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糖尿病の合併症(サイレントキラー)は生活習慣の改善で防ぐためにできることとは 糖尿病が「サイレントキラー」と恐れられる理由をご存知でしょうか? それは、糖尿病の進行がしばしば無症状であるためです。糖尿病は、長期間にわたって血糖値が高い状態が続くことで、様々な合併症を引き起こす可能性がある病気です。 これらの合併症は、特に早期に発見や治療が行われない場合に重篤な結果をもたらすことがあります。 その合併症としては失明の原因となる「糖尿病性網膜症」、人工透析の原因となる「糖尿病性腎症」など、進行すると日常生活に多大な影響を及ぼす症状が出る人がいるため注意が必要です。 糖尿病の治療が必要な理由は、これらの合併症を防ぐ目的があるためです。糖尿病は、些細な生活習慣の乱れが原因であることがほとんどといわれています。 糖尿病の合併症が「サイレントキラー」といわれ、命に関わる怖いものであることを知ることで、「生活習慣改善を変えるきっかけ」にしていただければと思います。 糖尿病は合併症により「サイレントキラー」と呼ばれる 糖尿病は、それ自体には痛みなどの症状はほとんど現れません。そのため、健康診断で糖尿病であることが指摘されても放っておく人も多いのが現状です。しかし、糖尿病は全身に合併症を引き起こします。合併症とは、一つの病気が元になって起こる新たな病気のことを指しています。 糖尿病の合併症は命に関わることから、糖尿病を「サイレントキラー(沈黙の暗殺者)」と呼ぶ医師も多くいるようです。 糖尿病の三大合併症は(し・め・じ)と呼ばれる 糖尿病の合併症には三大合併症と呼ばれる代表的なものがあります。次の病気が、糖尿病三大合併症と呼ばれるものです。 この3つは、糖尿病が無ければ起こらない病気であり、それぞれの頭文字を取って覚えやすく「し(神経症)・め(網膜症→め)・じ(腎症)」と呼ばれ、その危険性を喚起しています。 どの合併症も、多くは無症状で進行し、症状が現れたときには危険な状態となっています。生活に大きな支障をきたす病気であるため、注意が必要です。 糖尿病の三大合併症 し)神経障害 め)網膜症 じ)腎症 しびれや麻痺を全身に引き起こす神経障害(ニューロパシー) 神経障害は、糖尿病になってから適切な治療を受けずに放置すると、約5年で現れることが多く、糖尿病三大合併症の中で最も早く症状が現れるといわれています。 これは、高血糖が神経にダメージを与えることで、これにより感覚を伝える神経や身体を動かす神経が障害され、痛みやしびれ、こむら返りなど自覚しやすいものや、足の感覚が鈍くなる感覚鈍麻など自覚しづらいものが症状として現れます。手足の知覚や運動機能が低下することがあります 病状が進行すると、自律神経という内臓や血管の働きに関わる神経にも影響が出ます。そのため、しびれや麻痺が全身に広がり、身体が動かしにくくなり生活に大きな支障をきたしてしまう恐れがあります。 特に足の神経障害は重要であり、潰瘍が進行して感染を起こし、最悪の場合は切断が必要になることもあります。 視力低下や失明を引き起こす網膜症(糖尿病網膜症) 神経障害の後に現れるのが網膜症です。高血糖により、目の網膜にある毛細血管が傷ついたり破れたりすることで、視力低下や失明を引き起こす病気です。 網膜症の進行は、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値が高いほど早いと考えられています。症状が現れると、治療しても視力を回復することは難しいといわれています。 そのため、糖尿病と診断されたら眼科で定期的に網膜の検査を受けることが大切です。また、視界がぼやけたりシミが見えるなど、目の異変に気付いたらすぐに眼科を受診しましょう。 糖尿病網膜症は進行性の病態であり、早期の発見と治療が重要です。 糖尿病腎症は人工透析の原因第一位 糖尿病腎症は糖尿病三大合併症の中でも比較的遅く現れます。腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として出す働きをしています。 腎症になるとろ過機能が低下し、尿にタンパク質が漏れるようになります。(タンパク尿)症状が悪化すると腎機能のほとんどが失われ「人工透析」が必要になります。現在、日本の人工透析の原因第一位は、こうした糖尿病による腎症なのです。 これらの合併症は、糖尿病患者が血糖値の管理に注意を払い、定期的な健康チェックや医師の指導を受けることで予防・管理が可能です。早期の発見と治療は合併症の進行を遅らせ、重篤な結果を防ぐために非常に重要です。 糖尿病と診断されたら、定期的な尿検査を行い、腎機能の状態を確認するようにしましょう。 糖尿病 日本の人工透析:原因第一位は、糖尿病による腎症 早期発見:進行を遅らせる 合併症:進行を遅らせる 合併症を防ぐために必要なこと 糖尿病の合併症を防ぐためには、症状が現れていないうちから血糖値のコントロールを行うことが必要です。 糖尿病の治療や合併症の予防は、食事療法・運動療法・薬物療法の三本柱で行います。食事療法においては、血糖値が上がりやすい糖質の量を減らし、野菜や食物繊維の多い食品を多くとりいれることで高血糖の改善や体重低下が期待できます。 なお、極端な糖質制限は逆効果です。あくまで糖質を食べ過ぎないように食事の最後に食べるなどに留めましょう。運動療法によって血糖コントロールに関わるインスリンの働きが良くなり、高血糖の改善や体重低下が期待できます。 軽めのジョギングやウォーキングなど、無理なく継続できる方法で運動を取り入れましょう。薬物療法を行う場合は主治医と相談しながら症状に合わせた薬を飲み続けて経過を見てもらいましょう。 また、体質的にインスリン分泌が少ない人はインスリン注射を日常的に行う場合があり、これも薬物療法にあてはまります。 どの治療を中心にするかは個人差があるため、主治医に相談した上で決めていきましょう。 糖尿病の治療や合併症の予防の三本柱 食事療法 血糖値が上がりやすい糖質の量を減らす 野菜や食物繊維の多い食品を多くとりいれる 極端な糖質制限は逆効果 運動療法 インスリンの働きが良くなり、高血糖の改善や体重低下が期待できる 軽めのジョギングやウォーキングなど、無理なく継続 薬物療法 主治医と相談しながら症状に合わせた薬を飲み続ける インスリン分泌が少ない場合、インスリン注射を日常的に行う場合もある まとめ・糖尿病の合併症(サイレントキラー)は生活習慣の改善で防ぎたい 本記事では、糖尿病が進行すると命に関わる合併症を全身に引き起こすことを解説しました。糖尿病三大合併症である神経障害、網膜症、腎症が進行すると、治療して元の状態に戻すことは難しいとされています。 どの合併症も、症状が重くなるまで自覚症状がほとんどなく、自分で気付くのは困難です。糖尿病と診断されたら、内科や眼科での定期的な検査を受けて異常をいち早く発見しましょう。 健康な人と変わらないQOL(生活の質)や寿命を守るためにも、症状が現れないうちから定期的な検査や血糖コントロールを行うことが大切です。サイレントキラーと恐れられる糖尿病の症状にはくれぐれもご注意下さい。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 ▼以下もご参考にしていただければ幸いです 糖尿病を予防するための運動とは、その効果と注意点 ▼糖尿病の合併症|最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目を浴びています
2022.05.19 -
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糖尿病|食事で予防する、食生活を整えて病気の悪化や合併症を防ぐ 糖尿病は、日々の食生活が大きく影響しています。食生活のチェックや見直しは、「糖尿病の予防」だけでなく、「糖尿病の合併症」の予防なのでの悪化にも役立ちます。 血糖コントロールが悪化しても自覚症状が現れにくいのですが、全身の血管に動脈硬化などの症状を引き起こし、合併症へと繋がる可能性が高くなります。 そのため症状が現れていなくても糖尿病の悪化に繋がるような食事を見直すことが大切です。「糖尿病を予防したい」「危ないのでは?」と心配しているなら本記事の内容を参考に日々の食事を点検するところから始めていきませんか?! この記事の対象者 糖尿病を予防したい人 糖尿病の悪化を防ぎたい人 糖尿病の合併症を防ぎたい人 食生活の見直しで、糖尿病の合併症を防ぐ 糖尿病を予防するためには、自覚症状のない時期からこそ食生活などの生活習慣を見直すことが大切です。さらに、糖尿病の合併症は、糖尿病の予兆が現れてから何年も経ってから発症することを知っておきましょう。 血糖のコントロール不良が長期にわたって起きると、網膜や腎臓の毛細血管に症状が現れ、場合によっては脳血管障害や心疾患に繋がることもあります。 特に糖尿病性腎症については、糖尿病の早い段階から食事療法を行うことで悪化を防ぐことができるといわれています。尚、早いうちから糖尿病の薬に頼ってしまうと、食生活が変わらず治療が長引く恐れがあるという側面もあります。 できるだけ早い段階で食事などの生活習慣を見直し、血液検査データの改善に繋げることが大切なのです。 まずは食事記録を付けましょう 糖尿病が気になる人にお勧めしたい習慣があります。 それは食生活をノートやメモに記録する方法です。詳しい量やカロリーなどを書かなくても「いつ、何を食べたか?」を書き記すだけで効果があると言われるものです。その手軽さからもお勧めの方法です。 ただ、朝・昼・夕と1日3回きっちり記録することを習慣化する必要があり、慣れるまでなかなか難しいかもしれませんが、書けないときは飛ばしながらも継続していくことが大切です。 特に、夕食は1日の中で最も食べ過ぎてしまいやすいため、まずは夕食の内容を記録するところから始めても良いでしょうう。継続することが鍵です。途中で忘れても大丈夫、また次から記録してください。 まずは一か月続けてみる!という意識でそれを伸ばしていくことで習慣化しましょう。減らすなどといった意識は持たずとも結構です。記録することから始めてください。 また、お菓子の食べ過ぎや、お酒の飲み過ぎを指摘されたことがある人は、お菓子や、お酒を食べたり、飲んだりするごとに記録を付けるだけでも食生活を見直すための意識を持ち続けることができます。 食事記録をチェックするだけ 何を食べたか?! 理想は、朝昼夜に手帳や専用のノートを作って記録する 継続が鍵なので、まずは夕食だけから始めてみる 途中抜けても一か月は続けるなど目標を持ちましょう 記入することで食事に対する意識に変化が現れます お菓子や飲酒なども記録しましょう 夕食の食べ過ぎや、食べるタイミングに注意 夕食を大量に食べる、いわゆる「ドカ食い」は避けねばなりません。 しかも、それが高カロリーであったりすると、そのまま肥満を招きかねず「メタボリックシンドローム」のリスクが高まりかねません。 何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも重要なポイントです。同じ量を食べていても、いつ食べるかによって栄養状態には大きな違いが生まれます。 特に、夕食は就寝までの時間が短く食後のエネルギー消費が少ない上に、ついつい食事の量が多くなってしまいがちです。昼食を簡単にすませている人は、その分、夕食の量が多くなりやすいと考えられます。 また、よく聞かれるかもしれませんが夕食は20時前までに食べ終えたい。という話がありますが、就寝時間にもよります。極端ですが20時に食べ終えても21時に眠りに付いては意味がありません。 就寝前に、食事や間食を取ると、その栄養は使われずに体に貯まってしまいます。つまり、太ってしまうということ、そして高血糖を引き起こしやすくなってしまいます。 そこで、夕食の時間の目安は、「就寝時間の4時間前」までに!と就寝時間から逆算して食べるようにしてください。もちろん夕食から就寝までの間に、ついつい!おやつを食べたり、お酒を飲んでしまうということも控えてください。 糖尿病や、体重増加が気になる人は、夕食の食べ過ぎを防ぐために、昼食の内容を充実させて精神的な満足感を得ることで、その分、夕食を質素にしたり、控えめにするといった動機付けに利用するのも有効です。 いつどう食べるか? 夕食は就寝までの時間が短い 可能なら20時までには終えたい(ただし、就寝時間による) 夕食の食べ過ぎに注する 食事の量や、食事の内容にも配慮する 昼食の充実させ精神的な充足感を向上させる 食事時間の間隔を3時間以上あける(間食(おやつ!)も含みます) また、食事と食事の間に3時間以上の間隔があることが良いとされています。この「食事」には間食(おやつ)も含まれます。 例えば昼の12時に昼食を食べた場合、午後2時におやつを食べてしまうと昼食によって上がった血糖値が下がりきらないうちに再び上がってしまうことになります。 つまり、次の食事を食べるまでに3時間以上間隔があれば、おやつを食べても血糖値の上がり過ぎを防ぐことができるのです。ただ、糖尿病の疑いがある人は、食後の血糖値が下がりにくい傾向があります。 このため、食後3時間あいているとしても、おやつの量を多過ぎないようにし、糖質の少ないおやつ(ナッツ類やチョコレートなど)を選ぶことが大切です。 外食の注意点(野菜・魚・大豆製品が不足しやすい) 飲食店で外食をすると、ついついカロリーの高いメニューを選んでしまいがちです。さらにお酒を飲みながらの外食は、おつまみを追加してしまい食事量が増えやすく、しかも飲み過ぎ食べ過ぎたことを忘れてしまいます。 糖尿病にならないためには、できるだけ外食の回数を減らした方が良いでしょう。また、外食は肉料理を選びやすく、糖尿病予防に効果のある野菜・魚・大豆製品が不足しやすいことも重要なポイントです。 外食のときは野菜・魚・大豆製品を使ったメニューを選ぶ、これらのメニューが多い飲食店を選ぶようにしましょう。コンビニやスーパーでお弁当を買う場合は、野菜のおかずを1品プラスしてみましょう。 清涼飲料水の飲み過ぎに注意! 砂糖がたくさん入っている清涼飲料水をよく飲むという人は注意が必要です。清涼飲料水は、カロリーが高い割に得られる満足感が少なく、特に炭酸飲料は口当たりが癖になりやすく飲み過ぎてしまう傾向があります。 普段飲んでいる清涼飲料水を控えるだけでも、1度に100~200kcal程を抑えることができるため、糖尿病予防には効果的です。 糖尿病予防に効果大 食事時間の間隔を3時間以上あける’血糖値の上昇を防ぐ 外食は野菜・魚・大豆製品が不足しやすい:できるだけ外食控える 清涼飲料水の飲み過ぎに注意!:炭酸飲料に注意 まとめ・糖尿病|食事で予防する、食生活を整えて病気の悪化や合併症を防ぐ 生活習慣を変えることは思ったよりも難しいものです。厳しい食事制限は、ストレスからすぐに諦めてしまったり、かえってドカ食いに繋がる恐れがあるといわれています。 食生活を点検した結果、毎日食べ過ぎてしまうものが見つかった人は週に3~4回にする、量を半分にするだけでも効果があり、そちらの方が継続できるのです。 目標を難しくせず、これなら自分でも続けられる、と思えるような簡単なものから始めてみましょう。 以上、糖尿病を防ぐ!食生活のチェックや見直しは、予防や悪化にも効果と題して説明してまいりました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が参考になれば幸いです。 ▼糖尿病の合併症|最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目を浴びています ▼以下も参考にしていただけますか 糖尿病はなぜ治らない?糖尿病を発症しないための予防法
