある 動かしにくさ 腕を上げたり、後ろに回す動作が難しくなり、日常生活にも支障をきたすことがある 腫れ・熱感 強い炎症により肩が腫れ、熱を持ち、赤くなるなどの症状を伴う これらの症状に心当たりがある方は水泳肩の可能性が高いです。 無理にトレーニングを続けず、症状が現れたら医療機関を受診しましょう。 症状が悪化すると、インピンジメント(衝突症候群)で骨や筋肉が肩の中でぶつかって痛む状態や、関節唇損傷で肩の軟骨が傷ついた状態になるなど、重篤な疾患に発展する恐れがあります。 水泳肩になる主な原因 水泳肩を引き起こす主な原因には以下の2つがあります。 肩の使いすぎ フォームが悪い それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。 肩の使いすぎ 肩の使いすぎは水泳肩を引き起こす代表的な原因です。(文献1) 水泳動作により肩関節が反復して使われることで、筋や腱に過剰なストレスがかかり、炎症反応を引き起こすためです。 とくに、長時間の練習や高強度のトレーニングを続けると、肩周辺の組織が十分に回復する時間がとれなくなります。 また、急激に練習量を増やした場合も、肩への負担が急激に高まり障害のリスクが上昇します。 適切なタイミングで休息をとり、練習量は段階的に増やしていきましょう。 フォームが悪い 泳ぎのフォームが悪いと肩関節に異常な負担をかけ、水泳肩の発症リスクを高めます。 肩の動きが不自然になると、特定の筋肉や腱に過度な負荷が集中し、炎症や損傷を引き起こします。 たとえば、以下の要因です。 腕の入水角度が悪い 肩の回転が不十分 体幹が不安定 肩だけで推進力を生み出そうとすると過度な負担がかかります。 正しいフォームを習得し、肩にかかる負担をおさえましょう。 水泳肩の痛みに効果的なストレッチ 水泳肩の痛みを軽減するためには、適切なストレッチが効果的です。 ストレッチを行うことで肩周辺の筋肉の柔軟性が向上し、血流が改善されて痛みの軽減につながります。 水泳肩の痛みに効果的なストレッチは以下のとおりです。 小胸筋(胸の上の方で肩の前にある筋肉)のストレッチ 肩の内旋(内側にねじる)ストレッチ 肩甲骨まわりのストレッチ 日常的にストレッチを行うことで、水泳肩の予防効果も期待できます。 ただし、強い痛みがある場合は無理をせず、医師や理学療法士の指導を受けながらストレッチを行いましょう。 水泳肩の代表的な治し方と治療期間 水泳肩の治療法と治療期間を理解できれば、症状に応じた選択が可能になります。 水泳肩の主な治療法には以下の4つの方法があります。 保存療法 リハビリ 手術 再生医療 各治療法の特徴と適応について詳しく解説します。 保存療法 保存療法は水泳肩の症状が軽度〜中程度期の治療として選択される方法です。 痛みの段階に応じて以下の治療を行います。 安静にする 湿布などで冷却する 消炎鎮痛剤を内服する ステロイド注射をする 保存療法の治療期間は、症状や治療内容によって個人差があります。 リハビリ リハビリテーションは水泳肩の機能回復と再発予防が期待できます。 理学療法士による専門的な指導のもと、主に肩関節の可動域改善や筋力強化などの運動療法を行います。 初期段階では痛みの軽減と炎症の抑制をして、徐々に筋力トレーニングや動作練習を加えていくのが一般的です。 また、正しい泳ぎのフォームの習得や、水泳復帰のための段階的なトレーニングも含まれます。 リハビリ期間は個人差があるため、競技復帰までの期間も個々に異なります。 手術 水泳肩が重症化すると、肩の腱板が切れてしまう腱板断裂に至り、手術を検討する必要があります。 腱板が断裂すると、肩を動かすたびに強い痛みが出るだけでなく、筋力が入らず腕が思うように上がらなくなるケースも見られます。 こうした状態では、切れた腱板をつなぎ直す関節鏡視下手術と呼ばれる内視鏡手術が一般的です。 手術の入院期間は2日から5日程度で、手術後は数カ月間リハビリを通じて機能の回復を目指します。 再生医療 再生医療は人間の組織を活用した治療法です。 再生医療には、「幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」があります。 「幹細胞治療」はご自身の脂肪などから幹細胞を採取・培養し体内へ注射する治療です。 「PRP(多血小板血漿)療法」では、ご自身の血液から血小板を多く含む成分を抽出し体内へ注射します。 当院では両方の治療法を提供していますので、具体的な治療内容を知りたい方は当院までお気軽にお問い合わせください。 