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子供の頃の水ぼうそう、覚えていますか?実は、あの時のウイルスが潜伏し、再び牙を剥くことがあるのです。それが「帯状疱疹」。50歳以上の方、免疫力が低下している方は特に注意が必要です。 放置すると、帯状疱疹後神経痛といった後遺症に悩まされることも。 この記事では、帯状疱疹の初期症状から合併症、治療法、ワクチン接種まで、徹底的に解説します。あなたの健康を守るための知識を、今ここで手に入れてください。 帯状疱疹の症状と合併症 帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされる病気です。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが神経節に潜伏し、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再び活動を始めることで発症します。体の片側に現れるピリピリとした痛みと、特徴的な赤い発疹を伴う病気で、体のどこにでも発症する可能性があります。 帯状疱疹の症状を理解することは、早期発見・早期治療につながり、後遺症のリスクを減らすことにもつながります。 帯状疱疹の初期症状:ピリピリとした痛みやかゆみ 帯状疱疹の初期症状で一番多いのは、皮膚のピリピリとした痛みやかゆみです。まるで虫が這っているような、針で刺されたような、ヒリヒリするような感覚など、様々です。時には何も触れていないのに、服が擦れるだけでも痛いと感じることもあります。この痛みやかゆみは、再活性化した帯状疱疹ウイルスが神経に沿って広がることで起こります。ほとんどの場合、片方だけに現れ、左右対称になることはありません。 初期症状は風邪とよく似ていて、発熱や頭痛、倦怠感などを伴うこともあります。そのため、風邪と間違えてしまい、適切な治療が遅れてしまうケースも見られます。 帯状疱疹の特徴的な赤い発疹と水ぶくれ 初期症状の後、数日たつと、赤い発疹が現れます。この発疹は、帯状疱疹の最も特徴的な症状の一つです。赤い発疹は次第に水ぶくれへと変化し、最終的にはかさぶたになって治っていきます。水ぶくれの中にはウイルスが含まれており、破れるとウイルスが拡散し、他の人に水ぼうそうをうつしてしまう可能性があります。ただし、帯状疱疹自体は他の人にうつることはありません。 水痘・帯状疱疹ウイルスは神経に沿って広がるため、発疹も神経に沿って帯状に分布することが多く、これが「帯状疱疹」の名前の由来となっています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 帯状疱疹の痛み:部位や程度、持続期間 帯状疱疹の痛みは、人によって部位や程度、持続期間が大きく異なります。チクチクする軽い痛みから、焼けるような激痛まで、本当に様々です。痛みの程度は、神経へのダメージの大きさや、個人の痛みの感じ方の違いによって変わってきます。 痛みが続く期間も数週間から数ヶ月、場合によっては数年続くこともあります。 帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹のつらい後遺症 帯状疱疹の症状が治まった後も、痛みが続くことがあります。これが「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる後遺症です。これは、帯状疱疹ウイルスによって神経がダメージを受けたことが原因で起こります。帯状疱疹後神経痛の痛みは、非常に強く、日常生活に大きな影響を与えてしまうこともあります。服を着ることさえも苦痛に感じたり、夜も眠れないほどの痛みを感じる人もいます。 特に高齢者や免疫力が低下している人は、帯状疱疹後神経痛を発症するリスクが高いと言われています。高齢、ストレス、他の感染症、免疫抑制が主なリスク要因となります。最近の研究では、COVID-19ワクチン接種後にも帯状疱疹の再活性化が観察されているという報告もあります。 その他の合併症:髄膜炎、脳神経麻痺など 帯状疱疹は、皮膚の症状だけでなく、様々な合併症を引き起こす可能性があります。まれに、髄膜炎(脳と脊髄を覆う膜の炎症)や脳神経麻痺(脳神経の機能障害)、 Ramsay Hunt症候群(顔面神経麻痺)や眼の合併症、血管炎、腎臓や消化器系の合併症などの重篤な合併症が起こることがあります。 顔面に帯状疱疹が出た場合は、視力や聴力に影響が出る可能性もあるため、注意が必要です。 帯状疱疹の治療と予防 帯状疱疹は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。体の片側に現れるピリピリとした痛み、赤い発疹、水ぶくれなどの症状が現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう。 抗ウイルス薬による治療:アシクロビル、バラシクロビルなど 帯状疱疹の治療では、抗ウイルス薬が第一選択となります。ウイルスを直接攻撃し、その増殖を抑えることで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進します。抗ウイルス薬は、発疹出現後72時間以内に服用を開始するのが最も効果的です。具体的には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどがよく用いられます。 これらの薬剤は、ウイルスのDNAポリメラーゼという酵素の働きを阻害することで、ウイルスの複製を抑制します。これにより、ウイルスの増殖を抑え、症状の進行を食い止めます。処方された抗ウイルス薬は、指示された用法・用量を厳守し、最後まで飲み切ることが重要です。自己判断で中断すると、症状が再発したり、ウイルスが耐性を持つ可能性があります。 医師の指示に従わずに服薬を中断すると、治療効果が十分に得られないばかりか、薬剤耐性ウイルスの出現を招き、再発時の治療が困難になる可能性があります。 痛み止め:鎮痛薬や神経ブロック注射 帯状疱疹に伴う痛みは、患者さんにとって大きな負担となります。場合によっては非常に強い痛みを感じることもあります。 日常生活に支障が出るほどの痛みには、鎮痛薬の使用を検討します。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの市販薬で対応できることもありますが、痛みが強い場合は、医療機関を受診し、より強力な鎮痛薬を処方してもらう必要があるかもしれません。 ▼痛み止めについて、併せてお読みください。 [blogcardurl="https://fuelcells.org/topics/41471/"] 神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経に直接局所麻酔薬やステロイド薬を注射する治療法です。神経の興奮を抑え、痛みを緩和する効果が期待できます。痛みが特定の部位に限局している場合や、他の治療法で効果が不十分な場合に有効です。 神経ブロック注射は即効性がありますが、効果の持続期間は個人差があります。場合によっては、複数回の注射が必要となることもあります。 家庭でのケア:患部の清潔を保つ、刺激を避ける 薬物療法に加えて、家庭でのケアも重要です。適切なケアを行うことで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進することができます。患部は清潔に保ち、刺激を避けるように心がけましょう。 患部の清潔:シャワーや入浴時に、患部を清潔な石鹸と水で優しく洗いましょう。ゴシゴシこすったり、タオルで強く拭いたりすると、皮膚が傷つき、症状が悪化する可能性があります。 刺激の回避:患部に衣服が擦れたり、刺激の強い石鹸や化粧品を使用したりするのは避けましょう。また、患部にテープを貼る際は、皮膚への負担が少ないものを選び、剥がす際にはゆっくりと丁寧に行うようにしてください。 患部を冷やすと、痛みやかゆみが和らぐことがあります。清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷嚢を患部に当てて、1回15分程度、1日に数回冷やすのが効果的です。 帯状疱疹ワクチン:種類、効果、費用、副反応 帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)によって引き起こされます。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、体内の神経に潜伏し、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発症します。帯状疱疹ワクチンは、このウイルスの再活性化を抑えることで、帯状疱疹の発症リスクを低減します。 現在、日本では不活化ワクチンである組換え帯状疱疹ワクチンが使用されています。2回の接種が必要で、2回目は1回目の接種から2~6ヶ月後に接種します。 帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹の発症を完全に予防できるわけではありませんが、発症リスクを有意に減少させる効果が確認されています。また、発症した場合でも、症状を軽くしたり、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを低減したりする効果も期待できます。 副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫れなどがみられることがありますが、通常は数日で軽快します。 ワクチン接種の推奨年齢とタイミング 帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の方、または免疫機能が低下している19歳以上の方への接種が推奨されています。特に高齢者や免疫力が低下している方は、帯状疱疹を発症するリスクが高いため、ワクチン接種を検討することが重要です。 スペインでは、生ワクチンと組換えワクチンの2種類のワクチンが使用されています。組換えワクチンは免疫不全の方にも接種可能です。ただし、ワクチンの適応や公的支援については地域差があるため、詳細はお住まいの自治体にお問い合わせください。 帯状疱疹に関するよくある質問 帯状疱疹は、誰しもが経験する可能性のあるありふれた病気です。適切な治療を受ければ多くの場合、治すことができますが、放置すると後遺症として神経痛が残る場合があります。そのため、少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することをお勧めします。 帯状疱疹は人にうつる?感染経路と注意点 帯状疱疹自体は、他の人にうつる病気ではありません。しかし、帯状疱疹の原因となるウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は、水ぼうそうを引き起こすウイルスと同じです。そのため、帯状疱疹の赤い水ぶくれの中には、水ぼうそうのウイルスが含まれています。 帯状疱疹を発症している人と接触し、この水ぶくれが破れてウイルスが皮膚に直接触れることで、水ぼうそうにかかったことのない人が水ぼうそうに感染する可能性があります。 特に、妊娠中の女性や免疫力が低下している人は、水ぼうそうに感染すると重症化のリスクがあるため、十分な注意が必要です。帯状疱疹を発症している場合は、水ぶくれを触らない、清潔を保つ、水ぼうそうにかかったことのない人や抵抗力が弱い方との接触を控えるなど、周囲への配慮を心がけましょう。 帯状疱疹になったら仕事や学校はどうする? 帯状疱疹になったら、症状の程度に合わせて、仕事や学校を休むかどうかを判断する必要があります。発熱や痛みが強い場合は、安静にして休養することが重要です。皮膚症状が強い場合も、周囲に水ぼうそうをうつしてしまうリスクを減らすため、症状が落ち着くまで仕事や学校を休むことが望ましいでしょう。 仕事や学校を休む期間は、症状の程度や回復状況によって異なります。医師と相談し、適切な期間を決めるようにしましょう。 帯状疱疹の再発は予防できる? 帯状疱疹は、一度かかると再発する可能性がある病気です。特に、加齢や免疫力の低下、過労やストレスなどが再発の要因となることがあります。VZVは、非常に効果的なワクチンが利用可能な唯一の人間ヘルペスウイルスであると報告されていますが、水痘ワクチンを接種していたとしても、帯状疱疹を発症する可能性はあります。 帯状疱疹の再発を予防するためには、健康的な生活習慣を心がけ、免疫力を高めることが大切です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスをため込まないようにしましょう。規則正しい生活とストレス軽減は、免疫機能の維持に役立ちます。 帯状疱疹の治療にかかる費用は?保険適用について 帯状疱疹の治療は健康保険が適用されます。費用は医療機関や治療内容、受診回数によって異なりますが、初診料、再診料、検査費用、薬剤費用などが含まれます。自己負担額は、加入している保険の種類や年齢によって異なります。3割負担の場合は、医療費の3割を自己負担することになります。 高額療養費制度を利用できる場合もあります。医療費の負担が心配な場合は、医療機関の窓口に相談してみましょう。 帯状疱疹の専門医はどこで探せる? 帯状疱疹の専門医は、皮膚科、ペインクリニックなどで探すことができます。日本皮膚科学会のウェブサイトなどで、専門医を検索することも可能です。「帯状疱疹 専門医」などのキーワードでインターネット検索することでも、情報を得ることができます。 かかりつけ医がいる場合は、かかりつけ医に相談して、専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Molero García JM, Moreno Guillén S, Rodríguez-Artalejo FJ, Ruiz-Galiana J, Cantón R, De Lucas Ramos P, García-Botella A, García-Lledó A, Hernández-Sampelayo T, Gómez-Pavón J, González Del Castillo J, Martín-Delgado MC, Martín Sánchez FJ, Martínez-Sellés M and Bouza E. "Status of Herpes Zoster and Herpes Zoster Vaccines in 2023: A position paper." Revista espanola de quimioterapia : publicacion oficial de la Sociedad Espanola de Quimioterapia 36, no. 3 (2023): 223-235. Gershon AA, Breuer J, Cohen JI, Cohrs RJ, Gershon MD, Gilden D, Grose C, Hambleton S, Kennedy PG, Oxman MN, Seward JF and Yamanishi K. "Varicella zoster virus infection." Nature reviews. Disease primers 1, no. (2015): 15016. Patil A, Goldust M and Wollina U. "Herpes zoster: A Review of Clinical Manifestations and Management." Viruses 14, no. 2 (2022): .
2025.02.12 -
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健康診断での血圧測定、気にしていますか? 実は、高血圧は自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる病気を引き起こす可能性がある“サイレントキラー”なのです。 日本高血圧学会によると、家庭血圧の正常値は115/75mmHg以下。あなたは大丈夫ですか? 年齢や生活習慣によって正常値は変化し、20歳から80歳までの平均家庭血圧は、上の数値(収縮期血圧)で115.9mmHg~133.9mmHg、下の数値(拡張期血圧)で68.1mmHg~74.5mmHgと幅があります。 この記事では、高血圧・低血圧それぞれの症状や合併症、家庭での血圧管理、最新のデバイス情報まで網羅的に解説! 知っておくだけで日々の健康管理に役立つ知識が満載です。 さあ、一緒に健康寿命を延ばすための第一歩を踏み出しましょう。 血圧の正常値とは? 健康診断で必ず測る血圧。普段は意識しないかもしれませんが、実は全身状態を反映する重要な指標です。高血圧は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こす危険因子となります。 「自分はまだ若いから大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。しかし、新生児でさえ、出生体重や在胎週数によって血圧は異なるように、年齢や身体の状態によって「正常」の範囲は変化します。若くても血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 血圧の正常値の範囲(日本高血圧学会の基準値) 血圧の正常値は、家庭で測る「家庭血圧」と病院で測る「診察室血圧」で基準が異なります。日本高血圧学会では、家庭血圧で115/75mmHg以下、診察室血圧で120/80mmHg以下を正常血圧としています。 血圧の種類 正常値 家庭血圧 115/75mmHg以下 診察室血圧 120/80mmHg以下 「正常高値血圧」や「高値血圧」にも注意が必要です。家庭血圧で115/75mmHg~135/85mmHg、診察室血圧で120/80mmHg~140/90mmHgの場合は、将来的に高血圧へと進行するリスクが高いため、早めの生活習慣の見直しが重要です。 スペインの診療ガイドラインでは、診察室血圧140/90mmHg以上を高血圧と定義し、家庭血圧測定の重要性を強調しています。家庭でリラックスした状態で血圧を測ることで、より正確な状態を把握できるからです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 年齢による血圧変化と正常値の目安 血圧は年齢とともに変化します。血管の老化などにより、年齢を重ねるごとに上昇する傾向があります。 20歳から80歳までの平均的な家庭血圧は、収縮期血圧(上の数値)が115.9mmHg~133.9mmHg、拡張期血圧(下の数値)が68.1mmHg~74.5mmHgです。 しかし、これはあくまでも平均値です。一人ひとりの体質や生活習慣によって、血圧値は大きく変わります。年齢を重ねるごとに血管は変化していくため、定期的な血圧測定と適切な管理が重要となります。 家庭血圧と診察室血圧の違い 家庭血圧は、自宅でリラックスした状態で測る血圧です。一方、診察室血圧は病院という非日常的な環境で、医師を前にした緊張から高めに出やすい傾向があります。これは「白衣高血圧」と呼ばれ、家庭血圧との差が大きい場合は、家庭血圧を基準に治療方針を決定することが多いです。 家庭血圧は、日々の血圧の状態をより正確に反映していると考えられています。多くの研究で、家庭血圧の方が診察室血圧よりも心血管疾患のリスク予測に優れていることが示されています。だからこそ、家庭での血圧測定が重要視されているのです。 測定時間帯による血圧の変化 血圧は一日の中でも常に変動しています。朝起きた直後や、運動後、食後などは一時的に上昇します。また、精神的なストレスによっても変化します。 日本高血圧学会は、起床後1時間以内と就寝前の毎日同じ時間帯に、朝食や服薬の前に血圧を測ることを推奨しています。毎日同じ時間に測定することで、血圧の変化をより正確に捉えることができるからです。 血圧の測り方:家庭での正しい測定方法 家庭で血圧を測る際は、正しい測定方法を守ることが重要です。 測定前に5分程度、椅子に座ってリラックスしましょう。トイレも済ませておきましょう。 カフ(腕に巻く帯状のもの)は心臓と同じ高さに巻き、肘の内側に指が1~2本入る程度のゆとりを持たせます。 測定中は、腕を机の上に置いて支え、話したり体を動かしたりしないようにしましょう。 1~2分間隔で2~3回測定し、平均値を記録しましょう。 正しい測定方法で得られた数値を記録することで、ご自身の血圧の状態を正しく把握し、適切な対応につなげることができます。 血圧が高い/低いとどうなる? 血圧は、健康のバロメーターとも言える重要な数値です。健康診断でチェックされる項目の一つですが、皆さんは自分の血圧をきちんと把握していますか? 「まだ若いから大丈夫」「自覚症状がないから心配ない」と考えている方もいるかもしれません。しかし、血圧の異常は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、命に関わる病気を引き起こす可能性があるのです。 高血圧も低血圧も、放置すると様々なリスクを伴います。 ここでは、高血圧と低血圧それぞれの場合に起こりうる症状や合併症、そして緊急時の対応について詳しく解説します。ご自身の血圧の状態を理解し、健康管理に役立てていただければ幸いです。 高血圧の症状と合併症(脳卒中、心臓病、腎臓病など) 高血圧は、まさに「サイレントキラー」です。初期段階ではほとんど自覚症状がないため、気づかないうちに血管に負担がかかり続け、動脈硬化を進行させます。そして、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった生命に関わる病気を引き起こす危険因子となるのです。 2017年に発表された小児・青年期高血圧症のスクリーニングと管理に関する臨床診療ガイドラインでは、高血圧は深刻な合併症のリスクを高めることが示されています。 高血圧の合併症を具体的に見ていきましょう。 高血圧が引き起こす可能性のある合併症は多岐に渡ります。例えば、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中、心臓の血管が狭くなったり詰まったりする心臓病(狭心症、心筋梗塞)、腎臓の機能が低下する腎臓病、さらには大動脈が裂ける大動脈解離など、命に関わる深刻な病気が含まれます。 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで、半身まひや言語障害などの後遺症を残す可能性があります。 心筋梗塞は、心臓の血管が詰まることで心臓の筋肉が壊死し、突然死のリスクも高い危険な病気です。 腎臓病は、腎臓の機能が低下することで、最終的には人工透析が必要になることもあります。 大動脈解離は、大動脈の壁が裂ける病気で、突然の激しい胸や背中の痛みが特徴です。迅速な治療が必要で、放置すると命に関わる危険性があります。 若いうちから血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 ▼脳卒中の後遺症について、併せてお読みください。 低血圧の症状と原因 低血圧は、高血圧とは異なり、比較的自覚症状が現れやすい傾向があります。代表的な症状としては、立ちくらみ、めまい、ふらつき、倦怠感、頭痛、吐き気などがあります。これらの症状は、脳への血流が一時的に不足することで起こります。 低血圧の原因は多岐に渡ります。体内の水分量が不足する脱水症状、血液中の赤血球が減少する貧血、自律神経のバランスが乱れる自律神経失調症、心臓の機能が低下する心臓疾患など、様々な原因が考えられます。また、特定の薬の副作用として低血圧が起こることもあります。 緊急性の高い血圧の数値と対応 家庭で血圧を測定した際に、上の数値(収縮期血圧)が180mmHg以上、または下の数値(拡張期血圧)が110mmHg以上の場合、緊急性が高い状態と判断されます。このような数値が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。 特に、激しい頭痛やめまい、吐き気、胸の痛み、呼吸困難、ろれつが回らない、意識がもうろうとするなどの症状がある場合は、一刻を争う事態です。迷わず救急車を呼ぶようにしましょう。 血圧の変動に影響する要因(ストレス、睡眠、飲酒、喫煙など) 血圧は、様々な要因によって変動します。日常生活におけるストレス、睡眠不足、過剰な飲酒、喫煙などは、血圧を上昇させる要因となります。また、食生活においては、塩分の過剰摂取や肥満も血圧上昇に繋がります。 ストレスは交感神経を刺激し、血管を収縮させることで血圧を上昇させます。睡眠不足も自律神経のバランスを崩し、血圧上昇を招きます。アルコールは、少量であれば血管を拡張させて一時的に血圧を下げますが、大量に摂取すると逆に血圧を上昇させる可能性があります。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を促進することで、将来的に高血圧のリスクを高めます。 血圧と他の病気との関係 高血圧は、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの生活習慣病との関連が深く、これらの病気を合併している人は高血圧になりやすい傾向があります。反対に、高血圧はこれらの病気を悪化させる要因にもなります。