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手根管症候群を自分で治す!ストレッチとマッサージでセルフケア 本記事では、手根管症候群に対する、自分でできるケアの方法を中心にご紹介します。 家事に追われている主婦や、妊娠中の女性、手をよく使う建築業の方など、手の痛みや痺れに悩まされている人にはぜひ読んでいただきたいです。 手根管症候群とは 手根管症候群とは、手根管を形成する掌の小さい骨の集まり(手根骨)と、手根骨に蓋をするようにつく横手根靭帯の間に、正中神経(指を動かすための神経)が挟まり圧迫された状態をいいます。 手根管症候群の症状 神経が圧迫されることにより、親指から薬指の一部分に痺れや痛みを発します。 また、夜間から明け方にこの症状が強くなることが多く、場合によっては寝ている途中に覚醒してしまうほどです。 手を振ったり、手の形を変えることで症状が和らぐのも特徴の一つです。 圧迫の程度がひどく、長期間症状が続くと、親指の付け根の筋肉が萎縮してしまい、指先で物を掴む動作(ピンチ動作)が難しくなることがあります。 手根管症候群の原因 手根管症候群は、原因がよく分かっていない特発性のものが多く、妊娠・出産時期や更年期の女性に多いとされています。 手の屈伸動作の繰り返しや骨折などのケガから続発して発症するとも考えられており、家事動作が多い主婦、重労働で手に力を入れる建築関係の人にも見られます。 手根管症候群が疑われた場合やるべきこと 手根管症候群の初期症状は、手指の痺れや痛みですが、我慢できないほどではないため見過ごされやすい疾患です。 そのため、医療機関に相談に来た際には、手のひらの筋肉の萎縮が進んでいる状態で手術が必要となるケースも少なくありません。 上記に挙げたような症状がみられたら、迷わず専門の医療機関へ相談してみましょう。 手の指の痺れは、頸や肩周り、肘周囲で起こる他の神経障害との見分けもつきにくいため、原因を探ることは大切なことです。 自分でできる手根管症候群のセルフケア 次に、手根管症候群になった際、自分でできるケアついてご紹介します。 初期の手根管症候群や、筋肉の張りにより症状が出ている場合などは効果がでやすいため、試してみる価値ありです。 温めるのと冷やすのはどっちがいい? 手根管症候群に対しては、温めた方(温熱療法)が有効である場合が多いです。 手根管症候群のような神経を圧迫している場合、同時に血管も圧迫しており循環が悪くなっているケースがあります。 そのため、温めて循環を促すことで症状が緩和されるでしょう。 ただ、熱を帯びている場合はかえって痛みを増強させてしまうこともあるため、患部の状態を確認して行うようにしてください。 湿布の貼り方は?サポーターは有効? 結論から言えば、どちらも少なからず効果はあります。 湿布は痛み止め成分が入っているため、痛みが強い場合は一時的に軽減させる効果があります。 また、サポーターに関しては、手首を固定するサポーターだと安静を保つことができるため、症状が強い場合には効果的です。 手根管症候群は、手首や手指を使い過ぎて発症するとも考えられているため、サポーターにより動きに制限をつけることで使い過ぎを防いでくれます。 痛みが強い場合は、手首から手のひらにかかるところに湿布を貼り、その上からサポーターをすることを推奨します。 手根管症候群のセルフケアの方法を紹介 それでは自分で行うストレッチやマッサージの方法をいくつかご紹介していきます。 