水泳肩の原因と治し方を知って適切に対処しよう 水泳肩は適切な知識と対処法を理解できれば、効果的に治療をはじめられます。 しかし、痛みがある状態で無理に水泳を続けてしまうと、将来的に手術が必要となる場合があります。 水泳肩の主な治療法は以下の4つです。 保存療法 リハビリ 手術 再生医療 痛みを感じたら無理をせず、医療機関で適切な診断と治療を受けましょう。 症状が改善しない水泳肩の損傷に対しては手術や再生医療の選択肢もあります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 水泳肩に関するよくある質問 水泳肩は肩のどこの部分が痛い? 水泳選手に多い肩の痛みは、主に棘上筋と呼ばれる筋肉の腱に炎症が起こることが原因とされています。(文献1) 棘上筋の場所は、肩甲骨上部から上腕骨の上端にかけて付着する筋肉です。 棘上筋周辺の筋肉や腱に炎症が生じると、腕を上げる動作や回旋動作で痛みが増強します。 また、重症化すると肩甲骨周辺や首筋にまで痛みが広がる場合があります。 関連記事:肩が痛い!医師が詳しく解説 | 大阪 リペアセルクリニック 水泳肩は治らない怪我ですか? 水泳肩は適切な治療により改善できるスポーツ障害です。 早期発見と正しい治療により回復が期待できます。 関連記事:水泳肩が治らない?気付かずに悪化する理由や治療法について解説 | 大阪 リペアセルクリニック 水泳肩に効くトレーニングはありますか? 水泳肩の改善には肩甲骨周辺の筋力強化とバランス調整が効果的です。 とくに、ローテーターカフと呼ばれる深層筋群の肩甲骨まわりのトレーニングに取り組むことが水泳肩に効くと報告されています。(文献2) 具体的には、軽い負荷でのチューブトレーニングやダンベルなどを使用し、体幹の安定性を高めるエクササイズなどがあります。 ただし、痛みがあるときは無理をせず、医療機関を受診し適切な指導のもとでトレーニングを段階的に進めることが大切です。 参考文献 (文献1) Biomechanical Considerations in the Competitive Swimmer’s Shoulder|Sports Health (文献2) Effectiveness of Therapeutic Exercise in Musculoskeletal Risk Factors Related to Swimmer's Shoulder|Eur J Investig Health Psychol Educ
2025.07.31 -
- 肩関節、その他疾患
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デスクワークやスマートフォンの使用が増え、「肩甲骨が動かない」「硬い」と感じる人が増えています。肩甲骨は上下、内側・外側への回旋、前傾・後傾など多方向に滑らかに動くのが本来の姿です。しかし、肩甲挙筋、大菱形筋、小菱形筋、僧帽筋などが硬くなると「可動域制限」が生じます。 初期は痛みを感じにくく、肩こりや首こり、猫背、呼吸の浅さなどの不調を見過ごしがちです。本記事では、肩甲骨が動かない原因やセルフチェック、改善方法、受診の目安までをわかりやすく解説しますので、参考にしてください。 肩甲骨が動かない・肩の可動域制限のお悩みを今すぐ解消したいとお考えで、再生医療に興味がある方は当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 肩甲骨が動かない原因 肩甲骨の動きが制限されると、肩こりや首の痛みだけでなく、姿勢全体の乱れにもつながります。ここからは、肩甲骨が動かなくなる主な原因を詳しく解説します。日常生活の中で気をつけるポイントを知り、予防や改善へつなげていきましょう。 姿勢が悪い 猫背や巻き肩といった悪い姿勢は、肩甲骨の動きを妨げる大きな要因です。長時間のデスクワークやスマートフォンの操作によって、頭や肩が前に出た姿勢が習慣化すると、胸の筋肉は短縮し、背中の筋肉は引き伸ばされて弱くなります。 その結果、肩甲骨が外側に開いたまま固定され、動かしづらくなります。姿勢のクセは肩や首の負担を増やし、肩こりや頭痛などの症状を引き起こしがちです。慢性的な痛みを防ぐには、正しい姿勢を心がけ、こまめに肩甲骨を動かすストレッチを取り入れることが大切です。 筋肉が硬い・バランスが悪い 肩甲骨の動きは周囲の多くの筋肉によって支えられています。僧帽筋、肩甲挙筋、大菱形筋、前鋸筋などが硬くなったり、筋力が低下したりすると、肩甲骨の動きが制限されます。