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乳がんの治療において、放射線治療は手術後の再発リスクを減らすために重要な役割を果たします。しかし、いざ治療を受けるとなると「副作用は大丈夫だろうか」「どんな影響が出るのか」と不安に感じる方も多いでしょう。 本記事では、乳がんに対する放射線治療で起こりうる副作用や、症状が出る時期、対処法について詳しく解説します。不安を少しでも和らげ、安心して治療に向き合えるよう、正しい知識を身につけていきましょう。 乳がん放射線治療とは?副作用が起こる仕組み 乳がんの放射線治療は、高エネルギーの放射線を乳房に照射し、がん細胞を狙って再発を防ぐ方法です。しかし、放射線は正常組織にも影響するため、副作用が生じることがあります。 ここからは、その治療の概要と副作用の仕組みを見ていきましょう。 放射線治療の基本概要 放射線治療とは、高エネルギーの放射線を利用して、がん細胞を破壊する治療法です。乳がんの場合、手術後の再発予防を目的として行われるケースが多く、とくに乳房温存手術後に実施されることが一般的です。 治療は週5回のペースで4~6週間ほど続けられ、その間、乳房全体に照射するとともに、必要に応じてリンパ節周辺なども対象となります。(文献1) 放射線が当たる領域を適切に設定すれば、再発リスクを抑える効果が期待できるでしょう。患者さんの状態によって照射範囲や回数が異なる場合もあり、副作用や負担をできるだけ軽減しながら進められるよう工夫されています。 なぜ副作用が起きるのか? 放射線治療では、がん細胞だけでなく、周囲の正常な細胞にも一定の影響が及びます。ダメージを受けた正常細胞は自己修復されますが、その回復過程で炎症や腫れなどの症状が出現し、副作用として現れる仕組みです。 体質や治療範囲、照射量などの違いによって、副作用の程度は人によって大きく異なります。副作用には、治療期間中や直後に起こる「急性」と、数カ月から数年後にあらわれる「晩期」があり、症状もそれぞれ異なる場合があります。医師や放射線技師の指導を守りながら適切にケアをすれば、リスクを最小限に抑えることが可能です。 乳がん放射線治療の主な副作用と発症時期 乳がんの放射線治療では、高エネルギーの照射でがん細胞を狙う一方、正常細胞にも影響が及ぶため、副作用が生じることがあります。症状がいつ、どのように現れるかを理解しておくことは大切です。ここからは主な副作用と発症時期について、短期と長期に分けて見ていきましょう。 短期的(急性)副作用 短期的(急性)副作用には、治療中や照射後数週間以内に起こるものが含まれます。たとえば、照射部位の皮膚炎で、赤みやかゆみ、ひりひり感、乾燥などが挙げられ、とくに2~4週間後から目立ち始めます。(文献2) 体力が大きく落ちるわけではありませんが、「なんとなくだるい」と疲労感を訴える方も少なくありません。 乳房の腫れや張り感が出現し、一時的に圧迫感を覚えることもあるため注意が必要です。これらの症状は治療が進むにつれて徐々に軽快する場合が多いですが、強い痛みや不快感が続く際は医師や看護師に相談しましょう。 正しいスキンケアや休養を心がけることで症状の悪化を防ぎ、より快適に治療を続けやすくなります。 長期的(晩期)副作用 長期的(晩期)副作用は、放射線治療後しばらく経ってから現れる症状です。たとえば、照射部位の皮膚が数カ月〜数年後に黒ずんだり硬化したりする色素沈着が起きることがあります。(文献2) 乳房に線維化が進んで硬さや凹みを生じ、しこりのように触れる場合もあります。 リンパ浮腫も晩期の合併症の一つで、腕がむくんだり重だるさを覚えたりすることもあります。これは手術によるリンパ節切除の影響も重なるためとくに注意が必要です。 リハビリや圧迫スリーブの着用など、適切なケアをすれば症状の進行を抑えられる場合もあり、定期的な経過観察が重要です。いずれの症状も日常生活に支障をきたす可能性があるため、気になる変化は早めに医師へ相談しましょう。 副作用を軽減・予防するためにできること 副作用を軽減・予防するには、日々のケアと早期の対処が大切です。症状の悪化を防ぐには、肌や体調をいたわる習慣を日々意識しながらの生活がポイントになります。小さな変化を見逃さないよう、定期的なセルフチェックはとくに大切です。 ここからは、具体的な対策や注意点を詳しく見ていきましょう。 日常生活で意識したいケア 日常生活では、まず照射部位をいたわるスキンケアが重要です。低刺激の保湿剤を使って毎日保湿するほか、肌を強くこすらないように注意しましょう。締め付ける服装も刺激の原因になりやすいため、ゆったりとした衣類を選ぶと安心です。 紫外線対策として帽子や長袖、日焼け止めを活用し、外出時の直射日光を避けることもポイントです。疲れを感じたらこまめに休息を取り、睡眠をしっかり確保すると体力の消耗を抑えられます。 無理のない範囲で軽い運動を取り入れると、血行や免疫力を維持しやすいでしょう。とくに肌の状態は日々変化するため、継続的なケアが効果を高めます。 こうした対策をこまめに行うことで、副作用のリスクを軽減しやすくなります。 医療機関に相談するタイミング 副作用への対処で迷ったときや症状が強まったときは、医療機関に相談しましょう。 皮膚に痛みや腫れ、水ぶくれが出てきた場合でも、治療が終了すれば2週間ほどで回復します。放射線が肺にあたっている場合、肺炎が起こる場合もあります。医療機関を受診する際には、放射線治療を受けたことを伝えましょう。(文献1) 多くの副作用は自然に消失しますが、症状が進行すると治療期間の延長や日常生活への影響が大きくなる可能性があります。遠慮せず相談して、専門的なケアや適切な処置を受けることが必要です。 副作用が出たときの具体的な対処法 乳がんの放射線治療中、なんらかの副作用を感じたら、まずは自己判断で対処せず専門家の助言を仰ぐことが大切です。症状を悪化させないためにも、皮膚トラブルや疲労感、リンパ浮腫など、それぞれに合ったケアや医療機関への相談を早めに行いましょう。 皮膚トラブルが起きたら 放射線治療すると、皮膚の赤みやひりひり感、水ぶくれなどの症状が出現することがあります。 処方された外用薬(ステロイド軟膏など)がある場合は、指示どおりに使用し、過度にこすらないよう注意します。肌にやさしい素材の衣類や下着を選ぶことも大切です。コットンやシルクなど、通気性や刺激の少ないものを身に着けると快適に過ごしやすくなります。 万が一、皮膚がただれてしまったり痛みが強いときは、無理をせず早めの受診を心がけ、適切なケアを受けましょう。 疲労感が強いとき 疲れが抜けずにだるさが続く、普段できていたことが億劫になるなどの疲労感が強いときは、休息時間を十分に確保し、家事や仕事のペース調整が大切です。 食事面でも、たんぱく質やビタミン、ミネラルなど栄養バランスに気を配り、適度な水分補給を心がけてください。睡眠リズムを整えるために、寝る前のスマホ使用を控えたり、リラックスできる時間を確保したりする工夫も効果的です。 リンパ浮腫の初期症状が出たら 腕にむくみや重だるさ、肌の張り感を覚えるなど、リンパ浮腫の初期症状が疑われるときは、すぐに専門スタッフ(リンパ浮腫外来など)へ相談しましょう。 症状の進行を抑えるには、圧迫療法(専用のスリーブや包帯)やリンパマッサージなど、専門的なケアを早めに始めることが重要です。無理に重いものを持ち上げる動作は腕への負担を大きくするため、日常生活でも注意が必要です。 普段から腕の状態を観察し、小さな変化でも異変を感じたら自己判断せず、医師や看護師に報告して適切なアドバイスを受けましょう。リンパ浮腫は適切に管理すれば進行を遅らせ、生活の質を守れます。 安心して治療に臨むために大切なこと 不安や疑問を抱えたまま治療を続けると、心身の負担が増します。だからこそ、医療スタッフや専門家に無理なく声をかけ、信頼できる情報を得ることが大切です。一人で悩まず、適切なサポートを受ければ、安心感を得られます。 ここからは、不安を解消しながら治療に臨むための具体的なポイントを見ていきましょう。 不安を感じたら医療チームに相談する 治療に対する不安や疑問を感じたら、まずは医療チームへ相談しましょう。看護師や医師、病院の支援センターなど、話を聞いてくれる窓口は意外に多いものです。 一人で抱え込むと、些細な悩みでも大きく感じやすくなり、心身のストレスが高まります。感情の変化や落ち込み、睡眠の質の低下など、精神面での不調も早めに伝えることが肝心です。 医療スタッフは、患者さんの気持ちを把握すると、治療方針の調整や適切なケアの提案をしやすくなります。小さな不安でも遠慮なく相談し、周囲のサポートを積極的に活用して、安心して治療を受ける体制を整えましょう。 正しい情報を得て自分を守る 情報過多の時代だからこそ、正確な知識を得ることが自分を守る近道です。 とくにインターネット上では、誤った情報や根拠のあいまいな噂が広まりやすく、混乱のもとになりがちです。信頼できる医療機関の資料や、国の公的機関が運営するサイトなど、公平性の高い情報源を積極的に活用しましょう。 国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」などは専門医が監修しており、正確なデータや最新の治療法をわかりやすく提供しています。必要な知識を身につけることで、治療の進め方や副作用の程度をある程度予測でき、心の準備がしやすくなるでしょう。情報を正しく整理すれば、不安を必要以上に大きくせずに済みます。 不安なことや心配事は主治医へ聞くのが一番の方法と言えます。 乳がん放射線治療の副作用を正しく知り、不安なく治療にのぞもう 乳がんの放射線治療には、副作用が現れることがあります。しかし、多くの副作用は軽度であり、適切なケアを行うことで十分にコントロールが可能です。副作用が起こる仕組みや、現れやすい症状について事前に理解しておくと、心の準備ができ、落ち着いて対処できるようになります。 副作用のサインに早く気づき、適切なタイミングでの対処が、症状の悪化を防ぐポイントです。ひとりで悩まず、少しでも気になる症状があれば、すぐに医療チームに相談しましょう。副作用への備えは、安心して治療を続けるためにとても大切です。 乳がんの手術後の痛みでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がん 治療」がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html#blockskip(最終アクセス:2025年4月13日) 文献2 日本乳癌協会「Q36.乳房手術後の放射線療法の際にみられる副作用はどのようなものですか。」日本乳癌協会 ホームページ https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g4/q36/(最終アクセス:2025年4月13日)
2025.04.30 -
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胸にしこりのようなものを感じていながら、病院に行くのをためらっていませんか。 しこりがあると「乳がんかもしれない」と不安になる方も多いでしょう。 しかし、乳がんの兆候はしこりだけではありません。実は全部で12種類のチェックポイントがあります。日頃から体の変化に目を向け、気になる症状があれば乳腺外科または婦人科などで検査を受けることが大切です。 本記事では、乳がんかもしれない12の症状についてわかりやすく解説しています。最後までご覧いただくことで病院へ行くべきかどうかの判断材料が得られ、乳がんのセルフチェックにお役立ていただけるでしょう。 乳がんかもしれない12の症状一覧 乳がんが疑われる症状は、以下の12個です。本章では、これらの症状について詳しく解説します。 乳房のしこり 乳房の形や大きさの変化 乳房のへこみやツッパリ 乳房全体のはりや痛み 乳房の皮膚のあざ 乳房全体の固さ 乳頭からの分泌物 乳頭のただれや湿疹 脇の下のしこりや腫れ オレンジの皮のような皮膚 乳頭のへこみ 乳房全体の重だるさや違和感 ご自身によるセルフチェックにぜひお役立てください。 乳房のしこり 乳房にしこりを感じた場合は、痛みの有無にかかわらず注意が必要です。入浴時や就寝前など、リラックスした状態で乳房全体をやさしく触り、異物感があれば早めに受診しましょう。 ただし、しこりだけでは乳がんと断定することはできません。しこりは乳腺炎や線維腺腫(せんいせんしゅ)など別の病気でもあらわれる場合があります。(文献1)そのため、セルフチェックだけで自己判断せず、必要に応じて受診するようにしましょう。 乳房の形や大きさの変化 左右の乳房に明らかな差が出てきた場合や、急に乳房の形が変わった場合は受診を検討しましょう。 とくに片側だけが急激に大きくなる、変形するなどの変化が見られたら、なんらかの内部変化が起きている疑いがあります。鏡の前で日常的にチェックするようにしましょう。 乳房のへこみやツッパリ 乳がんが皮膚近くにできた場合、乳房の皮膚が内側に引っ張られ、へこみやツッパリとしてあらわれることがあります。さらにいつもは違和感がなくても、皮膚を軽く引っ張ったときに症状が出る場合もあります。 表面が不自然にへこんだり、引っ張られる感じがしたりする場合は、異常のサインの可能性もあるため注意が必要です。 乳房全体のはりや痛み 乳房のはりや痛みは、女性ホルモンの変動や乳腺症など、乳がん以外が原因となる場合もあります。(文献2)とくに、生理周期による女性ホルモンの変動が原因の場合、乳房のはりや痛みが周期的にあらわれたり自然におさまったりすることもあります。 ただし、痛みが1カ月以上続く場合は、医療機関で検査を受けるようにしましょう。 乳房の皮膚のあざ 乳がんの初期症状のひとつに、乳房の皮膚に原因不明のあざができるケースがあります。これは乳がんの腫瘍が血管を圧迫し、血流が悪くなることで生じることがあります。(文献3) とくに、ぶつけた記憶がないあざがある場合は注意が必要です。色の変化が数日で消えない場合は早めの受診をおすすめします。 乳房全体の固さ 乳房が全体的に硬くなったと感じる場合は、ホルモンの影響や乳腺症などが原因であるケースも多く見られます。(文献4) ただし、乳房を触っても動かないほど硬い場合は、腫瘤が乳腺内で広がっている疑いがあります。異常な硬さの場合は、病院で一度詳しい検査を受けるようにしましょう。 乳頭からの分泌物 乳頭からの分泌物の多くは、がん以外の原因によるものです。(文献5)ただし、赤や褐色など血液が混ざったような液体である場合は、乳がんの初期症状の疑いもあるため医師の診察を受けましょう。 少量でも油断せず、ティッシュやコットンなどに分泌物をつけて色を確認してみてください。また、下着に分泌物が付着して気が付くケースもあるため、見逃さないよう注意が必要です。 乳頭のただれや湿疹 乳頭に異常なただれやかゆみ、湿疹のような皮膚症状があらわれる場合も、乳がん初期症状の可能性があります。 もともと乳頭は皮膚が敏感で、トラブルが起きやすい部位です。塗り薬の使用で改善するケースもありますが、症状が長引いたり悪化したりする場合は、専門医の診察を受けるようにしましょう。 脇の下のしこりや腫れ 脇の下はリンパ節が多く集まっているため、他の部位よりもしこりができやすい場所です。 風邪やワクチン接種後などで一時的に腫れる場合もありますが、乳がんが原因の場合はリンパ節への転移の疑いもあります。痛みの有無にかかわらず、脇の下もチェックしましょう。 オレンジの皮のような皮膚 乳房の皮膚が赤みを帯び、オレンジの皮のようにザラザラ・ブツブツとした質感になることがあります。これは炎症性乳がんに見られる症状の一つです。 いつもの肌と明らかに違う質感に気づいた場合は、その下に腫瘍があるケースも考えられるため、速やかに医療機関を受診しましょう。(文献6) 乳頭のへこみ これまでなかったのに乳頭が突然へこんで見える場合は、乳頭の奥に腫瘍ができ、皮膚が内側から引っ張られている可能性があります。 生まれつきの陥没乳頭とは異なり、急な変化が見られる場合は医師の診察を受けることをおすすめします。着替えの際や入浴前後など、定期的に乳頭の状態にも目を向けてチェックしましょう。 乳房全体の重だるさや違和感 はっきりとした痛みやしこりがなくても「なんとなく乳房が重い」「はりが続く」といった違和感がある場合は注意が必要です。 腫瘍が大きくなると周囲の組織を圧迫し、乳房全体に不快感としてあらわれることがあります。わずかな変化でも見逃さず、放置せずに対応することが大切です。 乳がんかもしれないと思ったら病院で検査をしよう 乳がんかもしれないと感じた場合は、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。診断前の段階では、以下のような検査が必要に応じて行われます。 視診や触診 マンモグラフィー 超音波(エコー)検査 病理検査(細胞を採取して調べる検査) これらの検査により、乳がんの有無や治療の必要性が判断されます。そのため、乳がんかもしれないと感じたら、早めの受診を心がけしましょう。 また「いきなり病院に行くのは不安」「誰に相談すれば良いかわからない」と感じる方は「がん相談支援センター」の利用もおすすめです。専門の相談員が対応してくれるため、一人で悩まずにまずは相談してみましょう。 乳がんかもしれない12の症状で早期発見を心がけよう 乳がんは、早期発見により治療の選択肢が広がり、予後の改善が見込まれる病気です。そのためには、日頃から自分の乳房の変化に意識を向け、変化を見逃さないことが大切です。しこりだけではなく、皮膚や乳頭の状態など、さまざまなサインを見逃さないようにしましょう。 自分でチェックしてみて「乳がんかもしれない」と感じたときは、一人で抱え込まず、医療機関の受診や専門家への相談を検討してください。 乳がんのリスクを減らすためには、セルフチェックと定期検診に加えて、日頃から免疫力を整えることも大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、免疫力を高めることでがんの予防・再発予防を目的とした免疫細胞療法を提供しています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて、無料相談を実施していますので、気になる方はぜひ当院までお気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんかもしれない12の症状に関してよくある質問 どのような人が乳がんになりやすい? 乳がんにかかりやすい人の特徴の一例に、以下の項目があります。(文献7) 40歳以上である 未婚である 初産年齢が高い 初めての生理が早かった 閉経が遅い 親戚に乳がんの人がいる 閉経後で肥満である 良性の乳腺の病気にかかったことがある これらの要因に心当たりがある方は、定期的なセルフチェックと検診を心がけましょう。 乳がんの手遅れとはどういう状態ですか? 乳がんが「ステージ4」と診断されてがんが他の臓器に転移している状態では、完治を目指すことが難しく、治療は延命や症状の緩和が中心になることがあります。 代表的な症状には強い痛みや全身の倦怠感、原因不明の発熱などが挙げられます。がんの進行を防ぐためにも、早期に発見し、速やかに適切な治療を受けることが大切です。 参考文献 (文献1)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房腫瘍(乳房のしこり)」,2022年 3月改訂https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-%E5%A9%A6%E4%BA%BA%E7%A7%91%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%94%A3%E7%A7%91/%E4%B9%B3%E6%88%BF%E7%96%BE%E6%82%A3/%E4%B9%B3%E6%88%BF%E8%85%AB%E7%98%A4-%E4%B9%B3%E6%88%BF%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%93%E3%82%8A (文献2)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房痛」, 2022年3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳房痛 (文献3)近藤優,石黒清介ほか.「乳房内出血をきたした80歳以上乳癌の2例」『日本臨床外科学会雑誌』77巻(2号), p296-p302,2016年,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/2/77_296/_pdf (文献4)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房疾患の評価」,2022年 3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳房疾患の評価 (文献5)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳頭分泌物」,2022年 3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳頭分泌物 (文献6)稲本俊.「IX.乳房とリンパ節」『日本内科学会雑誌』89巻(12号), p2469-p.2476, 2000年https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/89/12/89_12_2469/_pdf (文献7)厚生労働省「乳がんの危険因子」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000113424.pdf
