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「糖尿病網膜症で治療を受けているけれど、最近目のかすみや見えづらさを感じるようになった」 「網膜症が悪化しているかもしれない」 「糖尿病網膜症の場合、失明率はどのくらいなのだろう」 糖尿病網膜症と診断されている方の中には、失明を心配されている方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症の方が失明する確率は、網膜症の進行度合いによって異なります。早期の段階で治療を進めた場合は失明リスクが低く、治療が遅れた場合はリスクが高くなると知っておきましょう。 本記事では、糖尿病網膜症の失明率や失明を予防するために必要な治療と行動について解説します。失明の不安解消のためにも、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病網膜症の原因である糖尿病に関しては、再生医療による治療も選択肢の1つです。 糖尿病治療や再生医療に関して詳しく知りたい方は、ぜひ電話相談をご利用ください。 糖尿病網膜症による失明率 この章では、日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率および、糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由を解説します。 日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率 日本における糖尿病網膜症の有病率は、糖尿病患者の15%~23%とされています。これは、日本で行われている「舟形町研究」と「久山町研究」のデータから出された数字です。(文献1) 一方で、糖尿病網膜症で失明する方は網膜症患者の一部です。進行した糖尿病網膜症で失明する方や、失明の危険がある方は全糖尿病患者の20%程度と推定されています。(文献2) 糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由 糖尿病網膜症は、中途失明の主要原因の1つです。2019年度は、視覚障害の原因疾患で第3位でした。1位は緑内障で、2位は網膜色素変性症です。(文献3) 1989年には糖尿病網膜症が失明原因の第1位になっています。(文献2) 糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由は、「自覚症状が出てきた時点ですでに進行している」点です。 糖尿病網膜症の初期は自覚症状が乏しく、異変に気づいたときにはすでに進行しているケースが多いとされています。症状が現れた段階ですぐに治療を始めた場合は、視力を保てる可能性があります。しかし、症状を放置して治療を遅らせてしまうと、重症化しやすく、中途失明にもつながるのです。 糖尿病網膜症進行度と失明リスクの関係 糖尿病網膜症の進行度合いは大きく分けると以下の3段階です。 単純網膜症 前増殖性糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症 進行するスピードには個人差があり、血糖コントロールが良好な方は進みが遅いといわれています。また、40代から50代といった比較的若い方は進行が速いとされています。(文献2) 単純網膜症の場合 糖尿病網膜症の初期です。網膜にある毛細血管に小さな出血や血管瘤(けっかんりゅう)、硬性白斑(こうせいはくはん)と呼ばれる症状が見られます。 多くの場合は自覚症状がなく、視力低下もほとんど見られません。この段階では、失明リスクは低いとされています。しかし放置すると進行してしまい、失明リスクが高くなります。 前増殖性糖尿病網膜症の場合 単純網膜症より進行している段階であり、網膜血管の閉塞や酸素不足が目立ち始める時期です。眼の中では、酸素不足を補うための新生血管を作る準備が始まっています。 軟性白斑(なんせいはくはん)と呼ばれるシミが生じたり、静脈が膨れ上がったりするなどの症状が出現する時期です。 この段階では、まだ視力が保たれている場合が多いとされています。しかし、ものを見る中心部である黄斑(おうはん)にむくみが生じると、眼に関する自覚症状が出ることもあります。 増殖糖尿病網膜症の場合 糖尿病網膜症がさらに進行した重症の段階であり、失明リスクが最も高い時期です。 酸素不足を補うための新生血管が作られ、網膜や硝子体に伸びていきます。しかし、新生血管はもろくて破れやすいため、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)を起こす場合もあります。その結果、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が現れます。飛蚊症を発症すると、視野に黒い影やゴミのようなものが見えてきます。 さらに増殖組織と呼ばれる繊維状の膜が形成され、網膜を引っ張ることで網膜剥離を生じることも多い状況です。 糖尿病網膜症による失明率が治療により変化する可能性 糖尿病網膜症による失明率は、治療により変化する可能性があります。 この章では、視力回復が期待できるケースと回復が難しいケースに分けて紹介します。 視力回復が期待できるケース 網膜の損傷が軽度な段階では、視力回復も期待できるケースも少なくありません。軽度な段階とは、以下に示したような状況です。 網膜内の出血が少ない 網膜剥離が見られない 黄斑浮腫がない、もしくは軽い 視力の維持や回復のためにも、早期発見および早期治療が大切です。 回復が難しいケース すでに網膜が大きく損傷している場合は回復が難しいといえます。例をあげると、多量の硝子体出血が見られる、牽引性の網膜剥離が発生しているなどです。 糖尿病網膜症が進行した場合、視細胞や視神経も変性されているケースも少なくありません。そのため手術を行っても、日常生活に必要な視力への回復は難しいといえます。 糖尿病網膜症が失明につながる理由 糖尿病網膜症が失明につながる理由は、主に以下のような症状です。 新生血管 黄斑浮腫 硝子体出血 牽引性網膜剥離 詳細を表に示しました。 症状 詳細 新生血管 網膜の血管閉塞による網膜内の酸素不足を補うための血管 網膜や硝子体と呼ばれる部分に発生する 非常にもろくて壊れやすい 硝子体出血 新生血管が破れた結果生じる出血 硝子体とは、眼球の大部分を占める透明な組織である 牽引性網膜剥離 新生血管のまわりにできた増殖組織と呼ばれるものが網膜を引っ張ることで生じる網膜剥離 糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすい 黄斑浮腫 網膜内の黄斑と呼ばれる部分がむくむ現象 黄斑はものを見る上で重要な部分であるため、黄斑浮腫は視力低下の原因とされている 新生血管や硝子体出血、牽引性網膜剥離は、糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすいものです。これに対して黄斑浮腫は、どの段階でも発生する可能性があります。 糖尿病網膜症を治療せず放置したときに起こること 糖尿病網膜症は症状が出る前から進行する疾患です。症状が出ていないことを理由に放置すると、重症化していることに気づけません。 糖尿病網膜症が進行すると、眼内では新生血管の増殖や硝子体出血、牽引性網膜剥離などの症状が出ます。 眼科受診が遅れたり途中で受診を止めたりすると、このような症状に気づきにくいため、視力回復が難しくなります。 以下の記事で、糖尿病を放置した場合のリスクを解説していますので、あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療は、主に以下のとおりです。 レーザー光凝固術 抗VEGF薬治療 硝子体手術 以下の記事でも、糖尿病網膜症の治療について解説しています。あわせてご覧ください。 レーザー光凝固術 網膜の酸素不足を改善し、新生血管の発生や増殖を抑えることを目的とした治療法です。 網膜の一部をレーザーで焼いて新生血管による出血を予防します。この治療により、硝子体出血や網膜剥離のリスクを下げていきます。 ただし、この治療は視力を改善するものではありません。あくまでも網膜症の進行抑制や視力維持が目的です。 レーザー光凝固術を早い時期に受けると80%に有効であり、治療時期が遅れると有効率は50~60%に低下するといわれています。眼科で勧められた場合は、早めに治療を受けましょう。(文献2) 抗VEGF薬治療 VEGF(血管内皮増殖因子)のはたらきを抑え、新生血管の増殖や糖尿病黄斑浮腫を改善するための治療法です。 麻酔薬を点眼し、目の周囲および表面を消毒してから、抗VEGF薬剤を硝子体に注射します。黄斑浮腫が軽減されると視力改善が期待できます。 一度の注射で完結するケースは少なく、追加の注射や経過観察を必要とする場合が多い治療です。 また糖尿病網膜症が重症の場合は、改善に限界があるとされています。 硝子体手術 硝子体内の出血や混濁、増殖組織などを取り除いたり、剥離された網膜を元に戻したりするための治療法です。視力の回復よりも失明を防ぐための治療といえます。 比較的症状が軽い場合は、成功率が90%近いとされていますが、進行してからの手術では成功率が60%まで下がるといわれています。(文献2) 手術後も定期的な経過観察が必要です。 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動は、以下の3点です。 血糖コントロール(HbA1c管理) 血圧や脂質の管理 眼科受診の継続 血糖コントロール(HbA1c管理) 高血糖の持続が糖尿病網膜症の原因であるため、血糖コントロールは大切です。 血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、網膜症の発症や進展を予防できるとされています。その一方で、重症の低血糖は糖尿病網膜症発生率を4倍に増加させるといった報告事例もあります。(文献4) 重症の低血糖とは、血糖値が下がりすぎたために意識障害やけいれんなどの症状が生じて、他者の介助を要するような状況です。 血圧や脂質の管理 高血圧は血管を傷めやすいため、糖尿病網膜症の重要なリスク因子の1つです。とくに、収縮期血圧(最高血圧)が上昇するとリスクが高まるとされています。脂質異常も、硬性白斑や黄斑浮腫といった症状のリスク上昇と関係しています。(文献4) 眼科の定期受診と並行して内科も受診し、主治医に相談しつつ血圧や脂質を管理していきましょう。糖尿病網膜症による失明予防のために大切です。 眼科受診の継続 糖尿病網膜症は無症状のまま進行するケースが多いため、症状の有無に関わらず定期的な眼科受診が必要です。 単純網膜症では半年に1回程度、前増殖網膜症では2〜3か月に1回程度の受診が目安です。増殖網膜症では病状が変化しやすいため、1か月に1回の受診が推奨されています。(文献4) 受診間隔が空くと病状の進行を見逃す可能性が高くなるため、指示された受診間隔を守ることが失明予防の鍵です。 糖尿病網膜症の失明率は行動次第で低下可能 糖尿病網膜症の失明率は20%程度とのデータもありますが、実際は一人ひとりの病状によって異なります。失明率も大切なデータですが、同じくらい大切なことは、早期に治療を受けて網膜症の進行を遅らせることです。 治療が遅れた場合は、その分失明リスクが高くなるため、糖尿病もしくは糖尿病網膜症と診断されたときは、早いうちに眼科を受診しましょう。また、血糖コントロールや血圧および脂質の管理など、失明予防の行動も必要です。 糖尿病網膜症の失明率は、ご自身の行動によって変わってくることを知っておきましょう。 糖尿病網膜症の治療と同じように大切なものが、糖尿病そのものの治療です。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。電話相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病に関する再生医療については、以下の記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症の失明率に関するよくある質問 糖尿病による失明に前兆はありますか? 糖尿病による失明の前兆症状としては、目のかすみやぼやけ、見えにくさ、視野欠損、急激な視力低下などがあげられます。これらの症状は、糖尿病網膜症が進行した際に出てくるものです。 自覚症状が出てきた場合は、そのままにせず一刻も早く眼科を受診しましょう。 糖尿病による失明の前兆については、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。 糖尿病で失明するまで何年かかりますか? 糖尿病で失明するまでの年数は患者によって異なるものです。糖尿病患者の中には、適切な治療により失明せずに過ごせる方もいます。 糖尿病網膜症を発症するのは、糖尿病と診断されて数年から10年くらい経過してからといわれています。(文献5) ただし、糖尿病網膜症は自覚症状がないまま進行するケースが多いため、糖尿病の方は定期的に眼科を受診して検査や治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症の治療戦略|日本視能矯正学会 (文献2) 糖尿病で失明しないために|公益社団法人日本眼科医会 (文献3) 視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位の緑内障の割合が40%超〜2018年の視覚障害認定基準改正の影響が判明〜|岡山大学 (文献4) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)|日本糖尿病眼学会 (文献5) 糖尿病網膜症|公益財団法人日本眼科学会
2025.12.31 -
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「糖尿病があるため眼科受診を勧められた」 「糖尿病網膜症の疑いありと診断されて、網膜症分類の説明を受けたがよくわからなかった」 「糖尿病網膜症の分類とはいったい何だろう?」 糖尿病のために眼科を受診された方の中には、このような状況の方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症の分類とは網膜症の症状や進行度合いを見るもので、ご自身の現状を把握するために大切なものです。 本記事では、糖尿病網膜症の分類や病状進行との関係について解説します。進行を予防するための対策もあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病網膜症の分類について知りたい方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 糖尿病網膜症分類とは? 糖尿病網膜症の分類とは、糖尿病網膜症の進行度合いを示すもので、大きく3段階にわかれています。 単純網膜症 前増殖性糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症 単純網膜症 糖尿病網膜症の初期段階です。 高血糖の影響で網膜の毛細血管がもろくなっています。その結果毛細血管の壁が盛り上がり、血管瘤(けっかんりゅう)や点状出血といった症状が生じます。 この時期は、自覚症状がほとんどありません。 前増殖性糖尿病網膜症 単純網膜症から進行した段階です。 網膜の細い血管が広い範囲で閉塞し、酸素不足になり始めます。酸素供給のために新しい血管(新生血管)を作る準備が始まります。 この時期でも、ほとんどの方は自覚症状がありません。しかし中には、目のかすみや見えにくさといった症状を訴える方もいます。 増殖糖尿病網膜症 糖尿病網膜症が進行しており重症な状況です。 酸素供給のために新生血管が作られますが、この血管は非常に弱いためすぐに破れてしまいます。その結果生じるものが、硝子体(しょうしたい)と呼ばれる部分の出血です。 硝子体出血が生じると、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が出てきたり、急激な視力低下が見られたりします。 増殖組織が網膜を引っ張り、網膜剥離が生じることも少なくありません。 糖尿病網膜症分類の主な体系 糖尿病網膜症の分類には、複数の体系があります。 国際重症度分類 新福田分類 Davis分類 このように複数の体系が存在する背景としては、検査および治療方法の変化、地域や国による違いなどがあげられます。 国際重症度分類 実質的な国際標準の分類です。網膜症なし・非増殖網膜症・増殖網膜症の3つに分類した上で、非増殖網膜症を軽症・中等症・重症の3段階に分けています。(文献1) また、黄斑浮腫(おうはんふしゅ)の重症度分類がある点も特徴です。(文献1) 黄斑浮腫とは、ものを見る上で重要な部分である黄斑部にむくみが起こっている状況を指します。黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の進行度に関わらず発生する可能性があります。(文献2) 新福田分類 糖尿病網膜症を良性と悪性に区別している分類です。比較的軽症の糖尿病網膜症を良性、血管閉塞や新生血管が生じており、網膜光凝固治療が適応になる症例を悪性としています。 治療によって症状が沈静化した場合は、良性網膜症に組み込まれています。合併症について表記している点が、この分類の特徴です。 合併症の表記については、以下のように定められています。 黄斑病変(M) 牽引性網膜剥離(D) 血管新生緑内障(G) 虚血性視神経症(N) 光凝固(P) 硝子体手術(V) Davis分類 糖尿病網膜症の病期を、単純糖尿病網膜症、増殖前糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の3つに分けているシンプルな分類法です。 日常的な臨床場面に即した分類であるため、日本で広く用いられています。 糖尿病網膜症分類と病状進行の関係 糖尿病網膜症の分類は網膜症の進行や、軽症から重症までの経過をわかりやすく示したものです。 医療機関によって使用している分類体系は異なりますが、分類の概要を知ることで自分の現状がわかります。 糖尿病網膜症が進行すると、失明リスクが急速に高まります。受診先で使用されている分類体系を知り、自分の現状を把握した上で、適切な治療を受けましょう。 糖尿病網膜症分類からわかる失明リスクと治療方針 糖尿病網膜症は、分類が重症になるほど網膜の血管障害が悪化し、新生血管による硝子体出血や網膜剥離などによる失明リスクが急速に高まります。 軽度から中等度の非増殖性糖尿病網膜症では、経過観察が中心であり、定期的な眼科検査が推奨されます。ただし、黄斑浮腫を伴う場合は、速やかな治療が必要です。 重症の非増殖性糖尿病網膜症や増殖性糖尿病網膜症は、光凝固治療や抗VEGF薬、硝子体手術といった治療が必要な段階です。 網膜症の分類(重症度)に応じて、失明リスクや治療方針が変わってくると覚えておきましょう。 糖尿病網膜症による失明のリスクや治療方針については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 【関連記事】 糖尿病による失明の前兆を医師が解説【見え方に要注意】 糖尿病で失明する原因とは|治療法とあわせて現役医師が解説 糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策 糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策としてあげられるものは、主に以下の3点です。 定期的な眼科受診 血糖コントロール 生活習慣改善 定期的な眼科受診 基本的には、糖尿病と診断された際に眼科を受診して糖尿病網膜症の評価を受けることが推奨されます。 眼科の受診頻度は、網膜症の進行状況によって異なります。軽症の場合は半年に1回程度、中等症や重症の場合は1〜2か月ごとの受診が必要です。(文献1) 自覚症状がない場合も、年に1回は眼底検査を受けましょう。早期に異常が見つかれば、レーザー治療や抗VEGF薬注射などが可能になり、失明リスクを大幅に下げられます。 血糖コントロール 血糖コントロールは網膜症進行を予防するために重要な役割を果たします。 1~2か月間の血糖値の平均を反映し、血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、糖尿病網膜症の発症や進行を予防できるとのデータもあります。なお、血糖正常化を目指す場合の目標値は6.0%未満とされています。 医師の指導のもと、食事や運動、薬物療法などにより血糖を管理していきましょう。 糖尿病における食事療法や運動療法については、以下の記事をご覧ください。 【関連記事】 【糖尿病】食事治療とエネルギー量の関係性を現役医師が解説|計算方法もあわせて紹介 【医師監修】糖尿病予防に効果的な運動3選|続けるコツや注意点も紹介 生活習慣改善 高血圧や脂質異常症、腎機能障害、喫煙の有無も糖尿病網膜症の発症や進行に関連する因子です。 高血圧や脂質異常症の予防および改善のためにも、食事と運動が大切になってきます。 喫煙はインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなること)を増やす因子です。加えて、心血管疾患や糖尿病腎症など、糖尿病網膜症以外の疾患のリスクも増やすため、できる限り禁煙していきましょう。 糖尿病網膜症分類を正しく理解して自分の現状を把握しよう 糖尿病網膜症分類には複数の体系がありますが、いずれにしても自分の状態を知るために必要な指標です。 そのときの数値や指標を見るだけではなく、眼科を受診する中でどのように推移しているかを見ていくことが大切です。不明な点があれば主治医に相談した上で、適切な治療を受けましょう。 糖尿病網膜症悪化予防のためには、定期的な眼科受診に加えて、血糖コントロールを含めた生活改善が必要です。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリング、LINE相談を実施しています。糖尿病および糖尿病網膜症に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 糖尿病網膜症分類に関するよくある質問 糖尿病網膜症分類のSDRとは何ですか? SDRとは、糖尿病網膜症分類の指標の1つで、単純網膜症を意味します。 高血糖が原因で網膜の血管がもろくなった結果、点状に出血したり毛細血管に瘤が出来たりしている状態です。この段階では自覚症状が出ることが少ないとされています。 この段階では血糖コントロールや眼底検査による経過観察が基本です。 糖尿病網膜症の検査方法にはどのようなものがありますか? 主に以下のような検査があげられます。 視力検査 眼圧測定 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査 眼底検査 光干渉断層計(OCT)検査 眼圧検査は、眼の中の圧力を調べるものです。糖尿病網膜症では、新生血管の影響で緑内障を発症する場合もあるため、緑内障の症状である眼圧を調べることが必要になります。 細隙灯顕微鏡検査では、角膜や結膜、眼底の状態を確認するものです。眼底の検査をするときには、特殊なレンズを使用します。 眼底検査では網膜を観察し、網膜症の診断を行います。網膜症が疑われる場合は、蛍光眼底検査も行います。 蛍光眼底検査とは、造影剤を注射した上で眼底の血管の状態を連続して撮影するものです。通常の眼底検査では発見が難しい病変を詳しく調べられます。 光干渉断層計では、糖尿病黄斑浮腫の診断を行います。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)|日本糖尿病眼学会 (文献2) 糖尿病網膜症について|日本糖尿病眼学会