2019年に発表された難治性高血圧のガイドラインでも、適切な血圧管理の重要性が強調されており、薬物療法をきちんと行うこと(服薬アドヒアランス)、家庭血圧のモニタリングによる血圧コントロールの重要性についても言及されています. 高血圧は単独で発症するだけでなく、他の生活習慣病と密接に関連していることを理解しておく必要があります。生活習慣病は、互いに影響し合い、悪化させる可能性があるため、総合的な健康管理が重要です。 血圧を正常に保つための生活習慣 血圧のコントロールは、健康な毎日を送る上で欠かせません。血圧計の数値が気になって病院を受診した方、健康診断で血圧が高いと指摘された方、または、ご家族に血圧が高めの方がいて心配な方など、様々な方がいらっしゃると思います。 若いうちは血圧を気にしない方も多いでしょう。しかし、高血圧は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすことがあります。まさに「サイレントキラー」です。 血圧管理は、年齢に関係なく重要です。新生児でさえ、出生体重や在胎週数によって血圧が異なるように、年齢や身体の状態によって「正常」の範囲は変化します。若いうちから血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 この章では、血圧を正常な範囲に保つため、今日からすぐに始められる生活習慣の改善について、具体的に説明します。小さな積み重ねが、大きな成果につながります。一緒に、健康な未来を目指しましょう。 食事療法:高血圧/低血圧に良い/悪い食べ物 食事は、血圧コントロールに直結する重要な要素です。特に、塩分の摂りすぎは高血圧の大きな原因となります。厚生労働省は1日あたりの塩分摂取量の目標値を男性7.5g未満、女性7.0g未満に設定しています。 高血圧の方は、カリウムを多く含む食品を積極的に摂りましょう。カリウムには、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。例えば、ほうれん草、小松菜、かぼちゃなどの緑黄色野菜、バナナ、キウイ、みかんなどの果物がおすすめです。 反対に、塩分の多い加工食品(ハム、ソーセージ、ベーコン、インスタントラーメンなど)、漬物などは控えましょう。 食品群 よい食べ物 控えるべき食べ物 野菜 ほうれん草、小松菜、かぼちゃ、ブロッコリー、アスパラガスなど 漬物、塩蔵野菜、梅干しなど 果物 バナナ、キウイ、みかん、りんご、ぶどうなど – 肉・魚 鶏ささみ、鮭、たら、まぐろ(赤身)、いわしなど ベーコン、ハム、ソーセージなどの加工肉 乳製品 牛乳、ヨーグルト、チーズなど – 主食 玄米、全粒粉パン、そばなど 塩分の多いインスタント食品など 低血圧の方は、バランスの取れた食事を心がけ、適度に塩分を摂ることも必要です。貧血気味の場合は、鉄分やビタミンB12を多く含むレバー、赤身の肉、魚介類なども意識して摂りましょう。 運動療法:効果的な運動の種類と強度 適度な運動は、血圧を下げる効果があり、心血管疾患のリスクを低減します。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、1回30分程度、週に3~5回行うのが理想的です。 運動強度は、「少し息が弾む程度」を目安にしましょう。無理なく続けられることが大切です。激しい運動は逆効果になることもあるため、自分の体力に合った運動を選び、継続することが重要です。 ストレスマネジメント:具体的な方法 ストレスは、交感神経を刺激し血管を収縮させることで、血圧を上昇させる要因の一つです。日常生活でストレスをため込まない工夫をしましょう。 趣味の時間を作る: 好きなことに没頭することで、ストレスを発散できます。絵を描く、音楽を聴く、スポーツをするなど、自分が楽しめる活動を見つけましょう。 休息時間を確保する: 十分な睡眠時間を取り、心身を休ませましょう。睡眠不足はストレスを悪化させる要因となります。 リラックスできる時間を持つ: アロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたり、読書をしたり、ゆったりとした時間を取り入れるのも効果的です。 呼吸法を取り入れる: 深い呼吸は、副交感神経を優位にしてリラックス効果を高めます。腹式呼吸を意識的に行う練習も有効です。 瞑想やヨガ: これらは心身の緊張を解き放ち、ストレス軽減に効果的です。初心者向けのクラスやオンライン動画なども活用できます。 睡眠の質の改善:睡眠時間と睡眠環境 睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、血圧上昇のリスクを高めます。質の良い睡眠を確保するために、以下の点に気をつけましょう。 規則正しい睡眠習慣: 毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整えましょう。 適切な睡眠時間: 7~8時間の睡眠時間を確保するようにしましょう。個人差はありますが、睡眠時間が短すぎると、血圧にも悪影響を及ぼします。 快適な睡眠環境: 寝室の温度や湿度、照明などを調整し、リラックスできる空間を作りましょう。室温は18~20度程度、湿度は50~60%が快適です。 家庭でできる血圧管理の方法:血圧手帳/アプリの使い方 家庭で血圧を測定し、記録することは、血圧管理に非常に役立ちます。血圧手帳やアプリを使って、毎日の血圧の変化を把握しましょう。血圧は常に変動するため、家庭での継続的な測定が重要です。診察室血圧は一時的な値でしかないため、家庭血圧を記録することで、より正確な状態を把握できます。 記録することで、生活習慣の改善効果を確認したり、医師に適切な治療方針を立ててもらったりする際に役立ちます。スマートウォッチなど最新の血圧管理デバイスと連携させれば、データ管理も容易になります。 最新の血圧管理デバイスの情報 最近では、家庭用の血圧計だけでなく、スマートウォッチやスマートフォンと連携して血圧を測定・管理できるデバイスも登場しています。これらのデバイスは、自動的にデータを記録し、グラフ化してくれるなど、血圧管理をより簡単にしてくれる便利なツールです。自分に合ったデバイスを選び、活用することで、日々の血圧管理をスムーズに行うことができます。 まとめ この記事では、血圧の正常値について、家庭血圧と診察室血圧の違い、年齢による変化、測り方、そして高血圧・低血圧それぞれの症状と合併症、緊急時の対応、血圧に影響する要因、他の病気との関係、血圧を正常に保つための生活習慣、最新の血圧管理デバイスの情報まで幅広く解説しました。 血圧は全身状態を反映する重要な指標です。自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こす可能性があるため、日頃から血圧を意識し、家庭での血圧測定を習慣化することが大切です。 高血圧の方は、塩分を控えたバランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理、十分な睡眠を心がけ、低血圧の方は、バランスの取れた食事と適度な塩分摂取、そして貧血対策を意識しましょう。 血圧管理は、年齢に関係なく、健康な毎日を送る上で欠かせません。この記事を参考に、ご自身の血圧の状態を理解し、健康管理に役立てていただければ幸いです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Lüscher TF. "What is the optimal blood pressure? Differences between current guidelines and novel insights into kidney injury." European heart journal 40, no. 42 (2019): 3443-3446. Chernova I, Krishnan N. "Resistant Hypertension Updated Guidelines." Current cardiology reports 21, no. 10 (2019): 117. Gorostidi M, Gijón-Conde T, de la Sierra A, et al. "[2022 Practice guidelines for the management of arterial hypertension of the Spanish Society of Hypertension]." Hipertension y riesgo vascular 39, no. 4 (2022): 174-194. Flynn JT, Kaelber DC, Baker-Smith CM, et al. "Clinical Practice Guideline for Screening and Management of High Blood Pressure in Children and Adolescents." Pediatrics 140, no. 3 (2017): . "Neonatal Blood Pressure Standards: What Is 'Normal'?" Clinics in perinatology 47, no. 3 (2020): 469-485.
2025.02.10 -
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突然の頭痛、生理痛、歯痛…痛みは日常生活を大きく阻害する悩みの種です。ドラッグストアには様々な痛み止めが並び、どれを選べば良いか迷う方も多いのではないでしょうか? この記事では、ロキソニン、ボルタレン、トラムセット、カロナールなど、代表的な痛み止め薬の種類と効果を分かりやすく解説します。それぞれの薬の特徴、副作用、そしてNSAIDsやステロイド、オピオイドといった分類についても詳しく医師が解説します、 さらに、市販の痛み止め「ロキソニン」と「カロナール」の徹底比較を説明し、それぞれの特徴、効果的な症状、価格、そして副作用のリスクまで、幅広くお伝えします。 例えば、ロキソニンは、筋肉の痛みや生理痛に対してとても有効ですが、胃腸への負担が懸念されます。一方、カロナールはロキソニンに比べて副作用は弱いが、その分、効き目も弱くなります。 さらに、最新の研究結果に基づいた、2歳未満の乳幼児への服用に関する情報や、妊娠中・授乳中の方への注意点も詳しく解説。薬剤師への相談の重要性も改めて強調します。 この記事を読むことで、痛みから解放されるための知識が得られます。さあ、痛みと賢く付き合う方法を学びましょう。 痛み止めの種類とその効果、副作用 皆さんは、急な頭痛や発熱時、どの市販薬を選べば良いか迷ったことはありませんか?この章では、市販薬の選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。 ロキソニン ロキソニンは「ロキソプロフェンナトリウム水和物」という成分の鎮痛剤で、炎症を抑える作用が強い非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種です。頭痛、歯痛、生理痛、腰痛、筋肉痛、関節痛、手術後や外傷後の痛みなど、様々な痛みに効果を発揮します。 炎症とは、体を守るための反応で、発赤、腫れ、熱感、痛みなどの症状を伴います。ロキソニンは、この炎症を引き起こす物質の生成を抑えることで、痛みを和らげるのです。即効性があり、効果も比較的長く持続するのが特徴です。 市販薬としても入手できますが、胃への負担があるため、空腹時の服用は避け、食後に服用することが推奨されます。また、胃腸の弱い方や、過去に胃腸障害を起こしたことがある方は、特に注意が必要です。 ボルタレン ボルタレンは「ジクロフェナクナトリウム」という成分のNSAIDsで、ロキソニンと同様に炎症を抑える作用が強い痛み止めです。ロキソニンと同じく、様々な種類の痛みに効果があり、坐薬、テープ剤、ゲル剤など、様々な形態で利用できるのが特徴です。 例えば、炎症を起こしている関節にボルタレンのテープ剤を貼ることで、その部分に直接薬剤が浸透し、効果的に痛みや炎症を抑えることができます。また、坐薬は、飲み薬を服用できない場合や、吐き気がある場合などに有効です。 トラムセット トラムセットは「トラマドール塩酸塩」と「アセトアミノフェン」という2種類の成分を配合した痛み止めです。トラマドールは、オピオイド系鎮痛薬に分類され、脳内の痛みの伝達を抑制する作用があります。アセトアミノフェンは、解熱鎮痛作用を持つ成分で、2つの成分の相乗効果により、中等度から高度の痛みに効果を発揮します。 カロナール カロナールは「アセトアミノフェン」を主成分とする痛み止め、解熱剤です。比較的穏やかな効き目があり、子供から高齢者まで幅広く使用できます。副作用が少ないため、安全性が高いとされています。市販薬としても入手しやすく、風邪による発熱や頭痛、生理痛などの痛みによく使われています。 セレコックス セレコックスは「セレコキシブ」という成分のNSAIDsの一種です。他のNSAIDsと比べて、胃腸への負担が少ないという特徴があります。そのため、胃腸の弱い方や、他のNSAIDsで胃腸障害を起こしやすい方に向いています。 リリカ リリカは「プレガバリン」という成分の薬で、神経障害性疼痛という、神経の損傷によって起こる痛みやしびれに効果があります。帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、線維筋痛症などの治療に使用されます。 ステロイド ステロイドは、副腎皮質ホルモン剤と呼ばれる薬で、強力な抗炎症作用と免疫抑制作用があります。様々な炎症性疾患やアレルギー疾患、自己免疫疾患の治療に使用されます。 オピオイド オピオイドは、モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬の総称です。非常に強い鎮痛作用があり、がんなどの強い痛みをコントロールするために使用されます。 注意すべき副作用:アスピリン喘息について アスピリン喘息は、アスピリンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を服用することで喘息発作が誘発される特殊な病態です。この疾患は成人の喘息患者の約10%に見られ、通常は成人期に発症します。 特徴的なのは、アスピリンだけでなく、ロキソニンやボルタレンなどの一般的な痛み止めでも発作が引き起こされることです。これらの薬を服用すると、重度の喘息発作や呼吸困難に加えて、鼻水、くしゃみ、鼻づまりといった症状が現れます。また、多くの患者さんが慢性的な副鼻腔炎や鼻ポリープを合併しています。 この病気の患者さんが痛み止めを使用する必要がある場合、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノールなど)が比較的安全とされています。ただし、初めて使用する際は少量から開始し、医師に相談しながら使用することが推奨されます。 成分から分類した痛み止めの種類 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) 作用:炎症、痛み、発熱を抑制 メカニズム:プロスタグランジン生成を抑制(COX阻害) - ロキソニン(ロキソプロフェン) - ボルタレン(ジクロフェナク) - モートリン(イブプロフェン) - バファリン(アスピリン) アセトアミノフェン - 作用:主に痛みと発熱を抑制(抗炎症作用は弱い) - メカニズム:中枢神経系に作用 - 胃への負担が少なく、妊婦や小児にも使用可能 - 代表的な製品: - カロナール - タイレノール - ピリナジン イブプロフェン(NSAIDsの一種) - 作用:炎症、痛み、発熱を抑制 - メカニズム:他のNSAIDsと同様(COX阻害) - 代表的な製品: - EVE(イブ) - バファリンEX - ブルーレット ・モートリン(イブプロフェン) 主な使い分け: - 炎症を伴う痛み → NSAIDs - 発熱や軽い痛み → アセトアミノフェン - 胃が弱い人 → アセトアミノフェン - 生理痛 → イブプロフェンまたは他のNSAIDs 痛み止めランキング 数ある市販薬の中でも、ロキソニンとカロナールは特に知名度が高く、多くの方に利用されています。ここでは、痛み止めランキング上位にある、ロキソニンとカロナールの違いについて比較します。 ロキソニンとカロナールの違い ロキソニンは頭痛、歯痛、生理痛、腰痛、筋肉痛などによく服用されます。患部で炎症を引き起こす物質であるプロスタグランジンの生成を抑える効果があります。 一方、カロナール(一般名:アセトアミノフェン)は、解熱鎮痛薬として広く使用されており、脳神経に直接働きかけて炎症を止めます。ロキソニンと比較すると作用は穏やかで、小児や高齢者、妊娠中・授乳中の方にも使用できる場合があります。 2歳未満の乳幼児における発熱や疼痛の治療において、アセトアミノフェンとイブプロフェンはどちらも広く処方されていますが、最新の研究では、イブプロフェンの方が24時間以内の体温低下と疼痛軽減効果が高いという結果が出ています。ただし、安全性は両剤とも同等とされています。 薬剤名 主な作用 適した症状 注意点 ロキソニン 炎症を抑える、痛みを抑える 頭痛、生理痛、歯痛、腰痛、筋肉痛など 胃腸障害に注意、空腹時の服用は避ける カロナール 熱を下げる、痛みを抑える 熱、頭痛、歯痛など 肝臓に負担があるため、過剰摂取に注意する 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 値段比較とコストパフォーマンス ロキソニンとカロナールの価格を比較すると、一般的にロキソニンの方がややコストがかかります。販売店や容量によって異なりますが、ロキソニンは1箱12錠入りで約1,000円前後、カロナールは1箱12錠入りで約800円前後が相場です。 薬剤名 1箱(12錠)あたりの価格 コストパフォーマンス ロキソニン 約1,000円 やや低い カロナール 約800円 やや高い しかし、価格だけで判断せず、症状や体質、そして副作用のリスクも考慮して選ぶことが重要です。ロキソニンは胃腸障害のリスクがあるため、胃腸の弱い方はカロナールを選ぶ方が良い場合もあります。 薬局で購入する際のポイント 市販薬を購入する際は、自己判断せず、薬剤師に相談することを強くお勧めします。薬剤師は、あなたの症状や体質、他の薬との飲み合わせなどを考慮し、適切な薬を提案してくれます。薬の効果や副作用、服用方法など、疑問があればどんな些細なことでも相談しましょう。特に、妊娠中・授乳中の方、持病のある方、高齢の方は、注意が必要です。 急性痛の治療には、NSAIDs(ロキソニンなど)、アセトアミノフェン(カロナールなど)、メタミゾール、コルチコステロイドなど、様々な薬剤が使用されます。これらの薬剤はそれぞれ異なる作用機序と臨床応用を持ち、最新の科学的エビデンスに基づいて使用されるべきです。 例えば、グラピプラントという生薬も抗炎症作用を持つことが報告されており、NSAIDsのような副作用が少ないとされています。薬剤師や医師と相談し、ご自身の症状に最適な薬剤を選択することが重要です。 症状別のロキソニンとカロナールの効果比較 痛みは、私たちにとって非常に不快な感覚であり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。上手に痛み止めを選び、痛みをコントロールし、より快適な生活を送ることが可能になります。 ここでは市販薬として購入できるロキソニンとカロナールについて、どちらが効果的なのか、医師の視点から分かりやすく解説します。 頭痛に対する効果の違い ズキズキ、ガンガン、締めつけられるような…頭痛の症状は実に様々です。片頭痛のように血管が拡張することで起こる頭痛、緊張型頭痛のように筋肉の緊張が原因となる頭痛など、その種類は多岐に渡ります。 ロキソニンは、炎症を伴う頭痛、例えば風邪に伴う頭痛や副鼻腔炎による頭痛などに高い効果があります。 一方、カロナールは、解熱鎮痛薬であり、緊張型頭痛や片頭痛など、炎症を伴わない頭痛に適しています。 筋肉痛に対する効能 筋肉痛は、身体活動後に筋肉に微細な損傷が生じることで起こります。損傷した筋肉は炎症を起こし、発痛物質が放出されることで痛みを感じます。 ロキソニンは、こういう筋肉痛にはよく効きます。 一方、カロナールは筋肉痛への効果は限定的です。 腰痛や関節痛への効果 腰痛や関節痛の原因は多様であり、加齢による変形性関節症や、急に発症するぎっくり腰、スポーツによる外傷など、様々な要因が考えられます。これらの痛みの原因や病態に応じて薬を選定しましょう。 ロキソニンの抗炎症作用は強く、炎症を伴う腰痛や関節痛、例えばぎっくり腰や変形性関節症などに効果があります。変形性関節症では関節軟骨がすり減り、炎症が生じることで痛みが発生します。この時はロキソニンがよく効きます。 一方、カロナールですが、近年、変形性関節症の疼痛と機能改善において、アセトアミノフェン(カロナール)は、従来考えられていたほど効果的ではない可能性が示唆されています。痛みが軽い場合や、ロキソニンを服用できない場合に代替薬として処方されることもありますが、ロキソニンと比較すると効果は劣る可能性があります。 ▼関節症の痛み止め「ステロイド」の使用について、併せてお読みください。 ロキソニンとカロナールの副作用と注意点 痛みや熱が出た時、身近な薬として頼りになるロキソニンとカロナール。ドラッグストアで手軽に手に入りますが、その効果の違いや副作用について正しく理解しているでしょうか? 適切な薬を選ぶことは、症状の改善を早めるだけでなく、副作用のリスクを減らすことにも繋がります。 この章では、ロキソニンとカロナールの副作用と注意点について、医師の視点から詳しく解説します。 一般的な副作用とその対処法 ロキソニン(ロキソプロフェン)は、抗炎症作用は強いのですが、副作用として腎障害に注意する必要があります。吐き気、胃痛、胸やけといった症状が現れる可能性があり、特に空腹時に服用すると副作用が出やすいため、食後や胃を保護する薬と一緒に服用することが推奨されます。 稀に、ですが、肝機能障害や腎機能障害といった副作用を認めることがあります。早期に分かれば、内服するのを中止すると大抵は正常に戻ります。 カロナール(アセトアミノフェン)は、解熱鎮痛薬として広く使用されており、比較的副作用が少ない薬です。主な副作用としては、発疹やかゆみなどのアレルギー症状が挙げられます。 稀ではありますが、重症の皮膚障害である中毒性表皮壊死症やスティーブンス・ジョンソン症候群など重篤な副作用が発生する可能性も否定できません。服用後に皮膚に異常を感じた場合は、直ちに中止してかかりつけ医に受診しましょう。 薬の種類 主な副作用 対処法 ロキソニン 吐き気、胃痛、胸やけ、肝機能障害、腎機能障害 食後に服用、胃薬と併用、症状が続く場合は医師に相談 カロナール 発疹、かゆみ、重症の皮膚障害 服用を中止し医師に相談 また、2歳未満の乳幼児における発熱や疼痛に対する使用については、イブプロフェン(ロキソニンの成分)の方がアセトアミノフェン(カロナールの成分)よりも効果が高いという研究結果も出ています。24時間以内の体温低下と疼痛軽減効果において、イブプロフェンの優位性が示されています。ただし、重篤な副作用はどちらの薬も稀であり、安全性は同等と考えられています。 妊娠中・授乳中の服用に関する注意事項 妊娠中や授乳中の薬の服用は、胎児や乳児への影響を考慮する必要があります。 ロキソニンは、妊娠後期に服用すると、胎児の動脈管収縮や陣痛抑制といった影響を及ぼす可能性があるため、服用は避けるべきです。特に妊娠32週以降は、早産や胎児への影響のリスクが高まるため、ロキソニンを含むNSAIDsの使用は禁忌とされています。 カロナールは、妊娠中や授乳中に服用しても比較的安全とされています。ただし、あくまで「比較的」安全であるというだけで、全く影響がないわけではありません。 他の薬との飲み合わせについて ロキソニンやカロナールは、他の薬と一緒に飲むことで、抗炎症作用の効果が落ちたり、副作用が強くなることがあります。特に、ワーファリンなどの血液をサラサラにする薬や、喘息治療薬、一部の抗うつ薬などとの飲み合わせには注意が必要です。 ▼薬とフルーツの飲み合わせについて、併せてお読みください。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Tan E, Braithwaite I, McKinlay CJD, Dalziel SR. "Comparison of Acetaminophen (Paracetamol) With Ibuprofen for Treatment of Fever or Pain in Children Younger Than 2 Years: A Systematic Review and Meta-analysis." JAMA network open 3, no. 10 (2020): e2022398. Richard MJ, Driban JB, McAlindon TE. "Pharmaceutical treatment of osteoarthritis." Osteoarthritis and cartilage 31, no. 4 (2023): 458-466. Antiinflammatory Drugs.