2025.04.30 -
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「男性でも乳がんになるの?」 「胸にしこりがあるけど、まさか乳がん?」 こうした疑問や不安を抱く方は多いでしょう。 男性の乳がんは、女性より発症数は少ないものの発症しうるがんです。 男性が乳がんになる認識の薄さから、発見が遅れやすいリスクがあります。そのため、病気の理解を深め、早期発見できるための知識を備えることが求められます。 本記事では、男性乳がんの原因や主な症状、発症確率や生存率を解説します。セルフチェックのポイントも紹介しているので、胸や胸周辺の状態を確かめる際の参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 男性乳がんについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 男性乳がんとは 男性乳がんとは、男性の乳腺にがん細胞が発生する病気で、がん全体の中ではまれな疾患です。 ただし、男性にも少量ながら母乳を作る乳腺組織があるため、乳がんを発症する可能性があります。(文献1) そのため、乳がんは男性にとっても決して「自分には関係のない病気」ではないのです。 男性乳がんの原因 男性乳がんの発症には、複数の要因が関与していると言われています。代表的な原因は以下の3つです。 加齢によるもの 家族歴や遺伝子によるもの ホルモンバランスの乱れによるもの それぞれの原因を詳しく解説します。 加齢によるもの 女性の乳がんは40代〜50代に多く見られますが、男性乳がんは60代後半の発症が多い傾向です。(文献2)そのため、女性よりも高齢で発症しやすいのが特徴です。(文献3) 高齢者よりも頻度は低いものの、若年層でも発症するリスクはあります。 乳房に違和感があれば、早めにセルフチェックや検査を行うようにしましょう。 家族歴や遺伝子によるもの 家族歴や遺伝子による遺伝的な要因で発症リスクが高まることがあります。 とくに、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異があると「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれる体質になり、乳がんのリスクが高いです。 HBOCの男性では、12人に1人が乳がんを発症するリスクがあるとされており、他の男性よりも高いリスクを抱えています。(文献4) 家族に乳がんや卵巣がんの治療歴がある方、またはHBOCの診断を受けている方は、こまめにセルフチェックや定期健診を受けましょう。 ホルモンバランスの乱れによるもの 男性の体内でも女性ホルモン(エストロゲンなど)は少量ながら分泌されています。このバランスが崩れると乳腺が刺激されやすくなります。 具体的に、以下の要因で女性ホルモンが相対的に増える傾向があります。 肝機能障害 肥満 ホルモン分泌に関わる病気 こうしたホルモンバランスの乱れが長く続くと乳腺細胞が増殖し、がんを発症するリスクが高まります。 胸部にしこりや腫れなどの異変を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。 男性乳がんの発症確率 男性乳がんの発症確率は乳がん全体の約0.6%を占め、日本では男性の約10万人に1人が発症するとの報告もあります。(文献3) さらに海外では、40年間で男性がんの発症率が40%上昇しているとの報告があります。(文献5) このように発症頻度は少ないながらも、発見が遅れると進行してしまう恐れがあるため、男性も乳房の異変に注意を払うことが大切です。 男性乳がんの生存確率 男性乳がんの生存確率は、女性乳がんに比べて全体的に低い傾向が見られます。 統計によると、すべての病期を通じて女性の生存率の方が高いという結果が出ています。(文献6) 男性生存率 女性生存率 備考 全生存率(全期間) 45.8% 60.4% すべての病期を含む全体割合 3年後の生存率 86.4% 91.7% 診断から3年後の時点 5年後の生存率 77.6% 86.4% 診断から5年後の時点 経過年数を追っても差は縮まらず、男性の方が死亡率が高い傾向が続きます。 背景には、男性では発症に気づきにくく受診や診断が遅れることが多い点や、発見時にすでに進行した病期である割合が高いことが影響していると考えられます。 こうしたデータからは、男性でも乳がんを軽視せず、日常的なセルフチェックと早期受診の意識が大切です。 男性乳がんのステージ 男性乳がんのステージは、進行度に応じて0期からⅣ期までに分類されます。ステージが上がるほどがんは広がり、治療の難易度や再発リスクも高まります。 以下の表は、それぞれのステージの定義や特徴をまとめたものです。 ステージ 定義・特徴 0期 非浸潤がん(発生部位にとどまり、広がりや転移がない状態) Ⅰ期 がんの大きさ2cm以下+リンパ節転移なし ⅡA期 ① がん2cm以下+腋窩リンパ節に転移あり(固定されておらず動く) ② がん2〜5cm+リンパ節転移なし ⅡB期 ① がん2〜5cm+腋窩リンパ節に転移あり(固定されておらず動く) ② がん5cm以上+リンパ節転移なし ⅢA期 ① がん5cm以下+腋窩リンパ節に転移あり(固定または癒着) ② がん5cm以下+腋窩リンパ節転移なし+内胸リンパ節に転移あり ③ がん5cm以上+腋窩リンパ節または内胸リンパ節のいずれかに転移あり ⅢB期 がんが胸壁に固定されている/皮膚に食い込む・皮膚から突出している/炎症性乳がん(乳房が腫れ・発赤など炎症症状あり) ⅢC期 腋窩リンパ節と内胸リンパ節の両方に転移あり/鎖骨上または下のリンパ節に転移あり Ⅳ期 がんが骨・肝臓・肺・脳など他臓器に転移している(遠隔転移あり) ステージの進行度は治療方針や予後に直結する重要な指標です。 【予兆を察知】男性乳がんセルフチェックポイント 今すぐできる男性乳がんのチェックポイントは以下の3つです。 乳頭近くにこぶはあるか 乳頭から血液や液体の分泌はないか 乳頭の形に異変はないか 男性は女性に比べて乳腺組織が少ないため、乳頭周辺に異変があらわれやすい傾向があります。(文献1)そのため、鏡の前で定期的に確認する習慣が早期発見につながります。 本章を参考に、男性乳がんのセルフチェックを行ってみましょう。 乳頭近くにこぶはあるか 男性乳がんの初期症状のひとつが「乳頭付近のこぶ(しこり)」です。以下の方法でセルフチェックを行ってみましょう。 片手を上げる 反対の手であばら骨から乳頭に向かって優しく触れる 乳頭の上下方向に沿って手を滑らせる 「の」の字を書くように乳房全体をまんべんなく触る 乳頭の近くのこぶは痛みを伴わない場合もあるため症状がなくても油断せず、定期的なセルフチェックを行いましょう。 乳頭から血液や液体の分泌はないか 乳頭からの分泌物も、男性乳がんの初期症状の一つです。セルフチェックでは、乳頭を優しくつまみ、液体が出ないか確認しましょう。もし分泌がある場合は、以下をチェックして記録を取っておくことが重要です。 左右片方または両方 液体の色や量 しこりの有無 症状が続いている期間 とくに赤や茶色の分泌物が出る場合は血液が混ざっている可能性があるため、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。診察をスムーズに行うために、具体的な症状をまとめておくと医師に詳しく説明しやすくなります。 乳頭の形は以前と変わっていないか 乳頭の形状変化やへこみも、男性乳がんの初期症状のひとつです。乳頭の形をチェックする方法は以下のように、鏡の前でまっすぐ立って確認してみましょう。 乳頭の形に違和感はないか 乳頭周辺の皮膚の見た目や感覚に異常はないか 両手を上に上げてみて、手を上げる前後で乳頭の高さや方向に変わりはないか 日頃から乳頭の形を意識して確認すると、微細な変化に気づきやすくなります。 また、今回解説したチェック方法は、入浴や着替えのついでに短時間で行えます。チェックする習慣をつけて早期発見できるようにしましょう。 【関連記事】 セルフチェックで乳がんはわかる?やり方やしこりの感触を医師が解説 乳がんかもしれない12の症状を医師が解説|早期発見のポイントもあわせて紹介 男性乳がんの検査方法 男性乳がんの疑いがある場合、女性と同様の検査方法を用いるのが一般的です。主な検査方法は、以下のとおりです。 検査の種類 検査方法 検査からわかること マンモグラフィー (乳房にX線を照射して撮影する画像診断) 乳房を板で挟み、あらゆる方向から圧迫して撮影 触診ではわからないしこりを発見できる 超音波検査(エコー) 専用の機械を患部に当て、音波を使用し乳腺の内部を画像化する 腫瘍の有無や増殖を確認できる このほか、必要に応じて針でがん組織を採取する「生検検査」のような、より詳しい状態がわかる検査を行う場合もあります。 どのような検査があるか事前に知りたい方は、受診する病院のホームページや電話・メール問い合わせなどで確認しましょう。 男性乳がんの治療方法 男性乳がんの治療は、女性と同様にがんの進行度によって選択されます。 がんのステージが初期段階(ステージ0期からⅢA期)の場合、切除可能なら手術による乳房切除が行われます。 また、症状に応じて医師の判断で放射線治療や術後の薬物療法が選択される場合もあるでしょう。(文献2) さらに、男性乳がんでも、女性にも使用されるようなホルモン療法も治療方法の対象です。 ただし、男性と女性ではホルモンの仕組みが異なるため、女性と同じ薬剤がそのまま使用されるとは限りません。 治療法は個人の病状により異なるため、専門医と相談しながら自分にあった方法を選びます。 乳がんの手術については、以下の記事にて詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。 男性乳がんの理解を深めて早期発見につなげよう 男性乳がんは、早期に発見し適切な治療を受ければ、予後が良好になる可能性が高まります。 日頃から乳房のセルフチェックを行い、しこりや分泌物などの異変に気づいた場合は、早めの受診が大切です。 当院では、人体にもともと存在する幹細胞を用いた乳がん手術後の後遺症に対する再生医療を行っています。 再生医療について詳しく知りたい方は、メール相談やオンラインカウンセリングにて当院へお気軽にお問い合わせください。 男性乳がんに関するよくある質問 男性の乳がんの死亡率は? 男性乳がんは発症率が低いものの、診断後の死亡率は女性よりも高い傾向です。 海外の研究では、2004年〜2014年に乳がんと診断された人の死亡率は、女性が17.4%、男性は27.2%だったという報告があります。(文献5) ただし、がんが進行していないうちに早期に治療すると、予後が良好となる可能性が高まります。 女性より死亡率が高い報告もあることから、少しでも異常を感じたら早期に検査を受けることが、命を守る上で重要です。 男性の乳がんは何科を受診しますか? 男性乳がんが疑われる場合は、乳腺外科の受診が専門です。 受診に抵抗がある場合は、女性専門としていない乳腺外来を選んだり、パートナーと一緒に受診したりして、受診のハードルを下げるのも一つの手です。 早めに専門医に相談すると、違和感の有無が男性乳がんかどうかがわかるでしょう。 男性の10代で乳がんになる可能性はありますか? 男性乳がんは主に60代以降の中高年で多く見られ、10代での発症は極めて稀です。(文献2) 若年層では乳腺組織が未成熟で、がん細胞が生じる条件が整いにくいためです。しかし、男性乳がんは乳房のふくらみが目立たず、多くは乳頭の真下に発生します。 そのため、診断された時点で皮膚や乳頭にまでがんが広がっていることが少なくありません。 ほとんどの10代男性は心配する必要はありませんが、気になる症状がある場合は、年齢に関係なく医療機関で確認しましょう。 男性乳がんは痛みがありますか? 男性乳がんは初期段階では痛みを伴わないことが多く、しこりや乳頭の変化だけが現れる場合があります。 痛みがないため発見が遅れ、進行してから診断される場合も少なくありません。 そのため、痛みの有無に関わらず、しこりや異常を感じたら速やかに医療機関を受診しましょう。 参考文献 (文献1) 38年間に経験した男性乳癌6例の検討|信州医誌 (文献2) 性差医療(1)乳腺外科領域」|東女医大誌 (文献3) 乳房(がん種別統計情報)|国立がん研究センターがん情報サービス (文献4) Q36 男性の乳がん対策について教えてください。」遺伝性 乳がん卵巣がんを知ろう!|日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC) (文献5) Epidemiology of male breast cancer|The Breast (文献6) Comparative Net Survival Analysis of Men and Women With Breast Cancer in Japan: A Population-Based Study|Cancer Sci
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「健康診断で大腸ポリープが見つかったけど、悪性かどうかわからず眠れない」「家族が大腸がんになった。自分も同じようになるのでは」そんな不安を抱く瞬間は、誰にでも訪れるものです。 大腸ポリープと大腸がんは、一見よく似た病変に思えますが、実は発生のしくみも、進行のスピードもまったく異なります。違いを知らずに放置してしまえば、良性だったポリープが、何年もかけてがんに変わってしまうリスクもあるのが実情です。 一方で、ポリープは早期に検査と切除を受ければ、がんの芽を摘み取ることができます。 本記事では、専門医が現場で培った知見と研究結果をもとに、ポリープとがんの違い、がん化リスクを高める因子、正しい検査の受け方、さらに今日から取り組める予防のコツまでを体系的に解説します。 読み終えたとき、あなたが「悩む前に一度検査を予約しよう」「毎日の食事と運動を少しだけ変えてみよう」と行動につながると幸いです。 大腸がんと大腸ポリープの違い 大腸ポリープとは、大腸の粘膜がいぼのように盛り上がった良性の隆起で、主に「腺腫」「鋸歯状病変(きょしじょうびょうへん)」「過形成性ポリープ」など、いくつかの組織型に分類されます。これに対し、大腸がんは粘膜細胞が悪性化し、周囲の組織に浸潤(しんじゅん)しながら無制限に増殖していく悪性腫瘍です。 ポリープの多くは自覚症状がなく、健康診断の便潜血検査などで偶然見つかることが少なくありません。とくに、1センチを超える腺腫や平坦型の鋸歯状病変は、細胞異常を蓄積しやすく、年単位で大腸がんへ進行するリスクが高くなります。 大腸がんは、ステージが進むほど治療が難しくなり、転移を伴う段階では5年生存率が大きく下がります。そのため、「ポリープの段階で発見し、切除する」ことが、もっとも確実で効果的ながん予防策です。 大腸ポリープとは 大腸の内側にできるポリープはすべて同じではなく、組織の性質によっていくつかの種類に分けられます。中には将来がんに進展する可能性を持つものもあるため、違いの正しい理解が早期発見・予防につながります。大腸ポリープは、まず大きく「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」の2つに分類されます。 さらに腫瘍性ポリープは、「腺腫(せんしゅ)」という良性腫瘍と、すでに悪性化した「がん」に分けられます。非腫瘍性ポリープには、過形成性ポリープや炎症性ポリープがあり、これらは基本的にがん化するリスクが極めて低いと考えられています。 ただし、外見だけでは腫瘍性かどうかを正確に判断することは困難なため、内視鏡検査で疑わしい病変が見つかった場合は切除し、病理診断で組織型を確定するのが一般的です。以下の表でそれぞれのポリープの分類と特徴、がん化リスクの目安をまとめました。(文献1)(文献2) 分類 名称 性質 がん化リスク 腫瘍性 腺腫(せんしゅ) 良性腫瘍 あり(前がん病変) がん(悪性腫瘍) 悪性腫瘍 - 非腫瘍性 過形成性ポリープ 良性 基本的になし 炎症性ポリープ 良性 基本的になし 遺伝性(特殊型) 家族性大腸腺腫症(FAP) 多数の腺腫が発生 高リスク とくに「腺腫」は、いわゆる前がん病変とも呼ばれ、時間をかけて徐々に細胞の異型性(異常)が進行し、やがてがんに変わる可能性があります。そのため、腺腫と診断されたポリープは原則として切除が推奨されます。実際、小さいうちに切除すれば再発も少なく、大腸がんの予防効果も高いとされています。(文献3) また、腫瘍性か非腫瘍性かの正確な見極めは、内視鏡による目視だけでは困難なことも多く、臨床現場では疑わしい病変を切除し、病理検査で分類を確定するのが一般的です。 すべてのポリープに共通する特徴が1つあります。それは自覚症状がないまま進行する特徴です。痛みや出血がなくても、健康診断や大腸内視鏡検査を受けることで早期発見、治療につながります。とくに家族歴がある方や、40歳を過ぎた方は、検査のタイミングを逃さず、適切な診断・治療につなげましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 大腸がんとは 大腸がんは、大腸(結腸および直腸)の粘膜から発生する悪性腫瘍です。日本人ではS状結腸や直腸にできやすいと言われています。また、その発生には2通りあり、前述の腺腫(良性腫瘍)ががん化して生じる場合と、正常な粘膜から直接がんが生じる場合があります。(文献4) 大腸がんの進行は比較的ゆっくりであるとされています。実際、病変が大腸粘膜内にとどまっている早期大腸がんの5年生存率は90%以上と報告されており(文献4)、早期に発見と治療が重要なポイントです。 しかし、がんが進行してリンパ節や他臓器に転移した場合には、生存率は大きく低下します。リンパ節に転移してしまった場合の5年生存率は60~80%程度にまで下がるとされています。このように、大腸がんは早期発見・治療ができるかどうかで予後が大きく変わる病気です。 ポリープから大腸がんへ?知っておきたい進行リスク 「良性のポリープが将来がんになることはあるのか?」そんな疑問を持つ方も多いでしょう。結論から言えば、大腸がんの多くは腺腫から生じると考えられていますが、すべてのポリープががん化するわけではありません。(文献3) 大腸ポリープ(とくに腺腫)が大腸がんに進行するリスクは、以下のようなさまざまな因子に左右されます。 ポリープの大きさ(サイズが大きいほどリスク増) ポリープの形態(平坦型、隆起型など) 異型度(細胞の異常性の程度) 患者の年齢 遺伝的素因 腸内細菌のバランス 生活習慣(食事・運動・喫煙など) つまり、「このポリープは絶対にがんになる」と断定するのは、現時点では非常に難しいのが現実です。一方で、家族性大腸腺腫症(FAP)のように多数のポリープができる遺伝性疾患では、放置すればいずれほとんどのポリープががん化してしまいます。 近年、大腸ポリープと大腸がんの研究から、ポリープががんになる過程のメカニズムの一端が明らかになってきました。たとえば、国立がん研究センターの研究グループは、FAP患者の腸内環境を調べることでポリープから大腸がんに至る際の腸内細菌の変動を発見しています。 この発見は、遺伝性でない一般の大腸ポリープ患者においても腸内細菌ががん化に関与する可能性を示唆するもので、将来的に腸内細菌の改善による大腸がん予防につながることが期待されています。(文献5) \まずは当院にお問い合わせください/ 【がんになる前に要チェック】大腸ポリープの検査方法 ポリープは放置しても痛まないため、検査でしか見つけられません。最も精度が高いのは大腸内視鏡検査で、腸管を直接観察しながら疑わしい隆起をその場で切除できます。 通常の内視鏡が挿入しにくい方には、カプセル内視鏡が痛みや鎮静剤不要の代替手段として用いられますが、切除など外科治療は行えないため陽性時には改めて通常内視鏡が必要です。 