2025.12.31 -
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「糖尿病網膜症の治療を受けているけれど、思っていたほど視力が回復しない」 「いつも視界がぼやけている上に、近くのものが見えにくい」 「メガネを使えば目が良くなるだろうか?」 糖尿病網膜症の方の中には、このような状況に直面している方も少なくありません。 結論からお伝えしますと、糖尿病網膜症の症状はメガネでの改善が困難なものです。 糖尿病網膜症は、目の中の網膜そのものが損傷した状態であり、カメラにたとえるとフィルム自体が傷んでいる状態であるためです。 メガネはあくまでも、日常生活の中で補助的に用いるものと考える方が良いでしょう。 本記事では、糖尿病網膜症で用いられるメガネの種類や症状に応じたメガネの選び方を解説します。メガネ購入補助を含めた公的支援制度についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病網膜症およびメガネの活用法について知りたい方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 糖尿病網膜症で用いられるメガネの種類 糖尿病網膜症で用いられる主なメガネの種類は以下のとおりです。 遮光眼鏡 拡大鏡 単眼鏡 遮光眼鏡 遮光眼鏡(しゃこうめがね)とは、まぶしさを抑えられる、暗くなりにくいなどの特徴を有する医療用のフィルターレンズです。 糖尿病網膜症では、明暗を見分ける力(コントラスト感度)の低下や、まぶしさを訴える症例が多いため遮光眼鏡が有効とされています。 遮光眼鏡はまぶしさの原因になる部分だけを取り除き、それ以外の光は通すため、輪郭がすっきりして快適に感じるケースが多く存在します。 拡大鏡 拡大鏡は、手元が見えにくいときや細かい作業をするとき、文字を読んだり書いたりするときに便利なツールです。拡大倍率は2倍から12.5倍と幅広く、中にはLEDライトで見たいものを照らせるタイプもあります。(文献1) 拡大鏡の種類には、ルーペと呼ばれる手持ち型や、弱視眼鏡とも呼ばれる眼鏡式などがあります。 単眼鏡 単眼鏡(たんがんきょう)は望遠鏡の一種で、バス停の行き先や駅のホーム表示、各種掲示板、店舗の価格表示などを見たいときに便利な補助具です。拡大倍率や使いやすさ、持ちやすさなどを考慮して選びましょう。 単眼鏡は片手で操作するため、眼科や障害者リハビリテーションセンターなどで練習してから使用する場合もあります。 糖尿病網膜症でメガネを活用するためのポイント 糖尿病網膜症の方がメガネを活用するためのポイントは、主に以下の2点です。 症状別のポイント 病態別のポイント 症状別のポイント 症状別のポイントとしてあげられるものは、主に以下の3点です。 ぼやけやかすみが強い場合 強いまぶしさを感じる場合 近くのものが見えにくい場合 ぼやけやかすみが強い場合 糖尿病網膜症では網膜の血管障害のため、ものを見るときにぼやけたりかすんだりします。この場合、適切な度数で矯正するメガネや、コントラストを補うレンズの活用により見え方が改善するケースも少なくありません。 ただし、物を見る中心部である黄斑部にむくみがある場合は、メガネだけで改善しないケースも多いとされます。 強いまぶしさを感じる場合 糖尿病網膜症が進行すると、網膜の損傷や黄斑部のむくみにより、光が過剰にまぶしく感じる場合があります。屋外での強い日差しだけではなく、室内の蛍光灯や車のライトでもまぶしさを感じる場合も少なくありません。 このような場合は遮光眼鏡が有効です。遮光眼鏡は光の波長を選択的にカットするため、まぶしさが軽減されて、見やすくなります。 遮光眼鏡のレンズカラーは複数存在します。眼科を受診した上で、ご自身の症状に合ったカラーを選択しましょう。 近くのものが見えにくい場合 糖尿病網膜症では、黄斑部のむくみや眼内の出血の影響で視力が低下し、近くのものが見えづらくなります。具体的には、細かい文字が読みづらい、手元の作業がしにくい、焦点が合いにくいなどです。 近くのものが見えにくい場合は、拡大鏡や弱視眼鏡などの補助具を併用する場合が多くなります。適切な補助具は症状により異なるため、眼科での診察を受けた上で選びましょう。 病態別のポイント 糖尿病網膜症の病態は大きく3つにわかれます。 単純網膜症 前増殖網膜症 増殖網膜症 いずれの病態においても発症する可能性がある症状が、黄斑浮腫です。 単純網膜症の場合 単純網膜症とは、高血糖が原因で網膜に張り巡らされた毛細血管が障害されて、斑状出血や硬性白斑といった症状が生じている状況です。硬性白斑とは、血液中のタンパク質や脂質が網膜に沈着した状態を指します。黄斑部と呼ばれる物を見る中心部に網膜症が及ばない状態であれば、自覚症状はありません。(文献2) 近視や遠視、乱視といった屈折異常だけの場合であればメガネによる矯正が期待できますが、網膜の血管損傷による視力障害の場合、回復は難しいと言えます。 前増殖網膜症の場合 前増殖網膜症とは、単純網膜症よりも網膜症が進行した段階です。毛細血管が詰まって、網膜の神経細胞に酸素や栄養がいかなくなり、軟性白斑と呼ばれる神経のむくみや静脈の拡張などが生じます。また、網膜の神経細胞に酸素を補うため、新生血管と呼ばれる血管を作る準備が始まりつつある状態です。(文献2) 自覚症状がないケースが多いのですが、黄斑部がむくんでくると見えづらさが生じます。単純網膜症同様、メガネによる矯正が期待できるのは近視や遠視、乱視といった屈折異常に限られます。 増殖網膜症の場合 増殖網膜症とは、網膜症がさらに進行し、新生血管が多く発生する段階です。新生血管はもろく出血しやすいため、眼の中に大きな出血を引き起こします。これは硝子体出血と呼ばれるものです。加えて、繊維状の組織である増殖網が網膜全体を覆い、網膜を引っ張ります。この結果生じる症状が、網膜剥離です。(文献2) 硝子体出血や網膜剥離により、視力低下をはじめとする自覚症状が出現します。この段階では、メガネでの対応が困難であることが多いとされます。 黄斑浮腫がある場合 黄斑浮腫とは、物を見る中心部である黄斑部の毛細血管が障害されて血液中の水分が漏れ出し、むくみが生じている状態です。単純網膜症から増殖網膜症に至るまで、どの病態でも発症する可能性があります。(文献2) 黄斑浮腫は局所性とびまん性に分けられ、びまん性黄斑浮腫では黄斑部の毛細血管が高度に障害されます。 黄斑浮腫がある場合は、メガネを活用しても十分な視力を得られないケースが多い状況です。 糖尿病網膜症におけるメガネを選ぶ前に必要な検査 この章では、糖尿病網膜症のためメガネを選択する前に必要な検査を3種類紹介します。 視力およびコントラスト検査 視野検査 黄斑浮腫に関する検査 視力およびコントラスト検査 糖尿病網膜症では、視力やコントラスト感度(明暗を見分ける力)の低下が起こりやすいため、メガネを選ぶ前にこれらの検査を受けることが重要です。 視力検査では、「どの程度の矯正が必要か」「近くで見るときにどこまで見えるか」「遠くで見る場合にどこまで見えるか」などを確認します。コントラスト検査とは、文字や物体の輪郭がどれだけ認識できるかを調べる検査であり、まぶしさやかすみといった自覚症状がある場合に必要です。 視野検査 視野検査とは、まっすぐ前を見ているときに、上下・左右・前方において、どのくらいの範囲まで見えているかを調べる検査です。動的視野検査と静的視野検査の2種類があり、いずれも片目ずつ行います。 糖尿病網膜症では、出血や浮腫により視野の一部が欠けたり、見える範囲が狭くなったりする場合があります。メガネ選びの前に視野検査が必要な理由は、見えにくい部分を確認するためです。 黄斑浮腫に関する検査 黄斑浮腫に関する検査は、主に以下のとおりです。 医師による問診 視力検査 眼底検査 光干渉断層計(OCT)検査 眼底検査では、黄斑とその周辺部(眼底)を眼底鏡や顕微鏡で観察し、カメラで撮影します。OCT検査では、網膜の断面を撮影して黄斑部分の状態を確認します。黄斑周辺に膨らみがあるときは、糖尿病黄斑浮腫の疑いが強い状況です。 糖尿病網膜症に関する公的支援制度 糖尿病網膜症に関する公的支援制度としてあげられるものは、主に以下の3種類です。 身体障害者手帳 障害年金 補装具支給 身体障害者手帳 糖尿病網膜症によって視力や視野に障害が生じている場合、視覚障害があるとして身体障害者手帳が交付されます。視覚障害における手帳の等級は、1級から6級までです。(文献3) 身体障害者手帳が交付されると、医療費の助成や各種福祉サービスなどが利用可能になります。 相談先は、かかりつけ医や市区町村の障害福祉担当窓口、福祉事務所などです。 障害年金 病気やけがによって生活や仕事に支障をきたした場合に受けられる年金で、現役世代の方も対象です。障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。(文献4) 障害基礎年金は、以下のいずれかに該当する状況において、法令により定められた障害等級表(1級・2級)に該当する方に支給されるものです。 国民年金加入中 20歳になる前(年金未加入の期間) 60歳以上65歳未満(年金未加入の期間で日本に住んでいる間) 厚生年金加入中に、障害基礎年金の1級または2級に該当する障害を負ったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。 補装具支給 補装具とは、障害を持つ方が日常生活において必要動作を確保するために、損なわれている機能を補完または代替する道具です。視覚障害者のための補装具としては、メガネや盲人安全つえ、義眼などがあります。 補装具支給とは補装具の購入や修理費用のうち、所得に応じた自己負担額から差し引いた分を支給する制度です。 糖尿病網膜症の方はメガネを補助的に活用した上で適切な治療を受けよう 本記事では糖尿病網膜症の方に向けて、メガネ使用に関する内容を解説してきました。 しかし、メガネはあくまでも見えづらさやまぶしさなどを軽減するためのものであり、根本治療にはつながりません。 糖尿病網膜症においては、血糖コントロールを中心にレーザー光凝固術や抗VEGF治療、硝子体手術などの治療が必要です。加えて、網膜症の原因となっている糖尿病の治療も大切です。 糖尿病治療の主な内容は内服治療やインスリン注射などですが、再生医療も選択肢の1つとして考えられます。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。糖尿病でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病網膜症とメガネに関するよくある質問 糖尿病網膜症は治りますか? 糖尿病網膜症やそれに伴う視力低下を完全に治すことは難しい状況ですが、適切な治療を続けることで進行を遅らせることは可能です。 食事や内服、インスリン注射などによる血糖コントロールを続けつつ、定期的に眼科を受診して経過を観察していくことが求められます。 糖尿病網膜症の進行を遅らせるための自己管理や治療については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症にサングラスは有効ですか? サングラスもメガネ同様、糖尿病網膜症の症状改善効果は見込めないものです。 サングラスには、人の目に入る光を均一にカットする役割があります。そのため物を見るために必要な明るさまでカットしてしまい、かえって不便な場合も少なくありません。 サングラスとよく似たものが遮光眼鏡です。遮光眼鏡は、紫外線やまぶしさを感じる光を選択的にカットしているため、サングラスより負担が少ないとされています。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症治療後の注意点を教えてください|糖尿病サイト (文献2) 糖尿病網膜症について|日本糖尿病眼学会 (文献3) 身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)|厚生労働省 (文献4) 障害年金|日本年金機構
2025.12.31 -
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「いつも寒くなると血圧が上がる」 「なぜ寒いと血圧が上がるのだろう?」 「一度病院にかかる方が良いのだろうか?」 このような疑問や不安を抱えながら、寒い時期を過ごされている方も少なくありません。 寒くなると、もともと高血圧ではない方も血圧が上がりやすくなります。 しかし、寒い時期の血圧上昇を放置すると、思わぬ病気を引き起こすリスクがあります。主な例として挙げられるのは、心筋梗塞や脳梗塞などの血管系の疾患、そしてヒートショックです。 本記事では、寒くなると血圧が上がるメカニズムや医療機関受診が必要なサインなどについて解説します。ヒートショックの予防法もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 寒い時期の血圧上昇について気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寒いと血圧が上がる理由 寒いと血圧が上がる主な理由は、血管の収縮と自律神経の変化です。自律神経の変化とは、交感神経の活発化を指します。 寒さによる血管収縮と血圧上昇のメカニズム 寒いときには、体内からの熱放散を抑えるために、血管が収縮します。そのため皮膚への血流量が低下し、結果として体表面の温度も低下します。体表面と気温との差を小さくして、熱の放散を抑制するしくみです。(文献1) 末梢血管が収縮すると、血液がスムーズに流れにくくなります。血液をスムーズに流すため、動脈内の血液が血管壁を強く押します。これが血圧上昇のメカニズムです。(文献2) 寒さによる自律神経の変化と血圧への影響 寒い時期は交感神経が活発になり、以下のような現象が生じます。 血管の収縮 腎臓からのナトリウム排泄抑制に伴う体内の水分量増加 血液量増加 心拍数の増加 交感神経の活発化によるこれらの現象が、血圧を上昇させる因子です。 寒いと血圧はどのくらい上がるのか この章では、気温と血圧変動の関係と血圧が上がりやすい時間帯について解説します。 気温と血圧変動の関係 外国の論文においても、温かいところから寒いところに移動すると、収縮期血圧と拡張期血圧の両方が著しく上昇したとの報告があります。(文献3) イギリスでの研究では、リビングルームの温度が1℃低下すると、収縮期血圧が1.3mmHg、拡張期血圧が0.6mmHg上昇するとの結果が示されました。日本人高齢者15人を対象とした研究では、平均外気温が1℃低下すると、収縮期血圧が0.43mmHg、拡張期血圧が0.29mmHg上昇しました。(文献3) 血圧が上がりやすい時間帯と日常生活シーン 血圧が上がりやすい時間帯は早朝で、血圧上昇の要因は以下の通りです。 夜間高血圧:夜間に上昇した血圧が朝も維持されるもの モーニングサージ:早朝、起床前後に生じる一過性の血圧上昇 モーニングサージは、心筋梗塞や脳血管疾患との関連性が深いとされる現象です。 日常生活においては、あたたかいところから寒いところへ急に移動すると、血圧上昇のリスクがあります。 部屋があたたまっていないときにトイレに行く、薄着で外出する(ゴミ出しや散歩、雪かきなど)などの行動は避けましょう。 寒さで血圧が上がったときの受診サイン 寒さで血圧が上がった場合、医療機関受診が必要なケースがあります。主な受診サインは以下のとおりです。 高血圧とされる数値が続く場合 高血圧以外に自覚症状がある場合 高血圧とされる数値が続く場合 高血圧とは、繰り返し測っても血圧が正常より高い状況を指します。 日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2019で示している、異なる測定法における高血圧基準値は以下のとおりです。(文献4) 測定法 収縮期血圧 拡張期血圧 診察室血圧 140mmHg以上 90mmHg以上 家庭血圧 135mmHg以上 85mmHg以上 自由行動下血圧 24時間 130mmHg以上 80mmHg以上 昼間 135mmHg以上 85mmHg以上 夜間 120mmHg以上 75mmHg以上 自由行動下血圧とは、24時間自動血圧計を装着して15〜30分間隔で行う血圧測定のことです。この間の日常生活は基本的に自由ですが、入浴や激しい運動は控えてください。 家庭血圧で高値が続く場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。高血圧を放置すると、脳梗塞や心筋梗塞など、命に関わる病気を発症する可能性があるためです。また、徐々に腎機能が低下して、人工透析を受ける可能性もあります。 血圧の正常値については、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 高血圧以外に自覚症状がある場合 高血圧に加えて以下のような症状がある場合も、医療機関を受診しましょう。 頭痛(とくに早朝) めまい 肩こり ふらつき 呼吸困難 足の冷え これらの症状は、高血圧の合併症である可能性が高いためです。 寒い時期における高血圧対策 寒い時期における主な高血圧対策としては、以下の4つがあげられます。 室温管理と防寒対策 塩分を控えたバランスの良い食事 適度な運動 家庭での定期的な血圧測定 高血圧の予防および改善については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 室温管理と防寒対策 あたたかいところから急に寒いところへ出ると、血管が収縮し、血圧が上がります。 冬は室温と外気の差が激しいため、温度差が5度以上開かないように対処しましょう。外出時は手袋やマフラー、帽子、マスクなどで防寒してください。 居間と浴室、居間と廊下、居間とトイレなどは、室内でも温度差が生じやすいため、寒い場所には暖房設備を整えると良いでしょう。 塩分を控えたバランスの良い食事 食塩の過剰摂取は、血圧上昇と深い関連があります。(文献4)食塩に含まれるナトリウムには、血圧を上げる作用があるためです。血圧が高めの方の場合、1日の食塩量の目標は6g未満です。 減塩食の工夫としては、以下のようなことがあげられます。 汁物を具だくさんにする 減塩しょうゆや減塩みそを使う ハムやソーセージといった加工食品を減らす 塩分の排出をうながすカリウムを積極的にとる カリウムは、緑黄色野菜や海藻類、豆類などに多く含まれます。 バランスの良い食事とは、主食(炭水化物)、主菜(タンパク質や脂質)、副菜(ビタミン、ミネラル)をまんべんなく取り入れたものです。 適度な運動 高血圧患者の生活習慣改善法の1つが、適度な運動です。身体を動かす時間を増やすと、血圧低下に加えて体重や体脂肪の減少などがみられます。(文献4)目安としては、1日30分程度です。(文献5) ウォーキングのような有酸素運動やストレッチ、スクワットのような筋トレなどを組み合わせて実施しましょう。 