2025.02.01 -
- 内科疾患、その他
新型コロナウイルスに感染後、倦怠感や頭痛、味覚・嗅覚の異常などの症状が長期間にわたって続く「コロナ後遺症」に悩まされている方が増えています。 「コロナ後遺症によって日常生活に支障がある」「どうしたら症状が改善するのかわからない」などと不安を感じる方も多いでしょう。コロナ後遺症は数週間から数カ月にわたって症状が続き、生活の質を低下させる原因にもなります。 本記事では、コロナ後遺症はいつまで続くのか、主な症状や対処法とあわせて解説します。コロナ後遺症に関するよくある質問もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 コロナ後遺症がいつまで続くかは個人差がある コロナ後遺症は、新型コロナウイルス疾患後、感染症が治癒してからも続くさまざまな症状を差します。具体的に現れる症状は人それぞれで異なるほか、いつまで続くかも個人差があります。 コロナ後遺症に関する研究は進んでいるものの、いまだに原因や完治までの期間は解明されていません。そのため、コロナ後遺症と診断された場合には、症状別の適切な対処が不可欠です。 数カ月から1年以上にわたって症状が続くケースが多い コロナ後遺症がいつまで続くかは、一人ひとりの症例によって異なります。実際に、数カ月で症状が改善する場合がある一方で、1年から1年半以上にわたって症状が続いているケースも報告されています。 コロナ後遺症によって倦怠感や疲労感、嗅覚障害などが長期間にわたって続くことで、仕事を休みがちになったり、休職したりする人も珍しくありません。現在は、コロナ後遺症を専門とした外来診療を行っている医療機関も増えています。症状が長く続いて不安な場合は、医療機関へ相談しましょう。 リペアセルクリニックでは、コロナ後遺症に対する再生医療を行っています。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、コロナ疾患後に続く体調不良でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 新型コロナウイルスの後遺症とは コロナ後遺症は風邪やアレルギー症状とよく似ており、たとえ症状が続いていても本人が後遺症とは気づかない場合もあります。 そもそもコロナ後遺症とはどのようなものか、以下で定義と症状について解説するので、ぜひ参考にしてください。 WHO(世界保健機関)の定義 WHO(世界保健機構)は、コロナ後遺症を「新型コロナウイルスに感染した人に見られ、少なくとも2カ月以上続き、ほかの疾患による説明ができない症状」と定義しています。医療機関では、WHOの定義のもとコロナ後遺症の診断をしています。 コロナ後遺症は、原因や治療法を解明するために今も多くの研究が進められている分野です。 参考:World Health Organization「Coronavirus disease(COVID-19): Post COVID-19 condition」 代表的な症状は倦怠感や味覚・嗅覚障害 コロナ後遺症の主な症状は、以下の通りです。 症状 倦怠感 体がだるくエネルギーが湧かない 味覚障害 食べ物の味を感じにくくなる 嗅覚障害 匂いを感じにくくなる 頭痛 慢性的な頭痛や偏頭痛がある 咳や痰 咳が止まらず、痰が出る 発熱 微熱が長期間にわたって続く 動悸や息切れ 心拍数が異常に速くなったり息が切れたりする 脱毛 髪の毛が抜けたり薄くなったりする コロナ後遺症の症状は、感染からしばらく経過しても改善せず、生活に影響を及ぼします。また、回復傾向にあるように思われても、なかなか症状が完治ないケースもあるでしょう。コロナ後遺症の症状は、身体的かつ精神的に大きな負担がかかります。 いつまで続くかわからないコロナ後遺症の対処法 コロナ後遺症による症状がいつまで続くかわからず、不安を感じる方も少なくありません。コロナ後遺症の症状を改善するためには、生活習慣を見直したり、適切な治療を受けたりする必要があります。 以下で、コロナ後遺症の対処法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 生活習慣を見直す コロナ後遺症の症状を改善するためには、生活習慣を整えることがポイントです。十分な睡眠や適度な運動は、身体の回復を促進します。また、規則正しい生活は、精神的な安定にもつながります。 具体的には、1日7〜8時間の質の良い睡眠を心がけ、無理のない範囲でウォーキングや軽いストレッチなどをすると良いでしょう。また、ストレスによって症状が悪化する場合もあるため、深呼吸してリラックスできる時間を作ることもポイントです。 免疫力の維持や回復に努める 免疫力の維持や回復も、コロナ後遺症の症状を改善できる可能性があります。栄養バランスの良い食事を心がけるほか、サプリメントを摂取して免疫力の向上に努めることもおすすめです。 たとえば、ビタミンCやビタミンDなどの各種ビタミン、亜鉛をはじめとするミネラルは、炎症を抑えて免疫を正常化する効果が期待できます。ただし、サプリメントの過剰摂取は症状を悪化させたり、ほかの疾患を引き起こしたりする可能性もゼロではありません。そのため、サプリメントは医師の助言のもと摂取するようにしましょう。 医療機関を受診する コロナ後遺症による症状が長引く場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。 コロナ後遺症の治療は、症状に応じた対症療法が中心です。動悸や息切れが続く場合は、運動療法を中心とする呼吸リハビリテーション、慢性的な頭痛には鎮痛薬の処方など、多角的なアプローチが効果的だとされています。 また、慢性的な倦怠感や抑うつ感などが続く場合は、精神的なケアも必要になるでしょう。カウンセリングや心理療法などが、症状の改善につながる場合があります。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。コロナ後遺症の症状がなかなか改善せずに悩んでいる方は、ぜひ気軽にご相談ください。 コロナ後遺症がいつまでも続く場合の受診目安 コロナ後遺症による症状が続く場合は、以下を目安に医療機関を受診するようにしてください。 倦怠感が3カ月以上続いている 日常生活に支障をきたしている 睡眠や休息を取っても回復しない疲労感が数週間続いている 徐々に症状が悪化している 精神的な症状が現れている(不安、抑うつ、集中力の低下など) すでに医療機関を受診してコロナ後遺症の診断を受けている場合でも、症状が続く場合は、迷わず再受診しましょう。 コロナ後遺症は幹細胞治療による改善効果が期待できる 近年、コロナ後遺症の改善に有効な治療法として、幹細胞治療が注目されています。リペアセルクリニックでは、幹細胞治療でコロナ後遺症の倦怠感や吐き気が改善した症例があります。 コロナウイルスの感染をきっかけに、2年前から疲れやすさや気分の落ち込みなどの症状が現れた方は、当初更年期障害を疑われました。ホルモン検査をしても異常が見つからず、うつ病と診断されて内服薬を開始してからも、症状は改善されなかったようです。そして、根本的な治療として、幹細胞治療を選択しました。 具体的には、下腹部の脂肪細胞から採取した幹細胞を分離・培養し、静脈から点滴をします。幹細胞を3回点滴投与したところ、頭痛がなくなり、よく眠れるようになったなどの効果が現れました。このように、当院では幹細胞治療によってコロナ後遺症が改善に向かった症例があります。 ▼ 幹細胞治療によってコロナ後遺症が改善した症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 まとめ・コロナ後遺症がいつまで続くか不安な場合は早めに受診しよう コロナ後遺症は個人差が大きく、数カ月で回復する場合もあれば、長期間にわたって症状が続くケースも珍しくありません。 コロナ後遺症には、生活習慣の見直しや免疫力の回復など、自分で取り組める対処法もあります。しかし、症状が長期間にわたって続く場合や徐々に悪化する場合には、早めに医療機関を受診し、専門的なサポートを受けることが重要です。 コロナ後遺症の治療に関しては、今も研究が進められています。また。幹細胞治療をはじめとする新しい治療法も注目されています。コロナ後遺症がいつまで続くか不安な場合は、専門家に相談し、自分に合った治療法を選択しましょう。 コロナ後遺症に関するよくある質問 ここでは、コロナ後遺症に関するよくある質問をまとめました。 コロナ後遺症は自然に治る? 一般的にコロナ後遺症による症状の多くは、時間の経過とともに改善するとされています。一方で、症状が長期的に残ったり、悪化したりするケースも少なくありません。 とくに症状が軽度の場合は、コロナ後遺症を風邪と同じように考えがちです。しかし、症状が改善しない場合や徐々に悪化する場合は、自己判断で放置せず、医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。コロナ後遺症かどうか自分で判断できないときは、ぜひ気軽にご利用ください。 コロナ後遺症を予防する方法はある? コロナ後遺症を予防する最も効果的な方法は、新型コロナウイルスに感染しないことです。以下をはじめとする感染症対策の基本を心がけましょう。 手洗いやマスクの着用を徹底する 密閉空間を避ける 部屋を十分に換気する ワクチンを接種して感染リスクや重症化リスクを低減する 感染対策を徹底するほか、感染した場合でも軽症で済むように、ワクチン接種をしておくのも効果的な方法の一つです。
2025.01.15 -
- 脊椎
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「帯状疱疹が治ったのに、なぜ痛みが続くの?」「この痛みは一生続くのだろうか…」 このように不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 帯状疱疹後神経痛は、患者さんのQOL(生活の質)を大きく低下させ、日常生活に支障をきたす可能性があります。しかし、近年の研究によって、その生理学的メカニズムが少しずつ明らかになってきました。 この記事では、帯状疱疹後神経痛のメカニズムについて詳しく解説します。科学的な理解を深めることが、痛みを和らげる希望につながるでしょう。 帯状疱疹後神経痛とは? 帯状疱疹は、子どもの頃に多くの方が感染する水痘(みずぼうそう)と同じウイルスが原因で起こる病気です。水痘が治った後も、ウイルスは体の中の神経の近くに潜んでいます。普段は眠っているこのウイルスが、なんらかのきっかけで再び活動をはじめることを「再活性化」と言います。 再活性化したウイルスは神経に沿って移動し、皮膚で増えることで発疹や水ぶくれを作ります。この時、強い痛みを感じることが多いです。多くの人は数週間で治りますが、中には痛みが長く続く人もいます。これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。 帯状疱疹後神経痛は、痛みのせいで日常生活が送りにくくなることがあります。痛みが生活に与える影響を「QOL(生活の質)の低下」と表現します。 帯状疱疹後神経痛は、患者さんの生活に大きな影響を与える可能性がある、つらい病気なのです。 帯状疱疹後神経痛の診断は、国際的な基準に基づいて行われます。この基準では、帯状疱疹の発疹が治ってから3か月以上続く痛みを「帯状疱疹後神経痛」と定義しています。痛みは、発疹があった場所に限らず、その周辺にも広がることがあります。 また、日本のペインクリニック学会でも、独自の診断基準を作成しています。この基準では、痛みの性質や部位、程度などを詳しく評価することが重要だとされています。 医師は、これらの基準を参考に、患者さんの症状や経過を詳しく調べることで、帯状疱疹後神経痛かどうかを判断します。もし、帯状疱疹にかかった後で、長く続く痛みに悩んでいるなら、専門医に相談してみることをおすすめします。 帯状疱疹後神経痛の生理学的メカニズム 帯状疱疹後神経痛は、体の中で複雑な変化が起こることによって引き起こされます。ここでは、その生理学的なメカニズムについて詳しく解説します。 神経細胞の損傷と再生 帯状疱疹の原因となるウイルスは、子どもの頃にかかる水ぼうそうが治った後も、体の中に潜んでいます。このウイルスは、神経の近くで長い間じっとしています。 ところが、何かのきっかけでウイルスが目覚めると、神経に沿って移動をはじめます。そして、皮膚の中で増えていくことで、発疹や水ぶくれを作るのです。 この時、ウイルスに感染した神経の細胞は、ダメージを受けてしまいます。神経細胞は、脳と体の各部分をつなぐ大切な役割を持っています。痛みを感じると、その信号を脳に伝えるのも神経細胞の仕事です。 しかし、ウイルスに攻撃された神経細胞は、うまく働けなくなってしまうのです。痛みの信号が脳に正しく伝わらなかったり、必要以上に強い痛みを感じてしまったりします。これが、帯状疱疹後神経痛の原因の一つだと考えられています。 神経細胞は傷ついても、少しずつ回復することができます。けれども、完全に元通りになるのはとても難しいのです。一度ダメージを受けた神経細胞は、以前のように痛みの信号を伝えられなくなってしまうこともあるのです。 このように、帯状疱疹後神経痛は、ウイルスによる神経細胞へのダメージが原因で起こると考えられています。神経の回復を助け、痛みを和らげる治療法の開発が、今も進められているところです。 痛みの伝達メカニズム 帯状疱疹後神経痛では、傷ついた神経細胞が過敏な状態になっているのが特徴です。そのため、本来なら痛みを感じないような軽い刺激でも、痛みとして脳に伝わってしまうのです。この状態を「アロディニア」と呼んでいます。 さらに、痛みの信号が体の中の神経の通り道で増幅されることで、より強い痛みを感じるようになることもあり得ます。このように、痛みを伝えるしくみに異常が起こることが、帯状疱疹後神経痛が長引く原因の一つと考えられているのです。 帯状疱疹後神経痛の痛みは、「侵害受容器の感作」や「中枢性感作」といった変化が関係していると考えられています。 侵害受容器は、痛みを感じ取る神経の末端にある受容体です。帯状疱疹によって神経が傷つくと、この侵害受容器が過敏になり、本来は痛みを感じない刺激でも痛みを感じるようになってしまいます。 また、痛みの信号が繰り返し脳に伝わることで、脳の痛みに対する反応も敏感になってしまう「中枢性感作」という変化が起こります。その結果、痛みがさらに強く感じられるようになるのです。 このように、帯状疱疹後神経痛の痛みには、神経のダメージによる末梢での変化と、脳での痛みの処理の変化が関わっていると考えられています。これらのメカニズムを理解することは、効果的な治療法の開発につながると期待されています。 免疫システムの役割 私たちの体には、病気から体を守ってくれる「免疫システム」があります。免疫システムは、ウイルスなどの侵入者から体を守る重要な役割を持っています。 しかし、年をとったり、ストレスを受けたりすると、この免疫システムがうまく働かなくなることがあります。免疫力が下がると、体の中に潜んでいた帯状疱疹のウイルスが、再び活動をはじめてしまうのです。 一方で、帯状疱疹後神経痛が起こる原因の一つに、免疫の反応が過剰になってしまうことが関係しているようです。本来、免疫システムはウイルスから体を守るために働きますが、時には行きすぎた反応を起こしてしまうことがあるのです。 この過剰な免疫反応によって、体の中で炎症を引き起こす物質が増えてしまいます。これらの物質は、神経を傷つけたり、過敏にしたりして、痛みを悪化させてしまう可能性があります。 つまり、帯状疱疹後神経痛は、免疫システムのバランスが崩れることが原因の一つになっていると考えられているのです。免疫力が下がることで、ウイルスが活性化し、また、免疫の反応が過剰になることで、痛みが長引いてしまうのです。 免疫システムを整えることが、帯状疱疹後神経痛の予防や治療に役立つかもしれません。バランスの取れた食事や適度な運動、ストレス管理などが、免疫力を維持するために大切だと言われています。 帯状疱疹後神経痛の影響 帯状疱疹後神経痛は、患者さんの生活の質に大きな影響を与えます。痛みは日常生活のあらゆる場面で支障をきたし、精神的な健康にも悪影響を及ぼすのです。 日常生活への影響 帯状疱疹後神経痛は、患者さんの日常生活にさまざまな影響を与えます。 まず、痛みのために十分な睡眠がとれなくなることがよくあります。夜中に痛みで目が覚めてしまったり、痛みが気になって寝付けなかったりするのです。睡眠不足は、日中の活動にも影響を及ぼします。集中力が低下したり、疲れやすくなったりするでしょう。 また、痛みは仕事や家事の効率を下げてしまうことがあります。デスクワークでは、長時間同じ姿勢でいるのがつらくなったり、資料を運ぶのが難しくなったりするかもしれません。家事では、掃除や洗濯など、体を動かす作業が痛みで困難になる場合もあります。 外出時には、衣服が患部に触れることで痛みが増したり、長時間歩くのがつらかったりと、移動そのものが大変になることもあります。公共交通機関の利用や、買い物など、これまであたり前にできていたことが、痛みによって制限されてしまうのです。 趣味や社会活動も、痛みの影響を受けます。スポーツや運動が思うようにできなくなったり、外出が減ったことで人との交流が減ったりするかもしれません。痛みは、人とのコミュニケーションにも影響を及ぼすのです。 さらに、痛みは患者さまの心理状態にも影響を与えます。痛みが続くことで、イライラしたり、落ち込んだりする方もいます。痛みのコントロールができないことへの不安や、先の見えない闘病生活への疲れが、心の負担になるのです。 このように、帯状疱疹後神経痛は、患者さんの日常生活のあらゆる場面に影響を及ぼします。仕事、家事、外出、趣味、人間関係、心理状態など、生活のすべての側面で、痛みがつきまとうのです。 しかし、適切な治療とサポートによって、これらの影響を最小限に抑えることができます。医療者と相談しながら、自分に合った痛みのコントロール方法を見つけることが大切です。また、家族や友人、同じ悩みを持つ人たちと支え合うことも、困難を乗り越える大きな力になるでしょう。 精神的健康への影響 長期的に持続する痛みは、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスを崩す可能性があります。これらの物質は気分の調整に重要な役割を果たすため、その不均衡がうつ症状につながる場合があるでしょう。 帯状疱疹後神経痛は、患者さんの精神面にも大きな影響を与えます。慢性的な痛みはストレスを増大させ、不安やうつ症状を引き起こすことがあるのです。 痛みがなかなかコントロールできないことで、将来への不安を感じる患者さんも少なくありません。「このまずっと痛みに苦しむのだろうか」と悲観的になってしまう方もいるでしょう。 また、周囲の人が帯状疱疹後神経痛の痛みを理解してくれないと、患者さんは孤独感を抱えてしまうかもしれません。「自分だけが痛みに苦しんでいる」と感じ、心理的に追い詰められてしまう方もいます。 実際に、50代の女性は帯状疱疹後神経痛のために仕事を辞めざるを得なくなり、経済的な不安から抑うつ状態になってしまったそうです。また、80代の男性は痛みのために家族との関係がぎくしゃくし、孤独感から不眠に悩まされていたと言います。 このように、帯状疱疹後神経痛は患者さんの精神的な負担を大きくし、QOLを著しく低下させる可能性があるのです。痛みに苦しむ患者さんが、周囲の理解とサポートを得られるよう、社会全体で支えていくことが大切だといえるでしょう。 現在の治療法と未来の可能性 帯状疱疹後神経痛の治療には、日本ペインクリニック学会が発表しているガイドラインがあります。 ガイドラインによると、帯状疱疹後神経痛に対する治療法は、薬物療法を中心にさまざまな選択肢があります。現在の主な治療法とその効果について見ていきましょう。また、最新の研究で注目されている新たな治療法や予防法についても触れていきます。 伝統的治療法 帯状疱疹後神経痛の治療には、いくつかの種類の薬が用いられます。 治療法 説明 効果 副作用 三環系抗うつ薬 脳内の神経伝達物質のバランスを整える 痛みを和らげる効果が期待できる 眠気、口の渇きなど 抗てんかん薬(プレガバリン、ガバペンチンなど) 神経の過敏性を抑える 痛みを軽減する めまい、眠気など オピオイド鎮痛薬 脳内の痛みを抑える物質の働きを強める 強い痛みに対して鎮痛効果を発揮 便秘、嘔吐、依存性のリスク リドカインパッチ 患部に直接貼る 局所的に痛みを和らげる 皮膚刺激など 神経ブロック療法 痛みを伝える神経の近くに麻酔薬やステロイドを注射 痛みの伝達を遮断 感染リスク、一時的な神経障害など 経皮的電気神経刺激療法(TENS) 皮膚に電極を貼り、弱い電流を流す 痛みを感じにくくする 皮膚刺激、まれに筋肉の痙攣 まず、三環系抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、痛みを和らげる効果が期待できます。ただし、眠気や口の渇きなどの副作用に注意が必要です。 次に、プレガバリンやガバペンチンなどの抗てんかん薬は、神経の過敏な反応を抑えることで痛みを軽減します。めまいや眠気などの副作用がある場合もありますが、多くの患者さんで効果が見られています。 また、オピオイド鎮痛薬は、強い痛みに対して使用されることがあります。これらの薬は、脳内の痛みを抑える物質の働きを強めることで、鎮痛効果を発揮します。ただし、便秘や吐き気、依存性などの副作用のリスクがあるため、慎重に使用する必要があります。 このほか、リドカインパッチなどの貼り薬を痛みのある部分に直接貼ることで、局所的に痛みを和らげる方法もあります。神経ブロック療法では、痛みを伝える神経の近くに麻酔薬やステロイドを注射し、痛みの伝達を遮断します。 経皮的電気神経刺激療法(TENS)は、皮膚に電極を貼り、弱い電流を流すことで痛みを和らげる治療法です。この方法は、痛みの信号を脳に伝えにくくすることで効果を発揮します。皮膚への刺激感はありますが、大きな副作用は少なく、とくに薬物療法と組み合わせることで効果が期待できます。ただし、効果の程度には個人差があり、すべての患者さんに同じように効くわけではありません。 これらの治療法を組み合わせることで、多くの患者さんである程度の痛みの緩和が得られますが、完全に痛みをなくすことは難しいのが現状です。 最新の研究と将来の治療法 近年、帯状疱疹後神経痛に対する新たな治療法の開発が進んでいます。 治療法 説明 期待される効果 現状 カプサイシン貼付剤 トウガラシの辛み成分を含む貼り薬 痛みを伝える神経終末の感受性を低下させ、鎮痛効果を発揮 研究段階 ボツリヌス毒素注射 ボトックス注射として知られる 痛みに関連する神経伝達物質の放出を抑制し、痛みを和らげる 臨床試験中 帯状疱疹ワクチン 予防接種 帯状疱疹の発症そのものを予防し、結果として帯状疱疹後神経痛の発症も防ぐ 一部実用化 カプサイシン貼付剤は、唐辛子の辛み成分を含む貼り薬です。