大腸内視鏡検査 大腸内視鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜を直接観察します。炎症やポリープ、早期がんの診断が可能で、病変が見つかれば組織の一部を採取(生検)したり、内視鏡で切除することもできます。検査前には下剤や食事制限によって腸内を空にし、検査中は鎮静剤が使用されることもあります。 内視鏡治療には、ポリープの形状や大きさに応じてポリペクトミー、粘膜切除術(EMR)、粘膜下層剥離術(ESD)などが用いられます。とくにESDは大きな病変にも対応可能で、精密な操作が求められる手技です。治療後は医師の指示に従い、飲食や運動に注意が必要です。まれに出血などの合併症もあるため、検査後の体調変化には注意しましょう。(文献6) 大腸カプセル内視鏡 近年では、内視鏡カメラを内蔵したカプセルを飲み込んで腸内を撮影するカプセル内視鏡という検査も登場しています。大腸カプセル内視鏡は2014年から保険適用となった新しい大腸検査法です。 カプセル型の小型カメラを水と一緒に飲み込むことで、カプセルが腸管内を進みながら大腸内の写真を撮影します。撮影された画像は体表に貼り付けたセンサーを介して携帯式の受信機に送られ、後で専門医が解析します。この方法により、大腸ポリープの有無を確認できます。(文献7) カプセル内視鏡は鎮静剤(麻酔)の必要がなく、X線など放射線被曝の心配もないメリットがあります。ただし、検査前の腸管洗浄(下剤服用)など事前準備は通常の内視鏡と同様に必要です。 また、大腸カプセル内視鏡は大腸内視鏡に比べて発見されたポリープに直接処置ができない(検査のみ)ため、異常が見つかった場合は結局通常の大腸内視鏡検査で治療を行う必要がある点には注意が必要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 大腸がんにおける定期検診のタイミング 大腸がんは日本人の死亡原因の上位にあり、40歳代から罹患率が増加してきます。そのため、自覚症状がなくても40歳を過ぎたら年に1度は大腸がん検診を受けることが推奨されています。(文献8) 大腸がん検診では通常、まず便潜血検査が行われ、陽性(便に血液が混じっている)であれば精密検査として大腸内視鏡検査につなげます。定期的な検診を受けることで、大腸がんによる死亡率を下げられることがわかっており、自分に症状がなくても決められた間隔で検査を受けることが大切です。 大腸がんとポリープの予防法 大腸がんや大腸ポリープを予防するためには、日頃から生活習慣を見直すことが重要です。ここでは、食事・飲酒の習慣と、運動・喫煙の習慣の2つの観点から予防策を説明します。 食事・飲酒習慣の改善 食生活は大腸の健康に大きく影響します。大腸がんやポリープの予防には、腸内環境を整える食事を心がけましょう。具体的には、動物性の脂肪や赤肉(牛肉・豚肉)、ハム・ソーセージなどの加工肉の過剰摂取を控え、代わりに魚や大豆製品などから良質なたんぱく質を摂るようにします。 赤肉中心の欧米型の食生活は大腸がん罹患リスク上昇の一因とされているため、鶏肉や魚、大豆類を積極的に活用すると良いでしょう。とくに鶏肉はどれだけ食べても大腸がんのリスクを上げないという報告もあります。 また、食物繊維を十分に摂取することもポイントです。水溶性・不溶性の両方の食物繊維をバランスよく含む野菜や果物、海藻、豆類、発酵食品などを日々の食事に取り入れ、腸内の善玉菌を増やすことで腸内環境を良好に保ちましょう。 併せて、過度の飲酒を控えることも忘れてはいけません。アルコール摂取は大腸がんのリスク要因の一つであり、飲酒量が多い人ほど大腸がんになる危険性が高まることが明らかになっています。がん予防のためには飲酒しないことがベストであり、飲む場合でも量を減らすほどリスクは低下します。 日本人男性を対象とした研究では、1日あたり純アルコールで約15g(ビール中瓶1本程度)以上を常飲する人は、大腸がんのリスクが有意に上昇するとの報告があります。適量の範囲に留めるか禁酒によって、大腸がん予防につながります。 運動・禁煙の習慣化 運動不足や喫煙といった生活習慣も、大腸がんの発生リスクに影響します。とくに運動不足は大腸がんリスクを高める最も重要な要因の一つです。(文献10) 定期的に適度な運動(有酸素運動)を行っている人は、そうでない人に比べて大腸がんになるリスクが低いことがわかっています。日常生活にウォーキングやジョギングなどの運動を取り入れることで、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進し、大腸がんの予防効果が期待できます。 また、喫煙習慣も大腸がんのリスク要因です。タバコを吸う人は吸わない人に比べ、さまざまながんになるリスクが約1.5倍に高まるとのデータもあります。喫煙は肺がんのみならず大腸がんとも関連があることが明らかになっているため、予防のためには禁煙することが望ましいでしょう。 実際、禁煙後は経過時間に応じて大腸がんを含む多くのがんのリスクが徐々に低下する報告がされています。健康な大腸を保つため、運動習慣の改善とともに禁煙にも努めましょう。 大腸がんとポリープの違いと進行リスクを知り早期検査を心がけよう 大腸ポリープと大腸がんの違いや関係、そして進行リスクについて解説しました。 大腸がんの多くはポリープから発生することがわかっている一方で、早期発見・治療により高い確率で治癒が望める病気でもあります。 大腸ポリープ自体は良性とはいえ、その中には将来がん化するものも含まれるため油断はできません。 日頃から生活習慣を見直して大腸がん・ポリープを予防するとともに、適切なタイミングで定期検診を受けて早期発見に努めることが大切です。大腸がんとポリープの違いを正しく理解し、必要以上に不安がらず、しかし軽視もせず、バランスの取れた予防と早期対策を心がけましょう。 大腸がんとポリープの違いと進行リスクを知り早期検査を心がけよう 大腸ポリープと大腸がんの違いや関係、そして進行リスクについて解説しました。大腸がんの多くはポリープから発生することがわかっている一方で、早期発見・治療により高い確率で治癒が望める病気でもあります。 大腸ポリープ自体は良性とはいえ、その中には将来がん化するものも含まれるため油断はできません。日頃から生活習慣を見直して大腸がん・ポリープを予防するとともに、適切なタイミングで定期検診を受けて早期発見に努めることが大切です。大腸がんとポリープの違いを正しく理解し、必要以上に不安がらず、しかし軽視もせず、バランスの取れた予防と早期対策を心がけましょう。 参考文献 (文献1)西和医療センター「大腸ポリープ」西和医療センターホームページ.https://seiwa-mc.jp/patients/departments/gastroenterology/polyp/.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献2)日本消化器病学会「患者さんとご家族のための 大腸ポリープガイド」2023年. https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/cp_2023.pdf.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献3)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」.https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/pdf/103.pdf.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献4)オリンパス株式会社「大腸がんにおける早期発見の重要性」オリンパスホームページ .https://www.olympus.co.jp/csr/social/learning-about-cancer/03/.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献5)国立がん研究センター「ポリープの大腸がん化に腸内細菌が関係していた -家族性大腸腺腫症(FAP)から知る大腸がん発生のメカニズム-」研究トピックス, 2024年8月23日. https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2024/0823/index.html.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献6)日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査と治療」胃腸の検査と治療 Q&A. https://www.jges.net/citizen/check-cure/no3-2.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献7)飲むだけカプセル内視鏡「大腸カプセル内視鏡~大腸検査の流れやスケジュール、大腸の適用疾患について」飲むだけカプセル内視鏡 .https://nomu-capsule.jp/about/daicho-capsule-endoscope.html.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献8)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」.https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献9)国立がん研究センター がん対策研究所「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」. https://www.fukuoka-tenjin-naishikyo.com/knowledge/post-18004/.(最終アクセス:2025年4月20日) (文献10)国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防」.https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html.(最終アクセス:2025年4月20日)
2025.04.30 -
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大腸がんのステージ3と告げられると、リンパ節への転移があるのではないか、どんな痛みや便通異常が起こるのか、手術でどこまで治せるのかといった不安が一気に押し寄せるかもしれません。 実際のところ、大腸がんの進行度合いは腸壁への浸潤度(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移(M因子)の3つを組み合わせて判断します。その中でステージ3は、腸壁の深さに関わらずリンパ節に転移が認められる段階です。ここに該当する場合は治療計画や再発リスクの面で注意が必要となり、自覚症状もさまざまな形で現れる可能性があります。 本記事では、ステージ3の大腸がんにおける代表的な症状や治療選択、再発予防のポイントをわかりやすく整理します。がんがリンパ節に到達しているとはいえ、決してあきらめる必要はありません。治療技術の進歩や新しい薬の登場により、ステージ3であっても長期生存や再発予防に大いに期待が持てることがわかっています。 この記事を通して、症状を把握し早めに行動するメリットを理解し、前向きな気持ちで治療に取り組むきっかけになれば幸いです。 大腸がんにおけるステージ3とは 大腸がんは0期から4期までの5段階にわかれ、ステージ3はリンパ節転移があるかどうかが重要なポイントです。腫瘍の大きさや腸壁への深達度が比較的浅くても、リンパ節にまでがん細胞が入り込んだ時点でステージ3と判断されます。 この段階になると手術だけでなく、術後の補助化学療法や放射線治療などを組み合わせた治療戦略が必要になるケースが多くなります。再発率を左右する重要な段階でもあるため、医師の説明や検査内容を十分に理解し、自分に合った治療を検討しましょう。(文献1) リンパ節は全身をめぐるリンパ液の通り道なので、がん細胞がここに入ると体の別の場所へ転移するリスクが高まります。 腸壁の深達度を示すT因子や、他臓器に転移しているかどうかのM因子と組み合わせて総合的にステージが決まりますが、リンパ節転移が確認された場合はステージ3として扱われ、さらに転移の個数や位置によってIIIa、IIIb、IIIcなどに細分化されます。 腸壁の浸潤が浅い場合でもリンパ節転移が明らかであれば、比較的早期の状態から積極的な治療を考えることになります。(文献2)(文献4) リンパ節転移があるからといって、すぐに悲観する必要はありません。手術や抗がん剤、放射線治療を適切に組み合わせることで、5年生存率がかなり高まることが多くのデータから示されています。 昔はリンパ節転移がある段階だと治癒が難しいイメージもありましたが、近年は治療法の進歩により、ステージ3であっても長期的に元気に過ごしている方が増えています。さらに、手術前後の治療をどのように組み合わせるかによって、再発を防ぐ道筋が見えやすくなってきました。 まずは自分がなぜステージ3と判断されたのか、リンパ節転移の範囲はどの程度なのかを把握し、それに基づいてより効果的な治療法を検討していくことが大切です。 大腸がんのステージ3を判断する基準 治療計画を立てる上で欠かせないのが N因子(リンパ節転移数)です。転移したリンパ節の数によってステージ3は三つのサブカテゴリーに細分化され、それぞれで推奨される治療の強さが変わります(文献2)(文献3)。 サブカテゴリー 病理検査で確認された転移リンパ節数 再発リスクの目安 術後補助化学療法の位置づけ Ⅲa 1〜3個 中リスク 単剤経口薬+点滴薬の標準コース。副作用による中断も比較的少ない Ⅲb 4〜6個 高リスク 二剤併用または三剤併用を基本とし、治療期間は6カ月以上を推奨 Ⅲc 7個以上、または主リンパ節転移 超高リスク 強力な併用療法に加え、臨床試験や免疫チェックポイント阻害薬の適応を検討 病院ではまず造影CTやMRIで腫れたリンパ節の数を推定し、手術で切除した組織を顕微鏡で詳細に調べて最終的な個数を確定させます。この二段階の確認によって見落としを最小限に抑えられるため、過不足のない治療強度を選びやすくなります(文献5)。 たとえばⅢaであれば、補助化学療法を行ってもしびれや白血球減少などの副作用が軽度で済むケースが多く、仕事を続けながら外来通院で治療できる方もめずらしくありません。 Ⅲcの方では強力な薬剤を用いるぶん副作用が強く出やすいため、主治医やがん専門薬剤師と相談しながら段階的に薬を調整したり、臨床試験で新しい治療オプションを探る選択肢も加わってきます。 このようにリンパ節転移数は治療の強さと再発リスクをはかる重要な物差しとなります。 ステージ3大腸がんの生存率・余命 大腸がんのステージ3と聞くと、治癒率や生存率がどれくらいなのかが気になる方が多いでしょう。一般的なデータでは、ステージ3全体の5年生存率はおよそ60〜80%程度と報告されています。(文献5)(文献6) 数字に幅があるのは、先述のリンパ節転移の数や部位によって細分化されるIIIa、IIIb、IIIcなどの病期によって再発リスクが変わるためです。 N1相当の小規模転移であればより高い生存率が見込まれ、N2やN3のように転移数が多ければ再発のリスクが上がるため、平均値としてはやや低めに見えることがあります。 手術だけでなく、補助化学療法や放射線治療を適切に組み合わせることで、この生存率をさらに押し上げられます。術後に抗がん剤を投与して再発リスクを抑える方法が一般的にとられるのは、リンパ節転移のあるステージ3で微少ながん細胞が体内に残る可能性が高いためです。 あくまで生存率の数値は統計的な平均で、個々の体質や腫瘍の性質によって大きく変動する可能性があります。 最近は免疫チェックポイント阻害薬などの新しい薬も選択肢として出てきたため、従来よりもさらに生存率が向上するケースが増えています。とくに術後5年を無事に乗り越えれば、その後10年、20年と元気に過ごす例も珍しくありません。 ステージ3大腸がんの治療方法 ステージ3の治療の中心となるのは、やはり外科的手術です。がんがリンパ節まで広がっている以上、腫瘍を切除しないかぎり根治をめざすのは難しくなります。 ただし、ステージ3は手術のほかにも補助的な抗がん剤治療や放射線治療、近年注目されている免疫療法や再生医療などを組み合わせて、トータルで対策していくことが一般的です。(文献3) 腫瘍の部位や大きさ、リンパ節転移の数によって治療プランは異なるため、主治医との相談の上で自分に合った方法を見極めてください。 手術(外科治療) ステージ3大腸がんの根治をめざす場合、まず優先されるのが手術です。結腸がんではがんの部分とその周囲のリンパ節を含めて切除し、残った腸管を縫合して機能を保ちます。 腹腔鏡やロボット支援手術などの低侵襲手術が活用されるケースも増えていますが、腫瘍が大きい場合や多数のリンパ節転移が疑われる場合は開腹手術が選択されることもあります。(文献3) 直腸がんの場合は肛門に近い場所にがんがある場合など、切除範囲によっては肛門を温存できずに人工肛門(ストーマ)の造設が必要となるケースがあります。(文献1) 人工肛門が必要になったときは日常生活がどう変化するか不安に感じる方も多いのですが、ストーマ装具の性能が進化し、専門スタッフによる指導などのサポート体制が整っているので、慣れれば仕事や外出も十分に可能になります。(文献1) 術後は切除した組織を病理検査し、リンパ節転移の詳しい数や腫瘍の性質を確認して、再発予防のための補助化学療法などを検討します。ステージ3の段階では、手術に加えて抗がん剤治療を組み合わせることで再発リスクを大幅に下げることが一般的とされるため、医師から「術後の追加治療」を勧められるケースが多いのが特徴です。(文献3) \まずは当院にお問い合わせください/ 抗がん剤治療 抗がん剤治療は、手術後の再発予防や、切除が難しいがんに対する進行抑制を主な目的として行われます。 ステージ3の大腸がんに関しては、手術後に微小ながん細胞が体内に残っている可能性が高いため、再発を防ぐ目的で抗がん剤が投与されるのが通例です。抗がん剤の種類は、患者さんごとの体力や副作用の出方を考慮して決定されますが、気になる副作用については吐き気や倦怠感、下痢やしびれなどが典型例です。 ただし、制吐剤や補助薬が進歩しているので、以前と比べてコントロールしやすくなりました。 治療を続けている間も仕事を続けられる人がいる一方で、副作用が強く出て体力的につらい方もいます。主治医や看護師、薬剤師などの医療チームと相談しながら、生活環境や費用面も含めて治療計画を調整しましょう。 抗がん剤による再発率低減の効果はエビデンスが多く、術後の再発リスクを抑えるためには欠かせない選択肢として位置付けられています。(文献3) 放射線治療 放射線治療は、大腸がんのうちとくに直腸がんの治療でよく併用されます。大きくわけて補助放射線治療と緩和的放射線治療があり、補助放射線治療では、骨盤内の再発を抑えるために手術前または手術後に行われます。 術前放射線では腫瘍を小さくして手術の成功率を上げたり、局所再発率を下げたりする効果が期待でき、術後放射線は、切除では取りきれなかった可能性のある微小ながん細胞に対処する狙いで実施されることがあります。 ただし、大腸がんは放射線感受性がさほど高くないとされ、単独で根治をめざす効果は限定的です。そのため、手術や化学療法との組み合わせが非常に重要になります。緩和的放射線治療は、切除不能で痛みや出血を緩和したい段階で行うことで症状の軽減をはかります。 照射範囲によっては放射線性腸炎や放射線性膀胱炎といった副作用が起こることもありますが、照射技術が進歩しており、正常組織へのダメージを最小限にとどめる工夫が年々進んでいるのが現状です。(文献3) 免疫療法・再生医療 免疫療法は、患者自身の免疫力を高めてがん細胞を攻撃する治療法ですが、大腸がんに効果が認められた療法は免疫チェックポイント阻害薬のみです。(文献7) 近年話題になっている再生医療は幹細胞などを用いて臓器や組織を修復・再構築する手法を指し、がん治療分野ではまだ研究段階にあるものの、今後の発展が期待されています。 大腸がん治療と直接結び付くものは現状では多くありませんが、一部の施設では細胞培養技術などを活用して免疫機能を補う取り組みを行っています。 標準治療の補助として利用できるかどうかは症例や研究段階によりますが、興味がある場合は詳しい医療機関へ相談するのも一つの方法です。