体調が悪いときや天候がよくないときは、運動を控えてください。 家庭での定期的な血圧測定 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにおいても、高血圧の判定は家庭血圧が診察室血圧よりも優先されています。(文献4) 家庭では、朝と夜、椅子に座った姿勢で血圧を測定し、血圧手帳に記録しておきましょう。体を動かしたあとは血圧が上がりやすいので1〜2分程度安静にしてから測るようにしてください。 家庭で血圧を測るときは、正確な数値が出やすいタイプがおすすめです。上腕(肘の上)にカフを巻くタイプを選びましょう。家庭で測定した血圧の記録は、病院受診時に必ず主治医へ見せてください。 寒さによる血圧上昇とヒートショックのリスク 寒さによる血圧上昇と関係が深い体調変化が、ヒートショックと呼ばれるものです。 本章では、ヒートショックの概要と予防について解説します。 温度差による血圧変動とヒートショック ヒートショックとは、温度差に伴う血圧変動により、心筋梗塞や脳梗塞といった血管の疾患を起こす現象です。(文献6) ヒートショックの可能性が高いのは、入浴時です。あたたかい室内では血圧が安定していますが、寒い脱衣所では血管の収縮により血圧が上昇します。浴室が寒い場合、さらに血圧が上昇します。その後熱めの浴槽に浸かると、血圧が低下してしまうのです。 ヒートショックの好発時期は、11月~2月頃です。 65歳以上の高齢者や、高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある方、肥満気味の方はヒートショックを起こしやすいとされています。 日常生活でのヒートショック予防法 日常生活でのヒートショック予防法としてあげられるものは、主に以下のとおりです 脱衣室と浴室をあたためる。 お湯の温度を41℃以下に設定する 入浴前に水分補給する 浴槽から出るときはゆっくりと立ち上がる 食事直後や飲酒後の入浴を控える 脱衣室と浴室をあたためる方法としては、脱衣室に暖房器具を設置したり、浴室にシャワーをかけてあたためたりするなどがあります。 寒いと血圧があがる理由を理解した上で高血圧対策を実践しよう 寒いと血圧が上がるメカニズムには、血管や自律神経が関係しています。室内と屋外の温度差は血圧上昇および、心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性を高める要因の1つです。 血圧上昇予防のためにも、室温管理と防寒対策を心がけましょう。 寒さで血圧が上がっている方は、自分でも気づかないうちに高血圧を発症している可能性があります。朝と夜、家庭で血圧を測り、自分が高血圧かどうかを理解しておきましょう。 寒さと血圧の関係で考えると、ヒートショックも危険です。とくに入浴時は、室内と浴室、脱衣室の温度差を少なくするように工夫するように心がけましょう。 高血圧によって引き起こされる脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高血圧に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 寒いと血圧が上がることに関するよくある質問 足が冷えると血圧が上がるのですか? 血圧の変動は足元からの高さによって異なるとの研究結果があります。(文献7) 室内で高さ1.1mの部分の室温が10℃下がると、血圧が5mmHg上昇しました。高さ0.1mの部分の室温が高いと血圧が9mmHg上昇したとの結果も出ています。 室温が適温でも、足元が冷えていると血管が収縮し、末梢に血液を送る心臓の負担が増えるために血圧が上がる仕組みです。 寒い部屋での血圧測定は良くありませんか? 寒い部屋での血圧を測ると、血圧が高くなりやすくなります。そのため、正確な血圧かどうかわかりにくい状況です。 血圧を測るときは、少なくとも室温を20℃以上に設定しましょう。 参考文献 (文献1) 寒冷下におけるヒトの体温調節と運動時低体温症の発症メカニズム|新潟医療福祉会誌 (文献2) 血圧の生理学|動物の循環器 (文献3) Winter Hypertension: Potential mechanisms|PubMed Central (文献4) 高血圧治療ガイドライン2019|日本高血圧学会 (文献5) 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子高血圧の話|日本高血圧学会ほか (文献6) 冬場に多発‼温度差で起こるヒートショック|社会福祉法人恩賜財団済生会 (文献7) 第19回「足元のひえにご注意!気温感受性高血圧とは?」~気温と血圧、循環器病の関係~|公益財団法人日本心臓財団
2025.12.13 -
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食道静脈瘤は、肝硬変によって発症する重大な合併症のひとつであり、破裂すれば命に関わる危険性もある疾患です。 しかし、自覚症状に乏しく発見が遅れるケースも多いため、正しい知識と早期対応が求められます。 本記事では、食道静脈瘤の原因や症状、診断法、治療の選択肢、日常生活での注意点をわかりやすく解説します。 受診前に不安を抱える方や、ご家族のサポートを考えている方は参考にしてみてください。 なお、肝臓の疾患に対しては、「再生医療」という治療法があります。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。肝臓疾患やその合併症でお悩みの方は、ぜひご利用ください。 食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつ 食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつであり、破裂すると命に関わる大量出血を引き起こす危険があります。 肝硬変を抱える患者の約50%に合併するとされており、極めて高い頻度です。(文献1) 肝硬変を患うと、血液の流れが肝臓で滞って血圧が異常に上昇します。 その結果、血液は肝臓を迂回して別の経路を通ろうとしますが、食道の静脈に過剰な血液が流れ込んでこぶ状に拡張するのが「食道静脈瘤」です。 自覚症状が乏しいまま進行することも多いため、肝硬変と診断された時点で定期的に内視鏡検査を受けましょう。 肝硬変の原因や症状について詳しくは、以下の記事をご覧ください。 肝硬変から食道静脈瘤になるメカニズム 食道静脈瘤の主な原因は、肝硬変による「門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)」です。 門脈圧亢進では、肝臓内の血流が障害され、門脈と呼ばれる血管にかかる圧力が異常に高くなります。 通常、腸や脾臓からの血液は門脈を通じて肝臓へ流れ込みますが、肝硬変によって肝臓の組織が線維化すると、血液がスムーズに流れなくなります。 その結果、血液は別の経路を通って食道や胃の静脈などに流れ込み、血管が膨らんで瘤(こぶ)状になるのです。 このように、肝硬変による血流障害は門脈系全体のうっ血を引き起こし、結果として食道静脈瘤が形成されます。 食道静脈瘤が破裂したらどうなる?主な症状 食道静脈瘤が破裂すると、命に関わる大量出血を引き起こす可能性があります。 以下が代表的な症状です。 吐血:口から真っ赤な血液を吐く、もっとも目立つ初期症状 下血:腸内を通って排泄される血液により、黒色のタール状の便が出る 貧血:大量の失血により血圧が低下し、動悸・息切れ・めまいなどを伴う 上記の症状が現れると、短時間で急激に容体が悪化するケースがあり、緊急に治療しなければなりません。 とくに、肝硬変が進行すると血液が止まりにくくなる傾向があるため、破裂前の段階で発見して予防的な治療を行うことが重要です。 肝硬変による食道静脈瘤の診断 肝硬変と診断された患者に対しては、食道静脈瘤の有無を確認するために定期的な内視鏡検査を行います。 なかでも、上部消化管内視鏡(胃カメラ)は、食道内の静脈の拡張を直接観察可能です。食道静脈瘤の有無だけでなく、大きさや形状、表面の変化などをもとに破裂リスクを評価します。 また、必要に応じて色素や特殊光を用いた詳細な観察が行われることもあります。 なお、CT検査や超音波内視鏡が補助的手段として用いられる場合がありますが、診断の中心は内視鏡です。 症状がない段階でも発見できるため、肝硬変と診断されたら定期的な検査を受け、破裂による重篤な出血を未然に防ぎましょう。 肝硬変による食道静脈瘤の治療法 食道静脈瘤の治療は、破裂による出血を防ぐことを最優先の目的としています。 肝硬変に伴って発生する食道静脈瘤は、症状がないまま発見されることも多いため、瘤の大きさや形状、破裂リスクに応じた適切な治療法の選択が重要です。 ここでは、食道静脈瘤の治療法について詳しく解説します。 内服治療 食道静脈瘤に対する内服治療では、主に門脈圧を下げる薬剤が使用されます。 代表的な薬剤が、プロプラノロールやカルベジロールといった「β遮断薬(ベータブロッカー)」です。 β遮断薬は心拍数を下げる薬で、門脈系への血流の減少によって静脈瘤の内圧を低下させ、破裂のリスクを軽減します。 ただし、低血圧や不整脈などの副作用が現れる場合もあるため、定期的な診察と血圧・心拍の管理が重要です。 また、継続的なフォローアップのもとで、他の治療法と併用されるケースもあります。 内視鏡治療 内視鏡治療は、食道静脈瘤の破裂を防ぐための代表的な治療法です。 主に、薬剤を直接注入して血管を固める「静脈瘤硬化療法(EIS)」と、輪ゴムで瘤を縛り壊死させる「内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)」の2つの方法があります。 いずれも出血のリスクを大きく下げる効果があり、瘤の状態に応じて使い分けられます。 処置後は、再発予防のために定期的な内視鏡検査が必要です。 カテーテル治療 細い管状の器具を血管や体内に挿入する「カテーテル治療」は、門脈圧の低下を目的とする手術的治療法のひとつです。 代表的な方法に「経皮的門脈圧シャント術(TIPS)」があります。 肝静脈と門脈の間に人工のバイパスを作って門脈圧を下げ、静脈瘤への血流を減少させるのが特徴です。 主に、内視鏡治療が難しいケースや再発を繰り返す重症例に適用されます。 ただし、高度な技術を要するため、専門の施設で実施されるのが一般的です。 外科手術 外科手術は、内視鏡やカテーテル治療で効果が不十分な重症例に対して検討される治療法です。 門脈と体循環をつなぐ「門体シャント術」や、脾臓を摘出して血流量を減らす「脾摘術」などがあります。 手術は、門脈圧を根本的に下げることが目的です。 ただし、全身への負担が大きく、重度の肝機能障害がある患者には適さないケースがあります。 現在、外科手術は限られた救済的適応とされており、状態に応じて慎重に判断される点に留意しておきましょう。 バルーンタンポナーデ法 バルーンタンポナーデ法は、食道静脈瘤が破裂して大量出血を起こした際に行われる一時的な止血処置です。 専用のチューブを鼻や口から挿入し、食道内でバルーン(風船)を膨らませて静脈瘤を圧迫し、出血を物理的に止めます。 通常、24時間の留置が限度ですが、出血が再発した場合は必要に応じて食道バルーンをさらに24時間再拡張することも可能です。(文献2) ただし、応急処置として有効ではあるものの、再出血のリスクが高いため根本的な治療につなげるまでのつなぎの処置であり、あくまで緊急時の対応策に位置づけられています。 再生医療という選択肢 近年、肝硬変に伴う合併症への対応として「再生医療」が検討されるようになってきました。 再生医療とは、患者様の体から採取した脂肪由来の幹細胞を培養し、点滴で体内に戻す治療法です。幹細胞が持つ、他の細胞に変化する「分化能」が肝組織に対して働きかけることが期待されています。 患者様自身の幹細胞を用いるため、拒否反応のリスクが低いのが特徴です。また、手術や入院を必要としません。 肝硬変や合併症でお悩みの方は、治療法の一つとして再生医療もご検討ください。当院「リペアセルクリニック」での肝硬変に対する症例も参考になります。 肝臓疾患に対する再生医療について詳しくは、以下のページで解説しているのでご覧ください。 肝硬変で食道静脈瘤になった場合の予後・生存率 肝硬変の合併症のひとつである食道静脈瘤は、破裂すると生命を脅かす重大な疾患です。 破裂による初回出血後の6週死亡率は15〜25%に達するとされ、早急な対応が求められます。(文献3) また、一度出血した患者の多くは6か月以内に再出血を起こすリスクが高く、再出血時の死亡率が高い傾向がある点も見逃せません。 予後は、出血の有無だけでなく、肝機能の重症度にも大きく左右されます。 食道静脈瘤の早期発見と適切な予防的治療、肝機能の維持が長期的な生存率向上の鍵です。 肝硬変で食道静脈瘤になった場合の注意点 肝硬変によって食道静脈瘤を発症した場合、命に関わる出血リスクを常に抱えることになります。 適切な治療はもちろん、再発予防を意識した日常生活も大切です。 ここでは、肝硬変の合併症で食道静脈瘤になった場合の注意点を解説します。 疾患と治療のバランスが重要 食道静脈瘤の治療は破裂リスクを抑えるのが最優先ですが、同時に肝機能そのものの管理も欠かせません。 過剰な処置や薬剤の使用は、かえって肝臓に負担をかける場合もあります。 疾患の進行度と体調のバランスを見極めながら、治療方針を選択することが重要です。 経過観察が必要 食道静脈瘤は治療後も再発する可能性が高いため、内視鏡検査による定期的な経過観察が不可欠です。 とくに、静脈瘤の再形成や出血リスクの高まりを早期に察知することで、迅速な対応が可能になります。 治療後も決して油断せず、継続的な受診を欠かさないようにしましょう。 食事の注意点 肝硬変が原因の食道静脈瘤では、食事にも細心の注意が必要です。 硬い食べ物や刺激の強いものは食道粘膜を傷つけ、静脈瘤の破裂を誘発する恐れがあります。 たとえば、以下のような食事は避けたほうが良いでしょう。 乾燥したパンの耳 揚げ物 香辛料の強い料理 柔らかく調理した食事をよく噛んで、ゆっくり食べる習慣が大切です。 ただし、食道静脈瘤以外にも疾患があれば、塩分の摂取制限や栄養バランスに配慮しなければならない場合もあるため、自己判断せず医師に相談しましょう。 肝硬変で注意すべき食事については、以下の記事でも紹介しています。 まとめ|定期的な経過観察で早期発見・治療 食道静脈瘤は、肝硬変によって引き起こされる重大な合併症のひとつであり、破裂すると生命に関わる危険があります。 多くの場合、自覚症状がないまま進行するため、早期発見が極めて重要です。 肝硬変と診断されたら定期的な内視鏡検査を受け、瘤の有無や状態を確認する必要があります。 また、治療を受けた後も再発のリスクは残るため、継続的な経過観察が欠かせません。 医師と連携しながら、食生活や服薬、生活習慣の改善にも取り組みましょう。 なお、肝臓の疾患には「再生医療」が治療の選択肢のひとつとして注目されています。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ぜひ登録してご利用ください。 肝硬変と食道静脈瘤に関連するよくある質問 食道静脈瘤に予兆はありますか? 食道静脈瘤は、破裂するまでほとんど自覚症状がないことが多い疾患です。 ただし、破裂が近づくと胸部の違和感や黒色便、軽度の吐血といった前兆が現れる場合があります。 とはいえ、こうした予兆は非常にあいまいであり、明確なサインとして現れるとは限りません。 したがって、肝硬変と診断された時点で、症状の有無にかかわらず、定期的な内視鏡検査による監視が極めて重要です。 食道静脈瘤は極めて重篤な疾患であり、早期発見が予防的治療と命を守る第一歩となる点を肝に銘じておきましょう。 食道静脈瘤破裂で亡くなった芸能人は? 俳優の石原裕次郎さんは、肝臓がんの出血で亡くなったとされています。 ただし、食道静脈瘤破裂が直接の原因で亡くなったとの、確かな情報は確認できませんでした。 参考文献 (文献1) New index to predict esophageal variceal bleeding in cirrhotic patients|PMC(PubMed Central) (文献2) Medscape|Sengstaken-Blakemore Tube Placement Technique (文献3) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37351074/|PubMed
2025.12.13 -
- 肝疾患
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「最近お酒の量が増えている」「健康診断で肝機能の数値が悪い」そんな方は、アルコール性肝硬変のリスクがあるかもしれません。 アルコール性肝硬変は、長期間の大量飲酒により肝臓が硬くなり、正常に機能しなくなる病気です。初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると腹水や黄疸、吐血などの深刻な症状が現れ、命に関わる場合もあります。 飲酒習慣があり肝硬変が心配な方に向けて、本記事ではアルコール性肝硬変の原因・症状から治療法・予防法まで、分かりやすく解説します。 なお、肝硬変に対しては再生医療という治療方法があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する症例の紹介や簡易オンライン診断を実施しているので、ぜひご利用ください。 アルコール性肝硬変とは? 日頃から多くお酒を飲む方の場合、アルコール性肝硬変のリスクに注意する必要があります。 アルコール性肝硬変の特徴は以下のとおりです。 長期間の飲酒による肝臓疾患で症状が進んだもの 前段階としてアルコール性肝炎がある アルコール以外で発症する肝硬変との違い 肝硬変について詳しくは以下の記事をご参照ください。 長期間の飲酒による肝臓疾患で症状が進んだ状態 アルコール性肝硬変とは、肝硬変のうち5年以上の長期間にわたる大量の飲酒によって肝臓が硬くなる疾患を指します。お酒に含まれるアルコールには「アセトアルデヒド」と呼ばれる有害物質があり、通常は肝臓で分解された後に体外に排出される仕組みです。 しかし、普段から大量のお酒を飲んでいる場合は、肝臓でアセトアルデヒドが分解しきれずに蓄積します。このアセトアルデヒドが肝細胞を傷つけて破壊すると、傷ついた部分は硬い組織(線維)に置き換わります。この硬化が肝臓全体に広がった状態が肝硬変です。 なお、日本では肝硬変の原因としてアルコール摂取が最も多いことを示す研究結果もあります。(文献1) 前段階としてアルコール性肝炎がある アルコール性肝硬変は、普段の大量の飲酒がきっかけで短期的に発生するわけではありません。日頃からの過剰な飲酒でアルコールを体内に多く摂取すると、肝臓で代謝するなかで中性脂肪が蓄積されます。この中性脂肪が肝臓に溜まった状態が「アルコール性脂肪肝」です。 アルコール性脂肪肝ができてもアルコールの摂取量を減らさない場合、中性脂肪の蓄積がさらに進んでアルコール性肝炎へと発展します。このアルコール性肝炎がより重篤になった疾患がアルコール性肝硬変です。 アルコール性肝炎には、肝細胞の膨張や黄疸、腹痛などの症状が見られます。詳細は以下の記事を参考にしてください。 アルコール以外で発症する肝硬変との違い 肝硬変にはアルコール以外で発症する、「非アルコール性肝硬変」と呼ばれるものもあります。アルコール性肝硬変と非アルコール性肝硬変との違いは、「発症の原因がアルコールかそれ以外か」です。 非アルコール性肝硬変の場合、以下の原因が挙げられます。 肥満や糖尿病などの生活習慣病 B型・C型肝炎ウイルスによる感染 自己免疫疾患 薬剤や有害物質 これらのアルコール以外の要因で肝臓疾患になり、その症状が進行して肝硬変になったものが、「非アルコール性肝硬変」に分類されます。 アルコール性肝硬変の原因 アルコール性肝硬変は、主に長期に及ぶ大量のアルコール摂取が原因です。摂取したアルコールを分解する際に発生するアセトアルデヒドが継続的に肝臓を傷つけることで、肝細胞が損傷・破壊されます。肝細胞の破壊が進むと、肝臓内で硬い部分が広がって肝機能が衰え、肝炎や肝硬変などの症状に発展します。 なお、「長期に及ぶ大量のアルコール摂取」の目安は、男性で1日60g以上、女性で1日40g以上のアルコールを10年以上に渡り摂取している状態です。また、上記の目安に達していなくても短期間で大量飲酒を繰り返す場合も、アルコール性肝硬変のリスクがあります。 ほかにも生活習慣病や遺伝的要因を抱えている状態で、大量にアルコールを摂取する生活を続けている方も注意が必要です。 アルコール性肝硬変の症状 アルコール性肝硬変の症状には、次のようなものが見られます。 肝機能やアルコール分解能力の低下 黄疸(おうだん) 腹水 吐血 肝臓がんを発症するケースも 命に関わる症状もあるため、事前に知識を深めておくことが大切です。 肝機能やアルコール分解能力の低下 アルコール性肝硬変になると、肝臓の働きが悪くなり、アルコールを分解する能力も落ちます。これは、お酒に含まれる有害物質(アセトアルデヒド)が肝臓の細胞を傷つけて壊すためです。毎日お酒を飲み過ぎると、肝臓の細胞が傷つき、最終的には肝臓の線維化が進み硬くなります。 