手関節屈曲筋のストレッチ 【対象となる筋肉】 ・橈側手根屈筋 ・尺側手根屈筋 ・浅指手根屈筋 ・深指手根屈筋 ①手のひらから手指にかけて把持し、その手で、手首を手の甲側に反らす ②その状態を保ったまま、ゆっくり肘を前方に伸ばす ③前腕につっ張り感を感じたところで、20〜30秒キープ 手関節伸展筋のストレッチ 【対象となる筋肉】 ・長橈側手根伸筋 ・短橈側手根伸筋 ・尺側手根伸筋 ・総指伸筋 ・示指伸筋 ①手の甲から指先までを軽く包み込むよう把持し、手首を手のひら側へ曲げ、ゆっくり肘を伸ばす ②前腕の外側部分に張りを感じたところで20〜30秒キープ 手指の腱のエクササイズ 手根管を通る腱の動きを滑らかにする運動 ①手指をまっすぐ伸ばした状態から始める ②指の第一、第二関節から曲げていく ③①の状態に戻すように指を伸ばしていく ④これを10〜20回繰り返し行う 手内在筋(手のひらの筋肉)のエクササイズ 虫様筋(手のひらにある筋肉)の運動 ①手指をまっすぐ伸ばした状態から始める ②指の第一、第二関節は伸ばしたまま、第三関節(指の付け根)から指全体がお辞儀をするように曲げる ③直角近くまできたら、①の状態に戻るよう起こしていく ④これを10〜20回繰り返し行う 横手根靭帯のマッサージ ①手首と手のひらの境目ぐらいを反対の手の親指、人差し指で押さえ、つまむようにそれぞれの指を近づけていく ③次にそれぞれの指を離すように広げていく ④これを繰り返し行う セルフケアの注意点 簡単なセルフストレッチやエクササイズを紹介しました。 気をつけてほしいところは、無理に強い力で行わない、ということです。強い力の方が、効果が出やすいと思っている人も多いかもしれません。 しかし、ストレッチやマッサージは、強い力や、痛みが出るほどの伸張感で行ってしまうと、かえって硬くなることがあります。これが防御性収縮と呼ばれるものです。 いずれのケアも、力の入れ過ぎには注意し、効いているのか効いていないのか分からないくらいの力加減で行うようにしましょう。 どうしても症状がとれない場合は? これまで紹介したセルフケアは、手根管症候群の初期の状態では効果を示すことはありますが、重症化したものだと十分な効果は得られません。 「痺れや痛みがつよくなってきた」 「力が入らず箸を落としてしまう」 など、症状が顕著になった場合は、手術療法の適応になることもあります。 このような場合では、専門医に相談し、詳しい検査、治療を受けることを推奨します。 まとめ・手根管症候群を自分で治す!マッサージとストレッチでセルフケア 今回は、手根管症候群に対し、自分でできるケアの方法をお伝えしました。 同じような症状でも、一人一人原因が違います。 セルフケアを行うと同時に、負担になっている動作はないか、普段の生活を振り返り、改善していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.107 監修:医師 坂本貞範
2023.01.13 -
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手根管症候群|手のしびれ放置はNG!手術と仕事復帰までの期間 「手のしびれがあるけど原因が何か知りたい」 「手のしびれは放っておいても大丈夫なの?」 このような疑問を持つ方はいませんか?手のしびれはもしかすると手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)が原因かもしれません。 この記事では、手根管症候群について紹介し、手術や必要な費用と仕事復帰までの流れを解説します。 手がしびれて気になる方は、ぜひ参考にしましょう。 手根管症候群とは?原因や症状、治療について 手根管症候群とは手首を通る神経(正中神経)が圧迫されたり、しめつけられたりして、神経の障害を引き起こす状態を言います。 正中神経は手首の骨や屈筋支帯(くっきんしたい)と呼ばれる靭帯でできたトンネルを通ります。 このトンネルを手根管と呼び、手根管の圧が高まることが症状を引き起こす原因になるため、手根管症候群と呼ばれます。 手根管症候群の原因 特発性と呼ばれ原因不明である場合が多いです。 以下のようなものが原因の1つと考えられています。 ・閉経 ・妊娠や出産 ・アルコールの多飲 ・腎臓病による透析 ・糖尿病 ・骨折や変形 ・腫瘤(こぶ) ・腱鞘炎(手の使い過ぎ) など 中高年の女性、手を酷使する職業やスポーツをする人に症状がでやすいとされています。 手根管症候群の症状 症状の出始めは、人差し指や親指の手のひら側にしびれやピリピリ感、痛みがあり、進行すると中指や薬指まで症状が広がります。 