これを痛みのある部分に貼ることで、痛みを感じる神経の働きを弱め、痛みを和らげる効果が期待できます。 ボツリヌス毒素注射は、一般的にはしわ取りで知られるボトックス注射と同じものです。この注射は、痛みを伝える神経の働きを抑えることで、痛みを軽減する効果が期待されています。 帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹そのものの発症を予防するワクチンです。このワクチンを接種することで、体の中で眠っている帯状疱疹のウイルスが活動をはじめるのを抑え、結果として帯状疱疹後神経痛の発症も防げる可能性があります。 これらの新しい治療法や予防法は、帯状疱疹後神経痛で苦しむ患者さんの痛みを和らげるための新たな選択肢として注目されています。帯状疱疹後神経痛の治療は日々進歩しており、患者さんの生活の質を改善するためのさまざまな方法が増えています。 まとめ:科学的理解がもたらす希望 痛みのメカニズムを理解することで、患者さんは自身の症状をより客観的に捉えられるようになります。たとえば、天候の変化で痛みが増す現象も、気圧の変化が神経に与える影響として説明できるでしょう。これにより、不安や恐れが軽減される可能性があります。 医療者や研究者たちは、帯状疱疹後神経痛のメカニズムを少しずつ解明してきました。ウイルスによる神経の傷、痛みの信号伝達の異常、免疫システムの関与など、複雑な要因が絡み合っていることがわかってきたのです。 この科学的な理解は、あなたが自分の症状と向き合う上で、大きな助けになるでしょう。痛みの原因が少しずつ明らかになることで、あなたは自分の状態をより正しく理解することができます。そして、その理解を基に、医師とともに、あなたに合った治療法を選ぶことができるでしょう。 現在、多くの治療選択肢があります。薬物療法、神経ブロック、心理療法など、さまざまなアプローチが試みられています。これらの治療法は、あなたの痛みを和らげ、生活の質を改善するために役立つかもしれません。 帯状疱疹後神経痛は、簡単には克服できない病気かもしれません。しかし、医療者や周りの人々に支えられながら、一歩ずつ前に進むことができます。今日の痛みに負けず、希望を持ち続けることが大切です。 たとえ痛みがあっても、あなたの人生にはまだ多くの可能性があります。医師と相談しながら、自分に合った方法で痛みと向き合い、日々の生活を送っていきましょう。小さな進歩や改善を大切にし、自分のペースで前に進んでいきましょう。 痛みを単なる'敵'ではなく、身体からのメッセージとして捉え直すことで、より建設的な対処が可能になります。たとえば、痛みが強い時は休息を取り、和らいだ時に少しずつ活動を増やすなど、痛みと共存しながら生活の質を高める方法を見出すことができるでしょう。 この記事が、帯状疱疹後神経痛についての理解を深め、今後の生活に少しでも役立つ情報となれば幸いです。 参考文献一覧 加藤実,帯状疱疹後神経痛に対する薬物療法,日本臨床麻酔科学会vol.28,No.1/Jan.2008,J-STAGE 日本ペインクリニック学会,Key Point,オピオイド 日本ペインクリニック学会,ⅢーA帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛,第3章 各疾患・痛みに対するペインクリニック治療指針p095ー100 日本ペインクリニック学会,ペインクリニックで扱う疾患と治療の現在,帯状疱疹関連痛を含む神経障害性痛 日本ペインクリニック学会,Key Point,神経ブロック 日本ペインクリニック学会,Key Point,NSAIDsとアセトアミノフェン 日本ペインクリニック学会,Key Point,オピオイド 日本ペインクリニック学会,Key Point,抗うつ薬、抗痙攣薬 国立感染症研究所,帯状疱疹ワクチン ファクトシート,厚生労働省 日本ペインクリニック学会,神経障害性疼痛の概要 日本ペインクリニック学会,痛みの機序と分類
2024.11.27 -
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「帯状疱疹が治ったのに、痛みが続く…」「痛くて夜も眠れない…」 帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治癒した後も持続する神経の痛みを特徴とする症状です。この痛みは、患者さまの生活の質(QOL=Quality of life)を大きく低下させ、日常生活に支障をきたす可能性もあります。 帯状疱疹後神経痛の治療には、薬物療法が主に用いられますが、それとあわせてマッサージを取り入れることで、痛みの緩和により効果が期待できるでしょう。 本記事では、帯状疱疹後神経痛に対して効果的なマッサージの種類や、自宅で実践できるマッサージ法について詳しく解説いたします。マッサージを活用することで、痛みを和らげ、日常生活の質の向上を目指していただければ幸いです。 帯状疱疹後神経痛とは何か?マッサージがなぜ重要なのか? 帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹が治った後も、神経の痛みが長く続く症状です。帯状疱疹は、子どもの頃に感染する水ぼうそうのウイルスが、大人になって再び活動をはじめることで発症します。このウイルスが神経に炎症を起こし、片側の皮膚に痛みをともなう発疹ができるのが特徴です。 発疹が治まった後も、ウイルスによる炎症の影響で神経が傷ついた状態が続く場合があります。帯状疱疹後神経痛の段階では、主な問題は急性炎症ではなく、神経の障害です。傷ついた神経が過敏になっているために痛みが続くのです。この痛みは、ピリピリする、チクチクする、ズキズキするなど、人によって表現が異なります。ひどい場合は、服に触れるだけでも痛みを感じるケースもあります。 こうした痛みを和らげるのに、マッサージが効果的だと言われています。マッサージには次のような働きがあります。 血の巡りを良くする 凝り固まった筋肉をほぐす 神経の過敏反応を軽減する 痛みへの耐性を高める リラクゼーション効果をもたらす これらの効果によって、神経障害による痛みを軽減することが期待できるでしょう。ただし、マッサージはPHNの補助的な治療法の一つであり、医療専門家の指導のもとで行うべきです。また、個人によって効果は異なる可能性があることに注意が必要です。 帯状疱疹後神経痛の基礎知識 次に、帯状疱疹後神経痛について詳しく見ていきましょう。 帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治った後も神経の痛みが続く状態です。この痛みはどのような症状があり、どのような原因で起こるのでしょうか。また、なぜマッサージが痛みの緩和に効果的なのでしょうか。 以下の項目で、これらの点について詳しく解説します。 症状と原因 なぜマッサージが有効なのか 症状と原因 帯状疱疹後神経痛の主な症状は、帯状疱疹が治った後も続く、皮膚の痛みです。 痛みは、ピリピリする、チクチクする、ズキズキする、ジンジンするなど、人によって表現はさまざまです。 時には、軽く触れただけでも痛みを感じることもあります。 この痛みの原因は、帯状疱疹のウイルスによって神経に炎症が起こり、神経が傷ついてしまうことです。 傷ついた神経は、過敏になっているため、普段は痛みを感じないような刺激にも反応して、痛みを感じてしまうのです。 なぜマッサージが有効なのか マッサージが帯状疱疹後神経痛の痛み和らげに効果的なのは、次のような理由からです。 理由 説明 血行を良くする 痛みがあると、血液の流れが悪くなりがちです。マッサージは、この滞った血流を改善し、痛みを和らげる効果があります。血液の流れが良くなると、栄養分が行き渡りやすくなり、体の回復を助けます。 筋肉の緊張をほぐす 痛みがあると、筋肉が緊張しがちです。マッサージは、この緊張をほぐし、痛みを和らげる効果があります。 リラックス効果 マッサージには、リラックス効果があります。リラックスすることで、痛みに対する敏感さが下がり、痛みを和らげることができます。 このように、マッサージは血行の改善、筋肉の緊張緩和、リラックス効果により、帯状疱疹後神経痛の痛みを多角的に和らげる働きが期待できます。 マッサージの種類とその効果 帯状疱疹後神経痛の治療に用いられるマッサージには、いくつかの種類があります。それぞれのマッサージ法は、痛みを和らげる異なるアプローチを持っています。 以下では、代表的なマッサージの種類とその効果について詳しく見ていきましょう。 マッサージの種類 効果 リンパドレナージュ 優しくリンパの流れを促し、むくみを軽減することで、神経への圧迫を和らげる トリガーポイントセラピー 筋肉内の痛みの引き金となる緊張点(トリガーポイント)を指圧などで刺激し、筋肉の緊張を緩和することで、痛みを軽減 スウェディッシュマッサージ 全身の緊張をほぐし、血行を促進することで、神経の修復を助け、痛みを軽減する これらのマッサージ法は、帯状疱疹後神経痛の症状に応じて使い分けられる場合が多いです。次の項目では、それぞれのマッサージ法について、より詳しく解説します。 ただし、これらのマッサージ法は、帯状疱疹後神経痛による痛みを緩和する可能性がありますが、ウイルスによって損傷された神経や神経の痛みそのものを修復する効果は期待できません。 リンパドレナージュ リンパドレナージュは、体内のリンパ系に焦点を当てたマッサージ法です。リンパ系は、体内の余分な水分や老廃物を集めて排出する役割を持っています。しかし、なんらかの原因でリンパの流れが滞ると、老廃物が体内に蓄積し、むくみなどの問題を引き起こす可能性があるでしょう。 リンパドレナージュでは、リンパの流れに沿って、ゆっくりとやさしい圧力をかけながらマッサージを行います。これにより、リンパ管の収縮を促し、リンパ液の流れを改善しやいです。その結果、体内の老廃物が効率的に排出され、むくみが軽減される可能性があります。 帯状疱疹後神経痛の患者さんの場合、神経の障害が主な原因ですが、組織のむくみが神経を圧迫し、症状を悪化させる可能性があります。 リンパドレナージュを行うことで、むくみの軽減や組織の代謝改善を促し、神経への圧迫を和らげることで、間接的に痛みを軽減する効果が期待できるのです。ただし、個々の症状や状態に応じて、医療専門家の指導のもとで慎重に行う必要があります。 トリガーポイントセラピー トリガーポイントセラピーは、筋肉内の痛みの原因となる特定の箇所(トリガーポイント)に働きかけるマッサージ法です。トリガーポイントは、筋肉が過度に収縮することで形成される、触ると痛い小さなこわばりや凝り固まった部分です。このトリガーポイントが存在すると、局所的な痛みや、そこから離れた場所にも関連痛を引き起こす場合があります。 帯状疱疹後神経痛の患者さんの場合、持続的な痛みによって筋肉が緊張状態にあることが多いです。この緊張によって、二次的にトリガーポイントが形成されている可能性があります。 トリガーポイントセラピーでは、これらのトリガーポイントに指圧などで直接刺激を与えます。適切な圧力を加えることで、筋肉の緊張を緩和し、痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。ただし、圧力の強さは患者さんの痛みの程度に応じて調整することが大切です。 スウェディッシュマッサージ スウェディッシュマッサージは、比較的やわらかい圧力で行う全身マッサージの一種です。長い滑らかなストロークを用いて、筋肉を緩めていきます。これにより、筋肉の緊張を和らげ、血液の循環を促進する効果が期待できます。 また、スウェディッシュマッサージは、リラクゼーション効果が高いことでも知られています。マッサージを受けることで、ストレスが軽減され、心身ともにリラックスした状態を促します。 帯状疱疹後神経痛の患者さんの場合、痛みによるストレスが症状を悪化させる要因の一つと考えられています。スウェディッシュマッサージによるリラクゼーション効果は、このストレスを軽減し、痛みを感じにくくする可能性があります。 さらに、マッサージによる心地よい刺激は、痛みに意識が集中しすぎないようにする効果も期待できます。 ただし、痛みのある部位に直接強い圧力をかけることは避け、患者さんの症状に合わせて圧力を調整するなど、配慮が必要です。 自宅でできるマッサージテクニック 自宅でのセルフマッサージは、帯状疱疹後神経痛の症状管理に効果的です。 以下では、マッサージを行う上で役立つ道具や準備すると良いもの、簡単に実践できるマッサージ法をご紹介します。 必要な道具と準備 セルフマッサージや介助者によるマッサージを行う際は、以下のような道具を準備しておくとよいでしょう。 道具 用途 マッサージオイルやクリーム 肌の摩擦を減らし、マッサージをスムーズに行うのに役立ちます。 タオル オイルやクリームを拭き取るのに使います。 バスタオル マッサージ中に下に敷いておくと、オイルなどで周りが汚れるのを防げます。 枕やクッション 体を楽な姿勢に保つのに使います。 マッサージをはじめる前に、手を清潔にし、爪を短く切っておくことが大切です。また、お風呂上がりなど、体が温まっている時にマッサージを行うと、より効果的だと言われています。 簡単なセルフマッサージ法 自宅でも簡単にできるセルフマッサージ法には、以下のようなものがあります。 マッサージ方法 手順 円を描くようにマッサージ 痛みのある部分の周りを、指の腹で円を描くようにやさしくマッサージします。痛くない程度の圧で行いましょう。 遠くから近くへのマッサージ 痛みのある部分から少し離れたところを、両手で優しくさすります。徐々に痛みのある部分に近づけていきます。 手のひら全体で温める 痛みのある部分を、手のひら全体で包み込むようにして温めます。 これらのマッサージを1日に2~3回、それぞれ5分ほど行ってみてください。痛みを感じたら、無理せずに中止しましょう。 痛みの場所や程度によっては、1人でのセルフマッサージが難しい場合があります。そのような場合は、家族や介護者の協力を得たり、医療専門家に相談したりすることをおすすめします。また、痛みが強い場合は無理をせず、軽いタッチでの温めるような動作にとどめるなど、個々の状態に合わせて行うことが重要です。 マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状管理に役立つ方法の一つですが、必ず医療専門家の指導のもとで行い、痛みに注意しながら実施することが大切です。 マッサージを受ける際の注意点 マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状緩和に効果的ですが、状況によっては控えるべき場合もあります。 ここでは、マッサージが推奨されない症状や健康状態、および適切なマッサージの頻度と強度について説明します。 注意すべき症状と状況 以下のような症状や状況では、マッサージは控えめにするか、医師に相談してから行いましょう。 症状や状況 理由 熱がある時 体調が優れない場合、マッサージによって症状が悪化する可能性があります。 皮膚に炎症や傷がある時 マッサージによって皮膚の状態が悪化したり、感染のリスクが高まったりする可能性があります。 痛みが強くてマッサージに耐えられない時 強い痛みがある場合、マッサージによって痛みが増強される可能性があります。 血栓症や出血しやすい病気がある時 マッサージによって血栓が移動したり、出血が起こったりする危険性があります。これは生命に関わる重大な事態を引き起こす可能性があるため、絶対に避けましょう。 帯状疱疹の発疹が出ている時期 発疹部分へのマッサージは、症状を悪化させる可能性があります。 また、妊娠中の方は、念のため医師に相談してからマッサージを受けるようにしましょう。 マッサージの頻度と強度 マッサージを行う際は、適切な頻度と強度を守ることが大切です。 項目 推奨 頻度 1日1~2回、それぞれ10~20分程度が適当です。 強度 痛くない程度の圧から始め、徐々に圧を強めていきます。痛みのある部分は、痛みに合わせて加減しましょう。 マッサージ後に痛みが悪化する場合は、強度を弱めるか、中止してください。毎日続けることで、徐々に効果を感じられるようになりますが、無理はせず、体の調子に合わせて行うことが大切です。 マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状管理に役立つ手法ですが、適切な注意点を守ることが重要です。症状や体調に合わせてマッサージを行い、無理のない範囲で継続することで、痛みの緩和につなげましょう。 ケーススタディと体験談 帯状疱疹後神経痛に対するマッサージの効果について、実際の研究結果やケーススタディ、患者さんの体験談を紹介します。これらの情報は、マッサージを検討している方にとって参考になるでしょう。 事例 帯状疱疹後神経痛に対するマッサージの効果を調べた研究について紹介します。 Mallick-Searle らの研究(2016年) この総説論文では、帯状疱疹後神経痛に対するさまざまな治療法について評価しています。とくに、マッサージ療法が痛みの管理に有効である可能性があるとのべています。[1] Yao らの研究(2020年) 60人の患者を対象に、マッサージ療法とプラセボ療法(効果のない治療)を比較しました。その結果、マッサージを受けた患者は痛みが大幅に軽減され、生活の質も向上しました。[2] Lee らの研究(2014年) 58人の患者を対象に、マッサージ療法と通常の薬物療法を比較しました。どちらの治療法でも痛みは軽減されましたが、マッサージを受けた患者の方がより大きな改善が見られました。[3] これらの研究は、帯状疱疹後神経痛に対するマッサージが効果的である可能性を示しています。ただし、これらの研究は比較的小規模であり、さらに大規模で質の高い研究が必要です。また、すべての患者に同じ効果が得られるわけではないため、個人差があることも考慮する必要があるでしょう。 専門家の意見 医療専門家やマッサージセラピストの多くは、帯状疱疹後神経痛の治療におけるマッサージの有用性を認めています。ただし、マッサージは万能ではなく、患者さんの状態に合わせて適切に使用することが重要だと指摘されています。 一般的に、医療機関はマッサージを帯状疱疹後神経痛の補完的な治療法として有用と考える一方で、重症例では医療処置を優先すべきだと考えています。理学療法士は、マッサージが痛みの緩和だけでなく身体機能の改善にも役立つ可能性を指摘する一方で、過度な刺激は逆効果になる可能性があると警告しています。また、マッサージセラピストは、帯状疱疹後神経痛患者へのマッサージでは圧の強さや手技の選択に細心の注意を払う必要があると強調しています。 以上の研究結果や専門家の意見から、マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状改善に寄与する可能性があるといえます。ただし、個人差があるため、医療専門家と相談しながら、自分に合った方法で行うことが大切です。 まとめ・帯状疱疹後神経痛に効くマッサージ法 帯状疱疹後神経痛は、ウイルスによって神経が損傷されることで生じる難治性の疼痛症候群です。マッサージは、損傷した神経そのものを修復する直接的な作用は持たないものの、筋肉の緊張をほぐしたり、ストレスを和らげたりすることで、間接的に痛みの感じ方に影響を与える可能性があります。 ただし、現時点では、帯状疱疹後神経痛に対するマッサージの有効性を明確に示す十分な科学的根拠は乏しいのが現状です。したがって、帯状疱疹後神経痛の患者さんがマッサージを試みる場合は、医師や看護師、理学療法士など医療専門家の指導の下で行うことが重要であり、マッサージはあくまでも医学的治療を補完するものとして位置づけるべきでしょう。 また、マッサージ以外にも、帯状疱疹後神経痛の症状を和らげるためのいくつかの対処法があります。たとえば、刺激の少ない綿や絹の衣類を着用することで、皮膚への刺激を最小限に抑えることができます。また、入浴などで体を温めることで、症状が緩和されると感じる方もいらっしゃいます。 帯状疱疹後神経痛と向き合う日々は、身体的にも精神的にも大変な時期かもしれません。しかし、諦めずにさまざまな対処法を試み、自分に合った痛みの管理方法を見つけていくことが大切です。医療専門家と相談しながら、マッサージをはじめとするさまざまなアプローチを組み合わせることで、少しずつでも症状の改善と生活の質の向上につながるでしょう。この記事が、帯状疱疹後神経痛に悩む方々の参考となれば幸いです。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 加藤実,帯状疱疹後神経痛に対する薬物療法,日本臨床麻酔科学会vol.28.No,1/Jan.2008,,J-STAGE.2008/6 日本ペインクリニック学会,Key Point,オピオイド 日本ペインクリニック学会,ⅢーA帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛,第3章 各疾患・痛みに対するペインクリニック治療指針p095ー100 日本ペインクリニック学会,ペインクリニックで扱う疾患と治療の現在,帯状疱疹関連痛を含む神経障害性痛 日本ペインクリニック学会,Key Point,神経ブロック 日本ペインクリニック学会,Key Point,NSAIDsとアセトアミノフェン 日本ペインクリニック学会,Key Point,オピオイド 日本ペインクリニック学会,Key Point.抗うつ薬、抗痙攣薬 国立感染症研究所,帯状疱疹ワクチン ファクトシート,厚生労働省 日本ペインクリニック学会,神経障害性疼痛の概要 日本ペインクリニック学会,痛みの機序と分類 真興交易医書出版部”慢性疼痛診療ガイドライン" ^ [1]Mallick-Searle, T., Snodgrass B., Brant J. M,Postherpetic neuralgia: epidemiology, pathophysiology, and pain management pharmacology. Pain Medicine, 2016,.https://doi.org/10.2147/JMDH.S106340 ^[2]Yao, C., Li, G., Shen, W., & Jia, X. (2020). Massage therapy for the treatment of postherpetic neuralgia: A randomized controlled trial. Journal of Integrative Medicine, 18(6), 496-502. ^[3]Lee, G. Y., Gong, H. S., Kim, J. H., & Shin, H. S. (2014). The effect of massage therapy on postherpetic neuralgia: a quasi-randomized controlled trial. Journal of Korean Academy of Nursing, 44(1), 92-101.