過度の緊張状態やアンバランスな使い方が続くと、特定の筋肉だけに負担がかかり、柔軟性や協調性が失われます。 日常生活で肩甲骨を大きく動かす機会が減っていることも、筋肉の問題を悪化させる原因です。改善にはストレッチや適度な運動で筋肉の柔軟性を保ち、バランスよく使う習慣が重要です。 ストレス・呼吸が浅い ストレスを感じると、無意識に肩に力が入り、呼吸が浅くなりがちです。浅い呼吸が続くと肩や胸まわりの筋肉が常に緊張した状態になり、肩甲骨の動きが制限されます。呼吸に関わる胸郭の動きが硬くなると、肩甲骨の滑らかな可動性にも悪影響を及ぼします。 深くゆったりとした呼吸を意識することは、心身のリラックスだけでなく、肩甲骨周囲の筋肉を柔らかく保つためにも大切です。リラックス法を取り入れ、呼吸を整える習慣を心がけましょう。 肩甲骨が動かない状態を放置するリスク 肩甲骨の動きが悪い状態を放置すると、首や肩の筋肉に過度な負担がかかり、「常にこっている」「だるい」「重い」といった慢性的な不快感を引き起こします。マッサージなど一時的な対処では改善しにくくなる場合もあります。猫背や巻き肩、スマホ首、ストレートネックなど姿勢の崩れを招き、見た目の印象が悪化するだけでなく、呼吸や内臓への負担も大きいです。 肋骨や胸郭の動きが制限されることで呼吸が浅くなり、酸素の取り込み不足による疲れやすさや睡眠の質の低下にもつながります。肩甲骨の痛みや動かしづらさを感じたら、当院へお気軽にご相談ください。 肩甲骨が動かない場合の自宅でできるストレッチ 肩甲骨が硬いと感じるときは、肩甲骨周囲の筋肉をほぐし、動きを良くするストレッチを自宅でも行いましょう。無理のない範囲で続けると、可動域の改善や肩こりの予防が期待できます。 肩甲下筋のマッサージ 肩甲下筋(肩甲骨の前面に付着している大きな筋肉)が硬くなると肩甲骨の動きが制限され、肩こりや可動域の低下を招きます。自宅でできるセルフマッサージを試してみましょう。 片手を反対の脇の下に深く入れる 肩の前側(脇のすぐ奥)に指を押し当てる 痛気持ち良いポイントを探し、円を描くようにゆっくり押し回す 30秒ほど続ける 呼吸を止めず、リラックスした状態で行う (文献1) 筋肉をほぐすことで肩甲骨周囲の緊張が和らぎ、徐々にスムーズな動きができるようになります。普段のケアに取り入れて、肩こりや動きの悪さを予防します。 広背筋のストレッチマッサージ 広背筋(胸郭下部後方の大部分を占める広くて平らな筋肉)が硬いと肩甲骨の動きが悪くなり、猫背や肩こりを助長します。以下の方法で自宅でも簡単にケアしましょう。 仰向けになり、テニスボールを肩甲骨の下あたりに置く ゆっくり体を前後に動かしながら広背筋をほぐす 1分ほど繰り返す 痛みが強い場合は無理をせず調整する (文献1) 筋肉の緊張を和らげると、肩甲骨の可動域が改善され、姿勢も整いやすくなります。毎日のセルフケアにおすすめです。 大胸筋のストレッチ 大胸筋(胸部の大きな筋肉)の硬さは巻き肩や猫背の原因となり、肩甲骨の外側固定を招きます。以下のストレッチを取り入れましょう。 壁の横に立ち、肘を90度に曲げて手を壁につける 体を反対側にゆっくりひねる 大胸筋をしっかり伸ばす 20~30秒キープし、左右交互に行う (文献1) 胸の筋肉をゆるめることで肩甲骨が内側へ戻りやすくなり、自然な姿勢を保ちやすくなります。呼吸を止めずリラックスしながら行いましょう。 肩甲骨が動かない場合の受診目安 肩甲骨の動かしづらさが続き、痛みやしびれ、日常生活に支障が出てきた場合は、自己流のケアだけでなく医療機関への相談を検討してください。以下のような症状が出現した場合は、受診が必要です。 痛みが強い場合 しびれがある場合 四十肩や五十肩の疑いがある場合 痛みが強い 肩甲骨周囲の痛みが強く、以下のように日常生活に支障が出ている場合は受診を検討します。 肩の突然の強い痛み、とくに夜間に痛みが増す 腕を動かそうとすると鋭い痛みが走る 着替えや洗髪など日常動作が困難になる こうした症状は、炎症や神経の圧迫など原因がさまざまです。放置すると痛みが慢性化しやすく、可動域の制限や筋力低下を招くこともあります。早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。 しびれがある 肩甲骨付近のしびれは、以下のような神経の圧迫や血流障害などが原因の可能性があります。 頸椎や胸椎の歪みからくる神経圧迫 斜角筋、小胸筋など周囲筋肉の過度な緊張や締め付け 長時間の同じ姿勢や負荷による血流障害 しびれは肩甲骨周囲だけでなく、腕や手先にまで広がることもあります。