手根管症候群は手首を手のひら側に曲げると手根管にかかる圧が増えて上記の症状が悪化します。症状は夜中や明け方に強いのも特徴で、しびれや痛みが強まると手をふることで症状が和らぎます。 重症になると親指の付け根がやせてしまい、オッケーサインをしようとしても、うまく丸が作れなくなります。 しびれがあっても、すぐに元に戻り再発しないものは、足がしびれたときのように一時的に血行が悪くなっただけで心配ないです。 しかし、上記のようなしびれや痛みは放置すると症状が悪化して、重症化してしまいます。放置をせずに症状が気になる場合は、すぐにお近くの整形外科を受診しましょう。 手根管症候群の治療法 発症してすぐのため症状が軽かったり、妊娠していたりする場合は、手術をしない保存療法をします。 保存療法では手首を少しそらして固定する装具を使ったり、日常生活で手首に負担のかからない工夫をしたりします。 また、ステロイドを注射したり、痛み止めや神経の働きをよくするビタミンB12を服用したりして痛みやしびれの軽減を図る場合もあります。 保存療法で症状が改善しない場合や痛みが強い場合に選択されるのが手術療法です。 手術については次の見出しで詳しく解説します。 手根管症候群の手術内容や費用 手根管症候群の手術は以前に比べ短時間で、負担が軽くなっています。 そこで手術の具体的な内容や手術に必要な費用の目安を紹介します。 手根管症候群の手術とは 手術療法は、手根管開放術と母指対立再建術の二種があります。 手根管症候群の手術は手根管開放術と呼ばれ、屈筋支帯を切開して、神経の圧迫を取り除くのが目的です。 以前は手のひらから手首にかけて大きく皮膚を切っていましたが、今は内視鏡と呼ばれる小型のカメラ付きの管を挿入して手術をするため、短時間かつ小さな傷ですみます。 また、親指の筋肉がやせて力が入りにくくなっている場合は、親指の筋肉を別の部分から移行して再建する母指対立再建術が適応です。 さらに、腫瘤を取り除く必要がある場合は、皮膚を切開して腫瘤を取り除きます。 手術にかかる費用の目安 手術にかかる費用は、開放術の場合、概ね 12,000円から 30,000円です。 内視鏡を使用する場合は、使用しない場合に比べてやや金額があがります。 また、母指対立再建術を同時に実施する場合は、さらに費用が高くなります。 手根管症候群の手術から仕事復帰までの期間 内視鏡下で行う手根管開放術では、手術時間は 30 分もかからず、日帰りで終わる場合も少なくありません。そのため、長期間の入院で体が衰えることもなく、早期の社会復帰ができます。 母指対立再建術の場合は 1 〜 2 週間の入院をして、手術後には 1 週間程度の固定が必要です。 内視鏡手術後は翌日以降から痛みのない範囲であれば安静にする必要はなく、通常の生活が可能です。 ただし、神経が圧迫されて損傷したために起こるしびれがある場合、手術をしてもしびれが回復するのは半年程度かかる場合もあります。 1 週間ほどは傷口を水に濡らさないようにする必要があるため、水仕事が必要な仕事は行わないようにしましょう。 力仕事やタオルを絞ったりするのは手術部に負担がかかるため、術後 1 カ月程度を目安に控えるようにしましょう。 母指対立再建術の場合は、手術後に約 1 カ月の固定をする必要があるため、仕事復帰もそれ以降になります。 これらの期間は手術した病院や手術後の状態によって、ずれがありますので、医師に詳しく確認しましょう。 手根管症候群のしびれは放置せずに早めの受診が重要/まとめ 手根管症候群でしびれや痛みがある場合、適切な治療をしなければ症状が進行します。単なるしびれだからといって放置するのは危険です。 毎朝起床時にしびれる、しびれが続いて治らないなどの場合は、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。 最近では短い時間で済む手術も増えています。 進行すると手術費も入院期間も増えてしまいますので、状態の進行を防ぐことが大切です。 この記事を参考にして、手根管症候群の悪化を防ぎましょう。 No.105 監修:医師 坂本貞範
2022.12.28 -