肝機能やアルコール分解能力の低下が続けば、肝臓に中性脂肪が溜まるようになります。この状態が続くと、アルコール性肝炎を起こし、さらに進行するとアルコール性肝硬変になります。 アンモニア臭が発生する アルコール性肝硬変になった人は、アンモニア臭を発生させることがあります。 食事を通じて体内に取り込まれたアンモニアは、本来であれば肝臓で無毒化された上で、尿として排出されます。しかし、肝硬変になった人は肝機能が衰えているため、アンモニアの解毒作用がはたらきません。その結果、残留したアンモニアが血管内に流出し、吐き出す息にもアンモニアのにおいが伴います。 なお、血液中のアンモニア濃度の上昇が脳に影響し、肝性脳症による意識障害を引き起こすケースもあります。 黄疸(おうだん) 黄疸(おうだん)、この黄色に染めるものの正体は、赤血球に含まれるビリルビンです。 赤血球は古くなると肝臓に送られて分解されます。その際に赤血球に含まれるビリルビンも、胆汁とともに排出されます。 しかし、肝機能が低下するとビリルビンがうまく排出されず、血液中に増えてしまいます。そのため、皮膚や目の白い部分が黄色く染まってしまうのです。 腹水 腹水とは、胃などのお腹周りの臓器と、それらを包む膜の間に広がる腹腔に水が溜まる症状を指します。そして腹水も、アルコール性肝硬変がある程度進んだ場合に見られる症状です。 体内の水分バランスは、肝臓で作られる「アルブミン」というたんぱく質が調整しています。しかし、アルコール性肝硬変が進行するとアルブミンの生成量が減り、血管内の水分が腹腔へと流れ出て腹水になります。 なお、腹水が膨らむと呼吸困難のような重篤な状態になるケースもあります。 吐血 吐血もアルコール性肝硬変で見られる症状です。 アルコール性肝硬変では肝臓に向かう血管が狭くなったり閉塞したりするため、血流が低下します。加えて、行き場を失った血液は食道の静脈へと向かうため、圧力がかかり食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)という血管の瘤(こぶ)ができます。 アルコール性肝硬変による吐血は、多くの場合、この食道静脈瘤がいきみや咳などの刺激で破裂することで起こります。 肝臓がんを発症するケースも アルコール性肝硬変になった場合、肝臓がんを発症することもあります。肝硬変から肝臓がんになるのは、肝細胞が損傷と再生を繰り返す過程で、突然変異によってがん細胞に変化するためです。 肝臓がんを発症すると、肺やリンパ節など他の臓器に転移する場合があります。また、他の臓器のがんが肝臓に転移してくるケースもある点にも注意が必要です。 アルコール性肝硬変の末期症状は?余命はどの程度? アルコール性肝硬変が末期になると、肝臓が著しく縮小し、肝機能は大幅に低下します。加えて、腹水による呼吸困難や吐血、肝性脳症による昏睡のリスクが高まるため、非常に危険な状態です。 末期症状とともに気にされることの多い余命については、医学的な重症度分類に基づいた研究では、症状が重度まで進んだ肝硬変患者の3年後も生存している割合は約31%と報告されています。(文献2) ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、適切な治療を継続し、禁酒を徹底することで病気の進行を遅らせることが期待できるため、諦めずに治療を続けることが大切です。 アルコール性肝硬変の診断方法 アルコール性肝硬変の早期発見・治療には、適切な診断が重要です。 主な診断方法として、以下があります。 飲酒歴や生活習慣の聞き取り 血液検査 腹部超音波検査・画像診断 肝生検 医師は患者さんの症状や状態に応じて、これらの診断方法を選択して検査を行います。 飲酒歴や生活習慣の聞き取り アルコール性肝硬変について診断する際は、医師が飲酒歴や生活習慣を聞き取ります。飲酒歴の場合、以下の項目を尋ねるのが一般的です。 お酒を飲んでいる年数 週に飲む日数 1日に飲む量 アルコール濃度 お酒の種類 アルコール性肝硬変かどうかは、5年以上にわたって1日に60g以上(女性は40g以上)の純アルコールを摂取しているかが基準とされます。ただし肥満が見られる人については、摂取量が基準に満たない場合でもアルコール性肝硬変を疑われます。 なお、飲酒歴は本人だけでなく、家族からも聴取します。加えてアルコール依存症の有無も確認される項目です。 飲酒以外にも、普段の食事や運動の状況・体重の変化・服薬の有無・健康状態も問診します。健康状態については、黄疸など明確な症状の有無のほか、倦怠感や食欲不振など本人が感じている症状も聞きます。 血液検査 血液検査では、肝機能を示すASTやALTなどの指標を調べます。アルコール性肝硬変が疑われる場合、これらの数値が異常値を示すことが多く、診断の重要な手がかりとなります。 なお、会社や自治体の健康診断で肝機能の異常が見つかった場合は、その結果を医師に持参して詳しい検査を受けることが大切です。 腹部超音波検査・画像診断 血液検査で異常が見られた場合、より精密な検査として腹部超音波検査や画像診断が必要です。 腹部超音波検査は超音波を使って肝臓の状況を確認します。肝臓のサイズや表面の凹凸の状態、脂肪の蓄積具合などを見ることで、肝臓の線維化の程度や病気の進行度を調べる方法です。 腹部超音波検査とともに、振動波で肝臓の硬さをチェックする手段もよく用いられます。振動波は硬い物体ほど速く伝わるため、その原理を利用した装置で肝硬変の進み具合を見ます。 画像診断は実際の肝臓の状態を直接目で確認できる手段で、MRIやCTによる方法が一般的です。基本的にはこれらの装置を使った方法と、今までの血液検査や問診の結果を総合して最終的な診断を下します。 肝生検 アルコール性肝硬変の診断には、肝生検と呼ばれる方法を用いるケースもあります。肝臓組織の一部を切り取った上で、顕微鏡で観察して病状を確認する方法です。 ただし、すでに説明した超音波などによる検査や画像診断が主流になってきている上に、出血や感染症などの合併症のリスクがあることから、必要性が高いときにのみ実施されます。 アルコール性肝硬変の治療法 アルコール性肝硬変の主な治療法は以下のとおりです。 【最重要】断酒 栄養療法・食事療法 薬物治療 アルコール依存症の治療 肝移植 再生医療 アルコール性肝硬変の治療法について知り、本格的な治療に臨みましょう。 断酒 アルコール性肝硬変の治療においては、お酒を全く飲まない「断酒」が重要です。症状が出ている中で飲酒を続けた場合、アセトアルデヒドによる肝細胞の損傷・破壊や、脂肪の蓄積が進みます。その結果、肝硬変の症状が悪化するため、命の危機に直面する可能性もあります。 アルコール性肝硬変の治療を始めるのであれば、すぐに断酒しましょう。 栄養療法・食事療法 肝機能の回復には十分な栄養補給が必要ですが、アルコール性肝硬変の方は長期の飲酒により、栄養状態が悪化していることが多くあります。そのため、食事内容の見直しが必要です。 医師の指導を受けながら、主食・主菜・副菜で構成される、栄養バランスを考慮した献立で食事をとりましょう。エネルギーやたんぱく質の不足を克服するためにも、高エネルギー・高たんぱく質のメニューにします。 たんぱく質は肉だけでなく魚介類や大豆類などでバランスよくとることが大切です。加えて、野菜や果物などからのビタミンや食物繊維の摂取もポイントに挙げられます。ただしどんなに体に良い栄養素でも、食べ過ぎは禁物です。 一方で、腹水の症状がある方は、塩分や水分を制限します。塩分や水分を多く摂取すると、腹腔に腹水が多く溜まるためです。とくに塩分は1日5~7g以内が推奨されます。(文献3) 薬物治療 薬物治療では、アルコール性肝硬変の症状緩和や合併症の管理を目的として薬剤が用いられます。ただし、肝機能が低下している状態では、薬物の代謝も困難になるため、使用する薬や量は慎重に選択されます。 具体的には、腹水に対して利尿剤、肝細胞の保護には肝保護薬(ウルソデオキシコール酸など)、肝性脳症に対してはラクツロースなどが使用されます。 アルコール性肝硬変の治療で薬物は、あくまでも補助的な意味合いで使われるものと理解すると良いでしょう。 アルコール依存症の治療 アルコール性肝硬変を発症する方には、アルコール依存症にかかっている方も多くいます。生活上の不安や不満などをお酒の力を借りて紛らわそうとするあまり、お酒が手放せない状態になってしまう状態です。 アルコール自体も中毒性を伴う物質であるため、依存症まで発症すると自力での断酒は困難です。そのため、治療を進める中で精神科や心療内科の専門医のカウンセリングを受ける必要があります。 肝移植 断酒や食事療法などによる治療が難しい場合は、肝移植を検討します。肝移植は70歳※までの健康な成人の肝臓の一部を移植する方法です。※日本肝臓学会の基準。施設により異なる場合があります。 移植された肝臓の一部は、高い再生能力で元の形状や大きさに戻ります。 アルコール性肝硬変の治療では、本人が一定期間継続して断酒しているなどの条件を満たすことが欠かせません。加えて自身の体に合う肝臓があることも重要です。 ほかにも移植しなかった場合の余命の長さも、肝移植するかどうかの判断材料になります。肝移植は、ほかの内科的治療では改善が困難な場合に検討されます。 再生医療 近年では再生医療も、アルコール性肝硬変治療で選べる方法のひとつです。再生医療には主に幹細胞治療とPRP療法があります。 幹細胞治療は、患者様の脂肪から幹細胞を採取・培養後、幹細胞を患部に投与する方法です。 一方、PRP療法では患者様の血液を採取し、遠心分離器で血小板を多く含む液体を作製して患部に投与します。再生医療は手術を伴わない治療法で、施術にもあまり時間はかかりません。 当院「リペアセルクリニック」では、随時再生医療に関するご相談を受け付けていますので、興味がある方や気になる方はぜひお問い合わせください。 実際の肝硬変に対する再生医療の治療例については、当院の症例をご覧ください。 アルコール性肝硬変の予防法 アルコール性肝硬変は予防可能な疾患です。 症状が現れる前の早期対策が重要で、主に以下の方法で予防できます。 適量の飲酒・禁酒 栄養バランスのとれた食事 定期健診 発症して厄介な事態になる前に、これらの予防法で早めに対策しましょう。 適量の飲酒・禁酒 アルコール性肝硬変の予防には、適量の飲酒や禁酒への意識が大切です。お酒とうまく付き合いつつ、アルコール性肝硬変も予防するには、お酒の適正量を知っておくと役に立ちます。 お酒の適正量は厚生労働省によると、純アルコールを1日約20gに留めるのが目安です。これはビールであればアルコール度数5%で中瓶1本500ml、清酒であれば15%で1合(180ml)に相当します。(文献4) 肝機能に特別な問題のない方は、上記の摂取量の範囲でお酒を飲むことが、アルコール性肝硬変の予防につながります。加えて、週に1~2日は休肝日を設け、肝臓を休ませましょう。 一方で肝硬変や、その前段階である脂肪肝・アルコール性肝炎が疑われるときは、肝機能が安定するまでは禁酒が必要です。 栄養バランスのとれた食事 栄養バランスのとれた食事も有効な予防法です。食事でアルコール性肝硬変を予防する場合も、基本的には主食・主菜・副菜の構成で、良質なたんぱく質や食物繊維などを積極的に摂取します。また、塩分の取りすぎには注意しましょう。 加えて、食事の回数は1日3回を心掛け、適切な量をよく噛んで食べることも大切です。食事の回数が少ないと、肝臓が貯蔵してある栄養分でエネルギーを補てんしようとするため、余計な負担をかけます。よく噛まなかったり食べすぎたりする習慣も、肝臓への負担や脂肪肝の蓄積の原因になるため、避けるべきです。 定期健診 定期健診は、アルコール性肝硬変の早期発見と予防に重要な役割を果たします。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期段階では自覚症状がほとんど現れないため、定期的な健診で確認しましょう。 血液検査で数値に異常が見られた場合は、早期の段階で飲酒量の見直しや生活習慣の改善を行うことで、肝硬変への進行を防ぐことができます。 とくに日常的に飲酒する習慣がある方は、定期的な肝機能検査を受けることで、肝臓の状態を把握し、適切なタイミングで予防対策を講じることが可能です。 まとめ|アルコール性肝硬変は飲酒を見直すことが不可欠 アルコール性肝硬変は、長期間の大量飲酒が原因で発症する重篤な肝疾患です。 初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると黄疸や腹水、吐血などの深刻な症状が現れ、命に関わる場合もあります。 治療の中心は断酒です。飲酒を続ける限り肝臓の損傷は進行し続けるため、症状の改善や進行の抑制には完全な禁酒が不可欠です。断酒と併せて、栄養バランスの取れた食事療法や合併症に対する薬物治療も重要な役割を果たします。 日常的に飲酒する習慣がある方は、今一度飲酒量や生活習慣を見直し、肝臓の健康を守ることが大切です。 なお、アルコール性肝硬変を含む肝疾患に対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」まで、お気軽にお問い合わせください。 肝硬変とアルコールのよくある質問 アルコール性肝硬変は治るのか? アルコール性肝硬変は、症状が軽いうちであれば治る見込みは十分にあります。とくに健康診断の段階で肝機能に異常が見られたり、肝臓で脂肪肝や炎症が見つかったりしたときには、すぐにでもお酒を控えるなどの対策が治る確率を高めます。 なお、アルコール性肝炎が治るかどうかは、以下の記事も参考にしてください。 肝硬変でお酒をやめないとどうなる? 肝硬変でお酒をやめなかった場合、脂肪の蓄積やアルコールの作用で、さらに肝臓の線維化が進行します。しかも、肝臓がんや肝性脳症のような合併症のリスクも高まるため、注意が必要です。 なお、医学的な重症度分類に基づいた研究では、症状が重度まで進んだ肝硬変患者の3年後も生存している割合は約31%と報告されています。(文献2) ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、適切な治療と生活習慣の改善により、病気の進行を遅らせることが期待できます。 肝硬変になるアルコール摂取量はどのくらい? 肝硬変は、一般的に男性で1日約60g以上、女性で約40g以上のアルコールを摂取する生活を5年以上継続した場合に発症するとされています。(文献4) ただし、飲む側の体質によって発症する摂取量はさまざまです。また、肥満体質の場合は上記よりも少ないアルコールの摂取を数年続けた結果、肝硬変になる場合があります。 参考文献 (文献1) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021, Hepatol Res.2024 (文献2) 肝硬変患者の生命予後の検討|厚生労働省 (文献3) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献4) アルコール|厚生労働省
2025.12.13 -
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健康診断で肝硬変を疑われる数値が出てきた場合、より精密な検査を受けながら対策を進めていくことが欠かせません。正常な状態に戻すためにも、検査で使われる数値に関する知識は大切です。 肝硬変に関する数値や目安を知っていると、今後の治療や予防で目標を立てるのに活用できます。 本記事では、肝硬変が疑われる数値や目安、対策・予防法を解説します。なお、肝硬変の血液検査で用いられる指標や、正常とされる数値の目安は日本臨床検査医学会の基準をもとにご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 また、肝硬変に対しては再生医療という治療の選択肢もあります。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肝硬変の治療法についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録いただき再生医療についてご確認ください。 肝硬変の血液検査の指標・正常な数値の目安 肝硬変の疑いで血液検査を受ける際に、検査に使われる指標や正常な数値の目安を知っていると、結果を踏まえての対策や心の準備に役立ちます。 検査で肝機能を調べる際の指標として、以下に挙げるものが一般的です。 AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP(γ-GT) LDH(LD) ALP 血小板数 総ビリルビン 以上の指標を、日本臨床検査医学会の基準を参考に肝硬変が疑われる数値の目安とともに解説します。(文献1) 本章で紹介する血液検査の数値は肝硬変の可能性を示唆するものですが、確定診断には医師による総合的な判断と追加検査が必要です。数値の異常があっても自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。 肝硬変の原因や症状について詳しくは、以下の記事が参考になります。 AST(GOT) 下限値 上限値 13 30 単位:U/L (文献1) ASTは肝細胞がアミノ酸を生成する際に使われる酵素です。肝細胞内に多く含まれているのが特徴で、肝臓疾患をはじめとする原因で肝細胞が壊れると、血液中に漏れ出ます。 このため、高い値が出るときは、肝臓でなんらかの問題が起きていることが疑われます。ただし、ASTは心筋や骨格筋にも多く含まれるため、肝機能の検査では次に触れるALTの数値とともに確認します。 標準とされる目安は13~30単位です。ASTとALTの両方が150単位以下で、そのうちASTが高い場合は肝硬変の疑いがあります。 ALT(GPT) 下限値 上限値 8 36 単位:U/L (文献1) ALTも肝細胞に多く含まれる酵素です。全体の9割程度が肝細胞に含まれているため、チェックする際に数値が極端に高いときは、肝機能の問題が疑われます。 基準値は8~36単位です。 γ-GTP(γ-GT) 下限値 上限値 9 47 単位:U/L (文献1) γ-GTPは肝臓や胆管に多い酵素で、たんぱく質の分解や解毒に役立ちます。肝細胞や胆管細胞がなんらかの原因で破壊されると、血液中に流出して数値が上昇する仕組みです。 とくにアルコールに強く反応するため、日頃お酒を大量に飲む人であれば、たとえ肝障害がなくても数値が上昇します。加えて、すでに脂肪肝があったり薬剤を服用したりする方も、数値が上がるケースがあるために注意が必要です。 基準値は9~47単位で、50単位を上回っていれば肝臓の疾患が疑われます。 LDH(LD) 下限値 上限値 124 222 単位:U/L (文献1) LDH(LD)は、肝細胞のほかに心筋や赤血球などに多い酵素です。通常は体内のブドウ糖をエネルギーに変換する際に活動するものの、疾患をはじめとする原因で肝細胞が破壊された際には血中に流出します。 基準値は124~222単位で、数値が高いほど肝硬変を含む肝臓疾患や心筋梗塞の疑いがあります。 ALP 下限値 上限値 38 113 単位:U/L (文献1) ALPは肝臓や骨、腸などで生成され、リン酸化合物の消化のはたらきがある酵素です。ALPも胆管や肝臓になんらかの異常が発生した際に、血中に流れ出て数値が上昇します。 ALPの基準値は38~113単位で、それ以上高くなると肝硬変が疑われます。 血小板数 下限値 上限値 158 348 単位:10³μL (文献1) ケガをした際に出血を止めるはたらきをする血小板の数も、肝硬変をチェックする際に使われる指標です。肝硬変は症状が進むと、肝臓の線維化(肝臓の組織が硬く変化すること)に併せて血小板の数が減っていくためです。 通常は15.8万個から34.8万個で基準とされる一方、10万個を下回った場合は肝硬変が疑われます。 総ビリルビン数 下限値 上限値 0.4 1.5 単位:mg/dL (文献1) ビリルビンは古くなった赤血球を肝臓で破壊する際に生成される色素です。色が黄色であるのが特徴で、肝機能が低下すると血中に多く見られるようになります。 肝硬変の症状の1つで、皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)は、血中のビリルビンの量が増えることで発生する仕組みです。なお総ビリルビンの基準値は0.4~1.5㎎で、それ以上増えると肝臓疾患が疑われます。 数値で肝硬変が疑われるときの検査 もし、健康診断の数値で肝硬変の疑いがあるときには、より詳しく分析するために次のような検査が行われます。 腹部超音波検査 フィブロスキャン検査 肝生検 胃カメラ 以下の検査についても知っておくと、事前に心の準備をする上で役に立つでしょう。 腹部超音波検査 腹部超音波検査とは、機械が発する超音波を使って肝臓全体を観察・検査する方法です。とくに肝臓の形状の変化や表面の凸凹、脂肪肝が見られるときには肝硬変が疑われます。 ほかにも、肝臓がんが発生しているときには、がん細胞も観察できます。 フィブロスキャン検査 フィブロスキャン検査(肝硬度測定)は、肝臓の硬さを測定する検査です。肝臓に振動波を伝えることで、振動速度から肝臓の硬さを数値として検出します。(文献2) なお、振動速度は肝臓の硬さと密接に関わっていて、硬いほど速度が速くなる傾向です。 肝生検 肝生検は肝臓に直接針を刺すやり方で組織の一部を採取し、実際に顕微鏡で観察する方法です。