2022.05.02 -
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糖尿病を患っている人にとって、運動療法は効果的な改善法のひとつです。 しかし、運動のタイミングや運動量を誤ってしまうと、むしろ糖尿病を悪化させる原因になってしまう可能性があります。 この記事では、糖尿病に効果のある運動のタイミングや運動法について解説します。「今まで運動不足だったからいきなりの運動は不安」という人でもできる簡単な運動もあるため、ぜひ最後まで見てみてください。 空腹時の運動が血糖値に与える影響|血糖値の急上昇、急降下を防ぐには 空腹時の運動は血糖値を不安定にしてしまうため推奨されていません。 食後の血糖値と比べると、空腹時は血糖値が低い状態です。運動を行うと血糖値は下がるため、激しい運動を行うと適正値を下回ってしまう可能性があります。 また、空腹時に運動を行った後は食事量も増えてしまうことが考えられます。食事量の増加によって血糖値の急上昇を引き起こしてしまうため、空腹時の運動は避けるべきでしょう。 現在行っている治療や体質によって注意すべきポイントが変わるため、それぞれご紹介します。 薬を飲んでいる人は空腹時の運動で低血糖を引き起こすリスクがある 現在インスリンやSU薬(スルホニル尿素薬)を飲んでいる人は、空腹時に運動を行うと低血糖を引き起こしてしまうため注意が必要です。 低血糖とは、血液中のブドウ糖が著しく少なくなった状態をいいます。糖尿病治療を行っている人によく見られる症状であり、体のだるさ、冷や汗、めまいなどを引き起こします。 空腹時血糖値が高い人は運動中に血糖値が急上昇する可能性がある 空腹時血糖値(食事を10時間以上摂らない状態での血糖値)が高い人は、運動を行うとむしろ血糖値が上がってしまう可能性があります。 食前、食後問わず、運動を行う場合は医師の指導を必ず受けるようにしましょう。 自身の体調に合わせた無理のない運動が大切 運動量が多い場合は補食をとる、もしくは運動前後のインスリン量を減らすなどの注意も必要になります。 短期的な効果を目指し過度な運動を行うことによって、低血糖や運動後の食事による血糖値の急上昇などを引き起こす可能性があります。 いずれもその人の体調に合わせた適切な運動を行うことが重要なので、糖尿病を患っている、あるいはその疑いがある方は、医師と相談しながら自身に合った運動量を調整していく必要があります。 血糖値の上昇を防ぐ効果的な運動法 この項目では、実際どのような運動療法を実施すると効果が高いのかをポイント毎に紹介します。 運動療法では、週150分かそれ以上、週3回の全身を使った有酸素運動が推奨されています。(文献1) 運動強度はややきつい中等度が良いとされており、20分以上の運動の継続がおすすめです。 また、無酸素運動(レジスタンス運動)については、連続しない日程で週に2~3回の実施がすすめられています。 食後1時間〜3時間で運動をする 運動を行う際は食後1~3時間の間で行うのがおすすめです。 食後は血糖値が一時的に上昇し、健康な人で食後1時間、糖尿病の人で食後2時間半ほどでピークに達し、その後緩やかに下がっていきます。(文献2) そのため、血糖値を下げるのに最も効果的なタイミングは食後のおよそ1時間~3時間後です。 食後の運動にはウォーキング、ヨガ、エアロビクスなどの有酸素運動がおすすめされています。 筋肉をつける運動を取り入れる 有酸素運動に加え、筋肉をつけるための無酸素運動(レジスタンス運動)を取り入れることで、長期的に見た際に血糖値コントロールに有効であるという効果も出ています。 運動を続けていくと、筋肉の量が少しずつ増えていきます。筋肉はエネルギーを大きく消費するため、筋肉が増えていくと血液中のブドウ糖が筋肉に多く取り込まれるようになります。これにより、血糖値を正常値に保ちやすくなります。 また、筋肉によるエネルギーの消費を基礎代謝と呼び、運動によって筋肉が増えることで基礎代謝量の増加に繋がるため太りにくい体質をつくることができるのです。 負荷が高ければ高いほど効果が報告されています。しかし、急に高負荷の運動を始めると、力みによって血圧が上昇し危険です。運動開始前に医師のチェックを受けましょう。 また、適切なフォームで行うことも重要です。動作中重りをあげる際は息を吐き、重りを下げる際は息を吸うことを心がけましょう。 筋肉はすぐには変化しないため、すぐには効果が実感できないかもしれません。短期的な効果を得られやすいのは有酸素運動、長期的な効果を得られるのは無酸素運動と覚えておきましょう。 有酸素運動と無酸素運動を組み合わせると効果的! 一言で運動といっても様々な内容のものがあり、身体にかかる負荷の大きさもそれぞれ違います。 糖尿病にならないための運動には、深く呼吸しながら行う有酸素運動が効果的といわれています。 有酸素運動にあたるもの ウォーキング、歩行(できるだけ速く歩く) ジョギング ラジオ体操 エアロビクス また、有酸素運動とは逆に息をつめて行うものを無酸素運動(レジスタンス運動)と呼びます。 無酸素運動にあたるもの 短距離走 重い物を持つ 筋力トレーニング 無酸素運動では、いきなり高負荷な運動は行わないよう注意が必要です。 無酸素運動はあまりしたことがない人にとって、最初はハードルの高い運動かもしれません。 全身を万遍なく鍛えることが推奨されていますが、時間がない人や自信がないという人には、下半身を鍛えられるスクワットから始めることをおすすめします。 短い時間のウォーキングや、日常動作も効果がある 運動とは、いわゆる「スポーツ」だけを指している訳ではありません。軽いウォーキングや立って行う家事など、身体を使った活動全てが運動です。 ある研究では、一日中座っていた人と比べ、軽いウォーキングや短時間の立ち仕事を頻繁に行っていた人のほうが食後の血糖値が低下していたという結果も出ています。(文献3) 日常の身体を使った活動 座っている時間を減らす いつもより速く歩く こまめに家事をこなす 身軽に動く 階段を使う 「毎日忙しくて運動する時間がつくれない」「長く運動をしていなかったから不安」という人は、まずは日常生活の中で身体を使う機会を増やしてみましょう。 効果的な、運動と食事の見直し 運動によるエネルギーの消費量は、思ったより多くありません。例えば、体重75㎏の人がウォーキングを10分間行うと、25kcalの消費になります。 しかし、毎日夕食にご飯(並盛り)を2杯食べているところを1杯に減らすと、それだけで250kcal減らすことができます。つまり、糖尿病にならないためには運動習慣だけでなく食生活の見直しを合わせて行うことが重要となるのです。 空腹時に運動すると血糖値が急上昇しやすいため、糖尿病予防には逆効果です。早朝のウォーキングやジョギングは、朝食後かパンやバナナなどを軽く食べた後に行いましょう。 まとめ|糖尿病予防には空腹時を避けた適切なタイミングでの運動が重要 空腹時の運動は、糖尿病の人にとっては悪い影響を及ぼす可能性があります。 激しい運動によって血糖値が下がってしまうだけでなく、空腹時の運動後の食事によって血糖値が急上昇してしまう可能性があります。 また、薬を飲んで治療をしている人は低血糖を引き起こしてしまう危険もあるため、食後1~3時間後の運動を行うよう心がけましょう。 ただし、持病や糖尿病合併症がある人、普段の血糖値が非常に高い人は運動が禁忌事項である場合があるため、スポーツを行う前には必ず事前に主治医の指示を受けてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」では再生医療による糖尿病の治療に取り組んでいます。患者様一人ひとりの状態に応じた丁寧な診療を心がけ、血糖値や肝機能の管理をサポートしています。 再生医療について詳しく知りたい方は、合わせて以下をご覧ください。 参考文献 (文献1) 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024「第4章 運動療法」, 日本糖尿病学会, 2024年. https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/04_1.pdf(最終アクセス:2025年3月25日) (文献2) 糖尿病ネットワーク.「尿と糖尿病:尿検査でわかること」 https://dm-net.co.jp/urine/2010/05/0202.php(最終アクセス:2025年3月25日) (文献3) Buffey, A. J., et al. (2022). The Acute Effects of Interrupting Prolonged Sitting Time in Adults with Standing and Light-Intensity Walking on Biomarkers of Cardiometabolic Health: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine, 52(7), pp.1765-1787. https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-022-01649-4 (最終アクセス:2025年3月25日)
2022.04.27 -
- 糖尿病
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糖尿病!運動療法なら改善はもとより予防にも効果を発揮 糖尿病には、その発症状況から、いくつかのタイプがあることが判明しています。ただ、その中でも自己免疫の異常によって引き起こされる「1型糖尿病」は、完全に予防できる方法が発見されていません。 その一方で、日頃の生活習慣が関与している「2型糖尿病」、あるいは妊娠を契機に発症する「妊娠糖尿病」は生活習慣やライフスタイルを見直すことで、それらの発症自体や、症状悪化を一定の割合で回避または改善することが可能です。 そこで本稿では、この2型糖尿病について、その改善方法を記してまいります。(以下に記す「糖尿病」の表記は、2型糖尿病を指すものとします) 糖尿病は、規則正しい食生活の改善は勿論のこと、日常から意識して身体を動かすなどの運動を実践することが大切です。それにより、ストレスも発散できるように努めることが重要です。 運動を行うことにより、心身共に健やかに保つことが改善はもちろん、予防にも効果的です。以下、糖尿病を改善し、予防に有効な「運動に関する情報」を詳細に紹介してまいります。 1型糖尿病 治療、予防が難しい 2型糖尿病 妊娠糖尿病 予防が可能 生活習慣やライフスタイルを見直す 規則正しい食生活 適度な運動(ストレス発散) 糖尿病を予防し、改善に効果的な運動 運動を継続的に実行することは、食事による療法と並んで糖尿病における治療の基本となっています。 特に「2型糖尿病」における発症要因として、「肥満体形」「過食傾向」「運動不足」の関与が強く疑われており、運動することでエネルギーを消費し、ストレスも解消し、肥満を撃退できるのみならず、運動を行えば筋肉活動量が向上して「インスリン機能を改善」ずる効果を期待できます。 糖尿病の発症要因 肥満体形 過食傾向 運動不足 糖尿病の改善効果をあげるための心掛け 運動を行うタイミングについて食事を摂取した直後は、なるべく控えたほうが良いものの、食後1時間程度を経過してから行うことができれば、食事から取り込まれたブドウ糖や脂肪成分の利用を効率的に促進することができ、血糖値を有効的に下げられる可能性があります。 食後に血糖値をさげるために 食後1時間程度、経過後に運動を行う ブドウ糖、脂肪成分を効率的に促進できる 血糖値を有効的に下げられる可能性が高い 血糖値を良好にコントロールしてその状態を維持するには、運動と食事は両輪での対策が必要です。治療効果としては、どちらか一方が欠けてもうまく制御することができません。 注意したいのは、「毎日運動しているから!」という理由で、入念な食事療法を怠ることです。その反対も同じです。「食事療法しているから」と運動を避けるのは避けたいものです。 片方だけを頑張るのではなく、食事も運動も双方を取り入れて有効な予防、回復効果を目指しましょう。 運動 + 食事 = 予防、改善(どちらかに偏らないバランスが大切) 運動の方法 糖尿病の運動療法について、ダンベルや、重りなど、器具を用いて筋肉に負荷をかけるようなトレーニングジムで行う運動(レジスタンス運動)よりも、一般的で手軽にできるウォーキングや、ジョギング、水泳などの全身を使った有酸素運動が適しています。 なぜならば有酸素運動を継続して実践することでインスリンの働きがよくなり血糖値を上手く調整しやすくなるからと考えられています。 したがって、糖尿病における運動療法は、まずは運動不足を改善させる有酸素運動から始めるべきです。その上で余裕が出てくれば次のステップとして、身体に負荷をかけるレジスタンス運動を検討すれば良いと思われます。 具体的な、有酸素運動(ウオーキングやジョギング等)については、少なくとも週に3回は、一回当たり40分~60分間程度行うことが理想です。 これは通常、「糖の代謝が改善する期間」が運動してから、およそ半日から3日間前後持続することから導いたもので、血糖値を上手く制御するためには運動行為を1週間のなかで3日間は実践することが理想的だからです。 