免疫療法や再生医療が標準治療に完全に組み込まれるには時間がかかるかもしれませんが、新しい選択肢を探したい方にとってはチェックしておきたい領域です。再生医療に興味がある方はぜひ当院にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ ステージ3大腸がんにおける術後の生活と再発予防 ステージ3大腸がんの治療を終えても、術後の生活や再発予防への取り組みは引き続き重要になります。食事や運動、定期検診をどう続ければ良いのか悩む方は多いでしょう。 大腸がんならではの便通管理や生活習慣の見直しなど、日常的に気をつけることは数多くあります。 手術によって便の通り道が変わると、排便回数の増加や下痢の傾向が続く場合もあるため、体に合わせて少しずつ慣らしていく必要があります。 ここで焦って無理を重ねると、体力がなかなか回復せず、日常生活に支障を来すこともあるので、段階的にできることを増やしましょう。 リハビリとメンタルサポート 術後のリハビリでは、まず体力や筋力を回復させることが基本となります。ウォーキングや軽い体操から始めて、徐々に体を動かす時間や内容を増やすのが効果的です。 食事面でも、腸の機能が安定するまで、消化に良いものや腸内環境を整えやすい食材を意識的に摂るようにすると、便通トラブルの緩和が期待できます。 手術前は運動習慣がなかった人でも、リハビリをきっかけに体の動かし方を学ぶことで、思った以上に筋力がつき、回復が早まることがあります。 さらに、メンタル面のサポートも欠かせません。がん治療による精神的ストレスや再発への不安などで落ち込む場合は、患者会やカウンセリングなどを活用して、同じような体験をした人の話を聞いたり、専門家から気持ちの整理に関するアドバイスをもらうことが大いに助けになります。 緩和ケアは終末期だけでなく、治療中から受けられるものです。心のケアに取り組むことで、治療のモチベーションを保つ効果も期待できるため、遠慮せず医師や看護師に相談してみると良いでしょう。(文献8) 経過観察 大腸がんの術後は、ある程度長い期間にわたって経過観察が必要になります。とくに術後3年以内は再発リスクが高い時期であり、血液検査や腫瘍マーカーの測定、CTやMRIによる画像検査を定期的に受けることが推奨されます。なぜなら、肝臓や肺などへの転移が起きやすい性質があるため、症状がなくても画像上で変化が見つかる場合があるからです。 大腸内視鏡検査も定期的に実施して、新たなポリープやがんの発生がないかを確認します。もし再発が見つかったとしても、転移が限局していれば再切除や薬物療法で対処できる可能性があります。自己判断で検査を中断せず、主治医の指示に従って定期的な観察を受けましょう。(文献3) 大腸がんステージ3と宣告されて辛いあなたへ ステージ3と宣告されると、リンパ節転移があることで「完治は難しいのではないか」「再発が怖い」と落ち込む方が少なくありません。しかし、リンパ節転移があったとしても、手術や化学療法、放射線治療、免疫療法などを上手に組み合わせることで完治や長期生存をめざす道が開けるのも事実です。 再生医療などの新しい選択肢も研究が進んでおり、特定の患者さんに有望な可能性を示す報告もあります。 治療法によっては保険適用外の場合もあるため、費用や効果の面で十分に検討は必要ですが、セカンドオピニオンを通じて情報を集める価値は大いにあります。 大腸がんは他のがんと比べて手術と薬物療法でコントロールしやすい側面もあるため、適切なタイミングで行動に移せば未来を変えられるかもしれません。不安を一人で抱えず、まずは担当医を頼ってください。 生活面のサポートや経済的な補助制度も充実しているので、社会福祉士や医療ソーシャルワーカーに相談してみると具体的なアドバイスが得られるでしょう。つらい状況が続きますが、少しでも行動を起こし、未来を見つめ直しましょう。 参考文献 (文献1)国立がん研究センター がん情報サービス. 大腸がん 治療 1.ステージと治療の選択. 2025年03月24日更新. https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html(最終アクセス:2025年04月20日) (文献2)ざいつ内科クリニック. 大腸がんのステージについて. 2023年.http://www.zaitsu-naika.com/%E7%99%8C/p3826.html(最終アクセス:2025年04月20日) (文献3)国立がん研究センター がん情報サービス.大腸がん(結腸がん・直腸がん)について.https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/print.html(最終アクセス:2025年04月20日) (文献4)国立がん研究センター中央病院. 大腸がんのステージ(病期)について. https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/160/index.html.(最終アクセス:2025年04月20日) (文献5)国立消化器内視鏡クリニック. 「大腸がん」の 5 年生存率は?早期治療のメリット&知っておきたい病気の要点. 2023‑01‑31. https://kunitachi-clinic.com/column/%E3%80%8C%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93%E3%80%8D%E3%81%AE%EF%BC%95%E5%B9%B4%E7%94%9F%E5%AD%98%E7%8E%87%E3%81%AF%EF%BC%9F%E6%97%A9%E6%9C%9F%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83/(最終アクセス:2025年04月20日) (文献6)国立がん研究センター がん情報サービス. 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム. 2015年.https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c02(最終アクセス:2025年04月20日) (文献7)国立がん研究センター がん情報サービス.免疫療法 もっと詳しく. 2015年.https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html#003(最終アクセス:2025年04月20日) (文献8)国立がん研究センター がん情報サービス.がんのリハビリテーション医療. 2015年.https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/rehabilitation/index.html(最終アクセス:2025年04月20日)
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「花咲乳がん」と診断されたものの、どのような病気なのかわからず不安になっていませんか。あるいは「自分の症状が花咲乳がんなのでは?」と感じている方もいるかもしれません。 花咲乳がんは、進行した乳がん症状の一種で、がん組織が皮膚の表面にあらわれた状態です。見た目や悪臭に困っている方も少なくありませんが、適切な薬物療法や放射線療法などで痛みや悪臭の軽減、QOLの改善が可能です。 本記事では、花咲乳がんの特徴やステージとの関係性、治療法について詳しく解説します。本記事を参考に、花咲乳がんの特徴や治療法を理解し、自分にとって納得のいく治療を検討してみてください。 花咲乳がんとは「がん組織が皮膚の表面にあらわれた状態の乳がん」 花咲乳がんとは、乳がんが進行し、がん組織が皮膚の表面にあらわれた状態です。 医学的には「がん性皮膚潰瘍」や「がん性皮膚創傷(そうしょう)」とも呼ばれ、皮膚が破れて盛り上がり、花が咲いたように見えることから名付けられました。(文献1) 見た目の症状に加えて、悪臭や出血、膿など他の症状を伴う場合もあります。放置すると状態が悪化しやすいため、早期の対応が重要です。 花咲乳がんの症状 花咲乳がんでは、皮膚の変化に加えて、乳がんに共通するさまざまな症状が見られます。代表的な症状は以下のとおりです。 乳房の痛み 出血 悪臭 膿 しこり 皮膚の赤み 花咲乳がんの見た目やにおいの変化は、日常生活や精神面にも影響を及ぼすことがあります。気になる症状があれば、早めに専門医に相談しましょう。 花咲乳がんの初期症状 花咲乳がんの初期には、一般的な乳がんと似た症状があらわれます。代表的な初期症状は以下のとおりです。 症状 説明 乳房のしこり 皮膚の見た目に異変があらわれる前に、しこりができる場合が多い 乳房を触れてみて異物感があれば早めの受診がおすすめ 乳房の皮膚の赤みや腫れ 乳がんが表皮に近づくと皮膚に異常が見られる しこりが皮膚側へ肥大する場合もある 乳房のへこみ 腫瘍が皮膚表面近くにある場合、皮膚のつっぱりやへこみが生じることがある 皮膚を引っ張るとへこみの症状があらわれる場合がある 初期症状を放置すると、花咲乳がんのように皮膚の表面にがん組織があらわれる状態に進行するケースがあります。違和感がある場合は、早めに専門医への受診が大切です。 花咲乳がんの原因 花咲乳がんは、進行したがんで見られる症状です。乳がんを治療せずに放置した場合や、治療の効果が十分に得られなかった場合にあらわれることが多くあります。 乳がんが進行すると、腫瘍が皮膚の表面に達して破れてがん組織が皮膚表面に露出し「花が咲いたような状態」になります。 乳房に異変を感じたときは、早めに受診して治療を始めることが大切です。初期に治療を行えば、がんの進行を防げる可能性が高まります。 花咲乳がんのステージと余命の関連性 花咲乳がんは、乳がんが進行した状態であらわれる症状のひとつです。ステージやがんの広がり方によって、予後や余命の目安も変わります。 本章では、花咲乳がんとステージ・余命の関係について解説します。今後の治療方針を医師と相談する際の参考になれば幸いです。 花咲乳がんのステージの目安 乳がんの進行度は以下のように、ステージ0〜Ⅳの5段階に分かれており、数字が大きいほどがんの進行度は高まります。(文献2) 皮膚に潰瘍があらわれる花咲乳がんは「局所進行乳がん」に分類され、ステージⅢB以上と判断される場合が多いです。 ステージ 症状 0期 非侵襲(ひしんしゅう)がん がんが広がっていない状態 ⅠA期 しこりが2cm以下 リンパ節への転移なし ⅠB期 しこりが2cm以下 同じ側の脇のリンパ節にわずかに転移 ⅡA期 しこりは2cmを超えるが5cm以下 リンパ節に転移は見られない しこりは2cm以下 同じ側の脇のリンパ節に転移 ⅡB期 しこりが5cmを超える リンパ節への転移なし しこりは2cmを超えるが5cm以下 同じ側の脇のリンパ節に転移 ⅢA期 しこりが5cmを超える 同じ側の脇のリンパ節、または内胸リンパ節に転移 しこりの大きさは5cm以下 同じ側の脇のリンパ節が周囲組織に固定されているまたは内胸リンパ節に転移 ⅢB期 大きさに関わらず、しこりが胸に固定されている 皮膚にむくみや潰瘍を形成している 同じ側の脇のリンパ節、または内胸リンパ節に転移 ⅢC期 しこりの大きさに関わらず、同じ側の脇のリンパ節や鎖骨、内胸リンパ節に転移 Ⅳ期 しこりの大きさやリンパ節の転移に限らず、他の臓器へ転移 ステージⅢでは、がんが乳房内だけでなく皮膚や胸壁に及んでいる状態を意味します。 さらにステージⅣと診断されると、がんが他の臓器にまで広がっているため、根治を目指す治療は困難とされています。ただし、症状の緩和や延命を目的とした治療によって、生活の質(QOL)の維持や長期的なコントロールを目指すことも可能です。 5年生存率(余命)の目安 乳がんはステージが進むほど生存率が下がる傾向があります。乳がんの実測生存率の目安は以下の通りです。(文献3) ステージ 実測生存率(%) Ⅰ期 95.2 Ⅱ期 90.9 Ⅲ期 77.3 Ⅳ期 38.6 ステージが進むほど生存率は下がってしまいます。しかし、近年は治療法の選択肢の増加や医療の進歩により、進行がんであっても長期生存や症状の緩和を目指せるようになりました。 花咲乳がんにおける3つの治療法 花咲乳がんの治療法は一般的な乳がんと同様、以下の3種類が中心です。 薬物療法 手術療法 放射線療法 治療法は、がんの進行度や個人の体調・意向に応じて選択されます。それぞれの特徴を理解し、今後の治療方針を考える際の参考にしていただければ幸いです。 薬物療法 薬物療法は、花咲乳がんのような進行乳がんで選ばれる場合が多い治療法です。以下のような目的で選択されます。(文献4) 再発のリスクを抑える 手術前に腫瘍を小さくする 症状を和らげる 使用される薬には、がんの種類や体質により異なるものがあります。乳がんの治療に使われる薬剤の種類は、主に以下の3つです。(文献5) 薬剤の種類 効果 ホルモン剤 ホルモンの分泌を抑制する ホルモンの作用を利用して増えるタイプの乳がんに使用される場合が多い 分子標的薬 がん細胞を標的にして攻撃する 乳がんで使用する場合は、他の薬剤と併用して使用する場合が多い 抗がん剤 がん細胞の増殖を抑える 正常な細胞にも影響を与えることがある また、使用する薬剤による副作用への対応も必要です。医師と相談しながら無理のない治療計画を立てましょう。 手術療法 手術療法では、がんが存在する乳房や周囲の組織の切除が目的です。 主な手術の種類は主に以下の3つです。(文献4) 乳房の一部を取り除く「乳房部分切除術」 全体を取り除く「乳房全切除術」 脇の下のリンパ節を取る「腋窩リンパ節郭清」 ただし、ステージ4のようにすでに遠くの臓器に転移している場合、手術でがんを取り除いても生存期間の延長が難しいとされています。そのため、薬物療法を中心に行うのが一般的です。(文献5) 乳がんの手術については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 放射線療法 放射線療法は、がんにX線を照射することでがん細胞を死滅させたり、腫瘍を縮小させたりする治療法です。手術後に放射線療法を行う場合、残った乳房に対して照射するケースも多くあります。(文献4) また、花咲乳がんのように骨や脳へ転移した進行がんでは、痛みの軽減や日常生活の質(QOL)を保つために放射線療法が用いられることもあります。(文献7) なお、放射線療法後には一時的に倦怠感や皮膚炎などの副反応があらわれるリスクもあるため、体調の変化には注意が必要です。(文献7) 花咲乳がんは専門医のもとで適切な治療を受けよう 花咲乳がんは、進行した乳がんであらわれる代表的な症状のひとつです。できるだけ早い段階で専門的な治療を受けることが大切です。今回解説したような兆候に心当たりがある方は、予後を良好に保つためにも、早めに受診して適切な治療を受けましょう。 また、近年では薬物療法・手術療法・放射線療法の3本柱に加え「免疫療法」が新たな乳がん治療の選択肢として注目されています。(文献8)免疫療法は、免疫力を高め、がんの予防や再発予防を目的とした治療法です。従来の治療と組み合わせることも可能です。 当院「リペアセルクリニック」では、免疫療法にも対応しております。メール相談やオンラインカウンセリングも実施していますので、気になる方はお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 花咲乳がんについてよくある質問 花咲乳がんはなぜ切除できないのですか? 花咲乳がんがあらわれている場合、進行したがんが他の臓器へ転移している恐れがあります。そのため、すぐに切除できるとは限りません。 まずは薬物療法でがんの進行を抑えたり、腫瘍を小さくしたりする治療が優先されます。 状態が安定し、がんが部分的にとどまっていると判断された場合には、手術による切除が検討されることもあります。(文献9) 治療方針は進行度や体の状態によって異なるため、必ず専門医と相談するようにしましょう。 花咲乳がんはどんなにおいですか? 花咲乳がんでは、皮膚の表面に露出したがん組織から出血や浸出液がにじむと、腐敗臭のような強いにおいが生じることがあります。(文献10) 花咲乳がんによる悪臭は患者本人の生活の質にも大きく影響し、ストレスとなる場合も多く見られます。においに困る場合は、以下の消臭ケアがおすすめです。 メトロニダゾール(塗り薬)を塗る(文献11) 患部を洗う 吸水シートを使用し浸出液の漏れを防ぐ 部屋をこまめに換気する 花咲乳がんによるにおいでお困りの方は、医師と相談のうえ実践してみてください。 参考文献 (文献1)渡部 一宏.「がん性皮膚潰瘍臭改善薬:メトロニダゾールゲル」『昭和薬科大学紀要』50巻,p15-p19.2016年https://www.shoyaku.ac.jp/upload/AdminNews/528/rel_doc1/watanabe-kiyou-50.pdf (文献2)一般社団法人日本乳癌学会 「Q15 乳がんのステージとステージごとの治療の流れについて教えてください」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版, 2022年12月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/30-2/q15/ (文献3)国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録2014-2015年5年生存率」2023年https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/latest.html (文献4)国立がん研究センターがん情報サービス「乳がん 治療」2024年10月22日https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html (文献5)一般社団法人日本乳癌学会「Q16 乳がん治療に使われる薬剤にはどのようなものがありますか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版, 2022年12月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/30-2/q16/ (文献6)一般社団法人日本乳癌学会 「CQ4 Stage Ⅳ乳癌に対する原発巣切除は勧められるか?」乳癌診療ガイドライン2022年版, 2022年5月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/g_index/cq4/ (文献7)一般社団法人日本乳癌学会 「総説1 乳癌放射線療法の基本」乳癌診療ガイドライン2022年版, 2022年5月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/h_index/s1/ (文献8)Kathrin Dvir,et al. (2024年). Immunotherapy in Breast Cancer.Int. J. Mol. Sci2024, 25 (14)doi: 10.3390/ijms25147517. (文献9)一般社団法人日本乳癌学会 「総説 Ⅳ.局所進行乳癌(StageⅢB,ⅢC)」乳癌診療ガイドライン2022年版, 2022年5月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/s/s4/ (文献10)堀尾卓矢,津福達二ほか.「Mohsペーストとメトロニダゾールゲルを用いた乳癌癌性皮膚潰瘍の管理」『日臨外会誌名』77巻(11号), p2646-p2652,2016年https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/11/77_2646/_pdf (文献11)桑山隆志,横田成彬ほか.「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減に対するメトロニダゾールゲル(ロゼックス®ゲル0.75%)の安全性および有効性の検討—使用成績調査—」『Palliative Care Research』18 巻(1号), p11-p18. 2023年https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspm/18/1/18_22-00042/_html/-char/ja
2025.04.30 -