直接の観察によって肝臓の組織がどの程度硬くなっているのかや、炎症が出現しているのかを医師が自らの目で確認します。 ただ近年では、超音波検査が主要な検査の手段になってきているため、取り扱っていない医療機関も増えています。 胃カメラ 胃カメラも肝硬変の精密検査で推奨される手法の1つです。肝硬変を発症すると、食道や胃の血管が膨らんでこぶ状になる静脈瘤(じょうみゃくりゅう)が発生するケースがあるため、胃カメラでの検査を勧められます。 この食道・胃静脈瘤は、発生する原因の大半が肝硬変の進行によるものと考えられています。しかも、静脈瘤は膜が非常に薄い分、ちょっとしたはずみで大量出血や吐血、黒い便のリスクがあるために、細心の注意が必要です。以上の理由から、肝硬変の疑いがあるときは、胃カメラを使った検査も一緒に受けると良いでしょう。 肝硬変が疑われる数値が出たときの対策・予防法 もし健康診断で肝硬変が疑われる数値が出てきた場合、さまざまな対策や予防法で肝硬変のこれ以上の悪化に備えられます。主な対策や予防法は以下のとおりです。 休肝日を設けるなどして飲酒の量を調整 食事の栄養バランスや量に注意 便秘対策 適度な運動の習慣 以上の方法を活用しながら、少しでも状況を良くしていくことが大切です。 休肝日を設けるなどして飲酒の量を調整 肝硬変の予防には、禁酒や休肝日を設けるなどの対策が欠かせません。肝硬変は日頃から大量のお酒を飲むことによるアルコールの大量摂取が大きな要因であるためです。実際に近年の研究では、わが国で発症する肝硬変の原因で最も多いのがアルコール摂取であることも報告されています。(文献3) アルコールを大量に摂取すると、肝臓で分解されるアセトアルデヒドや、肝臓に蓄積される中性脂肪が処理しきれなくなります。これらを放置すると、肝臓だけでなく他の消化器官にも多大な負担をかけるため、注意が必要です。 肝硬変の疑いがあるときは、ただちに飲酒をやめて適切な治療に臨みましょう。また、現在のところ肝硬変の可能性が低い方も、週に2~3回は休肝日を設けて肝臓をいたわるべきです。 食事の栄養バランスや量に注意 肝硬変の治療や予防には、食事の栄養バランスや量への注意も有効な対策として挙げられます。 主食・主菜・副菜を一通りそろえた献立での食事のほか、損傷が進んだ肝臓の回復に欠かせないたんぱく質の意識的な摂取がポイントです。具体的には肉類だけでなく、魚介類・卵類・大豆類を使った料理を口にするのがおすすめです。 栄養バランス以外にも、食事の量や回数も意識します。食べすぎると肝臓に脂肪肝が蓄積され、より肝硬変を悪化させる原因になるためです。このため腹八分目程度がちょうど良いでしょう。 食べる回数も1日3回が基本です。朝食を抜くなどして1日の食事回数を減らすと、肝臓が蓄えていた栄養分で足りないエネルギーを補てんしようとするため、ただでさえ弱っている肝臓に負担がかかります。 便秘対策 肝硬変が疑われる場合は便秘対策も大切です。便秘になると腸内でアンモニアを発生させる細菌が優位になり、健康な人であればそのアンモニアは肝臓で解毒されます。しかし、肝硬変では肝機能の低下でアンモニアが解毒されないため、アンモニアが血中に流出した上に、脳に達すると肝性脳症を発症する場合があります。 アンモニアの解毒も肝臓に大きな負担をかけるものであるため、肝硬変の疑いがある場合は便秘対策が欠かせません。普段から野菜や果物、きのこ類のようなビタミンや食物繊維を多く含むものを摂取して、お通じを良くしましょう。 適度な運動の習慣 適度に運動する習慣も肝硬変対策に役立ちます。とくにアルコール以外の原因で肝硬変の疑いがある場合は、肝硬変の原因物質である脂肪肝を減らすことで、症状の改善が期待できます。 1日30分以上の運動を、週3回以上行う程度がおすすめです。運動の内容も、ウォーキングやジョギング、サイクリングのような少し汗をかく程度の有酸素運動が良いでしょう。なお、途中に休憩を挟みながらやる方法でも問題ありません。ただし、肝硬変対策に運動を取り入れる際には、事前に担当の医師と運動の頻度や量をよく相談しましょう。 まとめ|肝硬変が疑われる数値の把握と予防が大事 血液検査などによる肝硬変や肝機能に関する数値の把握は、今後の肝硬変の治療や予防には欠かせません。もし、血液検査で肝硬変が疑われる数値が出てきたときは、すぐにより詳しい検査を受けることが大切です。 実際に肝硬変の診断を受けたり、医師からなりかけていることを指摘されたりしたら、禁酒や節酒でお酒を控えながら、食事や運動などの生活習慣を見直しましょう。肝硬変に関係する数値に向き合うことで、肝硬変のこれ以上の悪化や将来なる可能性を防ぐ上で重要です。 肝硬変が判明した方は、再生医療による症例記事も参考までにご覧ください。 肝硬変の数値に関するよくある質問 肝硬変の診断基準は? 肝臓の数値がどのくらいであれば入院が必要? 肝臓の数値が急に上がる原因は? 肝臓で高い数値が出るのはストレスが原因? 肝硬変の診断基準は? 肝硬変の診断基準は、血液検査で肝機能などに関係するASTやAGTなどを確認します。もし数値が正常値を逸脱している場合は、腹部超音波検査をはじめとするより精密な検査を行います。血液検査や精密な検査の結果を総合して、肝硬変かどうかを判断する流れです。 肝臓の数値がどのくらいであれば入院が必要? 肝臓の数値で入院が必要な目安は以下のとおりです。 項目 入院が必要な目安 (参考)正常とされる数値 AST 500U/L以上 13~36U/L ALT 500U/L以上 8~36U/L γ-GTP 500U/L以上 9~47U/L ALP 400U/L以上 38~113U/L 総ビリルビン数 10㎎/dL以上 0.4~1.5㎎/dL ただしこれらは参考値であり、実際の治療方針は医師が全身状態を総合的に判断して決定します。 肝臓の数値が急に上がる原因は? 肝臓の数値が急に上がる原因には肝臓の疾患のほか、過度な飲酒や服用している薬剤の影響、栄養バランスの偏った食事などさまざまな要因が挙げられます。必ずしも肝臓疾患によるものではないものの、場合によっては医師への相談がおすすめです。 肝臓で高い数値が出るのはストレスが原因? ストレスが原因で肝臓の数値が上がる場合はあり、ASTとALTが上昇します。ストレスを受けると交感神経が優位になる一方、肝臓を動かす際に欠かせない副交感神経が機能しないためです。副交感神経が機能しないことで肝細胞が損傷し、中に含まれるASTやALTが血液中に流出すると数値が高くなります。 参考文献 (文献1) 臨床検査のガイドライン JSLM2024|日本臨床検査医学会 (文献2) 関谷千尋・矢崎 康幸・高橋 篤・沼崎 彰・並木 正義 (1979) 腹腔鏡による肝硬度測定に関する研究 ―新しい肝硬度計の試作― | 日本消化器内視鏡学会雑誌 (文献3) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021, Hepatol Res.2024
2025.12.13 -
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「糖尿病はもう治らないのだろうか」 「iPS細胞は糖尿病を治せると聞いたことがある」 糖尿病は、食事療法やインスリン注射などで血糖値をコントロールすることは可能ですが、現在の治療法では根本的な完治には至らず、将来への不安を抱える患者も少なくありません。 しかし近年、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療の研究が進み、インスリンを分泌する膵β細胞を再生して体内で血糖を自律的に調整できる治療法の開発が進められています。 本記事では、現役医師がiPS細胞と糖尿病治療の関係性を詳しく解説します。実用化後の可能性や課題について紹介し、記事の最後には、iPS細胞と糖尿病に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 iPS細胞と糖尿病治療の関係性 項目 内容 iPS細胞とは 自分の身体の細胞から作ることができる万能細胞 特徴 さまざまな臓器や組織の細胞に変化できる能力 糖尿病治療での注目点 インスリンを出す膵β細胞を作り直す可能性 1型糖尿病との関係 壊れた膵β細胞を補う再生治療の期待 2型糖尿病との関係 弱った膵β細胞の回復や働きの改善を目指す研究 現状 臨床研究・治験の段階。一般の治療としては未実用 注意点 効果と安定性の確認が必要な発展途中の技術 将来の期待 注射や薬剤に頼らない根本的な治療の可能性 iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、皮膚や血液などから採取した細胞を初期化し、さまざまな細胞に分化させる技術です。 糖尿病では、膵臓の膵β細胞が破壊または機能低下することでインスリン分泌が不足し、高血糖を招きます。iPS細胞を用いれば、失われた膵β細胞を再生し、体内で再びインスリンを生み出す仕組みの回復が期待されています。 日本では1型糖尿病を対象に、京都大学医学部附属病院でiPS細胞由来の膵島細胞シート「OZTx-410」を腹部の皮下に移植する治験が進行中です。また、iPS細胞由来膵島細胞の動物移植でも生着(体内への定着)と機能が確認されています。(文献1) iPS細胞治療は、糖尿病の根本的治療に向けた新たな可能性として注目されています。 iPS細胞を用いた糖尿病治療の可能性 糖尿病治療の可能性 詳細 iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|1型 自分の細胞から作った膵β細胞を移植してインスリンを再び作る治療法 iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|2型 iPS細胞で膵β細胞の働きを回復させ、体の反応を改善する治療法 iPS細胞を用いた糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生し、インスリンを再び体内で作り出すことを目指す研究です。とくに1型糖尿病では、自己免疫によって膵β細胞が破壊されるため、iPS細胞から新たな膵β細胞を移植して補う治療が有望視されています。 一方、2型糖尿病ではインスリン抵抗性と膵β細胞機能低下の両方が関与するため、細胞再生に加え代謝改善も必要となり、研究は慎重に進められている段階です。 以下の記事では、糖尿病の治療について詳しく解説しています。 【関連記事】 【なぜ治らない?】糖尿病が完治しない理由やなってしまったらどうするべきか医師が解説 糖尿病は1型と2型どちらが多い?治療法・それぞれの違いを解説 iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|1型 項目 詳細 治療法について 失われた膵β細胞をiPS細胞から再生し、体内に移植する治療法 研究が進む理由 膵β細胞がほとんど失われるため、細胞再生が有効な治療対象となる点 研究の特徴 自己免疫で壊れた膵β細胞を補い、インスリンを再び作り出すアプローチ 研究が先行する背景 インスリン抵抗性を伴う2型糖尿病よりも理論的に治療設計が明確な点 日本では、iPS細胞を用いた1型糖尿病治療が臨床段階へと進んでいます。京都大学医学部附属病院では、iPS細胞由来の膵島細胞シート(製品名:OZTx-410)を1型糖尿病患者に移植する「医師主導治験」が開始されました。(文献2) また、2025年2月には第1例目の移植手術が行われ、術後1カ月時点の評価では大きな問題は報告されず、患者は退院しています。(文献2) 今後は、インスリン分泌機能や長期的な有効性、免疫反応、合併症の有無を段階的に評価する予定です。初期報告では「大きな問題はない」との結果が示されています。(文献2) 移植後は、移植片の生着と機能維持のために免疫抑制剤を投与します。最大5年間の長期観察が計画されています。(文献3) また、海外では患者自身のiPS細胞由来膵島を移植し、1年以上インスリン注射が不要になった事例も報告されていますが、まだ標準治療には至っていません。(文献4) iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|2型 項目 内容 血糖コントロールが難しい要因 インスリン抵抗性と膵β細胞の機能低下・減少 インスリン抵抗性 筋肉・脂肪・肝臓でインスリンが効きにくくなる状態 膵β細胞の変化 長期高血糖や代謝ストレスによる膵β細胞の疲弊・減少 2つの壁 インスリン分泌不足と作用不足の両立した課題 研究の着眼点 膵β細胞の再生・補填とインスリン抵抗性の改善 研究進行の現状 多面的な改善が必要なため、1型より進行に時間を要する段階 2型糖尿病に対するiPS細胞研究は、1型に比べて臨床試験の開始が遅く、実施件数も限られています。世界の糖尿病に対する幹細胞治療試験の中で、2型糖尿病を対象とするものは少数です。(文献5) 一方で、iPS細胞を用いてインスリン抵抗性の状態を再現する研究も進んでいます。米国ハーバード大学関連機関では、ヒトiPS細胞から作製した細胞を使ってインスリン抵抗性モデルを構築したと報告されています。(文献6) また、iPS細胞由来のβ様細胞を作製する研究は進展していますが、2型糖尿病患者への移植や臨床応用の報告は現時点で限定的です。(文献7) 現在の糖尿病治療との違いとiPS細胞併用の可能性 項目 現在の糖尿病治療 iPS細胞を用いた治療 併用の可能性 治療内容 インスリン注射や経口薬による血糖コントロール 患者自身の細胞から作製したiPS細胞を用いた膵β細胞の再生・移植 免疫抑制剤や薬物療法、生活療法との組み合わせ 対象 1型はインスリン依存状態、2型はインスリン抵抗性と膵β細胞機能低下 膵β細胞を補いインスリン分泌能の回復を目指す治療 血糖管理の相乗効果とインスリン依存度の軽減 血糖コントロール 薬剤による一時的かつ補助的な血糖調整 移植細胞による自然で持続的な血糖コントロール インスリン注射や薬剤使用の減量可能性 リスク・課題 副作用や効果持続の限界 長期安定性、免疫拒絶、コストの課題 適切な患者選択と治療タイミングの確立 (文献8)(文献9) これまでの糖尿病治療は、薬やインスリン注射によって血糖を抑える「管理中心の治療」が主流でした。近年注目されるiPS細胞治療は、失われた膵β細胞を再生し、体が自らインスリンを分泌できる状態を取り戻すことを目指しています。 現在は研究段階にありますが、既存の薬物療法や生活療法と併用することで、将来的にはインスリン注射や薬への依存を減らせる可能性が期待されています。安定性やコストなどの課題は残るものの、糖尿病治療が「症状の管理」から「機能の回復」へと進化する大きな転換期を迎えつつあります。 以下の記事では、iPS細胞で治せる病気について詳しく解説しています。 iPS細胞による糖尿病治療で期待される効果 期待される効果 詳細 膵β細胞の再生によるインスリン分泌機能の回復 失われた膵β細胞をiPS細胞から再生し、インスリンを自ら作り出す仕組みの再構築 インスリン注射や薬剤への依存を減らせる可能性 再生した膵β細胞による自然なインスリン分泌による治療負担の軽減 血糖コントロールが安定し合併症のリスクを軽減できる可能性 持続的なインスリン分泌による血糖値の安定と合併症予防 自己細胞を用いることで拒絶反応のリスクを低減できる可能性 自分の細胞を利用した移植による免疫拒絶の軽減 iPS細胞による糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生して身体が自らインスリンを分泌できるようにし、インスリン注射や薬への依存を減らして血糖コントロールを安定させることを目指しています。 また、自分の細胞を用いるため免疫拒絶のリスクも低く、将来的にはより自然な血糖管理が可能になると考えられています。 リペアセルクリニックは糖尿病に対応している再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しています。 詳しくは、以下の糖尿病に対する再生医療の症例をご覧ください。 膵β細胞の再生によるインスリン分泌機能の回復 人間の体内では、膵β細胞がインスリンを分泌して血糖値を調整しています。しかし、とくに1型糖尿病ではこの細胞が失われ、体内で十分なインスリンを作ることができなくなります。 iPS細胞(誘導多能性幹細胞)は、成人の体細胞を再プログラミングして多能性を持たせたものです。この多能性とは、さまざまな細胞に分化できる能力を指します。現在、iPS細胞を用いた膵β細胞の再生を目指す研究が、世界中で進んでいます。(文献10) 近年では、ヒトiPS細胞から膵β細胞を生成し、動物モデルへ移植して血糖値が改善したという報告もあり、将来的に自らの身体でインスリンを生み出せる可能性が期待されています。(文献10) インスリン注射や薬への依存を減らせる可能性 iPS細胞を用いた糖尿病治療では、体内に膵β細胞や膵島を補うことで、自らインスリンを分泌する力を取り戻し、注射や薬への依存を減らせる可能性が注目されています。 現在の治療は、インスリンの不足を注射や薬で補う方法が中心です。しかし、iPS細胞由来の膵島細胞を移植することで、外部からの補充量を減らすことが期待されます。 実際に、1型糖尿病患者に化学的に誘導したiPS細胞由来膵島細胞を腹部に移植した臨床試験では、移植後75日でインスリンを使わずに済んだ例が報告されています。(文献11) 血糖コントロールが安定し合併症のリスクを軽減できる可能性 iPS細胞から作られた膵β細胞が正常に機能すると、インスリン分泌が改善され、血糖値を安定して保ちやすくなります。 血糖が生理的範囲に近づくほど合併症の発症リスクは低下し、実際に「HbA1c値が1%改善されると、糖尿病関連の合併症および死亡リスクが約21%低下した」という報告があります。(文献12) こうした成果から、iPS細胞による膵β細胞再生は合併症の進行を抑える可能性が示されているのです。 ただし、研究レビューでは「血糖改善や合併症抑制が期待されるものの、現時点では確立された治療法ではない」とされています。(文献13) 自己細胞を用いることで拒絶反応のリスクを低減できる可能性 iPS細胞(誘導多能性幹細胞)の大きな利点のひとつは、患者自身の体細胞(皮膚や血液など)から作製できる点です。 そのため、「本人の細胞=自分のもの」として移植でき、他人の細胞を使う場合に比べて免疫が異物と認識するリスク、拒絶反応の可能性を理論上、低く抑えられます。(文献14) ただし、自己由来のiPS細胞であっても、分化の過程で免疫が反応しうる異常なタンパク質や遺伝子変化が生じる可能性があり、拒絶反応を完全に防止できるわけではありません。(文献15) iPS細胞における糖尿病治療の課題 課題 詳細 移植した細胞の長期的な安定性が確認されていない 移植後の細胞が長期間にわたり正常に働き続けるかの検証段階 免疫拒絶反応の完全な抑制は難しい 自己由来でも免疫反応や拒絶が起こる可能性の残存 実用化後もインスリンや薬物治療を不要にできるとは限らない 治療効果や持続性に個人差があり、補助的治療の継続が必要な可能性 iPS細胞を用いた糖尿病治療は大きな期待を集めていますが、まだいくつかの課題が残っています。 移植した細胞が長期的に安定して働くか、免疫拒絶を完全に防げるかは検証段階です。また、治療後もインスリンや薬物が必要となる場合があり、現時点では補助的治療としての位置づけです。 以下の記事では、iPS細胞の作り方について詳しく解説しています。 内部リンク:片桐KW(ips細胞作り方) 移植した細胞の長期的な安定性が確認されていない iPS細胞を用いた糖尿病治療では、移植された膵β細胞や膵島が免疫反応や代謝ストレスなどの体内環境に適応し、長期にわたり機能を維持することが求められます。 しかし、幹細胞由来の治療では移植後に機能低下が起きる例が、動物実験や初期臨床研究で報告されています。(文献16) また、高血糖や酸化ストレス、血管新生不良などにより細胞が疲弊し、時間とともに働きが弱まる可能性も課題のひとつです。(文献17) さらに、移植部位で十分な血流や栄養が確保されない環境や、わずかに残る免疫反応も、移植細胞の長期生存と機能維持を困難にしています。(文献16) 免疫拒絶反応の完全な抑制は難しい 課題 詳細 拒絶反応の仕組み 他人の細胞や臓器を移植すると、免疫が異物と認識して攻撃する現象 自己由来iPS細胞の特徴 自分の細胞をもとに作ることで、拒絶反応のリスクを下げる可能性 免疫反応が起こる理由 細胞作製の過程で生じるタンパク質の変化や、移植部位ごとの免疫環境の違い 研究段階の技術 HLA操作や免疫遮断コーティングなど、免疫耐容化を目指す技術の開発 現状の課題 完全な免疫反応の抑制はまだ実現しておらず、安定性評価の途上 (文献18)(文献19) iPS細胞を使うことで、拒絶反応のリスクを減らせる可能性があります。自分の細胞を利用する点は大きな利点です。 しかし、作製過程での変化や移植環境の違いにより、免疫反応を完全に防止できるわけではありません。今後は免疫耐容技術の進歩とともに、長期的に安定した治療法の確立が期待されています。 実用化後もインスリンや薬物治療を不要にできるとは限らない 課題・要因 内容 個人差による効果の違い 移植細胞の生着や働きに個人差があり、インスリン分泌の回復にばらつきが生じる可能性 移植細胞の長期安定性 細胞が長期間インスリンを分泌し続けられるかの検証段階 免疫拒絶のリスク 自己由来の細胞でも免疫反応が起きる場合があり、免疫抑制の必要性 病状や合併症の影響 糖尿病の進行や他の合併症により追加治療が求められる可能性 技術発展の途上段階 治療法の発展が続く段階で、既存治療との併用が現実的選択 (文献18) iPS細胞を用いた糖尿病治療は、膵β細胞を再生しインスリン分泌を回復させることを目指す治療法です。