有酸素運動の実施 週に3回(一回当たり40分~60分間程度) 現在が運送不足の状態として、一念発起し、一気にやり始めるのではなく、毎日少しずつ取り組まれ、週3回、行うことを目指しましょう。無理は禁物ですがコツコツとした継続は、大きな力になってくれます。 運動の長さは、このような有酸素運動では、週当たり150分(2時間30分)以上、一回あたり50分を確保するのが理想ですが、無理は禁物です。可能な時間から徐々に行い、最終的にそうなることを目標にしましょう。継続は力です! 運動の開始時間 食事後1時間程度経過してから 効果的にするために 運動だけに偏らない、食事療法も一体で行う 運動内容 ウオーキング、ジョギング等の有酸素運動 回数 週3回を目途、間隔を3日空けない 時間 一回当たり30分~60分程度 1型糖尿病の場合には、2型糖尿病と異なってインスリンを分泌する膵臓細胞が壊れてしまうことで発症するため、インスリン機能そのものの回復を期待できるような治療効果は期待できません。 いかし、運動することで心身の健全な発達やストレス解消に貢献するため、けして無駄ではありません。 糖尿病の運動療法の効果 このような運動療法の効果は数々考えられており、運動することで血液中のブドウ糖が筋肉にとり込まれやすくなることでブドウ糖などの利用が促される結果、血糖値が下がる現象が認められます。 特に2型糖尿病では低下したインスリン機能が改善すると言われています。 また、このような運動は糖尿病のみならず、高血圧や脂質異常症の改善にも役立ち、エネルギー消費のバランスが安定化することで減量に繋がって肥満を防止することにも貢献します。 さらに運動を実行すれば加齢に伴って起こる筋肉の衰弱や、骨粗鬆症を改善できる期待を持てるばかりか、それ以外に心肺機能が高まるのみならず爽快感が向上してストレスを解消させる効果をも併せて考慮できるのです。 実際に、運動療法を実践する場合は、事前に準備運動やストレッチを丹念に行って軽い動作から開始し、徐々に運動強度を高めていくように意識しましょう。 実施にあたっては、適宜体調に合わせて、無理をしないように継続できる運動の種類を選択するように心がけましょう。 運動療法の効果 ブドウ糖が筋肉にとり込まれ血糖値が下がる 低下したインスリン機能が改善する 高血圧や脂質異常症の改善にも役立つ エネルギーの消費で肥満の防止 加齢による筋肉の改善 骨粗鬆症の改善を期待 心肺機能が高まる ストレスの解消効果 まとめ・糖尿病!運動療法なら改善はもとより予防にも効果を発揮 今回は糖尿病を予防して改善するための運動について詳しく紹介しました。 糖尿病の発症を防ぎ、症状を改善させるために運動は有効的であり、特に有酸素運動である歩行運動をする際には1日あたり1万歩以上を目標にして、1週間に少なくとも3日間以上の頻度でウォーキングエクササイズを実行することがお勧めされています。 いつでも、どこでも、一人だけでも実践しやすい歩行運動などは常日頃から多忙でまとまった時間が確保できない方でも通勤や通学中などでも行うことが可能ですし、どこまで運動強度を上げていいか不安に感じる患者さんはかかりつけ医ともよく相談してみましょう。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼糖尿病の合併症|最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目を浴びています ▼以下、食生活の改善についてもご参考にしていただけます 糖尿病|食事で予防、食生活のチェックや見直しで悪化や合併症を防ぐ
2022.04.15 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「肝臓は症状が出にくいって本当?」「肝臓が悪いと言われたけれど、何に気をつければ良い?」などと肝臓のことが気になる方も多いでしょう。 肝臓は、大人では1kg以上の重量があり、体内で最も大きな臓器の一つです。栄養素の代謝をはじめとする500種類以上の化学反応を担う一方、「沈黙の臓器」とも呼ばれ、異常があっても症状が現れにくいのが特徴です。 この記事では、多岐にわたる肝臓の働きを5つに分けて解説します。さらに、肝機能が悪化した際の症状や、放置したときに起こりうる病気、肝臓を守るための生活習慣も紹介します。 肝臓の健康や働きに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。 肝臓の5つの働きをわかりやすく解説 肝臓には非常に多くの働きがあります。ここではわかりやすく5つに分類して、肝臓の働きを説明します。 胆汁の合成・分泌 代謝(炭水化物・脂質・タンパク質など) 栄養素の貯蔵 解毒・排泄 免疫 胆汁の合成・分泌 胆汁は、食べ物に含まれる脂肪などの消化・吸収を助ける分泌液です。胆汁の主要な成分は、コレステロールから合成される胆汁酸です。脂肪に胆汁酸が混ざることで、消化酵素による分解を受けやすくなります。 胆汁は、赤血球が分解されるときにできるビリルビンを排泄する役割も持ちます。ビリルビンとは、脾臓で赤血球が壊されるときにできる黄色の色素です。そのままでは水に溶けないため、肝臓で水に溶けやすい形に変換されて胆汁に混ざり、消化管へ排泄されるのです。 胆汁酸とビリルビンのほかに、電解質やコレステロール、リン脂質などが混ざりあって胆汁が生成されます。作られた胆汁は十二指腸へ送り出され、脂肪の消化・吸収を助けます。 代謝(炭水化物・脂質・タンパク質など) 代謝とは、体内での化学反応によって、さまざまな分子が合成・分解されることです。 たとえば炭水化物・脂質・タンパク質は、肝臓において以下のように代謝されています。体にとって使いやすい形への変換、不足分の合成、貯蔵しやすい形への合成などが行われます。 変換・合成元 変換・合成先 炭水化物 ・ブドウ糖以外の単糖類(フルクトースやガラクトース)をブドウ糖に変換 ・ブドウ糖をグリコーゲンに合成して貯蔵 ・アミノ酸や脂肪からブドウ糖を合成 脂質 ・脂肪を運ぶタンパク質の合成(VLDL、HDL) ・ブドウ糖から脂肪を合成 ・脂肪・ブドウ糖・アミノ酸からコレステロールを合成 タンパク質 ・非必須アミノ酸(体内で合成可能なアミノ酸)を合成 ・アミノ酸からタンパク質(アルブミンや血液凝固因子など)を合成 ・余分なアミノ酸の分解 栄養素の貯蔵 肝臓は糖や脂質の貯蔵において中心的な役割を果たしている臓器です。また、ビタミンやミネラルの貯蔵も行っています。 体内でブドウ糖が余っているとき、まず合成されるのはグリコーゲンです。グリコーゲンを十分作ってもまだブドウ糖が余っていれば、今度は脂肪に変化させて、脂肪組織で貯蔵できる形にします。 逆に体内のブドウ糖が不足しているときは、肝臓のグリコーゲンを分解してブドウ糖に戻し、血液中に供給します。グリコーゲンがなくなれば、今度はアミノ酸や乳酸、脂肪を材料にブドウ糖を合成可能です。このように肝臓は、エネルギーの貯蔵と供給を担っています。 エネルギー以外には、赤血球を作る際に必要な鉄やビタミンB12も肝臓に貯蔵されています。ビタミンAやD、亜鉛も肝臓で貯蔵される栄養素です。これらも必要に応じて肝臓から供給されます。 解毒・排泄 肝臓は、身体にとって有害な物質を無毒化したり、そのままでは排泄できない物質を排泄可能な形に変換したりする働きも担います。アルコールやニコチン、治療薬の成分などを分解・無毒化するのも肝臓です。 体内でできる有害物質や排泄困難な物質なども、多くが肝臓で処理されます。たとえば余分なアミノ酸を分解する過程でできるアンモニアは、そのままでは有毒なので、尿素に変換されます。赤血球が分解される際に出るビリルビンを、水に溶ける形に変換するのも肝臓の役目です。体内で働いたホルモンも、一部は肝臓で分解されます。 また、体内に乳酸が余分に溜まると倦怠感を自覚するといわれていますが、肝臓では乳酸をブドウ糖に変換できます。 免疫 肝臓は、消化管で吸収された栄養素が最初に流れ込む場所です。消化管から来る血液の通り道には、クッパー細胞と呼ばれる免疫細胞が常駐し、栄養素と一緒に入ってきた細菌やウイルスなどの異物を除去しています。ほかにも、ウイルスに感染した細胞や老廃物を処理するナチュラルキラー(NK)細胞など、免疫系の細胞が多く存在します。 また、免疫系が適切に働くには、病原体に結合して目印となるタンパク質免疫グロブリンが欠かせません。免疫グロブリンは免疫細胞が作りますが、そのためには肝臓から供給されるアミノ酸やエネルギーが不可欠です。 肝臓の働きが悪くなると身体に現れる変化 肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、働きが悪化しても目立った症状はなかなか現れません。それでも以下のような症状がヒントになります。 全身がだるくなって疲れやすくなる 黄疸(肌や目が黄色くなる)やむくみが出やすくなる このような変化が起きる理由を解説します。 全身がだるくなって疲れやすくなる 肝臓の働きが悪くなると、心当たりもないのに全身のだるさが続いたり、疲れやすくなったりします。要因はさまざまなものが考えられます。 まず、ブドウ糖の供給を調節する機能が低下して、全身の細胞がエネルギー不足の状態になります。有害物質の解毒・分解が滞ることで、アンモニアなどの老廃物が身体にたまることも倦怠感の一因です。 ほかにも栄養素の貯蔵障害や、タンパク質の合成低下、ホルモンの分解が滞ることでのホルモンバランスの乱れも影響します。このように、肝臓のさまざまな機能の低下が、全身のだるさや疲れやすさにつながります。 黄疸(肌や目が黄色くなる)やむくみが出やすくなる 黄疸とは、白目や皮膚が黄色くなる症状です。これは肝機能の低下を示す特徴的な症状で、肝臓におけるビリルビン(赤血球が壊されるときに出てくる黄色い色素)の代謝と排泄がうまくいかなくなると起こります。急性肝炎の場合は、黄疸が出現する数日前から、尿の色が茶色くなる症状も現れるのが一般的です。(文献2) むくみの原因は、肝臓におけるタンパク質の合成障害かもしれません。血液中のタンパク質(アルブミンなど)が減少すると、水分を血管内に保持する力が弱まります。すると水分が血管外に漏れ出し、むくみや腹水として溜まってしまうのです。 肝臓の働きの悪化が進むと重大な病気にかかりやすい 肝臓の働きが悪化すると、以下のような肝臓の病気を発症するリスクが高まります。 急性肝炎 慢性肝炎 アルコール性肝炎 非アルコール性肝炎 ウイルス性肝炎 肝硬変 肝臓がん 本章では、このうち急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変の3つについて説明します。 急性肝炎 急性肝炎は、肝炎ウイルスやアルコール、薬剤などの影響で肝臓内の細胞が破壊され、強い炎症所見を呈するものです。肝炎ウイルスが原因であることが多く、感染して数週間から数カ月後に、黄疸や食欲不振、全身倦怠感、発熱といった症状が現れます。(文献2) 肝炎ウイルスの種類はA・B・C・D・E型があり、このうちD型は、日本ではあまり見られません。どの型であっても、治療の基本は安静と食事療法です。肝臓への負担を抑えるためにタンパク質を制限するほか、必要に応じて輸液や炎症を抑える薬を投与する場合もあります。 急性肝炎は重症化するケースもありますが、多くは自然に回復します。しかし、C型肝炎は慢性化する確率が高いため、急性の症状が落ち着いても、6カ月の経過観察が必要です。 慢性肝炎 慢性肝炎とは、肝臓の炎症が半年以上継続している状態を指します。原因は、急性肝炎が完全に治りきらないことや、脂肪の蓄積やアルコールによる肝臓への負担です。 慢性肝炎による炎症と修復が繰り返されると、肝臓は少しずつ繊維化し、慢性肝臓病と呼ばれる機能低下の状態となります。さらに放置すれば、肝硬変や肝臓がんに移行するかもしれません。(文献3) 慢性肝炎の自覚症状は非常に軽微なため、健康診断の血液検査でたまたま発見されることが多いといわれています。とくに気をつけるべき数値は、肝臓の働きを反映するALTです。ALTが30を超えたらかかりつけ医を受診するよう、日本肝臓学会により呼びかけられています。(文献3)症状がなくても放置せず、早めの受診を心がけましょう。 肝硬変 肝硬変とは、肝臓の組織が繊維化して固くなってしまう病気です。慢性肝炎などによって、肝臓内の細胞が破壊と修復を繰り返すうちに発症します。原因はC型肝炎が最多ですが、近年ではアルコール性肝障害や、非アルコール性脂肪肝炎が原因で肝硬変となる患者様の割合が増えています。(文献1) 肝硬変になると、肝臓の機能は低下したまま元に戻りません。また、肝がんが発生する危険性が高くなります。(文献1) 初期にはほとんど有意な症状を認めないことが多いですが、進行するにしたがって倦怠感や吐き気、体重減少など、多彩な症状が出現すると知られています。さらに病状が悪化すると、むくみやおなかの張り、白目や皮膚が黄色くなる黄疸などが自覚されます。 肝臓疾患の治療には再生医療をご検討ください 脂肪肝や肝炎といった肝臓の病気は、放置すると肝硬変や肝がんに進行する場合もあります。しかし自覚症状が出にくいため、気づいたときには進行していることも少なくありません。 そんな肝臓疾患の新しい治療法として、再生医療があります。再生医療とは、体内の幹細胞が持つ組織修復能力や炎症を抑える働きを活かした治療です。患者様自身の幹細胞を用いますが、入院を伴う大きな手術は必要なく、身体への負担を抑えられます。 当院リペアセルクリニックでも、脂肪肝・肝硬変・肝炎に対する再生医療を提供していますので、お気軽にご相談ください。 肝臓の働きを良くするために意識したい生活習慣 ここでは肝臓のために普段から意識したい生活習慣について、食事、休息、運動の面からお伝えします。 栄養バランスを考えて食事のメニューを選ぶ 睡眠不足・ストレス過多を避ける ウォーキングなど軽い運動を習慣にする 栄養バランスを考えて食事のメニューを選ぶ 肝臓の働きを維持するには、肝臓の細胞を作るタンパク質や、肝臓の機能を助けるビタミン類が大切です。積極的にとりたい栄養素と、多く含む食品例を以下にまとめました。 栄養素 食品例 タンパク質 ・鶏むね肉 ・豆腐 ・卵 ビタミンB群 ・豚肉 ・ほうれん草 ・納豆 ・玄米 ビタミンC ・ブロッコリー ・キウイフルーツ ・さつまいも ビタミンE ・アーモンド(ナッツ類) ・アボカド ・カボチャ ポリフェノール ・緑茶 ・ブルーベリー ・ココア タウリン ・しじみ ・あさり ・いか これらの栄養素を意識しながら、さまざまな食品をバランスよく食べましょう。 