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「タチの悪い乳がんって言われたけど、どういう意味なんだろう」「治るのかどうかが心配」と不安になっていませんか。 医師の一言がずっと引っかかり、ネットで調べている方も多いかもしれません。 タチの悪い乳がんは「トリプルネガティブ型」の乳がんを指していることが多いと考えられます。 ”タチの悪い”と表現されるものの、治療法がないわけではありません。この記事では、タチの悪い乳がんの治療法や再発のリスク、手術後の生活などを解説します。 病気への不安が和らぎ、今後の生活をイメージするきっかけとなれば幸いです。 タチの悪い乳がんとされる「トリプルネガティブ型」とは 「タチが悪い」と言われると、治らないのではと怖くなりますよね。 正式な医学用語では「タチが悪い」といった表現は使いませんが、実際に“治りにくいがん”として扱われるタイプの乳がんはあります。それが「トリプルネガティブ乳がん」です。 これは、他のタイプと比べて再発しやすく、生存率が低い傾向にあるため「タチが悪い」と感じる方が多いのです。ただし、だからといって治療ができないわけではありません。早期発見や治療の進歩によって、治療の道はしっかりあります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんのサブタイプ ここでは、トリプルネガティブを含む乳がんの「サブタイプ」について説明します。 サブタイプとは乳がんの性質による分類 がんの分類といえば「ステージⅠ」や「ステージⅡ」などの言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。これはがんがどこまで広がっているか、他の場所への転移があるかといった進行度の話です。 一方、「サブタイプ」とはがんの性質による分類のことを指します。 乳がんは「ホルモンが関係しているのか」や「HER2というたんぱく質があるかどうか」で分けられます。サブタイプごとに効果的な治療法が変わってくるため、最初の診断でしっかり見極めることが大切です。(文献1) 乳がんのサブタイプ一覧 以下が代表的な乳がんのサブタイプです。 サブタイプ分類 ホルモン受容体 HER2 (がん細胞の増殖に関係するたんぱく質) ER (エストロゲン受容体) PgR (プロゲステロン受容体) ルミナルA型 陽性 陽性 陰性 ルミナルB型 (HER2陰性) 陽性 弱陽性・陰性 陰性 ルミナルB型 (HER2陽性) 陽性 陽性・陰性 陽性 HER2型 陰性 陰性 陽性 トリプルネガティブ 陰性 陰性 陰性 ER、PgRは女性ホルモンとの関係をあらわし、HER2は細胞の増殖に関わるタンパク質との関係をあらわします。 トリプルネガティブとは、このER、PgR、HER2がすべて「陰性」である乳がんのことです。 「ネガティブ」と聞くと「よくないこと」というイメージを持つかもしれませんが、単に「検査結果が陰性」という医学的な意味で使われています。(文献2) 【サブタイプ別】乳がんの再発率・生存率 タチの悪い乳がんと言われると、再発のしやすさや今後がんは治るのか、といったことが心配になりますよね。 ここでは、乳がんのサブタイプごとの再発しやすさや、生存率について解説します。 サブタイプ別の再発率 再発とは、治療後に見えなくなったがんが再びあらわれることです。また、治療から5年以内に再発しない人の割合を「5年無再発率」として示すこともあります。 乳がんのサブタイプによって、再発のしやすさはさまざまです。5年無再発率がもっとも高いのは97.2%のルミナルA型、反対にもっとも低いのは79.3%のトリプルネガティブという報告があります。(文献3) 同じ「乳がん」でも、性質によって経過は大きく異なるため、サブタイプに応じた治療と経過観察が大切です。 サブタイプ別の生存率 「5年生存率」とは、診断から5年後に生きている人の割合のことです。再発率と同じく、乳がんのサブタイプごとに、生存率には違いがあります。 たとえば、ルミナルA型は5年生存率が99.4%と高く、10年後でも98.0%とのデータがあります。 一方で、トリプルネガティブは、5年生存率が81.6%、10年生存率が78.3%と、他のサブタイプよりもやや低い傾向です。(文献3) この違いは、使える薬や治療法の選択肢がサブタイプごとに異なるためだと考えられています。治療法が限られるトリプルネガティブは、化学療法が中心となるため、予後が厳しいと感じることがあるかもしれません。 【タチの悪い乳がん】トリプルネガティブ乳がんの治療は「化学療法」 ここでは、トリプルネガティブ乳がんに使われる「化学療法」について解説します。 乳がんの化学療法の特徴 化学療法の副作用 化学療法の特徴を知り、治療に備えましょう。 乳がんの化学療法の特徴 化学療法とは、いわゆる「抗がん剤治療」のことを指します。 サブタイプ別の治療方法は、以下の表の通りです。 サブタイプ分類 選択される薬物療法 ルミナルA型 ホルモン療法、化学療法 ルミナルB型(HER2陰性) ホルモン療法、化学療法 ルミナルB型(HER2陽性) ホルモン療法、化学療法、抗HER2療法 HER2型 化学療法、抗HER2療法 トリプルネガティブ 化学療法 ホルモン療法やHER2療法が効かないトリプルネガティブ乳がんは、化学療法が主な治療法です。 化学療法を行う目的やタイミングは、以下のとおりです。 手術の前にがんを小さくしてから切除しやすくする 手術のあとに、体内に残ったがん細胞をなくす 手術が難しい進行がんや、再発したがんに対して行う 手術前の薬の効き方を見て、手術後の薬を同じものにするか別の薬に変えるかを決めることがあります。(文献1) 化学療法の副作用 化学療法には、次のような副作用があります。(文献4)(文献5) 心筋障害 骨髄抑制 吐き気・嘔吐 食欲不振 脱毛 倦怠感 副作用には個人差があり、薬の種類によっても違います。つらさを感じたときは、我慢せず医師や看護師に相談しましょう。 乳がんの手術と後遺症の特徴 乳がんの手術をするかもしれない、と思うと「どんな手術なのか」「後遺症はあるのか」といった心配が出てきますよね。 ここからは、以下の項目に沿って解説します。 乳がん手術の特徴 乳がん手術の後遺症 ひとつずつみていきましょう。 乳がん手術の特徴 乳がんの手術は、以下の二つに分けられます。 腫瘍と周りの乳腺を切除する部分切除 乳房全体を切除する全摘術または乳頭乳輪温存乳房切除術 乳がんは進行すると乳房の中に広がりやすいのが特徴です。そのため、がんの範囲が広いと乳房全体を切除する(全摘)選択をするケースもあります。 また、わきの下のリンパ節にがんが転移していれば、リンパ節を含めた広い部分の切除を検討します。(文献6) 乳がん手術の後遺症 乳がんの手術で起こりやすい後遺症には、次のようなものがあります。 リンパ浮腫:腕がむくんで重い、だるいような感覚 乳房切除後疼痛症候群:胸の奥にチクチクした痛みや違和感が残る状態 リンパ浮腫は、手術でリンパ節を切除したことによって起こります。予防には「肌を清潔に保つ」「きつい下着や袖を避ける」「適度に運動する」「重たい荷物を持たない」などが大切です。 もしむくみや動かしづらさを感じたら、リハビリで改善をめざしていきます。重症化すると日常生活に支障が出ることもあるため、腕に違和感があれば早めに医療機関に相談しましょう。(文献7) 乳房切除後疼痛症候群については、こちらの記事も参考にしてください。 乳がんの治療後、痛みなどの後遺症に悩まされ、なかなか改善が見られないこともあります。こうした痛みには、従来の治療では限界があるとされてきました。 その一方で、再生医療という新しい選択肢も注目されています。とくに「幹細胞治療」は、ダメージを受けた神経の修復が期待される方法で、神経障害に対して新たな可能性を広げています。 当院では、この幹細胞治療を導入し、乳がん治療後のつらい痛みでお困りの方にも対応してきました。症状や状態に応じた個別の治療提案が可能ですので、気になる方はぜひご相談ください。 タチの悪い乳がんでも治療の余地はある 「タチの悪い乳がん」と言われると不安になりますよね。 実際には、これはトリプルネガティブ乳がんのことを指している可能性が高く、他のタイプに比べて再発や進行のリスクが高い面はあります。 しかし、治療法がないわけではありません。化学療法を中心に、手術や再発予防のケアまで、できることはたくさんあります。不安をひとりで抱え込まず、信頼できる医療チームと一緒に進んでいくことが大切です。 また、当院では乳がん治療の後遺症による痛みのご相談も受け付けています。気になる方は、「メール相談」または「オンラインカウンセリング」まで、気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ タチの悪い乳がんに関するよくある質問 乳癌トリプルネガティブの余命は何年ですか? トリプルネガティブ乳がんは、治療が難しいとされるタイプですが、余命は個人によって異なります。 がんの広がり方や、再発があるかどうか、治療にどのように反応するかによって大きく異なります。統計的に生存率がやや低めとのデータはありますが、近年では治療成績も向上しています。 「このがんだから何年」と決めつけず、できる治療を前向きに続けていくことが大切です。 乳がんの治療後はすぐに仕事に復帰できますか? 治療後は、体力が落ちていたり、だるさが残ったりします。 すぐにフルタイムで働くのは難しいケースもあるため、主治医と相談しながら、在宅勤務や時短勤務など、無理のない働き方を選ぶと良いでしょう。焦らず、少しずつ日常を取り戻していけるようサポートを受けてください。 参考文献 (文献1)国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がん 治療」がん情報サービス2024年10月22日https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html (文献2)一般社団法人日本乳癌学会「Q27 病理検査でどのようなことがわかりますか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/40-2/q27/ (文献3)医療法人那覇西会「2023年」那覇西クリニックホームページhttps://www.naha-nishi-clinic.or.jp/about/achievement/1705018379/ (文献4)浅野雅嘉「乳がんの薬物療法」『月刊地域医学』Vol.33 No.1,pp.44-47,2019https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiikiigaku/33/1/33_44/_pdf/-char/ja (文献5)独立行政法人医薬品医療機器総合機構「エピルビシン塩酸塩注射液10mg/5mL「サワイ」/エピルビシン塩酸塩注射液50mg/25mL「サワイ」」2023年10月https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/300119_4235404A1067_1_04#HDR_Warnings (文献6)一般社団法人日本乳癌学会「Q21 どのような場合に腋窩リンパ節郭清が必要でしょうか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/40-2/q21/ (文献7)独立行政法人国立病院機構四国がんセンター「乳房の手術を受けられるあなたへ(乳房温存術・乳房切除術)」独立行政法人国立病院機構四国がんセンターホームページhttps://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/support/clinical_path/mammary_gland/data/manma_kan_231221.pdf
2025.04.30 -
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「乳がんはセルフチェックで見つけられるのかな?」 「どこをどう触れば良いの?」 このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。 乳がんは、早期に見つけることで治療の選択肢が広がり、からだへの負担も軽くなる可能性があります。 乳房の異変に気づいたきっかけの多くは「セルフチェック」であるともいう報告もあり、日ごろから自分のからだに目を向けることが早期発見につながります。(文献1) とはいえ「どうチェックすれば良いのか」「乳がんのしこりはどんな感触なのか」と、わからないことも多いですよね。 本記事では、乳がんセルフチェックのやり方やしこりの特徴などをくわしく紹介します。 乳がんの罹患率が高まりはじめる30代以降の女性にとって、正しい方法を知るきっかけとなれば幸いです。(文献2) 乳がんにおけるセルフチェックのやり方 乳がんのセルフチェックは、以下のような方法で行います。 鏡の前で「見て」チェック 指の腹で「触って」チェック 「乳首の変化」をチェック 「わきの下」をチェック どれも特別な道具は必要なく、少しの時間で始められるやり方です。 それぞれのチェック方法を、具体的に説明します。 鏡の前で「見て」チェック 鏡の前に立ち、両腕を自然に下ろして乳房をじっくり観察します。 腕を上げたり、腰に手を当てて前かがみになったりしてみて、以下のポイントで乳房の状態を確かめましょう。 赤みやただれがないか 色が変わっている部分はないか 乳房の形に変化がないか ひきつれやくぼみ、ふくらみがないか 見た目の変化は、小さな異変に自分で気づくきっかけになります。 少しでも気になる違和感があれば、早めに受診しましょう。 指の腹で「触って」チェック 指の腹を使って乳房をやさしく触りながら確認します。 項目 くわしい説明 触り方 4本指で円を描くように触る 軽くなでる程度の強さで行う 触る場所 全体的にまんべんなく確かめる チェックポイント 違和感がないか しこりのような硬い部分がないか お風呂やシャワー中に濡れた手や石けんを使用すると、指の腹が肌の上をすべりやすくスムーズにまんべんなくチェックできます。 入浴タイムは、セルフチェックを習慣にするのにおすすめのタイミングです。 「乳首の変化」をチェック 乳首周りの変化にも注目しましょう。 乳首に左右差やひきつれ、ただれがないかを目で見て確認します。 乳首を軽くつまんでみて、分泌物が出ないかもチェックしてください。 血の混じった分泌物や異常な分泌物があれば、すぐに専門医へ相談しましょう。 「わきの下」をチェック わきの下も忘れずにチェックしましょう。 乳がんは、わきの下のリンパ節に影響を与えることがあるためです。 反対側の手でわきの下をやさしく触り、しこりや腫れがないかを調べます。 違和感やふくらみを感じた場合は、すぐに医師に相談してください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんにおけるしこりの特徴 乳がんのしこりは、以下のような特徴があげられます。(文献1) 石のように硬い 根が張ったように動かない 豆のようないびつな形である ただし、医師であっても触診のみでがんかどうかを判断するのは困難です。 そのため、これまでなかったしこりに気づいた時点で放置せず、専門家に相談しましょう。 乳がんがもっともできやすいのは「外側上部分」 乳がんがもっとも発症しやすい部位は、外側上部と言われています。(文献3) 乳房の外側上部は胸の前面やわきの近くに位置しており、しこりや異常が気づきやすい位置でもあります。 ただし、乳がんは乳腺のある場所ならどこにでも発生する可能性があるため、上部のみのセルフチェックでは不十分です。 セルフチェックの際は、乳房全体をまんべんなく触りつつ、外側上部を念入りに確認するようにしてみてください。 セルフチェックで乳がんを早期発見するポイント 乳がんを早期に見つけるポイントは、以下のとおりです。 月1回の月経後のタイミングで行う ブレスト・アウェアネスを身につける 自分の乳房を知ることで、小さな変化にも気づきやすくなります。 くわしく見ていきましょう。 月1回の月経後のタイミングで行う 月経後はホルモンの影響で乳房がやわらかくなり、しこりや変化を確かめやすくなる時期です。 月に1回、自分の乳房に触れる習慣をもつことで、普段との違いに気づきやすくなります。 ただし「毎月1日」と日付で決めてしまうと、月経周期のズレによって乳房の状態が変わり、チェックの精度が下がることがあります。 そのため「月経後1週間」を目安にタイミングを決めておくと、毎回近い状態でセルフチェックができ、より正確に判断できるでしょう。 ブレスト・アウェアネスを身につける ブレスト・アウェアネスとは「自分の乳房に意識を向けて日常生活を送ること」を意味する、乳がん予防の新しい考え方です。(文献3) 従来の「しこりを探す自己検診」とは違い、より自然に自分の乳房の異常に気づくことを大切にしています。 実践のポイントは、次の4つです。(文献4) 自分の乳房の状態を知っておく(大きさや硬さ、左右差など) 日々の変化に目を向ける(へこみや赤み、分泌物など) 少しでも気になる変化を感じたら、すぐに医師に相談する 40歳を過ぎたら、2年に1回の乳がん検診を受ける ブレスト・アウェアネスは、検診だけに頼らず自分のからだを日常的に見守るためのセルフケアです。 検診の対象ではない方にも役立つため、若い世代を含めたすべての女性にとって大切な習慣といえるでしょう。 乳がんのセルフチェックで気になる症状があったときの対処法 セルフチェックで「しこりのようなものがある」「乳首から分泌物が出る」「皮膚にひきつれがある」といった変化に気づいた場合は、できるだけ早く乳腺外来や婦人科を受診しましょう。 良性のしこりやホルモンの影響による一時的な変化である場合も多いため、自分で判断せず、検査で確かめることが大切です。 受診の際は、変化に気づいた日や場所、くわしい症状などをメモしておくと診察がスムーズです。 「そのうち検診があるから」と先延ばしにせず、早めの行動が早期発見・早期治療につながります。 以下の記事では、乳がんの治療法やステージ分類について説明しています。 まとめ|セルフチェックで乳がんを疑う際は迷わず医療機関を受診しましょう 乳がんのセルフチェックは、自分のからだを守る大切な習慣です。 月に1回、月経後のタイミングでチェックし、日ごろから自分の乳房の状態を意識する「ブレスト・アウェアネス」を身につけておくことで、わずかな変化にも気づきやすくなります。 しこりや皮膚のひきつれ、乳首からの分泌物など、気になる症状があれば「大したことない」と自己判断せず、早めに乳腺外来をはじめとした専門医を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、乳がん治療後の後遺症に対して、幹細胞治療を提供しています。乳がんについて気になる点がある方は、メール相談またはオンラインカウンセリングまで気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんのセルフチェックについてよくある質問 乳がんのセルフチェックのやりすぎはよくありませんか? 乳がんのセルフチェックは、基本的に月1回程度が目安です。 毎日のように行うと、小さな変化に過敏になりすぎて、不安が強くなることがあります。 大切なのは、自分の乳房の通常状態を知ることです。 月経後1週間ほど経過した、乳房がやわらかくなっている時期にチェックしてみましょう。 授乳中や妊娠中でも乳がんのセルフチェックはできますか? 授乳中や妊娠中でもセルフチェックは可能です。 ただし、授乳中や妊娠中はホルモンの影響で乳腺が発達し、乳房が張ったり硬く感じやすかったりするため、通常よりもしこりがわかりづらくなる可能性があります。 いつもと違う変化があるかどうかを意識して、気になる点があれば医師に相談しましょう。 乳がんのセルフチェックにおけるひきつれとは、どんな感覚ですか? 「ひきつれ」とは、乳房の皮膚や乳首が引っぱられたようにくぼんで見える、すじ状に引っぱられている状態です。 ひきつれによって皮膚のなめらかさが失われたり、動きに左右差が出たりする場合もあります。 鏡の前で腕を上げたり動かしたりして、左右差や皮膚の変化がないか確かめましょう。 少しでも違和感を覚えたら、早めに専門医の診察を受けてください。 参考文献 (文献1)がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/cancer/breast/index.html (文献2)乳房:[国立がん研究センター がん統計]|がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html (文献3)乳がんの基礎知識|東京医科大学病院https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/cancer/breast/knowledge.html (文献4)乳癌診療ガイドライン2022年版|日本乳癌学会https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/k_index/s1/