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手根管症候群でやってはいけないこと 手のしびれ、とくに人差し指や中指にしびれがある人は、『手根管症候群』の可能性があります。 手根管症候群は放置すると進行する病気で、ある程度病状が進んでしまうと、手の動きが制限されて元に戻らないこともあるので注意が必要です。 今回は、手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと、検査方法や治療法についてご紹介していきます。 手根管症候群とはどんな病気? 手根管症候群とは、手首にある手根管で、その部分を通過する正中神経を圧迫してしまう病気です。正中神経を長く圧迫してしまうと、神経の修復ができなくなったり、正中神経が支配している筋肉にも影響を及ぼして治療が難しくなってしまいます。 手根管症候群を発症する原因にはほかの病気が隠れていることもありますが、手首のケガや手の使い過ぎ、女性ホルモンの乱れなどでも起きることがあります。 正中神経が傷つくとどんなことが起きるのか? 正中神経は手首を通って手に分布します。主に手のひら側の親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側半分を担う感覚神経と、親指を動かす母指球筋の動きを担当する運動神経があります。 その為、正中神経が障害されると、感覚神経の範囲でしびれや痛み、進行すれば触っている感覚が鈍くなる知覚麻痺が現れます。また、運動神経の障害で母指球筋が痩せて、親指の付け根の盛り上がりがなくなり、親指を動かすのに障害が出ます。 特に、小さなものをつまむような動き(親指と人差し指で物を拾い上げる、服のボタンをかける、など)が、やりにくくなります。 正中神経は手首よりも上(肩寄り)では、前腕の回内や手首を曲げるといった役割も担っていますが、手根管症候群では手首の部分で傷つくため、手首より上の動作の障害は現れません(手首より上の症状がある場合は別の病気が考えられます)。 手根管症候群が疑われるとき、病院ではどんな検査をするのか? 手根管症候群の可能性がある場合、受診するのは整形外科です。 基本的には正中神経を圧迫するような状態を再現して症状が現れるか確認したり、親指の付け根の筋肉が痩せていないか確認することで、ほとんど診断は可能です。 ただし、手首にコブができている可能性がある場合はエコーやMRI検査を追加したり、診断に迷う時には正中神経に電気を流して障害の具合を調べる筋電図検査などを追加する場合があります。また、手根管症候群の原因としてほかの病気が隠れている可能性がある場合は、血液検査などを追加することもあります。 もし手根管症候群だったら、どんな治療をするの? 軽度の手根管症候群の場合には以下のような治療で経過をみます。 ・内服薬:ビタミンB12や消炎鎮痛剤 ・外用薬:痛み止めの成分の入ったシップや塗り薬 ・装具:手首を固定するサポーターやスプリント 手根管の炎症が強い場合には手首に炎症を抑えるステロイドなどの注射を行うこともあります。 これらの治療で改善しない場合や手根管周辺に腫瘤がある場合、また母指球筋がやせている場合には手術療法が必要になることもあります。カメラを用いた鏡視下手根管開放術や直視下手根管開放術など、できるだけ傷が小さく、早く日常生活に戻れるように手術も進歩しています。 手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと 手根管症候群が疑われるときにやってはいけないことは以下です。 手に負担のかかる姿勢や動作 ・手を酷使すること 手根管症候群の治療の1つには「安静」があります。手根管症候群の原因はいくつかありますが、手の使いすぎの可能性もあります。できる限り症状のある手は休めましょう。 仕事などで、どうしても手を使わなければならない人や、朝起きたときに症状が強い人は寝ている間に手根管症候群を悪化させる格好になっている可能性があるので、その場合は装具(サポーターやスプリントとも呼びます)を装着するのもよいでしょう。 