なお、既に肝機能が落ちている方は、タンパク質や塩分の制限が必要な場合もあります。医師と相談しながら食事内容を調整してください。 睡眠不足・ストレス過多を避ける 睡眠時間が短いと、肝臓が日中のダメージを修復・再生する時間も少なくなります。毎日決まった時間に寝起きするなど規則正しい生活を送り、質の高い睡眠を確保しましょう。寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用を控えるのも効果的です。 また、過度なストレスも自律神経を乱し、肝臓へのダメージにつながります。活性酸素が増えることで肝細胞が傷ついたり、ストレスによる食生活の変化で肝臓に負担がかかったりする可能性もあります。適度な運動や趣味など、自分に合った方法で上手にストレスを発散しましょう。 ウォーキングなど軽い運動を習慣にする ウォーキングなどの軽い有酸素運動も、肝臓に良い影響をもたらします。とくに肥満を伴う脂肪肝の患者様には効果的で、単純な脂肪肝でも、脂肪により炎症が起きている場合でも、肝臓の脂肪が減る効果があると報告されています。(文献4)肥満ではない方も、運動によって消費エネルギーが増えれば、脂肪の消費に役立ちます。 おすすめの有酸素運動は、ウォーキングやサイクリング、スイミング等です。少し汗をかきながら無理なく続けられる強度で、1回30分~60分、週に3~4回を目安にしましょう。適切な運動により、脂肪肝の改善が期待できます。 肝臓の働きについて気になる点があれば病院へかかりましょう 肝臓の主な働きと、機能低下時の症状、肝臓に良い生活習慣について解説しました。肝臓を守るためには、バランスの良い食事と十分な睡眠、ストレス管理、軽い有酸素運動の継続を大切にしましょう。 一方で、肝臓病は症状が現れにくいため、定期的な検査も欠かせません。健康診断では、とくにALT値に注目し、30を超えたら医療機関を受診しましょう。 肝臓病になってしまったら、治療や生活習慣の見直しが必要となります。治療については再生医療も選択肢の一つです。 当院リペアセルクリニックでは、脂肪肝・肝硬変・肝炎に対する再生医療を提供しています。肝臓が気になる方は、お気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 日本消化器病学会・日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)」2020年 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/kankouhen2020_re.pdf(最終アクセス:2025年5月20日) (文献2) 国立健康危機管理情報機構 肝炎情報センター「急性肝炎」 https://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/kyuusei.html(最終アクセス:2025年5月20日) (文献3) 日本肝臓学会「奈良宣言特設サイト」 https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/(最終アクセス:2025年5月20日) (文献4) 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH 診療ガイドライン 2020(改訂第 2 版)」2020年 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/nafldnash2020_2_re.pdf(最終アクセス:2025年5月20日)
2022.04.04 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「健康診断で肝臓の数値が高いと言われて不安になった…」 「肝臓の数値異常は薬のせい?」 このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状が出にくいため、健康診断の結果で初めて異常を指摘される人も多いとされています。 数値が悪化する原因はさまざまですが、日常的に服用している薬が肝臓に負担をかけている可能性もあります。 本記事では、肝臓の数値が悪化する原因やそれを改善するための対策について解説します。 肝臓の数値を改善し、健康な状態を維持するためのポイントを押さえていきましょう。 薬による肝臓への負担と薬物性肝障害 私たちが薬を服用すると、その成分は体内で吸収され、血液を通じて全身に運ばれます。 その過程で重要な役割を担うのが「肝臓」です。 肝臓は、薬の成分を分解・代謝し、体にとって不要なものを無毒化する働きをしています。 しかし、薬の種類や飲み合わせ、服用量によっては、この代謝過程が肝臓にとって大きな負担になる場合があり、肝臓の数値に影響を与え、基準値より高くなることがあります。 肝臓の数値が上昇している場合、薬が原因となっている「薬物性肝障害」の可能性が考えられます。 自覚症状がないケースも多いため、定期的に肝機能をチェックし、薬の影響で肝臓に負担がかかっていないかを確認することが大切です。 薬物性肝障害とは? 薬物性肝障害とは、薬の影響によって肝臓の細胞が傷つき、肝機能に異常が生じる状態を指します。 薬そのものだけでなく、代謝の過程で発生する物質が肝細胞にダメージを与えることもあります。 症状には倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(おうだん)などがありますが、自覚症状がまったく現れないケースも少なくありません。 そのため、体調に異変がなくても、定期的に血液検査で肝臓の数値(AST・ALTなど)を確認することが大切です。 とくに、複数の薬を同時に服用している方や、長期間薬を使っている方は、知らず知らずのうちに肝臓に負担がかかっている可能性があります。 数値の異常が見つかった場合は、薬の中止や変更を検討する必要があるため、早期発見と医師のフォローが重要です。 肝機能を示す主な検査数値と薬が与える負担について 肝臓の状態を把握するには、血液検査で得られる肝機能の数値をチェックすることが重要です。 肝臓への薬の負担を把握するうえでも注目すべき指標は次の3つです。 AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP それぞれの数値の役割と、どのような薬が影響を及ぼすのか、詳しく解説します。 AST(GOT)とは? AST(GOT)は、肝臓に関するトラブルの初期発見に役立つ指標のひとつです。 主に肝臓や心臓、筋肉などに存在する酵素で、細胞がダメージを受けると血液中に漏れ出し、その数値が上昇します。 正常値の目安 :男性でおおよそ10~40 U/L、女性で10~35 U/L 上昇するケース:肝炎、アルコール性肝障害、筋肉疾患など ASTは、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)や抗生物質、抗てんかん薬などの使用によって上昇することがあります。 とくに高用量の解熱鎮痛薬は、肝臓への代謝負担が大きく、ASTが一時的に高くなる場合があります。 ALT(GPT)とは? ALT(GPT)は、主に肝臓に多く含まれている酵素で、肝細胞が損傷を受けた際に血中に放出されます。 ASTよりも肝臓に特化した指標とされており、肝機能をダイレクトに反映する重要な数値です。 正常値の目安:男性で10~45 U/L、女性で7~30 U/L 上昇するケース:脂肪肝、薬物性肝障害、ウイルス性肝炎など ALTは、脂質異常症の治療薬(スタチン系)や糖尿病治療薬(メトホルミン)、一部の抗生物質などで上昇することがあります。 また、サプリメントの過剰摂取もALT上昇の原因になる可能性があり、「健康のために摂ったつもり」が肝臓に負担をかけるケースもあります。 γ-GTPとは? γ-GTP(ガンマグルタミルトランスぺプチダーゼ)は、肝臓や胆道に関係する酵素で、アルコール摂取や薬物、胆道系の異常によって上昇しやすい数値です。 とくに、アルコール性肝障害との関連が深い指標です。 正常値の目安:男性で10~70 U/L、女性で10~40 U/L(施設によってやや異なる) 上昇するケース:アルコール性肝障害、胆道閉塞、脂肪肝など γ-GTPは、抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)や精神安定剤(バルビツール酸系)、一部の抗菌薬などで上昇することがあります。 また、鎮静剤や睡眠薬の長期使用でもγ-GTPが高くなる場合があります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 薬による肝臓の負担を軽減する方法 薬は正しく使えば健康の回復や症状の改善に大きな力を発揮しますが、使い方を誤ると肝臓に負担をかけてしまうこともあります。 本章では、薬の服用による肝臓への負担をできるだけ軽減するため、次の3つの方法を紹介します。 医師・薬剤師に相談しながら服用する 用法・用量を守る(過剰摂取しない) アルコールと併用しない 医師・薬剤師に相談しながら服用する 複数の薬を同時に使うことで、肝臓に過度な負担がかかることがあります。 薬を服用する際は、自己判断で市販薬やサプリメントを追加するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。 とくに持病がある方や長期間薬を使用している方は、定期的な血液検査で肝臓の数値を確認しながら、服薬を見直すことも検討しましょう。 用法・用量を守る(過剰摂取しない) 「早く治したいから」と、決められた用量を超えて薬を飲むことは非常に危険です。 解熱鎮痛薬や風邪薬などは市販でも手軽に手に入りますが、過剰摂取すると肝臓に強いダメージを与えることがあります。 薬は決められた量・タイミングで飲むことが、肝臓の負担を最小限に抑える基本です。 アルコールと併用しない アルコールは肝臓で分解されるため、薬と一緒に摂取すると肝臓への負担がさらに大きくなります。 解熱鎮痛剤や抗生物質など、肝臓に影響を与えやすい薬を服用している場合のアルコールの摂取は、数値異常や薬物性肝障害のリスクを高めることになります。 薬を服用中は、なるべくアルコールは控えるようにしましょう。 薬以外で肝臓に負荷がかかる要因 薬の服用だけでなく、日常生活の中にも肝臓に負担をかける要因は多く存在します。 代表的な要因は次のとおりです。 アルコールの過剰摂取 脂肪肝や肥満 睡眠不足や過労 サプリメント・健康食品の過剰摂取 上記の要因が重なることで、肝臓が処理しきれず、薬による影響がより強く出る可能性もあるため注意が必要です。 肝臓は自覚症状が出にくい「沈黙の臓器」ともいわれているため、気づかないうちにダメージが蓄積していることも少なくありません。 薬を安全に使うためにも、日常的に肝臓への負担を減らす意識を持つことが大切です。 肝臓の数値を正常化するためにできること 肝臓の機能は体全体の健康に大きな影響を与えるため、定期的に肝臓の状態をチェックし、必要な対策を講じることが重要です。 本章では、肝臓の数値を正常化するためにできることとして次の2つがあります。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓に優しい生活習慣を継続する それぞれについて、詳しく解説します。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓の数値を正常化するための第一歩は、健康診断で定期的に肝機能をチェックすることです。 肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少ダメージを受けていても自覚症状が出にくいため、異常があっても気づかないことがよくあります。 健康診断では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が肝臓の状態を把握する指標として確認されます。 もし検査結果で数値が基準値を超えていた場合は、原因の特定が重要です。 たとえば、薬の服用歴や飲酒の習慣、肥満の有無などを医師と一緒に振り返り、生活習慣や薬の見直し、再検査などの対策がとられます。 健康診断の結果は「見て終わり」にせず、早期に対策を講じることが大切です。 とくに、薬を継続して服用している人や肝臓に負担をかける生活習慣がある人は、年に一度の健康診断を習慣にすることで、肝機能の異常を早期にキャッチしやすくなります。 肝臓に優しい生活習慣を継続する 肝臓の数値を正常化するためには、生活習慣の改善が不可欠です。 まず、バランスの取れた食事を心がけ、肝臓に負担をかける脂肪分やアルコールの摂取を控えましょう。 脂肪肝や肥満は肝臓に大きな負担をかけるため、適度な運動を取り入れて体重管理を行うことも大切です。 また、睡眠は肝臓の修復を助けるため、質の良い睡眠を十分にとることもポイントです。 生活習慣を改善することにより、肝臓の機能が回復し、数値が正常範囲に戻ることが期待できます。 肝臓は自己修復力がある臓器なので、日々のケアを続けることで、肝機能が向上しやすくなります。 まとめ|肝臓の負担が少ない適切な食事・運動で異常数値を防ごう 肝臓は私たちの体内で薬やアルコール、老廃物の処理などを担う重要な臓器ですが、知らず知らずのうちに負担がかかっていることも少なくありません。 薬を服用している場合、肝臓はその成分を代謝・分解するために大きく働くことになり、負担が蓄積すると数値異常や薬物性肝障害のリスクも高まります。 肝機能の異常を防ぐためには、日々の生活習慣の見直しが何より大切です。 バランスの良い食事と脂肪・糖分・アルコールの過剰摂取を避けることで肝臓負担を軽減できます。 定期的な健康診断での数値チェックと異常時の早期受診も大切です。薬との付き合い方を見直し、肝臓に優しい生活を心がけましょう。 肝臓健康に不安がある方は、当院「リペアセルクリニック」での再生医療もご検討ください。専門医が個別に合わせた治療をご提案しています。ぜひご相談ください。
2022.03.25 -
- 肝疾患
- 内科疾患