2025.04.30 -
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乳がんのステージ3は、がんが進行している段階です。症状としては腫瘍が5㎝を超えて拡大することがあり、胸の一部がくぼんだり、変色したりします。 進行度と目に見える身体的症状から、ステージ3と診断され不安に感じる方も少なくありません。 しかし、医療の進歩によりステージ3の乳がんでも治療の選択肢は広がり、希望を持って治療に向き合える時代です。 本記事では、ステージ3の乳がんについて徹底解説します。乳がんステージ3の段階や症状、治療方法、生存率などを紹介するので、参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 「乳がん」について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 【前提知識】乳がんのステージは4段階 乳がんのステージは、がんの進行度を表す重要な指標です。 TNM分類と呼ばれる方法で評価され、腫瘍の大きさ(T)、リンパ節転移の程度(N)、遠隔転移の有無(M)に基づいて判断されます。 ステージ 特徴 0期 がん細胞が乳管内にとどまり、周囲組織への浸潤がない(非浸潤性) Ⅰ期 腫瘍が小さく(2cm以下)、リンパ節転移がない Ⅱ期 腫瘍は2〜5cmで、転移なし。または腋窩リンパ節転移あり Ⅲ期 腫瘍が大きく(5cm超)、または多数のリンパ節転移があるが、遠隔転移はない Ⅳ期 腫瘍の大きさやリンパ節状態にかかわらず、他の臓器への遠隔転移がある (文献1) ステージは治療方針の決定や予後予測において非常に重要な要素となります。 以下の記事では、乳がんのセルフチェックを紹介しています。鏡を見て確認する方法や触って確かめる方法などを紹介しているので、参考にしてみてください。 乳がんのステージ3とは ステージ3の乳がんは、より進行した状態を表し、さらに詳細な分類として3つのサブステージに細分化されます。 それぞれの特徴は異なりますが、いずれも局所進行性であり、遠隔転移はまだ認められない段階です。 サブステージ 特徴 ⅢA期 ・腫瘍が5cm以下で、腋窩リンパ節転移の固定または内胸リンパ節転移がある ・腫瘍が5cmを超え、腋窩リンパ節または内胸リンパ節に転移がある ⅢB期 ・腫瘍が皮膚や胸壁に広がっている ・しこりのない炎症性乳がんもこの段階に含まれる ⅢC期 ・腋窩リンパ節と内胸リンパ節両方に転移がある ・鎖骨上にまで及ぶリンパ節転移がある (文献1) この段階では、手術や化学療法、放射線療法などを組み合わせた積極的な治療アプローチが必要となります。 乳がんステージ3の症状 乳がんステージ3は、胸周辺にある脇や鎖骨あたりのリンパ節への転移はあるが、臓器への遠隔転移はない状態です。 乳がんステージ3になると以下のような症状が現れます。 しこりが急に大きくなる しこりの拡大により胸の一部がくぼむ しこりが胸壁に固定されて動かしにくくなる しこりが硬く、いびつな形をしている しこりの影響で胸にしわや変色が生じる 痛みは少ないものの、しこりが周辺組織を刺激して痛みが伴う場合もある リンパ節への転移により脇の下や鎖骨周辺が腫れる しこりの大きさや形の変化、胸の外観に異常を感じたら専門機関を受診しましょう。 乳がんステージ3の生存率 乳がんの生存率はステージによって大きく異なります。 ステージ 5年相対生存率 ステージ1 95.2% ステージ2 91.0% ステージ3 77.7% ステージ4 39.2% (文献2) ステージ1〜2は予後が非常に良好で、とくに早期発見された場合は完全治癒が期待できます。 ステージ3でも適切な治療を受ければ、5年生存率は75%以上です。ステージ4では治療の焦点は延命と生活の質の向上に移行します。 乳がんステージ3の治療法 ステージ3の乳がんは局所進行性であり、治療には複合的なアプローチが必要です。 このステージでは、腫瘍が大きく、リンパ節転移が広範囲に及んでいることが多いため、手術だけでなく、化学療法、放射線療法、および薬物療法を組み合わせた集学的治療が標準となります。 早期の段階よりも積極的な治療計画が必要ですが、適切な治療により良好な治療成績が期待できます。 術前化学療法(ネオアジュバント化学療法) 術前化学療法は、手術前に行う薬物療法で、腫瘍を縮小させることを目的としています。 ステージ3の乳がんでは、腫瘍が大きく手術が困難なケースが多いため、術前化学療法によって腫瘍を小さくすることで、手術の実施可能性や乳房温存の可能性が高まるケースが多いです。 術前化学療法への反応性を評価することで、治療効果を早期に判断でき、必要に応じて治療法を調整できるメリットもあります。 とくに「病理学的完全奏効(pCR)」が得られた場合は、予後が良好とされています。 薬物療法 ステージ3の乳がんの薬物療法は、がんの生物学的特性に基づいて選択されます。 療法の種類 特徴 化学療法 アドリアマイシン系薬剤とタキサン系薬剤の併用が一般的 ホルモン療法 エストロゲン受容体(ER)またはプロゲステロン受容体(PR)陽性の場合に実施 分子標的療法 HER2強陽性の場合はトラスツズマブなどの分子標的薬を使用 これらの治療法は、肉眼では確認できない微小ながん細胞を排除し、再発を防止するために極めて重要です。 治療全体の期間は、患者さんの状態や治療に対する反応に応じて調整されます。 手術 ステージ3の乳がんの手術は、腫瘍の状態により以下のいずれかが選択されます。 手術の種類 特徴 乳房全切除術 腫瘍と共に乳房全体を摘出する方法で、進行した乳がんでは最も一般的 乳房部分切除術 腫瘍の一部を摘出する方法で、術前化学療法で腫瘍が十分縮小した場合に検討される また、リンパ節転移の評価のため、手術中のセンチネルリンパ節生検などで腋窩リンパ節にがんが転移していた場合、腋窩リンパ節郭清が行われます。 放射線治療 手術後の放射線治療は、ステージ3の乳がんではほぼ必須の治療です。標準では以下の部位に照射されます。 胸壁全体(手術した胸の範囲) 鎖骨上窩(首の付け根で鎖骨の上の部分) しこりが手術で取り切れていない可能性がある際は、しこりのあった周囲に追加照射します。症状によっては、内胸リンパ節にも照射する場合があります。 放射線治療は通常1日1回、週5回4〜6週間です。近年では、より精密な照射技術により、心臓や肺などの正常組織への影響を最小限に抑えられます。(文献3) 乳がんステージ3の再発率 乳がんステージ3の再発率は、およそ30〜50%だと言われています。乳がんは10年後に再発するケースもあるため、完治と判断されるまでに時間がかかります。 以下は、乳がんにおける再発の種類です。 局所領域再発:手術した側の乳房や周囲の皮膚、リンパ節に発生する 遠隔再発:臓器や骨など乳房から離れた別の部位に発生する 再発の種類や状態に応じて、がんの摘出手術や薬物療法を進めていきます。 当院「リペアセルクリニック」では、免疫力を高めることでがんの予防・再発予防を目的とした免疫細胞療法を提供しています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて、無料相談を実施していますので、気になる方はお気軽にご連絡ください。 ステージ3の乳がんに対する理解を深めて適切な治療を選択しよう ステージ3の乳がんは、進行度が高い段階ではありますが、適切な治療によって治る可能性があります。 少しでも進行を遅らせるためには、早期発見と早期治療が欠かせません。 日頃から胸の状態をチェックしたり、定期検診を受けたりして胸の異変にすぐ気づける環境を作りましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、免疫力を高めることでがんの予防・再発予防を目的とした免疫細胞療法を提供しています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて、無料相談を実施していますので、気になる方はお気軽にご連絡ください。 ステージ3の乳がんに関するよくある質問 ステージ3の乳がんは完治しますか? 適切な集学的治療(手術、化学療法、放射線治療の組み合わせ)により、ステージ3の乳がんも治癒が期待できます。 ただし、乳がんは再発しやすいがんです。ステージ3における再発率は、30%ほどと言われています。 10年後に再発するケースもあるため、完治と判断されるまでに時間がかかります。 ステージ3の乳がんの10年生存率を教えてください 国立研究開発法人国立がん研究センターが監修しているがん情報サービスのデータを参考に、乳がんステージ3の10年生存率を以下の表にまとめました。 ステージ 10年相対生存率 ステージ1 88.1% ステージ2 80.5% ステージ3 60.1% ステージ4 16.1% ステージ4の10年生存率は、他のステージと比べて大幅に低いです。早期発見・早期治療の重要性がデータからも明らかと言えます。 ステージ3の乳がんの治療期間はどのくらいかかりますか? ステージ3の乳がんの治療は複数の段階に分かれており、全体としては1年前後の期間を要することが一般的です。 個々の状況により異なりますが、主な流れと期間の目安は以下の通りです。 治療方法 期間の目安 診断確定期間 針生検から病理検査、CT・MRIなどの画像診断まで、2週間程度 術前化学療法 ステージ3では腫瘍縮小のため、通常4~6カ月 手術入院 術式により異なるが、1~2週間 放射線治療 1日1回、週5日のペースで4~6週間 術後薬物療法 ホルモン療法や分子標的療法などは、状況により5~10年継続 (文献4)(文献5) ステージ3の乳がんに治療費の補助はありますか? ステージ3の乳がんの治療には高額な医療費がかかりますが、以下のような公的支援制度があります。 高額療養費制度 ・公的医療保険に基づき、1か月の医療費(保険適用分)が一定額(自己負担限度額)を超えた場合、その超過分が払い戻される ・自己負担限度額は年齢や所得によって異なり、事前に「限度額適用認定証」を取得すると窓口での支払いが軽減される 医療費控除 ・年間で支払った医療費が一定額を超えた場合、所得税の還付や住民税の軽減を受けられる ・治療費だけでなく、通院交通費なども対象になる場合がある 傷病手当金 ・健康保険に加入している会社員や公務員が対象で、治療のために仕事を休む場合、給与の一部が補填される 自治体独自の助成制度 ・各自治体が実施する医療費助成制度や生活福祉資金貸付制度などがある がん相談支援センター ・全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、治療費や補助制度について無料で相談できる (文献6) 制度を活用すると、乳がん治療による経済的負担を大幅に軽減できます。 具体的な手続きについては、加入している保険窓口や自治体に相談することをおすすめします。 ステージ3の乳がんは仕事を続けることはできますか? ステージ3の乳がんでも、多くの患者さんが治療と仕事を両立させています。 治療内容や個人の体調、職種によって調整は必要ですが、工夫次第で継続可能です。 職場との早期相談が重要で、時短勤務やフレックスタイム、テレワークなどの柔軟な勤務形態を活用すると良いでしょう。 通院スケジュールに合わせた勤務調整も効果的です。治療中は副作用による体調変化があるため、無理をせず体調に応じて働くことが大切です。 必要に応じて産業医や医療機関のソーシャルワーカーに相談するなど、サポートを受けながら社会とのつながりを維持していくと、精神面でも安定するでしょう。 参考文献 (文献1) 中外製薬乳がんのステージ分類って?」おしえて乳がんのコト|中外製薬 (文献2) がん登録センター 「院内がん登録 2015年5年生存率集計 」2021年|国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 (文献3) 「乳がん 治療」がん情報サービス|国立研究開発法人国立がん研究センター (文献4) 「治療にかかる期間」|横浜市立みなと赤十字病院 ブレストセンター (文献5) 「Q32 ホルモン療法(内分泌療法)は,どのくらいの期間続けたらよいのでしょうか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版|一般社団法人日本乳癌学会 (文献6) 「Q13 乳がん治療に際して受けられる経済面や生活面での支援制度はありますか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版|一般社団法人日本乳癌学会
2025.04.30 -
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コロコロした便が続いていて「これって大腸がんの兆候?」と心配していませんか。 忙しい日常では病院に行く時間を確保しづらく、体調の悩みを後回しにしがちです。しかし、この症状が長引く背後には、なんらかの異常が隠れているかもしれません。 そこで本記事では、「もしかして大腸がん?」と心配を抱える方に向け、コロコロ便の原因から大腸がんの初期症状、そして検査や予防法まで網羅的に解説します。 前もって正しい知識を持つことで、必要以上に怖がらずに済むこともあれば「早めに検査しておこう」と行動を促すきっかけになるかもしれません。 ぜひ最後まで読み進めてください。 コロコロ便とは?どのような原因で起きるのか コロコロ便とは、小さな硬い塊状の便(ウサギの糞のような形状)を指します。腸内で便の水分が過剰に吸収されると硬く細切れになり、コロコロ便が生じます。 水分摂取不足や食物繊維不足、運動不足などで腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下し便が長く留まると、必要以上に水分が吸収されて便が硬くなるため、生活習慣の乱れがコロコロ便の主な原因になります。 一方で、過度な緊張やストレスによる自律神経の乱れも腸の働きを弱め、便を硬くする要因となり得ます。(文献1)コロコロ便自体は便秘の一症状としてよくみられ、必ずしも大腸がんを意味するものではありません。 ただし、場合によっては過敏性腸症候群や大腸がんなどの疾患が背景にあることも報告されています。 大腸がんは早期にはほとんど自覚症状がありませんが、進行すると下痢や便秘を繰り返したり便が細くなる、血便が出現するなどなんらかの症状が現れることがあります。 しかし初期の大腸がんは無症状のことが多いため、コロコロ便だけで直ちに大腸がんを疑うことはできません。 他に血液が混じる、体重減少や腹痛を伴うなど明らかな異常がない限り、コロコロ便の多くは生活習慣の見直しで改善可能ですが、コロコロ便が長期間続く場合や便に血が付着する場合は念のため、医療機関で検査を受けることをおすすめします。(文献2) コロコロ便の原因と大腸がんの関係性 大腸がんに特徴的な症状として、便に血が混じる(血便)ことや便の表面に血が付着することがよく挙げられます。また腫瘍からの慢性的な出血により貧血(めまいなど)が起こることもあります。 このほか排便習慣の変化(下痢と便秘を繰り返す)、便が細くなる(鉛筆のような細い便)、残便感(出し切れていない感じ)、腹部の張りや痛みなどさまざまな症状が現れます。 がんが進行して腸管が狭くなると便が出にくくなり腹痛や嘔吐を伴うこともあります。 特に血便や便が細くなる症状は比較的頻繁にみられますが、これらは痔などの良性疾患でも起こり得るため自己判断は禁物です。少しでも気になる症状があれば早めに消化器科などを受診し、原因を調べてもらうことが大切です。(文献3) 大腸がんの症状と便の関係について 実は、大腸がんは初期段階ではほとんど症状がありません。そのため、コロコロ便だけでなく、便秘や便の形や色に違和感を感じたり、血が混じっていたりなどこうした変化が見られても、よほど意識していないと単なる食生活の乱れとして見過ごしがちです。 しかし、がんが進行して腸管が狭くなるほど、便は通りにくくなり、細くなったり詰まりやすくなったりします。(文献3) 便秘がちになったかと思えば急に下痢をするなど、排便リズムが大きく崩れる場合は要注意です。 加えて、腫瘍から出血している場合は便の表面に赤い線が入ったり、トイレの水が血で赤く染まることもありますが、切れ痔などが原因で血便が出ることもあるため、自己判断だけでは確定できません。 便が固くコロコロとしていると、肛門に負担がかかって痔を引き起こすケースもありますので、「血が出た=即がん」とは限りません。 大事なのは、普段との違いに気づいたときに早めに専門家へ相談することです。とくに、大腸がんは進行すると貧血や体重減少、腹痛、嘔吐などの症状を伴う可能性もあり、こうした変化が複数重なっている場合は放置せず検査を受けることをおすすめします。 大腸がんの検査方法・種類について まず、大腸がんが疑われる際に一般的なのは「便潜血検査」と呼ばれる検査方法です。市町村などが実施する検診で使われることが多く、便の中に血液が混じっていないかを調べるシンプルな仕組みになっています。結果が陽性でも、必ずしもがんと確定するわけではありませんが、次のステップである「精密検査」のきっかけとしては非常に重要です。 精密検査としては、「大腸カメラ(内視鏡検査)」が代表的でしょう。肛門からカメラを挿入して腸内を直接観察できるため、がんだけでなくポリープや炎症なども確認できます。 また、必要に応じて組織を採取して詳しく調べられます。ほかにはCT検査やX線検査、MRIなどで腸の状態や周辺臓器への転移をチェックすることもあります。 検診の時点で「要精密検査」となったのに、忙しさや怖さを理由に検査を先延ばしにすると、もしもがんが進行していた場合、取り返しのつかない事態になる可能性があります。 早期がんなら治療の選択肢が広いため、コロコロ便が気になる方や検診で引っかかった方は、余裕のあるうちに詳しい検査を受けてみてください。 検診の方法 自覚症状の少ない早期の大腸がんを発見するには、大腸がん検診を定期的に受けることが有効です。 日本では一般的に便潜血検査が一次検診として行われていますが、便潜血検査とは2日分の便を採取して肉眼では見えない微量の出血(ヘモグロビン)を検出する検査で、体への負担が少ない方法です。 大腸がん検診の対象年齢は40歳以上で、年に1回の検査が推奨されています。市区町村が実施する住民検診では数百~千円程度の自己負担で受けられる場合が多く、自治体によっては無料で検査できるところもあります。(文献4) 会社の健診や人間ドックに大腸がん検診が組み込まれている場合もありますので、まずはお住まいの地域の検診制度を確認し、適切な頻度で便潜血検査を受けましょう。 便潜血検査の結果陽性(血液反応あり)となった場合は、精密検査(二次検診)として大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けなければなりません。(文献4) 検査で陽性となっても、まだ大腸がんと確定したわけではなく実際には痔など良性の要因やポリープによる偽陽性も多く、要精密検査となった人から大腸がんが見つかる割合は1%未満とも言われます。(文献5) しかし、大腸がんは便潜血検査で陽性が一度でも出たら見逃さず精密検査を受けることが重要です。「痔による出血だろう」と自己判断して二次検査を受けないのは危険ですので、必ず医師の指示に従い精密検査を受けてください。 精密検査の方法 大腸がんが疑われる場合に行われる代表的な精密検査は、全大腸内視鏡検査(コロノスコピー)です。(文献6) 大腸内視鏡検査では、事前に下剤で腸内を空っぽにした上で内視鏡(カメラ)を肛門から挿入し、直腸から盲腸まで大腸全域の粘膜を直接観察します。 ポリープや腫瘤が見つかれば、一部または全部をその場で切除・採取して病理検査(顕微鏡による組織検査)が可能です。 早期がんで粘膜内に留まるものなら内視鏡で完全切除できるため、診断と同時に治療まで行えるケースもあります。このように大腸内視鏡検査は診断から小さな病変の治療まで対応できる第一選択の精密検査です。検査自体は通常日帰りで実施され、鎮静剤を使用すると苦痛も軽減できますのでご安心ください。 大腸内視鏡検査以外の精密検査としては、大腸X線検査(注腸造影)や大腸CT検査(CTコロノグラフィ)などがあります。大腸X線検査はバリウム液と空気を肛門から注入してレントゲン撮影する方法で、内視鏡が挿入困難な場合に併用されることがあります。 一方、大腸CT検査は腸内を炭酸ガスで膨らませてCT撮影することで、仮想内視鏡のように大腸の内部を立体的に評価する検査です。CT検査は体への負担が少なく内視鏡に抵抗がある方には有用ですが、画像で異常が見つかった場合は組織検査のため結局内視鏡が必要になる点に留意が必要です。(文献7) いずれの方法も長所短所がありますが、まずは医師と相談の上で適切な検査を受けることが大切です。 \まずは当院にお問い合わせください/ コロコロ便から卒業!大腸がんを防ぐ生活習慣改善と予防法 検査を受けるとはいえ、日常の中で腸への負担を減らしていかないと、コロコロ便が改善しにくいだけでなく、大腸がんのリスクにも対応しづらくなります。忙しい方でも無理なく取り組める生活習慣の見直しポイントを、下記の見出しで具体例とともに紹介します。少しずつ行動を変え、コロコロ便から卒業しましょう。 食事改善 コロコロ便を解消するには、食生活の見直しが重要です。便の材料となる食事の量が少なすぎると便のかさが減り排出が滞るため、朝食を含め1日3食きちんと食べるよう心がけましょう。(文献8)ダイエットなどで極端に食事量を減らすと便の量も不足し、十分な排便ができなくなりがちです。 また、食物繊維や水分を食事からしっかり摂取も欠かせません。食物繊維には大腸で便に水分を与えて柔らかくする水溶性食物繊維と、便の量を増やして腸を刺激する不溶性食物繊維があります。 一般に現代人は食物繊維が不足しがちと言われており、便秘が続く人は意識的に野菜や果物、海藻類などに多く含まれる水溶性食物繊維を摂ると良いでしょう。 不溶性食物繊維も大切ですが、摂りすぎると便が硬くなる場合があるためバランスが重要です。食物繊維のバランスは水溶性:不溶性を1:2程度の割合が理想とされています。 腸内環境を整える食品も積極的に利用しましょう。たとえばヨーグルトなどの発酵食品に含まれるビフィズス菌や乳酸菌は腸内の善玉菌を増やしお通じを改善する働きがあります。 さらにオリゴ糖は大腸で善玉菌のエサとなり腸内環境の改善に役立つため、乳酸菌飲料やオリゴ糖を含む食品もコロコロ便の解消に有効です。(文献8) 毎日の食事でこれら善玉菌やオリゴ糖を上手に取り入れ、腸内フローラのバランス改善を図りましょう。 こまめな水分摂取 硬いコロコロ便が続く人は、日々の水分補給の量を確認してください。体内の水分が不足すると便から水分が奪われてしまい、うさぎの糞のようなコロコロ便になりやすくなります。 厚生労働省の資料によれば1日に必要な飲み水の量は約1.2リットルとされています。(文献9) 喉が渇いたと感じる前に、意識してこまめに水やお茶を飲む習慣をつけることが大切です。 特に起床時にコップ一杯の水を飲むことは胃を刺激して胃・大腸反射(胃に食べ物や水分が入ると大腸の蠕動(ぜんどう)が活発になる反応)を促し、朝のスムーズな排便につながります。 そのほか入浴前後や就寝前後などは脱水になりやすいタイミングですので、水分補給を忘れないようにしましょう。 日中も少量ずつ水分を摂り、常に体内の水分バランスを保つことで便を適度に柔らかく保てるようになります。 適度な運動 適度な運動習慣を身につけることもコロコロ便の改善に有効です。運動によって体を動かすと腸が刺激され、蠕動(ぜんどう)運動が活発になって排便を促します。(文献9) 逆に運動不足だと腸の動きが鈍くなり便が硬くなりがちです。特に腹筋が弱いと排便時に十分な腹圧がかけられず、便を押し出す力が不足して便秘につながってしまいます。 ウォーキングや軽い体操など無理のない範囲で構いませんので、日常的に体を動かす時間を作りましょう。 定期的な運動は腸の働きを整えるだけでなく、自律神経のバランス改善やストレス解消にも役立つため一石二鳥です。適度な運動習慣を続けることで硬い便を解消しましょう。 ストレスケア ストレスや緊張が続くことも、実はコロコロ便の一因になります。人間は強いストレスや疲労を感じると交感神経が優位になり、大腸の動きが抑制されて便が腸内に滞留しやすくなります。(文献10) 精神的なストレスによって自律神経のバランスが乱れると腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下し、便の水分が過剰に吸収されてしまうためです。 ストレスが原因で便秘傾向になる人も多く、男性に多い下痢型の過敏性腸症候群でもストレスで症状が悪化すると言われています。 心身のリラックスを心がけてストレスを溜め込まないことも固い便を防ぐ方法の一つです。十分な睡眠をとり規則正しい生活リズムを維持する、趣味や入浴などで意識的にリラクゼーションの時間を作るなど、副交感神経が働くリラックス状態を増やすようにしましょう。 日頃から適度にストレス発散し、自律神経のバランスを整えることがコロコロ便解消につながります。 コロコロ便と大腸がんの関係性を理解し健康を維持しよう コロコロ便は主に生活習慣の乱れから生じますが、大腸がんの初期サインとしても見逃せません。とくに便の細さや形状の変化が顕著で、下痢と便秘を繰り返す場合は注意が必要です。 まずは水分補給、食物繊維の摂取、ストレスケアなど生活改善を試みましょう。 生活習慣の改善で便通が正常化した場合、機能性の便秘や過敏性腸症候群などが原因だった可能性が高いといえます。 ただし、大腸がんの初期は症状が軽微なこともあるため、40歳以上の方は症状の有無にかかわらず定期的な検診を受けることをおすすめします。 大腸がんは早期に見つけられれば治療成功率が高いがんとも言われています。検診や精密検査の手間を感じるかもしれませんが、自分や家族の健康を守るためには投資する価値があるはずです。日々忙しく過ごしている方ほど、後回しにせずアクションを起こしてみてください。 予防や早期発見によって、心の負担もぐっと軽減し、コロコロ便の悩みから卒業できるきっかけをつかめることでしょう。 参考文献 (文献1)医療法人良耕会大阪天王寺胃と大腸消化器内視鏡クリニック「便がコロコロ硬い原因と改善方法について医師が詳しく解説」大阪天王寺胃と大腸消化器内視鏡クリニック,2024年06月01日 URL:https://www.tennoji-endoscope.com/hard-stool/ (最終アクセス:2025年04月17日) (文献2)国立がん研究センター中央病院「大腸がんの症状について」国立がん研究センター中央病院, 公開日不明 URL:https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clnic/colorectal_surgery/150/index.html (最終アクセス:2025年04月17日) (文献3)国立研究開発法人 国立がん研究センターがん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」国立がん研究センター がん情報サービス, 2025https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/150/index.html03月24日 URL:https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/about.html(最終アクセス:2025年04月17日) (文献4)公益財団法人日本対がん協会「大腸がん検診について」日本対がん協会, 公開日不明 URL:https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_checkup/%E5%90%84%E7%A8%AE%E3%81%AE%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6 (最終アクセス:2025年04月17日) (文献5)公益財団法人 東京都予防医学協会「大腸がん検診」東京都予防医学協会, 公開日不明 URL:https://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/gan/daichougan.html (最終アクセス:2025年04月17日) (文献6)国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」国立がん研究センター がん情報サービス, 2024年09月20日 URL:https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html (最終アクセス:2025年04月17日) (文献7)国立がん研究センター中央病院「大腸がん検査について」国立がん研究センター中央病院, 公開日不明 URL:https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/170/index.html (最終アクセス:2025年04月17日) (文献8)ロート製薬株式会社「コロコロ便が続く場合はどうする?原因と対策で気になる症状を改善しよう」ロート製薬, 公開日不明 URL:https://jp.rohto.com/learn-more/gastrointestinal/benpi/korokoroben01/(最終アクセス:2025年04月17日) (文献9)森永乳業株式会社「便が硬い.......コロコロうんちになる原因と対処法」毎朝爽快(森永乳業), 2024年06月01日 URL:https://www.morinagamilk.co.jp/products/brand/maiasa_soukai/column/hard/ (最終アクセス:2025年04月17日) (文献10)健栄製薬株式会社「コロコロ便しか出ない便秘の原因は?症状が続くリスクと解消方法を紹介」健栄製薬, 公開日不明 URL:https://www.kenei-pharm.com/ebenpi/column/column_115/ (最終アクセス:2025年04月17日)
2025.04.30 -
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大腸がんは、日本で年間約15万人が発症している、部位別で最も多い「がん」です。(文献1) 初期症状がわかりにくく、「痔かも」「体調のせいかな」と見過ごされがちですが、血便や便通の変化、腹部の張りなど、日常のわずかな異変が大腸がんのサインであるケースも少なくありません。 本記事では、大腸がんを早期に見つけるための症状のヒントや、今からできる予防法、検査や治療をまとめました。早期発見のきっかけとなる情報を求めている方は、ぜひ参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、がん予防を目的とした再生医療の「免疫細胞療法」を行っております。 公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しておりますので、ご活用ください。 大腸がんの症状チェックリスト 大腸がんの主な症状を表にまとめました。 ひとつでも当てはまる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 症状 チェックポイント 血便・下血 ・便に赤い血が付着する、または黒色の便が出る ・便に繰り返し血が混ざる 便通の異常 ・便秘と下痢を繰り返す ・便が細くなる ・排便後に残便感が続く お腹の張り・痛み ・ガスが溜まって腹部が張る ・鈍い痛みが続く、腹部にしこりがある 体重減少・貧血 ・食事量に変化がないのに体重が減る ・めまい・疲れやすい・動悸など貧血の症状が出る おならの回数・においの変化 ・おならが以前より増える ・においが強くなる 以下では、それぞれの症状について、さらに詳しく解説します。 血便・下血 大腸がんを患うと、腸壁に腫瘍ができて微量の出血を起こす場合があり、便に血が混ざる「血便」や排便時の「下血」が現れるのが特徴です。鮮やかな赤色の場合もあれば、出血箇所によっては便の色が黒ずんだり、茶褐色になったりもします。 便に目に見える血が混ざっているのを確認したら、痔などと思い込まず、速やかに専門医を受診しましょう。 便通の異常 便通の頻度や形状、残便感などの変化も大腸がんの重要なサインです。たとえば、便が極端に細くなる、下痢と便秘を繰り返す、排便してもすっきりしない感覚(残便感)などが挙げられます。 こうした便の変化が数日以上続く場合は、生活習慣による一時的な影響と片付けず、大腸がんの検査を受けましょう。 お腹の張り・痛み お腹の膨張感(腹部膨満・張り)や鈍い痛み、しこりなどの自覚は、進行した大腸がんによる腸の通過障害や腫瘍圧迫が原因のケースがあります。 大腸がんが大きくなると腸の内側(内腔)が狭まってガスや便が詰まりやすくなり、腹痛や張りを感じる場合があるのです。 症状をはっきりと確認できる段階になると、がんが進行している可能性もあるため、違和感を感じたら放置せずに早期の受診を検討してください。 体重減少・貧血 意図しない体重の減少や貧血は、大腸がんの初期症状の可能性があります。 微量の出血が長期にわたって続いたり、体重が減少したり、疲れやすさ・息切れなどの症状を伴う貧血になったりする場合は注意が必要です。原因が明らかではない体重減少や慢性的なだるさがあれば、医師に相談しましょう。 大腸がんの初期症状を早期発見するポイントについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。 おならの回数・においの変化 おならの回数やにおいに変化があれば、腸内環境に異変が起きている可能性があります。腫瘍が大きくなると腸の内腔が狭まり、便やガスの通過が妨げられて腸内にガスが溜まりやすくなるのです。 その結果、おならの回数が増加したり、普段より強いにおいが出たりする場合があります。 食生活の変化やストレス、風邪などによる一時的な腸内環境の乱れでもおならの変化は起こりますが、「最近明らかにおならの回数やにおいが変わった」と感じたら、注意深く観察しましょう。 必ずしも典型的な大腸がんの症状ではないものの、排便の状態やお腹の調子とあわせてチェックし、少しでも不安があれば専門医に相談してください。 大腸がんの初期症状とおならの変化については、以下の記事でも詳しく解説しています。 大腸がんのリスクを高める生活習慣チェック 体質や遺伝的な要因も影響しますが、むしろ食事・運動といった生活習慣(環境因子)の方が大腸がんの発生に大きく関わっていると考えられています。(文献2) ここでは、大腸がんを防ぐために意識したい生活習慣の主なポイントを見ていきましょう。 食事のバランスが偏っている 食生活の偏りは、大腸がんのリスク要因のひとつです。 とくに、「欧米化」と呼ばれる肉類・揚げ物中心の高脂肪食、脂肪分や赤肉の多い食事がリスクを高めます。(文献2) 食物繊維は腸の働きを整え、発がん物質を捉えて排出する作用が期待されるので、野菜・果物・海藻類など、食物繊維を豊富に含む食材を意識的に摂りましょう。 運動する習慣がない 日常的に体を動かさない習慣も、大腸がんのリスクを高めます。 運動不足になると腸の動き(ぜんどう運動)が鈍り、発がん性物質が大腸の粘膜に長く留まる可能性があるのです。(文献2) ウォーキング・軽いジョギング・サイクリングなど、身体状態に合わせて継続できる運動を取り入れましょう。たとえば、通勤で一駅歩く、階段を使うなど、日常生活の中で体を動かす工夫も効果的です。 定期的な運動習慣は腸の動きを促し、便通も整いやすくなります。 飲酒・喫煙している 喫煙や過度の飲酒は、大腸がんのリスクを高める要因のひとつです。 タバコを吸う人は、非喫煙者と比べて大腸ポリープや大腸がんの発生が高いことが確認されています。(文献6)また、アルコールの大量摂取は大腸の粘膜を傷つけ、がんのリスクを促進します。(文献3) 大腸がん予防のためには、なるべくお酒を控えるのが理想です。難しい場合は、「休肝日を設ける」「一度に飲む量を減らす」など、できる範囲でコントロールしていきましょう。 ストレスを発散できていない 慢性的なストレスや睡眠不足が大腸がんの直接的な原因とはいえませんが、免疫やホルモンバランス、自律神経を通じて間接的にがんのリスクを高める可能性があります。 過剰なストレスは生活習慣の乱れを促し、結果的にがん発症につながる恐れがあるのです。 忙しい中でも、軽い運動や趣味の時間を確保し、自分なりのリフレッシュ方法を見つけて、心身をリラックスさせましょう。 ストレスが大腸がんに関与するのかについては、以下の記事でも解説しています。 睡眠不足になりがち 睡眠時間が不足しがちな状態が続くと、体の修復機能が追いつかず、腸の調子も乱れやすくなります。 理想的な睡眠時間は個人差がありますが、日中に疲労感や眠気を感じない程度の睡眠を最低限確保しましょう。 働き盛りの30〜50代は休息を後回しにしがちですから、自分の体をいたわるという視点が大切です。ストレス解消と十分な睡眠を両立させ、がんに負けない健康的な体づくりを心がけましょう。 肉類をよく食べる 赤肉(牛・豚など)の摂取量が多いと、男女ともに大腸がんのリスクが上昇することが示されています。 日本人を対象とした研究では、赤肉の摂取量が多いグループで結腸がんリスクが上昇したことが明らかになりました。(文献4) 女性では赤肉の摂取量が多いグループ、男性では肉類全体の摂取量が多いグループで、リスク上昇が認められています。とはいえ、肉をまったく摂らない食生活は、栄養バランスの観点からおすすめできません。 あくまで肉類の過剰な摂取を避け、野菜・果物・大豆など植物性たんぱく質もあわせてバランス良く摂取するようにしましょう。 身長が高い 身長が高い人は、低身長の人と比較して大腸がん・結腸がんのリスクがやや高いとするデータがあります。 身長が最も高い群(男性170 cm以上、女性157 cm以上)は、最も低い群(男性160 cm未満、女性148 cm未満)に比べて、男性で全大腸がん1.23倍、女性で1.21倍というリスク上昇が報告されているのです。(文献5) 身長そのものは変えられませんが、身長が高めな方はリスクが多少高めという認識を持ったうえで、定期検診や生活習慣の見直しに一層の注意を払いましょう。 大腸がんの初期症状は気づきにくいため定期健診が重要 大腸がんは、初期段階で自覚症状がほとんど出ずに進行するため、症状の有無にかかわらず定期的な検診が極めて重要です(文献2)。 日本では、40歳以上の男女に対して年1回の便潜血検査が推奨されており、多くの自治体や職場健診で検査を受けられます。 大腸がんの初期は、血便・便通異常・腹部の違和感などが現れにくく、症状が出た時点ではすでに進行しているケースも少なくありません。 また、家族に大腸がんの既往がある方、若年で発症した近親者がいる方は、遺伝性腫瘍などによって発症リスクが高まります。 大腸がんは早期発見して迅速に対処することが重要なので、定期健診を欠かさないようにしましょう。また、検診で異常がなくても安心とは言い切れません。 検診後にがんが発生・進行する例もあるため、血便・便通異常・便が細くなるなどの体の変化を感じたら、次回の検診を待たずに受診しましょう。 大腸がんの検査と治療の進め方 便に血が付着した、もしくは健診で要精密検査となったといった場合には、速やかな対処が不可欠です。 ここでは、大腸がんの代表的な検査の流れと、早期がん・進行がんそれぞれの治療の特徴を解説します。 便潜血検査の流れ 便潜血検査は、大腸がん検診の第一段階として非常に有用です。肉眼で確認できない、便中の微量な出血を化学的に検出します。 検査の手順は以下の通りです。 1.市区町村の検診案内や職場健診で配布されるキットを受け取る 2.採便は別々の日に2回行う 3.2日分採取し容器は健診機関などへ提出 4.結果を待つ 陽性は必ずしも大腸がんを意味しませんが、ポリープや痔などなんらかの出血源がある可能性を示しています。 陽性となった場合は放置せず、速やかに大腸内視鏡検査などの精密検査を受けることが大切です。陰性は、便に血液反応がなかったことを示していますが、がんを完全に否定するものではありません。引き続き、体調や便の状態に留意していきましょう。 内視鏡が難しい場合は、注腸X線やCTコロノグラフィーといった代替検査も医療機関によっては選択できます。 大腸内視鏡検査の流れ 大腸内視鏡検査は、便潜血陽性や大腸がんが疑われる症状がある場合に実施する精密検査です。肛門から細い内視鏡を挿入し、大腸内部を直接観察します。 一般的な流れは、以下の通りです。 1.検査前日は消化の良い食事に切り替える 2.当日朝は下剤と水分で腸内を洗浄する 3.看護師の指示に従って検査室へ 4.横向きになり医師が内視鏡を挿入 5.医師が直腸から盲腸まで観察 検査中は、空気や二酸化炭素で腸を膨らませるため、一時的にお腹が張る場合があります。 不安な方は、鎮静剤を使用して半睡眠状態で受けることも可能です。 検査中に炎症やポリープ、がんが見つかれば、その場で組織を採取したり、小さなポリープを切除したりもできます。 粘膜表面にとどまる早期がんなら、内視鏡切除だけで完全に取り切れる可能性もあります。(文献1) 所要時間は、通常20〜30分程度です。鎮静剤を使用する場合は、回復後に帰宅できます。検査後のお腹の張りは、ガスが出れば解消するので安心してください。 結果は1週間程度で判明し、医師から説明を受けて検査終了です。 