2024.11.25 -
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「帯状疱疹が治ったのに痛みが続くのはなぜ?」「どのような薬が効くの?」このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の後遺症として起こる難治性の痛みです。皮膚の痛みやしびれ、灼熱感などが長期間続き、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 今回は、帯状疱疹後神経痛に効果が期待できるさまざまな治療薬について、その選択肢や効果、副作用などを詳しく紹介します。この記事が、痛みに悩むあなたの治療選択の助けになれば幸いです。 帯状疱疹後神経痛とその一般的な治療法の紹介 帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治った後も、患部の神経に炎症や傷が残ることで起こる長引く痛みのことです。 50歳以上の方にかかりやすく、痛みの強さや続く期間には個人差がありますが、適切な治療をしないと痛みが長引くリスクが高くなります。 痛みをコントロールするには薬の治療が中心となりますが、患者さんの状態に合わせて薬を選ぶことが大切です。 一般的な治療法には以下のようなものがあります。 薬物療法(抗てんかん薬、抗うつ薬、外用薬、オピオイドなど) 神経ブロック注射 漢方薬 電気刺激療法(TENS) 心理療法(カウンセリングなど) リハビリテーション(運動療法、物理療法など) これらの治療法を組み合わせることで、より効果的な痛みの管理が期待できます。 帯状疱疹後神経痛に使われる薬 帯状疱疹後神経痛の治療に用いられる主な薬剤は以下の通りです。 抗ウイルス薬 抗ウイルス薬とは、ウイルスの増殖を抑える薬のことです。帯状疱疹後神経痛の原因となる水痘帯状疱疹ウイルスの活動を抑えることで、神経の損傷を防ぎ、痛みの発症リスクを下げる効果が期待できます。代表的な薬剤としては、アシクロビルやバラシクロビルなどがあります。 抗てんかん薬 抗てんかん薬とは、本来はてんかんの治療に用いられる薬ですが、神経の過剰な興奮を抑える働きがあるため、帯状疱疹後神経痛の治療にも使われます。痛みの信号を伝える神経の活動を抑制することで、痛みを和らげる効果が期待できます。代表的な薬剤としては、ガバペンチンやプレガバリン(リリカ)などがあります。 抗うつ薬 抗うつ薬とは、うつ病の治療に用いられる薬ですが、慢性の痛みに対しても効果があることが知られています。セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを調整することで、痛みの信号を抑制し、痛みを和らげる効果が期待できます。代表的な薬剤としては、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(デュロキセチンなど)があります。 鎮痛薬(オピオイド含む) 鎮痛薬とは、痛みを和らげる薬の総称です。帯状疱疹後神経痛に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどの一般的な鎮痛薬が使われることがあります。また、痛みが強い場合には、オピオイド鎮痛薬(トラマドールなど)が処方されることもあります。これらの薬は、痛みの信号を遮断したり、痛みを感じにくくしたりすることで、鎮痛効果を発揮します。 トピカル治療薬 トピカル治療薬とは、患部に直接塗布したり貼付したりする薬のことです。帯状疱疹後神経痛に対しては、リドカインパッチやカプサイシンクリームなどが用いられることがあります。これらの薬は、痛みの信号を局所的に遮断したり、痛みを感じにくくしたりすることで、症状の緩和に役立ちます。 薬物治療の効果と副作用 帯状疱疹後神経痛の治療に用いられる薬物は、痛みの伝達を遮断したり、神経の感受性を調整したりすることで鎮痛効果を発揮します。ただし、薬の効果と同時に、副作用のリスクについても理解しておく必要があります。 各薬の具体的な効果と副作用 薬剤 効果 副作用 抗てんかん薬 神経細胞の興奮を抑制し、鎮痛効果を発揮 眠気、めまい、体重増加など 三環系抗うつ薬・SNRI 痛みの伝達を遮断 口渇、便秘、視力障害など 外用薬 局所的な鎮痛効果 塗布部位の皮膚炎など オピオイド 強力な鎮痛作用 嘔気、便秘、眠気、依存リスクなど これらの薬剤は、それぞれ異なる作用機序を持っていますが、いずれも帯状疱疹後神経痛の痛みを和らげることを目的として使用されます。 抗てんかん薬は、神経の過剰な興奮を抑制することで、痛みの信号伝達を抑えます。三環系抗うつ薬やSNRIは、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを調整し、痛みの伝達を遮断します。外用薬は、患部に直接作用することで局所的な鎮痛効果を発揮します。オピオイドは、強力な鎮痛作用を持っていますが、副作用や依存のリスクが比較的高いため、他の治療法で十分な効果が得られない場合に限って使用されます。 これらの薬剤の使用に際しては、患者さんの状態や痛みの程度、他の合併症の有無などを考慮し、医師が適切な薬剤を選択します。また、定期的なモニタリングを行いながら、効果と副作用のバランスを見極め、必要に応じて薬剤の種類や用量を調整していきます。 副作用については、患者さんによって現れ方や程度が異なるため、医師や薬剤師からの説明を十分に理解し、異変を感じたら速やかに報告することが大切です。 治療薬の選択基準 患者に適した薬の選び方 患者さまに適した薬を選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。 考慮すべき要因 具体的な内容 年齢 高齢者では、薬物の代謝・排泄が遅れる傾向があるため、慎重な投与が必要 全身状態 患者さんの全身的な健康状態を評価し、治療薬の選択に反映させる 合併症 腎機能障害や肝機能障害など、合併症の有無や程度を考慮する 他の服用中の薬剤 併用薬との相互作用を確認し、必要に応じて投与量の調整や薬剤の変更を行う 痛みの性質・部位 痛みの性質(灼熱感、チクチク感など)や部位に応じて、適切な薬剤を選択する 治療歴 これまでの治療経過や効果、副作用の情報を参考にする 医師は、これらの要因を総合的に判断し、患者さんに最適な治療薬を選択します。また、定期的なモニタリングを行いながら、効果と副作用のバランスを見極め、必要に応じて投与量の調整や薬剤の変更を行います。 患者さんも、自身の症状や体調の変化を医師に伝え、治療方針について積極的に相談することが大切です。医師と患者さんが協力して、最適な治療薬の選択と調整を行っていくことが、帯状疱疹後神経痛の効果的な管理につながるでしょう。 患者の体験談 薬物治療を受けた患者からの実際のフィードバック 帯状疱疹後神経痛の薬物治療は、患者さまの年齢や症状、合併症の有無、治療歴などを考慮して、医師が適切な薬剤を選択します。 治療効果や副作用の現れ方には個人差がありますが、早期の治療が大切ということが日本ペインクリニック学会のいくつかの研究によってわかっています。 日本ペインクリニック学会の研究において、帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の後に起こる長期的な痛みで、日常生活に大きな影響を与えます。この研究は、PHNを予防するために、神経ブロック(硬膜外ブロック、末梢神経ブロック、交感神経ブロック)が有効かどうかを調べました。 研究の結果は、以下のとおりです。 全体的には、神経ブロックが帯状疱疹後神経痛の予防に有意な効果があるとはいえませんでした。 しかし、帯状疱疹の発症から病院受診までの期間が短いほど、神経ブロックが帯状疱疹後神経痛の予防に効果がある可能性が高くなります。 つまり、この研究では、帯状疱疹の発症から早期に神経ブロックを行うことで、帯状疱疹後神経痛への移行を防ぐ可能性があることがわかっています。(参照:日本ペインクリニック学会."帯状疱疹後神経痛予防のための神経ブロックの有効性") また、日本ペインクリニック学会誌の「当院における帯状疱疹関連痛の疼痛改善に影響を与える要因の後ろ向き研究」において、神経障害性疼痛の治療として推奨されている三環系抗うつ薬、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチン、トラマドール、神経ブロックのうち、いずれかの内服または投与されている方を対象に痛みの改善について研究を行われています。 研究結果より、帯状疱疹にかかって痛みがある患者さまは、できるだけ早く、できれば発症から30日以内に痛みの専門機関を受診することが大切です。 もし30日以内に受診できない場合は、最初にかかった病院で神経障害性の痛みに効く薬(三環系抗うつ薬、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチン、トラマドールなど)を処方してもらったり、神経ブロックを受けたりすることが重要です。 痛みの専門機関を30日以降に受診する場合、最初の病院でこれらの治療を受けていなかった患者さんは、痛みの改善が難しくなる可能性があります。(参照:長谷川 晴子他."当院における帯状疱疹関連痛の疼痛改善に影響を与える要因の後ろ向き研究”.日本ペインクリニック学会誌.2023.30巻4号p.71-78) まとめとアドバイス 患者自身や医師との相談の重要性 帯状疱疹後神経痛の薬物治療では、痛みの程度や生活への影響を医師にしっかりと伝えることが大切です。治療の選択肢や期待される効果、起こり得る副作用について、医師から十分な説明を受けましょう。疑問や不安があれば遠慮なく相談し、納得した上で治療方針を決定していくことが重要です。 また、薬の効果や副作用の現れ方を注意深く観察し、定期的な診察で医師に報告していくことも欠かせません。セルフケアとして、患部を清潔に保ち、ストレスを避け、十分な休養を取ることも痛みの緩和に役立つでしょう。 帯状疱疹後神経痛は、適切な治療を継続することで、多くの場合徐々に改善が見込めます。痛みと向き合う辛さはありますが、諦めずに医師と協力しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 加藤実,帯状疱疹後神経痛に対する薬物療法,日本臨床麻酔科学会vol.28,No.1/Jan.2008,J-STAGE 日本ペインクリニック学会,Key Point,オピオイド 日本ペインクリニック学会,ⅢーA帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛,第3章 各疾患・痛みに対するペインクリニック治療指針p095ー100 日本ペインクリニック学会,ペインクリニックで扱う疾患と治療の現在,帯状疱疹関連痛を含む神経障害性痛 日本ペインクリニック学会,Key Point,神経ブロック 日本ペインクリニック学会,Key Point, NSAIDsとアセトアミノフェン 日本ペインクリニック学会,Key Point,オピオイド 日本ペインクリニック学会,Key Point,抗うつ薬、抗痙攣薬
2024.11.22 -
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「尿酸値が高いと言われたけど、どうすればいいの?」「痛風になりたくないけど、予防法がよくわからない」 こうした悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。 高尿酸血症は痛風の主な原因であり、放置すると関節の炎症や腎臓障害など深刻な合併症を引き起こす可能性があります。しかし、適切な食事療法と生活習慣の改善により、尿酸値をコントロールし、痛風のリスクを大幅に下げることができるのです。 本記事では、尿酸とその体内での役割や尿酸値を下げるための具体的な方法まで、詳しく解説します。日常生活で実践できる痛風予防のヒントにしていただければ幸いです。 尿酸とは何か?その体内での役割と痛風への影響 尿酸とは、体内で作られる物質の一つです。プリン体という物質が分解されると、尿酸となります。 プリン体が取り込まれるまでには二つの経路があります。一つは特定の食品に含まれているプリン体と、体内で生成されるプリン体です。 尿酸は適量であれば、体に良い働きをすると考えられています。例えば、尿酸は体を酸化から守ったり、神経を保護したりなどです。 しかし、尿酸が体内に必要以上に蓄積すると問題が生じる可能性があります。そのため過剰な尿酸は健康に悪影響を及ぼす場合があります。 尿酸の生成と排出のメカニズム 私たちの体内では、尿酸の生成と排出のバランスが適切に保たれることで、尿酸値が一定の範囲内に維持されています。以下の表は、尿酸の生成要因と排出経路を簡潔にまとめたものです。 項目 説明 尿酸の生成要因 ・プリン体を多く含む食品の摂取 ・体内での代謝により生成 尿酸の排出経路 腎臓でろ過され、尿として排出される 尿酸は、プリン体と呼ばれる物質が分解されてできる老廃物の一種です。プリン体は、食事から摂取されるほか、体内でも生成されます。 一方、尿酸の約70%は腎臓で濾過され、尿として体外に排出されます。残りの約30%は腸管から排泄されると考えられています。 しかし、何らかの原因でこの生成と排出のバランスが崩れると、血中の尿酸値が上昇してしまいます。例えば、以下のような場合です。 バランスを崩す要因 説明 プリン体の過剰摂取 肉類、魚介類、ビールなど、プリン体を多く含む食品を過剰に摂取すると、尿酸の生成が増加する 腎機能の低下 加齢や腎臓病などにより腎臓の機能が低下すると、尿酸の排出が減少し、体内に蓄積されやすくなる このように、尿酸値を適正に保つには、バランスの取れた食生活と健康的な腎臓の機能維持が重要だといえるでしょう。 痛風と高尿酸血症の関係 高尿酸血症が長期的に続くと、尿酸が関節内に結晶として蓄積し、激しい炎症を引き起こすことがあり、痛風発作の原因の一つです。 痛風が適切に管理されない場合、以下のような合併症を引き起こすリスクがあります。 関節の損傷や変形 腎臓結石 腎機能障害 前述のように、尿酸は適度な量であれば体に必要な物質ですが、過剰になると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。痛風の管理において、尿酸値のコントロールは重要な役割を果たすでしょう。 ただし、尿酸値の上昇や痛風の発症には個人差があり、生活習慣や遺伝的要因なども関与していると考えられています。定期的な健康診断で尿酸値を確認し、異常が見られた場合は医療機関で適切な指導を受けることが大切です。 痛風発作の症状としては、通常、関節の激しい痛みと腫れ、発赤などが現れます。 特に、足の親指の付け根にある第一中足趾関節と呼ばれる関節が侵されることが多いですが、膝や足首、肘などの関節に症状が出る場合もあります。 痛みは突然現れ、数日から長くて2週間ほど続くことが特徴です。 尿酸値を上げる主な原因 尿酸値が上昇する原因は、大きく分けて「食生活」と「生活習慣」の2つがあります。自分の生活を振り返り、高尿酸血症のリスク要因がないか確認することが大切です。 食生活の影響:プリン体の多い食品とは? プリン体を多く含む食品の過剰な摂取は、尿酸値上昇の大きな原因の一つです。特に以下の食品には注意が必要です。 食品群 具体例 肉類 レバー、内臓肉など 魚介類 イカ、サーディン、アンチョビなど キノコ類 マッシュルーム、シイタケなど アルコール飲料 ビール、発泡酒など 表で示した食品に含まれるプリン体が体内で分解されると、尿酸が生成されます。そのため、これらの食品を過剰に摂取すると、尿酸値が上昇しやすくなります。 ただし、個人差もあるため、プリン体を多く含む食事を制限するだけではなく、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。 全体の食事内容をプリン体の多い食品を控えめにしつつ、野菜や果物、低脂肪乳製品など尿酸値を下げる効果が期待できる食品を積極的に取り入れるとよいでしょう。 例えば、ビタミンCが豊富なレモン、オレンジ、キウイフルーツ、ブロッコリーや、食物繊維を多く含む紅茶、ココア、ケール、ほうれん草などがあります。また、低脂肪乳製品やヨーグルトに含まれるカルシウムは、骨の健康維持に重要な栄養素です。 生活習慣とその影響:アルコール、運動不足、ストレス 食生活以外にも、以下の生活習慣が尿酸値に影響を与えます。 生活習慣 尿酸値への影響 アルコールの多飲 尿酸の排出を妨げる 運動不足 肥満のリスクを高め、尿酸値上昇につながる ストレス 直接的に尿酸値を上昇させる アルコールの過剰摂取は、尿酸の排出を阻害する直接的な影響があります。また、運動不足は肥満につながり、尿酸値上昇のリスク要因となります。さらに、ストレスを適切に解消できないと、それ自体が尿酸値を押し上げてしまう可能性があります。 このように、食生活だけでなく、生活習慣も尿酸値に大きな影響を与えます。自分の生活を見直し、アルコール摂取量の調整、適度な運動の実践、ストレス管理など、総合的なアプローチで尿酸値をコントロールすることが痛風予防につながるでしょう。 尿酸値を下げるための食事療法 高尿酸血症の改善には、適切な食事療法が重要な役割を果たします。尿酸値を下げる効果が期待できる食品を積極的に取り入れ、一方でプリン体の多い食品は控えめにすることが大切です。 尿酸値を下げる食品の選び方 以下の食品は、尿酸値を下げる効果が期待できます。 食品群 具体例 乳製品 低脂肪牛乳、ヨーグルト、チーズなど ビタミンCを多く含む野菜・果物 レモン、オレンジ、キウイ、ブロッコリー、いちごなど その他 コーヒー(カフェインを含まないものも可) 特にビタミンCは、プリン体の代謝を助け、尿酸の排出を促進する働きがあると考えられています。レモン水や野菜ジュースなど、手軽にビタミンCを摂取できる方法を取り入れるのもよいでしょう。 一方、プリン体が多く含まれる食品は控えめにしましょう。 具体的には以下のような工夫が大切です。 食品群 摂取量の目安 肉類 1日100g程度に抑える 魚介類 肉類と同様に控えめにする 野菜 積極的に摂取し、食事の中心にする 肉類や魚介類は、プリン体を多く含むため、食べ過ぎないように注意が必要です。一方、野菜は尿酸値を下げる効果が期待できる食材が多く含まれているため、積極的に摂取しましょう。 痛風予防に推奨される食生活のポイント 痛風予防のための食生活では、以下のポイントにも留意しましょう。 十分な水分補給で尿酸の排出を促す アルコール飲料の摂取を控える バランスの取れた食事を心がける 間食や夜食を控えめにする 適正体重の維持を目指す 痛風予防のために、十分な水分補給が重要です。尿酸は尿として排出されるため、水分摂取量が少ないと尿酸の排出が滞り、血中の尿酸値が上昇しやすくなります。 1日2リットル程度の水分摂取を目安に、こまめに水を飲むようにしましょう。ただし、アルコールや甘味飲料は尿酸値を上げる可能性があるため、避けましょう。 このように、痛風予防には継続した食生活の見直しを行いましょう。医師や栄養士の指示のもと、尿酸値を下げる食品を選び、プリン体の摂り過ぎに注意しながらバランスの良い食事を心がけましょう。 生活習慣の改善策 食事療法と並行して、運動習慣の獲得やストレス管理など、生活習慣すべての改善に取り組むことが大切です。 適度な運動の重要性と具体的な方法 適度な運動は、尿酸値を下げ、痛風のリスクを減らすのに効果的であるといわれています。運動の目安は以下の通りです。 項目 内容 頻度 週3回以上 時間 1回30分以上 種目例 ウォーキング、ジョギング、水泳など、自分に合った運動を選ぶ 運動習慣の獲得は、単に尿酸値を下げるだけでなく、肥満の予防にもつながります。肥満は高尿酸血症のリスク要因の一つであるため、運動を継続することが痛風予防に役立つ可能性があります。 ただし、運動の種類や強度は個人差があるため、医師のアドバイスを受けながら自分の体力や健康状態に合わせて、無理のない範囲で始めましょう。 アルコール摂取の管理と禁煙の効果 アルコールは尿酸値を上昇させる要因の一つです。痛風予防のためには、以下の点に気をつけましょう。 項目 内容 アルコール摂取量の見直し 適量を心がけ、過剰摂取を避ける アルコールの種類 特にビールなどプリン体を多く含む酒類は控えめにする 一方で、喫煙も尿酸値を上げるだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、禁煙は痛風予防に役立つ重要な生活習慣の改善策の一つです。 運動、アルコール、喫煙といった生活習慣は、尿酸値に大きな影響を与える可能性があります。食事療法に加えて、これらの生活習慣の改善にも取り組むことで、痛風のリスクを下げられるでしょう。 ただし、生活習慣の改善は個人差が大きいため、自分のペースで無理なく取り組むことが大切です。また、痛風の症状がある場合や尿酸値が高い場合は、医療機関で適切な指導を受けましょう。 定期的な健康診断の重要性 高尿酸血症は、初期には自覚症状が乏しいことが多く、発見が遅れがちです。そのため、定期的に健康診断で尿酸値をチェックすることが大切になります。 早期発見と適切な管理こそが、痛風予防の鍵となるでしょう。 尿酸値のチェックと痛風予防のための定期検診 尿酸値のチェックと痛風予防のための定期検診 健康診断で尿酸値を確認し、高尿酸血症を早期に発見することが重要です。 