脂肪肝の改善に向けて その原因と症状、治療法について解説します 肝臓に中性脂肪が貯留した状態を「脂肪肝」と言います。この疾患はメタボリック症候群に合併しやすいことが指摘されており、放置すると肝炎などを引き起こして重症化するため注意が必要です。 脂肪肝とは、一言で言うと肝臓内に中性脂肪を始めとした脂質成分などが異常蓄積する状態を指しており、通常では日々の生活習慣において栄養バランスの偏った食生活や慢性的な運動不足などが原因で引き起こされます。 一般的に、脂肪肝という病気には飲酒をしすぎる場合に発症するアルコール性、あるいはアルコールを多量に摂取していないけれども引き起こされる非アルコール性脂肪性肝疾患(略称:NAFLD)に分類されます。 このNAFLDは、さらに細かく分けると病状があまり進行しない種類の非アルコール性脂肪肝(略称:NAFL)と、その逆に肝炎へ進展しやすいことが問題視されている非アルコール性脂肪性肝炎(略称:NASH)に分類されます。 脂肪肝 アルコール性 過度の飲酒が原因 非アルコール性脂肪性肝疾患 略称:NAFLD 飲酒を原因としない 非アルコール性脂肪肝/略称:NAFL 症状が進行しずらい 非アルコール性脂肪性肝炎/略称:NASH 肝炎に進行しやすい 脂肪肝は基本的には無症状のままで経過することが多く、健康診断などで初めて指摘される方も少なくありませんが、本疾患を放置しすると約1~2割の頻度で「肝炎、肝硬変、肝細胞がん」へと病状が悪化するケースも散見されるため注意が必要です。 この病気は生活習慣と関連して発症することが多いことが判明しており、肝硬変などに進行していない状態であれば普段の生活習慣を見直すことで肝臓の機能が改善することも十分に期待できます。 今回は、脂肪肝とはどのような病気なのか、その原因、症状、検査、脂肪肝を改善するための情報を中心に詳しく解説していきます。 脂肪肝の原因 脂肪肝を引き起こす主要な原因としては過食と多量の飲酒習慣です。 それ以外にも、糖尿病、基礎疾患に対するステロイド剤の長期服用、栄養障害による代謝異常なども本疾患を発症させる原因になることが判明しています。 導入でも触れましたが、特にアルコールではなく過度の食事摂取などが原因で脂肪肝から肝炎や肝硬変に進展するタイプを「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」と呼称しており、近年では年々罹患率が増加していることから特に注目を浴びています。 アルコール性の脂肪肝に関しては当然のことながら過剰な飲酒習慣が継続されることによって発症すると伝えられている一方で、非アルコール性の脂肪肝ではその背景に肥満やメタボリックシンドロームなどが潜在して引き起こされることが通常です。 その他にも、やせ過ぎ、遺伝的な代謝疾患、妊娠を契機として様々な原因や経過によって脂肪肝が引き起こされることも報告されています。 脂肪肝の原因の一例 過食 過度の飲酒 糖尿病 ステロイド剤の長期服用 栄養障害(代謝異常) 肥満、メタボリックシンドローム 痩せすぎ、遺伝的代謝疾患、妊娠 その他 脂肪肝の症状 脂肪肝の初期には、ほとんど自覚症状はなく、顕著な症状が現れにくい状態でもあります。脂肪肝が悪化して、やがて肝炎を起こして肝硬変に進行して初めて食欲不振や倦怠感、右上腹部痛などの有意な症状が出現するようになる傾向があります。 これらの病気が進行すると、手足の浮腫所見や体が黄色く染まる黄疸、あるいは腹水貯留などの症状が出現しますし、仮に肝臓への血流が停滞して門脈圧が上昇しすぎると食道静脈瘤を形成して命に係わる場合も考えられます。 このように、脂肪肝は進行すると重篤で致命的な症状が現れる可能性がある疾患ですので、無症状でも指摘された際には放置することなく医療機関を受診するように心がけましょう。 脂肪肝の状況 近年の肥満人口の増加に伴って過剰な栄養摂取による脂肪蓄積を原因とする非アルコール性脂肪性肝疾患 (non‐alcoholic fatty liver disease:略称NAFLD) が世界的にみて患者数が増えていると言われています。 NAFLDの中でも単純な脂肪肝の場合には一般的に予後良好とされています。 ところが、肝臓レベルでの炎症や線維化を主徴とする過度のアルコール摂取歴が関与しない脂肪性肝炎 (non‐alcoholic steato‐hepatitis: 略称NASH)については肝硬変や肝細胞癌に進展する重症なタイプであると考えられています1)。 脂肪肝の検査 仮に健康診断などで脂肪肝を指摘されて医療機関を受診して実施された血液検査で肝数値などの異常所見が認められた場合には、肝臓の状態をより詳細に精査するために腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などを始めとした画像をもって評価が実行されるでしょう。 それ以外にも肝細胞を採取する肝生検という処置が行われて、それによって得られた細胞の特性を顕微鏡で詳しく調査することによって病気の進展度や悪性所見の有無などが確実にアセスメントすることができます。 基本的には、摂取したエネルギーが消費するエネルギーを上回ると余分なエネルギーが自然に発生して中性脂肪につくり替えられて肝臓にも貯蔵されることが知られていることから、肝細胞の30%以上で中性脂肪が沈着していると原則脂肪肝と診断されます。 ▼肝臓の再生医療について再生医療というアプローチもあります。 肝臓(肝炎・肝硬変)の再生医療・幹細胞治療 脂肪肝の改善に向けて 脂肪肝は、その原因や発症機序によって治療方針が異なります。生活で注意すべき視点も柔軟に変化させる必要があります。アルコールが原因で脂肪肝に罹患した場合には、当然ですが日々の生活においてアルコール摂取量を減らすことが肝要です。 また、非アルコール性脂肪性肝疾患のように肥満やメタボリックシンドロームなどが背景として存在している際は、運動して減量する、食事量を調整するなどの対策が必要となります。 脂肪肝の治療では、一度生活習慣を是正出来たとしても元通りの生活リズムに戻ってしまうと脂肪肝が再発してしまうこともあり、日常的に運動療法や食事治療などを楽しむ心意気を持ちながら、決して無理しない範囲で継続することがキーポイントとなります。 脂肪肝を指摘された際には、放置せずに早めに医療機関を受診して確実な治療に結び付けることが重要な視点となります。 アルコールが原因で脂肪肝に罹患した場合の改善ポイント 日々の生活においてアルコール摂取量を減らす 肥満やメタボリックシンドローム(非アルコール性脂肪性肝疾患)の改善ポイント 運動して減量する、食事量を調整する 生活習慣の見直しで好転しても元の生活リズムに戻らないようにする改善ポイント 日常的に運動療法、食事治療を楽しみ無理せず継続できるよう心がける まとめ・脂肪肝の改善に向けて その原因と症状、治療法について 今回は脂肪肝とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療、そして改善のポイントについて解説いたしました。 脂肪肝は、肝臓に中性脂肪や脂質などの成分が蓄積する状態でバランスが偏った食生活や運動不足が原因で発症します。 健康診断や人間ドックで肝機能の数値で異常が発見されることが多く、初期の段階ではほとんど自覚症状が無いのが特徴的ですが病状が進行すると倦怠感、腹部膨満感、食欲不振などの有意症状が出現する場合もあります。 この病気に対する基本的な治療策としては、主に生活習慣の改善、食事療法や運動療法になります。 そのたには定期的に主治医や、かかりつけ医と相談しながら肝機能の数値を検査して自分の状態を適切に把握していくことが改善に向けての重要な観点になります。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼以下にも脂肪肝に関する記事がございます 脂肪肝を改善するために食べてはいけないもの
2022.03.17 -
- 関節リウマチ
- お皿付近に違和感
- 内科疾患
関節リウマチは、関節の痛みや腫れを引き起こす慢性疾患で、日常生活に大きな影響を及ぼす場合もあります。 近年では、関節リウマチの治療法も進化し、とくに注射による薬物療法として高い効果が期待できる「生物学的製剤」の使用が広まりつつあります。 一方で、副作用についても気になるところです。 従来薬と比べてどう違うのか、どんな点に注意すべきなのかを知っておくことはとても大切です。 今回は、関節リウマチの注射治療における副作用や生物学的製剤と従来薬との違いについてわかりやすく解説していきます。 関節リウマチの注射治療の役割と主な副作用 関節リウマチは、免疫の異常によって関節が慢性的に炎症を起こす病気です。 放っておくと関節の変形や機能障害を引き起こし、日常生活にも支障をきたす可能性があります。 そのため、早期の治療と炎症のコントロールが非常に重要とされています。 関節リウマチの治療には、内服薬に加えて注射薬が使われるケースが増えてきました。 注射治療が選ばれる主な理由には、以下のような点があります。 即効性や効果の持続時間が期待できる 内服薬に比べて消化器への負担が少ない 自己注射が可能な薬もあり、通院の負担を減らせる とくに重症例や、内服薬だけでは効果が不十分な場合には、生物学的製剤やステロイド注射による治療が効果的な選択肢となります。 生物学的製剤は、免疫システムの特定の部分だけをターゲットにして炎症を抑える先進的な薬剤です。 一方、ステロイド注射は急性の炎症を素早く鎮める目的で使用され、特に痛みの強い関節に直接注入されることが多いのが特徴です。 こうした注射薬は高い治療効果が期待できる反面、副作用にも注意が必要です。 たとえば、注射部位に腫れや赤みが出ることがあり、発熱や頭痛、倦怠感などの全身症状が出る場合もあります。 副作用の出方は個人差があり、すべての人に起こるわけではありませんが、使用前には医師と十分に相談し、定期的な経過観察が欠かせません。 関節リウマチの治療で使われる生物学的薬剤とは? 関節リウマチの治療は、主に抗リウマチ薬などの従来薬が中心でしたが、近年では「生物学的製剤」と呼ばれる新しい治療薬が広く使われるようになってきました。 本章では、以下3つの項目について解説します。 生物学的製剤と従来薬との違い 生物学的製剤の種類 どのように体に作用するのか 生物学的製剤と従来薬との違い 従来薬は、免疫全体の働きを広く抑制して炎症をコントロールする薬で、内服薬を中心とした治療方法のため、効果の発現に時間がかかる傾向があります。 一方、生物学的製剤は、炎症に関与する特定の物質(サイトカイン)や細胞にピンポイントで作用するため、即効性があり、より高い効果が期待されます。 しかし、生物学的製剤は注射や点滴による投与が必要で、治療費も高額になる傾向があります。 そのため、まずは従来薬で治療を開始し、効果が不十分な場合に生物学的製剤へ切り替えるという流れが一般的です。 生物学的製剤の種類 関節リウマチの注射治療に使われる生物学的製剤には、いくつかのタイプがあり、それぞれ炎症の原因となる免疫の働きに対して、異なるアプローチで作用します。 代表的な生物学的製剤は以下の4つです。 抗TNFα抗体(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど) 炎症を引き起こす「TNF-α」という物質をブロックし、関節の腫れや痛みを抑えます。 IL-6阻害薬(トシリズマブなど) 炎症に関与する「IL-6」というサイトカインの働きを抑制します。 T細胞共刺激阻害薬(アバタセプトなど) 免疫細胞同士の過剰な活性化をブロックし、炎症の連鎖を断ちます。 B細胞抑制薬(リツキシマブなど) 抗体を産生するB細胞の働きを抑えて免疫反応を和らげます。 それぞれの製剤には特徴や適応があり、患者様の病状や体質、他の合併症の有無などに応じて使い分けられます。 どのように体に作用するのか 生物学的製剤は、関節リウマチの炎症に関わる免疫反応の一部を「選択的に抑える」ことで効果を発揮します。 たとえば、関節内で過剰に分泌されるサイトカインに結合してその作用をブロックしたり、特定の免疫細胞の働きをコントロールすることで、関節の腫れや痛みを軽減します。 このような選択的な作用により、高い治療効果が得られる一方、免疫の一部を抑えるために感染症への注意が必要です。 治療を受ける際は、定期的な血液検査や医師の管理のもと、安全性にも十分配慮した継続的なフォローが行われます。 \まずは当院にお問い合わせください/ 関節リウマチ注射の副作用と生物学的製剤の注意点について 関節リウマチの注射治療として使用される生物学的製剤は、効果が高い反面、副作用や注意すべき点もあります。 ここでは、注射治療にともなう副作用やリスクについて詳しく解説します。 関節リウマチ注射のよくある副作用 関節リウマチの注射治療で比較的よくみられる副作用には、以下のようなものがあります。 注射部位の反応(発赤、腫れ、かゆみ、痛みなど) 倦怠感や軽度の発熱 頭痛、吐き気、筋肉痛 これらの副作用は、多くの場合は一時的で、自然に治ることがほとんどです。 とくに皮下注射(薬液を皮膚と筋肉の間にある皮下組織に注入する方法)の生物学的製剤では、注射部位に炎症反応が出ることがありますが、冷やすなどの対処で落ち着くこともあります。 関節リウマチ注射のまれに起こる重篤な副作用 一方で、まれではありますが、注意が必要な重篤な副作用も存在します。 代表的なものは以下の4つです。 感染症のリスク増加(肺炎、尿路感染症、帯状疱疹など) アレルギー反応(アナフィラキシー):急な呼吸困難や発疹、血圧低下などを伴うことがある 肝機能障害や血液異常(肝酵素の上昇、白血球や血小板の減少) 心不全の悪化や間質性肺炎の誘発(既往がある場合) 上記の副作用は頻度こそ低いものの、早期に対応することが重要です。 症状が出た場合は、自己判断で放置せず、必ず主治医に相談しましょう。 関節リウマチ注射の副作用が出やすいタイミングやリスク要因 副作用が出やすいタイミングとしては、投与開始直後や投与変更後の数回目までがとくに注意が必要です。 初回投与では、体が薬に慣れていないため、副作用が出やすくなる傾向があります。 また、以下のようなリスク要因がある場合、副作用の出現や重症化の可能性が高まります。 高齢者 免疫力が低下している人(糖尿病や慢性疾患がある場合など) 他の免疫抑制薬を併用している場合 感染症の既往がある、または現在感染している場合 肝機能や腎機能に問題がある場合 生物学的製剤は、免疫機能に直接働きかける薬のため、「副作用が出るかも」と事前に想定しておくことが大切です。 治療開始前には十分な検査や医師との相談を行い、使用中も定期的なモニタリングを続けることで、安全に治療を継続することができます。 \まずは当院にお問い合わせください/ 関節リウマチ注射の副作用に対する予防策と対処法 関節リウマチの注射治療には高い効果が期待できますが、副作用が心配という声も少なくありません。 副作用を防ぐため、治療前には血液検査や感染症の有無を確認する検査が行われます。 肝機能や腎機能のチェック、結核やB型肝炎などの検査を通して、安全に治療を始められるよう準備が整えられます。 注射後に、注射部位の赤みやかゆみ、軽い発熱などが出ることがありますが、多くは一時的なもので心配はいりません。 ただし、息苦しさや高熱、強い倦怠感などが出た場合は、副作用の可能性もあるため、早めに医師へ相談しましょう。 また、副作用が出やすいのは治療開始初期や、薬を変えた直後のため、体調の変化を記録し、気になる症状があれば遠慮せず医師に伝えることが大切です。 事前の検査と早めの対応によって、多くの副作用は予防・軽減できます。 正しい知識と備えで、安心して注射治療に取り組みましょう。 まとめ|関節リウマチ注射の効果と副作用を正しく理解して治療に臨もう 関節リウマチの注射治療は、症状の進行を抑え、関節の機能を保つために非常に有効な手段です。 生物学的製剤の登場により、これまでコントロールが難しかった症状にも対応できるようになってきました。 一方で、副作用のリスクがあることも事実です。 しかし、治療前の適切な検査や準備、治療中の体調管理によって、多くの副作用は予防・軽減できます。 また、万が一症状が現れた場合でも、早期に対応することで重症化を防ぐことが可能です。 大切なのは、注射治療の効果と副作用の両方を正しく理解し、自分の体と向き合いながら医師と協力して治療を進めることです。不安なことがあれば、一人で抱え込まず、医師に相談しましょう。 しっかりと情報を得て備えることで、安心して治療に臨み、日常生活の質を高める一歩につながります。