装具の一部は自分で購入することもできますが、合わないものを使ったり、使い方が違うとかえって病状を悪化させる可能性があるので、整形外科を受診して手に入れることをお勧めします。 💡 場合によっては、装具の費用の一部が療養費としてあとから返還される制度を利用することもできます。 ・手を握りしめる ⇒握りこぶしを作るのはもちろん、柄の細い道具は手首の負担になるので、包丁やフライパンなどは柄の太いものにし、フライパンを持ち上げるときなどはできれば両手で行ないましょう。 ・パソコンのキーボードを打つ ⇒手首をまっすぐにするために、専用のパームレストを使ったり、手首の下にたたんだタオルを敷いて手首の位置を整えます。 ・手をねじる ⇒雑巾を絞る動作などは手首に負担がかかるので、どうしても絞る動作が必要な時は、タオルを半分の長さにして、輪になった部分を丈夫な水道などにひっかけて、両手もしくは痛くない方の手で絞るようにしましょう。 症状が続くのに放置しない 手根管症候群は続くと正中神経や母指球筋がもとに戻らなくなる可能性があります。自分でできる限りのことを行っても症状が続く場合は、長く様子を見ずに、整形外科できちんと見てもらいましょう。 まとめ・手根管症候群でやってはいけないこと 指のしびれや痛み、物をよく落とすようになったら、手根管症候群の可能性があります。早い段階では手術なしで治療できるので、手根管症候群の可能性があれば、すぐに整形外科で診てもらいましょう。 仕事などで手を酷使する人は、とくに我慢して使い続けると親指の力がなくなり手術が必要になったり、親指の力が戻らない場合もあります。手首に負担のかかる動作はできるだけ避け、どうしてもそのような動作が避けられない場合は病院で装具などについて相談しましょう。 以上、「手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと」についてご紹介しました。ご参考になれば幸いです。 No.087 監修:医師 坂本貞範
2022.10.14 -
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手根管症候群とはどんな病気?症状と治療法をわかりやすく解説! 手根管症候群をご存知でしょうか? 手根管症候群は、手のしびれを訴えて病院を受診する人の中で最も多い病気です。 手根管症候群の可能性があるのは以下のような症状がある人です。 ・しびれや痛みが親指、人差し指、中指、そして薬指の半分(親指側)の範囲に現れる ・朝起きたときに症状が強く現れ、手をぶらぶらと振ると症状が軽くなる ・手のひらを上にして机の上に腕を置き、手首を上向きに90度程度曲げると、指の痛みやしびれが現れる 手根管症候群は放置すると親指の付け根の筋肉が痩せてしまい、小さいものをつまんだりする動作ができなくなります。 手根管とは 手根管は手のひら側の手首の部分にあります。具体的には手の骨(手根骨)の手のひら側に横手根靱帯という靱帯が横向きにあり、この手根骨と横手根靭帯の間のすき間を正中神経という神経と、指を動かすための9本の腱が通り抜けています。 手根管とはこの正中神経と9本の腱が通り抜けるトンネルのような部分です。 手根管症候群では横手根靭帯が浮腫んだり厚みが増すことで、トンネル部分が狭くなり、正中神経を圧迫することによって症状が現れます。またまれですが手根管にコブができて正中神経を圧迫することもあります。 正中神経とは 正中神経は腕にある主要な3本の神経(正中神経・橈骨神経・尺骨神経)のうちの1つです。 正中神経には痛みや物に触れた感じを伝える感覚神経と、筋肉を動かす運動神経が混ざっています。 感覚神経 親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側半分の領域を担っています。 運動神経 手の範囲では、主に親指を動かす母指球筋を担当しています。 (正中神経は手根管よりも肩側ではその他に前腕の回内や手首を曲げるといった役割も担っています) 手根管症候群になる可能性のある病気 手根管症候群になる可能性のある病気としては、以下のようなものが挙げられます ・手首の骨折 ・手根管内の腫瘍 ・リウマチによる滑膜炎 ・アミロイドーシス ・甲状腺機能低下症 ・痛風 ・透析患者 しかし、手根管症候群になったら、上記のようないずれかの病気が必ずあるわけではなく、むしろ手根管症候群で最も多いのは、原因不明の「特発性」です。 手根管症候群は、妊娠や出産時期、更年期の女性にも多くみられます。これは女性ホルモンの乱れによって手根管部が浮腫み、正中神経を圧迫するためと考えられています。 その他にも、 ・パソコンをよく使う人 ・工具のドライバーをよく使用する人 ・振動する機械をよく使う人 など、仕事で手を酷使する人に多いという説もあり、上記のような仕事をする人は発症する可能性があるため注意が必要です。 手根管症候群の症状 手根管症候群の初期には人差し指、中指がしびれたり痛くなります。進行すると親指から薬指の半分(親指側)までしびれます。同じ範囲の感覚が鈍くなることもあります。これは正中神経の範囲です。 しびれや痛みは明け方に強く感じることが多く、手を振ったり、指の曲げ伸ばしをすると症状が軽くなります。人によっては手がこわばる、と表現する人もいます。 手根管症候群の初期症状があらわれているにもかかわらず、この症状を放置すると親指の付け根にある筋肉(母指球筋)がしぼんで、親指の動きに制限がでてきます。 例えば、小さなものを親指と人差し指でつまみにくくなる、親指と人差し指で〇をつくることができない、などです。 こんな症状はありませんか? ・ボタンがつまみにくい ・小銭を拾いにくい ・物をよく落とす ・親指と人差し指でOKサインがつくれない ・親指の付け根部分の筋肉のふくらみが減ってきた このような症状を自覚したら、医療機関にて相談してみることをお勧めします。その際に行われる検査について以下で見て行きましょう。 手根管症候群の検査 整形外科を受診すると、手首や手を動かして正中神経障害の症状が現れるかどうかを調べます。 ティネルサイン 手首を打腱器などで叩いて、正中神経の範囲の指にしびれや痛みを感じるかどうか調べる。 ファレンテスト 左右の手の甲を合わせて、手首を90°曲げたままにし、1分以内に正中神経の領域にしびれや痛みが現れるかをみる。これらの検査で確定診断できない場合は筋電図検査を行うこともあります。 筋電図検査 正中神経に電気を流して電気の伝わる速度を調べる。また、手根管にコブができている可能性がある場合は画像検査を追加します。 超音波検査/MRI 手根管部の腫瘤の有無を確認します。 手根管症候群の治療 手根管症候群と診断されたら、消炎鎮痛剤やビタミンB12、シップや塗り薬などの薬物療法、その他に手首を固定する装具の着用や運動制限などを行います。 炎症が強い場合には手根管内に炎症を抑えるステロイドなどの注射を行うこともあります。 これらの治療で改善しない場合や腫瘤がある場合、母指球筋が痩せている場合には手術療法が必要なこともあります。最近はできるだけ傷が小さくて済むような、カメラを用いた鏡視下手根管開放術や直視下手根管開放術などが主流です。 母指球筋の萎縮が強い場合は別の場所から腱を移動する母指対立再建術を行なうこともあります。 まとめ・手根管症候群とはどんな病気?症状と治療法をわかりやすく解説! 今回は、手根管症候群についてご紹介しました。 手のしびれを感じた場合に多くみられる症状が手根管症候群です。特に指先が上手く使えないことが多くあり、色々な病気が疑われるところですが、実際は突発性、原因が不明なことが多くなります。いずれにしても手にしびれや、指先が思うように動かせないなど、こちらで記した症状以外でも何か疑われることが1つでも感じた場合は、医療機関、整形外科等にて早めの診断が重要です。 比較的初期であれば飲み薬や、手首の安静などで症状が改善することが多くありますが、症状が進むと手術が必要になることもあり、重々注意しなければなりません。 以上、手根管症候群について記しました、参考になれば幸いです。 No.087 監修:医師 坂本貞範
2022.09.26