早期発見の治療法と進行がんの場合 大腸がんの治療は、「ステージ(進行度)」に応じて大きく異なり、早期発見であれば負担が少ない治療で済む可能性があります。 ステージ0〜I期の早期がんでは、腫瘍が腸壁の内側(粘膜内)にとどまっているため、内視鏡切除や腹腔鏡(小さな切開による手術)などを用いた患部のみの切除が中心です。再発リスクが低く、入院期間も短くなります。 一方で、ステージII〜III期では腸壁を越えたり、リンパ節転移を伴ったりするため、根治手術で腸と周囲リンパ節を広範に切除した上で、再発予防目的の抗がん剤治療が数か月行われます。 さらに、ステージIV期では肝臓や肺などへの転移を伴う場合が多く、完治よりもがんの進行を抑え、生活の質(QOL)を保つことを目的とした治療が中心です。抗がん剤・分子標的薬・放射線治療・症状緩和手術などが組み合わされます。 また、がん治療においては、年齢・体力・希望を踏まえた個別の治療計画が不可欠です。(文献2) 早期に発見できれば、便潜血検査・内視鏡検査を活用した負担の少ない治療で済む場合もあるため、定期的な検診が欠かせません。 がん予防を目的とした免疫細胞療法について がん予防を目的とした免疫細胞療法とは、免疫力を高め、がんをはじめとした病気の発症リスクを下げることを目指す再生医療の一種です。 免疫とは、体内に侵入するウイルスや細菌、あるいは体内で異常化した細胞を排除する自己防衛機構であり、働きが正常であることで健康が保たれています。 しかし、ストレスや睡眠不足、偏った食事、運動不足、喫煙や過度の飲酒といった生活習慣の乱れが続くと、免疫力は徐々に低下します。 その結果、感染症にかかりやすくなるだけでなく、がん細胞を監視・排除する力も衰え、がんのリスクが高まると考えられているのです。 免疫細胞療法では、患者様自身の免疫細胞を体外に取り出して活性化・増殖させた上で体内に戻し、全身の免疫力底上げを目指します。 また、がん細胞の発生や増殖を抑えるだけでなく、健康維持や感染症予防などに寄与する可能性もあるとされています。 まとめ|大腸がんの症状チェックリストが当てはまるなら専門家に相談しよう 大腸がんは日本で患者数の多い病気ですが、早期に発見できれば内視鏡治療など負担の少ない治療で済む可能性も高まります。 「血便などの症状がないから自分は大丈夫」と油断せず、定期検診を受けて早期発見に努めることが何より重要です。 今回ご紹介した症状チェックリストに該当するものがあれば、放置せずに消化器の専門医に相談しましょう。 とくに、便に血が混じる、便秘と下痢を繰り返すなどの異変は、大腸がんに限らず体から異常を知らせる大切なサインです。「恥ずかしい」「時間がない」などと躊躇せず、早めに受診してください。 当院「リペアセルクリニック」では、がん予防を目的とした免疫細胞療法を行っています。免疫細胞療法について詳しくは、以下のページをご覧ください。 大腸がんの症状チェックに関するよくある質問 20代・30代はどんな症状をチェックすればいい? 若年層でも、大腸がんになる可能性があります。 以下の症状がある場合は、早めに受診しましょう。 血便が出る 便が以前より細くなった 便秘と下痢を繰り返す 腹痛が断続的に続く 腹部の張りや違和感がある 痔と思っていた出血が長引く 上記の症状があっても、必ずしも大腸がんを患っているわけではありませんが、早期発見のためには見逃さず、速やかな医師への相談が大切です。 大腸がんの症状かもと、気にしすぎはよくない? 気になる点がある場合、自己判断して放置するのは危険です。 大腸がんは早期であればあるほど治療効果が高く、内視鏡で切除して完治する可能性もあります。自覚症状が少ないのが大腸がんの特徴なので、「気にしすぎかも」と思うくらいの意識でチェックしましょう。 たとえば、以下のような状況であれば、躊躇せず受診を検討してください。 血便や便の異常が1週間以上続く 排便後にすっきりしない感覚がある 慢性的な腹痛や張りがある 小さな体調の変化を軽視せず、「いつもと違う」違和感を見逃さないようにしましょう。 大腸がんに気づいたきっかけになった体験談は? 実際に大腸がんと診断された方々の多くは、以下のようなサインがきっかけで検査を受けています。 会社の定期健診で便潜血検査が陽性だった 痔と思っていた血便が1か月以上続いたため病院へ行った 便秘と下痢を繰り返す症状が続き、不安になって内視鏡検査を受けた 急に体重が減り、疲れやすくなったことで病院を受診した 腹部の張りや痛みが強くなったので検査したら、腫瘍が見つかった これらの体験からわかるのは、「なんとなくおかしい」と感じた時点で検査を受けることの重要性です。 少しでも違和感があれば放置せず、医療機関を受診しましょう。 参考文献 (文献1) 大腸がんとは|国立がん研究センター 中央病院 (文献2) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)について|国立がん研究センター がん情報サービス (文献3) 大腸がん検診の意義と目的|公益財団法人 日本対がん協会 (文献4) 赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて|国立がん研究センター (文献5) 科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究|国立がん研究センター (文献6) お酒・たばこと大腸がんの関連について|国立がん研究センター
2025.04.30 -
- 内科疾患
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大腸がんは年間約15万5千人が新たに診断される日本人に多いがんで、とくに女性のがん死亡原因第1位です。 早期発見が生存率を大きく左右しますが、初期症状はほとんどなく、進行してから気づくケースも少なくありません。 こうした中「おならの異変が大腸がんの初期症状の一つである可能性」が注目されています。おならは誰にでも起こる生理現象ですが、その回数や臭いの変化が体の不調を反映することがあります。 本記事では大腸がん初期症状とおならの関連性について、危険なおならと正常なおならの違いを含めて解説します。 また、おなら以外の大腸がん初期症状についてもわかりやすく説明し、早期発見のためのポイントを紹介します。異変に気づいた際に自己判断せず医療機関を受診する重要性についても触れますので、ぜひ最後までご覧ください。 大腸がん初期症状と「おなら」の関連性 大腸がんの初期症状としておならの状態変化が挙げられることがあります。実際、「おならの頻度が増えた」「おならの臭いが強烈になった」「おならの際に腹痛を伴う」といった変化が見られる場合には注意が必要です。 大腸がんがあると腸内の環境に変化が生じ、以下のような理由でおならに異常が現れる可能性があります。 腸内の変化 説明 腸内にガスが溜まりやすくなる 大腸内に腫瘍ができると腸の通り道が部分的に狭くなり、食べ物の消化やガスの排出がスムーズに行かなくなります。 結果として腸内にガスが溜まり、おならの回数が増える原因となります。 腸内細菌のバランス変化 腫瘍から分泌される代謝産物や腫瘍の存在そのものが腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:腸内の細菌バランス)に影響を与えることがあります。 その影響でガスの成分が変わり、おならの臭いが以前より異常に強くなることがあります。 腸の運動変化 腫瘍による刺激で腸の蠕動運動(ぜんどううんどう:腸が内容物を送り出す動き)が乱れることも指摘されています。 その結果、お腹がゴロゴロ鳴ったりガスが頻繁に発生します。とくに腹痛を伴うおならが続く場合は腸内でなんらかの異変が起きているサインかもしれません。 もっとも、おならの変化だけで大腸がんと断定はできません。おならの臭い・回数は食生活や体調によっても日常的に変動します。たとえば芋類や豆類を多く食べればおならの回数は増えますし、肉や卵を多く摂れば硫黄のような強い臭いになることもあります。 重要なのは「普段と比べて明らかに異常なおならが続くかどうか」です。次の項で危険なおならと正常なおならの違いを整理しますが、おならの異変に気づいたときは他の初期症状がないかも確認し、少しでも思い当たることがあれば早めに医療機関で相談してみましょう。 危険なおならと正常なおならの違いについて おならの種類 説明 正常なおならの範囲 健康な人でも1日に数回~十数回程度のおならは出ます。臭いも食事内容によって強くなることがありますが、一時的なものがほとんどです。 お腹が張って苦しくなるようなこともなく、ガスは自然に排出されます。 注意すべき異常なおなら 以前と比べて急におならの回数が増えたり、逆にまったくおならが出なくなったりする場合は腸内異常の兆候です。 また、臭いが異常に強烈(腐敗臭や卵が腐ったような硫黄臭)になった状態が続くのも要注意です。 さらに、おならに腹痛や腹部の張りを伴う場合も正常ではありません。これらの変化が見られるときは、単なる食生活の問題ではなく消化器の病気(大腸がんを含む)の可能性を考えて早めに受診しましょう。 普段のおならと比べて明らかにおかしいと思われるおならの特徴を押さえておきましょう。一般的なおなら(正常範囲)と、大腸がんなど病的な原因が疑われるおならとで何が違うのかを比較します。 上記のような危険なおならに該当する場合でも、それだけですぐ大腸がんと決めつけることはできません。ただし、おならの異常に加えて後述するような他の症状がみられる場合は、大腸がんの初期症状として現れている可能性があります。 おならと他の症状、両方の異変が重なったときは早期発見のチャンスでもあるため、自己判断せず医療機関で検査を受けることが大切です。 おなら以外の大腸がん初期症状 大腸がんは初期には自覚症状がほとんどありませんが、腫瘍がある程度大きくなってくると徐々に体の変化が現れ始めます。(文献2) 代表的な初期症状としては、血便、排便習慣の変化(便秘・下痢)、便が細くなる(便の狭小化)、残便感、貧血、腹痛、嘔吐などが挙げられます。 これらはいずれも大腸がん以外の病気でも起こり得る症状ですが、複数の症状が重なっている場合や、明らかにいつもと違う状態が続く場合には注意が必要です。以下にそれぞれの症状について、具体的にどのような様子か説明します。 血便 血便(けつべん)とは、便に血液が混じる症状です。大腸がんができると腫瘍表面の血管が傷つきやすくなり、便が通過する際に出血して便に血が付着することがあります。血便の特徴として、出血カ所が肛門に近いほど鮮やかな赤色になりやすい傾向があります。 直腸やS状結腸(大腸の一番下の部分)にがんがある場合は鮮血が混じりやすく、上行結腸(右側の大腸)など上流にある場合は暗めの色になることもあります。 少量の血便だと痔(じ)かな?と放置してしまう人もいますが、痔と大腸がんの見分けは自己判断ができません。とくに40代以降で血便が続く場合は痔の持病があっても油断せず、一度大腸内視鏡検査などで確認しましょう。 便秘、下痢 便秘や下痢が続く、あるいは便秘と下痢を繰り返すのも大腸がんの初期にみられることがあります。腫瘍が腸内にできると腸の動き(ぜん動運動)が乱れたり、腸管が狭くなることで便通リズムが狂いやすくなります。 その結果、頑固な便秘になったり、下痢が増えたりします。特徴的なのは、便秘と下痢を交互に繰り返すパターンです。腸に便が溜まって便秘になった後、下痢で一気に出る場合、腸内に通過障害が発生している可能性があります。 普段は便秘をしないのに急に便秘が続くようになった、下痢をする頻度が増えた、あるいは以前と比べて明らかに排便の習慣が変わった場合、大腸の異常を疑ってみましょう。 食生活の変化やストレスでも一時的に便通は変わりますが、原因に心当たりがないのに数週間以上そうした状態が続くなら念のため検査を受けることをおすすめします。 便の狭小化 便の狭小化(きょうさいか)とは、便が細くなる症状です。腸内を通る便の太さが腫瘍によって物理的に制限されるため、鉛筆のように細い便が出ることがあります。 とくに直腸やS状結腸など大腸の下部にがんがある場合、便が形作られる段階で細く絞られてしまうため、狭いリボン状の便が続くことがあります。 「最近、便が細長くなった」「いつもより便の径が明らかに細い」と感じたら注意が必要です。便の狭小化自体は他の要因でも起こりますが、従来との明らかな変化は見逃さないようにしましょう。 便秘・下痢の項目で述べた便通異常とあわせて、便の形状変化も大腸がん初期のサインの一つです。 残便感 残便感(ざんべんかん)とは、排便した後にまだ腸に便が残っているように感じる症状です。大腸がんが直腸付近にできると、腫瘍が物理的に邪魔をしたり肛門付近を刺激したりするため、トイレに行ってもまだ出し切れていない感じが続くことがあります。 残便感は便秘や過敏性腸症候群などでも起こるため、それ単体では判断が難しい症状です。しかし残便感が長く続く場合や、残便感とともに便に血が混じる・お腹が痛いといった他の症状がある場合は、大腸がんの疑いも考慮する必要があります。 一度排便してもすぐまたトイレに行きたくなる、いつもお腹に何か溜まっている感じがする、といった状態が続けば医療機関で相談しましょう。 貧血 大腸がんによる貧血(ひんけつ)は、腫瘍からの慢性的な出血が原因で起こります。便に目に見える血が出ていなくても、少しずつ出血していると体内の鉄分が失われていき、鉄欠乏性貧血になります。貧血になるとめまいや立ちくらみ、疲れやすさ、動悸、顔色が青白くなるなどの症状が現れます。 日常的に疲労感が強かったり、階段を上っただけで動悸・息切れがしたりする場合、血液検査で貧血が判明することがあります。とくに中高年で原因不明の貧血が見つかった場合、大腸を含む消化管からの出血が疑われます。 女性の場合は月経など他の要因もありますが、長引く貧血症状があるときは一度消化器の検査(便潜血検査や内視鏡検査)を受けましょう。 腹痛 腹痛(ふくつう)も大腸がんがある程度進行すると出てくることがあります。 腫瘍が大きくなり腸の中が狭くなると便の通過に支障が出るため、腸が詰まったような張った痛みや差し込むような痛みを感じますが、とくに下行結腸やS状結腸など便が固形になってから通る下部の大腸にがんがある場合、腸閉塞(ちょうへいそく:腸の詰まり)を起こしやすく、強い腹痛が起こりやすいとされています。 一方、上行結腸(右腹側)など大腸の右側にがんがある場合、内容物が液状のまま通過するため比較的痛みは出にくいとも言われます。 痛みの有無はがんの場所によって異なりますが、お腹の痛みが慢性的に続く場合や、便通と関連して腹痛が起きる場合は精密検査を受けることを検討しましょう。 嘔吐 一見関係なさそうな嘔吐(おうと)も、大腸がんの症状として起こることがあります。これは主に腸閉塞(腸がふさがった状態)に陥った場合に見られる症状です。腫瘍が腸管をふさぐほど大きくなると、食べ物や消化物が先に進めず行き場を失ってしまいます。 その結果、腸の内容物が逆流して嘔吐を引き起こすことがあります。ひどい場合には便のような臭いの嘔吐(吐物が腸の内容物)になるケースもあり、これは緊急手術が必要な状態です。大腸がんの初期段階で嘔吐まで生じることは稀ですが、腹痛や膨満感がひどく吐き気を催す場合には注意が必要です。 とくに食事とは関係なく繰り返し吐き気・嘔吐が起こる場合、消化管のどこかに閉塞が起きている可能性があります。放置すると脱水や深刻な状態に陥るため、早急に医療機関を受診してください。 以上のように、大腸がんが進行し始めるとさまざまな症状が現れます。ただし繰り返しになりますが、初期の大腸がんでは目立った症状が出ないことが多い点に注意が必要です。 「なんとなく調子が悪いけど病院に行くほどではないかな…」と思っているうちに見過ごしてしまうケースもあります。少しでもおかしいと感じる症状があれば、無理に楽観せず専門医に相談しましょう。 大腸がんを早期発見するためのポイント 大腸がんから身を守るには、早期発見・早期治療が何より重要です。早期であれば大腸がんは高い確率で完治が可能で、内視鏡による日帰り手術で治療できるケースも多くあります。 そのため、症状が出揃ってからではなく症状が軽微なうち、あるいは症状がない段階で発見が理想です。 早期発見のために心がけたいポイントとして、日頃からのセルフチェックと定期的ながん検診の受診があります。以下に具体的に解説します。 初期症状チェックリスト|該当したら医療機関へ まずは自分で気をつけたい初期症状のセルフチェックです。次のような症状に心当たりがある場合は要注意です。当てはまる項目が一つでもあれば、一度消化器科など専門医療機関で相談してみましょう。とくに複数当てはまる場合は放置しないでください。 便に血液や粘液が混じる、黒っぽい便が出る(血便・下血がある) おならの臭いが急に強くなった、おならの回数が急に増えた 便秘と下痢を繰り返すようになり、排便のリズムが乱れている 便が細くなった、最近出る便の量が減ったと感じる トイレに行ってもまだ出し切れていない感じ(残便感)がある 腹痛やお腹の張りが慢性的に続いている めまい・立ちくらみなど貧血症状が見られる 原因不明の体重減少がこの数カ月でみられる 食欲不振が継続している こうした症状は大腸がん以外でも起こり得ますが、年齢が高くなってから現れた場合や症状が長引いている場合は大腸がんの可能性も考えて早めに検査を受けることをおすすめします。様子を見ようと放置せず、まずは専門のクリニックで相談しましょう。 とくに血便は重要なサインですし、おならの異常も軽視しない方が良いポイントです。おかしいと思った時点で消化器内科を受診すれば、万が一がんであっても早期に発見できる可能性が高まります。 大腸がん検診を受ける 自覚症状の有無にかかわらず、定期的に大腸がん検診を受けることも早期発見には欠かせません。日本では現在、40歳以上の方は年に1回、大腸がん検診(便潜血検査)を受けることが推奨されています。(文献1) 便潜血検査とは便の中に血液が混じっていないか調べる検査です。検査の結果、陽性(便に血が混じっている疑い)となった場合には、精密検査として大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。大腸がん検診は自治体の健康診断などでも実施されており、症状がないうちに検診を受けましょう。 大腸がんは早期であれば症状がない場合が多く、検診によって早期に発見し治療すると大腸がんで亡くなるリスクを大きく下げられます。(文献1) 実際、大腸がんは早期に発見できれば高い確率で治癒可能ながんです。 内視鏡検査でポリープや早期がんが見つかった場合、その場で切除して日帰りで治療を完了できるケースも多数あります。逆に言えば、検診を受けずに症状が出るまで放置してしまうと、発見時には進行して手術が大がかりになる・完治が難しくなるといったリスクが高まります。 とくに40代以上の方は忙しくても年に一度は大腸がん検診を受ける習慣を持ちましょう。また、ポリープが見つかった場合は医師の指示に従い定期的なフォローを受けることも大切です。 まとめ|初期症状のチェックや検診で大腸がんを早期発見しよう 大腸がんは早期には目立った症状が出にくい病気ですが、おならの異常や便通の変化など日常のサインを見逃さないことが早期発見につながります。「最近おならの様子がおかしい」「腹痛や血便が続いている」など、少しでも気になる初期症状がある場合は自己判断せず消化器の専門医に相談が重要です。 血便・便秘や下痢の反復・便の狭小化・残便感・貧血症状・腹痛・嘔吐など、大腸がんの疑いを示す症状はいくつかあります。これらの初期症状チェックを日頃から意識し、該当する症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。 また、症状がなくても定期的に大腸がん検診を受けることが最大の防御策となります。幸い、大腸がんは早期に発見し適切に治療すれば怖がる必要はありません。違和感を感じたタイミングで勇気を出して専門クリニックを受診すれば、万が一大腸がんであっても早期のうちに治療でき、あなたの健康と命を守ることにつながります。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、がん予防を目的として「免疫細胞療法」を行っております。 免疫細胞療法について詳しくは、以下のページをご覧ください。 参考文献 (文献1) 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html .2024年9月20日.(最終アクセス:2025年4月22日) (文献2) 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/print.html .2024年9月20日.(最終アクセス:2025年3月24日)
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