すでに臨床試験が進み、有望な結果も得られています。 しかし、移植細胞の働きには個人差があり、すべての患者で十分なインスリン分泌が得られるとは限りません。また、細胞が長期にわたり安定して機能するかや、免疫反応を完全に抑えられるかも課題として残されています。 さらに、糖尿病の進行や合併症の影響も受けるため、実用化後もインスリン注射や薬物治療を完全に不要にできるとは限りません。 iPS細胞を用いた糖尿病治療を受ける方法 手順 内容 1.医師との相談 糖尿病の状態や治療内容を確認し、iPS細胞治療の対象となる可能性の確認 2.臨床研究・治験の募集を探す 大学病院などで実施中の臨床研究・治験の情報を確認 3.適格性の確認 治験参加条件(糖尿病のタイプ、既往歴、年齢、健康状態など)の確認 4.同意と登録 説明を受けた上で同意を行い、治験への正式登録 5.移植・治験開始 細胞移植や治療を実施し、術後の定期的な通院・経過観察の実施 iPS細胞を用いた糖尿病治療はまだ標準治療ではなく、臨床研究・治験の段階にあります。国内では1型糖尿病を対象としたiPS細胞由来膵島細胞シート移植の治験が進められていますが、実用化や保険適用は確立していません。 治験参加には、病状や健康状態など厳密な基準を満たす必要があり、全員が参加できるわけではありません。また、治験は有効性を確認する研究であり、治癒やインスリンの完全不要化を保証するものではありません。 また、長期の通院や検査が必要となる場合もあります。iPS細胞を用いた治療は主治医と十分に相談し、将来の選択肢のひとつとして考えることが大切です。 iPS細胞は糖尿病の根本的治療への新たなアプローチ iPS細胞を用いた糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生し、体内でのインスリン分泌機能の回復を目指す新しい治療法として注目されています。従来の治療が血糖コントロールを中心としていたのに対し、身体の働きを根本から立て直す点が特徴です。 現在はまだ研究段階ですが、国内外で臨床試験が進められており、実用化への期待が高まっています。今後、安定性と有効性が確立されれば、糖尿病治療のあり方を大きく変える可能性があります。 糖尿病についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、糖尿病に対し再生医療を応用した治療を提供しています。 再生医療を用いた糖尿病治療は、幹細胞によって膵臓のインスリン分泌機能を修復・再生し、根本的な治療を目指す方法です。自己の脂肪組織などから採取した幹細胞を培養して点滴投与することで、従来の症状を抑える治療とは異なり、膵臓の働きの回復を目指します。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 iPS細胞と糖尿病に関するよくある質問 糖尿病の治療でiPS細胞のみに期待するのは適切でしょうか? 現時点で、iPS細胞治療にのみ効果を期待するのは適切ではありません。iPS細胞を用いた糖尿病治療は、将来的に根本的な回復につながる可能性を持つ一方で、まだ研究や臨床試験の段階にあり、一般的な医療としては確立していません。 現在の糖尿病治療(食事・運動・薬物・インスリン療法など)は、血糖コントロールと合併症の予防に欠かせません。引き続き継続することが大切です。 以下の記事では、糖尿病予防に効果的な運動について詳しく解説しています。 iPS細胞の治療が適用できないケースはありますか? iPS細胞治療は、現在主に1型糖尿病でインスリン分泌がほとんどない患者を対象に研究が進められています。 2型糖尿病や重い合併症がある場合、免疫抑制が難しい場合などは現時点で適用外です。これらは限られた条件下で行われる研究段階の治療であり、すべての患者が受けられるわけではありません。 参考文献 (文献1) 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も|糖尿病ネットワーク (文献2) 「iPS由来膵島細胞シート移植に関する医師主導治験」の開始について|京都大学医学部附属病院 FOUNDED IN 1899 (文献3) ヒトiPS細胞由来膵島細胞を1型糖尿病患者に移植 医師主導治験の第1症例目を実施 京都大学病院|糖尿病診療・療養指導のための医療情報ポータル 糖尿病リソースガイド (文献4) 《Cell》 全球首例自體iPS細胞療法逆轉第一型糖尿病、可生成胰島素1年多|Global Bio (文献5) From bench to bedside: future prospects in stem cell therapy for diabetes|BMC Part of Springer Nature (文献6) Scientists create human model of insulin resistance using iPS cells|HSCI HARVARD STEM CELL INSTITUTE (文献7) From bench to bedside: future prospects in stem cell therapy for diabetes|PMC PubMed Central® (文献8) The Prospect of Induced Pluripotent Stem Cells for Diabetes Mellitus Treatment|PMC PubMed Central® (文献9) 2型糖尿病はどのように治療するのか?|一般社団法人 日本糖尿病学会 (文献10) Stepwise differentiation of functional pancreatic β cells from human pluripotent stem cells|PMC PubMed Central® (文献11) Transplantation of chemically induced pluripotent stem-cell-derived islets under abdominal anterior rectus sheath in a type 1 diabetes patient||PMC PubMed Central® (文献12) Transplantation of chemically induced pluripotent stem-cell-derived islets under abdominal anterior rectus sheath in a type 1 diabetes patient|Cell A Cell Press journal (文献13) Treatment of Diabetes Mellitus Using iPS Cells and Spice Polyphenols|PMC PubMed Central® (文献14) Autologous Induced Pluripotent Stem Cell–Based Cell Therapies: Promise, Progress, and Challenges|PMC PubMed Central® (文献15) The Immunogenicity and Immune Tolerance of Pluripotent Stem Cell Derivatives|frontiers (文献16) Islet Cell Replacement and Regeneration for Type 1 Diabetes: Current Developments and Future Prospects|Springer Nature Link (文献17) Stem cell therapy for diabetes: Advances, prospects, and challenges|PMC PubMed Central® (文献18) ヒトiPS細胞から膵島をつくり移植 血糖値の正常化に成功 レンコン状ゲルで細胞移植 1型糖尿病の根治をめざす|糖尿病ネットワーク (文献19) Fit-For-All iPSC-Derived Cell Therapies and Their Evaluation in Humanized Mice With NK Cell Immunity|frontiers
2025.12.13 -
- 肝疾患
- 内科疾患
肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した結果、肝臓に線維化が起こり機能が低下する病気です。初期段階では自覚症状が見られないため、症状が現れた時には既にかなり進行していることがあります。 肝機能の悪化や肝がんへの進行を防ぐには、早期発見・早期治療が重要です。 本記事では肝硬変の原因・症状・治療法・予防法について解説します。 なお、肝硬変を含む肝臓疾患に対しては再生医療という治療法があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しているので、肝臓疾患でお悩みの方はぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肝硬変とは?肝臓が線維化して機能が低下する重篤な疾患 肝硬変とは、肝臓が長期に及ぶ慢性的な飲酒やさまざまな疾患などにさらされた結果、肝臓が線維化と再生結節の形成により機能が衰える疾患を指します。肝臓は再生能力の高い臓器で、約7割を切除しても再生されるのが特徴です。 ただ、飲酒や疾患の影響で日常的に損傷を受け続けた場合、肝臓に炎症が発生します。炎症が発生した際にも修復は進むものの、その際にたんぱく質の一種であるコラーゲンが生成されます。コラーゲンが過剰に増えて肝臓自体が全体的に線維化が進んだ状態が肝硬変です。 肝硬変の原因 肝硬変の原因には、さまざまな要素が考えられるため、日頃から十分な注意を要します。肝硬変の原因としてよく挙げられるものが、以下のものです。 長期の過剰なアルコール摂取 乱れた生活習慣 ウイルス感染 薬物による肝障害 以上の原因をあらかじめ知った上で、肝硬変のリスクを下げることが大切です。 長期の過剰なアルコール摂取 肝硬変の原因の一つに、長期にわたる過剰なアルコールの摂取があります。 アルコールは肝臓で代謝されますが、その過程でアセトアルデヒドという有害物質が生成され、肝細胞を傷つけます。継続的な大量飲酒により肝細胞の損傷が繰り返されると、肝臓に慢性的な炎症が生じ、やがて肝硬変に進行します。 アルコール性肝疾患は段階的に肝硬変に進行する疾患です。まず肝臓に脂肪が蓄積するアルコール性脂肪肝が起こり、飲酒を続けることでアルコール性肝炎へと進行、最終的にアルコール性肝硬変に至ります。 なお、2018年から2021年の調査によると、日本国内における肝硬変の原因の内訳は以下のとおりです。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) このように、近年はアルコール性肝疾患が肝硬変の大きな原因となっています。(文献1) 肝硬変に進行する前のアルコール性肝炎の初期症状について解説している以下もご覧ください。 乱れた生活習慣 乱れた生活習慣も肝硬変の原因の一つです。具体的には、日頃の過度なストレスや運動不足、バランスの取れていない食生活などが挙げられます。 生活習慣が乱れて肥満や糖尿病のような生活習慣病を発症すると、肝臓に脂肪肝ができるケースがあります。この脂肪肝も何の対策もせずに放置すると、肝炎を経て肝硬変に発展するリスクがあるため、注意が必要です。 ウイルス性肝炎 ウイルス性肝炎から肝硬変への進行は、一般的に感染から20~30年程度の経過を経て起こります。とくにC型肝炎が肝硬変まで進行した場合、肝がんへの進展リスクが高くなるため注意が必要です。 近年、C型肝炎に対する抗ウイルス薬治療の進歩により、ウイルスの排除が可能となっています。早期にウイルスを排除することで、肝硬変や肝がんへの進行を大幅に抑制できるため、感染が判明した場合は専門医による適切な治療を受けることが重要です。 B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎は、肝硬変の主要な原因の一つです。これらのウイルスが長期間にわたって肝臓に炎症を起こし続けることで、肝細胞の壊死と再生が繰り返され、最終的に肝硬変に進行します。 とくに、高齢者や糖尿病の方は肝臓がんまで進行するリスクが高いため、注意が必要です。 薬物による肝障害 薬物の影響で発症した肝障害が肝硬変の原因になる場合があります。医薬品やサプリメントなどを適正用量を超えて摂取すると、肝臓は損傷を受けます。 また、薬物性肝障害には個人の体質が大きく関わるケースが多く、同じ薬剤でも人によって反応が全く異なります。体質に合わない薬剤では、服用量に関係なく肝障害が起こることがあり、事前の予測は非常に困難です。 肝硬変の症状 肝硬変は進行度により「代償性肝硬変」と「非代償性肝硬変」に分類されます。 代償性肝硬変とは、肝臓の一部が損傷を受けていても、残った健康な肝細胞が機能を補っている状態のことです。この段階では重篤な症状は現れず、多くの患者さんは無症状です。ただし、倦怠感・疲労感・食欲不振などの軽微な症状を感じることがあります。 これらの症状は風邪や日常的な疲労と区別がつきにくく、肝硬変と気づかずに見過ごされることが多いため、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。 病気がさらに進行し非代償性肝硬変になると、以下のような症状が現れます。 腹水 黄疸(おうだん) 食欲不振や体重減少 くも状血管腫 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) こむら返り 女性化乳房 これらの症状について解説します。 腹水 腹水はお腹を包む膜(腹膜)とお腹周りの臓器の間にある腹腔に、過剰に水が溜まる症状です。肝硬変の場合、門脈(血管)における圧力の高まりと、血液中のアルブミンの低下が腹水の主な要因です。 肝硬変の進行によって肝臓の機能が衰えると、消化器官から肝臓に向かう血管である門脈の圧力が高まって、流れが悪くなります。すると血液に含まれる成分の血漿(けっしょう)が血管の外に漏れるため、腹水を生じます。 また、肝機能の低下は、血液に含まれるアルブミンと呼ばれるたんぱく質を減少させます。アルブミンには血液中の水分を維持するはたらきがあるのが特徴です。もしアルブミンが減少すると、水分が血管から腹腔に漏れ出て腹水が発生します。 黄疸(おうだん) 黄疸とは、疾患の影響で皮膚や、目の白い部分である眼球結膜が黄色くなる症状です。黄疸もまた、肝硬変の症状が進んだ際に見られます。 黄疸の発生には、赤血球に含まれるビリルビンと呼ばれる色素が関係しています。血液に含まれる赤血球は古くなって機能しなくなると、肝臓で分解されるのが一般的です。赤血球の分解で現れたビリルビンは体外に排出されますが、肝臓の機能が衰えると血液中のビリルビンが増加します。そのために皮膚や眼球結膜が黄色くなります。 なお、皮膚などが黄色くなるほかにも、尿が異常に濃い点や便が白くなる点も特徴です。 食欲不振や体重減少 肝機能が低下した結果、食物に含まれる栄養素の消化吸収能力が衰えるとともに、食欲不振も起こります。十分な栄養を摂取できないため、体重減少や筋肉量の低下、慢性的な疲労・倦怠感が生じます。 くも状血管腫 くも状血管腫とは、皮膚上に発生する、毛細血管が赤い点からクモの足のように広がって見える症状です。肝硬変の場合、首や肩、二の腕などの上半身に起こります。 肝硬変によってくも状血管腫が発生する流れは、具体的には解明されていません。ただ、肝機能の低下でホルモンの代謝が進まなくなったことで発生すると考えられています。 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) 手掌紅斑(しゅしょうこうはん)とは、手の親指や小指の付け根部分をはじめ、手のひらに生じる赤い斑点です。紅斑自体に痛みなどの特別な症状はないものの、肝硬変が進んでいるサインとして出現するケースがあります。 こむら返り 夜中寝ている間などに足がつるこむら返りも、肝硬変によって生じる症状です。肝硬変の進行で肝機能が低下すると、体内の水分のバランスや電解質の調整がうまくいかなくなります。 加えて、肝硬変が進むと必須アミノ酸メチオニンの消費量が減ります。メチオニンは筋肉を動かす際に欠かせないタウリンやカルニチンを生み出すのに必要です。しかし、メチオニンの消費量が減る分、2つの物質の生成量も減るため、こむら返りが起きるケースが増えると考えられています。 以下の記事では、こむら返りと肝硬変との関係性について解説しているので、あわせてご覧ください。 女性化乳房 女性化乳房とは、男性の乳房や乳首が肥大化する症状です。男性にも女性ホルモンのエストロゲンはあるものの、通常であれば肝臓の機能によって分解されるため、乳房などは肥大化しません。 しかし、肝硬変を抱えている男性の場合、エストロゲンの分解能力も衰えています。このため、残ったエストロゲンのはたらきによって、男性の乳房や乳首が肥大化する女性化乳房が発生する仕組みです。 肝硬変患者の余命|腹水が溜まった場合は? 肝硬変を診断された際の余命は、病気の進行度によって大きく異なります。腹水が溜まるなどの症状が見られる場合は、肝硬変がある程度進行した状態です。 医学的な重症度分類に基づいた研究では、肝硬変患者の3年後も生存している割合は以下のように報告されています。(文献2) 症状が中程度まで進んだ場合:約71% 症状が重度まで進んだ場合:約31% ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、腹水などの症状が現れていても、適切な治療を継続することで症状の改善や病気の進行を遅らせることが期待できます。 肝硬変の検査・診断方法 肝硬変への対策には、こまめに検査や診断を受けることが大切です。肝硬変に対して用いられる検査や診断には、次のような方法があります。 血液検査 画像診断 腹腔鏡検査・肝生検検査 それぞれの検査や診断の特徴を知り、有効活用しましょう。 血液検査 血液検査では、肝機能に関する複数の指標を測定し、肝硬変の診断や病態の評価を行います。主な検査項目と基準値は以下のとおりです。 指標 指標が意味するもの 正常値 異常値 AST ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 13~36U/L 51U/L以上 ALT ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 8~36U/L 51U/L以上 γ-GTP ・アルコール性肝障害 ・胆汁の分泌がうまくいっているかどうか 9~47U/L 101U/L以上 血小板数 ・肝臓の線維化の程度 ・門脈圧亢進の指標 15.8~34.8 10⁴/μL 9.9以下・40.0以上 10⁴/μL アルブミン値 ・肝臓でつくられるたんぱく質の量 4.1~5.1g/dL 3.6g/dL以下 (文献3)(文献4) なお、血液検査は会社や自治体、学校の健康診断の一環でも行われています。定期的な健康診断の受診も、肝硬変対策として大切です。 画像診断 血液検査で肝機能の数値に異常がある場合、より精密な画像診断が必要です。画像診断はCTやMRI、腹部超音波など専門の機械によって確認されます。 診断時に撮影された画像をもとに、肝臓のサイズの変化や表面の凹凸、異常な血管の有無をチェックします。肝臓のサイズや形、表面がゴツゴツしているなどの変化が見られる場合、肝硬変の疑いが考えられます。 腹腔鏡検査・肝生検 画像診断とともに腹腔鏡検査や肝生検も行われます。腹腔鏡検査ではお腹に穴を空けた上で、腹腔鏡(内視鏡)を入れて、肝臓の状況を医師が映像で確認する検査方法です。この方法と今までの他の診断結果から肝硬変かどうかを総合的に判断します。 一方、肝生検は、肝臓組織の一部を採取して顕微鏡で観察する方法です。ただし、現在では画像や映像、超音波を用いた方法が主流になっており、肝生検には出血リスクがあることから採用されるケースは必要性が高い場合に限られています。 肝硬変の治療法 肝硬変の診断を受けた場合は、なるべく早い段階での治療が重要です。主な治療法として、以下の方法が挙げられます。 生活習慣の見直し 肝炎の治療 腹水の治療 肝臓の移植 再生医療 肝硬変の治療法を知れば、今後どのように肝硬変を治していくのかをイメージできます。 生活習慣の見直し 肝硬変の治療では、生活習慣の見直しが欠かせません。肝硬変になった際に生活習慣を見直す方法として、以下が挙げられます。 禁酒 食事療法 軽めの運動 肝硬変になっている場合は、禁酒が重要です。とくにアルコール性肝硬変を診断された場合は、それ以上の飲酒は症状をさらに悪化させ、合併症や命の危険のリスクを高めます。肝機能の数値が正常値に下がるまでお酒は控えましょう。 また、肝硬変を改善するためには普段の食事内容の見直しも大切です。野菜や果物でビタミン・食物繊維を、大豆類で良質なタンパク質を摂取しましょう。