2022.02.25 -
- 糖尿病
- 内科疾患
妊娠中には、いろいろと気を付けなければならないことがあります。妊娠糖尿病もその1つです。 もしも、妊娠中に母親が糖尿病になったら、生まれてくる子ども(胎児)や母体にどういった影響があるのか不安になるかと思います。 この記事では、妊娠中に診断される妊娠糖尿病の胎児への影響と、その治療法・予防法について詳しく解説します。また、妊娠糖尿病が母体に与える影響や産後の注意点についても触れていきます。 妊娠糖尿病の胎児への影響 妊娠糖尿病は胎児にさまざまな悪影響を及ぼす危険性が指摘されています。 また妊娠中だけでなく、出産後の子どもに合併症が出てしまう可能性があります。 本項目では妊娠、出産など各時期に起こる可能性のある危険性を紹介します。 さまざまな合併症を引き起こす可能性が高まる 妊娠中に高血糖状態が続くとお腹のなかの胎児も高血糖になり、以下のような合併症を引き起こすことがあります。 子宮内胎児死亡 新生児低血糖 巨大児 低出生体重児 多血症 特発性呼吸促拍症候群 頭蓋内出血 鎖骨骨折 頭血腫 上腕神経麻痺など これらの合併症を予防するためには、妊娠中の血糖値を適切にコントロールすることが重要です。 妊娠中期以降には子宮内胎児死亡の可能性が増加 妊娠糖尿病を患った場合、妊娠32週ごろから突然子宮内胎児死亡を起こすことがあります。36週以降はその頻度が上昇するため、適宜検査を行い、問題がある場合入院処置が必要です。 難産になる可能性が上がる 妊娠糖尿病は難産のリスクも上がることが分かっています。 巨大児や奇形児といった合併症を引き起こした場合、出産時に頭が出た後肩がひっかかってしまい、うまく産道を通れない「肩甲難産」を起こすリスクが高くなります。 また、妊娠糖尿病による母体の高血圧、臓器障害などから、帝王切開分娩の発生率も上がってしまいます。 出産後の子どもへの影響 妊娠糖尿病中は血糖値が高い状態が続き、体内をめぐるブドウ糖の量が増えてしまいます。その結果胎児にもブドウ糖がめぐり、血糖値が上がります。 早い段階で治療に臨めば影響も少なく済みますが、妊娠糖尿病のまま放置してしまうと胎児も高血糖がつづいてしまいます。 血糖値が高いまま生まれた子どもは将来的にメタボリックシンドロームになりやすいという報告も上がっています。生活習慣病、動脈硬化などが発症しやすくなってしまう危険性があるため注意が必要です。 妊娠糖尿病とは? 妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見または発症した糖代謝異常のことを指します。 「明らかに糖尿病である」と妊娠中に診断された場合は厳密には妊娠糖尿病とは呼ばず、「妊娠中の明らかな糖尿病」として区別されます。また、妊娠前に発症している糖尿病は「糖尿病合併妊娠」と呼ばれます。 妊娠糖尿病の原因 妊娠すると胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリン抵抗性が強くなってしまいます。インスリンは血糖値を正常にコントロールする働きを担っているため、インスリン抵抗性が上がり働きが弱くなると、血糖値が上がりやすくなります。 妊娠糖尿病を発症すると、母体だけでなくお腹のなかの胎児も高血糖になるため、さまざまな合併症を発症する危険性が高まってしまいます。 妊娠糖尿病の診断方法と診断基準 妊娠糖尿病は、スクリーニング検査と75gブドウ糖負荷試験の2段階の検査で判断します。 スクリーニング検査 妊娠糖尿病のスクリーニング検査はすべての妊婦を対象に妊娠初期と中期に行う検査で、妊娠糖尿病の可能性がある人を抽出する目的で行われます。 妊娠初期の随時血糖値の基準は検査施設によって95mg/dlまたは100mg/dlと異なります。また、妊娠中期の随時血糖値の基準は100mg/dl、50gブドウ糖負荷試験の基準は140mg/dlとなります。 妊娠糖尿病スクリーニング検査で陽性と判断された方は次で説明する75gブドウ糖負荷試験に進みます。 日本産科婦人科学会が推奨している妊娠糖尿病スクリーニング検査 妊娠初期:随時血糖値 妊娠中期:随時血糖値あるいは50gブドウ糖負荷試験 75gブドウ糖負荷試験 妊娠糖尿病スクリーニング検査で陽性が出た場合、75gブドウ糖負荷試験を行います。75gブドウ糖負荷試験では、以下の基準を1つでも満たした場合に妊娠糖尿病と診断されます。 試験基準 空腹時血糖値 ≧92mg/dl 1時間後の血糖値≧180mg/dl 2時間後の血糖値 ≧153mg/dl 妊娠糖尿病の治療 妊娠糖尿病と診断されたら、「血糖値コントロール」に取り組まねばなりません。ただし、妊娠中は運動療法を行うことが難しいため、主として「食事療法」と「薬物療法」を行うことになります。 食事療法で注意すべき点 妊娠糖尿病の治療は食事療法で血糖コントロールを行うことが基本になります。 妊娠中は食後高血糖を起こしやすい傾向がありますが、一方で長時間の空腹状態ではインスリン不足により体内でケトン体が作られ、糖尿病ケトアシドーシスを引き起こすリスクが高まります。特に妊娠中は体調の変化が激しいため、規則正しい食事が大切です。 薬物療法で注意すべき点 食事療法を行っても血糖値のコントロールがうまくいかない場合は薬物療法を行います。 妊娠中の薬物療法では経口血糖降下薬ではなく、インスリン治療を行うことになります。 通常のインスリン療法では血糖値コントロールがうまくいかないという場合はインスリンの基礎量や追加量を補充する方法を取ることがあります。これを強化インスリン療法(インスリンの頻回注射療法やインスリン持続皮下注入療法のこと)といいます。 妊娠糖尿病を早期発見・予防するには 妊娠糖尿病を予防できれば、母体や胎児への影響を減らすことにつながります。 そのためには、まず妊娠糖尿病にかかりやすい人の体質や、悪影響を与える生活習慣を理解しておくことが重要です。 以下で妊娠糖尿病の早期発見、予防に必要な項目を詳しく解説します。 妊娠糖尿病にかかりやすい人の特徴を理解する 以下の体質を持つ人は妊娠糖尿病にかかりやすいと言われています。 肥満 家族に糖尿病の人がいる 35歳以上の妊娠 尿糖の陽性が続く 羊水過多 原因不明の流産、早産、死産の経験がある人 妊娠高血圧症候群の人、もしくは既往歴がある人 もしいずれかの項目に該当しているようであれば注意が必要です。妊娠糖尿病を予防するためには、下の項目を参考に生活習慣の見直しを行う必要があります。 生活習慣の見直し 妊娠中はインスリンの分泌量が増えるため、空腹状態をなるべく作らないことが大切です。空腹を感じた場合は、野菜や豆類、鶏のささみなど良質のたんぱく質を摂るようにしましょう。 また、食事は食べる順番も大切です。野菜から食べ始め、汁物、メイン、炭水化物という順番で食べることで血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。 妊娠糖尿病は通常の糖尿病と同様に、生活習慣だけでなく遺伝的要素も関係するといわれています。そのため上記で紹介したような方法を取り入れたにも関わらず妊娠糖尿病を発症したという場合も、あまりストレスに感じる必要はありません。 食事以外には適度な運動も大切です。血流を改善するウォーキングやヨガ、エアロビクスなどの有酸素運動が適切です。しかし、過度な運動はむしろ逆効果になる可能性もあるため、医師の許可を得て行いましょう。 定期健診の受診 妊娠糖尿病は早期発見が大事な病気です。胎児に影響が及ばないよう定期的に妊婦検診を行いましょう。 定期健診を行うことは、正しい生活習慣の維持にも有効です。 出産後、妊娠糖尿病の影響 出産後は急速にインスリン必要量が減少します。そのため、薬物療法を行っている人はインスリンの量を血糖値に合わせて調整する必要があります。 また、妊娠糖尿病患者の方は、正常な妊婦と比べて将来糖尿病を発症する頻度は41~62%だといわれています。(文献1) 産後6~12週間後にブドウ糖負荷試験を受け、妊娠糖尿病が治っているか確認し、その後も定期的に検査を受けることが重要になります。 産後に正常値に戻った人でも、最低でも3年間は産後のフォローアップが必要です。 授乳中の食事は妊娠前の摂取エネルギーから約450kcal程度増やすことを目安にしましょう。これは授乳のための付加エネルギーですので、授乳が終われば元の摂取エネルギーに戻す必要があります。 また、妊娠糖尿病を発症した人がそのままメタボリックシンドロームを起こす例もあります。上記で紹介した治療や予防を行いながら、産後も注意していく必要があります。 まとめ|妊娠糖尿病が胎児や母体に与える影響について解説|治療・予防法も紹介 妊娠前や妊娠中に糖尿病と診断されたときの対処法と母体や胎児への影響について説明しました。 妊娠糖尿病は、妊娠中に発症する糖代謝異常であり、母体や胎児にさまざまな影響を及ぼします。発症すると母体だけでなく、胎児にも影響をおよぼします。また、妊娠中は運動療法が困難なうえ、使用できる薬が限定されるため、治療は慎重に行う必要があります。 妊娠糖尿病は、妊娠中だけでなく出産時、出産後にもさまざまなリスクを引き起こす可能性が高い病気です。 予防のためにも妊娠中の食事や体調管理は特に気を使い、正しい生活習慣を心がけましょう。また、定期的な検査や医師との相談が大切です。 妊娠糖尿病と診断されたら、まずは食事療法や薬物療法を行いましょう。特に妊娠中は運動療法が難しいため、食事やインスリン治療が主な方法となります。 また、糖尿病患者が妊娠を望む場合は血糖コントロールに努め、医師と相談しながら計画的に妊娠することも重要です。妊娠糖尿病にかかりやすい人の特徴についてもまとめていますので、妊娠前に確認することをおすすめします。 妊娠糖尿病患者は産後の糖尿病発症率が高いため、産後も定期的に検査を受けましょう。 当院「リペアセルクリニック」では糖尿病に対する治療として、再生医療を行っております。 幹細胞による再生医療は、血糖値や肝機能値の改善にアプローチします。 再生医療について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 平松 祐司. 「妊娠糖尿病」 岡山医学会雑誌, 2011年, 123(3), pp. 243-245. https://www.jstage.jst.go.jp/article/joma/119/1/119_1_79/_pdf (最終アクセス:2025年3月25日)
2022.02.22 -
- 糖尿病
- 内科疾患
「糖尿病の発症率が高い都道府県はどこ?」 「自分の住んでいる地域のリスクを知りたい…」 このような疑問をお持ちではないでしょうか? 糖尿病は生活習慣によって発症リスクが変わる病気です。そのため、地域ごとに患者数や割合に差があり、特定の都道府県では発症率が高い傾向にあります。 本記事では、最新の糖尿病患者数が多い都道府県ランキングを紹介します。地域ごとの特徴や予防策についても解説するので、糖尿病対策を考えている方はぜひ参考にしてみてください。 【最新版】糖尿病の都道府県ランキング 糖尿病の都道府県別ワースト・トップランキングを見ていきましょう。 以下は、厚生労働省が報告している都道府県ごとの糖尿病による死亡率のワースト・トップランキングです。 ワースト(死亡率が高い都道府県の順位)※数値は死亡率 トップ(死亡率が低い都道府県の順位)※数値は死亡率 1位 青森県:20.2% 神奈川県:7.8% 2位 徳島県:17.9% 愛知県:7.9% 3位 香川県:17.8% 東京都:8.8% 参考:厚生労働省|平成30年人口動態統計「主な死因の死亡数・死亡率(人口10万対)都道府県別」 糖尿病の死亡率が高いワースト1位の都道府県は、青森県でした。次いで、徳島県、香川県と続きます。 一方、死亡率が低いトップ1位の都道府県は、神奈川県、愛知県、東京都となっています。 以下で、ワースト1位の青森県と、トップ1位の神奈川県について詳しく見ていきましょう。 ワースト1位は青森県|考えられる原因は? 青森県では、冬の厳しい寒さに備えるために、塩分を多く含む食事が長年親しまれてきました。 たとえば、保存食として塩漬けの魚や漬物を食べる文化が根付いています。これにより、食塩の摂取量が増え、糖尿病のリスクが高まります。 また、冬季は積雪が多く、外での運動が難しいのが現状です。運動不足は血糖値を下げる働きが低下し、糖尿病の発症や悪化の原因となります。 青森県では糖尿病の予防と管理のために、公式ホームページで糖尿病の基礎知識やリスクについての情報を発信しています。さらに「青森県糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し、糖尿病による腎症の重症化を防ぐための取り組みを強化しました。このプログラムは令和4年3月24日に改定され、より効果的な対策が進められています。 