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腱板損傷を判断する評価テスト

腱板損傷とは

腱板損傷とは肩についている腱板と呼ばれる筋肉が損傷する疾患です。腱板は回旋筋腱板(ローテーターカフ:Rotator cuff)ともいい、肩関節の深層にあるインナー筋です。この腱板は上腕骨と肩甲骨をつなぐ4つの筋肉であり、肩関節の前方にある肩甲下筋、上方にある棘上筋、後方にある棘下筋と小円筋から構成されています。

腱板はインナー筋のため筋収縮の牽引力はそれほど強くないものの、上腕骨を肩甲骨に引きつけて肩関節を安定させる重要な役目もあります。この腱板が部分的に、あるいは完全に断裂した状態を腱板損傷といいます。

腱板のイラスト

原因・症状

腱板損傷の原因は外傷や加齢によるものがあります。外傷では転倒や重たい物を持ち上げた際などに発生することが多いです。加齢では変性により腱板が擦り切れることがあります。この他にも野球の投球動作のように、繰り返し肩を酷使するスポーツの経験者にも好発します。

年齢層から見ると、若年者の場合は外傷のように大きな外力が必要ですが、高齢になると日常生活動作でも断裂が生じることがあります。肩に症状がない方を対象にしたM R I検査では、60歳以上の54%に腱板断裂が確認されました。

腱板が切れている(断裂している)と聞くと、肩の痛みを伴うように思われるかもしれませんが、実際は自覚症状がない方も多いです。それとは逆に痛み症状が強い方もおられ、じっとしていても痛みを感じることがあります。

また肩の痛みよりも高頻度にみられるのが筋力低下です。腱板はそれぞれの筋肉がちがう作用(働き)があるため、筋力低下を確認するテスト法が異なります。

筋力テスト

患者さんがテストをする筋肉の作用する方向に力を入れ、検査をする人が抵抗を加えることで筋力を評価するテスト法です。筋力テストにより、疼痛の有無や筋力低下の程度を確認します。

棘上筋(S S P)テスト

棘上筋は外転(腕を体の横から挙上する動作)で作用する筋肉です。腱板の中で最も損傷が多いのが棘上筋であり、棘上筋が断裂すると外転筋力が20〜30%低下するといわれています。

Full can test:
肩関節外転30°で外旋位(親指を上に向ける)にする。
腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加える。

Empty can test:
肩関節外転30°で内旋位(親指を下に向ける)にする。
腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加える。

棘下筋(I P S)テスト

棘下筋は肩関節の外旋(腕を外にひねる動作)で作用する筋肉です。

External rotation lag sign:
腕を下に下ろした状態から肘を90°に曲げます。
肘から先を外側に開いていき左右で差がみられれば陽性。

肩甲下筋(S S C)テスト

肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内にひねる動作)で作用する筋肉です。腱板損傷の場合、痛みにより手を背中に回す動作ができないことがありますので、そのような時は下の2つのテストを試みる。

Lift off test:
背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるか確認する。

Bear-hug test:
患側(痛みのある方)の手で、健側(痛みのない方)の肩を押し込み、その力の強さを評価する。

Belly-press:
患側(痛みのある方)の手で、お腹を押し込む力の強さを評価する。

Drop arm sign(ドロップアームサイン)

検査する人が外転90°まで持ち上げ、支持している手を離す。
患者さんが腕を支えられなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろした場合は陽性。

 

 

このように腱板の各筋肉を個別にスクリーニングするテスト法はありますが、実際は損傷している筋肉と検査結果が一致しない場合があります。例えば、棘上筋が単独で損傷している時に肩甲下筋テストで陽性となる場合や、逆に肩甲下筋が損傷している時に棘上筋テストが陽性になる場合がありますので、腱板損傷の有無はその他のテストも併用して判断しましょう。

腱板損傷のテスト法には、筋力テスト以外に疼痛誘発テストがあります。疼痛誘発テストは検者が患者さんに特定の動きを操作する、または患者さん自身に体を動かしてもらうことで腱板に疼痛が発生するかを評価します。

疼痛誘発テスト

肩峰下インピンジメントサイン

1) Neer test:
検者は患側の肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させていく。
これは上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性。

 

2) Hawkins test:
検者は屈曲(前方に腕を上げる動作)90°まで腕を上げ、内旋を加える。
これは上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てるテスト法であり、疼痛がみられれば陽性。

Painful arc sign(ペインフルアークサイン)

患者さんの力により外転方向に挙上する。
棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。

画像検査

腱板損傷の診断では上記のテスト法が判断の手がかりになりますが、腱板損傷以外の疾患と鑑別し、正確に損傷部位を特定する場合には、画像による検査が必要となります。腱板損傷ではM R Iや超音波による検査が有用です。

M R I(Magnetic Resonance Imaging)検査

腱板損傷に対する画像診断では、M R Iによる検査が最も有用です。M R Iとは磁気共鳴画像といい、レントゲン検査やC T検査のように放射線を使用するのではなく、電磁波を使用した画像診断です。

M R Iでは、どの腱板が損傷しているのか、どの範囲まで損傷しているのか、腱板のどの場所で損傷しているのかなどを評価することが可能です。

超音波(エコー)検査

超音波検査では、筋肉や腱の状況を確認することができ、炎症が起きている場所の特定も可能です。超音波検査はM R Iと違い診察室で手軽に行える検査のため、患者さんと一緒にモニターを見ながら肩の状態を説明することもできます。

また超音波を当てながら注射の針を進めることで、より正確な目的地(炎症部位や筋膜、神経など)まで誘導することができます。

レントゲン検査

肩のレントゲンレントゲン検査では筋肉や腱の状態は確認できないため、腱板損傷の判断をするには難しいです。ただし、腱板が断裂すると関節の隙間(肩峰と上腕骨頭の間)が狭くなることがあります。

また腱板損傷は肩関節の肩峰が変形し、骨棘(こつきょく:トゲのように変形した骨)により腱板がすり切れて発生する場合もありますので、原因究明の手がかりにもなります。

まとめ

腱板損傷のテスト法は検査をする目的によって方法が異なります。陽性反応がみられるテストは痛みを伴いますので、痛みの出る強さはポジション、筋力低下の加減を記録しておくと、治療経過を確認する上での指標にもなります。

ただし、腱板損傷は時間の経過とともに疼痛が消失したり、拘縮により関節の動きに制限がかかり、正確なテストの評価ができないことがあります。また急性期であってもテスト法だけでは情報が不十分なため、画像診断も含めて判断する必要があります。

 

No.0015

監修:院長 坂本貞範

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