1日3回、腹八分目でよく噛んで食べると肝臓への負担を軽減できます。 とくに腹水やむくみが見られる場合は、これ以上腹水が増えないように1日に摂取する水分や塩分の制限も大切な要素です。水分は1日1リットル、塩分は1日5~7gに抑えます。(文献5) 運動は軽めに留めることが大切です。肝機能が低下している状態では、激しい運動は体調悪化を招く可能性があります。ただし、休んでいるだけでは筋肉が衰えるため、軽い体操などで筋力を維持しましょう。 肝炎の治療 肝硬変の治療では、原因に応じた肝炎の治療も行います。一言で肝炎といってもさまざまな原因があるため、それぞれに対して適切な方法で治療する必要があるためです。(文献6) 原因 投与する薬剤 B型肝炎ウイルス 抗ウイルス薬の投与: エンテカビルやテノホビルアラフェナミドフマル酸塩など C型肝炎ウイルス 経口抗ウイルス薬 (医師との相談が必要) 脂肪性肝炎 禁酒・食事療法・運動療法 自己免疫性肝炎(免疫異常による肝炎) 副腎皮質ステロイドの投与 なおB型肝炎やC型肝炎の原因ウイルスに対して抗ウイルス薬の効果が見られないときは、肝細胞の破壊を抑える薬剤の投与や、体内の鉄分を減らす瀉血(しゃけつ)療法がとられます。 腹水の治療 腹水が溜まっている状況であれば、塩分の制限とともに、利尿内服薬やアルブミン剤も投与されます。利尿内服薬は尿の生成を促し、体内の余分な水分の排出が期待できる薬剤です。もし通常の利尿内服薬で効果が見込めない場合は、より強力な利尿作用があるトルバプタンなどを使用します。 アルブミン製剤も腹水の改善によく使われる薬剤で、点滴で投与するのが一般的です。腹水を発症している状態は体内の水分量を調整するアルブミンが減少しているため、補うことで腹水の改善効果が期待できます。 肝臓の移植 薬剤の投与などの方法で症状の改善が期待できないときは、肝臓移植を行います。条件に合致する健康な親族の肝臓の一部を移植し、肝硬変自体の改善を図る方法です。 移植の判断は、病状の深刻度や移植しなかった場合に予想される死亡率をもとに判定されます。 再生医療 肝硬変の治療には再生医療をもあります。再生医療では「幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」と呼ばれる手法が一般的です。 幹細胞治療では、患者様の脂肪から採取した幹細胞を培養してから、患部に投与します。また、PRP療法は患者様の血液から採取した血漿を遠心分離によって血小板の濃度を高め、患部に注射する治療法です。 幹細胞は培養に1カ月ほどかかりますが、施術はどちらも短時間で終了します。入院・手術を必要としないのも特徴です。 当院リペアセルクリニックの肝硬変に対する治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 また、再生医療についての詳細は、以下のページをご覧ください。 肝硬変の予防法 肝硬変を予防し、肝疾患の進行を防ぐには、日常生活での取り組みが重要です。 以下の予防法を実践して、肝臓の健康を守りましょう。 適量の飲酒 バランスのとれた食事 定期的な健康診断の受診 これらの生活習慣を継続することで、肝疾患のリスクを大幅に減らせます。 適量の飲酒 普段から飲酒の習慣がある方は、飲む量の調整が欠かせません。多量のアルコールは肝臓を傷つけるとともに、脂肪肝から症状が進行すれば肝硬変になるリスクがあります。 発症のリスクを抑えるには、お酒と上手に付き合うことが大切です。1日に飲むお酒の量に上限を設けたり、週に1、2日は休肝日を設けて肝臓をいたわるのがポイントです。 なお、厚生労働省では「節度ある適度な飲酒」として、アルコール度数5%のビールであれば1日に中瓶1本分(500ml)、アルコール度数15%の清酒であれば1合180mlとしています。(文献7) バランスのとれた食事 無理な飲酒を抑えるとともに、栄養バランスのとれた食事を心掛けることも肝硬変の予防に役立ちます。 食事のメニューは主食・主菜・副菜の組み合わせを意識し、食物繊維や良質なたんぱく質の多い食材を使った料理を食べることが大切です。 なお食べる量や回数も、すでに肝硬変を発症している場合と同じく、1日3回・腹八分目を心掛けます。 一方で脂肪や塩分の多い食事は、肝臓を傷つける恐れがあるため、なるべく避けるべきです。添加物を多く含むインスタント食品も推奨できません。 定期的な健康診断の受診 肝硬変を予防するために、定期的な健康診断を受けましょう。肝硬変は症状が現れにくいため、血液検査により脂肪肝や慢性肝炎の段階で早期発見することが大切です。 健康診断で肝機能異常が見つかった場合は、専門医による詳しい検査を受けて原因を特定します。 脂肪肝であれば生活習慣の改善により改善可能で、ウイルス性肝炎の場合は抗ウイルス薬による治療でウイルスを排除できます。これらの治療により、肝硬変への進行を防ぐことができます。 年1回の健康診断を欠かさず受診し、異常が指摘された場合は早めに医療機関を受診しましょう。 まとめ|肝硬変の治療は早めの定期検診や生活習慣の見直しで対策を 肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した病気です。症状が進行するまでほとんど自覚が無く、黄疸や腹水などのはっきりした症状が現れる頃には、病気が進行しています。さらに肝硬変まで進行すると完治が難しく、命にもかかわることがあるため、定期的な健康診断による早期発見・早期治療が重要です。 肝硬変の治療法には、食事や飲酒量などの生活習慣の改善や薬剤の投与、肝臓移植、再生医療などの手段もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、肝硬変を含む肝臓疾患に対する再生医療を提供しております。肝硬変でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEにご登録いただき、再生医療に関する症例をご確認ください。 肝硬変に関するよくある質問 肝硬変の原因で最多のものは? 近年の研究では、国内で発症する肝硬変の原因として過剰なアルコール摂取が最多である結果が出ています。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) 肝硬変を予防するためには、アルコールの摂取量を適切な範囲に抑えることが大切です。 肝硬変で死ぬ前は苦しい? 進行した肝硬変では多くの場合、苦しさを伴う症状が現れます。 肝硬変の末期症状は腹水や黄疸、浮腫(むくみ)などが深刻化している状態です。なかでも腹水は症状の進行によって腹部が膨らみ、呼吸困難さえも引き起こします。 また肝機能の低下で体内のアンモニアが分解されないまま脳に達すれば、肝性脳症に陥る場合もあります。肝性脳症では昏睡状態になるケースさえあるほど危険な症状です。 参考文献 (文献1) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021”| Hepatol Res. (文献2) 肝硬変患者の生命予後の検討|厚生労働省 (文献3) 臨床検査のガイドライン JSLM2024|日本臨床検査医学会 (文献4) 判定区分 2025年度版|日本人間ドック・予防医療学会 (文献5) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献6) 肝臓病の理解のために |日本肝臓学会 (文献7) アルコール|厚生労働省
2025.11.26 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「痛風って腎臓にも悪いって本当?」 「尿酸値が高いって言われたけど、腎臓にどんな影響があるのか不安…」 このような疑問や不安を抱えている方も多いでしょう。 痛風は関節に関わる疾患のイメージが強いかもしれませんが、実は腎臓とも深い関係があります。具体的には、腎機能の低下や痛風腎・尿酸結石などの腎臓系の病気を引き起こす可能性があるのです。 腎臓の状態を良好に保つためには、定期的な検診を受け、腎臓に負担のかからない生活を送ることが大切です。 本記事では、痛風と腎臓の関係や発症しうる腎臓病を詳しく解説します。尿酸値・クレアチニン値が示す健康状態や腎機能を低下させない方法、治療法も紹介するので、参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 「痛風による腎臓病」について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 痛風と腎臓の関係 痛風は単に関節の問題だと思われがちですが、実は腎臓とも密接な関わりがあります。 ある調査では、26,753名の痛風患者のうち、7,245名(27.1%)が腎機能低下と判定されました。(文献1) 痛風患者では、以下のようなプロセスを経て、腎機能が低下していきます。 血中尿酸値の上昇 尿酸塩結晶の形成 腎臓への尿酸塩結晶の蓄積 腎臓の炎症・組織の硬化 腎機能低下 痛風患者の体内では、尿酸が過剰に産生されるか、十分に排出されないことで血液中の尿酸値が上昇します。尿酸値が高くなると、尿酸は血液中で溶けきれなくなり、尿酸塩と呼ばれる結晶の形で沈殿するのです。 この尿酸塩の結晶が腎臓の細い管(尿細管)に詰まると、尿の流れを妨げたり、腎臓の組織に炎症を引き起こしたりします。炎症が起こると、腎臓の組織が傷ついて硬くなりやすいです。これらの変化が長期間続くと、徐々に腎臓の機能が低下していきます。 さらに、血中尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、それ自体が腎臓の血管を傷つける可能性も指摘されています。 このように、痛風は腎臓に深刻なダメージを与える恐れがあるため、早期発見と適切な管理が重要です。痛風によって引き起こされる高尿酸血症と尿酸塩結晶の蓄積は、さまざまなメカニズムを通じて腎機能の低下を招きます。 痛風で発症しうる腎臓の病気 痛風の影響で発症しうる腎臓の病気は以下の3つです。 痛風腎 尿酸結石 腎炎 病気の特徴を順番に見ていきましょう。 痛風腎 痛風腎は、痛風または痛風と同等ほどの高い尿酸値が長時間持続することで発症する疾患です。 高い尿酸値により腎臓がダメージを受けはじめた段階では、無症状であるケースが多いです。 しかし、腎臓に負担のかかる状態が続き、腎機能が低下していくと、関節の痛みやむくみ、倦怠感といった症状が現れるようになります。 尿酸結石 尿酸結石とは、尿が通る尿路に結石ができる疾患です。 痛風で尿酸値が高くなると、尿が酸性となります。酸性は水に溶けにくい性質があるため、尿酸結石ができやすくなります。 とあるデータでは、痛風患者312例のうち、23.7%に相当する60例に腎結石が認められたと報告されています。(文献2) 尿酸結石の主な症状は、わき腹や下腹部の強い痛みや血尿です。 小さな結石であれば、薬物療法を中心に自然と体外に排出されるのを待ちます。大きな結石の場合は、内視鏡治療で、結石を砕く治療が選択されます。 腎炎 腎炎とは、腎臓が炎症を起こしている状態です。 尿酸値が高いと体内で、尿酸塩結晶が形成されます。この尿酸の結晶が関節や腎臓に溜まることで、炎症や組織の損傷を引き起こすのです。 主な症状は、発熱や腰痛です。慢性化すると、食欲不振や多尿などの症状が現れます。 痛風の腎臓機能低下と関連のある2つの数値 痛風で腎臓機能が低下した場合「尿酸値」「クレアチニン値」の変化が重要な指標となります。 それぞれの値がどんな意味を持つのか、見ていきましょう。 尿酸値 尿酸は、プリン体と呼ばれる物質から生成されます。体内でプリン体が分解される段階でできた老廃物が尿酸で、通常は尿から排出される仕組みです。 尿酸値とは、体内の尿酸濃度を示す数値です。尿酸値は、7.0mg/dLまでは正常値内とされています。(参考3)それ以上の値になると、高尿酸血症となり、痛風や腎臓病の発症リスクを高めます。 尿酸値は血液検査で調べられるので、健康診断や内科の受診を通して検査を受けましょう。 【関連記事】 尿酸値と痛風の関係性|8.0mg/dLはやばい?高い原因と治療法を解説 尿酸値を下げて腎臓の健康を守る!今すぐ始めたい痛風・腎臓病予防の生活習慣 クレアチニン値 クレアチニンは、筋肉を動かすエネルギーを生み出したあとに産生される老廃物です。主に腎臓から排出されますが、腎機能が低下していると体内に残りやすくなります。 クレアチニン値は血中のクレアチニン濃度を示した数値です。 クレアチニン値の正常基準値は以下のとおりです。 男性:0.61〜1.04(mg/dL) 女性:0.47〜0.79(mg/dL) 数値が上昇すると、疲労感や食欲不振、むくみといった症状が現れます。 クレアチニンは血液検査や尿検査を組み合わせて総合的に評価されます。健康診断や自主的な検査の機会で、クレアチニン値の変化をチェックしてみてください。 痛風で腎機能を低下させない方法 ここでは、痛風で腎機能を低下させない方法を解説します。 主な方法は以下の4つです。 食生活を改善する 適度な運動をする 禁煙する 高血圧・糖尿病の治療をする 普段の生活を見直し、腎機能の維持・改善につなげましょう。 食生活を改善する 腎臓を保護するための食事では、以下の点に気を付けましょう。 食事の工夫 説明 プリン体の多い食品を控える 肉類、魚介類、ビールなどのプリン体を多く含む食品は、尿酸値を上昇させるため、摂取を控えめにする。 プリン体の少ない食品を選ぶようにしましょう。 塩分や蛋白質の摂取を控えめにする 塩分や蛋白質の過剰摂取は、腎臓に負担をかけるため、適量を心がける。 塩分は1日6g未満、蛋白質は体重1kgあたり0.8gを目安に摂取しましょう。 十分な水分を摂取する 水分補給は尿酸の排泄を促進し、腎臓の負担を軽減するために重要。 1日1.5~2リットルの水分摂取を心がけましょう。 野菜や果物を積極的に取り入れる 野菜や果物に含まれるビタミンやミネラル、食物繊維は、腎機能の維持に役立つ。 1日に350g以上の野菜や果物を摂取するようにしましょう。 アルコールは控えめにする アルコールは尿酸値を上昇させ、腎臓に負担をかけるため、摂取は控えめにする。 1日の飲酒量は、ビールなら500ml、日本酒なら1合未満を目安にしましょう。 管理栄養士と相談しながら、自分に合った食事の計画を立てることが大切です。バランスの取れた食事を心がけ、腎臓にやさしい食生活を送りましょう。 適度な運動をする 腎臓の健康を守るには、適度な運動と体重管理が大切です。 適度な運動は体重管理に役立ち、血圧を安定させる効果があります。これにより腎臓への負担が軽減され、腎機能の保護につながります。 肥満は高尿酸血症や腎臓病のリスクを高めます。標準体重を目指し、必要に応じて医師や栄養士に相談しましょう。 禁煙する 喫煙は、腎臓の血管を収縮させ、腎機能を低下させる可能性があります。そのため、喫煙している方は禁煙を検討しましょう。 以下は禁煙の方法です。 禁煙外来で専門家に相談する ニコチンパッチやガムを使う たばこを吸いたくなったときの気分転換方法を見つける 急に断ち切る必要はありません。少しずつたばこの本数を減らし、無理のないペースで禁煙を進めてみてください。 高血圧・糖尿病の治療をする 痛風と高血圧を併発している人は、腎臓に負担がかかりやすくなります。 高血圧によって腎臓の血管が傷つき、尿酸の結晶がたまりやすくなるためです。血圧のコントロールが悪いと、腎臓の障害がさらに進行してしまう可能性があります。 また、糖尿病も腎臓病のリスクを高める重要な因子です。血糖値が高い状態が続くと、腎臓の細い血管が損傷を受け、機能が低下していきます。 高血圧・糖尿病を患っている方は、それらの疾患を適切に治療することで痛風や腎機能低下の根本治療につながるケースも少なくありません。 糖尿病治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、詳しい治療方法を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 痛風における腎臓病の治療法 痛風で腎臓病を発症した場合、適切な治療を進めていく必要があります。 腎臓病における代表的な治療法は以下の3つです。 薬物療法 透析治療 再生医療 順番に見ていきましょう。 薬物療法 痛風による腎臓病の際に用いられる薬物療法では、尿酸値を下げたり、腎機能を保護したりする治療が行われます。 主な薬物療法の種類と効果を以下にまとめました。 治療法 説明 尿酸値を下げる薬物療法 アロプリノール、フェブキソスタットなどの薬を使用し、尿酸値をコントロールする。 尿酸の産生を抑えたり、排泄を促進したりすることで、尿酸値を下げる。 腎機能を保護する薬剤 腎臓の血管を保護し、タンパク尿を減らす働きのある薬を使用し、腎臓の機能低下を防ぐ。 代表的な薬には、血圧を下げる作用もあるACE阻害薬やARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)などがある。 医師の診断と指導のもとで患者様の状態にあった治療法が選択されます。 透析治療 腎機能が著しく低下し、老廃物が体内に蓄積した場合は、透析治療が検討されます。 透析治療では、腎臓の代わりに尿として排出されるはずの余分な水分や老廃物を取り除きます。 2008年のあるデータでは、痛風腎による新規透析導入数は100人で、透析治療患者全体の0.3%とそこまで高い数値ではありませんでした。(文献4) 透析療法では水分制限や食事制限なども開始されるため、担当医と相談しながら患者様のペースで治療を進める流れが多いです。 再生医療 痛風による腎機能低下の治療法には再生医療の選択肢もあります。 再生医療とは、人間の組織や血液を活用する治療法です。自身の細胞を使用するため副作用も少なく、注射や点滴による治療が多いため、身体への負担が少ないのが特徴です。 再生医療を専門とするリペアセルクリニックでは、無料のメール相談またはオンラインカウンセリングを受け付けております。再生医療の詳しい治療内容や症例を知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。 痛風と腎臓の関係性を知って腎機能を高める生活を送ろう 痛風と腎臓は深く関係しているため、日々の生活で腎機能を守る工夫が必要です。 高尿酸血症のコントロール、腎臓にやさしい食事療法、生活習慣の改善など、さまざまな角度からのアプローチが求められます。 また、定期的な医療チェックと継続的なケアを通じて、合併症の早期発見と適切な対処を心がける必要があります。 痛風と腎臓病を抱える患者さんには、医療従事者とのパートナーシップを大切にしながら、積極的に健康管理に取り組んでいきましょう。 腎臓病の治療の選択肢に再生医療があります。 再生医療を提供している当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っております。再生医療について詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 痛風患者における腎障害の関連因子の検討|GoutandNucleicAcidMetabolismV (文献2) 原著2痛風患者における腎結石の有病率|J-STAGE (文献3) 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版|日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン訂正委員会 (文献4) 腎予後に及ぼす高尿酸血症の影響|琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部 (文献5) 痛風|MSD マニュアルプロフェッショナル版 (文献6) 健康を考える皆さまへ|千葉県栄養士会 (文献7) 高尿酸血症・痛風の食事療法|順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部 (文献8) 高尿酸血症/痛風|日本生活習慣病予防協会 (文献9) 「高尿酸血症/痛風」|日本生活習慣病予防協会 (文献10) 高尿酸血症・痛風ハンドブック|沢井製薬株式会社 (文献11) 腎臓の病気について調べる 6.全身性疾患に伴う腎障害 7.痛風腎|日本腎臓学会 (文献12) 痛風(高尿酸血症)|愛知県薬剤師会 (文献13) 腎臓の病気について調べる 7.治療|日本腎臓学会 (文献14) 腎臓の病気について調べる 11.腎代替療法|日本腎臓学会
2025.09.30 -
- 関節リウマチ
- 内科疾患