トップ1位は神奈川県|独自の取り組みは? 神奈川県がトップである背景には、県民の健康意識の高さと、行政の積極的な取り組みが関係していると考えられます。 神奈川県では、喫煙率が全国平均よりも低く、日々の運動量も多い傾向があります。(文献1) たとえば、歩数の平均値は全国平均を上回っており、女性は全国でもっとも歩いていることが分かっています。(文献1) こうした生活習慣が、糖尿病の発症リスク軽減につながっているのでしょう。 神奈川県は「かながわ糖尿病未病改善プログラム」を打ち立て、市町村や医療機関と連携し糖尿病が重症化する前の予防に力を入れています。 11月14日の世界糖尿病デーには、シンボルマークであるブルーサークルにちなみ県内5カ所の建物をブルーライトで照らし、糖尿病予防の重要性を広く伝えています。 こうした多角的な取り組みが、神奈川県民の糖尿病発症率を抑制しているのでしょう。 都道府県によって糖尿病の死亡率に差がある理由 糖尿病の死亡率は、都道府県ごとに大きな差があります。その理由には、食生活や生活習慣の違いが関係しています。 塩分や糖分の多い食生活 運動不足になりやすい環境 飲酒量 喫煙率 それぞれの要因が糖尿病のリスクにどのように影響するのかを見ていきましょう。 塩分や糖分の多い食生活 塩分や糖分の摂り過ぎは高血圧および糖尿病のリスクを高めます。 糖尿病死亡率ワースト1位の青森県は、野菜の摂取量は多いものの、塩分摂取量が男女ともに全国平均を上回っています。 これは、青森県の伝統的な食文化である塩分の多い保存食や、濃い味付けの料理が影響していると考えられるでしょう。 運動不足になりやすい環境 運動不足も糖尿病のリスク要因です。運動しないと、血糖値をコントロールしにくくなるためです。 地方は車社会であり、日常的に体を動かす機会が少ない傾向にあります。糖尿病の死亡率ワースト1~3位である青森県・徳島県・香川県は、いずれも地方に該当します。また、雪国である青森県は、冬期間は屋外での運動が難しく、室内で過ごす時間が増えるでしょう。 これらの環境要因が、地域住民の運動不足を招き、糖尿病のリスクを高めていると考えられます。 飲酒量 アルコールの過剰摂取は、肝臓や膵臓に負担をかけ、糖尿病発症のリスクがあると知られています。 お酒には糖分が含まれている種類も多いため、過度な飲酒は血糖値の上昇につながります。 糖尿病死亡率ワースト1位の青森県は、成人1人当たりの酒類販売(消費)数が全国2位と、飲酒量が多い県です。(文献2)飲酒が習慣化している地域では、糖尿病の発症率も高くなる傾向にあります。 喫煙率 喫煙は、血管を収縮させて血圧を上昇させるため、糖尿病のリスクを高めます。また、血管を傷つけることでインスリンの働きが弱まり、発症率が高まるリスクもあります。 糖尿病死亡率ワースト1位の青森県は、喫煙率が全国で10位以内です。運動不足や食生活の問題に加え、喫煙による健康への悪影響が懸念されます。 日本における糖尿病患者数の推移 厚生労働省によると2023年10月時点の日本の糖尿病患者数は218万人を超えていることが報告されています。(文献3) また、以下のグラフから、糖尿病は高齢になるにつれて発症しやすい病気だとわかります。 出典:厚生労働省|国民健康・栄養調査「糖尿病が強く疑われる者の割合」 日本透析学会によると1983年に5万3,017人だった透析患者数が2023年には34万3,508人にまで増加しており、原因疾患の約4割が糖尿病性腎症であることがわかっています。(文献4) 糖尿病の患者数を増やさないための動き 厚生労働省は、糖尿病をはじめとする生活習慣病を防ぐために、健康づくりを進める取り組みをおこなっています。 具体的には、基本方針を決めて、以下9分野で70項目の具体的な目標設定を定めています。(文献5) 栄養・食生 身体活動、運動 休養、こころの健康づくり たばこ アルコール 歯の健康 糖尿病 循環器病(脳卒中を含む) がん 糖尿病を増やさないための取り組みは「栄養・食生活」分野では「野菜の1日当たり平均摂取量350g以上」、「身体活動・運動」分野では「日常生活における歩数(男性)9,200歩以上」などです。 なお、糖尿病の治療においては再生医療も選択肢として挙げられます。体内の幹細胞を点滴投与して、すい臓・血管の機能再生を促し糖尿病治療を進めます。 再生医療について詳しく知りたいという方は、メール相談、オンラインカウンセリング も承っておりますので、ぜひご活用ください。 まとめ|最新の糖尿病における都道府県ランキングをチェックして健康の意識を高めよう 都道府県ごとの糖尿病における死亡率や糖尿病患者数の推移を見てきました。 地域によって、食生活や運動習慣に差があり、それによって糖尿病の患者数も変わる傾向があります。 糖尿病は早い段階で発見し、治療に取り組めば健康な人と変わらない生活を送れる病気です。 糖尿病の患者数の多い地域に住んでいたとしても、早い段階で食習慣を改善し、積極的に検診を受ける意識を持てば、糖尿病の予防や進行の抑制につながります。 健康意識を高めて、糖尿病の対策を進めていきましょう。 当院リペアセルクリニックでは、糖尿病の症状や治療法についてのご相談を受け付けております。メール相談やオンラインカウンセリングより気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査」 https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf (最終アクセス:2025年2月21日) (文献2) 国税庁「令和3年度成人1人当たりの酒類販売(消費)数量表(都道府県別)」 https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2023/pdf/0035.pdf (最終アクセス:2025年2月21日) (文献3) 厚生労働省「推計患者数」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/suikeikanjya.pdf (最終アクセス:2025年2月21日) (文献4) 日本透析医学会雑誌「わが国の慢性透析療法の現況」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/57/12/57_543/_article/-char/ja (最終アクセス:2025年2月21日) (文献5) 厚生労働省「健康増進法の概要」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/dl/s1202-4g.pdf (最終アクセス:2025年2月21日)
2022.02.21 -
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2024年11月に発表された「国民健康・栄養調査」によれば、糖尿病の疑いが強い人は成人男性の16.8パーセント、女性は8.9パーセントにものぼります。(文献1) 糖尿病は完治しない病気であるといわれていますが、筋トレやウォーキングなどの運動を日常に取り入れることで、薬のみに頼らずとも症状を改善していくことは可能です。 この記事では、筋トレをはじめとする運動療法が糖尿病の改善につながる理由、糖尿病の方におすすめな運動方法を紹介しています。 糖尿病の完治は難しいが筋トレで改善が目指せる まず重要なポイントとして、糖尿病は完治する病気ではありません。 これは、血糖値が上昇しやすい代謝特性や加齢による生理的変化を根本的に変えることができないためです。 しかし、血糖値が上がらないよう生活習慣の見直しを続けることで、薬に頼らずに血糖値を下げ「寛解(一時的に症状が軽減・消失した状態)」を目指すことはできます。 薬に頼らない治療法には、筋トレやウォーキングなどの「運動療法」、食生活を見直す「食事療法」が主に挙げられます。 糖尿病の改善に筋トレが有効な理由 運動療法は、2型糖尿病を患っている人にとって重要な治療のひとつです。 日本糖尿病学会が発表しているガイドラインによると、運動療法を取り入れることで、以下の症状が改善するとされています。(文献2) 血糖コントロールの改善 肥満 内臓脂肪の蓄積 インスリン抵抗性 脂質異常症 高血圧症 慢性炎症 うつ状態 認知機能障害 上記は有酸素運動、筋トレ(無酸素運動)どちらを行っても得られる効果です。どちらか一方を行うより、有酸素運動と筋トレ(無酸素運動)を組み合わせることでさらに効果が上がることが報告されています。 さらに、高齢者の糖尿病患者の人は非糖尿病患者と比べて筋肉量の低下が著しいことが指摘されています。 有酸素運動の実施が困難な高齢者の人にとって筋トレ(無酸素運動)は有効な手段のひとつだといえるでしょう。 糖尿病は筋力の低下を引き起こす 糖尿病の改善に筋トレが有効な理由として、糖尿病を患っている人は非糖尿病患者と比べ筋肉量が減りやすいという点が挙げられます。 糖尿病は血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが弱くなることで発生します。 インスリンは血糖値のコントロールだけでなく、細胞の成長を促す特性も備えています。インスリンの働きが弱くなることによって、細胞の成長も低下し、筋肉にも影響を与えてしまうのです。 さらに、神戸大学の研究では、血糖値の上昇によって発生するKLF15というタンパク質によって筋肉の成長が抑制され、筋肉量の減少を起こしていることが明らかになりました。 健康な人は、KLF15を分解し量を減少させるWWP1というタンパクの一種が発生することで筋肉量の低下を防いでいます。しかし、糖尿病の人は血糖値の上昇によりWWP1が減少してしまうため、筋肉量が落ちてしまうのです。(文献3) 上記の理由からも、能動的に筋トレを行うことが重要であるとわかります。 体重のコントロールの必要性!肥満の悪循環を知る 糖尿病の寛解を目指す臨床試験「DiRECT」がイギリスで行われ、食事療法と運動療法をしっかり行い、体重をコントロールすることで2型糖尿病患者の半数近くは「寛解(症状が軽減・消失した状態)」を維持できることがわかりました。 では、なぜ食事療法と運動療法と体重コントロールだけで、薬物を使わず「寛解」を達成できたのかを解説します。 暴飲暴食や運動不足が続くと、全身に脂肪がたまり、肝臓にも脂肪がたまります。脂肪がたまった肝臓は働きが低下します。肝臓の働きが低下するとインスリンへの体の反応が鈍くなることがわかっています。これを「インスリン抵抗性」といいます。インスリン抵抗性が強まると、体は大量のインスリンを必要とするようになります。 すると、すい臓は「フル稼働」でインスリンをつくろうとするので、次第に疲弊してインスリンの分泌に支障をきたすようになります。インスリンの分泌が減ると、さらに肝臓に脂肪がたまるので、インスリン抵抗性がさらに強まってしまうのです。 この悪循環を断ち切るには、食生活と運動不足を改善し、脂肪がたまらないように肥満を解消する必要があります。 糖尿病の悪循環(断ち切ること) 暴飲暴食、運動不足で全身に脂肪がたまる 肝臓に脂肪がたまり、肝臓の働きが低下 インスリン抵抗性が発生:インスリンへの体の反応が鈍くなる インスリン抵抗性が強まる:大量のインスリンが必要となる すい臓が最大限に働いてインスリンをつくる 疲弊し、インスリンの分泌に支障をきたす インスリンの分泌が減ると、さらに肝臓に脂肪がたまる インスリン抵抗性がさらに強まる>ますます悪化 糖尿病の悪循環を断ち切るには肥満の解消が必要 2型糖尿病の改善には、上記の悪循環を断ち切ることが必要です。悪循環のメカニズムを知れば、「体重コントロール(脂肪を減らす)」によって症状を緩和できることが理解できると思います。 体重コントロールとは、標準体重(身長(m)×身長(m)×22)に近づけることです。 糖尿病の場合、標準体重と比べてやせている人より、太っている人のほうが問題になります。 食事量のコントロールも効果的ですが、脂肪を燃焼させるための筋肉がなければ長期的な改善は難しいといえるでしょう。 糖尿病を改善するおすすめの筋トレ方法を紹介 糖尿病の改善のために推奨されている筋トレ方法について、厚生労働省が推進している「2型糖尿病の人を対象にした運動プログラム」から抜粋して紹介します。 運動療法は主治医と相談の上で行ってください。代謝のコントロール状態や心疾患などの合併症、整形外科的疾患による運動の制限が必要な場合があります。 有酸素運動 有酸素運動はインスリンの働きを強め、糖の流れを改善してくれます。 ウォーキング トレッドミル エアロバイク エアロビクス ヨガ 水中歩行 などが推奨されています。運動の頻度は週に150分以上の中等度~高強度の運動がガイドラインでは推奨されていますが、週30分~100分程度の運動でも血糖改善効果が出ていることがわかっています。(文献2) 無理のない範囲で取り入れてみてください。 有酸素運動に併せて筋トレ(無酸素運動)を行う 有酸素運動と併せて筋トレ(無酸素運動)を行うことで、糖尿病の改善効果をさらに高めることができます。 糖尿病患者の方におすすめしたいのは、大きな筋肉を鍛えるトレーニングです。 大きな筋肉として挙げられるのは「胸」「背中」「下半身」の3カ所です。ダンベルなどの重りを使用し、適切なフォームで行いましょう。 動作中に重りをあげる際は息を吐き、重りを下げる際は息を吸うと筋肉の成長に効果的です。 各部位のトレーニングでは以下の種目がおすすめです。 胸筋 ダンベルフライ:仰向けに寝て、両手のダンベルを胸の上で開閉させる運動 チェストプレス:仰向けで両手のダンベルを胸から上へ押し上げる運動 水中で腕を開閉する運動 背筋 ダンベルローイング:前かがみになり、ダンベルを腰の高さまで引き上げる運動 ラットプルダウン:上部のバーを肩の高さまで引き下げる運動 バックエクステンション:うつ伏せで上半身を持ち上げる運動 下半身 ダンベルスクワット:両手にダンベルを持ち、膝を曲げ伸ばしする運動 レッグプレス:足で重りを押し出す運動 ダンベルを使用する運動と考えるとハードルは高いですが、自重のトレーニングでも十分効果は得られます。 ジムに行くことが困難だったり、ダンベルを持っていないという人は、ダンベルの応用として水を入れたペットボトルを使うこともおすすめです。 医師と相談し、自分に合った筋トレを選ぶ 糖尿病の改善のため運動療法に取り組みたくても、体調面の制約や時間的な余裕がない方もいるでしょう。 ある研究では短い運動時間でも血糖値の抑制は可能であるという報告が上がっています。