次のような方は特に注意が必要です。 リスク要因 解説 痛風の家族歴 痛風の家族歴がある方は、高尿酸血症のリスクが高くなりやすい 肥満傾向 肥満は高尿酸血症のリスク要因の一つ すでに高尿酸血症と診断された方は、医師の指示に従って定期的な検査を受けることが大切です。 診断後も、尿酸値の推移を継続的にチェックし、適切な管理を行うことが重要です。 医師と相談するタイミングとその方法 以下のようなケースでは、医師に相談することをおすすめします。 ケース 説明 健診で尿酸値が高めだと指摘された場合 早期の段階で医師に相談し、適切な指導を受けることが大切です 痛風発作が疑われる症状がある場合 関節の激痛など、痛風発作を疑う症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう 早期の治療開始が、重症化を防ぐ上で非常に重要です。医師との相談では、食生活や生活習慣について正直に伝え、適切なアドバイスを求めることが大切です。 医師と連携を取りながら定期的に検査を受け、生活習慣の改善にも取り組むことで、痛風のリスクを効果的に下げることができるでしょう。 自覚症状がない場合でも、健康診断での確認は欠かせません。自分の健康は自分で守るという意識を持ち続けることが、痛風予防に役立ちます。 痛風は、早期発見と適切な管理によって、予防や症状の改善が期待できる病気です。 定期的な健康診断と医師との連携を通して、高尿酸血症の早期発見と継続的な管理に努めましょう。 生活習慣の改善と合わせて、総合的に痛風予防に取り組むことが大切です。 まとめ:尿酸値管理による痛風予防の長期的な利点 適切に尿酸値を管理し、高尿酸血症を改善することは、痛風予防だけでなく、全身の健康維持にもつながる重要なプロセスです。 生活習慣の見直しと尿酸値のコントロールを続けることで、以下のような長期的な利点が期待できます。 長期的な利点 説明 痛風発作のリスク減少 尿酸値を適切にコントロールすることで、痛風発作のリスクを大幅に下げることができます 合併症リスクの低減 高尿酸血症が長期間続くと、関節や腎臓などに合併症が生じるリスクがありますが、尿酸値の管理によってそのリスクを減らすことができます 健康的な生活の実現 尿酸値管理のために行う生活習慣の改善は、全身の健康維持にもつながります つまり、適切な食事療法や運動習慣の獲得、定期的な健康管理などを継続することで、痛風のリスクを下げながら、全身の健康も守ることができるでしょう。 そのため、高尿酸血症と診断されたことを、生活習慣の改善のきっかけと捉えることが大切です。 小さなことからでも続けることが大切であり、食事の工夫や運動、ストレス管理など、日々の生活の中で実践できる予防策を見つけていきましょう。 生活習慣の改善で、将来の健康につながる良い習慣を身につけることができるでしょう。 高尿酸血症は適切な対策を講じることで、十分にコントロールできる可能性のある病態です。 定期的な健診で尿酸値をチェックし、異常が見られた場合は早めに医師に相談しましょう。 一人一人が痛風予防に前向きに取り組むことで、健康で充実した人生を送ることができるはずです。 今日から少しずつでも、生活習慣の改善に取り組んでみましょう。無理のない範囲で、自分に合った方法で続けていくことが大切です。医師や栄養士など専門家のアドバイスを参考にしながら、自分のペースで痛風予防に取り組んでいきましょう。 健康的な生活習慣を身につけることが、尿酸値の改善や症状の緩和につながるでしょう。 例えば、朝食前の軽い運動を日課にしたり、野菜中心の食事を心がけたりなどが挙げられます。 また、就寝前のストレッチでリラックスと取り入れやすいものから、自分に合った方法で少しずつ改善を積み重ねていくことが大切です。 また、飲み会の際にはアルコールを控えめにし、プリン体の多い食事は避けるなど、高尿酸血症のリスクが高まる場面での工夫も効果的でしょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,かしこく食べる,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体 沢井製薬,高尿酸血症・痛風ハンドブック
2024.11.11 -
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「痛風の発作は一日で治る?」 「痛風の発作が起きたときはどう対処すれば良い?」 現在、痛風と思われる症状があり、どのくらいの期間で治るのか気になっていませんか。 痛風の発作は激しい痛みを伴い、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。 しかし、適切な対処法と予防策を行えると、症状の軽減と再発の防止が可能です。 本記事では、痛風の発作が一日で治るのかを始め、発作時の対処法などを解説します。 痛風と上手に付き合うためのヒントになれば幸いです。 痛風の発作は一日で治らない 「痛風は一日で治る」とよく耳にしますが、これは誤解です。実際には、痛風の発作を完全に治すには数日から数週間はかかります。 痛風の発作が起こると、関節内の炎症を抑えるために、医師から消炎鎮痛薬やステロイド薬、コルヒチンなどの薬が処方されます。薬を適切に使うと症状を速やかに和らげて、回復までにかかる期間の短縮が可能です。 しかし、たとえ症状が改善されたように感じても、関節内の炎症が完全に治まるには時間がかかります。 一日での完治を期待せず、医師の指示に従って適切な治療を受けましょう。症状が軽くなっても、自己判断で治療を中断すると再発のリスクが高まります。 痛風は長期的な疾患であり、発作を予防するには、以下のように日常的な生活習慣の改善が欠かせません。 食事療法や運動習慣の見直し 定期的な検査と薬物療法 など 早期の適切な対処と長期的な疾患管理により、症状をコントロールし、健康的な生活を送るのも可能です。 痛風に関する正しい知識を身につけて、医療従事者と協力しながら、継続的な管理と治療に取り組みましょう。 痛風発作の原因と急性期の特徴 痛風発作は、体内で作られた尿酸が関節内に結晶として蓄積した際に、引き金となって起こる急性の炎症反応です。 痛風発作の典型的な症状例は、以下のとおりです。 激しい関節痛(主に足の親指の付け根に起こる場合が多い) 発赤、腫れ、熱感を伴う 触れるだけでも痛みを感じるほどの敏感さ 発作は突然始まり、適切な治療を行わないと数日から長くて2週間ほど続きます。 激しい痛みが持続し、日常生活に大きな支障をきたす場合があります。 痛風の発作初期における痛みの対処法【自宅でできる】 痛風の発作が疑われるときは、以下のような自宅での対処法を試みましょう。 対処法 説明 注意点 安静にして患部を冷やす 氷のうやアイスパックを患部に当てると、炎症を抑えて痛みを和らげられます 冷やしすぎには注意が必要です ※凍傷のリスクを減らすための具体例 ・直接皮膚に当てず、タオルを1枚挟んで使用する ・1回の冷却は20分を目安とし、これを1クールとする ・クール間は10〜15分の休憩を入れる ・1日3〜4クール程度を目安とする 水分を十分に摂取し、尿酸の排泄を促す 痛風の発作時は、体内の尿酸値が高くなっています。十分な水分を摂取すると尿量を増やし、尿酸の排泄を助けられます – 市販の鎮痛消炎薬を使う ロキソニンなど、市販の鎮痛消炎薬を使うと、痛みと炎症を和らげられます 使うときは用法・用量を守り、副作用にも注意が必要です (医師や薬剤師に相談がおすすめです) 痛風の発作が起きた場合、できるだけ早く痛みを和らげるのが大切です。 上記の方法で症状が和らぐ場合もありますが、効果が不十分な場合は迷わず医療機関を受診しましょう。 痛風は緊急治療になるケースもあり! 激しい痛みが続くときや関節の腫れが強い場合は、医師による治療が必要です。代表的な治療オプションは以下のとおりです。 治療の選択肢 説明 期待される効果 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の処方 NSAIDsは、炎症を引き起こす物質の生成を抑えて、関節の痛みと腫れを和らげる効果が期待できます 痛みと炎症の緩和 ステロイド薬の内服または関節内注射 ステロイド薬は強力な抗炎症作用を持ち、速やかに症状を改善させる可能性があります。内服薬や関節内注射の形で投与します 速やかな症状の改善 コルヒチンの処方 コルヒチンは、炎症を引き起こす白血球の活動を抑制して、発作を鎮める効果が期待できます 発作の鎮静化 上記の薬剤は炎症を速やかに抑えて、痛みを和らげる効果が期待できます。ただし、薬剤は副作用のリスクもあるため、医師と相談しながら治療を選択するのが大切です。 痛風の発作時は、早期の適切な対処が重要です。医師と連携しながら効果的な治療を受けられると、痛みを和らげて回復までの期間を短縮できるでしょう。 自宅での応急処置を行いつつ、症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診してみてください。 また、痛風以外にも、体の症状でなにかお悩みを抱えておられる方は、当院のメールや電話からお気軽にご相談ください。 痛風の予防における2つのポイント 痛風の発作を一日で治すのは難しいですが、適切な管理により再発の予防は可能です。 以下で長期的な尿酸値管理の重要性と、生活習慣の改善策を解説します。 尿酸値を管理しよう 生活習慣を改善しよう 尿酸値を管理しよう 痛風の発作を防ぐには、血中尿酸値を適正にコントロールするのが大切です。具体的には以下のような方法が有効です。 方法 説明 尿酸値を下げる薬物療法 アロプリノール、フェブキソスタットなどの薬を使用し、尿酸値をコントロールします 定期的な尿酸値のモニタリング 定期的な血液検査で尿酸値を確認し、必要に応じて治療方針を調整します プリン体の多い食品の制限 肉類、魚介類、ビールなど、プリン体を多く含む食品の摂取を控えめにします 医師と相談しながら、自分に合った尿酸値の管理法を見つけるのが重要です。 なお、個人差があるので画一的な方法ではなく、自分の体の反応を観察しながら方法を探りましょう。 また、痛風と尿酸値における詳細は、以下の記事で詳しく解説していますのであわせて参考にしてみてください。 生活習慣を改善しよう 日常生活でできる痛風の予防策も忘れてはいけません。具体的には以下のような点に注意しましょう。 予防策 具体例 十分な水分補給で尿酸の排泄を促す 1日1.5〜2リットル程度の水分摂取を目安に、こまめな水分補給を心がけましょう 適度な運動で体重管理と血行促進 ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行うと、体重管理や血行促進に役立ちます。 ただし、急激な運動は避け、自分のペースで無理なく続けるのが大切です ストレス管理とリラクゼーション ストレスは尿酸値を上昇させる要因のひとつです。 リラックスできる時間を設けて、心身の健康維持に努めましょう アルコール(とくにビール)の制限 アルコールのなかでも、ビールは尿酸値を上昇させやすいため、できるだけ控えめにするのが望ましいです。 アルコールを飲む場合は、ビール以外の種類を選ぶなどの工夫も効果的です 上記の生活習慣を見直すと、痛風発作のリスクを下げる効果が期待できます。ただし、生活習慣の改善は短い期間では難しいため、無理のない範囲で少しずつ取り組んでいくのが大切です。 医師や栄養士と相談しながら、自分に合った予防策を見つけて長期的に実践していくのが、痛風とうまく付き合うための鍵となります。 痛風は完治が難しい病気ですが、適切な管理により、発作を最小限に抑えて健康的な生活を送れるでしょう。 痛風の発作が仕事・日常生活に与える影響について 痛風の発作は突然起こるため、仕事の予定に支障をきたす場合があります。 重要な会議の当日に発作が起こると、欠席せざるを得ない状況になるかもしれません。激しい痛みのため集中力が低下し、仕事の効率が下がる可能性もあるでしょう。 長期的な痛風の管理を怠ると、関節の変形や機能障害につながる恐れもあります。関節が変形すると、歩行や家事などの日常的な動作が難しくなり、生活の質が大きく低下します。 また、痛風の発作を恐れるあまり、外出や運動を控えてしまう人もいるかもしれません。 しかし、適切な痛風管理を行えば、これらの影響を最小限に抑えられます。医療チームと協力しながら、薬物療法や生活習慣の改善に取り組むのが大切です。 痛風と上手に付き合うコツ 痛風と上手に付き合うには、以下のような生活戦略が有効です。 戦略 具体例 痛風発作に備えた応急処置キットを常備する ・鎮痛剤、氷のう、補助具などをつねに持ち歩く ・職場や旅行先にもキットを置いておく ストレスマネジメントの方法を身につける ・深呼吸やマインドフルネスなど、リラクゼーション技法を習得する ・趣味や運動など、ストレス発散の時間を作る 周囲の理解と協力を得る ・上司や同僚に病状を説明し、必要な配慮を求める ・家族や友人に協力を呼びかけ、サポート体制を整える 定期的な通院と自己管理を怠らない ・医師の指示に従い、定期的な検査と治療を受ける ・日々の食事、運動、服薬を自己管理し、病状の安定を図る 上記の戦略を実践すると、痛風があっても充実した社会生活を送れるはずです。たとえば、職場で痛風の理解を得たいときは、上司や人事部門に相談しましょう。 症状や治療の必要性を説明し、通院や休息の配慮が必要な点を伝えてみてください。また、同僚にも状況を伝えてサポートを求めると、仕事上の負担を軽減できるかもしれません。 プライベートでは、家族や友人に痛風の話をして協力を求めるのも大切です。発作時には家事や育児を代わってもらったり、通院に付き添ってもらったりするなど、具体的な支援を求めましょう。 理解者を増やせると、痛風とうまく付き合いながら充実した生活を送れます。 痛風は生活に大きな影響を及ぼす病気ですが、適切な管理と周囲の支援があれば、影響を最小限に抑えられます。 医療チームと相談しながら、自分に合った生活戦略を立てて、実践していくのが重要です。痛みに負けず、前向きな気持ちで日々を過ごしていきましょう。 まとめ|痛風の発作は一日で治らないので生活習慣を整えて改善しよう 痛風の発作は一日で完治できませんが、適切な対処と予防策により、症状の急速な軽減と再発防止が可能です。 以下の表で、痛風の発作における管理のポイントをまとめています。 管理のポイント 具体的な方法 発作時の対処 ・安静を保ち、患部を冷やす ・十分な水分を摂取 ・激しい痛みや発熱があるときは医療機関を受診 ・医師の指示に従い、鎮痛剤や炎症を抑える薬を服用 長期的な尿酸値管理 ・定期的な血液検査で尿酸値を確認 ・必要に応じて尿酸降下薬を服用 ・プリン体の多い食品を控えめにする ・十分な水分摂取を心がける 生活習慣の改善 ・適度な運動(ウォーキング、ストレッチなど)を取り入れる ・ストレスの管理方法を身につける ・体重管理を行う 仕事との両立 ・上司や同僚に病状を説明し、必要な配慮を求める ・痛風の発作時は、在宅勤務や休暇を取得できるよう事前に相談 ・職場に応急処置キットを常備する ・通院や体調管理の時間を確保する ・ストレスの多い仕事は可能な範囲で調整してもらう 痛風と向き合う姿勢が、充実した人生を送るための鍵となります。具体的には、以下のようなアプローチが大切です。 ・痛みに負けずに前向きに取り組む ・医療チームと相談しながら、自分に合った痛風の管理方法を見つける ・痛風を自分の健康と向き合うチャンスと捉える ・痛風の治療に前向きに取り組む ・毎日の小さな習慣を積み重ねる 痛風と診断されたからといって諦める必要はありません。痛風とうまく付き合うためにも一人で抱え込まず、医療機関などに相談してみてください。 また、痛風以外の症状でも、なにかしらの不調が出てしまう場合もあります。体のお悩みを抱えておられるときは、ぜひ当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。 【リペアセルクリニックへのご相談方法】 メール相談 来院予約 電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 痛風が一日で治るのかに関するよくあるQ&A 以下では、痛風が一日で治るのかに関して、よくある質問と答えをまとめています。 Q.痛風の初期症状は何がありますか? A.以下の症状があげられます。 足の親指の付け根の激痛 関節の腫れと発赤 関節の熱感 歩行困難 上記でなにか当てはまる症状がある場合は、すぐに医療機関を受診するのが大切です。 痛風の初期症状については、以下の記事で詳細を解説しているので、あわせて参考にしてみてください。 Q.痛風の対策におすすめの食事はありますか? A.痛風対策の食事では、プリン体の少ない食材を中心に選ぶのが大切です。 以下で、推奨される食品をまとめています。 低脂肪乳製品 全粒穀物 大豆製品 など 痛風になったときの食事法は、以下の記事が参考になります。 Q.痛風に市販薬を使っても良いですか? A.痛風の発作時に一時的な痛みを和らげるために、ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を含む鎮痛消炎薬が市販されています。 ただし、根本的な治療にならない点は注意が必要です。また、薬には副作用もあるので、使うときはかかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。 また、痛風の市販薬に関する詳細は、以下の記事で解説しているので参考にしてみてください。 Q.痛風のときはコーヒーを飲まないほうが良いですか? A.カフェインの過剰摂取を避ければ、痛風の方でもコーヒーを飲んで構いません。 ただし、本人の体調や体質によって変わるため、不安なときはかかりつけの医師に相談してみてください。 また、コーヒーと痛風の関係は、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご確認ください。 参考文献一覧 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,かしこく食べる,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 沢井製薬株式会社,高尿酸血症・痛風ハンドブック
2024.11.08 -
- 内科疾患、その他