軽いしびれでも放置せず、専門医の診察を受けて原因を特定し、適切な治療やリハビリで改善を目指しましょう。 四十肩や五十肩の疑いがある 痛みとともに肩の動きが制限されてきた場合、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の可能性があります。以下のような症状の場合は要注意です。 腕を上げたり後ろに回す動作がつらい 着替えや髪を結ぶなど日常生活動作が困難 痛みが徐々に増し、動かせる範囲が狭くなる 進行すると拘縮(固まり)や痛みが長期化しやすいため、早めの受診が重要です。医療機関では痛みを和らげる治療やリハビリを行い、可動域を取り戻します。肩の動きや痛みの変化に気づいたら、医療機関の受診をおすすめします。 肩甲骨が動かない場合の治療法 肩甲骨の動きが制限され、痛みや不調が続く場合は医療機関での専門的な治療が有効です。以下のような主な治療法をご紹介します。 内服・注射 リハビリテーション 温熱療法・冷却療法 再生医療 内服・注射 痛みや可動域制限を軽減するため、まずは内服薬での治療を行います。鎮痛剤や漢方薬などを用いて痛みや炎症をコントロールし、肩甲骨周囲の筋肉が動きやすい状態をつくります。薬による治療は、リハビリやストレッチを進めるための基本です。 症状に応じて以下のような注射療法を組み合わせて行い、即効性のある痛みの緩和を図ります。 筋肉を動きやすくするハイドロリリース 拘縮部位へのマニュピュレーション エコーガイド下でのブロック注射 患者様一人ひとりの状態やご希望を踏まえ、医師が治療プランを提案します。 リハビリテーション リハビリは肩甲骨の動きを取り戻すために欠かせない重要な治療法です。理学療法士が一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた以下のようなプログラムを提案し、無理なく続けられるようサポートします。 肩甲骨周辺の筋肉を柔らかく保つストレッチ 筋力を強化するためのトレーニング 肩甲骨の位置や動きを正しく導く運動療法 セルフケアの方法も丁寧に指導し、再発予防までを見据えた包括的なケアを行います。定期的な通院での経過確認や目標設定も大切にし、患者様と二人三脚で改善を目指します。 温熱療法・冷却療法 肩甲骨周囲の痛みや緊張を和らげるため、温熱や冷却を使った物理療法を行います。 温熱療法の効果は以下のとおりです。 患部を温め血行を促進 筋肉の緊張を和らげて動きを改善 慢性的なこりや硬さをほぐし、リハビリ効果を高める 冷却療法の効果は以下のとおりです。 患部を冷やして炎症を抑制 急性期の痛みを軽減 腫れや負担を抑え回復を促す 症状や痛みの程度、時期に応じて医師や理学療法士が適切に選択し、温熱と冷却を組み合わせて治療します。定期的な評価をしながら、再発予防を含めた治療を行います。 再生医療 進行した肩の障害や腱板損傷など、従来の治療で十分な効果が得られない場合に、再生医療といった新しい選択肢もあります。再生医療には以下のような特徴があります。 自身の脂肪組織から採取し培養した幹細胞を投与 幹細胞が腱板などの組織を再生し、痛みや可動域制限を改善 手術を回避できる可能性がある身体への負担が少ない治療法 患者様ごとに適応や効果は異なるため、診察時にしっかりと評価を行い、治療方針を提案します。当院では、治療のリスクや期待できる効果についてもわかりやすくご説明します。再生医療に興味がある方、不安をお持ちの方もぜひ一度ご相談ください。患者様のより良い生活を取り戻すためのお手伝いをいたします。 肩甲骨が動かない原因を解明させ適切に対処しよう 肩甲骨が動かないのは、多くの人が抱える身近な悩みです。可動域の制限は肩こりや首こり、猫背などの姿勢悪化、呼吸の浅さ、頭痛などさまざまな不調を引き起こします。早めのセルフケアやストレッチを習慣づけると、予防や改善につながります。 ただし、痛みが強い、動きが著しく制限される、しびれを感じるといった場合は自己判断で放置せず、医療機関へ相談してください。原因を正しく解明し、自分に合った治療やリハビリを受ければ、根本的な改善と再発予防の大きなポイントになります。 当院にも、肩甲骨の動きの悩みを抱えた患者様が多く通っています。専門家と一緒に取り組むことで、より快適な生活を取り戻しましょう。 参考文献 文献1 腕が後ろに回らない原因とは?効果的なマッサージ方法も|西荻窪きりん堂接骨院南口院
2025.07.31