まずは散歩や軽いストレッチなど、負担の少ない運動から始め、徐々に強度や時間を増やしていきましょう。 いきなりの高負荷な運動はけがのリスクを高めてしまうため注意が必要です。 運動を始める前には必ず主治医に相談し、ご自身の状態に適した運動の種類や強度、頻度について指導を受けることが重要です。 筋トレ以外の治療法 ここまで運動療法を中心に紹介しましたが、運動療法以外にも糖尿病の改善に効果的な治療法として食事療法があります。 また、近年は「再生医療」の注目も高まっています。それぞれの治療法についても理解を深めていきましょう。 糖尿病には筋トレだけでなく食事療法も効果的 糖尿病の改善には体重コントロールが必要ですが、運動療法だけでは十分とは言えません。適切な筋トレや有酸素運動を行っていても、食生活の改善がなければ摂取カロリーが過剰なままとなり、十分な効果が得られないことがあります。運動療法と食事管理を組み合わせることで、より効果的に糖尿病の症状を改善できます。 糖尿病患者の理想の食生活ポイント 糖質やカロリーの低い食事を摂る 1日3食、規則正しい時間に摂る 1日の活動量に合わせた適正なエネルギー量の食事をする 栄養バランスの取れた食事をする 食事量が多い人は、食事量を適正エネルギー量に調整しましょう。 1日の適正エネルギー量は、人によって異なり、「標準体重×身体活動量」で算出できます。 標準体重と身体活動量 標準体重=身長(m)×身長(m)×22 身体活動量 軽い労作(デスクワークが多い)25~30kcal/kg 普通の労作(立ち仕事が多い)30~35kcal/kg 重い労作(力仕事が多い)35~kcal/kg 近年糖尿病の治療として注目されている「再生医療」 再生医療とは、患者様自身の細胞から採取・培養した幹細胞を投与する先進的な医療法です。 糖尿病治療においては、自身の脂肪から培養した幹細胞をすい臓に投与することで、弱っていたすい臓の機能の改善を図ります。 すい臓が回復することによりインスリン分泌の増加、血管内の糖の吸収を促進することが可能になります。 一般的な内服治療やインスリン治療では糖尿病の進行を遅らせる効果はあるものの、根本的な回復を目指す治療ではありませんでした。 再生医療は自分自身が持つ「回復力」にアプローチする治療であるため、薬物療法とは異なった治療法だといえます。 まとめ|糖尿病は筋トレや運動療法、再生医療で改善を目指そう 「糖尿病は、一度発症すると完治しない」と、よく言われています。しかし、筋トレなどの運動療法や食事療法を通じて症状を改善することは可能です。特に2型糖尿病では、肥満や不健康な生活習慣が悪循環を生み出し、症状を悪化させることがあります。 この悪循環を断ち切るためには、食事のタイミングや、量をコントロールして、更に運動を行うことで脂肪を減少させることに取り組むことが重要です。 実行にあたっては医師の指導を受けながら、病状の管理に取り組みましょう。 また、糖尿病に対しては、運動療法の他にも「再生医療」という治療法もあります。 糖尿病に対する再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」 2024年 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45540.html(最終アクセス:2025年3月25日) (文献2) 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024「第4章 運動療法」pp.67-68.日本糖尿病学会, 2024年. https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/04_1.pdf(最終アクセス:2025年3月25日) (文献3) Hirata Y, et al. (2019). Hyperglycemia induces skeletal muscle atrophy via a WWP1/KLF15 axis. JCI Insight, 4(4), e124952. https://doi.org/10.1172/jci.insight.124952(最終アクセス:2025年3月25日)
2022.02.11 -
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「糖尿病だけど、運動しても大丈夫なのか不安…」 「運動をしてはいけない人もいるって聞いたけど本当?」 このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか? 糖尿病の人にとって、適度な運動は血糖値を安定させる上で大切です。 しかし、すべての運動が良いわけではありません。間違った方法で運動すると、血糖値のバランスが崩れたり、合併症を悪化させたりして体に悪影響を及ぼすリスクがあります。 本記事では、糖尿病で運動療法をやめるべき基準や運動が許可された場合の注意点を解説します。運動療法の方針を考えていく際の参考にしてください。 【禁忌】糖尿病で運動療法をやめるべき基準 糖尿病の治療において運動療法は効果的な治療法の一つですが、患者様の状態によっては運動が逆に症状を悪化させる場合があります。 以下の条件は禁忌(実施すると危険性がある行為)に該当するため、運動療法をやめるべき基準となります。 増殖網膜症・増殖前網膜症を発症している レーザー光凝固後3〜6カ月以内の網膜症を発症している 第3B期(顕性腎症後期)以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dl以上、女性2.0mg/dl以上) 心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある 高度の糖尿病自律神経障害がある 1型糖尿病でケトーシスがある 代謝コントロールが極端に悪い(空腹時血糖値≧250mg/dlまたは尿ケトン体中等度以上陽性) 急性感染症を発症している 自身がこれらの状態に該当するかどうかは、医師の診断や判断が必要です。糖尿病の方は運動療法をはじめる前に、必ず医師に相談してください。 糖尿病の基本的な治療は「運動療法」と「食事療法」 糖尿病の基本治療は、本来「運動療法」と「食事療法」です。それぞれの治療効果を詳しく見ていきましょう。 運動療法|運動しないとどうなるかのリスク管理も大切 運動療法は糖尿病の基本治療の1つです。 運動は血糖値を下げ、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを助ける効果があります。 糖尿病の人が運動をしないと、血糖値が上がりやすくなるほか、インスリンの働きも弱まるため、症状が悪化する可能性があります。 糖尿病の方に適した運動のタイミングは血糖値が上昇する食後です。食後の急激な血糖値上昇を運動によって抑えることが大切です。 毎日の生活の中に取り入れ、無理のない範囲で運動を続けましょう。 食事療法|食材選びや食べ方の工夫が症状を安定させるコツ 食事療法では、食べるものや食べ方を工夫して血糖値をコントロールしたり、適切な体重を維持したりするのが目標です。 血糖値の上昇を引き起こしやすい栄養素は、糖質です。糖質は、パンやご飯、甘いお菓子などに多く含まれます。一方で、食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにする働きがある栄養素です。食物繊維は、野菜や海藻、いも類などに多く含まれています。 栄養バランスを考えた食事選びが、糖尿病管理の基本となります。 なお、糖尿病の治療においては再生医療も選択肢として挙げられます。体内の脂肪細胞を活用して、すい臓・血管の機能回復を図り糖尿病治療を進めます。 再生医療について詳しく知りたいという方は、メール相談、オンラインカウンセリング も承っておりますので、ぜひご活用ください。 【関連記事】 糖尿病!運動療法なら改善はもとより予防にも効果を発揮 効果が上がる!糖尿病の予防に最適な運動!その効果と注意点 運動療法の制限が必要な糖尿病の人|7つの特徴 糖尿病の方の中には、完全に運動を禁止するのではなく、医師の指導のもとで制限付きの運動療法が可能な場合があります。 以下は、注意深く運動を行う必要がある人の7つの特徴です。 インスリン治療中の人 単純網膜症の人 増殖前網膜症・増殖網膜症を患っている人 糖尿病神経障害の人 重篤な心血管障害や肺の病気を患っている人 腎症を患っている人 ケトーシス状態の人 それぞれの特徴を詳しく解説します。 インスリン治療中の人 インスリンを使った治療を受けている人は、運動のタイミングに注意が必要です。 適切な運動は血糖値を安定させるのに役立ちますが、誤ったタイミングで行うと低血糖を引き起こす危険があります。 とくに、寝起きや食事前は血糖値が低くなりやすいため、この時間帯の運動は避けたほうが良いでしょう。 運動中に血糖値が急激に下がると、めまいやふらつきが起こり、意識を失う可能性もあります。そのため、血糖値が上がりやすい食後に運動を取り入れるのが理想的です。 薬を使いながら運動をする場合は、主治医に相談し、自分に合った運動方法を確認してください。 単純網膜症の人 糖尿病の合併症の1つに「糖尿病網膜症」があります。 これは、目の奥にある網膜(光を感じる部分)の血管が傷つき、視力に影響を与える病気です。 糖尿病網膜症は進行の度合いによって「単純糖尿病網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の3段階に分かれます。 糖尿病網膜症は血圧の変動によって出血する可能性があります。また、低血糖になれば眼底出血が引き起こされる場合があるので、運動のタイミングや強度には注意が必要です。 病状によっては、運動が制限される場合や禁止されるケースもあります。 増殖前網膜症・増殖網膜症を患っている人 増殖前網膜症の場合は血圧におよぼす影響の少ない軽度の運動にとどめます。 頭を強く振る、頭を下げる、力むといったことは血圧を上げ、頭部への血流を増やすため、眼底出血などを起こす可能性があります。 また、増殖網膜症の方は、運動以外にも、力んだり、息をこらえたり、重量物を持ち上げたりするような行為は身体に負担がかかるので避けましょう。 糖尿病神経障害の人 糖尿病神経障害には、「感覚神経障害」と「自律神経障害」があります。 感覚神経障害では、足の感覚が鈍くなり、痛みに気づきにくくなるため、足に負担の少ない運動が適しています。たとえば、自転車エルゴメーターや水泳などです。 一方、自律神経障害では、血圧や心拍の調整が難しくなるため、運動療法が禁止される可能性があります。 重篤な心血管障害や肺の病気を患っている人 心臓や肺に病気がある人が運動を始める際は、事前に体への負担を確認する取り組みが大切です。 とくに、心臓の病気がある場合は、運動中の心拍の変化を調べる「負荷心電図」(運動中に心臓の働きを記録する検査)の実施が推奨されます。 運動の強さによっては、心臓に負担をかける可能性があるため、どの程度の運動が安全かを医師と相談しましょう。 腎症を患っている人 糖尿病による腎臓の病気「糖尿病性腎症」は、進行度によって5段階に分かれます。 第1期:腎症前期(尿中アルブミンが正常範囲) 第2期:早期腎症期(微量アルブミン尿) 第3期:顕性腎症期(顕性アルブミン尿or持続性タンパク尿) 第4期:腎不全期(腎機能の著しい低下) 第5期:透析療法期(透析療法中) 第1期から第3期までは、病状に応じた適切な運動が推奨されています。 第3期の顕性腎症期まで進行すると、腎臓の負担を減らすために運動を制限する可能性があります。 以前は腎症患者には運動を控えるよう一律に指導されていましたが、現在の医学的見解では、適度な運動による持久力向上や血中脂質代謝改善の効果が認められています。 ケトーシス状態の人 血糖値が250mg/dl以上(高血糖)やケトーシス状態の場合は運動が制限されます。 ケトーシスとは血中のケトン体が増加し、尿中のケトン体が中等度以上の状態です。 高血糖のときに運動をすると、糖の代謝がうまくいかず、症状が悪化する可能性があります。そのため、まずは食事や薬の治療で血糖値を安定させてから運動を取り入れましょう。 糖尿病の人が運動するときの注意点 運動が許可されている糖尿病の方は、以下の点に注意して安全に運動をする必要があります。 運動時の状況 起こりうるリスク 低血糖を引き起こしている めまいや意識障害を引き起こし、転倒・事故のリスクを高める 運動の強度や頻度が高すぎる 関節や筋肉を損傷する可能性がある インスリン調整剤や飲み薬を服用している 低血糖になりやすいため、体調の変化に注意する必要がある 運動療法は継続が何より大切です。運動を長続きさせるためにも、安全を第一に心がけましょう。 糖尿病を発症したら運動療法の前に医師によるメディカルチェックが必要 糖尿病患者の方が運動療法を行う際、やり方を間違えると事故や症状を悪化させるリスクがあります。 そのため、運動療法を始める前には医師によるメディカルチェックを受けて、安全性を確認することが大切です。 以下は、糖尿病患者の運動療法を行う際のメディカルチェックにおける基本項目です。 項目 検査内容 問診 ・糖尿病以外で治療中の病気や服薬中の薬 ・家族の既往歴 ・現在の生活状態や運動習慣 血液検査 ・空腹時血糖 ・HbA1c(ヘモグロビン量の測定) 診察 ・血圧 ・脈拍数 ・身体計測(身長、体重、腹囲) ・肥満度 尿検査 たんぱく、ケトン体の測定 心電図 安静時心電図 運動療法を開始後も、少なくとも年に一回は医師によるメディカルチェックを受けましょう。 まとめ|糖尿病の運動療法における禁忌を知って正しい治療を進めよう 禁忌とは、単なる禁止という意味ではなく、それを行うことで症状を悪化させたり、予期せぬ副作用が起きたりするなどのリスクがあるという意味で用いられています。 よって、自分の状態が運動療法の禁忌に該当するかどうかを医師に確認し、安全な範囲で糖尿病の治療を進めていく姿勢が大切です。 糖尿病はこれまで「治らない病気」と言われてきました。しかし、近年「再生医療」という新しい医療分野が発達し、血糖値が大幅に改善した事例が数多く報告されています。糖尿病の再生医療に興味がある方は、当院リペアセルクリニックにお気軽にお問い合わせください。 【関連記事】 糖尿病が改善!肝機能も良くなる 幹細胞治療 60代女性 糖尿病に対する幹細胞治療でHbA1Cは正常値に戻る!70代男性
2022.02.07