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「痛風の発作がつらくて仕事や日常生活に支障が出ている」「痛風の薬を飲んでいるけれど、副作用が心配」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。 痛風は適切な治療を行わなければ、関節の損傷や日常生活の質の低下を招く恐れがあります。しかし、正しい薬の選択と使用法を理解し、生活習慣の改善を併せて行えば、痛風をうまくコントロールすることができるのです。 本記事では、痛風治療に用いられる代表的な薬剤の特徴と副作用対策、また痛風予防のための生活習慣改善のポイントについて詳しく解説します。痛風とうまく付き合うための情報を提供できれば幸いです。 痛風とは? - 基礎知識から理解する 痛風は、血液中の尿酸値が高くなることで発症する病気です。関節に尿酸の結晶が蓄積することで激しい痛みと炎症を引き起こします。痛風について正しく理解するために、その原因と症状についてみていきましょう。 痛風の原因と発症メカニズム 痛風の主な原因は、体内での尿酸の生成過多または排泄不足によって血中尿酸値が上昇することです。尿酸は、プリン体と呼ばれる物質が分解されてできる老廃物の一種です。 原因 説明 尿酸の生成過多 プリン体の分解によって尿酸が過剰に生成される。肥満の人にこの傾向が強い。 尿酸の排泄不足 腎臓での尿酸の排泄が適切に行われず、体内に蓄積する。アルコールはこの排泄を妨げる。 遺伝的要因は、尿酸の生成や排泄に関わる酵素の働きに影響を与える可能性があります。例えば、尿酸の生成に関わる酵素の活性が高い場合、尿酸が過剰に生成されやすくなります。一方、尿酸の排泄に関わる酵素の活性が低い場合、尿酸が体内に蓄積されやすくなります。 生活習慣も尿酸値に大きな影響を与える可能性があります。高プリン体の食事や過剰なアルコール摂取は、尿酸の生成を促進する可能性があります。また、肥満や運動不足は、体の細胞が血糖を十分に取り込めない状態を引き起こし、尿酸の排泄を妨げる可能性があります。 血中に蓄積した尿酸は、関節内で針状の結晶となり、激しい炎症反応を引き起こすことがあります。尿酸結晶が関節内の細胞に取り込まれると、炎症性物質であるインターロイキン-1βなどが放出されます。これらの炎症性物質は、関節内の滑膜細胞や軟骨細胞に作用し、さらなる炎症を引き起こします。この炎症反応が、痛風発作として知られる関節の腫れや痛みを引き起こすのです。 痛風発作を繰り返すと、関節への負担が蓄積し、将来的な関節の機能低下につながる可能性があります。したがって、痛風の早期発見と適切な治療が重要です。 痛風発作の兆候と初期対応 痛風発作は、以下のような突然の激しい関節痛で始まる場合があります。 足の親指の付け根(第一中足趾節関節)の激しい痛み 足首、膝、手首などの痛み 関節の赤みや腫れ、わずかな触れ合いでも痛みを感じる 患部の熱感や皮膚の光沢 発作は夜間から早朝にかけて起こることが多く、安静時でも痛みが持続する場合があります。発作が続く間は歩行が困難になり、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 痛風発作を疑ったら、以下の対処を試してみましょう。 患部を安静にする 冷却パックなどで患部を冷やし、炎症を和らげる 十分な水分を補給する ただし、これらは応急処置に過ぎません。激痛が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師の診断と指示に従って適切な治療を開始することが大切です。早期の適切な治療が、症状の改善と関節の損傷防止に役立つ可能性があります。 痛風発作が疑われる場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。医師と相談しながら、適切な治療方法を選択することが重要です。 痛風治療のための薬物療法 - 選択肢とその効果 痛風の治療では、痛みと炎症を抑える薬、尿酸値を下げる薬などが使用されます。それぞれの薬剤の特徴と効果を理解し、自分に合った治療法を選択することが大切です。 NSAIDsとその作用 痛風発作の急性期治療には、痛みや炎症を抑える薬がよく使われます。これらの薬は医療用語でNSAIDsと呼ばれますが、一般的には「消炎鎮痛剤」として知られています。 よく使われる薬の例は次の通りです。 イブプロフェン ロキソプロフェン ジクロフェナク NSAIDsの利点や注意点は以下の通りです。 利点 注意点 発作時の痛みを早く抑える可能性がある 胃腸障害のリスクがある 腎機能への負担がある NSAIDsは発作時の症状改善に有効な場合がありますが、副作用として胃腸障害や腎機能への負担があるため、長期間の使用には注意が必要です。使用する際は、医師の指示に従い、定期的な検査を受けることが大切です。 副腎皮質ステロイドの利点とリスク 副腎皮質ステロイドは、NSAIDsが使えない患者さんや重度の痛風発作に対して用いられることがあります。ステロイドは強力な抗炎症作用を持ち、速やかに症状を改善させる可能性があります。しかし、長期使用によって感染症リスクの上昇、骨密度の低下、血糖値の上昇などの副作用のリスクもあります。 コルヒチンの特性と使い方 コルヒチンは、痛風発作の予防と急性期治療の両方に用いられることがある薬剤です。この薬は、炎症を引き起こす白血球の活動を抑制することで、発作を抑える効果が期待できます。ただし、吐き気や下痢などの消化器症状を引き起こす可能性があるため、少量から開始し、慎重に用量を調整する必要があります。 痛風の薬物療法を行う際は、患者さんの状態や合併症、副作用のリスクを考慮して、適切な薬剤を選択することが重要です。また、定期的な検査を行い、薬剤の効果と副作用をモニタリングすることが求められます。医師と相談しながら、患者さん一人ひとりに合った治療方針を立てることが大切です。 市販薬と処方薬 - どう使い分ける? 痛風の治療薬には、医療機関で処方されるものと、薬局で購入できる市販薬があります。それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けることが大切です。 市販薬の選び方と注意点 痛風発作時の一時的な痛みを和らげるために、ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を含む鎮痛消炎薬が市販されています。ただし、市販薬を使用する前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。 市販薬の利点と注意点は以下の通りです。 利点 注意点 すぐに購入できる 根本的な治療にはならない 一時的な症状緩和に役立つ可能性がある 副作用のリスクがある 症状が続く場合は医療機関の受診が必要 市販薬は症状を一時的に和らげるための対処療法です。発作が続く場合は、根本原因に着目した治療が必要になるでしょう。また、市販薬を使用する際は、用法・用量を守り、適切に使用することが重要です。過剰摂取や長期連用は副作用のリスクを高める可能性があります。 処方薬の効果と副作用の管理 一方、医療機関で処方されるのは、尿酸値を下げる薬剤です。代表的なものは、アロプリノールやフェブキソスタットなどです。これらの薬は、尿酸の生成を抑えたり、排泄を促進したりすることで、血中の尿酸値を下げる可能性があります。その結果、痛風発作の予防効果が期待できます。 処方薬の特徴は以下の通りです。 特徴 注意点 長期間の服用が必要な場合がある 定期的な検査でモニタリングが重要 肝機能障害や皮膚症状など副作用の兆候に注意が必要 処方薬は根本的な治療薬ですが、長期服用に伴うリスクもあります。服用中は医師の指示に従い、定期的な検査を受けて副作用をチェックすることが重要です。 このように、市販薬と処方薬はそれぞれ異なる役割があります。状況に合わせて上手に使い分け、薬の特性を理解した上で、医師の指導の下で適切に服用することが望ましいでしょう。痛風とうまく付き合うには、薬の正しい使い方を知ることが何よりも大切です。 痛風予防と生活習慣 - 再発防止のためにできること 薬物療法と並行して、生活習慣の改善に取り組むことが痛風の再発予防につながります。食事の工夫と適度な運動習慣が特に重要です。 食事と生活習慣の改善 痛風の予防には、バランスの取れた食事が大切です。 食事では、プリン体の摂取を控えめにすることが重要です。プリン体を多く含む食品としては、以下のようなものがあります。 レバー、腎臓、脳など内臓類 イワシ、サンマ、カツオなどの青魚 マッシュルーム、ほうれん草、アスパラガスなどの野菜 ビールなどアルコール飲料 これらの食品を過剰に摂取すると、尿酸値が上昇する可能性があるため、適量を心がけましょう。 一方、低脂肪乳製品や果物、コーヒーは、尿酸値を下げる効果が期待できる食品として知られています。バランスの取れた食事の中に、これらの食品を取り入れることも良いでしょう。 痛風を防ぐための日常のポイント 適度な運動習慣も、尿酸値を下げ、痛風の予防に役立つ可能性があります。ウォーキングやジョギング、水泳、自転車こぎなどの有酸素運動を、週に3〜5回、1回30分〜1時間程度行うことが目安です。無理のない範囲で、継続することが大切です。 運動の期待できる効果は以下の通りです。 項目 内容 効果 運動 週3〜5回、30分〜1時間程度の有酸素運動を目安 尿酸値を下げる可能性がある 水分補給の期待できる効果は以下の通りです。 項目 内容 効果 水分補給 1日2リットル程度の水分を意識的に摂取 尿酸の排泄を促進する可能性がある 前述したように、食事と運動、水分補給への意識的な取り組みが、痛風の予防や再発防止に役立つ可能性があります。 痛風予防のための生活習慣の改善は、薬物療法と並行して行うことで、より効果的な痛風管理につながります。無理のない範囲で、生活習慣の見直しを行っていくことが大切です。 痛風発作を経験したら - すぐにできる対処法 いざ痛風発作が起きてしまったら、迅速な対応が症状の緩和に役立ちます。自宅でできるケア方法と医療機関への受診のタイミングを知っておきましょう。 緊急時の自宅でのケア方法 痛風発作が疑われる場合、まずは患部を安静にして動かさないようにします。そして、冷却パックなどで患部を冷やすことが大切です。冷却によって炎症と痛みを和らげることができるかもしれません。 さらに、水分を十分に摂取し、尿酸の排泄を促進することも重要です。症状が軽度であれば、安静にして様子を見ることをおすすめします。 痛風発作時にすぐにすべきこと 痛風発作が疑われる場合、まずは安静にして患部を動かさないようにしましょう。冷却パックなどを用いて患部を冷やすことで、炎症と痛みを和らげることができる可能性があります。 また、発作時には水分を十分に摂取することが重要です。水分補給によって尿量が増加し、尿酸の排泄が促進される可能性があります。 症状が軽度で、過去に同様の発作を経験したことがある場合は、自宅で安静にして様子を見ることも可能です。しかし、以下のような場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 激しい痛みが続く 関節の腫れが強い 発熱を伴う 医療機関では、発作時の痛みと炎症を抑えるための治療が行われます。また、血液検査で尿酸値や炎症反応をチェックし、適切な治療方針が決定されます。 痛風発作を放置すると、関節の機能低下につながる可能性があります。また、発作を繰り返すことで、痛風結節(尿酸塩の塊)が形成され、関節の変形や皮膚の問題を引き起こす可能性もあります。 したがって、痛風発作が疑われる場合は、早期に医療機関を受診し、適切な治療を開始することが重要です。医師と相談しながら、発作時の対処法や日常生活での注意点について理解を深めることが、痛風とうまく付き合っていくために役立つでしょう。 まとめ【痛風治療の基礎知識】効果的な薬の選び方と副作用対策 痛風は、適切な対策を行えばコントロールしやすい病気です。薬の選択と副作用への対策、そして食事や運動習慣の見直しが、痛風管理の鍵となります。一人ひとりに合った痛風とのつきあい方を見つけることで、快適な日常生活を取り戻せるでしょう。 医療従事者とよく相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 愛知県薬剤師会,17.痛風(高尿酸血症) 痛風・尿酸財団,処方される主な痛風の薬 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,かしこく食べる,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体
2024.11.06 -
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「痛風の発作が起きて激しい痛みに襲われた」「高尿酸血症と診断されたけど、どう対処すればいいの?」 こうした経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 痛風は単なる関節の痛みではなく、放置すると重大な合併症を引き起こす可能性があります。しかし、適切な治療と生活習慣の改善により、痛風をコントロールし、健康的な生活を送ることができるのです。 本記事では、痛風の基礎知識から治療法、そして長期的な尿酸値管理のための生活習慣改善策まで、具体的なステップを詳しく解説します。痛風と上手に付き合い、より良い人生を送るためのヒントが見つかれば幸いです。 痛風とは何か?症状と原因の理解 痛風は、体内で作られる老廃物の一種である「尿酸」が過剰に蓄積することで発症する病気です。血中の尿酸値が高くなると、関節内に尿酸の結晶が沈着し、激しい炎症と痛みを引き起こします。痛風を正しく理解するために、その症状と原因について見ていきましょう。 痛風の典型的な症状 痛風の最も典型的な症状は、突発的な関節の激痛です。特に、足の親指の付け根(第一中足趾節関節)が影響を受けやすいですが、足首、膝、手首などの関節も侵される可能性があります。痛風発作時には、関節の発赤、腫れ、熱感を伴い、わずかな接触でも耐えがたい激痛となることがあります。 痛風発作は、主に夜間から早朝にかけて起こることが多く、安静時でも痛みが持続します。発作中は歩行が困難になり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 一般的に、痛風発作は数日から長くて2週間ほど続きますが、その間は徐々に症状が改善していきます。しかし、適切な治療を行わないと、発作を繰り返したり、関節の変形や腎臓などの合併症を引き起こしたりする可能性があります。 痛風発症のリスク要因 痛風の発症には、遺伝的な体質と生活習慣の両方が関与しています。主なリスク要因としては、以下のようなものがあげられます。 男性(特に40代以降) 肥満や過体重 高血圧や脂質異常症などの生活習慣病 腎機能低下 アルコール多飲(特にビールなどのプリン体を多く含むアルコール) プリン体の多い食事(レバー、イカ、青魚など) 利尿剤などの特定の薬剤の使用 これらのリスク要因が複数重なると、痛風を発症する可能性がさらに高まります。 中でも、ビールなどのアルコールの過剰摂取は、尿酸の生成を促進し、排泄を妨げるため、尿酸値を大きく上昇させる要因となります。また、プリン体を多く含む食品を過剰に摂取することも、尿酸値の上昇につながります。 生活習慣の改善によって、痛風のリスクを下げることができます。遺伝的な体質がある場合は、より一層の注意が必要です。肥満の解消、アルコールの制限、プリン体の摂取制限など、食事や飲酒量、運動習慣などを見直し、尿酸値のコントロールに努めることが大切です。 また、定期的な健康診断で尿酸値をチェックし、高尿酸血症の早期発見と予防に努めることも重要です。痛風の初期症状を見逃さず、適切な治療を早期に開始することで、痛風発作の頻度や重症度を抑えることができるでしょう。 痛風は、生活習慣の改善と適切な治療によって、十分にコントロール可能な病気です。症状や原因を正しく理解し、医師と相談しながら、自分に合った予防法や治療法を見つけていくことが大切です。 痛風治療の基本 痛風の治療は、大きく分けて、 痛風発作時の急性期の痛みの管理 長期的な尿酸値のコントロール の2つの側面から行われます。これらの治療法の特徴と効果を理解し、医師と相談しながら自分に合った方法を選択することが大切です。 痛風は適切な治療を続けることで、症状をコントロールできる可能性のある病気です。発作時の対処と並行して、長期的な尿酸値の管理にも取り組むことが大切です。生活習慣の改善なども含めた総合的なアプローチが、痛風治療の鍵となります。 薬物療法の選択と効果 痛風の薬物療法には、発作時の痛みと炎症を抑える治療と、長期的な尿酸値をコントロールする治療があります。 発作時の治療では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド剤、コルヒチンなどが使用されます。これらの薬剤は、症状の重症度や状態に応じて選択されます。 治療法 効果 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の処方 痛みと炎症を抑える ステロイド剤の投与 強力な抗炎症作用により、速やかに症状を改善させる可能性がある コルヒチンの処方 炎症を引き起こす白血球の活動を抑制し、発作を鎮める 長期的な尿酸値のコントロールには、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬が用いられます。 薬剤の種類 効果 尿酸生成抑制薬(アロプリノールなど) 体内での尿酸の生成を抑える 尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど) 腎臓からの尿酸の排泄を促進する 医師と相談しながら、最適な治療方針を決めていくことが重要です。定期的な血液検査で尿酸値をモニタリングしながら、薬の種類や用量を調整していきます。 発作時の応急処置 痛風発作が起きた際は、まずは安静を保ち、患部を冷やすことが重要です。冷却には氷嚢(氷を入れた袋)やアイスパックを使うと良いでしょう。15〜20分程度を目安に、患部の様子を見ながら冷却を行いましょう。 また、水分を十分に摂取し、尿酸の排泄を促進することも大切です。発作時は、体内の尿酸値が高くなっているため、尿量を増やすことで尿酸の排泄を助けることができます。 痛風発作時の応急処置としては、以下の3点がポイントです。 応急処置 内容 患部の安静 関節に負担をかけないように、安静にする 冷却による痛み・腫れの軽減 氷嚢やアイスパックで患部を冷やし、炎症を和らげる 水分の十分な摂取による尿酸排泄の促進 水やお茶などの水分を十分に取り、尿量を増やす 応急処置で症状が落ち着かない場合や、激しい痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけ、継続していくことが重要です。定期的な通院と検査を通して、尿酸値や症状の変化を確認し、必要に応じて治療方針を調整していきましょう。 長期的な尿酸値管理の重要性 痛風の根本的な管理には、長期的な尿酸値のコントロールが必要です。一般的に、目標とされる尿酸値は6.0mg/dL未満とされています。尿酸値をこの範囲に保つことで、痛風発作の再発を防ぎ、合併症のリスクを下げることができる可能性があります。ただし、個人差があるため、具体的な目標値については医師と相談しながら設定することが大切です。 適切な食事の取り組み 尿酸値の管理には、食事の改善が欠かせません。プリン体を多く含む以下のような食品の摂取を控えめにし、野菜や低脂肪乳製品を中心とした食事を心がけることが推奨されています。 以下の表は、代表的なプリン体を多く含む食品と、100gあたりに含まれるプリン体の量を示しています。 プリン体を多く含む食品 含まれるプリン体の量(mg/100g) 具体例 レバー 300-1000 牛レバー、鶏レバー、豚レバーなど カツオ 200-400 カツオの刺身、たたき、缶詰など イカ 100-200 イカの刺身、塩辛、ゲソ揚げなど ビール 10-30 アルコール度数の高いビール、発泡酒など 食品100gあたりに含まれるプリン体が200mg以上になると高プリン食です。 ビールは、アルコール飲料の中でもプリン体を多く含むとされています。特に、アルコール度数の高いビールや発泡酒は、プリン体の量が多い傾向にあり、過剰摂取は避けましょう。 また、十分な水分摂取は尿酸の排泄を促進する可能性があるため、1日2リットル程度の水分を意識的に摂取することが良いとされています。ただし、摂取する水分の量は個人の体格や活動量によって異なるので、医師や栄養士に相談しながら調整していくことが大切です。 効果的な体重管理と運動 肥満は痛風のリスクを高める大きな要因の一つです。適正体重の維持を目指し、以下のようなバランスの取れた生活習慣を心がけることが推奨されています。 バランスの良い食事 適度な運動 運動は尿酸値を下げる効果が期待できます。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行うことが良いでしょう。ただし、運動の種類や頻度は個人の体力や健康状態によって異なるため、医師や運動指導士に相談しながら、自分に合ったプログラムを作ることが大切です。 このように、食事や運動、水分補給など、生活習慣全般での取り組みが、長期的な尿酸値の適正化につながる可能性があります。薬物療法と併せて、自分に合った生活リズムを見直すことが、痛風とうまく付き合う秘訣となるでしょう。ただし、生活習慣の改善は個人差が大きいため、医師や栄養士などの専門家に相談しながら、無理のない範囲で続けていくことが重要です。 生活習慣の改善で予防する 痛風の予防には、日常生活の習慣を見直し、改善することが重要です。ここでは、避けるべき食品と推奨される食品、そして具体的な生活改善策について解説します。 避けるべき食品と推奨される食品 痛風を予防するためには、プリン体を多く含む食品を控えめにし、尿酸値を下げる効果が期待できる食品を積極的に取り入れることが大切です。 控えめにする食品 尿酸値を下げる効果が期待できる食品 肉類(特にレバーや内臓肉) 低脂肪乳製品(ヨーグルト、チーズなど) 魚介類(イカ、カツオ、サバなど) 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど) ビール ビタミンC豊富な果物(レモン、オレンジ、キウイなど) 全粒穀物(玄米、全粒粉パンなど) 大豆製品(豆腐、納豆など) 食事では、これらの食品を上手に組み合わせ、バランスの取れた献立を心がけましょう。また、調理法にも気をつけ、脂肪の多い料理や刺激の強い味付けは控えめにすることが大切です。 日常生活での具体的な改善策 痛風の予防には、日々の生活習慣を見直し、改善していくことが大切です。無理のない範囲で、以下のようなポイントに気をつけながら、着実に改善を進めていきましょう。 改善のポイント 内容 アルコール摂取量の調整 特にビールは控えめにする 十分な水分補給 個人差はあるが、1日1.5〜2リットル程度を目安に補給する ストレス管理 自分なりのリラックス方法を見つける 規則正しい睡眠習慣の確立 十分な睡眠時間の確保をする 適度な運動の習慣化 週2-5回、30分程度の有酸素運動を目安に行う これらの改善ポイントを一度に全て取り入れるのは難しいかもしれません。しかし、一つひとつの取り組みを継続的に行うことで、徐々に痛風のリスクを下げることができる可能性があります。 例えば、アルコール摂取量を減らすことで、プリン体の過剰摂取を避けられるだけでなく、肝臓の負担を軽減できます。また、十分な水分補給は、尿酸の排泄を促進し、結石のリスクを下げる効果が期待できます。 ストレス管理や規則正しい睡眠習慣は、体調を整えるために重要です。自分なりのリラックス方法を見つけ、十分な睡眠時間を確保することで、ストレスの軽減や生活リズムの改善につながるでしょう。 さらに、適度な運動習慣は、尿酸値を下げるだけでなく、体重管理や全身の健康維持にも役立ちます。ウォーキングやジョギング、水泳など、自分に合った運動を選んで、無理のない範囲で続けていくことが大切です。 このように、日常生活の中で痛風予防を意識し、小さな改善を積み重ねていきましょう。