関節の腫れや痛み、朝のこわばりが続いて「もしかしてリウマチ?」と、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。 関節リウマチは自己免疫の異常によって関節に炎症が起こる慢性疾患で、進行すると関節の破壊や変形につながるケースがあるため注意が必要です。 本記事では、関節リウマチの特徴や原因、診断方法、治療の選択肢などをわかりやすく解説します。 症状の悪化を防ぎながら生活の質を維持したい方、予防したい方は参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、治療の選択肢の一つ「再生医療」の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 関節リウマチとは 関節リウマチとは、自己免疫の異常によって関節の滑膜(関節を包む薄い膜)に炎症が起こり、腫れや痛み、こわばりを生じる慢性疾患です。 炎症が続くと軟骨や骨が破壊され、関節の変形や機能障害が進行します。 手指や手首、足首など小さな関節から症状が現れるケースが多く、全身の倦怠感や微熱を伴うことも少なくありません。 とくに女性に多く、30〜50歳代での発症が目立つのが特徴です。 関節リウマチの治療には長い期間を要する場合があるものの、早期に診断・治療を開始すれば、関節の破壊を予防して日常生活の質を維持できる可能性があります。 なお、似ている言葉に「リウマチ熱」がありますが、リウマチ熱は溶連菌感染が原因で起こる病気であり、関節リウマチとの関係性はありません。 関節リウマチの初期症状 関節リウマチは、発症初期から指の関節のこわばりや関節の腫れといった、体に特徴的なサインが現れます。 もっとも多いのが指の関節のこわばりで、とくに朝起きた直後に手指が動かしにくくなる「朝のこわばり」が典型的な初期症状です。 こわばりは30分以上続く場合もあり、症状が進むと日常動作に支障をきたします。 また、関節の腫れも初期からよく見られる症状です。 手指や手首、足首などの小関節が赤く腫れて押すと痛みを伴うほか、倦怠感や微熱、食欲低下など全身症状が併発するケースもあります。 炎症によって関節が熱を持ち、左右対称に症状が出るのも特徴です。 指や手首の違和感や腫れが数週間以上続く場合は、早めにリウマチ専門医を受診しましょう。 初期段階で適切な治療を開始すれば、関節破壊や変形の進行防止を目指せます。 以下の記事では、関節リウマチの初期症状についてさらに詳しく解説しているので、参考にしてみてください。 関節リウマチの原因・メカニズム 関節リウマチを発症する原因には、おもに以下3つの要因が考えられています。 自己免疫疾患 滑膜(かつまく)の炎症 遺伝的な素因 関節リウマチは自己免疫疾患の一種であり、本来は体を守る免疫が誤って自分自身の組織を攻撃し、発症します。 関節を覆う滑膜が標的となり、炎症が持続するのが特徴です。 滑膜は関節の動きを滑らかに保つ役割を持ちますが、炎症によって厚く腫れると関節内に炎症細胞や異常な組織が増殖します。 炎症が続くと組織が軟骨や骨を破壊し、関節の破壊や変形を引き起こすのです。 さらに、炎症物質が血流を介して全身に広がると、倦怠感や微熱、貧血などの全身症状を伴うケースもあります。 発症には遺伝的な素因も関与しており、特定のHLA遺伝子型を持つ人では発症リスクが高いことが知られています。 ただし、遺伝だけでなく喫煙や感染症、ホルモンバランスの変化など環境要因も複雑に関係している点も見逃せません。 また、やや専門的になりますが、体内で炎症が起こると「IL-6」や「TNFα」などのサイトカインという物質が過剰に分泌され、さらに炎症を悪化させる点も押さえておきましょう。 なお、関節リウマチの原因については以下の記事でも詳しく解説しています。 関節リウマチになりやすい人 関節リウマチは誰にでも発症の可能性がありますが、特定の年齢層や生活習慣を持つ人で発症率が高いことが知られています。 遺伝的素因と環境要因の組み合わせが影響しており、生活習慣や性別、年齢によってリスクが異なるのです。 ここでは、関節リウマチになりやすい人の特徴を解説します。 30~50代の女性 関節リウマチを発症する男女比は約1:4と女性に多く、とくに30〜50代の発症が目立ちます。(文献1) 女性が多い背景には、女性ホルモンの変動が関係していると考えられています。 女性ホルモンのエストロゲンには免疫調整作用がありますが、分泌が減少すると免疫異常が起こりやすくなるのです。 妊娠や出産、更年期などでホルモンバランスが変化する時期には、関節リウマチの早期発見に敏感になることも対策の一つといえるでしょう。 喫煙している人 喫煙は、関節リウマチの発症リスクを高める重要な要因の一つと考えられています。 タバコの煙に含まれる有害物質が免疫細胞を刺激し、自己抗体の産生を促進するとされているのです。 また、喫煙は発症後の病状悪化や治療効果の低下とも関連します。 禁煙すればリスクを低下させる効果が期待できるため、予防や症状管理の観点からも有効です。 喫煙が関節リウマチに与える影響については、以下の記事でも詳しく解説しています。 関節リウマチの診断基準 関節リウマチの診断には、米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)が2010年に策定した分類基準が用いられます。(文献2) 診断は以下の表のように臨床所見と血液検査、症状の持続期間を点数化し、合計6点以上で関節リウマチと診断されます。 項目 内容 点数 関節の腫脹 1関節〜10関節以上で加点 0〜5 血清学検査 RFや抗CCP抗体の有無・値 0〜3 炎症反応 CRPや赤沈(ESR)の異常 0〜1 症状の持続期間 6週間以上で加点 0〜1 ただし、上記の診断基準は、あくまで早期から治療を開始するための目安であり、必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありません。 実際には、医師による総合的な判断によって診断されます。 関節リウマチの検査 関節リウマチの検査では、症状の確認に加えて複数の検査を組み合わせます。(文献1) 早期発見・治療のためには、血液検査や画像検査などを総合的に評価することが重要であるのが理由です。 ここでは、関節リウマチのおもな検査方法を紹介します。 血液検査 血液検査は、炎症の有無や自己抗体の存在を調べるために行われます。 代表的な検査項目は以下の通りです。 検査項目 目的 リウマトイド因子 自己抗体の値を確認するため 抗CCP抗体 免疫異常の有無をチェックするため CRP(C反応性タンパク) 関節リウマチによる関節炎の度合いを確認するため 赤沈 慢性炎症の有無を評価するため 以下の記事では、関節リウマチにおける血液検査の種類や数値について医師が詳しく解説しています。 尿検査 尿検査は関節リウマチそのものの診断よりも、病気や治療による腎機能への影響を確認する目的で行われ、蛋白尿や潜血の有無を調べて腎臓の健康状態を評価します。 とくに、抗リウマチ薬や生物学的製剤を使用している場合は、副作用の早期発見に有用です。 画像検査 画像検査は、関節や骨の状態を直接評価する方法です。 X線やCT検査は、おもに治療開始後の関節破壊を評価するために行われます。 MRIは、より早期の炎症や骨の損傷を捉えられるのに役立ち、超音波検査は滑膜の炎症や関節液の貯留をリアルタイムで観察可能です。 上記のさまざまな画像検査の組み合わせにより、発症初期から進行度までを的確に把握し、治療方針を決定します。 関節リウマチの治療 関節リウマチの治療は、日常生活の質を維持しながら関節の破壊を防ぐことが主な目的です。薬による治療が中心ですが、生活習慣の改善や自然療法、さらには再生医療まで選択肢は広がっています。 ここでは、「薬物療法」「自然療法」「再生医療」について見ていきましょう。 薬物療法 関節リウマチの治療は、炎症を抑えて関節破壊を防ぐのが目的であり、薬物療法が基本です。 以下のような薬を用います。 抗リウマチ薬:免疫の異常を根本的に抑える 非ステロイド性抗炎症薬:炎症や痛みを軽減する 副腎皮質ステロイド:急性期の症状緩和に用いる また、近年は生物学的製剤やJAK阻害薬など、特定の炎症物質に作用する治療薬も選択肢となっています。 関節機能を長く保つには、これらの薬を症状や進行度に応じて組み合わせ、早期に治療を開始することが必須です。 関節リウマチの薬については、以下の記事でも取り上げています。 「薬を飲まないとどうなのか」なども詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。 自然療法 関節リウマチの治療には、以下の3つの方法による自然療法もあります。 方法 内容 炎症コントロール 抗炎症食材(青魚、野菜など)を積極摂取し、炎症を悪化させる赤身肉、加工食品は控える 腸内環境の改善 免疫細胞の約7割が集まる腸を整えることで、免疫システム全体の正常化を図る。プロバイオティクスや消化酵素の補充が有効。 免疫システムの調整 ホルモンバランスの調整、デトックス、薬用キノコ(椎茸など)による免疫バランスの正常化を行う。 これらのアプローチは数ヶ月単位の継続が必要ですが、体質改善を目指せます。 再生医療 再生医療では、患者様自身の幹細胞や血液を利用する治療法です。 治療法 内容 幹細胞治療 患者様から幹細胞を採取・培養して患部に投与 幹細胞が他の細胞に変化する「分化能」という能力を活用する治療 PRP療法 患者様の血液から血小板を濃縮した液体を作製して患部に投与 血小板に含まれる成長因子が炎症を抑える働きを活用する治療 PRP療法は炎症に対するアプローチであり、根本的な原因に対する治療ではないという点には注意が必要です。 以下では関節リウマチに対する再生医療について紹介しています。あわせてご覧ください。 関節リウマチのしてはいけない10項目 関節リウマチでは、日常生活での工夫が症状の悪化や関節破壊の進行を防ぐうえで重要です。 とくに以下に挙げた10項目は、関節に負担をかけたり、炎症を悪化させたりする可能性があります。 1.激しい運動を避ける 2.関節を冷やさない 3.和式トイレを使わない 4.高さのある枕を使用しない 5.体重増加に気を付ける 6.正座しない 7.重い物を持たない 8.ストレスを溜めない 9.喫煙しない 10.加工食品の摂取を控える 激しい運動や重い物を持つ動作は、関節に大きな負担をかけます。 また、冷えや過剰な体重は炎症を悪化させる要因となるため、十分に注意しなければなりません。 日々の生活習慣においては喫煙や加工食品の摂取を避け、ストレスをためないように心がけることも大切です。 避けるべき生活習慣を見直すことは、結果的に炎症や関節破壊の進行を抑え、日常生活の質を維持しやすくなります。 とくに症状が不安定な時期は、無理をせず関節をいたわる生活を心がけましょう。 関節リウマチのしてはいけない生活習慣については、以下の記事でも詳しく解説しています。 より理解を深めたい方はチェックしてみてください。 まとめ|関節リウマチは早期に対処しよう 関節リウマチは自己免疫の異常で関節に炎症が起こり、進行すると関節破壊や変形を引き起こします。 しかし、早期診断と適切な治療により、症状の改善や進行抑制を目指すことも可能です。 指や手首のこわばり、腫れが続く場合には放置せず、速やかに医療機関を受診しましょう。 また、関節の機能を守るための生活習慣の見直しも欠かせません。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。 再生医療についての疑問や気になる症状があれば、以下のLINEボタンからお気軽にお問い合わせください。 関節リウマチに関するよくある質問 何科を受診すれば良いですか? 関節リウマチが疑われる場合は、専門的に診療できるリウマチ科を受診しましょう。 また、整形外科や内科から専門医を紹介してもらう方法もあります。 関節リウマチに市販薬はありますか? 薬局では痛み止めを購入できますが、長期的な症状緩和を目的に市販薬を使い続けることは避けてください。 かえって症状を悪化させる恐れもあるため、必ず医師の診断と治療を受けましょう。 関節リウマチは発熱しますか? 関節リウマチでは、炎症の影響で微熱や発熱を伴う場合があります。 発熱が続くなら感染症の可能性も考慮し、早めに受診し医師の診断を受けましょう。 参考文献 (文献1) 関節リウマチ|大正製薬 (文献2) 関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)|慶應義塾大学病院 健康情報ひろば・KOMPAS
2025.08.31 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「圧迫骨折が治ったあとに痛みが取れないのはなぜ?」 「痛みが取れないのはどんな後遺症?」 結論、胸椎や腰椎などの圧迫骨折では、痛みの慢性化やしびれなどの神経症状が後遺症として発生することがあります。 その原因はさまざまなので、原因に応じた治療を行うことが重要です。 本記事では、圧迫骨折の後遺症による痛みの原因について詳しく解説します。 痛みの原因とその治療方法を理解するために役立ててください。 また、圧迫骨折の痛みに関するお悩みを今すぐ解消したい方は、再生医療による治療も選択肢の一つです。 \骨折の後遺症に有効な再生医療とは/ 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、圧迫骨折の長引く痛みや後遺症にも改善が期待できます。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 3ヶ月以上続く圧迫骨折の痛みを早く治したい 痛みだけでなく、しびれや脱力感がある 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 再生医療は、圧迫骨折の長引く痛みだけでなく、後遺症による神経症状(しびれなど)にも有効です。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは圧迫骨折の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 圧迫骨折の後遺症による痛みについて 圧迫骨折が治っても、後遺症として痛みが現れることがあります。(文献1)後遺症として痛みが現れる原因は、円背(えんぱい:背中が丸くなる)や偽関節(ぎかんせつ:骨がくっついていない状態)など、人によりさまざまです。 痛みが続くと、家事や社会活動、娯楽などあらゆる日常生活の動作の妨げになります。その結果、身体機能だけでなく、生活の質まで低下してしまいます。こうした悪化を防ぐためにも、痛みの原因に応じた適切な治療を行うことが大切です。 圧迫骨折後に痛みが取れない5つの原因 圧迫骨折後に痛みが取れない主な5つの原因は以下の通りです。 円背が起きている 骨が正常にくっついていない 筋肉が硬くなっている 痛み信号が誤って脳に送られている ストレスや不安を感じている それぞれの詳細を解説します。 1.円背が起きている 圧迫骨折が起きると、椎体(ついたい:背骨を構成する円柱の骨のこと)が潰れて円背になってしまうことがあります。円背は重症になると、神経が圧迫されて以下のような症状が現れます。 下肢の痛み しびれ 筋力の低下 尿失禁 歩行障害 骨粗鬆症による椎体圧迫骨折が原因の円背は、胃や食道の逆流現象や膀胱直腸障害(排尿や排便のコントロールが難しくなる状態)などを引き起こすことがあります。(文献2)これらの症状は、日常生活の動作を低下させる大きな要因になってしまいます。 2.骨が正常にくっついていない 圧迫骨折後に、骨癒合(こつゆごう:骨がくっつくこと)が得られず、偽関節という状態になることがあります。とくに高齢者は偽関節になりやすい傾向です。(文献4)圧迫骨折において、偽関節の状態になってしまうと以下のような症状が現れます。 慢性的な痛み 下肢の麻痺 歩行障害 偽関節のままリハビリテーションをしてしまうと、かえって運動能力が低下する恐れがあるため推奨できません。リハビリテーションの前に適切な治療を受けることが大切です。 3.筋肉が硬くなっている 圧迫骨折では、長期間の安静による動きの制限や痛みによる不自然な姿勢によって筋肉が硬直し、痛みが長引くことがあります。(文献1)筋肉が硬くなると、関節の可動域も制限されてしまいます。その結果、日常生活の動作に悪影響を及ぼします。 4.痛み信号が誤って脳に送られている 圧迫骨折が治ったあとも、中枢神経(脳から全身に指令を送る神経)が痛みの信号を誤って送り続けてしまうことがあります。(文献1)また、骨折中に大量の痛み信号を送り続けていた結果、痛みに対して、過敏になっている場合もあります。 このような痛みは、神経痛と呼ばれ、痛み止めなどが効きづらいのが特徴です。神経痛は早期から治療を始めると、多くの場合は予防できるとされています。 「骨折の治癒後1カ月以上痛みが続いている」「痛みの種類が変わってきた」という場合は、神経痛を疑い一度医師に相談しましょう。 5.ストレスや不安を感じている ストレスや不安、抑うつなど心理的な要因により痛みが長引くこともあります。(文献1)そもそも骨折による痛みそのものがストレスを増大させるため、適切な痛みの管理が必要です。 また、圧迫骨折を含む外傷の痛みによるストレスは、以下のようなさまざまな有害事象を引き起こすリスクもあります。 血圧上昇 不整脈 高血糖 免疫機能の低下 消化器機能の低下 治療中の痛みのケアはもちろん、不安や抑うつ気分を解消して、ストレスの軽減を図る必要があります。 圧迫骨折の後遺症の痛みに対する治療方法 圧迫骨折の後遺症の痛みに対しては、原因に応じた治療を行わなければなりません。 ここからは、圧迫骨折の後遺症の痛みに対する治療方法を原因別で解説します。 円背の場合 円背がある場合は、保存療法と手術療法が検討されます。 保存療法の内容は、痛み止めの処方やコルセットによる矯正、リハビリテーションなどです。 リハビリテーションでは、腹部をへこませて体幹を鍛えるドローインなどの体幹トレーニングを行います。ドローインは、腰回りの筋肉を鍛えて体幹を安定させることで、腰の痛みの改善が期待できます。 下肢の痛みやしびれなどの神経症状が現れている場合は、手術を検討しなければなりません。(文献3) 円背の状況に沿った手術が検討されますが、代表的な方法は以下の通りです。 手術方法 詳細 椎体形成術 潰れてしまった椎体に風船を入れて膨らませる。風船を取り出して空いたスペースにセメントを入れて椎体を形成する。 後方・後側方固定術 スクリューを用いて脊椎を安定させる方法。椎体形成術のみでは、固定が弱い場合または骨が脆弱である場合に行われる。 また、円背の神経圧迫による痛みには、先端医療である再生医療による治療も選択肢の一つです。 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、長引く痛みや神経損傷の後遺症にも改善が期待できます。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 長引く圧迫骨折の痛みを早く治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは圧迫骨折の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 偽関節の場合 偽関節の場合も保存療法や手術療法が検討されます。偽関節に対する保存療法は、偽関節の周囲に仮骨ができるまで、長期間硬いコルセットを装着する方法です。そのため、患者様は長期間の辛抱強い協力が不可欠です。 手術においては、円背と同様に椎体形成術が検討されます。痛みの他に遅発性麻痺(骨折後しばらくしてから現れる麻痺)が現れている場合は、セメントの代わりにハイドロキシアパタイト(骨の原料になる素材)を椎体内に入れて、さらにスクリューで固定する方法を行うこともあります。 その他 その他の痛みの原因に対しては、それぞれ以下のような治療方法を検討します。 原因 治療方法 詳細 筋肉の硬直・痛み信号の誤送信 神経ブロック注射 痛みの原因となっている周辺に局所麻酔の注射をして、痛みを緩和させる方法。一時的に痛み信号を遮断して、血流や筋肉の硬直が改善する。 ストレスや不安 薬物療法 抗うつ薬や抗てんかん薬により神経を整えることで痛みを軽減させる。 カウンセリング 感情的な側面の理解を通して痛みを軽減させる。 認知行動療法 痛みの捉え方や行動を修正して痛みを軽減させる。 まとめ|適切な治療やリハビリを受けて痛みを軽減しよう 圧迫骨折で痛みが取れない場合、円背や偽関節による後遺症として痛みが生じている可能性があります。 後遺症による痛みを改善させるには、保存療法、手術療法、ブロック注射など、痛みの原因に合わせた治療が必要です。 痛みの状況や症状をできるだけ正確に医師に伝えて、適切な治療やリハビリテーションを受けましょう。 圧迫後遺症による痛みやしびれを早く治したい方は、再生医療による治療をご検討ください。 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、圧迫骨折の長引く痛みや後遺症の改善が期待できます。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 長引く圧迫骨折の痛みを早く治したい 痛みやしびれなどの後遺症に悩まされている 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 「具体的な治療法を知りたい」「圧迫骨折の後遺症を早く治したい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。 ▼まずは圧迫骨折の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 参考文献 (文献1) 滋賀医大病院ニュースTOPICS|滋賀医科大学医学部附属病院ホームページ (文献2) 脊椎圧迫骨折は円背をもたらす|厚生労働科学研究成果データベース (文献3) 成人脊柱変形|昭和学士雑誌 (文献4) 骨粗鬆症性椎体骨折(偽関節)|福島県立医科大学
2025.07.31