健康的な生活習慣を身につけることが、痛風の症状改善や予防に役立つ可能性があります。ただし、生活習慣の改善は個人差が大きいため、自分のペースで無理なく取り組むことが重要です。 合併症を防ぐために 痛風を放置すると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。合併症の予防には、痛風の適切な管理が必要です。 痛風と関連する合併症 高尿酸血症が長期間続くと、以下のような合併症を引き起こすリスクが高まります。 合併症 説明 痛風結節 関節周囲や軟部組織に尿酸塩の結晶が蓄積し、こぶ状の腫れができる 尿酸結石 腎臓に尿酸の結晶が蓄積し、結石を形成する 腎機能障害 尿酸結晶が腎臓に蓄積することで、腎機能が低下する また、痛風は心血管疾患(高血圧、心筋梗塞、脳卒中など)のリスク因子の一つとしても知られています。痛風患者は、心血管疾患の予防にも注意が必要です。 合併症の予防と対策 痛風の合併症を予防するには、適切な治療と尿酸値の管理が何より大切です。具体的には、以下のようなポイントに気をつけましょう。 ポイント 内容 定期的な医療機関の受診 症状の変化や尿酸値の推移を定期的にチェックするために、医療機関を受診することが重要です。これにより、病状の進行や合併症の兆候を早期に発見し、適切な治療方針を立てやすいです 医師の指示に従った治療の継続 医師が処方した薬物療法を適切に継続することが大切です。痛風の治療薬には、尿酸値を下げる薬や痛風発作を抑える薬などがあります。これらの薬を医師の指示通りに服用し、治療を継続することで、尿酸値をコントロールし、合併症のリスクを下げやすくなります 定期的な医療機関の受診と、医師の指示に従った治療の継続は、痛風の合併症を予防するために欠かせません。症状や尿酸値の変化を定期的にチェックし、適切な治療方針を立てることが重要です。また、処方された薬物療法を適切に継続することで、尿酸値をコントロールし、合併症のリスクを下げることができます。 さらに、痛風と関連の深い生活習慣病(肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病など)の予防と管理も重要です。 予防と管理 内容 バランスの取れた食事 適切な食事療法により、体重管理や生活習慣病の予防につながる 適度な運動 運動療法は、肥満の解消や心血管系の健康維持に役立つ 定期的な健康診断の受診 生活習慣病の早期発見と予防に繋がる 痛風の合併症を防ぐには、生活習慣の改善と医師との連携が欠かせません。定期的な受診と治療の継続、そして健康的な生活習慣を身につけることで、合併症のリスクを減らすことができるでしょう。 まとめ:痛風治療への積極的なアプローチ 痛風は、適切な治療と生活習慣の改善により、コントロールできる可能性のある病気です。痛みを和らげるだけでなく、長期的な尿酸値の管理と合併症の予防を目指すことが重要です。 まずは、医師と相談しながら、自分に合った治療法を選択しましょう。代表的な治療法には以下のようなものがあります。 治療法 内容 発作時の対症療法 冷却、鎮痛剤、ステロイド剤などを用いて、痛みや炎症を和らげる 尿酸値を下げる薬の服用 アロプリノールやフェブキソスタットなどの薬を使用し、尿酸値をコントロールする 食事療法 プリン体の摂取を控えめにし、十分な水分補給を行うなど、食生活を見直す 運動療法 ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行い、体重管理や代謝の改善を図る 特に、食事と運動については、継続して取り組むことが大切です。生活習慣の改善には、積極的な姿勢が求められます。 一方で、痛風は決して簡単な病気ではありません。正しい知識を持ち、医療従事者と連携を取りながら、適切な対処を行うことが重要です。長期的な尿酸値コントロールと合併症予防に取り組むことで、痛風とうまく付き合えるようになるかもしれません。 健康で充実した人生を送ることが、痛風患者の皆さんの最大の目標です。この記事が、痛風との上手な付き合い方を見出すためのヒントになれば幸いです。自分の健康は自分で守るという前向きな姿勢を持ち続けることが、何よりも大切だといえるでしょう。 ただし、痛風の治療法や生活習慣の改善方法は、個人差が大きいため、必ず医師や医療従事者と相談しながら、自分に合ったアプローチを見つけていくことが重要です。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 愛知県薬剤師会,17.痛風(高尿酸血症) 痛風・尿酸財団,処方される主な痛風の薬 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,健康を考える皆さまへ,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体
2024.11.04 -
- 内科疾患、その他
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「痛風の初期症状を知りたい」 「足の親指が突然激痛に襲われたけど、痛風の初期症状?」 足の指における激痛などの症状は、痛風の初期症状かもしれません。 痛風は放置すると関節の変形や機能障害を引き起こす可能性があり、早期発見と適切な対処が大切です。 今回は痛風の初期症状の見分け方と、症状が出たときの対処法を詳しく解説します。本記事を読むと痛風の初期症状を見逃さず、重症化を防げるはずです。 先に「痛風の初期症状」における詳細を知りたい方は、リンクをクリックいただくと該当ページに飛べます。 痛風の初期症状と基本知識 痛風と聞くと、中高年男性の病気をイメージされませんか。しかし、最近では30代以下の発症も増えており、女性も決して無縁ではありません。 以下で、痛風の基本的な知識を解説します。 痛風とは何か? 痛風が起こる生物学的メカニズム 痛風とは何か? 痛風は、体内で作られた尿酸が関節内に蓄積し、激しい炎症と痛みを引き起こす病気です。 尿酸とは「プリン体」と呼ばれる物質が分解されてできる老廃物の一種で、通常は血液中から腎臓を介して尿に溶けて排出されます。 しかし、尿酸値が高くなりすぎると、血液中で尿酸が結晶化し、関節内に蓄積します。 主に足の親指の付け根(第一中足趾節関節)に発症しますが、足首や膝などの関節にも生じます。関節の変形や機能障害につながる恐れがあるため、初期症状を見逃さないようにしましょう。 痛風の有病率は男性で1.1%、女性で0.1% 男性の発症年齢のピークは30~50代、女性は閉経後に多い 痛風が起こる生物学的メカニズム 体内の尿酸濃度は、尿酸の「産生」と「排泄」のバランスで決まります。痛風は、以下のような原因で尿酸の産生過剰や排泄低下が起こりやすく、血中尿酸濃度が上昇すると発症します。 原因 説明 プリン体の過剰摂取 肉類、魚類、ビールなどに多く含まれるプリン体を過剰に摂取すると、尿酸の産生が増加する 尿酸の排泄低下 体内で尿酸が過剰に生成される または腎臓からの尿酸排泄が低下する 遺伝的要因 尿酸の産生や排泄に関連する酵素の遺伝的な異常により、尿酸が上昇しやすくなる 高濃度の尿酸は針状結晶となって関節内に蓄積し、激しい炎症反応を引き起こすのです。炎症は発赤、腫脹、熱感、痛みなどの症状を引き起こします。 血中尿酸値が7.0mg/dL以上の状態を高尿酸血症と呼び、痛風発症のリスクが高くなる 高尿酸血症の人は約2割が痛風を発症すると言われている 上記のように、痛風は尿酸値の上昇を引き起こす病気であり、生活習慣や遺伝的要因が関与しているといわれています。初期症状を見逃さず、適切な治療を行うのが大切です。 痛風の初期症状【激しい関節痛・違和感がある】 痛風の初期症状は、主に突然の激しい関節痛です。しかし、痛風発作が起こる前に、軽い痛みや違和感などの前兆が現れるときもあります。 初期症状を見逃さず、適切な対処を行うためにも、以下で痛風の初期症状と前兆を見ていきましょう。 痛風が起きたときの症状 痛風の前兆に起こる症状 痛風が起きたときの症状 痛風の代表的な初期症状は、以下のとおりです。 症状 説明 足の親指の付け根の激痛 ・痛風発作の約半数は、足の親指の付け根(第一中足趾節関節)に起こる ・夜間から早朝にかけて突然発症する場合が多い ・激しい痛みで布団の重みでも痛がるほど 関節の腫れと発赤 ・痛みを伴う関節は腫れて赤く変色する ・皮膚が光沢を帯び、赤紫色に変色する場合もある 関節の熱感 ・炎症を起こした関節は熱をもち、触ると熱く感じる 歩行困難 ・激しい痛みで歩くのが困難になる ・靴が履けなくなる場合もある 痛風発作は非常に強い痛みを特徴とし、安静時でも痛みが持続します。さらに、関節を動かすと痛みが増強します。発作が起こると日常生活に大きな支障をきたすでしょう。 発作は数日から長くて2週間ほど続きますが、炎症が治まると痛みや腫れは徐々に引いていきます。 しかし、適切な治療を行わないと発作を繰り返すようになり、関節の変形や機能障害につながる場合があります。 初期症状を見逃さず、早期に治療を開始するのが大切です。症状が軽度でも痛風が疑われる場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。 痛風の前兆に起こる症状 痛風の発作が起こる前兆の症状は、以下のようなものがあります。 前兆 説明 関節の違和感やこわばり ・発作が起こる数日から数週間前に関節の違和感やこわばりを感じる場合がある ・違和感は痛みとは異なる不快感で、関節を動かしにくい感じがする 軽い痛みや熱感 ・発作前に軽度の痛みや熱感が出る場合もある ・痛みは発作時ほど強くないが、不快感を伴う 倦怠感や微熱 ・全身的な倦怠感や微熱が出る場合がある ・倦怠感は疲労感や脱力感として感じられる 前兆を感じたら、安静にし、患部を冷やし、十分な水分を摂取するなどの対処を行いましょう。 痛風は発作を繰り返すと関節の変形や機能障害につながる恐れがある疾患です。初期症状を見逃さず、適切な治療を行うのが重要です。 痛風の症状が強いときや発作が起こった場合を始め、症状が気になるときは、早めに医療機関を受診して専門医の診断を受けましょう。 痛風になるリスクが高い人の傾向は? 痛風は特定の人に起こりやすい病気です。以下で痛風のリスクが高いかどうか、セルフチェックしましょう。 5つのセルフチェックリスト 痛風になる確率を高めるリスク要因 5つのセルフチェックリスト 以下の項目に当てはまる人は、痛風のリスクが高い傾向にあります。 リスク因子 説明 肥満または過体重 ・BMIが25以上の肥満、または過体重の人は痛風のリスクが高い ・体重が10%増加すると、尿酸値は1mg/dL上昇しやすい 生活習慣病 ・糖尿病、高血圧、脂質異常症など、生活習慣病がある人は痛風のリスクが高い ・上記の疾患ではインスリン抵抗性が尿酸値を上昇させる 多量のアルコール摂取 ・1日あたりアルコールを純アルコール換算で60g以上(日本酒なら1合以上)摂取する人は痛風のリスクが高い ・アルコールは尿酸の産生を促進し、排泄を阻害する 高プリン食の嗜好 ・肉類、魚介類など、高プリン食を好む人は痛風のリスクが高い ・プリン体の摂取過剰は尿酸の産生を増やす 家族歴 ・家族に痛風の人がいる場合、痛風のリスクが高い ・痛風には遺伝的素因があり、家族歴がある人の発症リスクは約2倍とされている 参照:日本痛風・核酸代謝学会高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 当てはまる項目が多いほど、痛風のリスクは高くなります。しかし、これらの項目に当てはまらない方でも痛風を発症する可能性はあります。 リスクが高いと感じた方は、生活習慣の改善に取り組むのが大切です。食事、飲酒、運動などの生活習慣を見直して、尿酸値の上昇を防ぐのが重要です。 ただし、すでに痛風の症状がある場合や、生活習慣の改善だけでは尿酸値が下がらない場合は、医療機関で専門医に相談しましょう。 痛風になる確率を高めるリスク要因 痛風の発症には、遺伝的要因と生活習慣の両方が関与しているといわれています。主な痛風のリスク要因とメカニズムは以下のとおりです。 リスク要因 メカニズム 肥満 体重増加により尿酸値が上昇 多量飲酒 アルコールによる尿酸の産生促進と排泄阻害 高プリン食の過剰摂取 プリン体の摂取過剰による尿酸産生増加 遺伝的要因 尿酸代謝関連酵素の遺伝子変異 家族歴 遺伝的素因による発症リスクの上昇 加齢 加齢に伴う腎機能低下と尿酸排泄機能の減少 性別 男性に多く、女性は閉経後にリスク上昇 痛風の発症は複数の要因が絡み合って起こるため、リスク要因を理解して、ご自身に当てはまるリスクを把握しておくのが重要です。 痛風が疑われるときの対応法【家庭でできる対策】 痛風の発作が疑われる場合、以下のような対応を取りましょう。 対応方法 説明 安静 痛みのある関節を動かさないようにし、安静にすると炎症の拡大を防ぐ 冷却 痛みと腫れのある関節を冷やし、炎症を抑える。氷のうやアイスパックを20分程度当てる 水分補給 体内の尿酸を排出するために、十分な水分補給を行う。1日2リットル以上の水分摂取を心がける ただし、上記は応急処置で根本的な治療にはなりません。 痛風の治療は早ければ早いほど効果的です。症状が改善しない場合や、発作が頻繁に起こる場合は、速やかに医療機関を受診してみてください。 医師の診断を受けるタイミング【早期発見が大切】 痛風の症状が疑われる場合、早めに医師の診断を受けるのが大切です。以下で、医療機関を受診すべきタイミングをまとめています。 受診すべきタイミング 詳細 突然の激しい関節痛がある ・とくに足の親指の付け根、足首、膝などに強い痛みを感じる場合 ・痛みで歩行が困難になるような場合 関節が腫れて赤く変色している ・痛みを伴う関節の腫れや発赤、熱感がある場合 ・関節の腫れが持続している、複数の関節に症状が現れる場合 痛みが引かず、日常生活に支障をきたす ・痛みや腫れが数日経っても改善せず、日常活動が制限される場合 ・発作を繰り返し、頻度が増えてきた場合 発熱や倦怠感などの全身症状を伴う ・関節症状に加えて、発熱や体のだるさ、食欲不振などの症状がある場合 ・痛風が重症化し、全身に影響を及ぼしている可能性がある 上記の症状がある場合、痛風の可能性が高いと考えられます。早めに医療機関を受診し、適切な診断を受けるのが重要です。 医師は患者の症状や病歴、身体診察から痛風を疑い、以下のような検査を行って診断します。 医師が行う主な検査 目的 血液検査 血中尿酸値の測定。痛風発作時は正常値でも、症状が治っている期間には高値を示す 関節液検査 関節から液体を採取し、尿酸結晶の有無を顕微鏡で確認。痛風に特異的な所見 画像検査 X線やCTスキャン、超音波検査で、関節の損傷や尿酸結晶の沈着を評価 上記の検査結果を総合的に判断し、痛風の確定診断が行われます。 軽い痛みでも繰り返し出る場合は、長期化のサインかもしれません。早めに専門医(リウマチ科、整形外科、内科など)に相談し、適切な診断と治療方針を検討するのが賢明です。 痛風は早期発見・早期治療が重要な疾患です。症状が軽度であっても、痛風が疑われる場合は、自己判断せずに医療機関を受診してみてください。 適切な治療と生活指導を受けると、痛風の症状をコントロールしながら、病状の進行や合併症を防げるでしょう。 また、痛風以外にも、体の症状でなにかお悩みを抱えておられる方は、当院のメールや電話からお気軽にご相談ください。 生活習慣における痛風の予防法 痛風を予防するには、日頃の生活習慣を改善するのが大切です。とくに食生活の見直しと運動の習慣を作るのがポイントになるので、以下で詳細を解説します。 食生活の改善 運動と健康管理 食生活の改善 痛風を予防する食事療法のポイントは以下のとおりです。 食生活の改善ポイント 内容 プリン体の摂取制限 ・肉類、魚介類、ビールなどの高プリン食品は控えめに ・1日あたりのプリン体摂取量は400mg以下が目安 例:ビール1缶(350mL)あたり12~25mg 低脂肪・低エネルギー食 ・脂肪とエネルギーを控えめにする ・標準体重(BMI 22)の維持を目指す 「BMI = 体重(kg)÷(身長(m)の2乗)」 野菜・果物の積極的摂取 ・ビタミンやミネラルが豊富な野菜 ・果物を十分に取り入れる ・ビタミンCは尿酸排泄を促進する効果が期待できる 水分摂取の励行 ・十分な水分摂取は尿酸排泄に欠かせない ・1日2リットル以上の水分摂取を心がける アルコールの制限 ・アルコールは尿酸の排泄を妨げる原因となる ・飲酒は1日純アルコール20g以下(ビール中瓶1本程度)に抑える 運動と健康管理 運動は痛風の予防に欠かせません。有酸素運動を中心に、無理のない範囲で定期的に体を動かすのが大切です。 運動の種類 具体例 強度(目安) 時間(目安) 頻度(目安) 有酸素運動 ウォーキング、ジョギング、 水泳、サイクリング など 会話ができる 程度の強度 30分以上 週5日以上 筋力トレーニング 自重トレーニング、 ダンベル体操など ややきつい 程度の強度 20分以上 週2日以上 ストレッチ 静的ストレッチ、 動的ストレッチなど 伸びる程度の強度 10分以上 毎日 運動するときは、関節に負担をかけすぎないよう注意しましょう。痛みを感じる運動は避けて、徐々に強度と時間を増やすのが大切です。 また、定期的な健康診断で尿酸値のチェックを忘れずに行います。尿酸値が高めの場合は、あわせて生活習慣の改善に取り組みましょう。 痛風の予防には、バランスの取れた食事と適度な運動が欠かせません。一度に大きな変化を求めるのではなく、自分のペースで少しずつ生活習慣を改善するのが重要です。 医師や管理栄養士など専門家のアドバイスを参考に、ご自身に合った予防法を見つけましょう。痛風と上手に付き合い、健康的な生活を送るためのサポートを積極的に活用するのをおすすめします。 まとめ|痛風の初期症状があるときは早めに医療機関を受診しよう 痛風の初期症状を見逃さず、適切に対処するのが肝心です。また、尿酸値に注意して痛風を予防する生活習慣を日頃から意識するのも大切になります。 もう一度、痛風の初期症状を以下でおさらいしましょう。 【以下に当てはまるときは医療機関へ受診を】 足の親指の付け根の激痛 関節の腫れと発赤 関節の熱感 歩行困難 定期的な健康チェックを怠らず、痛風知らずの健康な生活を送りましょう。症状が気になる場合は早めに医療機関を受診し、医師のアドバイスをもとに治療を行ってみてください。 また、痛風以外の症状でも、なにかしらの不調が出てしまう場合もあります。体のお悩みを抱えておられるときは、ぜひ当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。 【リペアセルクリニックへのご相談方法】 メール相談 来院予約 電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 痛風の初期症状についてよくあるQ&A 痛風の初期症状でよくある質問と答えをまとめています。 Q.女性でも痛風になりますか? A.痛風患者の約95%は男性ですが、約5%は女性です。 女性の痛風発症年齢は60歳以降が多く、閉経後に増加します。これは、閉経後にエストロゲンの低下により尿酸値が上昇しやすくなるためです。 Q.サプリメントで痛風は予防できますか? A.痛風の予防はサプリメントに頼るよりも、バランスの取れた食事と運動が基本です。 サプリメントの使用を検討するときは、必ず医師に相談し、適切な助言を受けるのが大切です。 Q.痛風の合併症にはどのようなものがありますか? A.痛風は、放置すると関節の変形や腎臓の機能低下など、重大な合併症を引き起こします。 たとえば、痛風結節は関節や軟骨に尿酸の結晶が蓄積し、こぶのようにできものができる状態で、関節の変形や機能障害の原因となります。 また、尿路結石は尿酸が尿路で結晶化し、腎臓や尿管に結石ができる合併症です。激しい腹痛や血尿を引き起こします。 ほかにも、長年の高尿酸血症により、腎臓の尿酸排泄機能が低下して腎不全に至るケースもあります。 痛風と腎機能の関係は、以下の記事で詳細を解説しているので参考にしてみてください。 Q.痛風の発作を予防するための生活習慣は? A.痛風の発作を予防するには、日常生活での工夫が欠かせません。1日2リットル以上の水分摂取を心がけて、体内の尿酸を排出しやすくしましょう。 また、肥満は痛風のリスクを高めるため、標準体重(BMI 22)の維持を目指すべきです。アルコールについては、尿酸の排泄を妨げるので飲酒は1日純アルコール20g以下に抑えましょう。 食事では高プリン食品を控えて、バランスの良い食事を心がけるのが大切です。 さらに、有酸素運動を中心に無理のない範囲で定期的に体を動かすと、尿酸値の低下と全身の健康維持につながります。 痛風と生活習慣における内容については、以下の記事も参考になります。 Q.痛風の発作は一日で治りますか? A.痛風の発作は一日では治りません。適切な治療を行わないと、数日から長くて2週間ほど続く場合もあります。 関連する内容は、以下の記事で詳細を解説しているので参考にしてみてください。 参考文献一覧 千葉県栄養士会,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 一般社団法人日本痛風・核酸代謝学会.高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン.第3版,診断と治療社,2018,p.74-76
2024.11.01